説明

インヴィヴォでの核酸配列のエピジェネティック修飾用組成物および方法

シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインと特異的又は非特異的DNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む分子を利用した、真核細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化について記載する。本発明の分子は、体細胞核移植と癌治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物細胞におけるゲノムDNAのエピジェネティックな修飾の分野に関する。本発明は特に、哺乳類細胞におけるゲノムDNAのメチル化を制御する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エピジェネティックスは、遺伝子のヌクレオチド配列にコードされない情報の、単細胞又は多細胞生物からその子孫への伝達に関するものである。エピジェネティック情報を伝達する機構の一つとして、多細胞生物のゲノムDNAにおけるシトシン(C)塩基のメチル化によるものがある。
【0003】
多細胞生物におけるDNAメチル化は、主にCpGジヌクレオチドで起きており、発達および遺伝子発現のエピジェネティック制御(例えばゲノムインプリンティング、X染色体不活化、転移因子の発現停止)において、重要な調節的機能を有しており、発達における遺伝子の発現停止において、おそらくは幅広い役割を担っている。DNA複製の間、主要維持メチルトランスフェラーゼDnmt1が不活化されることによって、DNAのメチル化が喪失しうる。さらに哺乳類および植物においては、DNAの複製を経ずに脱メチル化が起こる例が数多く存在しており、従って脱メチル化は、活性酵素プロセスである可能性が高い。
【0004】
DNAの活性的脱メチル化は、動植物の様々な生物学的システムにおいて起こると考えられているが、分子レベルでのメカニズムはまだ解明されていない。シロイヌナズナ(Arabidopsis)では、DNAグリコシラーゼDemeterが、DNAから5−メチルシトシンを切り出すものであり、インプリンティング遺伝子であるMedeaの母系対立遺伝子の活性化に必要であることが判明している。
【0005】
癌については、腫瘍細胞のほとんどが、異常なDNAエピジェネティックインプリンティングを示すことが実証されている(FeinbergおよびVogelstein、1983年)。研究の結果、癌細胞内の腫瘍抑制遺伝子が、DNAメチル化によって発現停止することが示されている(LykoおよびBrown、2005年)。胃癌においては、遺伝子CDKN2A、CDH1、hMLH1およびRUNX3が不活化される原因は、それぞれのプロモーターにおけるDNAメチル化であると説明されており、上記遺伝子およびその他の遺伝子はヘリコバクター・ピロリによる感染に応じてメチル化されると考えられている(Ushijima、2007年)。
【0006】
癌は、米国において第2位の死因である。およそ1010万人の米国人が、癌であると診断されている。2002年には、米国で124万46人が癌であると診断されている(疾病対策予防センター(2004年、2005年)および国立癌研究所(2005年)の情報)。一例として、英国癌研究所によると、英国では毎年約4万4100人(すなわち新たな全癌患者の16%)が乳癌であると診断されており、毎年1万2400を超える人が乳癌を原因として死亡している。同じ期間に、英国では約7000人(新たな全癌患者の3%)が新たに膵癌であると診断され、ほぼ同数が死亡している。エピジェネティック変化の制御が起こる理由と機構を解明することが、癌の理解、検出および治療にとって重要である。
【0007】
メチル化とその結果起こる遺伝子発現停止は、癌の発達と進行において重要な役割を担っている。従来の化学療法に応答しにくいタイプの癌を標的可能とする方法の一例として、癌細胞において誘導される異常型メチル化パターンを逆転することが挙げられる。また、DNAメチル化を標的とするエピジェネティック治療因子を用いて、進行癌や手術不能の癌を治療したり、他の従来の既存の治療の補助として用いることもできる。
【0008】
体細胞核移植(SCNT)は、家畜生産用(クローニング用又は幹細胞治療用)、タンパク質のバイオマニュファクチャリング(biomanufacturing)用、および疾患モデル用の動物を得るのに用いられている(Wilmut他、2002年)。体細胞ドナー核を多能性(pluripotent)状態に再プログラムするためにSCNTを応用する際の主な障害は、レシピエント卵母細胞によるドナーゲノムの脱メチル化が非効率的である。DNAメチル化のゲノムパターンは、初期胚および始原生殖細胞でゲノムワイドに再プログラム化されることが分かっている。従って、インヴィヴォで標的化可能にエピジェネティック再プログラム化を操作が可能であることは、再生医療および癌治療における重要な用途となりうる。
【0009】
脱メチル化の生化学的経路が数種類存在することが示唆されているが、最近まで、これらのいずれもインヴィヴォで操作可能であることが示されていなかった。大腸菌を用いたインヴィトロ研究の結果、シチジンデアミナーゼである活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(Aid)とApobec1が、DNA中の5−メチルシトシンを脱アミノ化できることが示されている(Morgan他、2004年)。この脱アミノ化の結果、チミン塩基がグアニンに対面し、これが内因性DNAミスマッチ修復機構によってシトシンに修復されるため、効率的な脱メチル化が得られる。ミスマッチ修復がなされない場合には、脱アミノ化で転換変異を引き起こすことができる。
【0010】
免疫グロブリン遺伝子座の特定領域におけるシトシンの脱アミノ化を介した、抗体遺伝子多様化と体細胞突然変異(SMH)におけるAidの役割について、これまでに特徴が解明されている(Neuberger他、2003年)。生物体において、Aidは主に細胞質内に含まれ、そこで厳密に制御されている(Rada他、2002年)。Aid活性は、細胞内の他のタンパク質との相互作用によって調節されていると思われる。よって、「制御されていない」脱アミノ化活性は、ゲノムの突然変異および/又はエピジェネティックに発現停止した遺伝子の活性化を増加させる恐れがあり、細胞に有害となりうるという理由から、Aidはインヴィヴォで厳密に制御されていると考えられている。
【0011】
【非特許文献1】Altschul他、1997, Nucleic Acids Res., 25, pp 3389-3402
【非特許文献2】Barreto V, Reina-San-Martin B, Ramiro AR, McBride KM, Nussenzweig MC. C-terminal deletion of AID uncouples class switch recombination from somatic hypermutationand gene conversion MoI Cell. 2003 Aug;12(2):501-8.
【非特許文献3】Baylin SB. DNA methylation and gene silencing in cancer. Nat Clin Pract Oncol. 2005 Dec;2 Suppl 1:S4-11. and Lyko F, Brown R. DNA methyltransferaseinhibitors and the development of epigenetic cancer therapies J Natl Cancer Inst. 2005 Oct 19;97(20): 1498-506.
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【非特許文献5】Egger G, Liang G, Aparicio A, Jones PA. Epigenetics in human disease and prospects for epigenetic therapy Nature May 2004; 429: 457-63.
【非特許文献6】Feinberg AP & Vogelstein B; Hypomethylation distinguishes genes of some human cancers from their normal counterparts Nature. 01(5895):89-92, Jan 1983.
【非特許文献7】Fuks, F., Burgers, W. A., Godin, N., Kasai, M., and Kouzarides, T. (2001). Dnmt3a binds deacetylasesand is recruited by a sequence-specific repressor to silence transcription EMBO J 20, 2536-2544.
【非特許文献8】Henikoff & Henikoff, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, pp 10915
【非特許文献9】Klein G. Epigenetics: surveillance team against cancer Nature 2005 Mar 10;434(7030):150.
【非特許文献10】Morgan, H. D., Dean, W., Coker, H.A., Reik, W., and Petersen-Mahrt, S. K. (2004) Activation-induced cytidinedeaminase deaminates5-methylcytosine in DNA and is expressed in pluripotenttissues: implications for epigenetic reprogramming J BiolChem 279, 52353-52360.
