説明

イーサネット光アクセス装置およびイーサネット保守冗長方法

【課題】 光アクセス区間においてイーサネットレイヤで運用可能な保守機能を実現し、そのイーサネットレイヤの保守機能を用いてアクセス区間を冗長構成する。
【解決手段】 光回線を介して接続されるOSUおよびONUをイーサネット伝送路として提供するイーサネット光アクセス装置において、OSUは、ユーザフレーム、ユーザのイーサネットOAMフレームおよびネットワークのイーサネットOAMフレームを通過させる構成であり、IPよりも下位のイーサネットレイヤでシステムの状態を把握可能な保守機能と、複数のイーサネット伝送路のうち選択された一方のイーサネット伝送路を利用可能に設定する冗長機能を備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回線を介して接続される光加入者線終端装置(OSU:Optical Subscriber Unit)および光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)との間の光アクセス区間において、イーサネット(登録商標)レイヤで運用可能な保守機能を備えたイーサネット光アクセス装置、イーサネットレイヤの保守機能を用いて光アクセス区間を冗長構成するイーサネット保守冗長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセス区間を接続するアクセス装置では、装置や回線の状態を把握するためにIPレイヤにおけるSNMP(Simple network management protocol)等のプロトコルを用いた保守機能があった。また、複数ルートの適時利用による信頼性を確保するために、IPパケットを用いたルーティングプロトコルによる経路選択や、上位レイヤで動作するアプリケーションを別途搭載することによる冗長機能があった(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3825674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のアクセス区間を接続するアクセス装置では、当該システムがIPレイヤの保守機能および冗長機能を利用するため、アクセス区間の利用者に対しては、通信上制約のある制限されたIPレイヤおよびおよび該当レイヤより上位レイヤを提供するにすぎなかった。また、カプセリングやタグ技術等により仮想的に下位レイヤであるイーサネットを提供するものもあるが、レイヤ2の利用が制限されるとともに、利用回線帯域の低下を余儀なくされていた。
【0004】
また、異なる通信経路および方式により制御信号のやりとりを行うために、複雑な仕組みや機構が必要であった。
【0005】
アクセス区間のみの保守機能(監視・警報機能)としては、フレームやセル、または信号のロスなどの検出によるものがあったが、アクセス区間だけで利用可能な専用の保守機能であり、広域網への適用が困難であった。この広域網への適用可能な保守機能としては、前記のようなIPレイヤの保守機能を利用する方法があったが、保守機能で利用するレイヤよりも低位なレイヤでの広域網サービスの実現には大きな制約があり、保守機能を備えたイーサネットレイヤの広域網サービスを提供することはできなかった。
【0006】
本発明は、光アクセス区間においてイーサネットレイヤで運用可能な保守機能を実現することができるイーサネット光アクセス装置、そのイーサネットレイヤの保守機能を用いてアクセス区間を冗長構成することができるイーサネット保守冗長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、光回線を介して接続されるOSUおよびONUをイーサネット伝送路として提供するイーサネット光アクセス装置において、OSUは、ユーザフレーム、ユーザのイーサネットOAMフレームおよびネットワークのイーサネットOAMフレームを通過させる構成であり、IPよりも下位のイーサネットレイヤでシステムの状態を把握可能な保守機能と、複数のイーサネット伝送路のうち選択された一方のイーサネット伝送路を利用可能に設定する冗長機能を備えた構成である。
【0008】
保守機能は、定期的な通信フレームおよび随時生成する通信フレームを送信し、受信した通信フレームに対応した動作を行うことにより状態の把握を行う構成である。また、保守機能は、受信した通信フレームの受信事実、フレーム内容、複数の通信フレーム受信に伴う連続的な受信態様に応じて、自装置の管理状態を変更し、また受信した通信フレームの転送や破棄を行い、新たな通信フレームの生成および送信制御を行う構成である。
【0009】
第2の発明は、光回線を介して接続されるOSUおよびONUをイーサネット伝送路として提供し、イーサネットレイヤの保守機能を用いて光アクセス区間を冗長構成するイーサネット保守冗長方法において、OSUは、ユーザフレーム、ユーザのイーサネットOAMフレームおよびネットワークのイーサネットOAMフレームを通過させる構成であり、IPよりも下位のイーサネットレイヤでシステムの状態を把握可能な保守機能ステップと、複数のイーサネット伝送路のうち選択された一方のイーサネット伝送路を利用可能に設定する冗長機能ステップとを有する。
