説明

ウイング開閉補助装置

【課題】 ウイングの歪み、製造誤差や取付誤差に基づいてウイング開放時の開放モーメントが大きく変化したときに、その変化量を減少可能にする。
【解決手段】 貨物自動車の貨物室に固定する基体1に第1リンク13を回転可能に取り付け、基体1に弾性力発生機構31を設け、第1リンク13は、弾性力発生機構31に連結してモーメントを受ける構成にした。第1リンク13の先端には、第2リンク14の基端を連結し、第2リンク14の先端をウイングに連結可能にし、第2リンク14は、ウイングに開放モーメントを与える構成にした。ウイング閉鎖時に、第1リンク13は倒伏し、第2リンク14は第1リンク13の回転中心側に倒れて傾斜する。ウイング開放時に、第1リンク13は起立し、第2リンク14は傾斜角度が緩くなる。第2リンク14は、螺子機構によって伸縮可能にし、長さを調整可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車の貨物室に設けるウイングの開閉操作を補助する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車の貨物室は、右側と左側の側面をそれぞれウイングで開閉する。ウイングは、天板部と側板部を結合して構成している。逆L形縦断面形状のウイングは、天板部の側辺を、貨物室の天井に前後方向に沿って掛け渡した梁に回転可能に連結している。開き戸のウイングは、天板部が横に、側板部が縦になる下降端の閉鎖位置と、天板部が縦に、側板部が横になる上昇端の開放位置との間で、90度位回転する。
【0003】
ウイング開閉機構は、作業者が手でロープを掴んでウイングを開閉操作する操作機構と、ウイングを下降端の閉鎖位置に保持するロック機構を設けている。ウイングは、大型で重く、自重によって回転中心の回りに形成される閉鎖モーメントが大きい。作業者が手でウイングを開閉する操作は、大きな力を要し、困難である。そこで、ウイング開閉機構は、作業者の操作力を低減するため、開閉補助装置を設けている。開閉補助装置は、ウイングの自重による閉鎖モーメントと逆向きの開放モーメントをウイングに作用させる。
【0004】
このウイング開閉補助装置は、図1に示すように、基体1の一端側に第1リンク13を回転可能に取り付けている。基体1の他端側には、ばねによる弾性力発生機構31を設けている。また、ばねの弾性力による牽引力を回転力にする回転力発生機構を設けている。第1リンク13は、回転力発生機構を経て弾性力発生機構31に連結している。第1リンク13は、ばねの弾性力によって回転力、モーメントM1を受ける。また、第1リンク13は、先端に第2リンク14の基端を回転可能に連結している。第2リンク14は、先端を、ウイングWの天板部が固定される取付部材41に回転可能に連結している。また、第2リンク14は、第1リンク13の上側に配置している。
【0005】
ウイング開閉補助装置は、貨物室に左右方向に沿って取り付けられる。図1(a)に示すように、基体1の一端側、第1リンク13の回転中心b側にウイングWの回転中心wが、基体1の他端側、弾性力発生機構31側にウイングWの側板部が位置する。第2リンク14の上側には、ウイングWの天板部が位置する。第2リンク14先端の取付部材41には、ウイングWの天板部が固定される。第2リンク14は、ウイングWに開放モーメントM2を与える。
【0006】
ウイングWの閉鎖時には、図1(a)に示すように、第1リンク13は、弾性力発生機構31側に倒伏する。第2リンク14は、第1リンク13の回転中心b側、ウイングWの回転中心w側に倒れて傾斜する。ウイングWの回転角度θが90度位になる開放時には、同図(b)に示すように、第1リンク13は、起立する。第2リンク14は、鉛直線からの傾斜角度が緩くなる。
【0007】
