説明

ウィロソーム様粒子

本発明は、ウィロソーム様粒子の生産に関する。本発明は、ウィロソーム様粒子を生産するための方法であって、短鎖リン脂質を含む溶液と被膜ウィルスを接触させて、前記ウィルスのウィルスエンベロープの可溶化を可能にすることを含み、前記溶液から短鎖リン脂質を除去して、機能的に再構築されたウィルスエンベロープの形成を可能にすることをさらに含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィロソーム(virosome)様粒子の生産に関する。
【背景技術】
【0002】
膜含有(被膜)ウィルスに対するワクチンは、殺された若しくは生きている弱毒化されたウィルス、又はそれらのタンパク質の調製物(例えば、表面抗体ウィルスワクチン(split virus vaccines)又はサブユニット調製物(subunit preparations))からほとんどなる。殺されたウィルス及びタンパク質調製物を用いたワクチン接種は、生きている弱毒化されたウィルスを用いたワクチン接種よりも安全である。なぜならば、後者は、変異し又は野生型ウィルスに戻りうるからである。表面精製ワクチン(subunit vaccines)は、それらが、ウィルスからでなく、細胞によって発現されたウィルスのタンパク質から調製されることができて、生産をより安全にし且つ生きているウィルスによりワクチン調製物を汚染する危険を除去するという明らかな有利点を有する。しかしながら、生きているウィルスの注射は一般に強い免疫応答を誘発して、ウィルスによる将来の感染に対して保護する一方、タンパク質調製物はそうすることができないかもしれない。これはなぜならば、生きている弱毒化されたウィルスは身体の細胞に感染し、そして或る程度までそれらの細胞によって複製され、その後、該感染した細胞及びウィルスは、免疫システムの細胞によって検出されて、免疫応答を引き起こすからである。生きている又は殺されたウィルスはまた、免疫システムの専門家された食細胞、例えば樹状細胞によって取り上げられることができ、そして免疫システムの他の細胞に提示されて、免疫応答を引き起こす。これら食細胞は身体をパトロールして、いつもウィルスのサイズの粒子を取り込むが、それらは表面抗体ウィルスの精製されたタンパク質又は表面精製ワクチンを効率的に取り上げない[1-2]。
【0003】
物理的又は化学的手段によってサブユニット調製物への免疫応答を強化するための多数の試みが行われた。これら実験から明らかになる最も重要な原理は、ウィルスタンパク質の複数のコピーが、粒子中で組み合わせられる必要があるということであり、これは食細胞によって効率的に取り上げられるだろう。これら粒子は、ウィロソーム様粒子、全ウィロソーム、免疫刺激複合体(ISCOM)、プロテオソーム調製物又は微粒子担体上のタンパク質でありえる。しばしば、これら粒子はまた、免疫システムを刺激することを意図される化学物質(アジュバントと呼ばれる)を含み、それは食細胞又は免疫システムのエフェクター細胞上の特定の受容体に向けられる。
【0004】
例えば、ISCOMは、アジュバント、例えばQuillaia sopanaria Molinaの樹皮から通常単離されるQuil A(商標)のようなサポニンと複合化されたウィルスタンパク質を含む籠様粒子である。抗原及び脂質(例えば、コレステロール)を混合されると、これらアジュバントは30〜40nmの間の典型的なISCOM構造を形成して、抗原を免疫システムの食細胞による取り込みのために十分に粒子状にし、一方アジュバントとして同時に作用する。しかしながら、ISCOMは多くの動物用ワクチンにおいて使用されており、そしてウィルスの膜タンパク質の免疫原性を強く高めるけれども、ヒトのためのそのようなワクチンの開発は、それら毒性及び混合物の複雑さについての懸念によって禁止されてきた[3]。粒子のより最近のタイプ(プロテオソーム(米国特許出願第0010053368号)[4])は、細菌(例えば、髄膜炎菌(meningococci))の精製された外膜タンパク質と混合された抗原タンパク質(例えば、インフルエンザ赤血球凝集素又はヒト免疫不全ウィルスエンベロープ糖タンパク質)の複合物からなる。これら複数の細菌のタンパク質がアジュバントとして作用しうる一方、複数のタンパク質、脂質及び他の物質からなるそのような混合物の複雑な性質は、規制問題を示すだろう。その上、免疫応答は、溶液中に存在する全てのタンパク質及び他の抗原に向けられ、ウィルスのタンパク質に対してあまり特異的に向けられていない。
【0005】
従来技術において開発されたワクチン組成物の特に有用な種類は、「ウィロソーム」として知られ、それは被膜ウィルスから得られるウィルスの糖タンパク質を含む脂質二重層である。ワクチン接種目的のために、特にインフルエンザに対するワクチン接種のために、そのようなウィロソームを使用する概念が、Almeida等によって紹介された[5]。ウィロソーム(又はウィロソーム様粒子、これは、粒子の正確なサイズ及び形状がそれらの粒子的な性質よりも重要でないこと並びに機能的な及び生物学的に関連した膜融合活性が保持されることを考慮して)は一般に、界面活性剤で被膜ウィルスからの膜タンパク質及び脂質を抽出し、引き続き該抽出された脂質及びウィルスの膜タンパク質からこの界面活性剤を除去して、ウィルスの核心又はヌクレオカプシドを囲む特徴的な脂質二重層(エンベロープ)を事実上、再構築する又は再形成することによって生成される[5]。
【0006】