【0010】
保守機能ステップは、定期的な通信フレームおよび随時生成する通信フレームを送信し、受信した通信フレームに対応した動作を行うことにより状態の把握を行う。また、保守機能ステップは、受信した通信フレームの受信事実、フレーム内容、複数の通信フレーム受信に伴う連続的な受信態様に応じて、自装置の管理状態を変更し、また受信した通信フレームの転送や破棄を行い、新たな通信フレームの生成および送信制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、IP網において、保守機能および冗長機能をイーサネットレイヤによって実現することにより、高度な保守性と冗長性を確保すると同時に、アクセスシステム利用者にとって、イーサネットレイヤおよびIPレイヤ等の上位レイヤを制限なく利用することが可能となる。IPレイヤのアドレスおよびプロトコルはもちろん、イーサネットレイヤにおいても通常一般ユーザが利用するプロトコルおよびサービスを基本的に制限なく利用することが可能となる。さらに、自由度の高いイーサネットフレーム通信を確保し、IPレイヤでは完全に自由なパケット通信を実現し、一般ユーザの利用範囲を広げることができる。
【0012】
また、一般ユーザのフレームについて、利用回線帯域の圧迫を招いていたカプセリングやタギングが不要となり、そのまま通信を透過可能となり、利用回線帯域の確保が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明のイーサネット光アクセス装置の実施形態を示す。
図において、本発明のイーサネット光アクセス装置であるOSU10およびONU20は光回線31を介して接続され、イーサネットOAM(Operation Administration and Management)機能を備える。OSU10にはネットワーク側の上位ノード(SW)32が接続され、ONU20にユーザ端末33が接続される。
【0014】
OSU10は、上位ノード(SW)32に接続するSNIポート11と、光回線31に接続するOSUポート14を備え、SNIポート11とOSUポート14との間に、SNIポート側から順に、回線制御部(省略)、フレーム制御部12、回線制御部(省略)、光/電気変換部13が接続される。フレーム制御部12にはイーサネットOAM処理部15、切替制御部16および監視制御・警報処理部17が接続される。また、イーサネットOAM処理部15、切替制御部16および監視制御・警報処理部17は相互に接続される。ONU20も同様に、ユーザ端末33に接続するUNIポート21と、光回線31に接続するONUポート24を備え、その間に回線制御部(省略)、フレーム制御部22、回線制御部(省略)、光/電気変換部23を接続し、フレーム制御部22にイーサネットOAM処理部25、切替制御部26および監視制御・警報処理部27が接続される。
【0015】
ここで、OSU10は、レイヤ2でユーザフレームおよびユーザのイーサネットOAMフレームと、ネットワークのイーサネットOAMフレームの通過を許可する。すなわち、ネットワークのイーサネットOAMフレームは、ネットワーク側の上位ノード(SW)とOSU10のイーサネットOAM処理部15との間、ネットワーク側の上位ノード(SW)とONU20のイーサネットOAM処理部25との間、OSU10のイーサネットOAM処理部15とONU20のイーサネットOAM処理部25との間で送受信される。また、OSU10の監視制御・警報処理部17とONU20の監視制御・警報処理部27との間で、制御用イーサネットフレームが送受信される。
【0016】
光アクセス区間に適用するイーサネットOAMは、以下に示すような各機能を有する。 CC(Continuity Check)機能は、OSU10のSNIポート11とOSUポート14およびONU20のONUポート24から 0.1秒または1秒または10秒または60秒ごとに接続性確認フレームを送信するとともに、対向装置でこの接続性確認フレームの受信状況を検査し、送信周期に対して一定周期のフレーム未受信を通信経路異常または対向装置の未接続またはパワーオフまたはサイレント故障の異常とみなし、また未受信が継続している状態から接続性確認フレームを一定周期で受信した場合に異常状態の回復とみなし、通信経路および対向装置の正常動作状態を常に把握する機能である。
【0017】
また、異常とみなした状態について、接続性確認フレームの状態情報を変更して送信することにより、対向装置に異常検出を伝達する(RDI機能)。また、対向装置から状態情報を変更された接続性確認フレームを受信した場合に、対向装置が異常を検知し、自装置から対向装置への通信方向に異常があることを把握する。
【0018】
