説明

ウインドシールド構造

【課題】本発明は、車両の運転中のドライバの視線を上下に散乱させることなく安定化することができるウインドシールド構造を提供することを課題とする。
【解決手段】車両V内のドライバDの前側に位置してドライバDの視界を確保するウインドシールド構造1aにおいて、ウインドシールド2の上部にシェード部5を設け、このシェード部5の下端5aは、着座位置の前記ドライバDが略水平な直線として知覚するように形成されると共に、ルームミラー3およびサンバイザ4のうち少なくとも一方の下端(3a,4a)と一致して知覚するようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウインドシールド(フロントガラス)の下側を液晶パネルで遮光するウインドシールド構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このウインドシールド構造は、車両の走行時に液晶パネルの光透過率を低くするようになっている。このようなウインドシールド構造では、車両を運転するドライバの視線の移動範囲が、遮光された液晶パネルよりも上側の領域に制限される。その結果、このウインドシールド構造は、ドライバの視線の移動範囲を制限するのでドライバの疲労等を低減することができる。
【特許文献1】特開2000−211355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このウインドシールド構造においては、ウインドシールドの上側の領域でドライバの視線が上下に散乱することを本発明者らは後記する実験で確認している。つまり、このウインドシールド構造は、運転中のドライバの視線を、注視すべき路面付近からその上方に削いでしまうという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、車両の運転中のドライバの視線を上下に散乱させることなく安定化することができるウインドシールド構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する本発明は、車両内のドライバの前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造において、ウインドシールドの上部にシェード部を設け、このシェード部の下端は、着座位置の前記ドライバが略水平な直線として知覚するように形成されると共に、ルームミラーおよびサンバイザのうち少なくとも一方の下端と一致して知覚するようになっていることを特徴とする。
【0006】
そして、前記課題を解決する本発明は、車両内のドライバの前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造において、着座位置の前記ドライバが略水平方向を知覚する目印となる虚像をウインドシールドに投影する投影源が、車両の内装材に設けられたことを特徴とする。
【0007】
そして、前記課題を解決する本発明は、車両内のドライバの前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造において、着座位置の前記ドライバが略水平方向を知覚する目印が、ウインドシールドとルームミラーとに設けられたことを特徴とする。
【0008】
以上のような本発明のウインドシールド構造では、地平線より上方にドライバの視線が散乱する従来のウインドシールド構造(例えば、特許文献1参照)と異なって、車両の運転中のドライバの視線を上下に散乱させることなく安定化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウインドシールド構造によれば、車両の運転中のドライバの視線を上下に散乱させることなく安定化することができるので、ドライバは車両を運転する際に路面上に安定して注意を払うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
ここで参照する図1は、第1実施形態に係るウインドシールド構造の構成説明図であって、車両の前方斜め上からウインドシールド構造を見下ろした様子を示す図である。図2は、ドライバが着座位置から図1のウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。図3は、ドライバの着座位置を規定するための人体模型の配置を示す図であって、車両の左側側面から見た様子を示す側面図である。ちなみに、ここでは水平な路面に車両が接地している場合について説明する。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態に係るウインドシールド構造1aは、車両V内のドライバDの前側に位置してドライバDの視界を確保するものであって、ウインドシールド2(フロントガラスともいう)と、ルームミラー3と、サンバイザ4とで主に構成されている。