インフルエンザウィルス及びセムリキ森林熱ウィルス(SFV)は、被膜ウィルスの2つの古典的な例である。これらウィルスによる細胞感染の第一段階は、受容体仲介エンドサイトーシスによる全体(intact)ウィルス粒子の取り込みである。エンドソームの区画内部で、条件は、膜のATP依存プロトンポンプの活性の故に少し酸性である。これら条件(pH 5〜6)下では、ウィルスのスパイクタンパク質が、ウィルスの膜融合活性の引き金を引くことを生じる立体配座の変化を受ける。ウィルス膜とエンドソームのそれとの引き続く融合は、ウィルスのゲノムの細胞質浸透を生じ、そして該細胞は感染したと考えられうる[6]。
【0007】
被膜ウィルスは一般に、細胞への結合及び細胞の侵入のために要求される特定の膜タンパク質(「スパイク」)を有する。例えば、インフルエンザウィルスは、ジスルフィド結合された2個のサブユニット(HA1及びHA2)から構成され且つウィルス膜において三量体を形成するところの赤血球凝集素(HA)の約500コピーを有する[7]。HA1サブユニットは、スパイクの頂部ドメインを形成し、且つウィルスをその原形質膜受容体に結合する原因となるポケット、シアリル化された脂質(ガングリオシド)及びタンパク質を有する。スパイクの幹領域(stem region)は、3個のHA2サブユニットから主に構成される。各HA2サブユニットは、N末端融合ペプチド(高度に保存された無極の配列)を含む。少し酸性のpHへ暴露することによって生じた立体配座変化により、これらペプチドが、ターゲット膜と相互に作用して、融合をもたらす[6]。
【0008】
SFV及びインフルエンザは共に、受容体仲介エンドサイトーシス及び融合を通じて酸性エンドソーム内から細胞に入る一方、SFV及びインフルエンザウィルスにより仲介された膜融合の分子機構は全く異なる。各セムリキ森林熱ビリオンは80個のスパイクを含み、それは夫々3個のE1/E2ヘテロダイマーから構成される[8]。これら2つの膜タンパク質は、ウィルスの生活環の間に別々の機能を有する。すなわち、E2がウィルス受容体結合に関係する一方、E1はウィルス膜及びエンドソーム膜の融合(merging)を仲介する。酸性化後、E1/E2複合体は分離し、そしてE1は再編成されてホモ三量体を形成し、そしてインフルエンザHAは良く定義されたN末端融合ペプチドを有する一方、Elは有しない。両方のウィルス間の他の顕著な相違は、HA仲介された融合がターゲット膜脂質組成にあまり敏感でないということである[9]。SFVの融合は、ターゲット膜におけるコレステロール[11-12]及びスフィンゴ脂質[13-17]の存在のために厳密な要件を有する。
【0009】
再構築によって得られたウィロソーム様粒子(本明細書ではウィロソームとも呼ばれる)の本質的な特徴は、それらが免疫システムの食細胞によって効率的に取り込まれるサイズの粒子であり、そしてそれらは、天然のウィルスのエンベロープの組成、表面構造及び機能的活性をそっくりにまねることである。免疫応答を誘導する際に特に活性であるウィロソームは、天然のウィルスのエンベロープタンパク質の適切な機能、例えば膜融合、受容体結合及び他の活性を維持したことが見出された。受容体結合及び膜融合活性の保存は、前記ウィロソームの完全な免疫原特性の発現に必須である。
【0010】
ウィロソームの形成のために使用される工程では、ウィルス膜(エンベロープ)が界面活性剤除去の間に再形成される。この工程は、天然のウィルスのエンベロープの機能的再構築に必要であると考えられるが、制御することがとても困難である。再構築を生じる現在の界面活性剤除去のプロトコルは、低い臨界ミセル濃度(cmc)を有する界面活性剤にほとんど基づき、そしてそのような界面活性剤は特に、透析又は限外濾過によって除去されうる比較的高いcmcを有する界面活性剤と対照的に、除去することが困難である。しかしながら、後者のタイプの界面活性剤は、インフルエンザウィルス赤血球凝集素を含むウィルスの膜タンパク質を一般に適切に再構築せず、一方では空の膜の形成を優性に導き、そして他方ではタンパク質が互いに凝集することが見出された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以前に、我々は、インフルエンザウィルスHAの再構築のための方法を開発した[17,18]。この方法は、非イオン性界面活性剤 オクタエチレングリコール-n-ドデシルモノエーテル(C12E8)でウィルス膜を可溶化すること、そして超遠心分離法によってウィルスのヌクレオカプシドを沈降後、疎水性樹脂(Bio-Beads SM-2)によって上清から界面活性剤を除去することに基づく。このようにして形成された小胞は、ウィロソームであると確認された。該アプローチは、脂質二重層又はウィロソームの水性内部のいずれかへのリポーター分子の導入を可能にする。この目的のために、我々は、ウィロソームと赤血球ゴースト[18-20]又はターゲットリポソーム[21]との間の膜融合を定量的に測定するために、蛍光の脂質 ピレンでラベル付けされたホスファチジルコリン(pyrPC)を使用し、これは再構築の間にウィロソーム膜に入れられた。その上、我々は、水溶性のリポーター分子、ゲロニン[22]及びジフテリア毒素のA鎖[18,23]をウィロソーム内にカプセル化し、そしてこれら物質をターゲット細胞サイトソルに運んだ。これら研究及び国際公開公報WO 92/19267号における後の研究は、C12E8仲介された再構築後、インフルエンザウィルスHAがそのオリジナルの活性を本質的に保持したことを示した。しかしながら、そのようなウィロソームは強力な、保護的免疫応答(例えば、国際公開公報WO 88/08718号及び国際公開公報WO 92/19267号)を導き出すことができるが、産業規模で機能的に再構築されたウィルスのエンベロープの効率的な生産を可能にする代替の方法が要求されることが十分に認識されている。しかしながら、疎水性樹脂によって上清から界面活性剤を除去することは、十分にスケールアップすることがかなり困難である。
