説明

ウイルス遺伝子発現の調節

【課題】細胞でウイルスゲノムの発現を変化させる方法の開発。
【解決手段】当該遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNA断片を使用する。該センスおよびアンチセンスRNA断片は対となって、二本鎖RNA分子を形成し、それによって該遺伝子の発現を変化させることができる。該方法を使用して得られた細胞、植物または動物、それらの後代およびそれから誘導された種子を含む。該遺伝子の発現によって得られる好ましい性質は、そのような細胞、植物または動物のウイルスに対する抵抗性または耐性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞、植物または動物中のウイルス遺伝子発現を変化させる方法であって、当該遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNA断片を使用する方法、並びに本発明の方法を使用して得られたウイルス遺伝子発現の変化を有する細胞、植物または動物に関する。本発明は特に、ウイルスに抵抗性または耐性のそのような細胞、植物または動物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスへの抵抗性または耐性は、大きな関心が寄せられている分野である。ウイルスはほとんどの生物に影響を及ぼす。作物において、収量の大部分がウイルス感染のために失われ得る。家畜は、しばしばウイルスに感染し、重大な経済的な結末を導く病気の蔓延を防止するため、時に屠殺される。コンパニオンアニマルもウイルスに襲われ、最終的にウイルスはヒトに感染し、多くの苦しみをもたらす。ウイルスに対する処置が開発されてきたが、それらはしばしば非常に高コストであるか効果が限定的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
細胞、植物または動物を変更し、特定のウイルス遺伝子の発現を変化させて、当該ウイルスに抵抗性または耐性の細胞、植物または動物を創出することが望ましい。遺伝子の発現を変化させる現行の方法は、通常、センスまたはアンチセンスサプレッションの方法による。不幸なことに、これらの方法は、遺伝子発現を変化させる能力がしばしば変動的で、予測不能であり、多くの場合、特定の遺伝子活性を完全に崩壊させることはできない。
したがって、ウイルス遺伝子の発現を効率的かつ予測可能に変化させ、ウイルスに抵抗性または耐性を有する細胞、植物または動物を得るのを可能にする、長く考えられているが達成されていない、新規方法および組成物の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、細胞、植物または動物中のウイルス遺伝子の発現を、その遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNA断片を使用して、変化させる方法に関する。このようなセンスおよびアンチセンスRNA断片が二本鎖RNA分子を形成することができるのが重要である。特に、本発明は、細胞、植物または動物に、ウイルスに対する抵抗性または耐性を付与する方法および組成物に関する。好ましくは、本発明は、ウイルスに対する抵抗性または耐性を植物に付与する方法に関する。本発明は、そのような方法を使用して得られた植物細胞、そのような細胞に由来する植物、そのような植物の後代およびそのような植物に由来する種子にも関する。そのような植物細胞または植物において、特定のウイルス遺伝子の遺伝子発現の変化は、当業界で既知の現行法を使用して得られた特定のウイルス遺伝子の遺伝子発現の変化よりもより有効で、選択的でより予測可能である。
【0005】
本発明は、
複数のサブ配列、例えばRNA断片またはDNA配列を細胞に導入することを含む方法であって、少なくとも2個のサブ配列がウイルスRNAのセンスおよびアンチセンス配列を有し、二本鎖RNA分子を形成することができることを特徴とする方法を提供する。その方法は、好ましくは、細胞に複数のサブ配列からなるRNAを導入することを含み、少なくとも2個のサブ配列がウイルスRNAの配列を有することを特徴とする。好ましくは、そのRNAは、3’末端サブ配列の上流に位置する少なくとも1個の翻訳停止コドンを含む。さらなる好ましい実施態様において、その方法は、当該RNAの発現をコードするヌクレオチド配列またはDNA分子を細胞に導入することを含む。
【0006】
本発明は、
細胞にウイルス標的遺伝子のセンスRNA断片および当該標的遺伝子のアンチセンスRNA断片を導入することを含む方法を提供する。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。ここで、当該細胞内の当該標的遺伝子の発現が変化する。好ましい実施態様では、その標的遺伝子は、ウイルスゲノムまたはその一部を含み、その細胞は、好ましくは、ウイルスに抵抗性または耐性である。好ましい実施態様では、そのウイルスは、トスポウイルス、ポティウイルス、ポテックスウイルス、トバモウイルス、ルテオウイルス、ククモウイルス、ブロモウイルス、クロステオルウイルス(closteorvirus)、トムブスウイルスおよびフロウイルスからなる群から選択される。さらなる好ましい実施態様では、そのRNA断片は、ウイルスコートタンパク質遺伝子、ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質遺伝子、ウイルスレプリカーゼ遺伝子、ムーブメントタンパク質遺伝子またはその一部に由来するヌクレオチド配列を含む。さらなる好ましい実施態様では、細胞は植物細胞、例えば、単子葉植物または双子葉植物細胞である。さらなる好ましい実施態様では、そのRNA断片は、2個の異なるRNA分子に含まれる。
【0007】
さらなる好ましい実施態様では、RNA断片を、当該細胞に導入する前に混合する。さらなる好ましい実施態様では、そのRNA断片を当該細胞に導入する前に二本鎖RNA分子を形成することのできる条件で混合する。さらなる好ましい実施態様では、次にそのRNA断片を当該細胞に導入する。さらに好ましい実施態様ではそのRNA断片は1個のRNA分子に含まれる。その場合、そのRNA分子は好ましくはフォールディングして、そこに含まれる当該RNA断片は二本鎖RNA分子を形成することができる。
【0008】
本発明は、さらに、
細胞に、当該細胞中でウイルス標的遺伝子のセンスRNA断片を発現することのできる第1のDNA配列、および当該標的遺伝子のアンチセンスRNA断片を当該細胞中で発現することのできる第2のDNA配列を導入することを含む方法を提供する。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。ここで、当該ウイルス標的遺伝子の当該細胞中での発現が変化する。好ましい実施態様では、標的遺伝子は、ウイルスゲノムまたはその一部を含み、その細胞は、好ましくはウイルスに抵抗性または耐性である。好ましい実施態様では、そのウイルスは、トスポウイルス、ポティウイルス、ポテックスウイルス、トバモウイルス、ルテオウイルス、ククモウイルス、ブロモウイルス、クロステオルウイルス(closteorvirus)、トムブスウイルスおよびフロウイルスからなる群から選択される。さらなる好ましい実施態様では、そのDNA配列は、ウイルスコートタンパク質遺伝子、ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質遺伝子、ウイルスレプリカーゼ遺伝子、ムーブメントタンパク質遺伝子またはその一部に由来するヌクレオチド配列を含む。さらなる好ましい実施態様では、細胞は植物細胞、例えば、単子葉植物または双子葉植物細胞である。好ましい実施態様では、DNA配列は、安定的に植物細胞のゲノムに組み込まれる。好ましい実施態様では、そのDNA分子は、当該第1または第2のDNA配列に実施可能なように連結されたプロモーターをさらに含む。さらなる好ましい実施態様では、第1のDNA配列および第2のDNA配列は、2個の異なる、すなわち別のDNA分子に含まれる。
【0009】
あるいは、第1のDNA配列および第2のDNA配列は、1個のDNA分子に含まれる。この場合、この第1のDNA配列および第2のDNA配列は、好ましくは当該DNA分子の同じDNA鎖に含まれ、このことは、センスRNA断片およびアンチセンスRNA断片が1個のRNA断片に含まれることを意味する。好ましくは、そのRNA分子はフォールディングして、そこに含まれる当該RNA断片は、二本鎖領域を形成することができる。このようなRNA分子の例は、配列番号13、配列番号17、配列番号18、配列番号25または配列番号28の逆方向反復配列を含む。さらなる好ましい実施態様では、センスRNA断片およびアンチセンスRNA断片は、2個のRNA分子に含まれ、または2個のRNA分子として発現される。この場合、第1のDNA配列および第2のDNA配列は、好ましくは双方向性プロモーターに実施可能なように連結され、あるいは、第1のDNA配列は第1のプロモーターに実施可能なように連結され、第2のDNA配列は、第2のプロモーターに実施可能なように連結されている。ここで、その第1のプロモーターおよび第2のプロモーターは、同じプロモーターまたは異なるプロモーターである。さらなる好ましい実施態様では、第1のDNA配列および第2のDNA配列は、当該DNA分子の相補鎖に含まれる。
【0010】
なおさらなる好ましい実施態様では、第1のDNA配列は、当該DNA分子の第2のDNA配列の相補的DNA鎖である。この場合、このDNA分子は、当該第1または第2のDNA配列に実施可能なように連結されている第1のプロモーターをさらに含む。好ましい実施態様では、このDNA分子は、当該第1のプロモーターおよび当該第1または第2のDNA配列の間の第1の部位特異的組換え部位、並びに当該第1のDNA配列の3’末端の第2の部位特異的組換え部位をさらに含む。ここで、当該第1および第2の部位特異的組換え部位は、当該第1および第2の部位特異的組換え部位の間の当該第1または第2のDNA配列を、部位特異的レコンビナーゼの存在下、逆方向化することができる。さらなる好ましい実施態様では、当該逆方向化の結果、当該第1のプロモーターは、当該第2(または第1、最初にプロモーターに連結されたDNA配列による)のDNA配列を発現することができる。その植物細胞は、好ましくは当該部位特異的組換え部位を認識することのできる部位特異的レコンビナーゼをさらに含む。
【0011】
なおさらなる好ましい実施態様では、当該第1のDNA配列に実施可能なように連結された第1のプロモーターおよび当該第2のDNA配列に実施可能なように連結された第2のプロモーターをさらに含む。ここで、当該第1のプロモーターおよび第2のプロモーターは、同じプロモーターを含むか、または異なるプロモーターを含む。
さらなる好ましい実施態様では、そのDNA分子中のプロモーターは当該細胞の本来のプロモーターを含む。さらに好ましい実施態様では、そのプロモーターは、異種性のプロモーター、例えば、組織特異的プロモーター、発育段階によって調節されるプロモーター、構成的プロモーターまたは誘導可能プロモーターである。所望により、プロモーターは、そのプロモーターのそれぞれの側のDNA配列の転写を開始することのできるディバージェントまたは双方向性プロモーターである。
【0012】
なおさらなる好ましい実施態様では、DNA配列は、センスおよびアンチセンスRNA断片をコードしているDNA配列の間のリンカーをさらに含む。そのリンカーは、機能性遺伝子、例えば、選択マーカー遺伝子または調節配列、例えばイントロンプロセシングシグナルを含む例えば発現カセットを含む。
【0013】
本発明は、本発明のセンスおよびアンチセンスRNA断片を含む細胞をもさらに提供する。ここで、当該細胞内の当該ウイルス標的遺伝子の発現は、当該RNA断片によって変化する。好ましい実施態様では、その細胞は、ウイルスに抵抗性または耐性である。好ましい実施態様では、その細胞は植物細胞である。本発明は、その植物細胞に由来する植物およびその後代、並びにその植物に由来する種子を提供する。
【0014】
本発明は、本発明のDNA配列を含むDNA構築物をも提供する。好ましい実施態様では、そのようなDNA構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部のセンスRNA断片を細胞内で発現させることのできる第1のDNA配列および当該ウイルスゲノムまたはその一部のアンチセンスRNA断片を当該細胞内で発現させることのできる第2のDNA配列を含む。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。更なる好ましい実施態様では、当該細胞内の当該ウイルスゲノムまたはその一部の発現が変化する。さらなる好ましい実施態様では、その細胞は植物細胞である。さらなる好ましい実施態様では、そのウイルスは、トスポウイルス、ポティウイルス、ポテックスウイルス、トバモウイルス、ルテオウイルス、ククモウイルス、ブロモウイルス、クロステオルウイルス(closteorvirus)、トムブスウイルスおよびフロウイルスからなる群から選択される。さらなる好ましい実施態様では、そのDNA配列は、ウイルスコートタンパク質遺伝子、ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質遺伝子、ウイルスレプリカーゼ遺伝子、ムーブメントタンパク質遺伝子またはその一部に由来するヌクレオチド配列を含む。さらなる好ましい実施態様では、そのDNA構築物は、当該第1または当該第2のDNA配列に実施可能なように連結されたプロモーターをさらに含む。なおさらなる好ましい実施態様では、そのDNA構築物は、当該第1のDNA配列に実施可能なように連結された第1のプロモーターおよび当該第2のDNA配列に実施可能なように連結された第2のプロモーターを含む。なおさらなる好ましい実施態様では、そのDNA構築物は、当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列に実施可能なように連結された双方向性プロモーターをさらに含む。
【0015】
本発明は、下記のものを含むDNA構築物をさらに提供する。
(a)標的遺伝子のセンスRNA断片を細胞内で発現させることのできる第1のDNA配列および当該標的遺伝子のアンチセンスRNA断片を当該細胞内で発現させることのできる第2のDNA配列。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。ここで、当該第1のDNA配列は、当該DNA構築物の当該第2のDNA配列の相補鎖である。
(b)当該第1または第2のDNA配列に実施可能なように連結されたプロモーター。
(c)当該プロモーターおよび当該第1または第2のDNA配列の間の第1の部位特異的組換え部位。
(d)当該第1または第2のDNA配列の3’末端の第2の部位特異的組換え部位。ここで、当該第1および第2の部位特異的組換え部位は、当該第1および第2の部位特異的組換え部位の間の当該第1または第2のDNA配列を、部位特異的レコンビナーゼの存在下、逆方向化することができる。
好ましい実施態様では、当該細胞の当該標的遺伝子の発現が変化する。
【0016】
本発明は下記のものを含むDNA構築物をさらに提供する。