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【非特許文献13】Neuberger et al. Trends Biochem. Sci. (2003) 28:308-312
【非特許文献14】Oswald, J., Engemann, S., Lane, N., Mayer, W., Olek, A., Fundele, R., Dean, W.,
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【非特許文献19】Schoenherr C J, Levorse J M and TilghmanS. M. CTCF maintains differential methylation at the Igf2/H19 locus Nat. Genet. 2003; 33:66-69
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、動物細胞、好ましくは哺乳類体細胞内でのゲノムDNAの包括的なあるいは標的化した脱メチル化を、そのDNAの配列の完全性を維持しつつ提供する新規な組成物および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面において、シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインとDNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む、真核細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできる単離ポリペプチド分子が提供される。特定の態様において、本発明の分子は核移行シグナルをさらに有していてもよく、前記核移行シグナルは、前記第1のドメイン内に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。好ましくは前記第1のドメインは、活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(Aid)のシチジンデアミナーゼドメインを含む。特定の態様において、前記第1のドメインは、配列番号1に示すAidΔNES配列を含む。あるいは前記第1のドメインは、Apobec1のシチジンデアミナーゼドメインを含む。
【0014】
本発明の特定の態様において、前記第2のドメインは、非配列特異的DNA結合ドメイン又は配列特異的DNA結合ドメインのいずれかを含む。配列特異的DNA結合ドメインの場合、ジンクフィンガードメイン、ロイシンジッパードメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックスドメイン、ステロイド受容体DNA結合ドメイン、およびホメオドメインから選択されるドメインを含んでいてもよい。あるいは任意に、前記配列特異的DNA結合ドメインは、発現が多能性表現型に関連する1種以上の遺伝子の、プロモーター領域に存在する結合配列を標的とする。好適には、前記配列特異的DNA結合ドメインは、発現が腫瘍抑制表現型に関連する1種以上の遺伝子の、プロモーター領域に存在する結合配列を標的とする。
【0015】
本発明の特定の態様において、前記細胞は哺乳類細胞であり、あるいは任意にヒト細胞であってもよい。本発明の更なる態様において、前記細胞は多能性細胞、体細胞又は癌細胞であってもよい。
【0016】
本発明の第2の側面において、上述の態様のいずれかに記載のポリペプチド分子をコードする単離核酸分子が提供される。
【0017】
本発明の第3の側面において、真核細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできるポリペプチド分子の、トランスフェクションおよび前記細胞内での発現用の発現ベクターが提供される。前記ベクターは、シチジンデアミナーゼ活性を示すポリペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含むコード配列を有し、前記第1の配列は、少なくとも、DNA結合活性を与えるポリペプチド配列をコードする第2の核酸配列に連結し、前記第1および第2の核酸配列は、操作可能にプロモーター配列に連結する。
【0018】
本発明の第4の側面において、真核細胞のトランスフェクション用核酸ベクターが提供される。前記ベクターは、前記哺乳類細胞内でのメチル化ゲノムDNAの脱メチル化を惹起することのできる分子をコードする配列を含み、前記ベクターは、シチジンデアミナーゼ活性を示すポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、それに連結したDNA結合活性を示すポリペプチド配列をコードする第2の核酸配列とを含み、前記第1および第2の配列は、操作可能にプロモーター配列に連結する。
【0019】
本発明のある態様において、前記ベクターは、1種以上の選択マーカー配列および/又はレポーター遺伝子配列をさらに含む。本発明の特定の態様において、前記第1および第2の核酸配列は、1種以上の介在配列によって隔てられている。任意に、前記プロモーター配列は、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターのいずれかから選択される。本発明のある態様において、前記誘導性プロモーターは、Tet制御性プロモーター、タモキシフェン制御性プロモーター、およびステロイドホルモン制御性プロモーターから選択される。好適には前記ベクターは、核移行シグナルをコードする配列をさらに含む。特定の態様において、本発明の前記ベクターは、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を含む。好適には前記ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、および人工染色体から選択される。通常、ベクターは哺乳類細胞、あるいは任意にヒト細胞において好適に用いられる。特定の態様において、前記細胞は多能性細胞、体細胞、および/又は癌細胞である。
【0020】
本発明の更なる側面において、標的細胞を上述のベクターでトランスフェクトするステップと、必要に応じて、前記標的細胞内で前記ベクターの発現を惹起するステップとを含む、標的細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起する方法が提供される。通常、前記DNA配列の脱メチル化は、前記標的細胞のゲノム内のエピジェネティックインプリンティングを除去する目的で行う。
本発明の更なる側面において、体細胞のゲノム内に位置する少なくとも1種のメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできるポリペプチド分子であって、シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインとDNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む分子を、体細胞核ドナー内で発現するステップを含む、体細胞核移植(SCNT)術を行う方法が提供される。
【0021】
本発明の更なる側面において、癌細胞のゲノム内に位置する少なくとも1種のメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできるポリペプチド分子であって、シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインとDNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む分子を、患者の少なくとも1個の癌細胞内で発現するステップを含む、患者体内に存在する癌を処置する方法が提供される。
【0022】
本発明の更なる側面において、非ヒト動物のゲノム内に安定的に組み込まれた本発明の核酸分子を有するトランスジェニック非ヒト動物が提供される。通常、核酸分子の発現は、異種性の誘導性プロモーターに制御される。しかし本発明のある態様においては、核酸分子の発現は、内因性の誘導性プロモーターに制御される。特定の態様において、前記非ヒト動物はマウスである。
【0023】
本発明の更なる側面において、上述したポリペプチド又は核酸分子と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明の方法および組成物は、動物細胞、好ましくは哺乳類細胞系に好適に用いられる。本発明はヒト細胞内で作用することを企図しているが、本発明はヒトの生殖型クローニングを包含するものではないことは理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の上記およびその他の用途、特徴、利点は、本明細書に記載する教示によって当業者に明らかとなるであろう。