【0012】
生物学的に関連した融合活性の保持は、ウィルスのエンベロープの機能的再構築のための唯一の厳密な基準である。これまでに、低い臨界ミセル濃度(cmc)を有するC12E8及びトリトンX-100の様な界面活性剤の使用は、ウィルスのエンベロープの機能的再構築のための選択の方法を示すように見える[18]。しかしながら、低cmc界面活性剤の使用は、それらが透析によって容易に除去されることができないという不利点を有する。この理由のために、多くの再構築手順が、相対的に高いcmcを有する界面活性剤の使用に依存する。このカテゴリーにおいて広く使用されている界面活性剤は、約20〜25 mMのcmcを有する、非イオン性のn-オクチル-β-D-グルコピラノシド又はオクチルグルコシドである。しかしながら、ほとんどの着手(例えば、我々の着手及び国際公開公報WO 92/19267号)において、オクチルグルコシド可溶化されたウィルスからHAを再構築するための試みは様々な状態で不成功であり、そして本質的に融合誘導性粒子が得られなかった[17、18]。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ウィロソーム様粒子を生産するための方法であって、短鎖リン脂質を含む溶液と被膜ウィルスを接触させて、前記ウィルスのウィルスエンベロープの可溶化を可能にすることを含み、前記溶液から短鎖リン脂質を除去して、機能的に再構築されたウィルスエンベロープの形成を可能にすることをさらに含む方法を提供する。該方法は、透析によって十分に除去可能である短鎖レシチン(ホスファチジルコリン)の使用に基づく。再構築されたウィルスエンベロープ(ウィロソーム)の膜融合活性は、インタクトなウィルスのpH依存性融合特徴に及びC12E8を用いて調製されたウィロソームのそれに十分に対応する。穏やかな透析により仲介されたリン脂質除去による、ウィロソーム調製のこの新規な方法は、融合原担体システムとしてのウィロソームの更なる開発に特に役に立つであろう。様々な被膜ウィルス、例えば、レトロウィルス科、例えばヒト免疫不全ウィルス(HIV);風疹ウィルス;パラミクソウィルス科、例えばパラインフルエンザウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、呼吸器合胞体ウィルス、ヒトメタ肺炎ウィルス;フラビウィルス科、例えば黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、C型肝炎ウィルス(HCV)、日本脳炎ウィルス(JEV)、ダニ媒介脳炎、セントルイス脳炎又は西ナイルウィルス;ヘルペスウィルス科、例えば単純疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス、エプスタイン-バールウィルス;ブニヤウィルス科;アレナウィルス科;ハンタウィルス科、例えばハンターン;コロナウィルス科;パポバウィルス科、例えばヒトパピローマウィルス;ラブドウィルス科、例えば狂犬病ウィルス;コロナウィルス科、例えばヒトコロナウィルス;アルファウィルス科;アルテリウィルス科;フィロウィルス科、例えばエボラウィルス;アレナウィルス科;ポックスウィルス科、例えば天然痘ウィルス、又はアフリカブタ熱ウィルスのうちのいずれかを、本明細書で提供された方法において使用することが可能である。詳細な説明において、我々は、インフルエンザウィルス及びSFVによって例示されたように、被膜ウィルスの主な膜タンパク質が効率的に可溶化され、そして短鎖リン脂質が0.1mMよりも高い臨界ミセル濃度(CMC)を有する限り、短鎖リン脂質、例えば1,2-ジヘプタノイル-sn-ホスファチジルコリン(DHPC)又は1, 2-ジカプロイル-sn-ホスファチジルコリン (DCPC)で再構築されることを示した。該再構築されたウィルスエンベロープの膜融合活性は、インタクトなウィルスのpH依存性融合特徴に十分に対応し、短鎖リン脂質がエンベロープタンパク質、例えばHA及びE1/E2を機能的に再構築することを示す。これらウィロソーム様粒子はまた、我々の実験室において以前に開発された方法によってC12E8を用いて調製されたウィロソームに匹敵可能であるように見える。本明細書で示される膜融合活性は、膜フルオロフォア(fluorophore)pyrPCの脂質混合に基づいた。このフルオロフォアは、再構築中にウィロソームの膜内に取り込まれた;他の両親媒性の分子は、同じ様式で取り込まれてよい。
【0014】
好ましい実施態様では、該方法はさらに、短鎖リン脂質によって可溶化されたウィルスからウィルスのヌクレオカプシドを除去すること(例えば、遠心分離によって)を含む。前記短鎖リン脂質は好ましくは、透析又はろ過によって除去される。前記リン脂質は、例えば0.1 mMよりも大きい、好ましくは1 mMよりも大きい臨界ミセル濃度(cmc)を有する短鎖ホスファチジルコリンであることが好ましい。本発明に従う好ましい短鎖リン脂質は、1,2-ジヘプタノイル-sn-ホスファチジルコリン(DHPC)又は1,2-ジカプロイル-sn-ホスファチジルコリンである。DHPCは構造的にリン脂質である。しかし7個の炭素原子のその短い脂肪アシル鎖は、それを他のリン脂質よりもより水溶性にする。脂肪アシル鎖の長さが減少するにつれて、そのような分子のcmcが増加する[24]。