説明

ウェハキャリアの振動を減少させるためのシステムおよび方法

本発明の一態様は、ウェハキャリアおよび作動部を有するウェハ洗浄システムを制御するためのシステムおよび方法を提供する。ウェハキャリアは、進路に沿って第1の方向および第2の方向に移動することができる。作動部は、ウェハキャリアを第1の方向および第2の方向に制御可能に移動させることができる。制御システムは、振動センサ部およびウェハキャリア位置制御装置を含む。振動センサ部は、ウェハキャリアの振動を検知でき、検知された振動に基づいて振動信号を出力することができる。ウェハキャリア位置制御装置は、検知された振動を減少させるために、振動信号に基づいてウェハキャリアの移動を修正するように作動部に命令することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2009年10月23日に出願した米国仮出願第61/254,536号の優先権を主張し、その開示内容全体は参照により本願明細書に引用されるものとする。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ製造では、プラズマエッチング処理によって望ましくない残渣および粒子が残留することが知られている。これらの残渣および粒子は、ウェハに残留すると電気故障およびデバイス故障を引き起こす問題になる。これらの粒子および残渣が化学洗浄処理で除去されると、デバイス歩留まりは増大し、故障は減少する。しかし、化学洗浄処理は、残渣および粒子を効果的に除去し、ウェハに全く損傷を与えないように注意を払う必要がある。したがって、ウェハが可能な限り効率的に洗浄されながらも決して破損されないように、化学洗浄処理を正確に監視し、十分最適化することが必須となる。
【0003】
従来の洗浄法は通常、ウェハをタンク内で長時間化学物質に曝露するバッチ式洗浄を含む。この洗浄方法は、乾燥が不十分であるか、あるいは、化学物質への過剰曝露に起因して、ウェハ中およびウェハ間の相互汚染および損傷を導く可能性がある。これに対する従来の解決法は、閉じ込められた薬剤のメニスカスにウェハを通すことによって個々にウェハを洗浄する方法である。これにより、上記の問題は取り除かれる。
【0004】
図1は、従来の一次元湿式化学洗浄システム100の一部を示す。
【0005】
図1に示すように、洗浄システム100は、保持トレー102、ウェハキャリア104、排水溝106、駆動(磁気)レール112、取付装置110、114、126および130、非駆動(ダミー)レール128、洗浄部118ならびにウェハキャリア位置制御装置132を含む。洗浄部118は複数の処理用シャワーヘッド120を含む。
【0006】
動作中、ウェハキャリア104にウェハ108を配置してもよい。ウェハキャリア104に取り付けられる取付装置110および114ならびに取付装置126および130は、ウェハキャリア104が駆動レール112と非駆動レール128との間の進路Dに沿ってそれぞれ滑動することを可能にする。進路Dに沿ったキャリアトレー104の移動(たとえば速度)は、ウェハキャリア位置制御装置132によって制御される。洗浄時には、ウェハキャリア104は、最初に方向d1(左から右)に進路Dに沿って移動し、その後開始位置に戻る(方向d2)。ウェハ108を保持するウェハキャリア104が洗浄部118の下を通過する際に、処理用シャワーヘッド120はウェハ108の表面に洗浄液を塗布する。次に、処理用シャワーヘッド120は洗浄液を真空除去し、洗浄液の一部は排水溝106から排出される。このようにして、ウェハ108の表面のあらゆる粒子を除去する。
【0007】
湿式洗浄処理では、洗浄液は脱イオン水送達管と液気混合体戻り管(図示せず)とを併用してウェハ108の表面に塗布される。また、この処理時に液体は保持トレー102、駆動レール112および非駆動レール128の表面で除去される。駆動レール112および非駆動レール128に液体が存在すると、ウェハキャリア104の振動は可溶性溶液が存在しない駆動レール112および非駆動レール128による振動に対して振動数が増大することがわかっている。さらに、ウェハキャリア104が保持トレー102を横断すると、非駆動レール128と取付装置110および114との間ならびに駆動レール112と取付装置126および130との間の接触抵抗は表面残渣の存在によって変化する。接触抵抗がこのように大きく変化すると、ウェハ108は、ウェハキャリア104内で振動する傾向があり、ウェハキャリア104内で移動するか、あるいは、ウェハキャリア104から完全に落下する。洗浄処理時にウェハ108がずれることは望ましくなく、これを最小限に抑えてウェハの損傷を防ぎ、洗浄処理の効率を改善する必要がある。