【0012】
ウインドシールド2は、車両Vの内側から外側に向かって凸となるように僅かに湾曲した透明ガラスで形成されており、その上部にはシェード部5が設けられている。本実施形態でのシェード部5は、ウインドシールド2の上端部が帯状に着色されて形成されたものであって、ドライバDや助手席の乗員(図示省略)の顔部を照らすようにウインドシールド2を介して入射する日光の光量を低減するものである。このシェード部5としては、日光の光量を低減することができれば特に制限はなく、例えば、ウインドシールド2にドットやストライプの形状で黒セラミックプリント(以下「黒セラ」と略記する。)を配置したものであってもよい。
【0013】
そして、シェード部5の下端5aは、前記したように湾曲したウインドシールド2にシェード部5が形成されていることから実質的に曲線であるものの、ドライバDが着座位置から見て略水平な直線として知覚するように形成されている。
つまり、図2に示すように、ドライバDが着座位置から見たシェード部5の下端5aは、地平線Hrと平行にウインドシールド2を横切る直線となっている。
【0014】
前記ルームミラー3は、図2に示すように、支持部3bを介してウインドシールド2の上縁中央近傍に角度調節可能に取り付けられている。このルームミラー3においては、車両Vの運転を開始する着座位置のドライバDがルームミラー3を適切な角度に位置決めした際に、そのルームミラー3の下端3aとシェード部5の下端5aとが着座位置のドライバDから見て一致して(重なって)知覚できるようになっている。
【0015】
前記サンバイザ4は、図2に示すように、ウインドシールド2の上縁側でルームミラー3を挟むようにして一対配置されている。このサンバイザ4は、略矩形の板体で構成されている。そして、このサンバイザ4の上端4bは、図示しない支持軸周りに取り付けられており、サンバイザ4は、この支持軸を中心に回動可能となっている。つまり、サンバイザ4は、その下端4aがルーフ7側から降りた図2に示す状態から、その下端4aがルーフ7側に跳ね上がった図示しない状態に変位し、そしてこれとは逆に、その下端4aが跳ね上がった状態から、その下端4aが降りた状態に変位するようになっている。
【0016】
そして、このサンバイザ4においては、ドライバDがサンバイザ4の回動角度(降ろし角度)を調節することによって、そのサンバイザ4の下端4aとシェード部5の下端5aとが着座位置のドライバDから見て一致して(重なって)知覚できるようになっている。
つまり、このウインドシールド構造1aにおいては、シェード部5の下端5aがウインドシールド2に描く略水平の直線上に、ルームミラー3の下端3aおよびサンバイザ4の下端4aが重なるように着座位置のドライバDが知覚できるようになっている。
【0017】
そして、このウインドシールド構造1aにおいてシェード部5の下端5aを規定するドライバDの目の高さは、標準的な体型のドライバDの目の高さに相当するアイポイントの高さに等しく設定されている。つまり、このアイポイントの位置でドライバDがシェード部5の下端5aを見ることで、この下端5aを略水平として知覚すると共に、ドライバDがシェード部5の下端5aと、ルームミラー3の下端3aと、サンバイザ4の下端4aとを略水平で重なり合うものとして知覚することとなる。
また、このウインドシールド構造1aでのシェード部5の下端5aは、このアイポイントの高さよりも上方の位置に設定されている。
【0018】
前記アイポイントは、JIS D 4607「自動車室内寸法測定用三次元座位人体模型(3DM−JM 50)」またはISO 6549「Road vehicles−Procedure for H−point determination」に規定する成人男子の50%タイル人体模型(以下、単に「人体模型」という場合がある)を用いて設定することができる。
このアイポイントは、車室内で基準点として定めることができ、具体的には、例えば「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(国土交通省)の別添81」に示された方法で定めることができる。ただし、アイポイントの定め方は、これに限定されるものではなく、その他の方法で定めてもよい。
ちなみに、この第1実施形態では、図3に示すように、ISO 6549に規定する着座方法により所定位置の運転席Sに人体模型12を着座させると共に、アイポイント10の高さHtは、人体模型12の股関節点であるH点11(DRP(Driver’s Reference Point)ともいう)からその垂直方向の上方に635mmとなるように設定されている。図3中、符号2はウインドシールドであり、符号Vは車両である。そして、この第1実施形態では、トルソアングルθ1(バックアングルともいう)が25度となっており、このようにトルソアングルθ1が25度のときには、アイポイント10の後方傾斜角度θ2は8度となっている。なお、トルソアングルθ1は、25度に限定されるものではなく、適宜に設定することができるが、この場合には、トルソアングルθ1の大きさに応じてアイポイント10の位置は、前記した基準点となるように補正されることとなる。