(a)標的遺伝子のセンスRNA断片を細胞内で発現させることのできる第1のDNA配列および当該標的遺伝子のアンチセンスRNA断片を当該細胞内で発現させることのできる第2のDNA配列。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。ここで、当該第1のDNA配列は、当該DNA構築物の当該第2のDNA配列の相補鎖である。
(b)当該第1のDNA配列に実施可能なように連結された第1のプロモーター。
(c)当該第2のDNA配列に実施可能なように連結された第2のプロモーター。
好ましい実施態様では、当該細胞の当該標的遺伝子の発現が変化する。
【0017】
「二本鎖RNA(dsRNA)」分子は、標的遺伝子のセンスRNA断片および同じ標的遺伝子のアンチセンスRNA断片を含む。その両者は、互いに相補的なヌクレオチド配列を含む。それによって、そのセンスおよびアンチセンスRNA断片は対となり、二本鎖RNA分子を形成することができる。
「相補的」は、逆位平行(antiparallel)ヌクレオチド配列における相補的塩基残基の間で水素結合を形成することによって互いに対となることのできる逆位平行ヌクレオチド配列を含む2本のヌクレオチド配列をいう。
【0018】
「逆位平行」は、本明細書では、一方のヌクレオチド配列では5’−3’方向に、他方のヌクレオチド配列では3’−5’方向に渡るホスホジエステル結合を有する相補的塩基残基の間の水素結合により対となった2本のヌクレオチド配列をいう。
「標的遺伝子」は、既知の機能の任意のウイルス遺伝子であるか、その機能が未知であるが全部または一部のヌクレオチド配列が既知である遺伝子である。標的遺伝子は、細胞の本来の遺伝子であるか、予め細胞に好ましくは遺伝子形質転換またはその細胞のウイルス感染によって導入された異種性の遺伝子である。好ましくは、その標的遺伝子は、植物細胞の遺伝子である。
「本来の」遺伝子とは、形質転換されない細胞のゲノムに存在する遺伝子をいう。
【0019】
「必須」遺伝子は、タンパク質、例えば、細胞の成長または生存に必須な生合成酵素、レセプター、情報伝達タンパク質、構造遺伝子産物、または輸送タンパク質のようなタンパク質をコードしている遺伝子をいう。
細胞の標的遺伝子の発現の「変化」は、本発明の方法の適用の後、ある細胞内の標的遺伝子の発現レベルが、その方法の適用のない細胞内でのその発現と異なることを意味する。遺伝子発現の変化は、好ましくは、その細胞内での標的遺伝子の発現が減少し、好ましくは大きく減少し、より好ましくはその遺伝子発現が検出不可能となり、細胞またはそれに由来する植物もしくは動物にノックアウト突然変異表現型をもたらすことを意味する。
「単離」は、本発明では、その本来の環境から離れて存在し、したがって天然物ではない人手によって単離された核酸分子である。単離核酸分子は、精製形態で存在してもよく、天然ではない環境、例えば、トランスジェニック宿主細胞内に存在し得る。
【0020】
本明細書で使用される「発現カセット」は、特定のヌクレオチド配列の発現を適当な宿主細胞にもたらすことができ、終結シグナルに実施可能なように連結される所望のヌクレオチド配列に実施可能なように連結されたプロモーターを含むことができるDNA配列を意味する。典型的には、それは、ヌクレオチド配列の正確な翻訳のために必要な配列をも含む。コード領域は、通常、所望のタンパク質をコードするが、所望の機能性RNA、例えば、アンチセンスRNAまたは非翻訳RNAをもセンスまたはアンチセンス配向でコードしてもよい。所望のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラ(少なくとも1個のその構成要素が少なくとも1個の他のその構成要素について異種性である)であってよい。発現カセットは、天然に存在するが異種性の発現のために有用な組換え形態で得られたものであってもよい。しかし、典型的には、発現カセットは、宿主について異種性であり、すなわち、発現カセットの特定のDNA配列は、宿主細胞内に天然に存在せず、宿主細胞または宿主細胞の後代に形質転換事象によって導入されなければならない。発現カセット内のヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーターまたは宿主細胞がある特定の外部刺激にさらされるときのみ転写を開始させる誘導可能プロモーターの制御下であってよい。多細胞生物、例えば植物の場合、プロモーターは、特定の組織もしくは器官または発育段階に特異的であることができる。
【0021】
本明細書で使用する「異種性の」は、「天然の起源と異なる」を意味するか、非天然状態を表す。例えば、もし宿主細胞が他の生物、特に他種の生物に由来する核酸配列で形質転換されれば、その核酸配列を有するその宿主細胞について、およびその宿主細胞の子孫についてその核酸配列は異種性である。同様に、異種性とは、同じ天然の、もとの細胞型に由来し、挿入されているが、非天然状態、例えば、異なるコピー数、または異なる調節エレメントの制御下で存在するヌクレオチド配列をいう。
【0022】
本明細書でヌクレオチド配列について使用するとき、「実質的に類似な」の語は、最も広い意味で、引用ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を意味する。ここで、この対応する配列は、引用ヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドとして、実質的に同じ構造および機能を有するポリペプチドをコードする。例えば、ポリペプチド機能に影響を及ぼさないアミノ酸の変化のみ存在する場合である。望ましくは、その実質的に類似のヌクレオチド配列が、引用ヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドをコードする。実質的に類似のヌクレオチド配列および引用ヌクレオチド配列の間の同一性のパーセンテージ(相補的配列内の相補的塩基の数を、相補的配列中の塩基の総数で割る)は、望ましくは少なくとも80%、より望ましくは85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%である。
【0023】
「調節エレメント」は、ヌクレオチド配列の発現付与に関係する配列をいう。調節エレメントは、所望のヌクレオチド配列および終結シグナルに実施可能なように連結されたプロモーターを含む。これらは、典型的には、ヌクレオチド配列の適当な翻訳に要する配列を包含する。
「植物」は、任意の発育段階にある任意の植物または植物の一部をいう。ここに、挿し木、細胞または組織培養物および種子も含まれる。本発明に使用されるように、「植物組織」の語は、植物体、植物細胞、植物器官、植物種子、プロトプラスト、カルス、細胞培養物、並びに構造および/または機能単位に組織化された植物細胞の任意の群を含むがこれらに限定されない。
【0024】
「ウイルス抵抗性または耐性」は、本明細書では、感受性細胞、植物または動物と比較したときに1種またはそれ以上のウイルスに対して感受性ではないか低い感受性である抵抗性または耐性細胞、植物または動物を意味する。例えば、抵抗性または耐性は、ウイルス感染の通常の症状が不存在であるか減少していること、または細胞内のウイルスの蓄積もしくは複製が防止されるか減少していること、または例えば、細胞から細胞へのウイルスの移動が防止されるか減少していることを意味する。
「ウイルスゲノムまたはその一部の発現の変化」は、典型的には、ウイルスまたはその一部もしくはその構成要素、例えば、ウイルスのRNA、DNAまたはタンパク質の蓄積、複製または移動が、細胞内で影響を受けていることと理解される。
【0025】
本発明は、ウイルス遺伝子の細胞、植物または動物内での発現を調節、すなわち変化させる方法に関する。細胞、植物または動物における遺伝子の発現を調節するために通常利用される方法は、予測可能性に欠け、調節されるべき遺伝子によって変動的である。本発明はこれらの課題を解決し、細胞、植物または動物における遺伝子の再現可能で、効率的な調節を提供する。
発現が調節される遺伝子は、ウイルスゲノムまたはその一部である。好ましい実施態様では、細胞は真核細胞、より好ましくは植物細胞、例えば、単子葉植物もしくは双子葉植物細胞、または動物細胞、例えば、哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネコもしくはイヌ、もしくは鳥類からのものである。本発明は、ウイルス標的遺伝子のセンスRNA断片およびアンチセンスRNA断片を利用し、細胞内の遺伝子の発現を変化させる。第1の実施態様では、本発明は、細胞に標的遺伝子のセンスRNA断片および当該標的遺伝子のアンチセンスRNA断片を導入することを含む方法を提供する。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。ここで、当該細胞内の当該標的遺伝子の発現が変化する。そのRNA断片を、その細胞に種々の形質転換方法、例えば、パーティクルボンバードメントまたはPEG介在形質転換またはエレクトロポレーションによって導入する。さらなる好ましい実施態様では、他の方法、例えば、RNA断片のマイクロインジェクションを使用する。
【0026】
好ましい実施態様では、RNA断片は、2個の異なるRNA分子に含まれる。この場合、RNA断片を当該細胞に導入する前に、例えば、二本鎖RNA分子を形成することのできるような条件下で混合する。さらなる好ましい実施態様では、RNA断片を次に当該細胞に導入する。好ましくは、それぞれのRNA分子の導入の間の時間間隔は短く、好ましくは1時間より短い。なおさらなる実施態様では、RNA断片は、1個のRNA分子に含まれる。単一のRNA分子を使用することによって、2個の相補的RNA断片は対となるほどにきわめて近接しているのが好ましい。その場合、好ましくはRNA分子は、フォールディングして、そこに含まれる当該RNA断片は二本鎖領域を形成することができる。この場合、RNA断片の相補的部分は、互いに認識し、互いに対となり、二本鎖RNA分子を形成する。好ましい実施態様では、このRNA断片を細胞に導入する前に二本鎖RNA分子を形成することのできる条件でインキュベートする。なおさらなる実施態様では、このRNA分子は、センスRNA断片とアンチセンスRNA断片の間にリンカーを含む。このリンカーは、好ましくは、機能性遺伝子、例えば、選択マーカー遺伝子を含む発現カセットによってコードされたRNA配列を含む。さらなる実施態様では、このリンカーは、例えばイントロンプロセッシングシグナルを含む調節配列によってコードされているRNA配列を含む。
【0027】
さらなる実施態様では、本発明は、ウイルスゲノムの発現を変化させる方法であって、細胞に当該ウイルスゲノムのセンスRNA断片を当該細胞中で発現することのできる第1のDNA配列および当該ウイルスゲノムのアンチセンスRNA断片を当該細胞中で発現することのできる第2のDNA配列を導入することを含む方法を提供する。ここで、当該センスRNA断片および当該アンチセンスRNA断片は、二本鎖RNA分子を形成することができる。好ましい実施態様では、その第1のDNA配列およびその第2のDNA配列は、その細胞のゲノムに安定的に組みこまれる。さらなる好ましい実施態様では、それらのDNA配列は2個の異なるDNA分子に含まれる。さらなる好ましい実施態様では、それらのDNA配列は、1個のDNA分子に含まれる。この場合、そのDNA分子は、好ましくはセンスおよびアンチセンスRNA断片を含む単一のRNA分子をコードする。単一のRNA分子を使用することによって、その2個の相補的RNA断片は対となるほどに非常に近接しているので、それは好ましい。そのDNA分子は、2個の別々のRNA分子、例えば、センスRNA断片を含む1個のRNA分子およびアンチセンスRNA断片を含む1個のRNA分子を含む1個のRNA分子をコードする。単一のRNA分子またはそららの2個の別のRNA分子は、好ましくは、フォールディングして、そこに含まれる当該RNA断片は、二本鎖領域を形成することができる。そのRNA断片の相補的部分は互いに認識し、互いに対となり、二本鎖RNA分子を形成する。
【0028】
ある実施態様では、単一のDNA分子または2個の別のDNA分子のそれぞれは当該DNA配列に実施可能なように連結されたプロモーターを含む。好ましい実施態様では、DNA配列中のプロモーターは、本来の植物プロモーターまたは不活性化されるべき当該ウイルス遺伝子の本来のプロモーターを含む。その二本鎖RNAがウイルス標的遺伝子として同じ組織で発育中に同時に発現するのを確保するためである。さらなる実施態様では、そのプロモーターは、異種性のプロモーター、例えば、組織特異的プロモーター、発育段階に応じて調節されるプロモーター、構成的プロモーターまたは誘導可能プロモーターである。
なおさらなる実施態様では、このDNA配列は、当該2個の相補的RNA断片をコードするDNA配列の間にリンカーを含む。このリンカーは、好ましくは、機能性遺伝子、例えば、選択マーカー遺伝子を含む発現カセットを含む。さらなる実施態様では、このリンカーは、例えばイントロンプロセッシングシグナルを含む調節配列を含む。
本発明のDNA分子を、当業界で周知の方法または後記に示す方法を使用して細胞に形質転換する。本発明は、本発明のDNA配列を含むDNA構築物、そのようなDNA構築物を含む組換えベクターおよび本発明のDNA配列を含む組成物を提供する。
【0029】
本発明では、センスおよびアンチセンスRNA断片の間の相補的領域は、望ましくは少なくとも15ヌクレオチド長、より望ましくは少なくとも50ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも500bp長である。好ましくはその相補的領域は、5kbより小さく、より好ましくは2kbより小さい。ある特定の実施態様では、センスおよびアンチセンスRNA断片の間の相補的領域は、標的遺伝子のコード領域を含む。さらなる好ましい実施態様では、その相補的領域は、標的遺伝子の非翻訳領域(UTR)、例えば、5’UTRまたは3’UTRを含む。なおさらなる好ましい実施態様では、本発明のセンスまたはアンチセンスRNA断片をコードするDNA配列はcDNA分子に由来し、あるいは、発現を変化させるべきウイルス標的遺伝子の調節エレメント、例えば、プロモーターまたは終結シグナルを含む。
【0030】
さらなる好ましい実施態様では、センスおよびアンチセンスRNA断片の間の相補的領域は、発現が変化する遺伝子の対応する配列と同一である。さらなる好ましい実施態様では、センスおよびアンチセンスRNA断片の間の相補的領域は、発現が変化させられる遺伝子の対応する配列と実質的に類似であり、なお、その遺伝子の発現を変化させることができる。この場合、その相補的領域は、望ましくは発現が変化させられる遺伝子の対応する配列と少なくとも50%同一、より望ましくは少なくとも70%同一、好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一である。それによって、単一の二本鎖RNA分子を使用して、単一の遺伝子または複数の遺伝子の発現を変化させることができる。ここで、当該単一の遺伝子は二本鎖RNAに同一な配列を含むか、その二本鎖RNAと実質的の類似である。
【0031】