第1リンク13の回転中心bから、第1リンク13が第2リンク14をその軸心方向に押す力の作用線までの距離をL3とする。ウイングWの回転中心wから、第2リンク14がその軸心方向にウイングWを押す力の作用線までの距離をL4とする。すると、ウイング開閉補助装置がウイングWに与える開放モーメントM2は、
M2=M1・L4/L3
となる。距離L3、L4は、それぞれ、ウイングWの回転角度θによって変化する。従って、開放モーメントM2は、ウイングWの回転角度θによって変化する。
【0008】
【特許文献1】特開2005−67580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなウイング開閉補助装置において、ウイングWの回転角度θが90度位の開放時には、図1(b)に示すように、第1リンク13と第2リンク14との間の角度が180度弱であり、上記の式、M2=M1・L4/L3における距離の比L4/L3が大きく、開放モーメントM2が大きい。第1リンク13と第2リンク14との間の角度が180度に近づくに従って、距離の比L4/L3が急激に大きくなり、開放モーメントM2が急激に大きくなる。第1リンク13と第2リンク14が直線状になると、距離の比L4/L3が無限大になる。死点になる。
【0010】
ウイングWの開放時には、ウイングWが自重による閉鎖モーメントMに抗して開放状態に維持され、かつ、作業者がウイングWを開放モーメントM2に抗して閉鎖し易くなるように、開放モーメントM2の値が設定される。
【0011】
ところが、ウイングWは、貨物室の前後方向に沿って長く、厚さが薄い。歪み易い。ウイングWに歪み又は製造誤差や取付誤差があると、第2リンク14の先端に連結した取付部材41をウイングWに固定する位置は、所定の位置からずれる。また、ウイングWの回転中心wの位置や、ウイング開閉補助装置を貨物室に固定する位置も、製造誤差や取付誤差によってずれることがある。
【0012】
第2リンク14先端の取付部材41をウイングWに固定する位置、即ち、第2リンク14の先端の位置が第1リンクの回転中心bやウイングWの回転中心wの位置に対してずれると、距離L3と距離L4がそれぞれ変化する。第2リンク14の先端の位置が少しずれると、ウイングWの開放時においては、距離L3の変化量が距離L4の変化量に比べて非常に大きく、距離の比L4/L3の変化量が大きい。その結果、開放モーメントM2が大きく変化する。
【0013】
ウイングWの歪み、製造誤差や取付誤差に基づいてウイング開放時の開放モーメントM2が大きく変化すると、ウイングWの開放時に、ウイングWが開放状態に維持されなかったり、作業者がウイングWを閉鎖し難くなったりする。
【0014】
[課題を解決するための着想]
1)ウイングWの歪み、製造誤差や取付誤差に基づいて第2リンク14の先端の位置がずれ、ウイング開放時の開放モーメントM2が大きく変化したときは、第2リンク14の長さを増加又は減少させると、ウイングWの歪みなどに基づくウイング開放時の開放モーメントM2の変化量を低減することができる、ことに気付いた。
【0015】
例えば、ウイング開放時、図1(b)から明らかなように、第2リンク14の先端の位置がウイングWの回転中心w側にずれると、第2リンク14の傾斜角度が大きくなって、距離L3と距離L4がそれぞれ増加する。このとき、第2リンク14を短くすると、第2リンク14の傾斜角度が小さくなって、距離L3の増加量と距離L4の増加量がそれぞれ減少する。ウイングWの歪みなどに基づく開放モーメントM2の変化量が減少する。
【0016】
逆に、第2リンク14の先端の位置がウイングWの回転中心w側と反対側にずれると、第2リンク14の傾斜角度が小さくなって、距離L3と距離L4がそれぞれ減少する。このとき、第2リンク14を長くすると、第2リンク14の傾斜角度が大きくなって、距離L3の減少量と距離L4の減少量がそれぞれ減少する。ウイングWの歪みなどに基づく開放モーメントM2の変化量が減少する。
【0017】