【0008】
必要とされるものは、湿式洗浄処理時にウェハがキャリア構造内で移動することを防ぐシステムおよび方法である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、湿式洗浄処理時にウェハがキャリア構造内で移動することを防ぐシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、システムおよび方法は、ウェハキャリアと作動部を有するウェハ洗浄システムを制御するために提供される。ウェハキャリアは、進路に沿って第1の方向および第2の方向に移動することができる。作動部は、ウェハキャリアを第1の方向および第2の方向に制御可能に移動させることができる。制御システムは、振動センサ部およびウェハキャリア位置制御装置を含む。振動センサ部は、ウェハキャリアの振動を検知でき、検知された振動に基づいて振動信号を出力することができる。ウェハキャリア位置制御装置は、検知された振動を減少させるために、振動信号に基づいてウェハキャリアの移動を修正するように作動部に命令することができる。
【0011】
本発明の他の目的、利点および新規の特徴は、以下の記載で部分的に詳しく説明し、以下を検討する際に当業者には部分的に明らかとなり、本発明を実施することによって知ることが可能となる。本発明の目的および利点は、本願特許請求の範囲で特に指摘する手段および組み合わせによって実施して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面は、本願明細書に組み込んでその一部を形成し、本発明の例示的実施形態を示し、記載内容と共に本発明の原理を説明するのに有用である。
【0013】
【図1】従来の一次元湿式化学洗浄システムの部分図である。
【0014】
【図2A】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを一方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図2B】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを一方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図2C】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを一方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図2D】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを一方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図2E】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを一方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【0015】
【図3A】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを反対方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図3B】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを反対方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図3C】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを反対方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図3D】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを反対方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【図3E】乾式洗浄試験処理時にウェハキャリアが保持トレーを反対方向に横断する間の圧電センサの応答を示すグラフである。
【0016】