すなわち、ジノナノイル-ホスファチジルコリンが約0.03 mMのcmcを有する一方、ジカプリロイル-ホスファチジルコリン、DHPC及びDCPCのcmc値は、夫々約0.3、2及び14 mMである。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、前記ウィロソーム様粒子へ前記ウィルスに由来しない分子を添加することをさらに含む方法を提供する。そのような分子は、ウィロソーム様粒子を取り込む細胞に運ばれてよく、且つ例えば、好ましくは病原体、例えばウィルス、細菌若しくは寄生生物又は腫瘍特異的分子から得られる核酸、脂質又はタンパク質でありうる。前記分子が両親媒性である場合、それは一般に、ウィロソーム様粒子の膜の文脈内で示されるだろう。本発明はまた、特に医薬組成物例えばワクチンの生産のために、本明細書で提供されるような方法によって入手可能なウィロソーム様粒子を提供する。そのようなワクチンは、腸管外又は粘膜での適用に適している。本発明に従うウィロソーム様粒子を含む医薬組成物はまた、核酸又はタンパク質のための運搬手段として使用されうる。穏やかな透析により仲介されたリン脂質除去によるウィロソーム調製のこの新規な方法は、融合誘導担体システムとしてウィロソーム様粒子を更に使用するために特に重要である。
【0016】
ここで、我々は、インフルエンザウィルス及びSFVのスパイクが、透析によって、短鎖リン脂質、例えばDHPC又はDCPCで効率的に可溶化され、そして再構築されうることを示す。我々の結果は、我々がウィルスのエンベロープタンパク質、例えばHA及びE1/Eの再構築のための新規な方法を見つけたこと、及び該再構築されたウィルスのエンベロープの膜融合活性がインタクトなウィルスの融合特徴に十分に対応したことを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1 インフルエンザウィロソーム様粒子のショ糖勾配分析。
実施例1に記載されたように、インフルエンザウィロソーム様粒子の超遠心分離勾配分析後のリン脂質(●)及びタンパク質(○)濃度。
【0018】
図2 インフルエンザウィロソーム様粒子の電子顕微鏡写真。
インフルエンザウィロソーム様粒子のネガティブ染色(モリブデン酸アンモニウム)電子顕微鏡写真;棒 100 nm。
【0019】
図3 セムリキ森林熱ウィルスのDCPCにより仲介された可溶化。
ウィルスはDCPCと混合され、そして超遠心分離に付された。分離されなかったウィルス(V)、上清(S)及びペレット(P)の一部が、SDSの存在においてポリアクリルアミドゲル電気泳動に付された。E1及びE2スパイクタンパク質並びにカプシドタンパク質(C)に対応するタンパク質バンドが示される。
【0020】
図4 赤血球ターゲット膜と、インタクトなインフルエンザウィルス(●)との、及びDCPC再構築されたインフルエンザウィルスエンベロープ(○)との融合の速度。
R18ラベル付けされたウィルス又はpyrPCラベル付けされたDCPC再構築されたエンベロープが、赤血球ゴーストと、37℃、中性pHで混合された。時間0で、該培地は、示されたpH値に酸性化された。融合が、R18のデクエンチング又はピレンエキシマー蛍光の減少を追跡することによって連続的に監視された。融合の速度は、カーブの初期部分への接線の傾斜を決定することによって融合曲線から得られた。
【0021】
図5 ターゲットリポソームとセムリキ森林熱DCPCウィロソームとの融合。
再構築されたエンベロープが、37℃、中性pH(pH 7.4)で、ターゲットリポソームと混合された。時間0で、該培地は、示されたpH値に酸性化された。融合が、ピレンエキシマー蛍光の減少を追跡することによって連続的に監視された。
【0022】
本発明は、ウィロソーム様粒子生産のアップスケールを可能にする代替的な方法を提供する。ウィルス膜を可溶化するために界面活性剤を使用すること及びウィルス調製物のエンベロープを再形成するために疎水性樹脂で界面活性剤除去を使用する代わりに、短鎖リン脂質が、これら工程において使用されて、産業規模で、機能的に再構築されたウィロソーム様粒子の生産を容易にする。
【0023】
ウィロソーム様粒子は、短鎖リン脂質によってウィルス膜を可溶化すること、そしてウィルスの膜成分を精製すること、引き続き短鎖リン脂質を除去することによって生成される。短鎖リン脂質は、12未満の炭素原子を夫々有するアシル鎖を含む。本発明の1つの実施態様では、前記短鎖リン脂質がホスファチジルコリンである。本発明のより好ましい観点では、前記短鎖リン脂質が、1,2-ジヘプタノイル-sn-ホスファチジルコリン(DHPC)、又は1,2-ジカプロイル-sn-ホスファチジルコリン(DCPC)である。本発明の他の好ましい観点では、前記短鎖リン脂質が、合成的に又は半合成的に生成される。これは、自然に生じる(すなわち、中鎖から長鎖までの)リン脂質の様々な異なる組成物を使用する古典的な界面活性剤透析方法によって仙台ウィロソームを調製することを報告するKim Hong Sung等と好対照である(J. Biochemistry and Molecular Biology、第35巻(5)、2002年、第459〜464頁)。例えば、Kim Hong Sung等によって使用されるリン脂質は、主にC16及びC18脂肪アシル鎖を有する卵PCと、2個のC18:1脂肪アシル鎖を有するジオレオイル-PEであった。
【0024】