【0019】
次に、第1実施形態に係るウインドシールド構造1aの作用効果について説明する。ここで参照する図4(a)は、図2に示すウインドシールド構造での視線の移動を示す模式図であり、図4(b)は、比較例としてのウインドシールド構造での視線の移動を示す模式図である。なお、図4(a)および(b)での視線の移動を示す視線軌跡W1,W2は、アイマークレコーダ(株式会社nac製、EMR−8)を使用して求めたものである。
【0020】
一般に、ドライバが目の高さで水平な視線を意識的に決めると、ドライバは、実質的に地平線と同じ高さで車外の景色を見ることとなる。つまり、見通しのよい水平な路面に接地している車両では、ドライバは、前方の遠くに路面の切れ目として見える地平線と同じ高さで視線が決定されることとなる。
【0021】
具体的には、例えば、図4(b)に示すように、ウインドシールド2´が全体にわたって透明であるウインドシールド構造1g(比較例)では、ドライバD(図2参照)は、水平な視線でウインドシールド2´を見通して地平線Hrを見ることとなる。そして、このようなウインドシールド構造1gを有する車両Vを走行させると、ドライバDにはウインドシールド2´を通して見える景色が相対的に動くように知覚されることで、ドライバDの視線軌跡W2が地平線Hrを境にウインドシールド2´の上下に大きく散乱することを本発明者らは確認している。このような視線軌跡W2の散乱は、図示しないが、ウインドシールドの下側を液晶パネルで遮光する従来のウインドシールド構造(例えば、特許文献1参照)においても発生することが本発明者らによって確認されている。
【0022】
これに対して、図4(a)に示すように、第1実施形態に係るウインドシールド構造1aでは、着座位置のドライバD(図2参照)が、シェード部5の略水平の下端5aに重なるように、ルームミラー3の下端3a、およびサンバイザ4の下端4aを知覚することで、ドライバDの視線軌跡W1が地平線Hrよりも下方に主に集中することが前記アイマークレコーダによる視線測定で判明した。
つまり、この第1実施形態に係るウインドシールド構造1aでは、地平線Hrより上方にドライバDの視線が散乱する従来のウインドシールド構造1g(図4(b)参照)と異なって、ドライバDの視線を地平線Hrの近傍の路面に誘導することができる。
【0023】
以上のような第1実施形態に係るウインドシールド構造1aによれば、地平線Hrよりも下方にドライバDの視線の移動を集中させることができるので、ドライバDは、車両Vを運転する際に路面上に安定して注意を払うことができる。
【0024】
また、第1実施形態に係るウインドシールド構造1aによれば、シェード部5の下端5aを調節するという簡素な構造でドライバDの視線の移動を集中させることができるので、安価な製造コストを実現することができる。
【0025】
また、第1実施形態に係るウインドシールド構造1aによれば、シェード部5の下端5aに対して、ルームミラー3の下端3aとサンバイザ4の下端4aとが一直線上に重なるように配置することができるので、例えば、シェード部5の下端5aにルームミラー3やサンバイザ4が被るものと異なって、シェード部5の下端5aが形成する直線がルームミラー3やサンバイザ4で分断されることがない。その結果、このウインドシールド構造1aによれば、着座位置のドライバDがシェード部5の下端5aの全域で略水平方向を知覚することができるので、より確実に地平線Hrよりも下方にドライバDの視線の移動を集中させることができる。このように略水平方向を示す直線が分断されないウインドシールド構造1aは、ウインドシールド2の幅が大きい大型車両に適用された場合に、より大きな前記効果を発揮することとなる。
【0026】
なお、この第1実施形態に限定されることなく、ウインドシールド構造1aは次のように構成されていてもよい。
ウインドシールド構造1aの変形例としては、シェード部5の下端5aに対して、ルームミラー3の下端3aのみが一致するように着座位置のドライバDに知覚されるものであってもよいし、サンバイザ4の下端4aのみが一致するように着座位置のドライバDに知覚されるものであってもよい。
【0027】
(第2実施形態)
ここで参照する図5は、第2実施形態に係るウインドシールド構造の構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。なお、この第2実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0028】