【図4A】2回連続して乾式洗浄試験処理を実施した時のセンサからのフィルタ処理した応答を示す説明図である。
【0017】
【図4B】2回連続して乾式洗浄試験処理を実施した時の別のセンサからのフィルタ処理した別の応答を示す説明図である。
【0018】
【図5A】乾式洗浄試験処理を実施した時のセンサからのフィルタ処理した応答を示す説明図である。
【0019】
【図5B】湿式洗浄試験処理を実施した時のセンサからのフィルタ処理した応答を示す説明図である。
【0020】
【図6】本発明の一態様による例示的なウェハ洗浄制御システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一態様によれば、システムおよび方法は、湿式化学洗浄システムにおけるキャリア構造の移動による振動を監視することによってキャリア構造の移動を検知でき、監視される振動に基づいて移動制御を調整することによってキャリア構造の望ましくない移動を減少させることができる。
【0022】
具体的には、本発明の一態様によれば、システムはウェハキャリア位置制御装置のほかに振動センサ部を含む。振動センサ部は、ウェハキャリア構造の振動を検知でき、検知された振動に基づいて振動信号を出力することができる。次に、ウェハキャリア位置制御装置は、検知された振動を減少させるために、振動信号に基づいてウェハキャリア構造の移動を修正するように作動部に命令することができる。このようにして、洗浄処理時にキャリア構造内のウェハの移動はかなり減少させることができる。
【0023】
ここで、本発明の態様を図2Aから図6を参照してさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明の一態様と一致する実施形態では、振動センサ部は第1のセンサ(センサ1)および第2のセンサ(センサ2)から成り、それぞれは、保持トレー102に沿ってキャリアトレー104の移動による振動を測定するために、図1の洗浄システム100の非駆動レール128および駆動レール112にそれぞれ配置される。使用可能なセンサの種類は、圧電フィルム、MEMSまたは光センサを含むが、振動を検知できるあらゆる種類のセンサであってよい。各センサからの応答は、最初に「乾式」洗浄処理時に測定され、ウェハキャリア104は、(方向d1およびd2に沿って)保持トレー102を往復横断するが、液体および残渣は駆動レール112にも非駆動レール128にも存在していない。これは、センサに対する「基準」応答を規定する。基準応答は理想値、つまり、洗浄処理時のウェハキャリア104の移動による振動が理想量または最小量である応答を意味している。
【0025】
次に、センサの応答は、「湿式」洗浄処理時に再度測定され、ウェハキャリア104は、(方向d1およびd2に)保持トレー102を往復横断し、今回の処理では流体が駆動レール112および非駆動レール128に存在している。このため、センサ応答が変化するため、流体の存在によって引き起こされるウェハキャリア104の振動量を定量化することができる。このようにして、センサには通常の湿式洗浄処理時に流体の存在によるウェハキャリア104の振動を検知して特徴化する能力があることから、洗浄処理時にウェハ108の移動を減少させるためにウェハキャリア104の位置をその場(in-situ)で監視して調整することが可能となる。
【0026】
図2Aから図2Eは、「乾式」洗浄試験処理時(流体が存在しない)にウェハキャリア104が保持トレー102を一方向に横断(方向d1に、つまり、開始位置から終了位置に移動し、この移動を「移動1」と呼ぶ)する間の圧電センサの応答を示す一連のグラフである。センサ1は非駆動レール128に配置されたセンサを示し、センサ2は駆動レール112に配置されたセンサを示す。
【0027】
具体的には、図2Aはグラフ202を含み、ウェハキャリア104が方向d1に保持トレー102を横断(移動1)する際のセンサ1の電圧出力を時間の関数として示す。図2Bはグラフ204を含み、グラフ202の電圧出力の高速フーリエ変換(FFT)であり、FFT振幅を周波数の関数として示す。図2Cはグラフ206であり、ウェハキャリア104が方向d1に保持トレー102を横断(移動1)する際のセンサ2の電圧出力を時間の関数として示す。図2Dおよび図2Eは、グラフ208および210をそれぞれ含み、グラフ206の電圧信号の周波数の関数としてFFT振幅を示す。
【0028】