【0026】
図1は、融合タンパク質Gal4−Aidを産生する導入遺伝子の構造と、インヴィヴォでトランスジェニックに標的化するストラテジーの概略図を示す。
a)Aidタンパク質の構造、核外移行シグナルを除去したC末端欠失(を有するAidタンパク質変異体(AidΔNES)、およびCMVプロモーターからGal4−AidΔNES欠失融合タンパク質を発現する導入遺伝子
b)H19上流の差次的にメチル化された領域(DMR)と、UAS配列の挿入位置を示す(組換えストラテジーの結果として生じる1個のloxP部位も示す)。この遺伝子型が、CMV−Gal4−AidΔNES母とH19DMR UAS父との子孫におけるCMV−Gal4−AidΔNES導入遺伝子と組み合わさると、Gal4−AidΔNES融合タンパク質が、父系のメチル化した対立遺伝子(黒丸ピン)上のUAS配列に結合する。亜硫酸水素塩配列決定により分析した領域は、染色体の上方にBi1およびBi2として示す。
図2は、実験交雑と対照交雑におけるH19DMRのメチル化分析を示す。図1に示した領域の亜硫酸水素塩分析は、CMV Gal4−mycのメスとH19DMR UASのオスとの交雑から得た子孫(対照)、CMV Gal4−AidΔNESのメスとH19DMR UASのオスとの交雑から得た子孫の、新生仔の肝臓について行った。黒丸はメチル化したCpG、白丸は非メチル化のCpGを示す。父系H19DMR UASは、対照交雑におけるメチル化レベルが高いが、実施例のものではメチル化レベルが実質的に低い。母系染色体は両方の交雑においてメチル化されていない。
図3は、AidΔNESの配列を示す(配列番号1)。
図4は、CMV−GAL4−AidΔNESの配列を示す。
図5は、(a)Gal4DNA結合ドメインを、核外移行シグナル(NES)を含むC末端を除去したAid cDNAに融合した。Aidのアミノ酸に通し番号を付した。野生型Aid cDNAに加えて、D89GおよびC147R、ならびにE58Gのアミノ酸変化を含むAid cDNAの突然変異体2種を用いた。融合cDNAをCMVプロモーターベクター内に挿入して3種の導入遺伝子構築物を得て、NruIおよびDraIIIでプラスミド主鎖から切り取り、接合子に微量注入し、形質転換系TG4および5(CMV Gal4−AidΔNES。ここでは単に「CMV Gal4−Aid」として示す)、TG7(CMV Gal4−ΔAid1)およびTG8(CMV Gal4−ΔAid2)を得た。(b)胚組織および新生仔組織におけるTG5、TG7およびTG8系統の、RT PCRによる発現分析。(c)接合子(トランスジェニック母とH19DMR−UAS父の交雑)におけるTG5およびTG7系統の、Gal4DNA結合ドメイン抗体を用いた免疫蛍光法による発現分析。融合タンパク質の大部分が前核に局在化している。
図6は、H19DMR−UASにおけるメチル化を示す。UAS配列を含む父系対立遺伝子(図面左側)と、UAS配列を含まない母系対立遺伝子(図面右側)について、亜硫酸水素塩配列決定により分析した。Gal4トランスジェニックのメスをH19DMR−UASホモ接合のオスと交雑し、導入遺伝子について陽性の子孫の、E12.5での胚(E)および胎盤(P)における、あるいは新生仔の肝臓(L)における、メチル化を分析した。黒丸はメチル化されたCpG、白丸は非メチル化CpGを示す。DMR内の第4のCTCF結合部位を示してある。Gal4−myc又はGal4−Aid突然変異体を発現する系統において父系DMRは高度にメチル化されたままであるが、Gal4−AidΔNESを発現する系統(ここでは単にGal4−Aidとして示す)において、実質的に脱メチル化されている。
【0027】
本発明の説明に先立って、本発明の理解を助ける一連の定義を示しておく。本明細書に引用する全ての参考文献は、参照することで本明細書に全体が含まれるものとする。特に定義しない限りは、本明細書で用いる全ての技術用語・科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を持つものとする。
【0028】
本明細書で用いる「再プログラム化」の語は、細胞核のエピジェネティックなインプリンティングを改変又は除去する工程のことをいう。再プログラム化によって、細胞運命への拘束の減少、従って細胞全体のそして特に核の分化状態の減少が促進される。本質的には、再プログラム化は、分化したあるいは運命決定した体細胞核を、胚細胞、生殖細胞又は幹細胞に特徴的な遺伝子発現、エピジェネティックおよび機能状態に戻すことから構成される。体細胞核の再プログラム化は、SCNT等の処理において最初に行う工程として好ましいが、細胞分化状態すなわち効力の制御が重要である他の処理においても用途が期待される。
【0029】
「インプリンティング」の語は、染色体によって保持される、どちらの親からその染色体が受け継がれたかに関する「記憶」のことをいう。この記憶は、DNAメチル化等のDNA上に化学的に刷り込まれたエピジェネティックマークによってもたらされ、その結果染色体は、由来する親に応じて異なった挙動を取りうる。由来する親に特有の遺伝子発現(母系又は父系染色体のいずれかに由来するもの)は、哺乳類でしばしば観察される。これは親の生殖系列におけるものであり、遺伝子の発現停止又は活性化を安定したものとしている。
【0030】
「DNAメチル化」の語は、DNAの特定の塩基にメチル(CH)基を付加することをいう。哺乳類において、メチル化はほぼ例外なく、グアニンが後に続くシトシン(CpG)の5位で起こる。DNAメチル化はエピジェネティックマークとして作用し、ゲノム機能と発現の調節に重要な役割を果たす。
【0031】
シチジンデアミナーゼは、大腸菌等の原核生物から哺乳類にまで見られる酵素群である。これらの酵素は、遊離シチジンあるいはDNA又はRNA中のシトシンを脱アミノ化してウラシルとするか、AidおよびApobec1(上記群の2種の酵素)について示されているように、メチル化シトシンを脱アミノ化してチミンとする。
【0032】
「DNAミスマッチ修復」の語は、DNA中の不適当に組み合わされた、すなわちワトソン−クリックのDNA塩基対の法則に従った正常なC:GおよびA:Tの組み合わせから逸脱した、塩基対を認識し修正する、宿主生物の細胞内で起こる修復工程のことをいう。
【0033】
本明細書で用いる「癌」の語は、新生物内に存在する、あるいは新生物に関連する特性を有する、組織又は細胞のことをいう。新生物は一般に、正常組織および正常細胞から区別される特徴を有する。そのような特徴の例としては、一定の退形成、細胞形態の変化、形状の不整、細胞粘着性の低下、転移能、血管形成レベルの増加、細胞感染度の増加、細胞アポトーシスレベルの低下、細胞悪性度の全体的な増加などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「癌」に関連し、しばしば同義に用いられる語の例として、肉腫、癌腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、形質転換、新生物などがある。
【0034】
「バイオプロセス」の語は、生細胞又はその構成要素を用いて所望の最終産物を得る技術をいう。本発明に照らしていうと、細胞をエピジェネティックに修飾して、バイオプロセスで使用されるこれらの細胞の能力を強化することに使用ができる。例えば、ゲノムの標的化した脱メチル化を用いて、SCNTを介したクローン動物作成効率を向上させることができ、ここで、クローン動物は、トランスジェニックであり、所望の最終産物を産生するものである。
【0035】
体細胞は通常、分化経路に沿って進むにつれ、特殊化の低い状態から、特殊化の高い、あるいは運命決定された状態へと発達する。特殊化の低い体細胞は、数種の細胞型を生じる前駆幹細胞として作用する能力を発揮することができる。所与の幹細胞がその前駆細胞として作用しうる異なる細胞型の量は、一般にその幹細胞の「能力」と称される。従って多能性幹細胞は、非常に多くの異なる分化細胞型の前駆細胞として作用することができる。ある細胞が体の全ての細胞に分化できる場合、その細胞は全能性である。細胞がほとんどの細胞型に分化できる場合、その細胞は多能性である。胚幹細胞は、胚外組織(すなわち栄養外胚葉)を除く哺乳類のほとんどの細胞型を生じるため、一般に多能性であると称される。
【0036】