なお、対向装置は論理的に接続されていればよく、複数のイーサネットレイヤの装置を中継した接続形態にも適応可能である。さらに、CC機能は、論理的に接続されている複数の対向装置と接続性確認を行うことが可能である。
【0019】
AIS機能は、ONU20のUNIポート21のリンクダウンを検出した場合に、リンクダウン検出警報を警報転送フレームとして、接続性確認する対向装置へ1秒周期または60秒で送信を継続し、その警報転送フレームを受信した対向装置は、ONU20のUNIポート21のリンクダウン状態を把握し、また警報転送フレームを受信しなくなった場合にリンクダウン状態の回復を把握する機能である。
【0020】
LB(Loopback)機能は、装置設置時など随時の接続確認として、ループバックフレームを送信し、対向装置でループバックフレームを受信したときに受信完了フレームを返信し、この受信完了フレームを受信することにより接続確認を行う機能である。
【0021】
LM(Loss Monitor)機能は、随時のフレーム到達品質確認として、ロスモニタフレームを2フレーム以上送信し、送信フレーム数と対向装置における受信フレーム数を比較することによりフレーム到達品質を確認する機能である。
【0022】
DM(Delay Monitor)機能は、随時のフレーム遅延品質確認として、ディレイモニタフレームを1フレーム以上送信し、対向装置でディレイモニタフレームを受信したときに応答フレームを返信し、この応答フレームを受信するまでの往復時間を測定することにより、フレーム遅延品質を確認する機能である。
【0023】
また、保守機能は、ONU20のONUポート24と、OSU10のSNIポート11に接続される上位ノード(SW)32との間で、イーサネットレイヤでCC機能他を実現可能とし、OSU10はそのCC機能等に利用されるイーサネットOAMフレームをネットワークの保守フレームと認識してフレーム透過(転送)する。
【0024】
制御用イーサネットフレームは、OSU10とONU20との間で周期的に送信および受信を行うとともに、異常または警報検出、または設定変更時には直ちに送信し、ONU20は自装置状態をOSU10に送信し、OSU10はONU設定情報をONU20に送信する。
【0025】
このようなイーサネットOAMを利用し、光アクセス区間(OSU10とONU20との間)を二重化した場合に、光アクセス区間の故障等の検出を契機として、運用する系統を切り替える切替制御部16,26により運用の継続を行うことができる。すなわち、冗長構成の場合、一方のOSUと他方のOSUは、フレーム通信経路とは異なる筐体のバックワイヤーボードを経由して、互いの状態情報を把握し、一方のOSUを運用系に他方のOSUを非運用系として制御する。そして、各OSUの切替制御部16は、対向接続のONUをそれぞれ運用系および非運用系とし、運用系のOSU、ONUおよびその経路に異常を検出した場合に、そのOSUおよびONUを非運用系とし、他方のOSUおよびONUを運用系に切り替える制御を行う。
【0026】
図2は、OSU10のフレーム制御部12およびイーサネットOAM処理部15の処理手順を示す。ここで、保守機能の管理端点をMEP(MEG(Maintenance Entity Group) End Point) 、接続性確認フレームをCCMフレームとする。
【0027】
フレーム制御部12は、受信フレームについてイーサタイプの値がイーサネットOAMの値か否かを判定し(S1)、イーサネットOAMの値以外であればユーザフレームとして処理(透過)する(S2)。イーサネットOAMフレームであれば、MEGレベルが自MEPより高いか否かを判定し(S3)、自MEPより高ければイーサネットOAMフレームを透過する(S4)。自MEPのMEGレベル以下のイーサネットOAMフレームであればイーサネットOAM処理部15に出力し、宛先MACアドレスが設定されたマルチキャストアドレスか、または自ポートのMACアドレスであるか否かを判定し(S5)、不明な宛先アドレスであればMEPで廃棄処理する(S6)。マルチキャストアドレスまたは自ポートのMACアドレスであれば、当該イーサネットOAMフレームの受信処理(詳しくは図3に示す)を行う(S7)。ここでは、MEGレベルが自MEPのMEGレベルと同一の場合は受信処理(終端)し、MEGレベルが自MEPのMEGレベルより低い場合は、CCMフレーム以外は廃棄処理する。
【0028】
図3は、イーサネットOAM処理部15の処理手順を示す。
イーサネットOAM処理部15は、イーサネットOAMフレームについてCCMフレーム、AISフレーム、LBフレーム、LMフレーム、DMフレームを識別し、それぞれに対応する処理を行う。CCMフレーム受信であれば(S11)、CCタイマをリセットしてRDIフラグを確認し(S12,S13)、RDIフラグを検出しなければ正常性確保とする(S14)。RDIフラグを検出すれば、RDI検出して異常検出および警報処理を行う(S15,S16)。一方、CCタイマ(S17) は、CCMフレーム受信によりリセットされるものの、タイムアウトした場合(S18)には、LOC検出して異常検出および警報処理を行う(S19,S16)。