図3Aから図3Eは、「乾式」洗浄試験処理時(流体が存在しない)にウェハキャリア104が保持トレー102を反対方向に横断(方向d2に、つまり、終了位置から開始位置に移動し、この移動を「移動2」と呼ぶ)する間の圧電センサの応答を示す一連のグラフである。図3Aはグラフ302であり、ウェハキャリア104が方向d2に沿って保持トレー102を横断(移動2)する際のセンサ1の電圧出力を時間の関数として示す。図3Bはグラフ304であり、グラフ302の電圧出力のFFTであり、FFT振幅を周波数の関数として示す。図3Cはグラフ306であり、ウェハキャリア104が方向d2に沿って保持トレー102を横断(移動2)する際のセンサ2の電圧出力を時間の関数として示す。図3Dおよび図3Eは、グラフ308および310をそれぞれ含み、グラフ306の電圧信号の周波数の関数としてFFT振幅を示す。
【0029】
ウェハキャリア104が、方向d1に保持トレー102を横断(移動1)する場合、センサ1(図2B)およびセンサ2(図2Dおよび2E)からの振動信号の周波数応答は、理想的な状態、すなわち液体や異物粒子が駆動レール112にも非駆動レール128にも存在しない状態で測定される。次にウェハキャリア104が方向d2(移動2)に開始位置まで戻る場合、センサ1(図3B)およびセンサ2(図3Dおよび3E)からの振動信号の周波数応答は同じように測定される。これらのデータは、液体も粒子も存在しない状態で保持トレー102を横断する場合のウェハキャリア104の振動に対して一連の「基準」周波数応答を提供する。
【0030】
駆動レール112と非駆動レール128の質量が等しくない場合、少ない質量の方のレールのセンサ(非駆動レール128のセンサ1)からの応答は高周波成分が強くなる。これは、図2Bの各周波数に対する振幅を図2Eのものと比較することによって理解できる。センサ1はセンサ2より高周波数に偏るが、センサ1およびセンサ2は低周波数成分1〜10Hzを含むことがわかっている。
【0031】
図4Aおよび4Bは、2回連続して「乾式」洗浄試験処理(流体は存在しない)を実施している間のセンサ1およびセンサ2からのフィルタ処理された応答を示す。図4Aは、これら2回の乾式試験時にセンサ1(非駆動レール128に取り付けたセンサ)からのフィルタ処理された応答を示す。y軸はセンサ1からのフィルタ処理された応答(ボルト)であり、x軸は時間(秒)である。部分402は、第1の試験(試験1)がちょうど開始し、キャリア104が駆動レール112および非駆動レール128に沿って滑走することによって方向d1に移動(移動1)している時間を示す。ここで、ウェハキャリア104がまだセンサ1の位置(処理用シャワーヘッド120の下)を通過していないため、部分402の間のセンサ1からの応答はきわめて小さいことから、ごくわずかな振動が検知される。
【0032】
ブロック404は、ウェハキャリア104がセンサ1の近くを移動している試験1の部分を示す。ウェハキャリア104が最初に移動1(ウェハキャリア104が方向d1に移動)の一部としてセンサ1を通過すると、センサ1によって大きな応答(部分408)が観測される。次に、ウェハキャリア104は保持トレー102の終了位置に達し、方向d2で開始位置へ戻り(移動2)始めた後に再びセンサ1を通過すると、別の大きな応答(部分410)が同じように観測される。
【0033】
試験1に続き、第2の同じ乾式試験(試験2)がすぐに開始する。ブロック406は、ウェハキャリア104がセンサ1の近くを移動している試験2の部分を示す。試験1で見られるように、ウェハキャリア104が移動1(部分412)および移動2(部分414)の間にセンサ1を通過すると、センサ1から大きな応答がある。試験1の部分408および410ならびに試験2の部分412および414の信号の形および振幅は、互いにきわめて類似していることに留意する。したがって、これらの一貫して繰り返し可能な結果は、このフィルタ処理された信号がウェハキャリア104の移動による振動をさらに評価するためにセンサ1の安定した「基準」応答をもたらすことを示唆する。
【0034】
図4Bは、同じ2回の乾式試験時のセンサ2(駆動レール112に取り付けたセンサ)からのフィルタ処理された応答を示す。y軸はセンサ2からのフィルタ処理された応答(ボルト)であり、x軸は時間(秒)である。部分416は、第1の試験(試験1)がちょうど開始し、キャリア104が駆動レール112および非駆動レール128に沿って滑走することによって方向d1に移動(移動1)している時間を示す。ここで、ウェハキャリア104がまだセンサ2の位置(処理用シャワーヘッド120の下)を通過していないため、部分416の間のセンサ2からの応答がきわめて小さいことから、ごくわずかな振動が検知されるのみである。