さらなる好ましい実施態様では、センスおよびアンチセンスRNA断片の間の相補的領域は、センスおよびアンチセンスRNA断片の間に全くミスマッチを含まない。さらなる好ましい実施態様では、センスおよびアンチセンスRNA断片の間の相補的領域は、センスおよびアンチセンスRNA断片の間に少なくとも1個のミスマッチを含む。そのとき、2個のRNA断片は対となり、二本鎖RNA分子を形成し、それによってその遺伝子の発現を変化させることができる。望ましくは、相補的領域のセンスおよびアンチセンスRNA断片の間のミスマッチは50%より少なく、より望ましくは30%より少なく、好ましくは20%より少なく、より好ましくは10%より少なく、なおさらに好ましくは5%より少ない。
【0032】
ウイルスに対する抵抗性または耐性
本発明は、ウイルス抵抗性または耐性である細胞、動物または植物をもたらす。本発明を使用して制御されるウイルスは、dsDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖およびマイナス鎖ssRNAウイルス、アンビセンスRNAウイルス並びにレトロウイルスを含むがこれらに限定されない。好ましくは、制御される植物ウイルスは、例えば、トスポウイルス(例えば、トマト黄化えそウイルス、TSMVと略称)、ポティウイルス(例えば、カブモザイクウイルス、TuMVと略称、レタスモザイクウイルス、LMVと略称、カボチャモザイクウイルスII、WMVIIと略称、ズッキーニ黄化モザイクウイルス、ZYMVと略称、ジャガイモYウイルス、RVYと略称、およびパパイヤリングスポットウイルス、PRSVと略称)、ポテックスウイルス、トバモウイルス(例えば、ペッパー微班ウイルス、PMMVと略称、およびトマトモザイクウイルス、ToMVと略称)、ルテオウイルス(例えばビート西部萎黄ウイルス、BWYVと略称、およびbeet mild yellowing virus、BMYVと略称)、ククモウイルス(例えば、キュウリモザイクウイルス、CMVと略称)、ジェミニウイルス(例えば、tomato yellow leafcurl virus、TYLCVと略称)、カウリモウイルス(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMVと略称)、ブロモウイルス、クロステオルウイルス(closteorvirus)、トンブスウイルス並びにフロウイルス(例えば、ビートえそ性葉脈黄化ウイルス、BNYVVと略称)である。本発明を使用して制御可能なさらなるウイルスのクラスが、Zacomer et al.(1995) Journal of General Virology, 76:231-247およびMartelli(1992)Plant Disease, 76: 436-441に記載されている。ウイルス制御を達するためにウイルスゲノムの好ましいDNA配列は、ウイルスコートタンパク質、ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質、ウイルスレプリカーゼ、ムーブメントタンパク質等をコードしている遺伝子の領域に対応する。ウイルスゲノム発現を制御するために有用なさらなるヌクレオチド配列は、WO95/09920に記載されている。好ましいDNA配列はタンパク質に翻訳されないウイルスゲノムの一部、例えば、5’または3’非翻訳領域を含みうる。
【0033】
好ましくは、本発明の方法は広いスペクトルのウイルスへの抵抗性または耐性をもたらす。例えば、本発明の方法はウイルスゲノムによってコードされているウイルスおよび同じウイルス綱、群または属の他のウイルスへの抵抗性または耐性をもたらす。あるいは、本発明の方法は、ウイルスゲノムおよび同じウイルスの他の分離株によってコードされているウイルスへの抵抗性または耐性をもたらす。本発明の方法は、ウイルスゲノムおよび異なる種であって好ましくは関連する種、好ましくはそのようなウイルスが存在する種である異なる種における同じウイルス群または属の他のウイルスによってコードされているウイルスに対する抵抗性または耐性をももたらす。所望により、1対より多い、すなわち少なくとも2対の、dsRNAを形成することのできるセンスおよびアンチセンスRNA断片を使用する。そのような対は例えば、同じウイルスゲノムだけでなく同じウイルスゲノムの異なる部分に由来する。あるいは、そのような対は、異なるウイルスゲノムに由来する。したがって、異なるウイルスクラス、群または属への抵抗性または耐性を、本発明を使用して達成する。
【0034】
植物細胞およびそれに由来する植物は、それらはウイルス抵抗性または耐性であるのだが、好ましくは双子葉植物である。シュガービートおよびキャノーラにおけるフロウイルス(例えばRush and Heidel(1995)Plant Disease 79: 868-875参照)の抵抗性または耐性を付与する方法を、本発明に記載し、BNYVV、シュガービートにおけるrhizomania(crazy roots)の原因病原体についてさらなる詳細を実施例9に記載する。「ウイルス黄化」(例えば、CRC Handbook on Disease of Sugar Beet, Volume II, pp. 35-52参照)例えば、BMYVおよびビート西部萎黄ウイルス(BWYV)(シュガービートおよび脂肪種子ナタネにそれぞれ感染する)への抵抗性または耐性を付与する方法を、実施例8にさらに詳細に記載する。
本発明の方法は、単子葉植物のウイルスへの耐性または抵抗性を付与する。例えば、本発明および米国特許5,569,828の方法を使用して、Maize chlorotic dwarf virusに対する耐性または抵抗性を得る。同様に本発明および米国特許5,428,144の方法を使用して、Maize dwarf mosaic virusに対する耐性または抵抗性を得る。
【0035】
植物形質転換技術
本発明のDNA分子を植物またはバクテリア細胞に通常の組換えDNA技術を使用して組みこむ。一般に、本発明のDNA分子は形質転換ベクターに含まれる。当分野で既知の多くのそのようなベクター系、例えば、プラスミド、バクテリオファージウイルスおよび他の修飾されたウイルスを使用する。発現系の構成要素を修飾して、例えば、センスおよびアンチセンスRNA断片の発現を増大させる。例えば、配列の切除、ヌクレオチドの置換、または他の修飾を実施する。当分野で既知の発現系を使用して、実質的に任意の作物植物細胞を適当な条件で形質転換する。本発明のDNA分子を含む導入遺伝子を、宿主細胞のゲノムに好ましくは安定的に組みこむ。さらなる好ましい実施態様では、本発明のDNA分子を含む導入遺伝子を、自己複製ベクター中に置く。自己複製ベクターの例は、ウイルス、特にジェミニウイルスである。形質転換された細胞を好ましくは植物体に再生する。本発明の形質転換された植物は、単子葉または双子葉植物であってよく、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、カンショ、(インゲン)マメ、エンドウ、チコリー、レタス、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、ダイコン、ホウレンソウ、アウパラガス、タマネギ、ニンニク、ペッパー、セルリー、カボチャ、ペポカボチャ、アサ、ズッキーニ、リンゴ、ナシ、マルメロ、メロン、スモモ、サクランボ、モモ、ネクタリン、アンズ、イチコ、ブドウ、ラズベリー、ブラックベリー、パイナップル、アボガド、パパイヤ、マンゴー、バナナ、ダイズ、トマト、ソルガム、サトウキビ、シュガービート、ヒマワリ、ナタネ、クローバー、タバコ、ニンジン、ワタ、アルファルファ、イネ、ジャガイモ、ナス、キュウリ、アラビドプシス、並びに樹木植物、例えば、針葉樹および落葉樹を含むがこれらに限定されない。望ましいヌクレオチド配列を特定の植物種に形質転換し、その種内で増殖し、または伝統的な育種法を使用して同じ種の特に商業的な変種を含む他の変種に導入する。
【0036】
A.植物発現カセットの構築に要するもの
トランスジェニック植物における発現を意図された遺伝子配列を、まず発現カセットに、植物で発現可能な適当なプロモーターの後方に組みこむ。発現カセットは、導入遺伝子の発現のために要するか選択された任意のさらなる配列を含みうる。そのような配列は、例えば、転写ターミネーター、イントロンのような発現を増強する外来配列、必須配列および特定のオルガネラおよび細胞構成要素への遺伝子産物のターゲッティングを意図する配列を含むがこれらに限定されない。これらの発現カセットを、後記の植物形質転換ベクターに容易に送達することができる。典型的な発現カセットの種々の構成要素を後述する。
【0037】
1.プロモーター
発現カセットに使用されるプロモーターの選択によって、トランジェニック植物における導入遺伝子の位置および時間的発現パターンが決定される。選択されたプロモーターは、特異的な細胞型(例えば、葉表皮細胞、葉肉細胞、根皮層細胞)または特異的な組織または器官(例えば、根、葉または花)中で導入遺伝子を発現させ、その選択はその遺伝子産物の蓄積の望ましい位置に影響を及ぼす。あるいは、選択されたプロモーターは、種々の誘導条件で遺伝子の発現を駆動する。プロモーターはその力、すなわち転写を促進する能力が異なる。利用される宿主細胞系によって、当分野で既知の任意の数の適当なプロモーターを使用する。例えば、構成的発現のために、CaMV 35Sプロモーター、イネアクチンプロモーター、またはユビキチンプロモーターを使用する。例えば、調節可能な発現のためには、タバコまたはアラビドプシスに由来する化学的に誘導可能なPR−1プロモーターを使用する(例えば、米国特許5,689,044参照)。
【0038】
プロモーターの好ましいカテゴリーは、傷誘導可能なものである。傷部位で発現される多くのプロモーターが記載されている。この種の好ましいプロモーターは、Stanford et al. Mol Gen. Genet. 215: 200-208(1989), Xu et al. Plant Molec. Biol. 22: 573-588(1993), Logemann et al. Plant Cell 1: 151-158(1989),Rohrmeier & Lehle, Plant Molec. Biol. 22: 783-792(1993), Firek et al. Plant Molec. Biol. 22: 129-142(1993) and Warner et al. Plant J.3:191-201(1993)に記載されているものを含む。
好ましい組織特異的発現型は、緑色組織特異的、根特異的、茎特異的および花特異的なものを含む。緑色組織での発現に適当なプロモーターは、光合成に関係する遺伝子を調節する多くのものを含む。これらの多くは、単子葉植物および双子葉植物からクローニングされた。好ましいプロモーターは、ホスホエノールカルボキシラーゼ遺伝子に由来するトウモロコシPEPCプロモーターである(Hudspeth & Grula, Plant Molec. Biol. 12: 579-589(1989))。根特異的発現に好ましいプロモーターは、de Framondによって記載されたものである(FEBS 290: 103-106(1991); EP0452269)。さらに好ましい根特異的プロモーターは、本発明によって提供するT−1遺伝子に由来するものである。好ましい茎特異的プロモーターは、米国特許5,625,136に記載されたものであり、トウモロコシtrpA遺伝子の発現を駆動する。
本発明の好ましい実施態様は根特異的な方法でヌクレオチド配列を発現するトランスジェニック植物である。さらに好ましい実施態様は、傷誘導可能または病原体感染誘導可能な方法でヌクレオチド配列を発現するトランスジェニック植物である。
【0039】
2.転写ターミネーター
広範な転写ターミネーターが発現カセット中の使用のために利用可能である。これらは導入遺伝子を超えた転写の終結および正確なポリアデニル化に必要である。適当な転写ターミネーターが植物で機能するとして知られているものであり、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーター、およびエンドウrbcS E9ターミネーターを含む。これらは単子葉植物および双子葉植物の両方に使用される。
【0040】
3.発現の増強または調節のための配列
多くの配列が転写単位内からの遺伝子発現を増強することが見出されている。これらの配列は、本発明の遺伝子と結合させて使用して、トランスジェニック植物内での発現を増加させることができる。例えば、種々のイントロン配列、例えば、トウモロコシAdhl遺伝子のイントロンは、特に単子葉植物細胞で発現を増強することが示された。さらに、ウイルスに由来する多くの非翻訳リーダー配列が発現を増強すると知られており、これらは双子葉植物細胞で特に効果的である。
【0041】
4.コード配列の最適化
一般に、選択された遺伝子のコード配列を、所望の作物種における最適な発現のためにコード配列を変化させることによって改変し得る。コード配列を修飾して特定の作物種で最適な発現を達成する方法が周知である(例えば、Perlak et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 3324(1991); and Koziel et al., Bio/technol. 11:194(1993)参照)。
さらなる好ましい実施態様では、本発明のDNA分子を色素体ゲノムに直接的に形質転換する。色素体形質転換法が米国特許番号5,451,513、5,545,817および5,545,818、PCT出願番号WO95/16783、およびMcBride et al.(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91,7301-7305に詳細に記載されている。葉緑体形質転換の基本的な方法は、選択マーカーにフランキングなクローニングされた色素体DNAの領域を所望の遺伝子と共に、適当な標的組織に、例えば、バイオリスティックまたはプロトプラスト形質転換(例えば、塩化カルシウムまたはPEG仲介形質転換)を使用して導入することに関する。ターゲティング配列と称する1ないし1.5kbフランキング領域によって、色素体ゲノムの同種性の組み換えを容易化し、plastomeの特異的領域の置換または修飾が可能になる。
【0042】
最初に、葉緑体16S rRNA並びにスペクチノマイシンおよび/またはストレプトマイシンに対する抵抗性を付与するrps12遺伝子における点突然変異を形質転換のための選択マーカーとして利用する(Svab, Z., Hajdukiewicz, P., and Maliga, P.(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 8526-8530; Staub, J. M., and Maliga, P. (1992)Plant Cell 4,39-45)。これらのマーカーの間のクローニング部位の存在によって、外来DNA分子の導入のための色素体ターゲッティングベクターを生成することができる(Staub, J.M.,and Maliga, P. (1993)EMBO J.12, 601-606)。劣性のrRNAまたはr−タンパク質抗生物質抵抗性遺伝子を、優性の選択マーカー、例えば、スペクチノマイシン解毒酵素アミノグリコシド−3’-アデニルトランスフェラーゼをコードしているバクテリアaadA遺伝子で置換することによって、形質転換頻度を実質的に増加できる(Svab, Z., and Maliga, P. (1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 913-917)。以前、このマーカーを使用して、緑藻Chlamydomonas reinhardtiiの色素体ゲノムの高頻度形質転換に成功している(Goldschmidt-Clermont, M. (1991)Nucl. Acids Res. 19:4083-4089)。色素体形質転換に有用な他の選択マーカーが当分野で知られ、本発明の範囲に入る。