本発明の重要な観点は、ウィロソーム様粒子の膜中に存在しない場合に十分な免疫応答を通常誘発しないだろう。抗原でのワクチン接種のために、本発明のウィロソーム様粒子が適用されうることである。治療された対象における十分な免疫応答は、該抗原を含む病原有機体による後の感染に対して保護する応答である。本発明に従うウィロソームの一部分である該抗原は、ウィロソーム粒子の脂質二分子膜内に埋め込まれる疎水部分を有するべきである。多くの病原体、例えばウィルス、細菌、酵母及び寄生生物は、宿主における免疫応答を誘発するタンパク質を、それらのカプシド、細胞壁又は細胞膜中に有する。疎水性の要素を有し且つ本発明に従うウィロソームの一部分であるために適しているところの抗原の例は、病原体の膜(ウィルスの場合、エンベロープとも呼ばれる)中に存在するタンパク質である。それ故に、1つの実施態様では、本発明のウィロソーム中に存在する抗原は、膜タンパク質全体である。好ましい実施態様では、前記抗原が、ウィルス、寄生生物、細菌又は腫瘍細胞から得られる。特に好ましくは、前記抗原が、インフルエンザウィルス又はアルファウィルス、例えばセムリキ森林熱ウィルス(SFV)から得られるところのウィロソーム様粒子である。本発明のウィロソーム様粒子において使用されうるインフルエンザウィルスからのタンパク質は、好ましくは赤血球凝集素(HA)タンパク質、ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質及び/又はM2タンパク質の単独または組み合わせであり、そして適用されうるSFVからのそれらは、スパイクタンパク質E1及びE2、好ましくはこれらの組み合わせである。
【0025】
本発明に従うウィロソーム様粒子の形成に適用され且つ使用されうるところのウィルスは、ウィルスの全ての種類から得られることができ、そのようなウィルスの制限されない例は次の通りである:レトロウィルス科、例えばヒト免疫不全ウィルス(HIV);風疹ウィルス;パラミクソウィルス科、例えばパラインフルエンザウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、呼吸器合胞体ウィルス、ヒトメタ肺炎ウィルス;フラビウィルス科、例えば黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、C型肝炎ウィルス(HCV)、日本脳炎ウィルス(JEV)、ダニ媒介脳炎、セントルイス脳炎又は西ナイルウィルス;ヘルペスウィルス科、例えば単純疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス、エプスタイン-バールウィルス;ブニヤウィルス科;アレナウィルス科;ハンタウィルス科、例えばハンターン;コロナウィルス科;パポバウィルス科、例えばヒトパピローマウィルス;ラブドウィルス科、例えば狂犬病ウィルス;コロナウィルス科、例えばヒトコロナウィルス;アルファウィルス科;アルテリウィルス科;フィロウィルス科、例えばエボラウィルス;アレナウィルス科;ポックスウィルス科、例えば天然痘ウィルス及びアフリカブタ熱ウィルス。
【0026】
ワクチン接種は、病原体に対する予防的保護のために又は病原体感染に続く疾病の治療のために一般に適用されるけれども、当業者はまた、腫瘍治療のための幾つかのワクチンの適用及びワクチンの治療的使用に気付く。その上、ますます多くの腫瘍特異的タンパク質が、ヒトによってターゲットされうる適切な実体又はヒト化抗体であることを見つけられた。そのような腫瘍特異的タンパク質はまた、本発明の範囲内にある。多くの腫瘍特異的抗原が、従来技術で知られている。それ故に、1つの好ましい実施態様では、本発明は、腫瘍特異的抗原を含むウィロソーム様粒子を提供する。
【0027】
別の観点では、本発明は、ウィロソームを生産するための方法であって、下記工程の一部又は全てを含む方法を提供する:i)短連鎖リン脂質中にウィルスを溶かすこと、ii)ウィルスの遺伝的物質及びコア蛋白質を除去すること、及びiii)膜の再形成を可能にする条件下で該短連鎖リン脂質を除去すること。好ましくは、本発明によって開示されたウィロソームを生成するための方法はまた、前記ウィロソームを精製する工程を含む。
【0028】
本発明は、本発明に従うウィロソーム及び医薬的に許容される担体を含む医薬調製物を提供する。デリバリーのための医薬的に許容される担体は、水、緩衝された食塩水、グリセリン及びポリソルベート20によって例示され、及び中性のpH環境を提供するために緩衝化されてよい。
【0029】
その上、本発明は、治療、予防又は診断において、本発明に従うウィロソーム又は本発明に従う医薬調製物を使用することを提供する。好ましくは、本発明に従う医薬調製物は、腸管外デリバリーのために使用される。別の好ましい実施態様では、本発明に従う医薬調製物が経口デリバリーのために使用され、そして、さらに別の実施態様では、本発明に従う医薬調製物が鼻腔内デリバリーのために使用される。これら抗原を提示するウィロソーム様粒子によって免疫システムを刺激することは、免疫システムの細胞によるそれらの特異的認識、それらの特定の特徴、タンパク質の提示、及び隠されたエピトープのカバーを外すことの組み合わせの故でありうる。
【0030】