【0035】
ブロック418は、ウェハキャリア104がセンサ2の近くを移動している試験1の部分を示す。ウェハキャリア104が最初に移動1(ウェハキャリア104が方向d1に移動)の一部としてセンサ2を通過すると、センサ2によって大きな応答(部分422)が観測される。次に、ウェハキャリア104は保持トレー102の終了位置に達し、方向d2に開始位置へ戻り(移動2)始めた後に再びセンサ2を通過すると、別の大きな応答(部分424)が同じように観測される。
【0036】
試験1に続き、第2の同じ乾式試験(試験2)がすぐに開始する。ブロック420は、ウェハキャリア104がセンサ2の近くを移動している試験2の部分を示す。試験1で見られるように、ウェハキャリア104が移動1(部分426)および移動2(部分428)の間にセンサ2を通過すると、センサ2から大きな応答がある。試験1の部分422および424ならびに試験2の部分426および438の信号の形および振幅は、互いにきわめて類似していることに留意する。したがって、これらの一貫して繰り返し可能な結果は、このフィルタ処理された信号がウェハキャリア104の移動による振動をさらに評価するためにセンサ2の安定した「基準」応答をもたらすことを示唆する。
【0037】
図4Aおよび図4Bは、センサ1およびセンサ2双方のフィルタ処理された信号が乾式試験を繰り返すと一貫した応答をもたらすことを示すため、これらのフィルタ処理された信号は洗浄処理時の振動を監視して最適化するための基準として使用することができる。具体的には、基準応答がウェハキャリア104の移動による振動の理想量または最小量であることから、通常の(すなわち「湿式」)洗浄処理時に応答を監視する際の比較に使用することができる。
【0038】
センサ1およびセンサ2から明白な繰り返し可能な低周波数成分を使用することによって、非駆動レール128と取付装置126および130との間ならびに駆動レール112と取付装置110および114との間の接触抵抗の変化も検知可能である。図2から図4に関して説明する実施例では、センサ1および2の応答に1〜10Hzのバンドパスフィルタをかけることが、接触抵抗による変化の結果として周波数応答の変化を検知するのに十分であることがわかった。接触抵抗の関数としての周波数応答の変化は、図5Aから図5Bを参照して以下で説明する。簡潔にするために、図5Aおよび5Bには1つのセンサ(センサ1)からの応答のみを示す。
【0039】
図5Aおよび5Bは、乾式洗浄試験処理時(図5A)および湿式洗浄試験処理時(図5B)のセンサ1からのフィルタ処理された応答を示す。
【0040】
具体的には、図5Aはグラフ500であり、6回の同じ「乾式」洗浄試験処理(駆動レール112にも非駆動レール128にも流体が存在しない)時のセンサ1からのフィルタ処理された応答を示す。y軸はセンサ1からのフィルタ処理された応答(ボルト)であり、x軸は時間(秒)である。集合502は、6回の乾式試験から得られたセンサ1からの6つのフィルタ処理された信号の集合である。図に示すように、集合502の6つのカーブ全てが互いによく一致し、それぞれが一貫した振幅および位相を有する。乾式試験時に比較的一定の接触抵抗によって最小量の振動のみが存在しているため、この挙動は予測される。この最小量の振動は、推定されるように、ウェハ108のウェハキャリア104内での大幅な移動を引き起こさないため、許容可能である。
【0041】
図5Bはグラフ504であり、5回の同じ「湿式」洗浄試験処理(駆動レール112および非駆動レール128に流体が直接噴霧される)時のセンサ1からのフィルタ処理された応答を示す。集合506は、5回の湿式試験から得られたセンサ1からの5つのフィルタ処理された信号の集合である。図に示すように、集合506のカーブは互いに大きく異なり、大きな位相シフト、振幅および高次高調波における変化を示している。この変化は、流体の存在によって引き起こされた接触抵抗の変化に直接起因する、センサ1によって検知された振動の周波数の増大によるものと考えられる。このような振動周波数の増大は、ウェハキャリア104内でのウェハ108の過剰な移動、さらにはウェハ108がウェハキャリア104から完全に落下する点までものウェハ108の過剰な移動を引き起こす可能性があるため、望ましくない。したがって、流体の存在によるこのようなさらなる振動は許容できず、洗浄処理時のウェハ108の望ましくない移動を減少させるために対処する必要がある。
【0042】