2)ウイングWの歪みなどに基づいて第2リンク14の先端の位置がずれたとき、第2リンク14の長さを増減させるに当り、長さが少しずつ異なる第2リンクを多数用意して置いて、第2リンクを取り替える、ことが考えられる。ところが、長さが異なる多数の第2リンクを予め用意し、第2リンクの両端の軸をそれぞれ着脱して第2リンクを取り替えるのには、多くの手間が掛かる。
【0018】
そこで、第2リンクは、伸縮可能にし、長さを調整可能にすることにした。
具体的には、第2リンクは、ウイングに連結する先端側の部材と、第1リンクに連結する基端側の部材との2部材で構成する。一方の部材には螺子軸を、他方の部材には螺子孔を形成する。両部材は、螺子軸と螺子孔を螺合して一本に連結する。この第2リンクは、一方の部材を他方の部材に対して回転すると、螺子軸と螺子孔の螺子機構によって長さが増減する。一方向に回転すると、伸長する。他方向に回転すると、短縮する。1回転すると、螺子機構のピッチ分の長さが増減する。半回転すると、螺子機構の半ピッチ分の長さが増減する。第2リンクの長さは、微小量ずつ簡単に調整される。
【0019】
伸縮可能な第2リンクは、ウイングと第1リンクとの間に連結した後、長さを調整するときには、一方の部材をウイング又は第1リンクから取り外して他方の部材に対して回転し、長さを増加又は減少させた後、その部材を再びウイング又は第1リンクに連結する。
【0020】
3)ウイングとウイング開閉補助装置は、別々に貨物室に取り付ける。従って、ウイングの回転中心とウイング開閉補助装置の第1リンクの回転中心との間の距離には、取付誤差が発生する。
そこで、その取付誤差をなくすため、ウイング開閉補助装置は、これにウイングを回転可能に取り付ける構成にする、ことを着想した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
1)貨物自動車の貨物室に固定する基体を設け、基体に第1リンクを回転可能に取り付け、また、基体に弾性力発生機構を設け、弾性力発生機構の弾性力による牽引力を回転力にする回転力発生機構を設け、第1リンクは、弾性力発生機構に回転力発生機構を経て連結して弾性力によって回転力を受ける構成にし、
第1リンクの先端には、第2リンクの基端を連結し、第2リンクの先端をウイングに連結可能にし、第2リンクは、ウイングに開放モーメントを与える構成にし、
ウイング閉鎖時に、第1リンクは倒伏し、第2リンクは第1リンクの回転中心側に倒れて傾斜し、ウイング開放時に、第1リンクは起立し、第2リンクは、傾斜角度が緩くなる構成にしたウイング開閉補助機構において、
第2リンクは、伸縮可能にし、長さを調整可能にしたことを特徴とする。
【0022】
2)上記のウイング開閉補助機構において、
第2リンクは、先端側の部材と基端側の部材との2部材で構成し、一方の部材には螺子軸を、他方の部材には螺子孔を形成し、螺子軸と螺子孔を螺合して両部材を一本に連結しており、
また、第2リンクは、ウイングと第1リンクとの間に連結した後、長さを調整するときに、一方の部材をウイング又は第1リンクから取り外して他方の部材に対して回転し、長さを増加又は減少させた後、その部材を再びウイング又は第1リンクに連結する構成にしたことを特徴とする。
【0023】
3)上記のウイング開閉補助機構において、
基体は、ウイングを固定する取付部材を回転可能に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
ウイングの歪み、製造誤差や取付誤差に基づいて第2リンクの先端の位置がずれ、ウイング開放時の開放モーメントが大きく変化したときは、第2リンクの長さを調整する。すると、ウイングの歪みなどに基づくウイング開放時の開放モーメントの変化量を低減することができる。
【0025】
第2リンクは、先端側の部材と基端側の部材を螺子軸と螺子孔の螺子機構によって連結して構成している場合、第2リンクの長さの調整に多くの手間が掛からない。
【0026】