本明細書においてAidについて用いる「誘導体又は相同体」の語は、ヒト又はマウスAidの配列と実質的に同様の配列同一性を有するmRNAおよびポリペプチドをいう。誘導体および相同体は、他の種に由来する配列のオルソログや突然変異であって、にもかかわらずかつ高レベルの機能的同等性(すなわちインヴィヴォのシチジンデアミナーゼ活性)を示すものを含むものとする。実質的に同様の配列同一性とは、配列同一性のレベルが、約50%から、60%、70%、80%、90%、95%、約99%まで同等であることをいう。配列同一性のパーセントは従来法を用いて調べることができる(例えばHenikoffおよびHenikoff、1992およびAltschul他、1997参照)。本明細書でいう配列同一性のレベルとは、ポリペプチド配列とポリヌクレオチド配列(DNA又はRNA)との両方についていうことが理解されよう。あるいはシチジンデアミナーゼドメインの相同体(例えばAidΔNES)は、高、中又は低程度のストリンジェントな条件下での、本明細書で説明するAid配列とのハイブリダイズ能力を発揮する配列であってもよい。
【0037】
「ポリペプチド」は、自然に産生された、あるいは合成手段によりインヴィトロに産生された、ペプチド結合により連結したアミノ酸残基の重合体のことをいう。約12アミノ酸残基長未満のポリペプチドは通常「ペプチド」と称される。本明細書における「ポリペプチド」の語は、自然に発生するポリペプチド生成物、前駆体形態、又はプロタンパク質のことをいう。ポリペプチドは、例えばグリコシル化、タンパク質切断、脂質付加(lipidization)、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、リン酸化などの成熟工程又は翻訳後修飾工程を経てもよいが、これらに限定されるものではない。「タンパク質」は、1本以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。
【0038】
本明細書における「プロモーター」の語は、関連コード配列の発現を制御するように転写因子および/又はRNAポリメラーゼが結合する遺伝子内の領域をいう。プロモーターは一般に、ただし常にではないが、遺伝子の、翻訳開始コドンの上流の5’非コード領域に位置している。遺伝子のプロモーター領域は、DNA結合タンパク質の配列特異的DNA結合ドメインに対する認識可能結合部位として作用する1個以上のコンセンサス配列を含んでいてもよい。とはいえ、このような結合部位は、プロモーター外の領域(例えばイントロン内又はコード配列の下流に位置するエンハンサー領域)に位置していてもよい。
【0039】
本明細書で引用する全ての参考文献は、参照することで本明細書に全体が含まれるものとする。特に定義しない限りは、本明細書で用いる全ての技術用語・科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を持つものとする。
【0040】
第一の態様において、本発明の一部は、哺乳類細胞で発現されるとゲノム内のインプリント領域を脱メチル化する、AidΔNESと称されるシチジンデアミナーゼの改変型を同定することを本質とする。野生型Aidは通常、主に細胞質内に見られるが、Aidの改変型は核外移行シグナル(ΔNES)を欠損しており、その結果、細胞内で異種発現した場合、この酵素は細胞の核に局在化し続ける。本発明のC末端切断は新規であり、これまでに実施されてきたものより広範囲で実施可能である。AidのC末端を切断すると、核外移行に影響が起こり、クラススイッチ組換え(CSR)を停止するが体細胞超変異(SHM)は停止しないことが示されている(Barreto他、2003年)。従って本発明は、広義において、いくつもある用途のうち、バイオプロセスと癌治療に広範な有用性を示す、核局在化したシチジンデアミナーゼ活性とDNA結合活性との組み合わせをプロセシングする組成物および分子を提供するものである。
【0041】
本発明の一態様によると、AidΔNESとGAL4DNA結合タンパク質との融合体を、マウス細胞のH19遺伝子の上流に位置するUAS配列に結合すると、UASのいずれかの側にある最大約600塩基のDMR中のシチジン残基が脱メチル化される。この領域が脱メチル化されると、H19遺伝子発現のスイッチングが起こる。その後プロモーター配列の配列決定をしたところ、ミスマッチ点突然変異のレベルは統計学的に有意なレベルまで増加しなかったことを示していた。Aidはデアミナーゼであり、メチル化したCのTへの脱アミノ化に次いで起こるT−Gミスマッチを修正するための、宿主の除去修復機構に本質的に依存しているので、上記の結果は重要かつ驚くべきものである。単機能を示す脱メチル化酵素として知られているものは現在存在せず、従ってAidは、メチルシトシンの脱アミノ化と、それに次いで起こる宿主自身の機構による除去修復によって特徴付けられる、概念的な「脱メチル化酵素」機能の一部を担う。Aidを介したDNAの脱メチル化が、インヴィヴォでかつ標的化可能に作用することが示されたのは今回が初めてであると思われる。
【0042】
後に詳述する本発明の実施例において、インヴィヴォ実験をマウスモデルにて行った。しかし得られた結果は、他のげっ歯類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、霊長類、ヒト等の、他の哺乳動物種にも容易に当てはめることができる。マウスAid(ジェンバンク受入番号:NM_009645)とそのヒト相同体(ジェンバンク受入番号:AB040430)(Muto他、2000年)との間には、アミノ酸レベル92%の同一性という、高レベルの保存性がある。さらに、ヒトとマウスにおけるDNAミスマッチ修復機構には、高い類似性があることが知られている。
【0043】
本発明は、多くの重要な要素を実証している。第1に、Aid又はApobecなどのシチジンデアミナーゼの活性を、インヴィヴォでゲノム内のメチル化領域に対して局所標的化することで、潜在的に起こりうる破局的な点突然変異を起こすことなく、効率的に脱メチル化を行うことができることを示している。第2に、インプリンティング遺伝子のDMRの完全メチル化は、酵素機構による消去が可能であることを実証している。このような消去は通常、始原生殖細胞の発達中にE11.5〜E12.5(マウスモデルの場合)で起こるものであり、活性的な脱メチル化を必要とするものと考えられる。
【0044】
癌において、シチジンデアミナーゼは、エピジェネティックな作用(DNAメチル化)および遺伝的作用(突然変異)の両方で役割を果たしていると考えられている。広範囲で、かつ癌の初期段階で起こりうる、脱メチル化が果たしうる役割は、本発明の結果によりさらに強化されると思われる。
【0045】
本システムは、トランスジェニック系において作用することが示されており、マウスにおけるGal4−AidΔNES融合遺伝子の発現と、メチル化領域(H19DMR)内へのUAS(Gal4結合部位)とを組み合わせて、見かけ上の突然変異を起こすことなく、脱メチル化を行う。考えられる機構は、Aidによって5−メチルシトシンをTに脱アミノ化し、次いで(ミスマッチグリコシラーゼによる)T:Gミスマッチ修復を行うというものである。従って、インヴィヴォでメチル化遺伝子を標的化して脱メチル化を行い、発現させるシステムが構築される(メチル化はほとんどの場合、抑圧的修飾である)。
【0046】
本明細書の実施例で例証するモデルシステムは、対象の標的遺伝子(H19)が、そのプロモーター領域へのUAS配列の付加によって改変されていることに依存している。しかし、これは本発明の態様の必須要件ではなく、シチジンデアミナーゼドメイン、例えばAidΔNESと、特異的又は非特異的DNA結合ドメイン(例えば特異的DNA結合特性を有するジンクフィンガータンパク質)、あるいは単に、非特異的DNA結合を取り易い正味の正電荷を有するタンパク質領域とを融合することで、作用させることができる。
【0047】
部位特異的DNA結合ドメインが存在するので、発達中又は細胞周期中の特定の時点で活性化した遺伝子の特定のサブセットを、脱メチル化の標的とすることが可能となる。例えばOct4、SOX−2又はNanogタンパク質のDNA結合ドメインがAidΔNESと融合した場合、多能性又は幹細胞様表現型の促進に関連した細胞運命決定に関連する遺伝子を対象とする、脱メチル化活性を提供することができる。任意に利用することのできるその他のDNA結合ドメインの例として、Tボックス転写因子由来のもの(Brachyury等)、ステロイドホルモン受容体DNA結合ドメイン(RARおよびRXR DNA結合ドメイン等)を挙げることができる。とはいえ、多能性標識遺伝子Oct4およびNanogの上流領域にはAidに対する推定結合部位がいくつか存在することが示されているので、AidΔNES発現のみ(標的領域なし)で、これら遺伝子のプロモーターを脱メチル化するのに十分である。
【0048】
脱メチル化の非特異的標的化が必要な場合には、シチジンデアミナーゼドメインを正味の正電荷を有するタンパク質領域(例えばヒストンH2A/B、H3および/又はH4由来のヒストン尾部配列を含むもの)と融合させることが好適である。非特異的DNA結合を可能にする特別に作成したペプチド配列を、本発明の本態様に従って、組み込むこともできる。
【0049】