【0043】
色素体発現とは、遺伝子が相同組換えでそれぞれの植物細胞に存在する数千コピーの環状色素体ゲノムに挿入されることである。好ましい実施態様では、本発明のDNAを色素体ターゲッティングベクターに挿入し、所望の植物宿主の色素体ゲノムに形質転換する。本発明のDNA分子を含む色素体ゲノムについてホモプラスミックな植物を得て、それはそのDNA分子を選択的に高度に発現することができる。好ましくは、そのDNA分子をコードしているセンスおよびアンチセンスRNA断片は、対となって、植物色素体内で二本鎖RNA分子を形成し、色素体遺伝子の発現を変化させることができる。好ましい実施態様では、センスおよびアンチセンス断片は相補的領域に全くミスマッチを含まない。さらなる好ましい実施態様では、センスおよびアンチアセンス断片は少なくとも1個のミスマッチをその相補的領域に含む。この場合、RNA断片をコードしているDNA分子内のDNA配列は、互いに再結合することができない。
【0044】
B.植物形質転換ベクターの構築
植物形質転換に利用可能な多くの形質添加ベクターが植物形質転換技術の当業者に既知であり、本発明に関係する遺伝子を任意のそのベクターと結合させて使用することができる。そのベクターの選択は好ましい形質転換法および形質転換の標的の種に依存する。ある種の標的種のために、種々の抗生物質または除草剤選択マーカーが好ましい。形質転換にルーチンに使用される選択マーカーは、カナマイシンおよび関連する抗生物質に対する抵抗性を付与するnptll遺伝子(Messing & Vierra. Gene 19:259-268(1982); Bevan et al., Nature 304: 184-187(1983))、除草剤ホスヒノトリシンに対する抵抗性を付与するBar遺伝子(White et al., Nucl. Acids Res 18: 1062(1990),Spencer et al. Theor. Appl. Genet 79: 625-631(1990))抗生物質ハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggelmann, Mol Cell Biol 4: 2929-2931)およびメタトレキセートに対する抵抗性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al., EMBO J.2(7): 1099-1104(1983))並びにグリホサートに対する抵抗性を付与するEPSPS遺伝子(米国特許番号4,940,935 and 5,188,642)を含む。
【0045】
1.アグロバクテリウム形質転換に適当なベクター
多くのベクターがアグロバクテリウムツメファシエンスを使用する形質転換に利用できる。これらは典型的には少なくとも1個のT−DNAボーダー配列を有し、例えばpBIN19(Bevan, Nucl. Acids Res. (1984))およびpXYZのようなベクターを含む。アグロバクテリウム形質転換に適当な典型的なベクターは、バイナリーベクターpCIB10およびpCIB2001並びにバイナリーベクターpCIB10およびそのハイグロマイシン選択誘導体を含む。(例えば米国特許番号5,639,949参照)。
【0046】
2.非アグロバクテリウム形質転換に適当なベクター
アグロバクテリウムツメファシエンスを使用しない形質転換は、選択された形質転換ベクター中のT−DNA配列の必要性を回避し、結果的に、これらの配列を欠いたベクターをT−DNA配列を含む前記のもののようなベクターに加えて利用する。アグロバクテリウムに依存しない形質転換法は、パーティクルボンバードメント、プロトプラスト取り込み(例えば、PEGおよびエレクトロポレーション)およびマイクロインジェクションによる形質転換を含む。ベクターの選択は、形質転換される種の好ましい選択に多くは依存する。非アグロバクテリウム形質転換に適当な典型的なベクターは、pCIB3064、pSOG19、およびpSOG35を含む。(例えば、米国特許番号5,639,949参照)。
【0047】
C.形質転換法
所望のDNA配列を発現系にクローニングし、植物細胞に形質転換する。植物の形質転換および再生の方法は当分野で周知である。例えば、Tiプラスミドベクター、並びに直接的DNA取り込み、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、およびマイクロプロジェクタイルを外来DNAの送達のために使用する。さらにアグロバクテリウム属からのバクテリアを植物細胞を形質転換するために利用できる。
【0048】
双子葉植物のための形質転換方法は当分野で周知であり、アグロバクテリウムに基づく方法およびアグロバクテリウムを要しない方法を含む。非アグロバクテリウム方法は、外生遺伝的物質をプロトプラストまたは細胞に直接的に取り込むことを含む。これは、PEGまたはエレクトロポレーション仲介取り込み、パーティクルボンバードメント仲介送達またはマイクロインジェクションによって達成する。いずれの場合も、形質転換した細胞を、当分野で既知の標準的方法を使用して植物体に再生する。
殆どの単子葉植物種の形質転換は、現在ではルーチンとなった。好ましい方法は、PEGまたはエレクトロポレーションを使用するプロトプラストへの直接的遺伝子導入、カルス組織へのパーティクルボンバードメントおよびアグロバクテリウム仲介形質転換を含む。
【0049】
本発明を後記の詳細な実施例を記載することによってさらに説明する。これらの実施例は例示のみのために提供し、特に明示しない限り限定することを意図していない。
【0050】
ここで使用した標準的組み換えDNAおよび分子クローニング法は当分野で周知であり、Sambrook, et al., Molecular Cloning, eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY(1989) and T.J. Silhavy, M.L. Berman, and L. W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1984) and by Ausubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, pub. by Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience(1987)に記載されている。
【実施例1】
【0051】
実施例1:ルシフェラーゼ遺伝子の発現の調節
ルシフェラーゼRNAデュプレックス(duplex)をコードするキメラDNA分子の構築
プラスミドpLuc+(Promega)からのホタルルシフェラーゼ遺伝子の783bpの「センス」配向断片を、pPH108プラスミDNAからオリゴヌクレオチドプライマーds Luc1(5’−CGC GGA TCC TGG AAG ACG CCA AAA ACA−3’、配列番号1;BamHI制限部位に下線を付す)およびds Luc2(5’−CGG AAG CTT AGG CTC GCC TAA TCG CAG TAT CCG GAA TG−3’、配列番号2;HindIII制限部位に下線を付す)を使用して増幅する。TurboPfu熱安定性DNAポリメラーゼ(Stratagene)を、50μl反応物中で、製造者のプロトコールにしたがって、95℃/1分、55℃/1.5分、72℃/2分の5サイクル、続いて95℃/1分、72℃/3.5分の25サイクルで使用する。同様の方法で、プラスミドpLuc+からのホタルルシフェラーゼ遺伝子の737bp「アンチセンス」配向断片をpPH108プラスミドDNAから、オリゴヌクレオチドプライマーds Luc3(5’−CGG TCT AGA GGA AGA CGC CAA AAA CAT A−3’、配列番号3;XbaI制限部位に下線を付す)およびds Luc2(5’−CGG AAG CTT AGG CTC GCC TAA TCG CAG TAT CCG GAA TG−3’、配列番号2;HindIII制限部位に下線を付す)を使用してPCRによって増幅する。得られたDNA断片を低融点アガロース(FMC)から作成した1%トリスアセテートゲルによる電気泳動、続いてPCR産物を含む切除したゲルスライスをフェノール−クロロホルム抽出により精製する。標準的方法(制限酵素をNew England Biolabsから得た)にしたがって、センス産物(ds Luc1/2)からのDNAをBamHIおよびHindIIIで消化し、アンチセンス産物(ds Luc3/2)からのDNAを、XbaIおよびHindIIIで消化する。得られた粘着末端DNA断片を前記のようにゲル精製する。mas1’プロモーター(Velten et al. (19984)EMBO J. 3: 2723-2730)を含むDNA断片をプラスミドCSA104をEcoRIおよびHincIIで消化し、564bp DNA断片を精製することによって得る。この断片をBamHIで再消化し、mas1’プロモータを含む484bpのEcoRI−BamHIサブ断片を単離し、ゲル精製する。プラスミドpPH169を構築するために、クローニングベクターpLitmus29(New England Biolabs)からのDNAを、EcoRIおよびXbaIで消化し、単離した断片をT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して4通りの反応でmas1’プロモーター EcoRI−BamHI断片並びにセンス(BamHI−HindIII)およびアンチセンス(HindIII―XbaI)ds Lucルシフェラーゼ遺伝子断片にライゲートする。ds Luc1/2/3RNAデュプレックス構築物でのアグロバクテリウム仲介植物形質転換のためのバイナリーベクターpPH170を構築するために、バクテリア選択のためのカナマイシン抵抗性遺伝子およびトランスジェニック植物選択のためのハイグロマイシン抵抗性遺伝子を有するバイナリープラスミドpSGCHC1からのDNAを、EcoRIおよびXbaIで消化する。得られたpSGCHC1からの11.6kb単離断片を4通りの反応でT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用してmas1’プロモーターEcoRI−BamHI断片並びにセンス(BamHI−HindIII)およびアンチセンス(HindIII−XbaI)ds Lucルシフェラーゼ遺伝子断片にライゲートする。
【0052】
アグロバクテリウムの形質転換およびアラビドプシス植物の減圧浸潤
プラスミドpPH170をアグロバクテリウムツメファシエンスGV3101にエレクトロポレーションによって導入し、形質転換されたコロニーを選択し、増幅する。ルシフェラーゼを構成的に(UBQ3プロモーター(Norris et al.(1993)PMB 21:895-906)/UBQ3+CaMV 35S5’UTR/luc+;pPH108)または誘導可能に(アラビドプシスPR−1プロモーター/luc+;pPH135、系統6E)発現しているアラビドプシス(Arabidopsis thaliana)突然変異系統の4ないし5週齢の植物を、pPH170バイナリーT−DNAベクターを有するアグロバクテリウムコロニーで減圧浸潤する。形質転換した植物を、ハイグロマイシンおよびカナマイシンで共選択し、制御されたファイトトロン条件下でルシフェラーゼ活性の決定のために育成する。さらに、pPH135−6Eバックグラウンドのルシフェラーゼ活性をBTH(BTH処理はLawton et al. Plant J. 10: 71-82に詳細に記載されている)で誘導の48時間後に評価する。ルシフェラーゼ活性を、ルシフェリン基質の添加に続く組織エキストラクト中でのルミネッセンスに基づくアッセイを使用して定量する。ルシフェラーゼ活性をCCD-cooledビデオイメージングシステム(Hamamatsu)を使用して植物体でもモニターする。
【実施例2】
【0053】
実施例2:アラビドプシスGL1遺伝子の発現の調節
GL1遺伝子は、通常のトリコーム(リーフヘアー)形成のイニシエーションに要するmyb様転写因子をコードする(Oppenheimer et al.(1991)Cell 67: 483-493)。発育の初期のGL1発現のノックアウトは、植物にトリコームの欠如をもたらす。ノックアウト表現型は幼苗で容易に同定でき、致死ではない。構成的発現のための3種のベクターおよびGal4CI調節された発現のための3種のベクターを構築する。それぞれのプロモーターを試験するための3種の異なるベクターは、GL1遺伝子断片のセンス(+)発現、アンチセンス(−)発現およびデュプレックス(+/−)RNA発現である。(+)および(−)ベクターは、GL1の発現に及ぼす効果を比較するためのコントロールである。それぞれの場合、GL1配列(GenBank Accession M79448)の塩基#739ないし#1781からの5’断片をベクター構築のために使用する。
【0054】
Gal4CI調節された発現
GL1遺伝子断片を交差誘導可能ベクター構築物pJG304−1にNcoI−SacI断片としてクローニングする。プラスミドpJG304をpBSSK+から誘導する。プラスミドpBS SK+(Stratagene, LaJolla,CA)をSacIで線形化し、マングビーンヌクレアーゼで処理し、SacI部位を除去し、T4リガーゼで再ライゲートし、pJG201を作成する。10XGAL4コンセンサス結合部位/CaMV 35Sミニマルプロモーター/GUS遺伝子/CaMVターミネーターカセットをpAT71からKpnIで除去し、pJG201のKpnI部位にクローニングし、pJG304を作成する。プラスミドpJG304を制限エンドヌクレアーゼAsp718で一部消化し、全長線形断片を単離する。この断片をモル過剰の22塩基のオリゴヌクレオチドJG−L(5’−GTA CCT CGA G TC TAG ACT CGA G−3’、配列番号4)とライゲートする。制限分析を使用して、GAL4 DNA結合部位の5’にこのリンカーを挿入されたクローンであると同定し、このプラスミドをpJG304DXhoIと命名する。
NcoIおよびSacI部位を、5’末端に適当な制限部位を有するPCRプライマーを合成することによって(+)および(−)断片の末端に付加する。(+/)GL1断片を2個の断片:5’末端にNcoI部位、3’末端にHindIII部位を有する(+)断片および5’末端にHindIII部位、3’末端にSacI部位を有する(−)断片を最初に生成することによって生成する。デュプレックスユニットを得られた断片にEcoRI部位でライゲートすることによって生成する。発現ユニットは、Gal4 DNA結合ドメイン、続いてミニマルTATA配列、および(+)、(−)または(+/−)配向であるGL1遺伝子断片を含む。
【0055】
構成的発現