ウイング開閉補助装置にウイングを回転可能に取り付ける場合、ウイングの回転中心と第1リンクの回転中心との間の距離には、取付誤差が発生し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1例(図2〜図7参照)]
本例において、貨物自動車の貨物室に設けるウイング開閉機構は、作業者が手でロープを掴んでウイングを開閉操作する操作機構、ウイングを下降端の閉鎖位置に保持するロック機構と、ウイングの自重による閉鎖モーメントMと逆向きの開放モーメントM2をウイングに作用させる開閉補助装置を設けている。
【0028】
本例の開閉補助装置は、図2〜図5に示す。貨物室に取り付ける基体1を設けている。基体1は、長方形の底板の両側に側板を設立している。この基体1は、底板が貨物室に固定され、両側板が貨物室の左右方向に沿って配置される。
【0029】
基体1の両側板は、一端側の上部に取付軸2を掛け渡して軸受している。取付軸2は、貨物室の前後方向に沿って配置される。取付軸2には、取付部材3の基端を回転可能に取り付けている。取付部材3の回転中心は、取付軸2の中心wである。取付部材3は、上面にウイングの天板部が固定される。ウイングの回転中心は、取付部材3の回転中心wである。
【0030】
また、基体1の両側板は、一端側に支軸11を掛け渡して軸受している。支軸11は、貨物室の前後方向に沿って配置される。支軸11には、円筒12を回転可能に嵌合し、円筒12に第1リンク13の基端を固定している。即ち、支軸11には、第1リンク13を回転可能に取り付けている。第1リンク13の回転中心は、支軸11の中心bである。第1リンク13の回転中心bは、ウイングの回転中心wに対し、下側であって基体1の他端側に位置している。
【0031】
第1リンク13は、先端に第2リンク14の基端を軸15で回転可能に連結している。詳細には、第2リンク14の基端は、第1リンク13の二股状の先端に挿入し、それらに軸15を第1リンク13と第2リンク14の横断方向に沿って貫通している。軸15を抜き取ると、第1リンク13と第2リンク14の連結が解かれる。第2リンク14は、先端を取付部材3に軸16で回転可能に連結している。詳細には、第2リンク14の先端は、門形断面形状の取付部材3に挿入し、それらに軸16を第2リンク14と取付部材3の横断方向に沿って貫通している。軸16を抜き取ると、第2リンク14と取付部材3の連結が解かれる。第2リンク14の先端は、軸16と取付部材3を経てウイングに連結される。
【0032】
ウイング閉鎖時には、図2に示すように、第1リンク13は基体1の他端側に倒伏する。第2リンク14は、第1リンク13の上側に位置し、第1リンク13の回転中心b側に倒れて傾斜する。ウイング開放時には、図5に示すように、第1リンク13は起立する。第2リンク14は、鉛直線からの傾斜角度が緩くなる。
【0033】
第2リンク14は、先端側の先端部材17と基端側の基端部材18との2部材で構成している。先端部材17には、螺子軸を、基端部材18には螺子孔をそれぞれ第2リンク14の長手方向に沿って形成している。先端部材17と基端部材18は、螺子軸と螺子孔を螺合して一本に連結している。この第2リンク14は、先端部材17と基端部材18の一方を他方に対して回転すると、螺子軸と螺子孔の螺子機構によって長さが増減する。一方向に回転すると、伸長する。他方向に回転すると、短縮する。1回転すると、螺子機構のピッチ分の長さが増減する。半回転すると、螺子機構の半ピッチ分の長さが増減する。第2リンク14の長さは、螺子機構の半ピッチ分の長さ、例えば1mm、微小量ずつ簡単に調整される。
【0034】
この伸縮可能な第2リンク14は、ウイングの取付部材3と第1リンク13との間に連結した後、長さを調整するときには、軸16を抜き取って先端部材17を取付部材3から取り外し、先端部材17を基端部材18に対して回転し、第2リンク14の長さを増加又は減少させる。その後、先端部材17は、再び取付部材3に軸16で連結する。又は、逆に、基端部材18を、軸15の抜き取りで第1リンク13から取り外して先端部材17に対して回転し、長さを増加又は減少させた後、基端部材18を再び第1リンク13に軸15で連結する。