本発明の本態様に従ってDNA結合を組み合わせたシチジンデアミナーゼ活性は、従って、エピジェネティック再プログラム化因子、あるいはインプリンティング抹消因子である。このような因子の同定は、体細胞核移植技術(クローニング)、幹細胞および再生医療、癌治療の特定の方法の向上に重要である。実際のところ、本発明の実施例(後述)によると、AidΔNESタンパク質が接合子中のDNAをインヴィヴォで直接の標的対象とすることで、完全メチル化H19DMRをAid活性に曝露すると、この遺伝子座において効率的かつほぼ完全な脱メチル化が起こることが明らかとなっている。従って、エピジェネティックな再プログラム化が生理的に起こる細胞型において脱メチル化が起こりうるということは、こうした全能性細胞又は多能性細胞は、Gal4−Aidと相互作用して、おそらくは5−メチルシトシンの脱アミノ化の効率を増加させることによって、DNAを脱メチル化させることが可能な因子をさらに有することを示唆している。
【0050】
SCNTにおける主要な問題の1つに、核がレシピエント卵母細胞に移植されると、ドナー細胞エピジェネティックマーク、DNAメチル化などが、非常に低い効率で再プログラム化されるということがある。これは、クローニングが現在のところ非常に効率が悪く、クローン化動物が(生存した場合に)多くの様々な異常を伴うということの主な説明の1つとなっている。クローン化動物の早期発達と生存には、Oct4、Nanog、SOX−2等の多能性遺伝子の発現が間違いなく重要である。これらの遺伝子のプロモーターは通常、遺伝子が不活性な体細胞内でメチル化される。核が卵母細胞に移植された場合、プロモーターの脱メチル化が非効率的であり、多能性遺伝子の発現が不十分となり、その結果、発達が不良となることが示されている。体細胞においてSCNTを行う前に、シチジンデアミナーゼ活性がドナー細胞ゲノム内の特定数の多能性プロモーターを標的とすると、これらの遺伝子座が脱メチル化され、SCNTの成功率が向上する。上記したように、この標的化脱メチル化は、対象の標的遺伝子のプロモーター領域に結合することが知られる転写因子に由来するDNA結合ドメインへの融合を介して実施することができる。nanogのプロモーター領域は、Oct−4、SOX−2、Sp1およびSp3転写因子の結合部位を含むことが知られている。従って、本発明の一態様において、これら転写因子のいずれかに由来するDNA結合ドメインを、例えばAidを媒介するシチジンデアミナーゼ活性と組み合わせて、nanogプロモーターを標的とする脱メチル化因子を得ることができる。
【0051】
体細胞をヒト患者から採取し、シチジンデアミナーゼで処理し、SCNTで幹細胞へ変換を行う、ヒト患者の幹細胞治療の可能性を向上させるためには、上記したSCNT技術の向上が非常に有用であろう。さらに、Aid(およびおそらくは他の再プログラム化因子)で処理することで、体細胞を直接的に再プログラム化し、より一層「幹細胞様」にできる可能性がある。将来的には、SCNTを用いない治療用幹細胞の産生が可能になることが考えられ、従って多くの倫理的問題が回避されると考えられる。
【0052】
本発明用途の別の関連分野として癌治療が挙げられる。全てとはいえないにせよ、ほとんどの癌は、腫瘍抑制遺伝子のメチル化および発現停止などのエピジェネティックな変化を経る。腫瘍抑制遺伝子の脱メチル化によって、癌の表現型を改善させることができる。従って、腫瘍抑制遺伝子をインヴィヴォで脱メチル化の標的対象とする方法は、癌治療の非常に有望な手段である。推定癌幹細胞は、正常な発達プログラムの多くの側面を異常に再生すると考えられるため、本発明は、推定癌幹細胞の標的化を対象とする治療学に特に関連性がある。
【0053】
シチジンデアミナーゼ活性が癌内の対象遺伝子を標的とするには、例えば、シチジンデアミナーゼを、腫瘍抑制因子DNA結合ドメイン(例えばp53タンパク質のジンクフィンガーDNAコア結合ドメイン)へ融合させることを含めることができる。多くの癌において、p53のDNA結合ドメインの突然変異が、形質転換の一因であると考えられている。また、標的p53などの多くの腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域が、癌細胞内でメチル化される。
【0054】
幹細胞生物学と腫瘍学の分野において、特に癌幹細胞理論に関して共通点が増えつつあり、またp53が、ヒトES細胞における分化率の調節に重要な役割を果たしているという認識がある(Qin他、2007年)。多能性に必要な遺伝子メチル化調節に用いられる上記したストラテジーは、癌の成長と進行の制御にも重要であると考えられる。従って本発明はさらに、癌治療の方法および組成物を提供する。
【0055】
本発明の治療の態様は、固形腫瘍とリンパ腺癌、両方の癌治療を対象とすることができる医薬組成物を含む。本発明の組成物において、シチジンデアミナーゼドメインとDNA結合ドメインとを少なくとも含む融合ポリペプチドが提供される。DNA結合ドメインは、標的DNA配列又はDNA結合親和性を有する非特異的ポリペプチド領域のいずれかに対して特異的であってもよい。本発明の治療用組成物は、通常、薬学的に許容される担体を含む。
【0056】
本発明の薬剤は、規制基準に沿って調合され、経口で、経静脈で、局所的に、又は他の標準的な経路を介して投与することができる。薬剤は、錠剤、丸剤、ローション剤、ゲル化剤、液剤、粉末剤、坐剤、懸濁剤、リポソーム、微粒子の形態、又は当分野で公知の他の好適な製剤形態をとることができる。
【0057】
治療目的として、本発明の薬剤を、癌治療の一次形態として用いることができる。このようにして、脱メチル化活性が、治療対象の特定の癌細胞でメチル化されることが知られる腫瘍抑制遺伝子(p53等)のプロモーター内の部位を標的対象として、これらの腫瘍抑制遺伝子の「再活性化」と、その結果起こる標的癌細胞内でのアポトーシス又は細胞周期停止を誘導することが企図される。あるいは本発明の薬剤を、癌に対する従来の化学療法やその他の抗癌薬の補助剤として用いることができる。このようにして、本発明の医薬組成物は、化学療法剤に対する癌細胞に固有の「耐性」を低下させて、従来の医薬法による処置に対する癌細胞の感受性を増加させることができる。
【0058】
本発明の組成物が、癌治療に対して独特のエピジェネティックな手段を提供することは明白である。
【0059】
本発明の分子および医薬組成物の制癌/抗腫瘍作用は、インヴィトロアッセイおよびエキソヴィヴォアッセイを用いて評価することができる。ある好適なアッセイでは、本発明の分子を発現する核酸ベクターが、癌細胞株(例えばHeLa細胞株)内にトランスフェクトされる。適当な対照は、ベクター主鎖のみでトランスフェクトした、又はベクターと後に詳述するように本発明の分子でシチジンデアミナーゼドメインの機能を停止したもの、例えばΔAid2ドメイン参照、とでトランスフェクトした癌細胞株を含むように樹立する。本発明の分子でトランスフェクトした癌細胞株において誘導アポトーシスが見られ、対照細胞においては見られなかった。これは、本発明の分子に制癌作用があることを示唆している。
【0060】
好適なエキソヴィヴォアッセイによって、本発明の分子による、生物内での腫瘍形成の抑制能を評価する。アッセイは、癌細胞株(例えばNIH−3T3細胞)を核酸ベクター(例えば上記したもの)でトランスフェクトするステップ、次いでトランスフェクトした細胞をヌードマウスに皮下注射するステップを含む。ベクター主鎖のみ又は非機能性シチジンデアミナーゼドメインを有する分子を注射したマウスにおいて、注射21日後までに、成長の速い腫瘍が生じると考えられる。本発明の分子でトランスフェクトした細胞を注射して、標的化シチジンデアミナーゼ活性を示し、発現停止した腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域をうまく脱メチル化するようになった動物では、腫瘍が成長しないか、あるいは腫瘍が減少することが期待される。このアッセイを用いて、本発明の分子の様々な標的化又は非標的化変異体をスクリーニングすることができる。例えばエキソヴィヴォアッセイは、様々なDNA結合ドメイン(例えばジンクフィンガー領域)を有するAid(例えばAidΔNES)又はApobec1のシチジンデアミナーゼドメインを含む数種の融合分子のスクリーニングに特に好適である。
【0061】