双子葉植物で比較的強力で構成的なアグロバクテリウム(ref)からのマンノピンシンターゼのmas1’プロモーターを使用する。前記のように、GL(+)、(−)および(+/−)断片をpBluescriptの1’プロモーターの後方にライゲートする。3種類の異なる発現カセットをpCIB200にEcoRI/SalI断片としてライゲートする(Uknes et al.(1993)Plant Cell 5:159-169)。
【実施例3】
【0056】
実施例3:シスタチオンベータリアーゼ遺伝子の発現の調節
シスタチオンベータリアーゼ(CBL)遺伝子は、メチオニン生合成経路のある段階をコードしている。植物におけるその発現の調節の影響をセンスおよびアンチセンス構築物、並びに二本鎖RNA構築物を使用して試験する。
アンチセンス構築物:pJG304DXhoIベクターからの断片を含み、アンチセンス配向のCGL遺伝子(ヌクレオチド#13−1159、Genbbank accession #L40511)の一部が挿入された、バイナリーBASTAベクターpJG261を使用する。
センス構築物:CBL断片が反対配向である以外は、アンチセンス構築物と同様である。この構築物はATG開始コドンおよび殆どのCBL ORFを含み、CBL遺伝子の発現の制御および調節として働く。
二本鎖RNA構築物:センス配向のCBL遺伝子断片(#13−1159)を、CBL遺伝子のアンチセンス配向バージョンの下流であってベクターpJG304−1のSalI部位に挿入する。約10bpのリンカーが2コピーのCBLの間に存在する。
【実施例4】
【0057】
実施例4:植物発現カセットの構築のために必要なもの
トランスジェニック植物における発現を意図する遺伝子配列を、適当なプロモータの後方であって適当な転写ターミネーターの上流の発現カセット中に最初に組みたてる。植物発現カセットの構築に必要なすべては、本発明のDNA分子に当てはまり、当分野で周知の技術を使用して実施する。
【0058】
プロモーター選択
発現カセットに使用するプロモーターの選択は、トランスジェニック植物でのDNA分子の位置および時間的発現パターンを決定する。選択されたプロモーターは、特異的な細胞型(例えば、葉表皮細胞、葉肉細胞、根皮層細胞)でまたは特異的な組織または器官(例えば、根、葉または花)でDNA分子を発現させ、その選択はそのDNA分子によってコードされたRNA断片の生合成の望ましい位置に影響を及ぼす。あるいは、選択したプロモーターは、光誘導または他の時間的に調節されたプロモーターの下でDNA分子の発現を駆動し得る。あるいは選択されたプロモーターは、化学的に調節されるものである。これにより、望ましく、化学的インデューサーでの処理によって引き起こされるときのみDNA分子の発現を誘導する可能性を提供される。
転写ターミネーター
種々の転写ターミネーターが発現カセット中での使用のために利用可能である。これらは、転写の終結および好ましくは正確なポリアデニル化のために必要である。適当な転写ターミネーターおよび植物中で機能すると知られているものは、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーター、エンドウrbcS E9ターミネーターを含む。これらは単子葉および双子葉植物の両方で使用できる。
【0059】
発現の増強または調節のための配列
多くの配列が転写ユニット内からの遺伝子発現を増強することが見出されてきた。これらの配列を本発明のDNA分子と組み合わせて使用し、トランスジェニック植物中でのその発現を増大させることができる。
種々のイントロン配列が特に単子葉植物細胞での発現を増強させることが示されている。例えば、トウモロコシAdh1遺伝子のイントロンが、トウモロコシ細胞に導入されたときそのコグネイトプロモーターの下で野生型遺伝子の発現を有意に増強することが見出された。イントロン1は、特に有効であると見出され、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子との融合構築物において発現を増強する(Callis et al., Genes Dvelop 1: 1183-1200(1987))。同じ実験系で、トウモロコシbronze1遺伝子からのイントロンが発現の増強に同様の効果を有する(Callis et al.,前掲)。イントロン配列は、日常的に植物形質転換ベクターに、典型的には非翻訳リーダー内に組みこまれている。
ウイルス由来の多くの非翻訳リーダー配列が、発現を増強することが知られている。これらは双子葉植物細胞で特に有効である。特に、タバコモザイクウイルス(TMV、「Ω配列」)、トウモロコシ退緑斑紋ウイルス(Maize Chlorotic Mottle Virus(MCMV))、およびアルファルファモザイクウイルス(AMV)からのリーダー配列が、発現を増強するのに有効であると示されている(例えば、Gallie et al., Nucl. Acids Res. 15: 8693-8711(1987); Skuzeski et al. Plant Molec. Biol. 15; 65-79(1990))。
【実施例5】
【0060】
実施例5:発現カセット構築物の例
本発明は、プロモーターの起源に関わらず植物で発現可能な任意のプロモーターの調節の下での本発明のDNA分子の発現を含む。したがって、DNA分子を、当分野で周知の方法によって任意の発現カセットに挿入する。これらの発現カセットは、後記の植物形質転換ベクターに容易に移入することができる。さらに本発明は、DNA分子の発現のために要されまたは選択される任意のさらなる配列と組み合わせて任意の発現可能プロモーターを使用することを含む。そのような配列は、転写ターミネーター、発現を増強するための外来配列を含むがこれらに限定されない(例えば、イントロン[例えば、Adhイントロン1]、ウイルス性配列[例えばTMV−Ω])。
【0061】
構成的発現:CaMV 35Sプロモーター
プラスミドpCGN1761の構築は、公開された特許出願EP0392225に記載されている。pCGN1761は「ダブル」35Sプロモーターおよびtml転写ターミネーターを含み、プロモーターおよびターミネーターの間に特異的EcoRI部位を有しており、pUC−タイプバックボーンを有する。存在するEcoRI部位に加えNotIおよびXhoI部位を含む修飾されたポリリンカーを有するpCGN1761の誘導体を構築する。この誘導体をpCGN1761ENXと命名する。pCGN1761ENXはトランスジェニック植物での35Sプロモーターの制御の下での発現のためのポリリンカー内のcDNA配列または遺伝子配列(微生物ORF配列を含む)のクローニングに有用である。そのような構築物の完全な35Sプロモーター−遺伝子配列−tmlターミネーターカセットを、プロモーターの5’側のHindIII、SphI、SalI、およびXbaI部位で、ターミネーターの3’側のXbaI、BamHIおよびBglI部位で、形質転換ベクターへ送達するため切除することができる。さらにダブル35Sプロモーター断片を、HindIII、SphI、SalI、XbaIまたはPstIでの5’切除、および任意のポリリンカー制限部位(EcoRI、NotIまたはXhoI)での3’切除によって、他のプロモーターと置き換えるために除去することができる。
したがって、本発明のDNA分子を、pCGN1761ENXに、CaMV 35Sプロモーターの制御の下での構成的発現のために挿入することができる。
【0062】
化学的に調節可能なプロモーターの下での発現
この節はpCGN1761ENXにおけるダブル35Sプロモーターを任意の選択されたプロモーターで置換えることについて記載する。例証として化学的に調節されるPR−1aプロモーターを記載する。選択されたプロモーターを好ましくはそのソースから制限酵素によって切除するが、あるいは適当な末端制限部位を有するプライマーを使用してPCR−増幅することができる。もしPCR−増幅を実施するならば、プロモーターは標的ベクター中の増幅されたプロモーターのクローニングの後、増幅エラーを確認するために再配列決定するべきである。化学的に調節可能なタバコPR−1aプロモーターをプラスミドpCIB1004(EP0332104参照)から切断し、プラスミドpCGN1761ENXに送達する。pCIB1004をNcoIで切断し、得られた線状断片の3’オーバーハングをT4 DNAポリメラーゼで処理することによって平滑末端化する。次に、その断片をHindIIIによって切断し、得られたPR−1aプロモーターを含む断片をゲル精製し、ダブル35Sプロモーターを除去されたpCGN1761ENXにクローニングする。これを、XhoIで切断し、T4ポリメラーゼで平滑末端化し、続いてHindIIIで切断し、pCIB1004プロモーター断片がクローニングされるべきより大きなベクターターミネーターを含む断片を単離することによって実施する。これにより、PR−1aプロモーターおよびtmlターミネーター、並びに特有のEcoRIおよびNotI部位を有する介在しているポリリンカーを有するpCGN1761ENX誘導体を作成する。
本発明のDNA分子をこのベクターに挿入し、融合産物(すなわちプロモーター−遺伝子−ターミネーター)をその後、本出願に記載されたものを含む任意の選択された形質転換ベクターに送達する。そしてそのDNA分子の化学的に誘導可能発現を実現する。
【0063】
構成的発現:アクチンプロモーター
アクチンのいくつかのイソフォームは、ほとんどの細胞型中で発現され、結果的に、構成的プロモーターとしてアクチンプロモーターを選択するのがよいと知られている。特にイネAct1遺伝子からのプロモーターはクローニングされ、特性が把握されている(McElroy et al.Plant Cell 2:163-171(1990))。そのプロモーターの1.3kbの断片は、イネプロトプラスト中の発現に要求されるすべての調節エレメントを含んでいることが発見されている。さらにAct1プロモーターに基づく多くの発現ベクターが、特に単子葉植物における使用のために構築されてきた(McElroy et al.Mol.Gen.Genet.231:150-160(1991))。これらはAct−イントロン1、Adh1 5’フランキング配列、およびAdh1−イントロン1(トウモロコシアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子から)およびCaMV 35Sプロモーターからの配列を含む。最高の発現を示すベクターは、35SおよびAct1イントロンまたはAct1 5’フランキング配列およびAct1イントロンの融合物である。McElroy et al.(Mol.Gen.Genet.231:150-160(1991))によって記載されたプロモーター発現カセットを、本発明のDNA分子の発現のために容易に修飾することができ、単子葉植物宿主における使用に特に好適である。例えばプロモーターを含む断片をMcElroyの構築物から取り外して使用し、pCGN1761ENXにおけるダブル35Sプロモーターを置き換えることができ、それは挿入または特定の遺伝子配列のために利用可能である。こうして構築した融合遺伝子を、その後適当な形質転換ベクターに送達することができる。別の報告では、第1のイントロンを有するイネAct1プロモーターが培養オオムギ細胞中で高度の発現をディレクトすることも発見された(Chibbar et al.Plant Cell Rep.12:506-509(1993))。
本発明のDNA分子をそのようなプロモーターの下流に挿入し、続いて、融合産物(すなわちプロモーター-遺伝子−ターミネーター)を任意の選択された、本明細書に記載されているものを含む、形質転換ベクターに送達する。
【0064】
構成的発現:ユビキチンプロモーター
ユビキチンは多くの細胞型中に蓄積すると知られているもう一つの遺伝子産物であり、そのプロモーターはいくつかの種からトランスジェニック植物における使用のためにクローニングされてきた(例えばヒマワリ−Binet et al.Plant Science 79:87-94(1991)、トウモロコシ−Christensen et al.Plant Molec.Biol.12:619-632(1989))。トウモロコシユビキチンプロモーターはトランスジェニック単子葉系で開発されており、その配列および単子葉植物の形質転換のために構築されたベクターは特許出願EP0342926に公開された。さらに、Taylor et al.(Plant Cell Rep.12:491-495(1993))はトウモロコシユビキチンプロモーターおよび第1のイントロンを含むベクター(pAHC25)、およびマイクロプロジェクタイルボンバードにより導入されたときの多くの単子葉植物の細胞懸濁物中でのその高い活性について記載している。そのユビキチンプロモーターはトランスジェニック植物、特に単子葉植物中でのDNA分子の発現に特に好適である。適当なベクターは、適当なユビキチンプロモーターおよび/またはイントロン配列の導入によって修飾された、pAHC25の誘導体または本明細書中に記載された任意の形質転換ベクターである。
したがって、本発明のDNA分子を任意のこれらのベクターに挿入し、融合産物(すなわちプロモーター−遺伝子−ターミネーター)を植物の形質転換に使用して、DNA分子を構成的に発現させる。
【0065】
根特異的発現
本発明のDNA分子に好ましい発現のパターンは根での発現である。根組織のみでのヌクレオチド配列の発現は、葉および花組織並びに種子での発現を変化させることなく、根のみで標的遺伝子の発現を変化させる利点がある。適当な根プロモーターは、de Framond(FEBS 290:103-106(1991))によって、また公開された特許出願EP0452269において記載されたようなものである。このプロモーターをpCGN1761ENXのような適当なベクターに送達し、DNA分子をそのようなベクターに挿入する。その完全なプロモーター−遺伝子−ターミネーターカセットをその後、所望の形質転換ベクターへ送達する。
【0066】
傷誘導可能プロモーター
多くのそのようなプロモーターが記載され(例えばXu et al.Plant Molec.Biol.22:573-588(1993)、Logemann et al.Plant Cell 1:151-158(1989)。Rohrmeier&Lehle,Plant Molec.Biol.22:783-792(1993)、Firek et al.Plant Molec.Biol.22:129-142(1993)、Warner et al.Plant J.3:191-201(1993))、すべて本発明での使用に好適である。Logemann et al.(前掲)は双子葉植物ジャガイモwun1遺伝子の5’上流配列を記載している。Xu et al.(前掲)は双子葉植物ジャガイモ(pin2)からの傷誘導可能プロモーターは単子葉植物イネでも活性があることを記載している。さらにRohrmeier&Lehle(前掲)は傷に誘導され、標準的な技術を使用してコグネイトプロモーターを単離するのに使用可能であるトウモロコシWip1 cDNAのクローニングを記載している。同様にFirek et al.(前掲)およびWarner(前掲)は、局部的傷および病原体侵入部位で発現される、単子葉植物Asparagus officinalisからの傷誘導可能遺伝子を記載している。当技術分野で周知のクローニング技術を使用して、これらのプロモーターを適当なベクターに送達し、本発明のDNA分子と融合し、これらの遺伝子を害虫感染の部位で発現させるために使用することができる。