図5に示すように、第2実施形態に係るウインドシールド構造1bは、車両V内のドライバDの前側に位置してドライバDの視界を確保するものであって、ウインドシールド2に虚像8を投影する投影源9を備えている。
この虚像8は、ドライバDが着座位置から見て略水平な直線8aとして知覚するように投影されている。この直線8aは、特許請求の範囲にいう目印に相当する。そして、この直線8aは、前記第1実施形態でのシェード部5の下端5aと同様に、湾曲したウインドシールド2に描かれた実質的には曲線であるものの、着座位置のドライバDには地平線Hrと平行にウインドシールド2を横切る直線として知覚される。
【0029】
このウインドシールド構造1bにおいて、この直線8aを略水平として見るドライバDの目の高さは、前記したアイポイント10(図3参照)の高さに等しく設定されている。また、このウインドシールド構造1bでの直線8aは、このアイポイント10の高さよりも上方の位置に投影される。
【0030】
このような直線8aをウインドシールド2に投影する投影源9は、インストルメントパネル13(以下、単に「インパネ13」ということがある)に対して印刷等によって描かれた線分14で形成されている。このインパネ13は、特許請求の範囲にいう「内装材」に相当する。この線分14は、インパネ13の上面を車幅方向に延びるように描かれており、光反射可能なガラスで形成されたウインドシールド2に映り込むことで、ドライバDには前記した直線8aとして知覚されることとなる。
ちなみに、この第2実施形態での投影源9は、インパネ13に描かれて形成されているが、これに限定するものではなく、インパネ13等の内装材に貼付されたシール状体や、内装材にシボ加工等が施されて形成された凹凸状物、LED等で形成された発光体であってもよい。
【0031】
次に、第2実施形態に係るウインドシールド構造1bの作用効果について説明する。
このウインドシールド構造1bでは、着座位置のドライバDが、略水平の直線8aを知覚することで、前記した第1実施形態と同様に、ドライバDの視線軌跡W1が地平線Hrよりも下方に主に集中する。つまり、この第2実施形態に係るウインドシールド構造1bによれば、地平線Hrよりも下方にドライバDの視線の移動を集中させることができるので、ドライバDは、車両Vを運転する際に路面上に安定して注意を払うことができる。
【0032】
また、第2実施形態に係るウインドシールド構造1bによれば、略水平方向を知覚する虚像8をウインドシールド2に投影するという簡素な構造でドライバDの視線の移動を集中させることができるので、安価な製造コストを実現することができる。
【0033】
また、第2実施形態に係るウインドシールド構造1bによれば、着座位置のドライバDは、ウインドシールド2の全幅で虚像8としての直線8aを知覚することができるので、より確実に地平線Hrよりも下方にドライバDの視線の移動を集中させることができる。そして、このようなウインドシールド構造1bは、ウインドシールド2の幅が大きい大型車両に適用された場合に、より大きな前記効果を発揮することとなる。
【0034】
また、第2実施形態に係るウインドシールド構造1bでは、略水平方向を知覚する目印が虚像8で形成されるので、ウインドシールド2に実際に目印を印刷等で描く必要がない。
【0035】
また、一般に、ウインドシールド2の裏側に車両点検済みシール等が貼付される場合がある。そして、前記した目印を付したウインドシールド2部分にこの車両点検済みシール等が貼付されると、ドライバDは、車両点検済みシール等に隠れた目印を知覚することができない。これに対して、投影源9として発光体を用いたウインドシールド構造1bでは、貼付した車両点検済みシール等の上から虚像8としての目印を投影することができる。つまり、投影源9として発光体を用いたウインドシールド構造1bでは、ウインドシールド2の裏側が光反射しないものであっても前記した目印を形成することができ、しかも、ウインドシールド2の裏側の貼付物で目印が隠れることもない。
【0036】
また、投影源9として発光体を用いたウインドシールド構造1bでは、夜間においても虚像8を鮮明にウインドシールド2に投影することができる。また、発光体から発する光量を調節することによって、このウインドシールド構造1bでは、虚像8の濃さを調節することができる。
【0037】
以上のような第2実施形態に係るウインドシールド構造1bは、着座位置のドライバDから見て略水平方向を知覚する目印として虚像8をウインドシールド2に投影することができれば、虚像8の形状や投影源9の配置を前記したものに限定するものではない。ここで参照する図6は、第2実施形態に係るウインドシールド構造の変形例を示す構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。なお、この第2実施形態の変形例において、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0038】