本発明の特定の態様において、本発明の分子を発現する核酸配列を有するトランスジェニック動物が提供される。トランスジェニック動物の作成に好適な方法は、例えば欧州特許第419621号に記載がある。核酸配列は、外的要因に応答して誘導できるものであってもよい。誘導性プロモーター配列は、本発明の分子を発現する核酸配列と同時に導入される異種性配列であってもよい。あるいは誘導性プロモーター配列は、標的細胞のゲノムに通常存在する内因性配列であってもよい。本発明のトランスジェニック動物は、標的化又は非標的化脱メチル化活性のいずれかを示す分子を発現することができ、従って薬物スクリーニングモデルにおいて、あるいは遺伝子インプリンティング抹消に関連したシステム生物学を研究するシステムとして、非常に有用である。本発明の特定の態様において、本発明のトランスジェニック動物は、AidΔNES領域と非特異的DNA結合ドメインとを含むポリペプチドを発現する、安定的に組み込まれた遺伝子を有するマウスである。組み込まれた遺伝子は、動物を外的要因(例えばステロイドホルモンあるいはタモキシフェン又はTetなどの分子)に曝露するとそれに応答して誘導することのできる異種プロモーターを含む。このように、動物又は動物由来細胞(すなわち培養細胞)において、DNAの広範な脱メチル化を制御可能に誘導することができ、癌の成長と進行に関わる機構の研究に用いることができる。
【0062】
本発明によると、対象とする標的細胞のトランスフェクションに好適な核酸ベクターを使用する。ベクターは企図する用途、例えば本発明の分子の発現および/又は標的細胞のゲノム中への安定的な組み込みに適した従来のプロトコル(Sambrook J. 他、Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に従って設計される。広義において、本発明のベクターは、適当なサイズの他のDNA配列断片を組み込むことができる、線形又は環状のDNA分子を含む。このDNA断片は、本発明の分子をコードする核酸配列を含み、またDNA配列断片にコードされる配列の転写をもたらす追加領域を任意に含むものである。追加領域の例としては、プロモーター、転写終結因子、エンハンサー、内部リボソーム進入部位、非翻訳領域、ポリアデニル化シグナル、選択可能マーカー、複製起点、相同のDNAフランキング領域などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適なベクターの例としては、プラスミド、コスミド、ウイルスベクターおよび酵母人工染色体に由来するものが挙げられる。またベクターは、複数の供給源に由来するDNA配列を含む組換え分子であってもよい。
【0063】
本発明の特定の態様において、発現ベクターは、シチジンデアミナーゼ活性を示すポリペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含み、この第1の配列は少なくとも、DNA結合活性を与えるポリペプチド配列をコードする第2の核酸配列に連結している。第1および第2の配列の「連結」は、これらの2領域が空間的に近接するという意味で直接的であってもよい。本発明の別の態様において、連結は、3次構造、細胞制御、標識化又はタンパク質精製を補助する目的で、1種以上の介在ポリペプチド配列を含むことができるという意味で、それほど直接的でなくてもよい。
【0064】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1
Aidタンパク質が、高度にメチル化した領域、例えば、インプリント領域等をインヴィヴォで標的対象とすることによって、脱メチル化が起こるか否かを調べた。H19遺伝子上流の父系のメチル化領域を選択し、遺伝子導入で発現したGal4融合タンパク質がインヴィヴォで結合するGal4結合部位(UAS)を導入した(Murrell他、2004年)。次いで、普遍型CMVプロモーターからGal4−Aid融合タンパク質を発現するマウスの形質転換系を作製した(図1)。この融合タンパク質から、Aidの核外移行シグナルを除去した。この除去は概してAidを細胞質内に留めておくものである(Barreto他、2003年)。このようにしてGal4−AidΔNES構築物を作成した。
【0066】
H19DMRにおいて、UAS結合部位を有するオスと、Gal4−AidΔNES発現導入遺伝子を有するメスとを交雑し、子孫におけるDNAメチル化を分析した。父系遺伝のDMRは概して非メチル化であった(図2)のに対し、同一のマウスにおける母系対立遺伝子は、予想通りに非メチル化のままであった。UAS配列の存在とH19DMRの父系対立遺伝子に結合するタンパク質の存在に関する対照として、Gal4−myc融合タンパク質を発現する対照トランスジェニックマウスで交雑した、融合タンパク質がDMRにインヴィヴォで位置する、UASを有する父系由来のDMR(Murrell他2004年、およびWO−A−04106550)を分析した。この対立遺伝子は、野生型の父系の対立遺伝子と全く同様に完全にメチル化されたままだった(図2)。
【0067】
Aid、Apobec1および3は、DNA中のシトシンを脱アミノ化して、免疫グロブリン遺伝子およびウイルスにおけるDNAの超変異を引き起こすことができる(Petersen-Mahrt、2005年)。シトシンを脱アミノ化するとウラシルとなり、これは通常、ミスマッチグリコシラーゼUngおよびSmugによって効率的に修復されるが、この修復が免疫グロブリン遺伝子の体細胞超変異の律速となりうる(DiNoia 他、2006年)。同様に、5−メチルシトシンの脱アミノ化は、生じたT:Gミスマッチが同一の細胞周期内で効率的に修復されなかった場合に、変異原性となりうる。Gal4−AidΔNES導入遺伝子を有する子孫由来の42個のH19DMR−UAS父系染色体の配列決定したところ、図2に示すように、約90%のCpGが脱メチル化されていた。全ての配列が野生型であり、よってこの検出レベルでは突然変異は見つからなかった(データ示さず)。従ってT:Gミスマッチ修復は効率的であり、脱アミノ化機構による5−メチルシトシンの脱メチル化の律速ではないと結論付けられる。
【0068】
材料および方法
H19DMR UASマウスとCMV Gal4−mycマウスの作成については、Murrell他(2004年)およびWO−A−04106550に記載がある。Aidの翻訳領域内にGal4DNA結合ドメインを融合して、CMV Gal4−AidΔNES導入遺伝子を構築した。C末端(nt93〜600)の核外移行配列(NES)を有さないAid cDNA(NM_009645)を、適当なプライマーセットを用いてPCRで増幅し、pcDNA3.1−Gal4ベクターのBamHI−EcoRI部位内にクローニングした(Fuks他、2001年)。構築物の精度をDNA配列決定によって確認した(図4参照)。
【0069】
CMV Gal4−AidΔNES DNA断片(図1b参照)を、NruIおよびDraIII酵素によって直線化し、F1×F1マウス接合子に微量注入した。5種陽性初代マウスから、3種の永久遺伝子導入系を樹立した(系統4、5および7と称する)。これらを文献の記載に従って、H19DMR UASマウスと交雑した。新生仔の臓器から標準法でDNAを単離し、Oswald他(2000年)の記載に従って亜硫酸水素にて処理し、以下のアウタープライマーおよびインナープライマーで増幅した。
F1:5’−GTAAGATGTGTGTATTTTTGGAATG−3’および
R1:5’−AATCCCTAACTTCTCCTAATCTCTA−3’;
F2:5’−GTAAGATGTGTGTATTTTTGGAAT−3’および
R2:5’−CAACCAAACTAACTTAACTACAAATC−3’
増幅条件は、95℃で1分間、アニーリング温度を52℃とする1分間、次いで伸長を72℃で1分間を1サイクルとする35サイクルとした。TOPO TAクローニングキット(Invitrogen社)を用い、付属の説明書に従って、PCR産物をPCR2.1内にクローニングした。クローンPCR断片を、M13フォワードプライマーで配列決定した。
【0070】
その結果、タンパク質がインヴィヴォでDNAを直接標的とすることによって、完全にメチル化されたH19DMRがAid活性に曝露されると、効率的かつほぼ完全な脱メチル化が起こることが、はっきりと示された。時として野生型の父系のものとの区別が困難なほぼ完全にメチル化された個々の染色体の形態で、実質的にメチル化されたままのDNA分子も幾つか存在している(約10%、図2)。これは、初期胚においてメチル化の急激な抹消が起こるがあまり完全ではなく、また抹消は後期まで継続しないことを示していると考えられる。実質的に脱メチル化された分子はCTCFと結合し、従って、新たなメチル化から保護されるが、最初に脱メチル化しなかった分子は、維持メチルトランスフェラーゼDnmt1の活性によって、メチル化状態が保持されることとなる。
【0071】
実施例2
上記実施例は、AidのC末端領域の特定の領域を欠失すると、Aidが核局在化するが、シチジンデアミナーゼとしての機能が損なわれないことを実証している。この知見の正しさをさらに確認するために、同一の導入遺伝子の2種の突然変異を作成した。CMV Gal4−ΔAid1は2個のアミノ酸改変を有し、それぞれ触媒機能とDNA結合に影響するように設計し、CMV Gal4−ΔAid2は1個のアミノ酸変化を触媒ドメインに有するものとした(図5a参照)。CMV Gal4−ΔAid1とCMV Gal4−ΔAid2の両方がC末端NESを欠損する。プラスミドCMV Gal4−ΔAid1およびCMV Gal4−ΔAid2を標準的インヴィトロ変異誘発によって、CMV Gal4−AidΔNESから得て、配列決定によって精度を確認した。