【0067】
髄における好ましい発現
特許出願WO93/07278は、髄細胞で選択的に発現されているトウモロコシtrpA遺伝子の単離を記載している。標準的な分子生物学的な技術を使用して、このプロモーターまたはその一部を、pCGN1761のようなベクターに送達することができ、35Sプロモーターを置き換え、髄に好ましいように本発明のDNA分子の発現を駆動するために使用することができる。実際、髄に好ましいプロモーターまたはその一部を含む断片を任意のベクターに送達し、トランスジェニック植物における便宜のために修飾する。DNA分子の髄に好ましい発現を、そのようなベクター中のDNA分子に挿入することによって達成する。
【0068】
花粉特異的発現
特許出願WO93/97278は、花粉細胞で発現されているトウモロコシカルシウム依存性タンパク質キナーゼ(CDPK)遺伝子の単離をさらに記載している。その遺伝子配列およびプロモーターは転写開始から1400bpにわたる。標準的な分子生物学的技術を使用して、プロモーターまたはその一部を、pCGN1761のようなベクターに送達し、35Sプロモーターを置き換え、花粉特異的な方法で本発明のDNA分子の発現を駆動するために使用する。実際、花粉特異的プロモーターまたはその一部を含む断片を任意のベクターに送達し、トランスジェニック植物における便宜のために修飾することができる。
葉特異的発現
ホスホエノールカルボキシラーゼ(PEPC)をコードしているトウモロコシ遺伝子が、Hudspeth&Grula(Plant Molec Biol 12:579-589(1989))によって記載された。標準的な分子生物学的な技術を使用して、この遺伝子のためのプロモーターを使用し、トランスジェニック植物における葉特異的方法で、本発明のDNA分子の発現を駆動する。
【実施例6】
【0069】
実施例6:植物形質転換ベクターの構築
多くの形質転換ベクターが植物形質転換に利用可能であり、本発明のDNA分子を前述の任意の発現カセットに挿入し、適当な条件の下で望まれる細胞中でDNA分子を発現させることができる。ヌクレオチド配列を含む発現カセットを、任意の後記の適当な形質転換ベクターに組み込む。使用のためのベクターの選択は、好ましい形質転換技術および形質転換のための標的種による。ある標的種では、種々の抗生物質または除草剤選択マーカーが好ましい。形質転換にルーチン的に使用される選択マーカーは、カナマイシンおよび関連する抗生物質に対する抵抗性を付与するnptII遺伝子(Messing & Vieria, Gene 19:259-268(1982);Bevan et al.,Nature 304:183-187(1983))、除草剤ホスヒノトリシンに対する抵抗性を付与するbar遺伝子(White et al.,Nucl Acids Res 18:1062(1990)、Spencer et al.Theor Appl Genet 79:625-631(1990))、抗生物質ハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhph遺伝子(Blochiger&Diggelmann,Mol Cell Biol 4:2929-2931)、およびメタトレキセート(methatrexate)に対する抵抗性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis and Jarry.,EMBO J.2(7):1099-1104(1983))を含む。
【0070】
アグロバクテリウム形質転換に好適なベクター
アグロバクテリウムツメファシエンスを使用する形質転換に多くベクターが利用可能である。典型的にはこれらは少なくとも1個のT−DNAボーダー配列を有し、pBIN19(Bevan,Nucl.Acids Res.(1984))およびpVictor HINK(配列番号5)のようなベクターを含む。以下に2種の典型的なベクターの構築を記載する。
pCIB200およびpCIB2001の構築
バイナリーベクターpCIB200およびpCIB2001をアグロバクテリウムでの使用のための組換えベクターの構築に使用し、以下のような方法で構築する。pTJS75kanを、pTJS75(Schmidhauser&Helinski,J Bacteriol.164:446-455(1985))をNarIによって消化し、テトラサイクリン抵抗性遺伝子を切除し、続いてNPTIIを有するpUC4KからのAccI断片を挿入して作成する(Messing & Vieira, Gene 19:259-268(1982);Bevan et al.,Nature 304:184-187(1983);McBride et al.,Plant Molecular Biology 14:266-276(1990))。XhoIリンカーを、レフトおよびライトT-DNAボーダー、植物選択可能nos/nptIIキメラ遺伝子およびpUCポリリンカーを含むpCIB7(Rothstein et al.,Gene 53:153-161(1987))のEcoRV断片にライゲートし、XhoI−消化された断片をSalI−消化されたpTJS75kanにクローニングし、pCIB200を作成する(EP0332104参照)。pCIB200は以下の特有なポリリンカー制限部位:EcoRI、SstI、KpnI、BglII、XbaI、およびSalIを含む。pCIB2001はさらなる制限部位のポリリンカーへの挿入により作成されたpCIB200の誘導体である。pCIB2001のポリリンカーにおける特有の制限部位は、EcoRI、SstI、KpnI、BglII、XbaI、SalI、MluI、BcII、AvrII、ApaI、HpaI、およびStuIである。pCIB2001は、これらの特有の制限部位を含むことに加えて、植物およびバクテリアのカナマイシン選択、アグロバクテリウム−仲介形質転換のためのレフトおよびライトT−DNAボーダー、RK2由来のE.coliおよび他の宿主間の移動のためのtrfA機能、並びにRK2からのOriTおよびOriV機能を有する。pCIB2001ポリリンカーはこれらの自身の調節シグナルを含む植物発現カセットのクローニングに適当である。本発明のDNA分子を含む前記した植物発現カセットのいずれかを、pCIB2001に好ましくはポリリンカーを使用して挿入する。
【0071】
pCIB10の構築およびその誘導体のハイグロマイシン選択
バイナリベクターpCIB10は、植物での選択のためのカナマイシン抵抗性をコードしている遺伝子、T−DNAライトおよびレフトボーダー配列を含んでおり、広宿主−範囲プラスミドpRK252からの配列を組み入れており、E.coliおよびアグロバクテリウム双方で複製することが可能である。その構築はRothstein et al.(Gene53:153-161(1987))によって記載されている。Gritz et al.(Gene25:179-188(1983))によって記載されたハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの遺伝子を組み入れている種々のpCIB10の誘導体が構築されてきた。これらの誘導体によってハイグロマイシンのみ(pCIB743)、またはハイグロマイシンおよびカナマイシン(pCIB715、pCIB717)によるトランスジェニック植物細胞の選択が可能となる。このベクターを使用して本発明のDNA分子を含む発現カセットを形質転換する。
【0072】
非アグロバクテリウム形質転換に適当なベクター
アグロバクテリウムツメファシエンスを使用しない形質転換によって、選択された形質転換ベクターにおけるT−DNA配列の必要性が回避され、結果的にこれらの配列を欠いたベクターを、T−DNA配列を含む前述のもののようなベクターに加えて利用することができる。アグロバクテリウムによらない形質転換技術は、パーティクルボンバードメント、プロトプラスト取り込み(例えばPEGおよびエレクトロポレーション)、マイクロインジェクションまたは花粉形質転換(米国特許5629183)による形質転換を含む。ベクターの選択については、多くは形質転換される種にとって好ましいように選択する。以下にある典型的なベクターの構築を記載する。
【0073】
pCIB3064の構築
pCIB3064は、除草剤バスタ(またはホスヒノトリシン)による選択と組み合わされた直接的遺伝子導入法に適当なpUC−由来ベクターである。プラスミドpCIB246はE.coli GUS遺伝子に実施可能なように融合したCaMV 35SプロモーターおよびCaMV 35S転写ターミネーターを含み、公開されたPCT出願WO93/07278に記載されている。このベクターの35Sプロモーターは、開始部位の5’位に2個のATG配列を含む。これらの部位を、標準的PCR法を使用して変異させ、ATGを除去し、制限部位SspIおよびPvuIIを作成する。新しい制限部位は特有のSalI部位から96および37bp離れており、真の開始部位から101および42bp離れている。得られたpCIB246の誘導体をpCIB3025と命名する。そしてpCIB3025からSalIおよびSacIでの消化によってGUS遺伝子を切除し、平滑末端化してライゲートし、プラスミドpCIB3060を作成する。プラスミドpJIT82をJohn Innes Centre,Norwichより入手し、Streptomyces viridochromogenesからのbar遺伝子を含む400bpのSmaI断片を切除し、pCIB3060(Thompson et al.EMBO J 6:2519-2523(1987))のHpaI部位に挿入する。この作成したpCIB3064は、CaMV 35Sプロモーターおよびターミネーターの制御の下での除草剤選択のためのbar遺伝子、アンピシリン抵抗性の遺伝子(E.coliにおける選択のため)および特有の部位SphI、PstI、HindIII、およびBamHIを有するポリリンカーを含む。このベクターは本発明のDNA分子の発現をディレクトするそれ自身の調節シグナルを含む植物発現カセットのクローニングに適当である。
【0074】
pSOG19およびpSOG35の構築
pSOG35は、メトトレキセートに対する抵抗性を付与する選択マーカーとしてE.coli遺伝子ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHER)を利用する形質転換ベクターである。PCRを使用して、35Sプロモーター(〜800bp)、トウモロコシAdh遺伝子からのイントロン6(〜550bp)およびpSOG10からの18bpのGUS非翻訳リーダー配列を増幅する。E.coliジヒドロ葉酸レダクターゼタイプII遺伝子をコードしている250bpの断片をPCRによって増幅し、これらの2種のPCR断片を、pUC19ベクターバックボーンおよびノパリンシンターゼターミネーターを含むpBI221(Clontech)からのSacI-PstI断片と構築する。これらの断片の構築によって、イントロン6配列、GUSリーダー、DHFR遺伝子およびノパリンシンターゼターミネーターと融合された35Sプロモーターを含むpSOG19を作成する。pSOG19のGUSリーダーを、トウモロコシ退録斑紋ウイルス(MCMV)からのリーダー配列と置換してベクターpSOG35を作成する。pSOG19およびpSOG35はアンピシリン抵抗性のpUC遺伝子を有しており、外来配列、特に本発明のDNA分子のクローニングに利用可能なHindIII、SphI、PstIおよびEcoRI部位を有する。
【実施例7】
【0075】
実施例7:葉緑体形質転換
形質転換ベクター
本発明のDNA分子の植物色素体での発現のために、色素体形質転換ベクターpPH143(WO97/32011、実施例36)を使用する。DNA分子を、pPH143に挿入し、それによってPROTOXコード配列を置換する。次にこのベクターを色素体形質転換およびスペクチノマイシン抵抗性についての形質転換体の選択のために使用する。あるいは、DNA分子をpPH143に挿入し、aadH遺伝子を置換する。この場合、形質転換体を、PROTOX阻害剤に対する抵抗性について選択する。
葉緑体形質転換
タバコNicotiana tawbacum c.v.「Xanthi nc」の種子をプレート当たり7粒、1’’の環状に並べてTアガー培地上に発芽させる。播種12−14日後に、詳細に記載されたプラスミドpPH143およびpPH145(Svab, Z. and Maliga, P.(1993)PNAS 90, 913-917)からのDNAでコートした1μmタングステン粒子(M10, Biorad, Hercules, CA)でボンバードする。ボンバードした苗を、T培地上で2日インキュベートし、その後葉を切除し、背軸側を上にして明光(350−500μmol光量子/m/s)中で、500μg/mlスペクチノマイシンジヒドロクロリド(Sigma, St. Louis,MO)を含むPMOP培地(Svab, Z., Hajdukiewicz, P. and Maliga, P.(1990)PNAS 87, 8526-8530)のプレート上に置く。ボンバードメントの3ないし8週間後に下方に白化した葉を示す抵抗性シュートを、同じ選択培地上にサブクローニングしカルスを形成させ、二次的シュートを単離しサブクローニングする。独立したサブクローンにおける形質転換した色素体ゲノムコピーの完全な分離(ホモプラスミシティ)を、サザンブロッティングの標準的な方法によって評価した(Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor)。BamHI/EcoRI消化した総細胞DNA(Mettler, I. J. (1987)Plant Mol Biol Reporter 5, 346-349)を、1%トリスボレート(TBE)アガロースゲル上で分離し、ナイロン膜(Amersham)に移し、rps7/12色素体ターゲッティング配列の一部を含むpC8からの0.7kb BamHI/HindIII DNA断片に対応する、32P標識したランダムプライマーDNA配列で探索した。ホモプラスミックなシュートをスペクチノマイシン含有MS/IBA培地(McBride, K. E. et al.(1994)PNAS 91, 7301-7305)上で無菌的に発根させ、グリーンハウスに移す。
【実施例8】
【0076】
実施例8:PolCプロモーターによって駆動されるBWYVからのコートタンパク質遺伝子についてのセンスおよびアンチセンスデュプレックスRNA断片をコードするキメラ遺伝子カセットの構築