図6に示すように、この第2実施形態の変形例に係るウインドシールド構造1cでの虚像8は、前記したアイポイント10(図3参照)の高さよりも上方、つまり地平線Hrよりも上方の位置で、ウインドシールド2の左右両側にそれぞれ投影される一対の目印16,16で形成されている。これらの目印16,16は、これらの目印16,16同士を結ぶ線分16aを、着座位置から見たドライバDが略水平な直線として知覚するようにウインドシールド2に投影されている。これらの目印16,16の形状は特に制限はないが、この変形例では、ウインドシールド2の側縁に向けて底辺を置く三角形状となるように投影されている。そして、着座位置のドライバDは、この一対の三角形状の頂点同士を結ぶように仮想の線分16aを無意識にまたは意識して知覚することとなる。
【0039】
この第2実施形態の変形例での投影源9は、左右のフロントピラー20,20の車室側にそれぞれ描かれた一対の三角形状で形成されている。これらのフロントピラー20,20は、特許請求の範囲にいう「内装材」に相当する。フロントピラー20,20に描かれたこれらの投影源9,9は、ガラスで形成されたウインドシールド2に映り込むことでドライバDには前記した三角形状の目印16,16として知覚されることとなる。ちなみに、これらの投影源9,9は、前記したウインドシールド構造1bの投影源9(図5参照)と同様に、貼付されたシール状体や、シボ加工等が施されて形成された凹凸状物、LED等で形成された発光体であってもよい。
【0040】
次に、第2実施形態の変形例に係るウインドシールド構造1cの作用効果について説明する。
このウインドシールド構造1cでは、着座位置のドライバDは、ウインドシールド2に映り込む一対の目印16,16を見ることで、仮想の線分16aを知覚する。そして、この線分16aは、前記したアイポイント10(図3参照)の高さよりも上方、言い換えれば地平線Hrよりも上方の位置で地平線Hrと平行な直線としてドライバDに知覚される。その結果、このウインドシールド構造1cでは、前記した第1実施形態と同様に、ドライバDの視線軌跡W1が地平線Hrよりも下方に主に集中する。つまり、この第2実施形態の変形例に係るウインドシールド構造1cによれば、地平線Hrよりも下方にドライバDの視線の移動を集中させることができるので、ドライバDは、車両Vを運転する際に路面上に安定して注意を払うことができる。
【0041】
また、第2実施形態の変形例に係るウインドシールド構造1cでは、線分16aがドライバDの知覚する仮想の線分であるので、運転時の視覚刺激によるドライバDの疲労が軽減される。
【0042】
(第3実施形態)
ここで参照する図7は、第3実施形態に係るウインドシールド構造の構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。なお、この第3実施形態において、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
図7に示すように、第3実施形態に係るウインドシールド構造1dは、車両V内のドライバDの前側に位置してドライバDの視界を確保するものであって、ウインドシールド2の左右両側のそれぞれに配置された一対の目印21,21を備えている。これらの目印21,21は、これらの目印21,21同士を結ぶ仮想の線分21aを、着座位置から見たドライバDが略水平な直線として知覚するようにウインドシールド2に形成されている。この目印21,21の形状は特に制限はないが、この変形例では、ウインドシールド2の側縁に向けて底辺を置く三角形状となるように形成されている。ちなみに、この第3実施形態での目印21,21は、黒セラで形成されている。
【0044】
これらの目印21,21は、前記したアイポイント10(図3参照)の高さよりも上方、つまり地平線Hrよりも上方に配置される。そして、着座位置のドライバDは、地平線Hrと平行な線分21aがウインドシールド2を横切るように知覚することとなる。
【0045】
その一方で、この第3実施形態に係るウインドシールド構造1dでは、着座位置のドライバDから見て、ルームミラー3が前記した線分21aに被る位置に配置されている。
そして、このルームミラー3は、一対の目印22,22を備えている。これらの目印22,22は、ルームミラー3の両側からそれぞれ外側に張り出す突起で形成されていると共に、着座位置のドライバDから見て、線分21a上に位置するようにそれぞれ配置されている。これらの目印22,22としての突起の形状は、着座位置のドライバDから見た平面形状がウインドシールド2の目印21,21と同じ三角形状となっている。