【0072】
4種の異なる遺伝子導入系を樹立した。系統のうち2種をCMV Gal4−AidΔNESで(TG4系統およびTG5系統)、3種目をCMV Gal4−ΔAid1で(TG7系統)、4種目をCMV Gal4−ΔAid2で(TG8系統)作成(実施例1で説明)した。全ての系統において、導入遺伝子は、肝臓などの例外はあったものの、E12.5で胚および胎盤内で発現し、卵巣において顕著な出生後組織で発現した(図5b、詳細な議論は後述の実施例3を参照)。RT PCRの結果は、Gal4のDNA結合ドメインに対する抗体を用いるウエスタンブロット法によって確認した(データ示さず)。TG5系統およびTG7系統のトランスジェニックのメスから作成した1細胞の接合子における発現を、免疫蛍光法によっても分析した。Gal4−AidΔNESおよびGal4−ΔAid1タンパク質は、TG5系統およびTG7系統のそれぞれにはっきりと検出され、核外移行シグナルの除去から予想されるように、接合子の前核に局在化していた(図5c)。このことは、卵巣内でmRNAが検出されることと一致して、受精前の卵母細胞内に融合タンパク質が存在しており、融合タンパク質が形成されるにつれて前核内に急速に移動することを示している。
【0073】
実施例3
新生仔の肝臓(導入遺伝子が発現されていない。図5b参照)におけるメチル化の分析を行ったところ、脱メチル化のレベルは同程度(約90%)であった(これに対し、同一のマウスにおける母系対立遺伝子は、予想されるように非メチル化のままだった)。このことは、体細胞組織における導入遺伝子発現が、低メチル化状態の維持に必要ではないことを示している。低メチル化の維持が起こるのは、CTCF等のインスレータータンパク質が脱メチル化した対立遺伝子に結合可能であり、従って脱メチル化対立遺伝子を新たなメチル化から保護する(Schoenherr他、2003年)ためであると考えられる。脱メチル化は、CMV Gal4−AidΔNES遺伝子導入系4および5の全てのトランスジェニック子孫において一貫して観察されたが、Aidの突然変異型を発現する7系統および8系統において脱メチル化は観察されなかった(図6)。UAS配列の存在とH19DMRの父系対立遺伝子への異所的タンパク質結合とについての更なる対照として、CMV Gal4−myc(TG1)を発現する対照トランスジェニックマウスで交雑した、融合タンパク質がDMRにインヴィヴォで位置する、UASを有する父系由来のDMRを分析した。この対立遺伝子も、野生型のものと全く同様に完全にメチル化されたままだった(図6)。
【0074】
脱メチル化が様々な組織と発達段階にわたって均一であったため、本発明の結果は、脱メチル化に重要なのは、接合子中のGal4−AidΔNESタンパク質の存在であることを示唆している。従って、これらの結果は、発達初期段階における又は全能性/多能性前駆細胞におけるゲノムのAid媒介脱メチル化によって、これらの前駆体に由来する細胞において持続した脱メチル化が可能であることを示唆している。この知見は、例えば、DNAのメチル化によって多くの腫瘍抑制遺伝子が発現停止した癌幹細胞において、重要な意味を持っている。本発明によると、前駆多能性癌幹細胞における標的化した脱メチル化によって、下流の癌細胞誘導体における脱メチル化が持続し、従って、これら下流の癌細胞における腫瘍抑制遺伝子の発現を維持することが可能となる。
【0075】
材料および方法
導入遺伝子のRNAおよびタンパク質発現、ならびにIgf2およびH19のRNA発現
RNeasy mini/midi(登録商標)キット(Qiagen社)を用いて、様々な胚組織と出生後組織から全RNAを抽出した。SuperScript(商標)II逆転写酵素(Invitrogen社)を用いてcDNAを合成した。cDNA合成の効率をHprt PCRで評価した。DNAの混入を確実に避けるために、逆転写酵素を用いない反応を常に並行して行った。Gal4−AidΔNES転写物の発現は、内因性Aid転写物の増幅を防ぐために、Gal4領域(s:AAGTGCGCCAAGTGTCTGAA)およびAid領域(as:CAGCCAGACTTGTTGCGAAG)内のプライマーを用いてRT−PCRによって分析した。Gal4−AidΔNESタンパク質発現は、トランスジェニックマウスの様々な組織から抽出した総タンパク質を用いてウエスタンブロット法により確認した。以下簡単に説明すると、標準的プロトコルに従って組織抽出物を調製し、タンパク質濃度をブラッドフォード分析により調べた。タンパク質試料を10%SDSポリアクリルアミドゲル上で泳動させ、Hybond−P膜(Amersham社)上に電気ブロットし、1:200希釈の抗Gal4一次抗体(Santa Cruz社)と1:2000希釈の抗チューブリン抗体(Abeam(登録商標))とでブロックし保温した。次いで、膜を1:2000/1:10000希釈の抗ウサギ/ヤギ免疫グロブリン二次抗体(Amersham社)とともに保温した。検出には、高感度化学発光システム(ECL、Amersham社)を用いた。Igf2(Mm00439565_g1)、H19(Mm01156721_g1)、およびGapdh(Mm99999915_g1)転写物の発現レベルを、Applied Biosystems社販売のTaqMan(登録商標)プローブによって調べた。ABI PRISM7700サーマルサイクラー(Applied Biosystems社)を用いて3通りの定量リアルタイムPCR実験を行った。すなわち、Quiagen社の取扱指示書に従って、相対定量、増幅効率、相対定量の比較法を行った。
【0076】
受精卵母細胞のGal4染色
受精卵母細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSで15分間固定し、酸性タイロード液(Sigma社)で帯(zonae)を除去し、卵母細胞を、0.2%トリトンX100を含むPBSで室温にて1時間、透過処理した。1%BSA(BS)を含む0.05%Tween−20含有PBS中で4℃での一晩ブロッキングの後、卵母細胞を1:30(BS)希釈抗Gal4ウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz社、sc−577)とともに室温にて3時間保温した。検出は、二次抗体としてヤギα−ウサギIgG−Alexa(Molecular Probes)を用いて行った。DNAをDAPI(5μg/ml)で染色し、全試料をSlowFade(Molecular Probes)にセットした。画像収集は「Plan−Apochromat」63×/1.40DIC油浸レンズを備えるLSM510共焦点レーザー走査顕微鏡(Carl Zeiss社)を用いて行った。最終画像は、連続図のZスタック投影により得た(画素サイズ800×800、zステップ0.46μm)。
【0077】
実施例4
H19UAS標的配列のいずれかの側で脱メチル化が起きた程度を調べた。UAS配列の3’側では、G反復領域を含む少なくとも600bp下流までおよぶ、父系対立遺伝子の効率的な脱メチル化が観察された。5’側では、第3のCTCF結合部位付近で脱メチル化レベルが顕著に低下したが、さらに上流で脱メチル化したCpGが存在する証拠があった。従って、GAL4部位特異的DNA結合ドメインとの関連があるにもかかわらず、Gal4−AidΔNESタンパク質の脱メチル化活性は、大きな領域に及んでいる。DNA結合ドメインの選択が、AidΔNES活性レベルの制御に寄与していると予想される。
【0078】
本発明の特定の態様を詳細に説明したが、一例の説明に過ぎず、例証のみを目的とするものである。上記した態様は、添付した特許請求の範囲を限定することを企図していない。請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を様々に置換、変更、修正することが可能であることを本発明者らは意図している。
【0079】
参照文献
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Barreto V, Reina-San-Martin B, Ramiro AR, McBride KM, Nussenzweig MC. C-terminal deletion of AID uncouples class switch recombination from somatic hypermutation and gene conversion MoI Cell. 2003 Aug;12(2):501-8.