本明細書で使用される「抗原」によって、少なくとも1つの親水性部分及び少なくとも1つの疎水性部分を有し且つそれが運ばれる宿主において免疫応答を誘発しうるところのタンパク質、ペプチド又はポリペプチドが意味される。そのような膜タンパク質全体の制限されない例は、腫瘍細胞、細菌、寄生生物、酵母及びウィルスのエンベロープからの膜タンパク質である。使用されうるウィルスの膜タンパク質は、広範囲のウィルスから得られうる。これらのウィルスは、以下を含むが、それに制限されない:レトロウィルス科、例えばヒト免疫不全ウィルス(HIV);風疹ウィルス;パラミクソウィルス科、例えばパラインフルエンザウィルス、麻疹、流行性耳下腺炎、呼吸器合胞体ウィルス、ヒトメタ肺炎ウィルス;フラビウィルス科、例えば黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、C型肝炎ウィルス(HCV)、日本脳炎ウィルス(JEV)、ダニ媒介脳炎、セントルイス脳炎又は西ナイルウィルス;ヘルペスウィルス科、例えば単純疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス、エプスタイン-バールウィルス;ブニヤウィルス科;アレナウィルス科;ハンタウィルス科、例えばハンターン;コロナウィルス科;パポバウィルス科、例えばヒトパピローマウィルス;ラブドウィルス科、例えば狂犬病ウィルス;コロナウィルス科、例えばヒトコロナウィルス;アルファウィルス科;アルテリウィルス科;フィロウィルス科、例えばエボラウィルス;アレナウィルス科;ポックスウィルス科、例えば天然痘ウィルス、及びアフリカブタ熱ウィルス。
実施例
【実施例1】
【0031】
インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質を含むウィロソーム様粒子の調製。
インフルエンザウィルスは、当業者に知られている方法を使用して、世界インフルエンザセンター又はアメリカンタイプティッシュカルチュアコレクション(ATCC、ロックヴィル、メリーランド州)から取得されたウィルスを成長することによって、例えばふ化卵上で又は培養細胞、例えばPER.C6(商標)若しくはMDCK細胞内でウィルスを成長することによって生産された。その後、該ウィルスは密度勾配超遠心法によって精製され、次に、確立された手順に従い、ベータプロピオラクトン又はホルムアルデヒドで処理することによって不活性化されうる。不活性化はこの手順のために要求されず、そして免疫応答に影響しうる。該ウィルスは、0.15 mM NaCl及び0.1 mM EDTAを含む5.0 mM Hepes (pH 7.4)(HNE-バッファ)中に、沈降されたウィルスを再懸濁すること、そしてこの調製物を、HNEにおいて直線的(10〜60%(w/v))ショ糖グラジエント頂上にロードすること、4℃で36時間、90,000 x gで遠心分離することによってさらに精製されうる。ウィルスはプールされることができ、そして分割した各部分が−80℃で保存されうる。この追加的な精製工程は、ウィロソーム様粒子の形成のために必要ではなかった。
【0032】
ジカプロイル-ホスファチジルコリン(DCPC)による再構築のために、ホルムアルデヒド不活性化された卵成長インフルエンザウィルス、X-47株(0.25μmolリン脂質)が、超遠心分離によって最初に沈降され、次に、25 mMのDCPCを含む0.55 mlのHNE-バッファで再懸濁された。0℃で、30分間インキュベーション後、ウィルス膜が可溶化され、そしてヌクレオカプシドが、4℃、100,000 x gで、20分間の遠心分離によって除去された。上清が、再構築のために使用された。
【0033】
ウィルス膜の可溶化の効率が、上清の分析によって決定された。上清中に存在する可溶性タンパク質の量が、ウィルス中に存在した赤血球凝集素(HA)タンパク質(主な膜タンパク質)の量に緊密に対応することを見つけられた。
【0034】
再構築のために、該上清が、10,000 MWカットオフ透析カセット(「Slide-A-Lyzer」、Pierce Chemical Company、ロックフォード、イリノイ州、米国)に移され、そして4℃で、6時間、0.50 LのHNE-バッファに対して、次に4℃で、15時間、0.50 Lの新鮮なHNE-バッファに対して透析された。
【0035】
再構築された物質の粒子特徴を分析するために、透析された物質のサンプルが、HNEバッファにおいて10〜50%(w/v)ショ糖の直線濃度グラジエント上にロードされ、そして100,000 x g、4℃で、24時間、遠心分離された。遠心分離後に、該グラジエントは分画され、そして該分画中のタンパク質及びリン脂質の濃度が決定された。リン脂質及びタンパク質の最大の部分が、約40%及び45%ショ糖を夫々含む2つの画分中でグラジエントの底において見つけられた。45%ショ糖画分は、グラジエントにおいて回収されたリン脂質の24%とタンパク質の38%とを含み、そして40%のショ糖画分は、リン脂質の32%と回収されたタンパク質の46%とを含んだ。残余のリン脂質及びタンパク質は、グラジエントの残りに見つけられた。リン脂質及びタンパク質の両方の主な部分がグラジエントの底に共に移動した事実は、これらが密接に関連付けられることを示す。従来、タンパク質凝集体及び脂質小胞の混合物が類似のグラジエントにおいて共に移動しないことが観察されていた。これら観察は、ウィロソーム様粒子が形成されたことを示す。
【0036】
ウィロソームの形成が、図2に示されるように、電子顕微鏡検査によって確認された。スパイクが、ウィルス膜から飛び出ているのがはっきり見られうる。
【実施例2】
【0037】
セムリキ森林熱ウィルススパイク糖タンパク質を含むウィロソーム様粒子の調製。