そして、これらの目印22,22としての各突起は、前記したウインドシールド2の左右両側に配置された目印21,21のそれぞれと組になって、三角形状の頂点同士が向き合うこととなる。
【0046】
次に、第3実施形態に係るウインドシールド構造1dの作用効果について説明する。
このウインドシールド構造1dでは、着座位置のドライバDは、ウインドシールド2に配置された一対の目印21,21を見ることで、仮想の線分21aを知覚する。この際、この線分21aは、これに被るルームミラー3によって分断される。その結果、線分21aが連続するイメージが阻害されて、着座位置のドライバDが線分21aを知覚する程度が弱められる。
【0047】
しかしながら、このウインドシールド構造1dでは、ルームミラー3に目印22,22が設けられており、これらの目印22,22は、ウインドシールド2の目印21,21と組になって、ルームミラー3で分断されて弱められた仮想の線分21aの知覚の程度を補強する。その結果、このウインドシールド構造1dでは、線分21aが連続するものとして知覚される。そして、この線分21aは、前記したアイポイント10(図3参照)の高さよりも上方、言い換えれば地平線Hrよりも上方の位置で地平線Hrと平行な直線としてドライバDに知覚される。つまり、このウインドシールド構造1dでは、前記した第1実施形態と同様に、ドライバDの視線軌跡W1が地平線Hrよりも下方に主に集中することとなるので、ドライバDは、車両Vを運転する際に路面上に安定して注意を払うことができる。
【0048】
また、第3実施形態に係るウインドシールド構造1dによれば、略水平方向を知覚する目印21,21をウインドシールド2に設けると共に、目印22,22をルームミラー3に設けるという簡素な構造でドライバDの視線の移動を集中させることができるので、安価な製造コストを実現することができる。
【0049】
また、第3実施形態に係るウインドシールド構造1dによれば、着座位置のドライバDは、ウインドシールド2の全幅で線分21aを知覚することができるので、より確実に地平線Hrよりも下方にドライバDの視線の移動を集中させることができる。そして、このようなウインドシールド構造1dは、ウインドシールド2の幅が大きい大型車両に適用された場合に、より大きな前記効果を発揮することとなる。
【0050】
以上のような第3実施形態に係るウインドシールド構造1dは、着座位置のドライバDから見てルームミラー3が分断する線分21aを補強するものであれば、目印22,22を設ける位置に制限はない。ここで参照する図8、ならびに図9(a)および(b)は、それぞれ第3実施形態に係るウインドシールド構造の変形例を示す構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。なお、これらの変形例において、第1実施形態から第3実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0051】
図8に示すように、この第3実施形態の変形例に係るウインドシールド構造1eは、目印22,22がルームミラー3の内側に形成されており、目印22,22としての三角形状の頂点同士が向き合っている。これらの目印22,22は、例えば、ルームミラー3の鏡部に黒セラを施して形成することができる。
【0052】
そして、図9(a)に示すように、この第3実施形態の変形例に係るウインドシールド構造1fは、目印22,22がルームミラー3の防眩切替えノブNに形成されている。このウインドシールド構造1fでは、防眩切替えノブNが仮想の線分21aを分断している。そして、目印22,22は、防眩切替えノブNの両側からそれぞれ外側に張り出す突起で形成されていると共に、着座位置のドライバDから見て、線分21a上に位置するように配置されている。これらの目印22,22としての突起の形状は、着座位置のドライバDから見た平面形状がウインドシールド2の目印21,21と同じ三角形状となっている。そして、これらの目印22,22としての各突起は、前記したウインドシールド2の左右両側に配置された目印21,21のそれぞれと組になって、三角形状の頂点同士が向き合うこととなる。
【0053】
これらのウインドシールド構造1e、およびウインドシールド構造1fによれば、第3実施形態に係るウインドシールド構造1dと同様に、目印22,22がルームミラー3(防眩切替えノブN)で分断されて弱められた仮想の線分21aの知覚の程度を補強するので、線分21aが連続するものとして知覚される。したがって、これらのウインドシールド構造1e、およびウインドシールド構造1fによれば、前記した第1実施形態と同様に、ドライバDの視線軌跡W1が地平線Hrよりも下方に主に集中することとなるので、ドライバDは、車両Vを運転する際に路面上に安定して注意を払うことができる。
【0054】