【0035】
第1リンク13は、弾性力発生機構の弾性力による牽引力を回転力にする回転力発生機構に連結している。回転力発生機構は、支軸11に嵌合した円筒12に板状のカム21の基端を固定している。カム21と第1リンク13は、円筒12を介して基端が結合し、それらの回転中心bの両側に配置している。ウイング閉鎖時には、図2に示すように、第1リンク13が基体1の他端側に倒伏する一方、カム21は、反対側に突出して横向きになる。ウイング開放時には、図5に示すように、第1リンク13が上側に起立する一方、カム21は、下側に突出して下向きになる。カム21は、その回転中心bより下側に位置する下面をカム輪郭面に形成している。カム21の回転中心bからカム輪郭面までの距離は、カム21の回転角度によって変化し、ウイングの回転角度によって変化する。
【0036】
カム21は、回転中心bと反対側、先端に牽引部材22、23の先端を連結している。牽引部材22、23は、ローラチェーン22と棒23を連結して構成している。牽引部材の先端側部分、ローラチェーン22の部分は、湾曲可能である。基体1の両側板は、他端側の下部にスプロケット24の軸を掛け渡して軸受している。牽引部材のローラチェーン22は、先端側をカム21の下面のカム輪郭面に沿わせて配置している。カム輪郭面には、ローラチェーン22のローラが接触する。また、ローラチェーン22は、基端側をスプロケット24の上部に噛み合せている。牽引部材22、23の基端は、基体1の他端側に設けた弾性力発生機構31に連結している。弾性力発生機構31が発生する弾性力は、牽引部材22、23を牽引し、牽引部材の湾曲可能な先端側部分、ローラチェーン22をカム21のカム輪郭面に押し付けて、第1リンク13を起立方向に回転する。牽引部材22、23は、ローラチェーン22の部分がスプロケット24に支持され、円滑に移動する。
【0037】
弾性力発生機構31は、基体1の他端側に螺旋ばねの受け部32を設けている。受け部32の中心孔には、牽引部材22、23の中央部を貫通している。牽引部材22、23の基端には、螺旋ばねの受け部材33を設けている。牽引部材の棒23に対する受け部材33の位置は、棒23に沿って調整可能である。牽引部材22、23の受け部材33と基体1の受け部32との間には、2本の同様な螺旋ばね34を圧縮して嵌め込んでいる。両螺旋ばね34は、上下に並列している。牽引部材22、23は、スプロケット24に噛み合った部分と基端との間の部分、スプロケット後側部分が両螺旋ばね34と平行する状態を維持する。両螺旋ばね34は、牽引部材のスプロケット後側部分の上側と下側に位置し、牽引部材のスプロケット後側部分からの距離が同じである。また、両螺旋ばね34は、それぞれ、中心孔に座屈防止部材35を挿入している。座屈防止部材35は、円筒部材に円柱部材を軸心方向に移動可能に嵌合し、円筒部材を基体1の受け部32に、円柱部材を牽引部材22、23の受け部材33に固定している。
【0038】
ウイング閉鎖時には、図2に示すように、螺旋ばね34は圧縮量が最大になり、座屈防止部材35は最短になる。牽引部材22、23を引く螺旋ばね34の弾性力は、最大になる。ウイング開放時には、図5に示すように、螺旋ばね34は圧縮量が最小になり、座屈防止部材35は最長になる。牽引部材22、23を引く螺旋ばね34の弾性力は、最小になる。
【0039】
本例のウイング開閉補助装置においては、第1リンク13の回転中心bから螺旋ばね34の弾性力の作用線までの距離がウイングの回転角度θによって変化する仕方は、カム21のカム輪郭面、カム形状に基づいて決まる。カム21は、図6に示すようなカム形状である。螺旋ばね34の弾性力による開放モーメントM2は、図7に示すように変化する。ウイングの回転角度θが90度に近づくと、弾性力による開放モーメントM2は、急激に増加し、ウイングの自重による閉鎖モーメントMとの差が急増する。ウイングの開き終りになると、ウイングの回転角度θの変化量が微小であっても、弾性力による開放モーメントM2とウイングの自重による閉鎖モーメントMとの差の変化量が大きくなる。