ATCCのような出所から入手されたセムリキ森林熱ウィルスは、従来技術で知られている方法[23]に従い、従来技術で知られている細胞系統、例えばベビーハムスター腎臓細胞(BHK-21、ATCCから)上で生産された。これら細胞は、10% トリプトースフォスフェートブロス、2.0 mM L-グルタミン及び10% ウシ胎児血清(全ては、Gib-coBRL Life Technologies Inc.、ペーズリー、英国から)を補われたグラスゴー(Glasgow)最小必須培地内で成長された。該培地は、低速度遠心分離(1,000 x g)によって、10分間、4℃で清澄され、そして該ウィルスが、100,000 x gでの超遠心分離によって、清澄された細胞培養培地からペレット化された。該ウィルスは、0.15 mM NaCl及び0.1 mM EDTAを含む5.0 mM Hepes (pH 7.4)(HNE-バッファ)において、沈降されたウィルスを再懸濁すること、そしてこの調製物を、HNEにおいて直線的(10〜60%(w/v))ショ糖グラジエント頂上にロードすること、4℃で36時間、90,000 x gで遠心分離することによってさらに精製された。ウィルスはプールされ、そして分割されて−80℃で保存された。この追加的な精製工程は、ウィロソーム様粒子の形成のために必要でなかったし、且つ免疫応答に影響を与えない。
【0038】
ジカプロイル-ホスファチジルコリン(DCPC)による再構築のために、ウィルス(0.25μmolのリン脂質)が、超遠心分離によって最初に沈降され、次に、100 mM DCPCを含む0.50 mlのHNE-バッファで再懸濁された。0℃で、30分間インキュベーション後、ウィルス膜が可溶化され、そしてヌクレオカプシドが、4℃、100,000 x gで、20分間の遠心分離によって除去された。ウィルスの効率的な可溶化が、図3に示されるSDS-PAGEクロマトグラフィーによって、上清及びペレットを分析することによって示された。図に示されるように、ウィルスサンプルにおいて、E1、E2及びカプシド(C)を示すタンパク質バンドが、等しく強かった。超遠心分離後に回収された上清において、2つの主なバンドはE1及びE2を示し、一方ペレット中に回収された主なタンパク質はCだった。
【0039】
ウィロソーム様粒子を形成するために、該上清が、10,000 MWカットオフ透析カセット(「Slide-A-Lyzer」、PierceChemical Company、ロックフォード、イリノイ州、米国)に移され、そして4℃で、6時間、0.50 LのHNE-バッファに対して、次に4℃で、15時間、0.50 Lの新鮮なHNE-バッファに対して透析された。
【実施例3】
【0040】
インフルエンザウィロソームの膜融合活性
ウィロソーム調製物の膜融合活性の分析のために、インフルエンザウィルスのX-47株(0.25μmolリン脂質)が、超遠心分離法によって最初に沈降され、次に、25 mM DCPCを含む0.55 mlのHNE-バッファで再懸濁された。0℃で30分間インキュベーション後、ウィルス膜が可溶化され、そしてヌクレオカプシドが、4℃、100,000 x gで、20分間の遠心分離によって除去された。次に、上清が、10 nmolの(1-ピレンデカノイル)-sn-ホスファチジルコリン(pyrPC)(Molecular Probes、ライデン、オランダ国)の乾燥した薄膜に添加された。次に、4℃で20分間のインキュベーション後、ウィロソーム様粒子が上記されたように透析によって、この混合物から形成された。膜融合の測定のために、該生じたウィロソーム様粒子が、ヒト赤血球細胞からの、以前に記載された[25]ように調製された赤血球ゴーストと、37℃、中性のpH (pH 7.4)で混合された。時間0で、培地は、示されたように酸性化された。融合は、ピレンエキシマー蛍光の減少を追跡することよって連続的に監視された。インフルエンザウィルスの融合活性と比較するために、ウィルスサンプルが、以前に記載されたようにオクタデシルローダミン(R18)でラベル付けされた[27]。図4に示された結果は、ウィロソームとウィルスの融合が同じ急なpH依存を示し、且つ同等の速度で生じることを明らかに示す。それ故に、ウィルスのスパイクの融合活性が保存された。
【実施例4】
【0041】
SFVウィロソームの膜融合活性
融合活性の測定のためのウィロソームを調製するために、SFV(0.25μmolリン脂質)が、超遠心分離法によって最初に沈降され、次に、100 mM DCPCを含む0.50 mlのHNE-バッファで再懸濁された。0℃で30分間インキュベーション後、ウィルス膜が可溶化され、そしてヌクレオカプシドが、4℃、100,000 x gで、20分間の遠心分離によって除去された。次に、上清が、7.5 nmolの(1-ピレンデカノイル)-sn-ホスファチジルコリン(pyrPC)(Molecular Probes、ライデン、オランダ国)の乾燥した薄膜に添加された。次に、4℃で20分間のインキュベーション後、上清が、10,000 MWカットオフ透析カセット(「Slide-A-Lyzer」、Pierce Chemical Company、ロックフォード、イリノイ州、米国)に移され、そして4℃で6時間、0.50 LのHNE-バッファに対して、次に4℃で15時間、0.50 Lの新鮮なHNE-バッファに対して透析された。融合アッセイにおけるターゲットとして使用されたリポソームは、凍結-及び-解凍/押し出し手順によって、卵ホスファチジルコリン(PC)、卵PCから導かれたホスファチジルエタノールアミン(PE)、ウシの脳SPM及びコレステロール(分子比 1: 1: 1: 1.5)から調製された[44]。図5に示されたように、膜融合の測定のために、該生じたウィロソーム様粒子は、37℃、中性pH 7.4でリポソームと混合された。時間0で、培地は、示されたように酸性化された。融合は、ピレンエキシマー蛍光の減少を追跡することによって連続的に監視された。該結果は、リポソームによるウィロソームの効率的且つ迅速な低pH依存性融合が生じたことを示した。