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【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】融合タンパク質Gal4−Aidを産生する導入遺伝子の構造と、インヴィヴォでトランスジェニックに標的化するストラテジーの概略図を示す。a)Aidタンパク質の構造、核外移行シグナルを除去したC末端欠失(を有するAidタンパク質変異体(AidΔNES)、およびCMVプロモーターからGal4−AidΔNES欠失融合タンパク質を発現する導入遺伝子b)H19上流の差次的にメチル化された領域(DMR)と、UAS配列の挿入位置を示す(組換えストラテジーの結果として生じる1個のloxP部位も示す)。この遺伝子型が、CMV−Gal4−AidΔNES母とH19DMR UAS父との子孫におけるCMV−Gal4−AidΔNES導入遺伝子と組み合わさると、Gal4−AidΔNES融合タンパク質が、父系のメチル化した対立遺伝子(黒丸ピン)上のUAS配列に結合する。亜硫酸水素塩配列決定により分析した領域は、染色体の上方にBi1およびBi2として示す。
【図2】実験交雑と対照交雑におけるH19DMRのメチル化分析を示す。図1に示した領域の亜硫酸水素塩分析は、CMV Gal4−mycのメスとH19DMR UASのオスとの交雑から得た子孫(対照)、CMV Gal4−AidΔNESのメスとH19DMR UASのオスとの交雑から得た子孫の、新生仔の肝臓について行った。黒丸はメチル化したCpG、白丸は非メチル化のCpGを示す。父系H19DMR UASは、対照交雑におけるメチル化レベルが高いが、実施例のものではメチル化レベルが実質的に低い。母系染色体は両方の交雑においてメチル化されていない。
【図3】AidΔNESの配列を示す(配列番号1)。
【図4】CMV−GAL4−AidΔNESの配列を示す。
【図5】(a)Gal4DNA結合ドメインを、核外移行シグナル(NES)を含むC末端を除去したAid cDNAに融合した。Aidのアミノ酸に通し番号を付した。野生型Aid cDNAに加えて、D89GおよびC147R、ならびにE58Gのアミノ酸変化を含むAid cDNAの突然変異体2種を用いた。融合cDNAをCMVプロモーターベクター内に挿入して3種の導入遺伝子構築物を得て、NruIおよびDraIIIでプラスミド主鎖から切り取り、接合子に微量注入し、形質転換系TG4および5(CMV Gal4−AidΔNES。ここでは単に「CMV Gal4−Aid」として示す)、TG7(CMV Gal4−ΔAid1)およびTG8(CMV Gal4−ΔAid2)を得た。(b)胚組織および新生仔組織におけるTG5、TG7およびTG8系統の、RT PCRによる発現分析。(c)接合子(トランスジェニック母とH19DMR−UAS父の交雑)におけるTG5およびTG7系統の、Gal4DNA結合ドメイン抗体を用いた免疫蛍光法による発現分析。融合タンパク質の大部分が前核に局在化している。
【図6】H19DMR−UASにおけるメチル化を示す。UAS配列を含む父系対立遺伝子(図面左側)と、UAS配列を含まない母系対立遺伝子(図面右側)について、亜硫酸水素塩配列決定により分析した。Gal4トランスジェニックのメスをH19DMR−UASホモ接合のオスと交雑し、導入遺伝子について陽性の子孫の、E12.5での胚(E)および胎盤(P)における、あるいは新生仔の肝臓(L)における、メチル化を分析した。黒丸はメチル化されたCpG、白丸は非メチル化CpGを示す。DMR内の第4のCTCF結合部位を示してある。Gal4−myc又はGal4−Aid突然変異体を発現する系統において父系DMRは高度にメチル化されたままであるが、Gal4−AidΔNESを発現する系統(ここでは単にGal4−Aidとして示す)において、実質的に脱メチル化されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインとDNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む、真核細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできる単離ポリペプチド分子。
【請求項2】
核移行シグナルをさらに有する請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記核移行シグナルは、前記第1のドメイン内に含まれる請求項2に記載の分子。
【請求項4】
前記第1のドメインは、活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(Aid)のシチジンデアミナーゼドメインを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の分子。
【請求項5】
前記第1のドメインは、配列番号1に示すAidΔNES配列を含む請求項4に記載の分子。
【請求項6】
前記第1のドメインは、Apobec1のシチジンデアミナーゼドメインを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の分子。
【請求項7】
前記第2のドメインは、非配列特異的DNA結合ドメインを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の分子。
【請求項8】
前記第2のドメインは、配列特異的DNA結合ドメインを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の分子。
【請求項9】
前記配列特異的DNA結合ドメインは、ジンクフィンガードメイン、ロイシンジッパードメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックスドメイン、ステロイド受容体DNA結合ドメイン、およびホメオドメインからなる群より選ばれるドメインを含む請求項8に記載の分子。
【請求項10】
前記配列特異的DNA結合ドメインは、発現が多能性表現型に関連する1種以上の遺伝子の、プロモーター領域に存在する結合配列を標的とする請求項8又は9に記載の分子。
【請求項11】
前記配列特異的DNA結合ドメインは、発現が腫瘍抑制表現型に関連する1種以上の遺伝子の、プロモーター領域に存在する結合配列を標的とすることを特徴とする請求項8又は9に記載の分子。
【請求項12】
前記細胞は、哺乳類細胞である請求項1〜11のいずれか一項に記載の分子。
【請求項13】
前記細胞は、ヒト細胞である請求項12に記載の分子。
【請求項14】
前記細胞は、多能性細胞である請求項13に記載の分子。
【請求項15】
前記細胞は、体細胞である請求項13に記載の分子。
【請求項16】
前記細胞は、癌細胞である請求項13に記載の分子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリペプチド分子をコードする単離核酸分子。
【請求項18】
真核細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできるポリペプチド分子の、トランスフェクションおよび前記細胞内での発現用の発現ベクターであって、前記ベクターは、シチジンデアミナーゼ活性を示すポリペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含むコード配列を含み、前記第1の配列は、少なくとも、DNA結合活性を与えるポリペプチド配列をコードする第2の核酸配列に連結し、前記第1および第2の核酸配列は、操作可能にプロモーター配列に連結されてある発現ベクター。
【請求項19】
1種以上の選択マーカー配列および/又はレポーター遺伝子配列をさらに含む請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項20】
前記第1および第2の核酸配列は、1種以上の介在配列によって隔てられている請求項18又は19に記載の発現ベクター。
【請求項21】
前記プロモーター配列は、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターのいずれかから選択されることを特徴とする請求項18〜20のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項22】
前記誘導性プロモーターは、Tet制御性プロモーター、タモキシフェン制御性プロモーター、およびステロイドホルモン制御性プロモーターからなる群より選ばれる請求項21に記載の発現ベクター。
【請求項23】
核移行シグナルをコードする配列をさらに含む請求項18〜22のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項24】
請求項17に記載の核酸分子を含むことを特徴とする請求項18〜23のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項25】
プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、および人工染色体からなる群より選ばれる請求項18〜24のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項26】
前記細胞は、哺乳類細胞である請求項18〜25のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項27】
前記細胞は、ヒト細胞である請求項26に記載の発現ベクター。
【請求項28】
前記細胞は、多能性細胞である請求項26又は27に記載の発現ベクター。
【請求項29】
前記細胞は、体細胞である請求項26又は27に記載の発現ベクター。
【請求項30】
前記細胞は、癌細胞である請求項26又は27に記載の発現ベクター。
【請求項31】
真核細胞のトランスフェクション用核酸ベクターであって、前記ベクターは、前記哺乳類細胞内でのメチル化ゲノムDNAの脱メチル化を惹起することのできる分子をコードする配列を含み、かつ、シチジンデアミナーゼ活性を示すポリペプチドをコードする第1の核酸配列とそれに連結したDNA結合活性を示すポリペプチド配列をコードする第2の核酸配列とを含み、前記第1および第2の配列は、操作可能にプロモーター配列に連結している核酸ベクター。
【請求項32】
請求項17に記載の核酸分子を含む請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
前記第1および第2の核酸配列は、1種以上の介在配列によって隔てられている請求項31又は32に記載のベクター。
【請求項34】
プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、および人工染色体からなる群より選ばれる請求項31〜33のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項35】
標的細胞を、請求項18〜30のいずれか一項に記載の発現ベクターでトランスフェクトするステップと、必要に応じて、前記標的細胞内で前記発現ベクターの発現を惹起するステップとを含む、標的細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起する方法。
【請求項36】
前記DNA配列の脱メチル化は、前記標的細胞のゲノム内のエピジェネティックインなプリンティングを除去する目的で行う請求項35に記載の方法。
【請求項37】
標的細胞を請求項31〜34のいずれか一項に記載の核酸ベクターでトランスフェクトするステップと、必要に応じて、前記標的細胞内で前記発現ベクターの発現を惹起するステップとを含む、標的細胞内でのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起する方法。
【請求項38】
前記DNA配列の脱メチル化は、前記標的細胞のゲノム内のエピジェネティックなインプリンティングを除去する目的で行う請求項37に記載の方法。
【請求項39】
体細胞のゲノム内に位置する少なくとも1つのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできるポリペプチド分子であって、シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインとDNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む分子を、体細胞核ドナー内で発現するステップを含む、体細胞核移植(SCNT)術を行う方法。
【請求項40】
癌細胞のゲノム内に位置する少なくとも1つのメチル化DNA配列の脱メチル化を惹起することのできるポリペプチド分子であって、シチジンデアミナーゼ活性を示す第1のドメインとDNA結合活性を与える第2のドメインとを少なくとも含む分子を、患者の少なくとも1個の癌細胞内で発現するステップを含む、患者体内に存在する癌を処置する方法。
【請求項41】
非ヒト動物のゲノム内に安定的に組み込まれた請求項17に記載の核酸分子を含むトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項42】
前記核酸分子の発現が、異種性の誘導性プロモーターに制御される請求項41に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項43】
前記核酸分子の発現が、内因性の誘導性プロモーターに制御される請求項41に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項44】
前記非ヒト動物がマウスである請求項41〜43のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項45】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の分子と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−532053(P2009−532053A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503661(P2009−503661)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001304
【国際公開番号】WO2007/128982
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508300987)セルセントリック・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】