【0040】
ウイング開放時の弾性力による開放モーメントM2は、ウイングが自重による閉鎖モーメントMに抗して開放状態に維持され、かつ、作業者がウイングを開放モーメントM2に抗して閉鎖し易くなるように、設定されている。
【0041】
ウイングの歪み、製造誤差や取付誤差に基づいて第2リンク14の先端の位置がずれ、ウイング開放時の開放モーメントM2が大きく変化したときは、第2リンク14の長さを調整し、ウイングの歪みなどに基づくウイング開放時の開放モーメントの変化量を低減する。
【0042】
[第2例(図8、図9参照)]
本例のウイング開閉補助装置は、図8と図9に示すように、第1例におけるウイングの取付軸2と取付部材3、ウイング取付機構を基体1に設けていない。ウイング取付機構2、3は、貨物室に直接設ける。
【0043】
第2リンク14は、先端を取付部材41に軸16で回転可能に連結している。詳細には、第2リンク14の先端は、門形断面形状の取付部材41に挿入し、それらに軸16を第2リンク14と取付部材41の横断方向に沿って貫通している。軸16を抜き取ると、第2リンク14と取付部材41の連結が解かれる。取付部材41は、上面にウイングWの天板部が固定される。ウイングWの回転中心は、取付部材3の回転中心、取付軸2の中心wである。第2リンク14の先端は、軸16と取付部材41を経てウイングWに連結される。ウイング開放時には、ウイングWの回転角度が90度を超えて90度強になる。
【0044】
弾性力発生機構31は、第1例における2本の同径の螺旋ばね34に代えて、大径の螺旋ばね42と小径の螺旋ばね43を使用している。大径の螺旋ばね42と小径の螺旋ばね43は、内外に同心に配置し、牽引部材22、23の受け部材33と基体1の受け部32との間に圧縮して嵌め込んでいる。牽引部材22、23のスプロケット24後側部分は、両螺旋ばね42、43と平行し、両螺旋ばね42、43の軸芯に位置する。また、第1例における座屈防止部材35を設けていない。大径の螺旋ばね42の外周を覆う円筒状のカバー44を基体1の受け部32に固定している。
その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0045】
[変形例]
1)上記の実施形態においては、第2リンク14は、先端部材17に螺子軸を、基端部材18に螺子孔を形成しているが、逆に、先端部材17に螺子孔を基端部材18に螺子軸を形成する。
2)上記の実施形態においては、牽引部材22、23の湾曲可能な先端側部分は、ローラチェーン22であるが、ローラチェーンとは異なる湾曲可能な牽引用機械要素、例えばベルトやワイヤーロープにする。ベルトやワイヤーロープにしたときには、スプロケット24は、プーリに代える。
3)上記の実施形態においては、牽引部材22、23は、ローラチェーン22と棒23との2つの機械要素を連結して構成しているが、1つの湾曲可能な牽引用機械要素、例えばチェーン、ベルト又はワイヤーロープにする。ベルト又はワイヤーロープにしたときには、スプロケット24は、プーリに代える。
4)上記の実施形態においては、第1リンク13とカム21は、円筒12を介して結合しているが、直接に結合する。
5)上記の実施形態においては、弾性力発生機構31は、螺旋ばね34、42、43を用いているが、螺旋とは異なる形状のばねを用いる。又は、ばねとは異なる弾性体を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】貨物室のウイングと開閉補助装置の第1、第2リンクとの位置関係を示す説明図で、(a)はウイング閉鎖時を、(b)ウイング開放時を示す。
【図2】本発明の実施形態の第1例におけるウイング開閉補助装置の縦断側面図。