【実施例5】
【0042】
ウィロソーム様粒子を含むインフルエンザ赤血球凝集素を用いたマウスの予防接種
短鎖リン脂質方法によって再構築されたウィロソーム様粒子の腸管外適用によってマウスを予防接種することが、慣用的なインフルエンザ表面精製ワクチン処方で予防接種をすることと比較された。Balb/Cマウス(グループ当たり5匹の動物)が、不活性化されたインフルエンザウィルス(X-47 H3N2株)から得られた、5μgのHAを含むHNEバッファ調製物における30〜50マイクロリットルのウィロソーム様調製物の筋肉内注射によって、第0日及び第14日に免疫接種された。血液が、21日目に集められた。血清サンプルは、分析まで、液体窒素で凍結され、そして−20℃で保管された。赤血球凝集抑制(HI)滴定量は、標準の方法論に従いモルモット赤血球を使用して決定された。結果が、表1に記載される。ウィロソーム様粒子がサブユニット抗原(subunit antigen)よりもより有力なウィルス中和抗体応答を誘発することが示される。
【0043】
【表1】

【0044】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】インフルエンザウィロソーム様粒子のショ糖グラジエント分析を示すグラフ。
【図2】インフルエンザウィロソーム様粒子の電子顕微鏡写真。
【図3】セムリキ森林熱ウィルスのDCPCにより仲介される可溶化を示す電気泳動のバンド。
【図4】赤血球ターゲット膜と、インタクトなインフルエンザウィルス(●)の、及びDCPC再構築されたインフルエンザウィルスエンベロープ(○)の融合の速度のグラフ。
【図5】ターゲットリポソームと、セムリキ森林熱DCPCウィロソームの融合曲線グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィロソーム様粒子を生産するための方法であって、短鎖リン脂質を含む溶液と被膜ウィルスを接触させて、前記ウィルスのウィルスエンベロープの可溶化を可能にすることを含み、前記溶液から短鎖リン脂質を除去して、機能的に再構築されたウィルスエンベロープの形成を可能にすることをさらに含む方法。
【請求項2】
前記溶液からウィルスのヌクレオカプシドを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン脂質が透析又はろ過によって除去される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記リン脂質がホスファチジルコリンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リン脂質が、0.1 mMよりも大きい臨界ミセル濃度(cmc)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リン脂質が、1,2-ジヘプタノイル-sn-ホスファチジルコリン又は1,2-ジカプロイル-sn-ホスファチジルコリンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウィルスが、インフルエンザウィルス又はアルファウィルスを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウィルスから得られない分子を前記ウィロソーム様粒子に添加することをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分子が脂質又はタンパク質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分子が両親媒性である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記分子が病原体に由来する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記病原体が、ウィルス、細菌又は寄生生物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分子が腫瘍特異的抗原を含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によって入手可能なウィロソーム様粒子。
【請求項15】
医薬組成物の生産のために、請求項14に記載のウィロソーム様粒子を用いる方法。
【請求項16】
前記医薬組成物がワクチンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物が腸管外での又は粘膜での適用のためのものである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14に記載のウィロソーム様粒子を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−517582(P2006−517582A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502746(P2006−502746)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000101
【国際公開番号】WO2004/071492
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505305813)ベステウィル ホールディング ビー.ブイ. (2)
【Fターム(参考)】