また、図9(a)に示すウインドシールド構造1fにおいては、防眩切替えノブNが傾倒可能となっていてもよい。つまり、図9(b)に示すように、防眩切替えノブNが、ウインドシールド2側に傾倒可能となっていることで、着座位置のドライバDから知覚される目印22,22(図9(a)参照)を知覚不能とすることができる。その結果、このウインドシールド構造1fによれば、ドライバDの選択に応じて視線軌跡W1が地平線Hrよりも下方に主に集中することを回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係るウインドシールド構造の構成説明図であって、車両の前方斜め上からウインドシールド構造を見下ろした様子を示す図である。
【図2】ドライバが着座位置から図1のウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。
【図3】ドライバの着座位置を規定するための人体模型の配置を示す図であって、車両の左側側面から見た様子を示す側面図である。
【図4】(a)は、図2に示すウインドシールド構造での視線の移動を示す模式図であり、(b)は、比較例としてのウインドシールド構造での視線の移動を示す模式図である。
【図5】第2実施形態に係るウインドシールド構造の構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。
【図6】第2実施形態に係るウインドシールド構造の変形例を示す構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。
【図7】第3実施形態に係るウインドシールド構造の構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。
【図8】第3実施形態に係るウインドシールド構造の変形例の構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図である。
【図9】(a)は、第3実施形態に係るウインドシールド構造の変形例の構成説明図であって、ドライバが着座位置からウインドシールド構造を見た様子を示す模式図、(b)は、(a)の変形例におけるルームミラーを拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1a ウインドシールド構造
1b ウインドシールド構造
1c ウインドシールド構造
1d ウインドシールド構造
1e ウインドシールド構造
1f ウインドシールド構造
2 ウインドシールド
3 ルームミラー
3a ルームミラーの下端
4 サンバイザ
4a サンバイザの下端
5 シェード部
5a シェード部の下端
8 虚像
9 投影源
13 インストルメントパネル(内装材)
16 目印
20 フロントピラー(内装材)
21 目印
22 目印
V 車両
D ドライバ
N ノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内のドライバの前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造において、
ウインドシールドの上部にシェード部を設け、
このシェード部の下端は、着座位置の前記ドライバが略水平な直線として知覚するように形成されると共に、ルームミラーおよびサンバイザのうち少なくとも一方の下端と一致して知覚するようになっていることを特徴とするウインドシールド構造。
【請求項2】
車両内のドライバの前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造において、
着座位置の前記ドライバが略水平方向を知覚する目印となる虚像をウインドシールドに投影する投影源が、車両の内装材に設けられたことを特徴とするウインドシールド構造。
【請求項3】
車両内のドライバの前側に位置してドライバの視界を確保するウインドシールド構造において、
着座位置の前記ドライバが略水平方向を知覚する目印が、ウインドシールドとルームミラーとに設けられたことを特徴とするウインドシールド構造。
【請求項4】
前記ルームミラーの前記目印は、このルームミラーの防眩切替えノブに設けられたことを特徴とする請求項3に記載のウインドシールド構造。
【請求項5】
着座位置の前記ドライバが前記防眩切替えノブの前記目印を知覚不能となるように、前記防眩切替えノブが傾倒可能となっていることを特徴とする請求項4に記載のウインドシールド構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−208535(P2009−208535A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51684(P2008−51684)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)