【0029】
AISフレーム受信であれば(S20)、AIS検出して異常検出および警報処理を行う(S21,S16)。LBフレーム受信であれば(S22)、前述のループバック機能処理を行い(S23)、LMフレーム受信であれば(S24)、前述のロスモニタ機能処理を行い(S25)、DMフレーム受信であれば(S26)、前述のディレイモニタ機能処理を行う(S27)。
【0030】
図4は、OSU10のフレーム制御部12におけるイーサネットOAMフレームの処理例を示す。
フレーム制御部12では、ユーザフレームとイーサネットOAMフレームを入力すると、イーサネットOAMフレームを優先的に挿入して出力する。すなわち、イーサネットOAMフレームを送信後にユーザフレームを送信する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のイーサネット光アクセス装置の実施形態を示す図。
【図2】フレーム制御部12およびイーサネットOAM処理部15の処理手順を示すフローチャート。
【図3】イーサネットOAM処理部15の処理手順を示すフローチャート。
【図4】フレーム制御部12におけるOAMフレーム優先処理例を説明する図。
【符号の説明】
【0032】
10 光加入者線終端装置(OSU)
11 SNIポート
12 フレーム制御部
13 光/電気変換部(O/E)
14 OSUポート
15 イーサネットOAM処理部
16 切替制御部
17 監視制御・警報処理部
20 光ネットワーク終端装置(ONU)
21 UNIポート
22 フレーム制御部
23 光/電気変換部(O/E)
24 ONUポート
25 イーサネットOAM処理部
26 切替制御部
27 監視制御・警報処理部
31 光回線
32 上位ノード(SW)
33 ユーザ端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光回線を介して接続される光加入者線終端装置(OSU)および光ネットワーク終端装置(ONU)をイーサネット伝送路として提供するイーサネット光アクセス装置において、
前記OSUは、ユーザフレーム、ユーザのイーサネットOAMフレームおよびネットワークのイーサネットOAMフレームを通過させる構成であり、IPよりも下位のイーサネットレイヤでシステムの状態を把握可能な保守機能と、複数のイーサネット伝送路のうち選択された一方のイーサネット伝送路を利用可能に設定する冗長機能を備えた構成である
ことを特徴とするイーサネット光アクセス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイーサネット光アクセス装置において、
前記保守機能は、定期的な通信フレームおよび随時生成する通信フレームを送信し、受信した通信フレームに対応した動作を行うことにより状態の把握を行う構成である
ことを特徴とするイーサネット光アクセス装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイーサネット光アクセス装置において、
前記保守機能は、受信した前記通信フレームの受信事実、フレーム内容、複数の通信フレーム受信に伴う連続的な受信態様に応じて、自装置の管理状態を変更し、また受信した通信フレームの転送や破棄を行い、新たな通信フレームの生成および送信制御を行う構成である
ことを特徴とするイーサネット光アクセス装置。
【請求項4】
光回線を介して接続される光加入者線終端装置(OSU)および光ネットワーク終端装置(ONU)をイーサネット伝送路として提供し、イーサネットレイヤの保守機能を用いて光アクセス区間を冗長構成するイーサネット保守冗長方法において、
前記OSUは、ユーザフレーム、ユーザのイーサネットOAMフレームおよびネットワークのイーサネットOAMフレームを通過させる構成であり、
IPよりも下位のイーサネットレイヤでシステムの状態を把握可能な保守機能ステップと、
複数のイーサネット伝送路のうち選択された一方のイーサネット伝送路を利用可能に設定する冗長機能ステップと
を有することを特徴とするイーサネット保守冗長方法。
【請求項5】
請求項4に記載のイーサネット保守冗長方法において、
前記保守機能ステップは、定期的な通信フレームおよび随時生成する通信フレームを送信し、受信した通信フレームに対応した動作を行うことにより状態の把握を行う
ことを特徴とするイーサネット保守冗長方法。
【請求項6】
請求項5に記載のイーサネット保守冗長方法において、
前記保守機能ステップは、受信した前記通信フレームの受信事実、フレーム内容、複数の通信フレーム受信に伴う連続的な受信態様に応じて、自装置の管理状態を変更し、また受信した通信フレームの転送や破棄を行い、新たな通信フレームの生成および送信制御を行う
ことを特徴とするイーサネット保守冗長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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