ビート西部萎黄病ウイルス(BWYV)(いわゆるウイルスイエロー)コートタンパク質(CP)遺伝子の0.6Kbの「センス」配向断片をプライマーHiNK025bis(5’−CAA TTA CCA TGG ACA CGG TCG TGG−3’、配列番号6;NcoI制限部位に下線を付す)およびHiNK226(5’−GCC AAA TGT TTG AAC GCT GCA GCC TAT TTG−3’、配列番号7;PstI制限部位に下線を付す)を使用してプラスミドpZU046から増幅する。あるいは、断片をプラスミドpBW17(Veidt et al, Nucleic Acids Research 16: 9917-9932, 1988; accession number X13063)から、プライマーHiNK025bis2(5’− AAT CGT CCA TGG ATA CGG TCG TGG−3’、配列番号8;ヌクレオチド3475ないし3498、NcoI制限部位に下線を付す)およびHiNK226bis(5’−CTA GGG CCG GGT TCC TCT GCA GCC TAT TTG−3’配列番号9、ヌクレオチド4114ないし4085、PstI制限部位に下線を付す)を使用して増幅する。TaqDNAポリメラーゼ(Life Technologies)を、製造者の規定にしたがって25μl反応中で使用し、30サイクルの94℃/30秒、55℃/30秒、72℃/90秒(+2秒/サイクル)を適用する。得られたPCR断片を、Seakem GTG アガロース(FMC)から作成した1%トリスアセテートゲルでの電気泳動、続いてPCR産物を含むゲルスライスからQIAquickゲルエキストラクションキット(QIAGEN)での抽出によって精製する。その後、標準的方法にしたがってNcoIおよびPstI(すべての制限酵素は、Life Technologiesから入手)で消化し、再びゲル精製した。精製した断片を、RolCプロモーターおよびNosターミネーターの間にT4 DNAリガーゼ(Life Technologies)を使用してライゲートする。得られたクローンをpHiNK138と命名する。
【0077】
前記と同様な方法で、1.4Kb「アンチセンス」配向BWYV CP断片を、プラスミドpZU174AからプライマーHiNK251(5’― CTC CCA GGT TGA GAC TGC CCT GCA GTG CCC A―3’、配列番号10;PstI制限部位に下線を付す)およびHiNK228(5’―TTA CCA TGC ATA CGG TCG TGG GTA GG―3’、配列番号11;NsiI制限部位に下線を付する)を使用して、あるいは、プラスミドpBW17からプライマーHiNK251(ヌクレオチド4844ないし4814)およびHiNK228bis(5’−CGT TAA TGC ATA CGG TCG TGG GTA GG−3’、配列番号12;ヌクレオチド3478ないし3503、NsiI制限部位に下線を付す)を使用して増幅する。ゲル精製して、PCR産物をNsiIおよびPstIで消化する。4.9Kb プラスミドpHiNK138をPstIで線形化し、熱感受性アルカリフォスファターゼ(Life Technologies)を使用して脱リン酸化する。ベクターおよびPCR断片をゲル精製し、続いてpHiNK138にPCR断片を双方向ライゲーションする。CP遺伝子(配列番号13)についてのデュプレックスRNAを生ずる配向を制限部位分析によって決定し、それは、逆方向の繰り返しがCP遺伝子の下流のBWYVゲノムに由来する0.7Kbスペーサー配列(ORF6という)によって分離されている0.6Kb CP遺伝子からなるpHiNK152を生じた。スペーサー配列はアンチセンス配向である。最終的に、当該遺伝子カセットを、選択マーカー遺伝子としてホスホマンノースイソメラーゼを有する特許のバイナリーベクターpVictorHiNK(WO 94/20627)に送達し、pHiNK179を得る。
【実施例9】
【0078】
実施例9.1:アラビドプシスUbi3intプロモーターによって駆動される、BNYVVからのレプリカーゼ遺伝子についてのセンスおよびアンチセンス(デュプレックス)RNA断片をコードするキメラ遺伝子カセットの構築
総RNAをビートえそ性葉脈黄化ウイルス(BNYVV)フロウイルスに感染したシュガービート根から、QIAGENのRNAeasy Plantミニキットを使用して抽出する。BNYVVレプリカーゼ遺伝子(RNA1)の3’末端を増幅するために、RNAを、Superscript(商標)II RNAse H-Reverse Transcriptase(RT)(Life Technologies)および逆プライマーHiNK285(5’−TCG TAG AAG AG A ATT CAC CCA AAC TAT CC−3’、配列番号14)を使用して逆転写し、cDNAを生成する。プライマーHiNK285は、BNYVV RNA1配列(accession number D00115)のヌクレオチド6378および6405の間に位置し、EcoRI部位を導入するよう設計されている。次に、RT反応を使用して2種類のPCR反応のためのテンプレートとして使用する:
BamHI部位を導入するよう設計されたBNYVV RNA1のヌクレオチド5168bpおよび5178bpの間に位置するプライマーHiNK283(5’―AAG AAT TGC AGG ATC CAC AGG CTC GGT AC―3’配列番号15)、およびEcoRI部位を導入するよう設計されたBNYVV RNA1のヌクレオチド5597および5620の間に位置するプライマーHiNK284(5’−TTC CAA CGA ATT CGG TCT CAG AC A―3’、配列番号16)を使用する反応A。
プライマーHiNK283をプライマーHiNK285と組み合わせて使用する反応B。両者は前記した。
【0079】
こうして得られたRT−PCR産物は、将来のRNAデュプレックスを構成するヌクレオチド5168−5620の間にBNYVV RNA1配列を有する。将来のスペーサー配列は、プライマーHiNK283およびHiNK285で得られるRT−PCR産物に存在するBNYVV RNA1のヌクレオチド5621−6405bpに対応する。
TaqDNAポリメラーゼ(Life Technologies)を製造者の規定にしたがって25μl反応中で使用し、94℃/30秒、55℃/30秒、72℃/90秒(+2秒/サイクル)の30サイクルを適用する。得られたRT−PCR産物を、Seakem GTG アガロース(FMC)から作成した1%トリスアセテートゲルによる電気泳動、続いてQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)による増幅産物を含むゲルスライスの抽出によって精製する。ゲル精製の後、RT−PCR産物を制限酵素BamHIおよびEcoRI(life Technologies)によって標準的方法にしたがって消化し、前記のように精製する。
最終的に、RT−PCR産物をアラビドプシスユビキチン3(Ubo3int)プロモーターおよびNosターミネーターの間にT4 DNAリガーゼ(Life Technologies)を使用する3段階のライゲーション反応によってクローニングする。2種類の得られたクローンを、pHiNK181(アンチセンス配向のスペーサー、配列番号17参照)およびpHiNK184(センス配向のスペーサー、配列番号18参照)と称する。
【0080】
シュガービートのアグロバクテリウム仲介形質転換のためのバイナリーベクターを構築するために、選択マーカーとしてホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子を有するバイナリーベクターpVictorHiNK(WO 94/20627)、並びにプラスミドpHiNK181およびpHiNK184からのDNAを、AscIおよびPacI(New England Biolabs)によって消化し、ベクターおよび挿入断片を前記のように電気泳動で精製する。得られた7.7kb pVictorHiNKベクター断片を、T4 DNAリガーゼ(Life Technologies)を使用して、BNYVVレプリカーゼ遺伝子のデュプレックスRNAをコードしている遺伝子カセットにライゲートし、それぞれpHiNK187(アンチセンススペーサー)およびpHiNK188(センススペーサー)を得る。
【0081】
実施例9.2:シュガービートのアグロバクテリウム仲介形質転換
植物種のアグロバクテリウム仲介形質転換法はよく確立され当業者に既知であり、外植体型、アグロバクテリウム株、または使用される選択マーカーおよび再生系によって変化してもよい。ここで以下のプロトコールには、外植体のソースとして子葉、選択マーカー遺伝子としてマンノース−6−フォスフェートイソメラーゼを使用するシュガービートのアグロバクテリウム仲介形質転換を記載する(Joersbo et al, Molecular Breeding 4: 111-117, 1998)。表面殺菌したシュガービート種子をウォーターアガー上に弱光下で約12℃の温度で発芽させる。十分に展開した子葉を、節領域のすぐ下方で横断的に切断することによって苗から切除し、両方の子葉をやさしく引っ張り切裂く。子葉外植体を、20g/lスクロース、0.25mg/l BA、0.05mg/l NAA、500μM アセトシリンゴンを補足したMS培地pH5.2に希釈した適当な形質転換ベクターを有するアグロバクテリウム株EHA101の最適密度(OD600)0.1ないし0.3に希釈した懸濁液に子葉を浸すことによって接種する。インキュベーションの5分後、外植体をアグロバクテリウム懸濁液から移動し、無菌濾紙に浸し、接種懸濁液の接触を除去し、共培養プレート上に移す。共培養プレートは、30g/l スクロース、200μM アセトシリンゴンを含み、4.7g/l アガロースで固めた1/10MS培地pH5.7を含み、固めた培地の上に1.5ml TXD培地(PGOビタミン、0.005mg/l カイネチン、4mg/l CPA(p−クロロフェノキシ酢酸)、30g/l スクロースで補足したMS塩、pH5.7)で湿らせた濾紙で覆ったペトリ皿からなる。外植体を弱光下21℃で4日間共培養し、次に20g/l スクロース、1.25g/l マンノース、0.25mg/l BA、0.05mg/l NAA、500mg/l カルベニシリンで補足し9g/l アガーで固めたMS培地pH5.9からなる選択再生培地に移す。3週間ごとに、外植体を次第にマンノースの濃度を最大15g/lまで増加させる新しい培地に継代培養する。21℃の12週間の選択および再生の後、再生したシュートを収穫し、発根させ、Feramisco and co-workers(Feramisco et al, Biochem. Biophys. Res. Comm. 55: 636-641. 1973)に記載された共役酵素反応に本質的にしたがってPMI活性を分析する。陽性の植物を土でポット植えして、最終的にグリーンハウスに移す。
【0082】
実施例9.3:rhizomaniaに対する抵抗性のスクリーニング
土に播種またはポット植えして、苗またはT0形質転換体を、BNYVVを有するPolymyxa betaeが蔓延している土壌に移植する前に、最初に約4週間の期間、根系を十分に発達させる。蔓延した土壌をドイツのrhizomania汚染圃場から収集する。抵抗性検定の間、植物を12cmポットで約21℃、16時間明期で成長させる。蔓延した土壌への移植の4週間後、植物を土壌から抜き取り、根系の底半分を固着した泥から水洗して除去する。0.5gの根組織の無作為サンプルからの液汁を、Pollaehne pressの方法で収集し、2% PVPおよび0.2% 卵白アルブミンで補足したリン酸バッファー塩水pH7.2からなる10mlの抽出バッファーに添加する。サンプル中の存在ウイルスの量を、BNYVVのためのトリプル抗体サンドイッチ(TAS)ELISA(Adgen Ltd, Scotland, UKから入手可能、供給者の指示に本質的に従う)で決定する。標準曲線を各プレートについて作成し、根サンプルのウイルス含量を測定した吸光値から算出する。非形質転換感受性シュガービート植物を否定的なコントロールとして使用し、自然のrhizomania抵抗性のためのC28遺伝子を有する植物を肯定的なコントロールとする。表1は、プラスミドpHINK188で得られた形質転換事象の結果の要約である。
【表1】

【表2】

【実施例10】
【0083】
実施例10:メロンにおけるズッキーニ黄化モザイクポティウイルス(ZYMV)およびパパイヤリングスポットポティウイルス(PRSV)抵抗性のための植物形質転換ベクターの構築:
NOSターミネーター(Beven, M., et al, 1983 Nucleic Acids Res. 11(2), 369-385)を260bp HindIII/PistI断片としてHindIII/PstIで消化してプラスミドpZO1560にクローニングする。PZO1560は、多数のクローニング部位より有用なものと置換されたpUC由来プラスミドである。NOSターミネーターの挿入の後、新しい構築物をpZU553と命名する。
1728bp Ubi3プロモーター/イントロン断片(Callis, J., et al, (1995 Genetics 139(2), 921-939)をBamHIで消化、次にT4 DNAポリメラーゼ処理およびKpnI消化によって単離する。この断片をpZU553にクローニングし、SmaIで消化する。新しい構築物をpZU615と命名する。
【0084】
pZU615に挿入されるべきさらなるDNA断片を、Pfx DNAポリメラーゼを使用するPCRによって最初に増幅し、得られたPCR断片をpBluescript SK+にクローニングする。513bpアクチン2イントロンL(リーダーイントロン)断片を増幅するために、2種のプライマーをAn et al, The Plant Journal: 10: 107-121, 1996からの配列に基づいて設計する。5’プライマー(ZUP1563:5’−GGGCGGATCCGCTAGCCCGCGGCCGCTCTTTCTTTCCAAGG−3’、配列番号19)は5’スプライシング部位の上流に直接アニーリングし、BamHI、NheIおよびSacII制限部位を増幅されるべきアクチン2イントロンL断片の5’末端に付加する。3’プライマー(ZUP1564:5’―CCCGCCATGGGTCGACGCCATTTTTTATGAGCTGC―3’、配列番号20)は3’スプライシング部位の下流に直接アニーリングし、SalIおよびNcoI制限部位を増幅されるべきアクチン2イントロンL断片の3’末端に付加する。PCR断片をZUP1563および1564によって増幅し、pBluescriptのEcoRV部位にクローニングする。新しいプラスミドをpZU611と命名する。プラスミドpZU615にAct2イントロンLを供給するために、499bp BamH/NcoI Act2イントロンL断片をpZU611から単離し、BamHIおよびNcoIで消化したpZU615のUbi3プロモーター/イントロンの下流およびNOSターミネーターの上流にクローニングする。新しい構築物をpZU616と命名する。この断片の挿入は、同時に、次の3段階のクローニングのためのさらなる制限部位をカセットに提供する。
【0085】
非翻訳(nt)739bp PRSV CP断片(Shyi-Dong, Y., et al,(1992).Journal of General Virology 73, 2531-2541)を増幅するために、二種のプライマーをShyi-Dong Yehからのフランスの圃場の分離株の配列に基づいて設計する。5’プライマー(ZUP1565:5’―CCCGCCATGGGATCCGATGATTTCTACCGAGAATTAAGGG―3’、配列番号21)はPRSV CPの開始コドンの285bp下流にアニーリングし、非翻訳PRSV CP断片の5’末端にNcoIおよびBamHI制限部位を付加する。3’プライマー(ZUP1566:5’―GGGCGCTAGCCTAATGCTTATATAGTACC―3’、配列番号22)は、PRSV CPの停止コドンの55bp下流にアニーリングし、非翻訳PRSV CP断片の3’末端にNheI制限部位を付加する。増幅したPCR断片を、pBluescriptのEcoRV部位にクローニングし、新しいプラスミドをpZU612と命名する。