【図3】図2のA−b−c−d−E線組合せ断面の端面図。
【図4】同ウイング開閉補助装置の平面図。
【図5】同ウイング開閉補助機構のウイング開放状態を示す縦断側面図。
【図6】同ウイング開閉補助機構のカムの拡大側面図。
【図7】同ウイング開閉補助機構におけるウイングの開放モーメント、閉鎖モーメントと回転角度との関係を示す線図。
【図8】実施形態の第2例におけるウイング開閉補助装置の縦断側面図。
【図9】同ウイング開閉補助機構のウイング開放状態を示す縦断側面図。
【符号の説明】
【0047】
W ウイング
w ウイングの回転中心、取付軸の中心、取付部材の回転中心
b 第1リンクの回転中心、支軸の中心、カムの回転中心
M ウイングの自重による閉鎖モーメント
M1 ばねの弾性力によって第1リンクが受けるモーメント
M2 ウイング開閉補助装置の弾性力による開放モーメント
θ ウイングの回転角度
L3 第1リンクの回転中心から、第1リンクが第2リンクを押す力の作用線までの距離
L4 ウイングの回転中心から、第2リンクがウイングを押す力の作用線までの距離
1 基体
2、3 ウイング取付機構
2 取付軸
3 取付部材
11 支軸
12 円筒
13 第1リンク
14 第2リンク
15 軸
16 軸
17 第2リンクの先端部材
18 第2リンクの基端部材
21〜24 回転力発生機構
21 カム
22、23 牽引部材
22 牽引部材のローラチェーン、先端側部分
23 牽引部材の棒、基端側部分
24 スプロケット
31 弾性力発生機構
32 螺旋ばねの受け部
33 螺旋ばねの受け部材
34 螺旋ばね
35 螺旋ばねの座屈防止部材
41 取付部材
42 大径の螺旋ばね
43 小径の螺旋ばね
44 円筒状のカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の貨物室に固定する基体を設け、基体に第1リンクを回転可能に取り付け、また、基体に弾性力発生機構を設け、弾性力発生機構の弾性力による牽引力を回転力にする回転力発生機構を設け、第1リンクは、弾性力発生機構に回転力発生機構を経て連結して弾性力によって回転力を受ける構成にし、
第1リンクの先端には、第2リンクの基端を連結し、第2リンクの先端をウイングに連結可能にし、第2リンクは、ウイングに開放モーメントを与える構成にし、
ウイング閉鎖時に、第1リンクは倒伏し、第2リンクは第1リンクの回転中心側に倒れて傾斜し、ウイング開放時に、第1リンクは起立し、第2リンクは、傾斜角度が緩くなる構成にした開閉補助機構において、
第2リンクは、伸縮可能にし、長さを調整可能にしたことを特徴とするウイング開閉補助装置。
【請求項2】
第2リンクは、先端側の部材と基端側の部材との2部材で構成し、一方の部材には螺子軸を、他方の部材には螺子孔を形成し、螺子軸と螺子孔を螺合して両部材を一本に連結しており、
また、第2リンクは、ウイングと第1リンクとの間に連結した後、長さを調整するときに、一方の部材をウイング又は第1リンクから取り外して他方の部材に対して回転し、長さを増加又は減少させた後、その部材を再びウイング又は第1リンクに連結する構成にしたことを特徴とする請求項1に記載のウイング開閉補助装置。
【請求項3】
基体は、ウイングを固定する取付部材を回転可能に取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のウイング開閉補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−290180(P2006−290180A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114296(P2005−114296)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(390020031)三工機器株式会社 (39)
【出願人】(592244859)株式会社メイダイ (2)