【0086】
735bp非翻訳ZYMV CP断片(Gal-On, A., et al,(1990. Gene 87, 273-277)を増幅するために、2種のプライマーをGal-On, A.からのフランス圃場分離株の配列に基づいて設計する。5’プライマー(ZUP1567:5’―GGGCGCTAGCCTTGCTGGAGTATAAGCCGG―3’、配列番号23)はZYMV CPの開始コドンの253bp下流にアニーリングし、ZYMV CP非翻訳断片の5’末端にNheI制限部位を含む。3’プライマー(ZUP1568:5’―GGGCGTCGACCGCGGGCTTTAAAGGTGGGAGGCCC―3’、配列番号24)は、ZYMV CP停止コドンの89bp下流にアニーリングし、非翻訳ZYMV CP断片の3’末端にSacIIおよびSalI制限部位を含む。増幅したPCR断片をpBluescriptのEcoRV部位にクローニングする。新しいプラスミドをpZU613と命名する。ZYMV CP非翻訳断片を次に、pZU616にUbi3プロモーター/イントロンの下流でAct2イントロンLの上流にクローニングする。この目的のために、719bp NheI/SaclI ZYMV CP非翻訳断片をpZU613から単離し、pZU616のNheIおよびSaclI部位にクローニングする。この構築物をpZU617と命名する。次に、PRSV CP非翻訳断片をpZU617にUbi3プロモーター/イントロンの下流でZYMV CP非翻訳断片の上流にクローニングする。この目的のために720bp BamHI/NheI pRSV CP非翻訳断片をpZU612から単離し、pZU617のBamHIおよびNheI部位にクローニングする。この新しい構築物をpZU618と命名する。
【0087】
遺伝子カセットを完成するためにクローンニングすべき最後の断片は、PRSV CP非翻訳断片および同じ配向でその下流にZYMV CP非翻訳断片を含む。対応する断片をテンプレートとしてpZU618からPfx PCR並びにプライマーZUP1565およびZUP1568を使用して増幅する。このPCR断片をpBluescript SK+のEcoRV部位にクローニングし、得られたプラスミドをpZU619と命名する。
逆方向反復遺伝子カセットを構築するためにPRSV CP(nt)/ZYMV CP(nt)断片を、pZU618プラスミドにすでに存在するPRSV CP(nt)/ZYMV CP(nt)断片と逆方向にpZU618に挿入する。この目的のために1445bp SalI/NcoI PRSV CP(nt)/ZYMV CP(nt)断片をpZU619から単離し、SalIおよびNcoIで消化したpZU618にAct2イントロンLの下流でNOSターミネーターの上流にクローニングする。得られたプラスミドをpZU622と命名する。当該カセットをバイナリーベクターpZU547、SMASプロモーター/PMI/NOSターミネーター選択カセットをさらに含むプラスミドpVictorHinkに由来するバイナリーベクターに挿入する。この末端に逆方向反復遺伝子カセットを含む5414bp AscI/PacI DNA断片をpZU622から単離し、pZU547のAscIおよびPacI部位にタンデム配向で選択カセットの上流にクローニングする。最終的な構築物をpZU623(配列番号25)と命名する。
【実施例11】
【0088】
実施例11:トマトにおけるジャガイモYウイルス(PVY)のための植物形質転換ベクターの構築
R.A.A. van der Vlugtの論文「Engineering resistance against potato virus Y」(1993)に公開されたPVYn(PVYのフランス圃場分離株)の配列に基づいて、2種のプライマー(ZUP1598:5’―CATGCCATGGATCCAATGGCCACGAATTAAAGCTATCACGTC―3’、配列番号26、およびZUP1590:5’― ACGCGTCGACCGCGGATTCAAACGATTATTAATTACGATAAAAG―3’、配列番号27)を使用して、標準的PCRによって、Life TechnologiesからのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼを使用して、コートタンパク質シストロン配列および99ヌクレオチドの3’末端非翻訳領域を含む804bp断片を増幅する。増幅したPCR断片を平滑末端断片としてpBluescript SK+のEcoRV部位にクローニングし、pZUAと命名する。増幅したPVY特異的挿入物をBamHI/SaclI断片として切除し、pZU616のBamHI/SaclI部位にクローニングし(実施例10参照)、pZUBを得る。PZUBおよびpZUCの両方をNcoIおよびSalIで消化する。pZUAからのPVY特異的断片をアガロースゲルから精製し、NcoIおよびSalIで消化したpZUBにライゲートし、以下のエレメントを含むpZUCを得る:
イントロンを有するUBI3プロモーター、続いてBamHI/SacII断片トしてのセンス配向のPVY PCR産物、続いてSacII/SalI ACT2イントロン、続いてSaII/NcoI断片としてのアンチセンス配向のPVY PCR産物、さらに最後にNcoI/HindIII断片としてのnosターミネーター。最終的にpZUCを、pHiNK085バイナリーベクター由来のSMASプロモーター/PMI/NOSターミネーター選択カセットを含むバイナリーベクターpZU547にクローニングする。最終的な構築物をpZU634(配列番号28)と命名する。
【実施例12】
【0089】
実施例12:メロンおよびトマト植物材料へのバイナリーベクターの形質転換
植物材料へのバイナリーベクターの送達方法は確立され当業者に既知である。その方法を、例えば、使用するアグロバクテリウム株の相違、外植体材料の起源の相違、再生系の相違、および形質転換されるべき植物種の品種の相違によって変える。前記実施例10および11のバイナリー植物形質転換ベクターを、後記手段にしたがって形質転換実験に使用する。バイナリーベクターをエレクトロポレーションによってアグロバクテリウムツメファシエンスに送達し、続いて植物外植体材料と形質転換したアグロバクテリウム株を接種、共培養し、適当な抗生物質を使用してアグロバクテリウム株を選択的に殺し、マンノースを含む選択培地上で成長させることによって形質転換した細胞を選択し、組織をシュート誘導培地に移し、発根誘導培地に選択したシュートを移し、小植物体を土に移す。前記実施例10および11の遺伝子カセットの存在を確認するために、トランスジェニック植物からの全DNAを周知のサザンブロッティング分析法を使用して分析する。
【実施例13】
【0090】
実施例13:ZYMVおよびPRSV抵抗性についてのトランジェニックメロン植物のスクリーニング
病原体に感染しないように、形質転換した植物をグリーンハウスで標準的隔離条件で成長させる。最初の形質転換体を自殖させ、種子を収穫する。
最初の形質転換体のS1後代の100植物を、挿入した遺伝子の分離について分析し、次に機械的接種によってZYMVで感染させる。ZYMVで全体に感染した宿主植物からの組織を、5体積の氷温接種バッファー(10mMリン酸バッファー)中で磨砕し、カーボランダム粉末とともに1週齢の苗の子葉および第1葉上にこすりつける。接種した植物を接種後3週間の間、症状の発生をモニターする。ZYMV配列を有する植物は、ZYMV感染に対する感受性が減少し、これに対して非形質転換コントロール植物は、接種後7日以内に重度の全身性ZYMV感染を示す。ZYMV耐性植物を自殖し、種子を収穫する。トランスジェニックZYMV抵抗性植物を、前記の方法にしたがってPRSVで機械的に接種する。ZYMVにすでに抵抗性の植物は、PRSV感染に対しても感受性が減少しており、これに対して非形質転換コントロール植物は、接種後7日以内に重度の全身性PRSV症状を示す。
【実施例14】
【0091】
実施例14:PVYに抵抗性のトランスジェニックトマト植物のスクリーニング
形質転換した植物を、病原体の感染を防止するために、標準的隔離条件下でグリーンハウス内で成長させる。最初の形質転換体を自殖させ種子を収穫する。
最初の形質転換体のS1後代の50植物を、挿入した遺伝子の分離について分析し、次に機械的接種によってPVYで感染させる。PVYで全身的に感染した宿主植物からの組織を、5体積の氷温接種バッファー(10mMリン酸バッファー)中で磨砕し、カーボランダム粉末とともに5週齢の苗の最初の2枚の十分に伸長した葉上にこすりつける。接種した植物を接種後3週間の間、症状の発生をモニターする。PVY配列を有する植物は、PVY感染への感受性が減少し、これに対して非形質転換コントロール植物は、接種後7日以内に重度の全身性PVY症状を示す。
前記の実施態様は例示である。本発明の記載は当業者に本発明の多くの変更を有するものを提供する。自明で予測可能な変更は、すべて添付のクレームに包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号13の1132−1737ヌクレオチド、配列番号17の1739−2166ヌクレオチド、配列番号25の1790−2430ヌクレオチド、配列番号25の2511−3111ヌクレオチド、および配列番号28の1790−2574ヌクレオチドに見られるDNA配列を1個以上そのウイルス遺伝子内に含むウイルスからなる群から選択される1より多いウイルスに対する抵抗性または耐性を植物細胞に付与する方法であって:
1対よりも多い対のDNA配列を植物細胞に導入する工程を含む方法であって、各々の対に関し、第1のDNA配列が当該ウイルスのウイルス遺伝子の一部をコードし、対となる第2のDNA配列が、第1のDNAのアンチセンス配列をコードし、対をなす第1および第2のDNA配列によりコードされるRNA配列が、ウイルス感染により、当該植物細胞で発現したときに二本鎖RNAを形成するものであり;当該対をなすDNA配列により、ウイルス遺伝子の一部が減少した発現がもたらされるものであり;さらに、当該一群の1より多いウイルスに対する当該植物細胞の抵抗性または耐性をもたらす、少なくとも2対の導入されたDNA配列が当該一群の異なるウイルスに由来するものである、方法。
【請求項2】
各々の対の当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列が当該植物細胞のゲノムに安定的に組みこまれている、請求項1の方法。
【請求項3】
各々の対の当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列が2個の別々のDNA分子に含まれている、請求項1の方法。
【請求項4】
当該DNA配列がさらに各々の対の当該第1のDNA配列に実施可能なように連結されている第1のプロモーターおよび当該第2のDNA配列に実施可能なように連結されている第2のプロモーターを含む、請求項3の方法。
【請求項5】
対をなす当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列が1個のDNA分子に含まれている、請求項1の方法。
【請求項6】
対をなす当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列が当該DNA分子の同じDNA鎖に含まれている、請求項5の方法。
【請求項7】
対をなす当該第1および第2のDNA配列によりコードされるRNA配列が1個のRNA分子に含まれている、請求項6の方法。
【請求項8】
当該RNA分子がフォールディングし、そこに含まれる当該RNA配列が二本鎖領域を形成することのできる、請求項7の方法。
【請求項9】
当該DNA分子がさらに当該第1のDNA配列および第2のDNA配列に実施可能なように連結されているプロモーターを含む、請求項5の方法。
【請求項10】
当該プロモーターが異種性のプロモーターである、請求項9の方法。
【請求項11】
当該プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項9の方法。
【請求項12】
当該プロモーターが発育段階に応じて調節されるプロモーターである、請求項9の方法。
【請求項13】
当該プロモーターが構成的プロモーターである、請求項9の方法。
【請求項14】
当該プロモーターが誘導可能プロモーターである、請求項9の方法。
【請求項15】
当該DNA分子がさらに第1および第2のDNA配列の間のリンカーを含む、請求項7の方法。
【請求項16】
第1および第2のDNA配列によりコードされる当該RNA配列が2個のRNA分子に含まれている、請求項6の方法。
【請求項17】
当該第1のDNA配列が第1のプロモーターに実施可能なように連結され、当該第2のDNA配列が第2のプロモーターに実施可能なように連結されている、請求項16の方法。
【請求項18】
当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列が、双方向性プロモーターに実施可能なように連結されている、請求項16の方法。
【請求項19】
当該第1のDNA配列および当該第2のDNA配列が、当該DNA分子の相補鎖に含まれている、請求項6の方法。
【請求項20】
当該第1のDNA配列が、当該DNA分子中の当該第2のDNA配列の相補的DNA鎖である、請求項19の方法。
【請求項21】
当該DNA分子がさらに、当該第1のDNA配列に実施可能なように連結されている第1のプロモーターを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
請求項1の方法により得られる植物細胞であって、当該細胞が当該フロウイルス、ポティウイルス、およびルテオウイルスからなる群から選択される1より多いウイルスに対して抵抗性または耐性である植物細胞。
【請求項23】
請求項22の植物細胞を含む植物であって、当該フロウイルス、ポティウイルス、およびルテオウイルスからなる群から選択される1より多いウイルスに対して抵抗性または耐性である植物。
【請求項24】
請求項22の植物細胞から再生した植物であって、当該フロウイルス、ポティウイルス、およびルテオウイルスからなる群から選択される1より多いウイルスに対して抵抗性または耐性である植物。
【請求項25】
請求項24の植物から生産された種子であって、当該種子が当該フロウイルス、ポティウイルス、およびルテオウイルスからなる群から選択される1より多いウイルスに対して抵抗性または耐性であり、当該1対より多い対のDNA配列を含むものである、種子。

【公開番号】特開2010−88435(P2010−88435A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255087(P2009−255087)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願2008−224753(P2008−224753)の分割
【原出願日】平成12年5月8日(2000.5.8)
【出願人】(501016559)シンジェンタ・パティシペーションズ・アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Syngenta Participations AG
【Fターム(参考)】