図5Aおよび5Bは、センサ1からの応答の周波数、振幅および位相の変化を追跡することによって、どのように非駆動レール128に流体が存在することによる振動および接触抵抗の変化を測定することができるかを示す。センサ2および駆動レール112に流体が存在することによる応答に対して類例を示すことができる。本発明の一態様によれば、このような振動の監視は洗浄処理時にリアルタイムで実施され、これによりこの情報はウェハキャリア104内でウェハ108の移動を減少させるためにウェハキャリア104の移動(または他の動的プロセス変化)を監視し、適切に制御するためにさらに利用することができる。
【0043】
具体的には、センサ1およびセンサ2からの振動のin situ周波数解析が実行され、これにより、各信号応答に対する明白な周波数領域属性が得られ、それらは、駆動レール112および/または非駆動レール128上の流体および/または残渣の蓄積によって引き起こされる望ましくない振動の性質を特定するために使用することができる。次に、このin situ周波数解析からのデータは、望ましくない振動を破壊的に妨害するという方法でウェハキャリア104の移動を制御するためにリアルタイムで使用することができる。これにより、ウェハキャリア104の移動(および他の動的プロセス変化)をリアルタイム制御することができ、洗浄処理時のウェハキャリア104内のウェハ108の移動が全体的に減少する。これは、ウェハ108がウェハキャリア104で常に安定した状態を確実に維持することによって、突発故障を防ぐことができる。
【0044】
ここで、このような監視および制御を実施する本発明の一態様による例示的実施形態を、図6を参照して説明する。
【0045】
図6は、本発明の一態様によるウェハ洗浄制御システム600を示す。図6は、洗浄システム100、第1のセンサ628(センサ1)、第2のセンサ630(センサ2)、アナログデジタルコンバータ(ADC)602、デジタル信号処理装置(DSP)604、ウェハキャリア位置制御装置606およびツール制御装置608を含む。
【0046】
ADC602は、入力としてセンサ1出力610およびセンサ2出力612を受信し、センサ1デジタル信号614およびセンサ2デジタル信号616を出力するように配置される。DSP604は、入力としてセンサ1デジタル信号614およびセンサ2デジタル信号616を受信し、統計的工程管理(SPC)周波数パラメータ618およびキャリア周波数パラメータ入力620を出力するように配置される。ツール制御装置608は、SPC周波数パラメータ618を受信し、プロセス入力622を出力するように配置される。ウェハキャリア位置制御装置606は、キャリア位置入力624、キャリア周波数パラメータ入力620およびプロセス入力622を受信し、キャリア速度設定点626を出力するように配置される。
【0047】
動作中、洗浄処理時にウェハキャリア104が保持トレー102を横断する場合に、第1のセンサ628および第2センサ630(センサ1出力610およびセンサ2出力612)からのアナログ電圧信号はADC602に入力される。次に、ADC602は、センサ1出力610およびセンサ2出力612をデジタル信号に変換し、センサ1デジタル信号614およびセンサ2デジタル信号616を出力する。次に、DSP604はセンサ1デジタル信号614およびセンサ2デジタル信号616を受信してこれらの信号を処理し、振動(振幅および位相応答)の周波数成分を特定するためにフィルタ処理(たとえばデジタルバンドパス)およびFFTを含んでもよい。また、DSP604は、周波数成分の解析を実行するための、乾式試験時に得られたさまざまな基準データのデータベースを含む。これにより、DSP604から出力された出力信号SPC周波数パラメータ618は振幅および位相情報を含んでもよく、振幅および位相情報はリアルタイムSPCを実行して、実施中の試験のパラメータを同じロットの他の試験のものと比較するためにツール制御装置608に供給される。同じロットのウェハ間のランツーランの再現性を確実にするために、ツール制御装置608はウェハキャリア位置制御装置606にプロセス入力622を出力し、これはウェハキャリア104の速度および/または位置を適切に調整するためにフィードバックパラメータを含み、これによりその移動が同じロットの試験全てを通して可能な限り一様な状態を維持する。これは、プロセス入力622およびキャリア位置入力624を受信し、適切な速度設定点626を出力するウェハキャリア位置制御装置606によって実施され、ウェハキャリア104の速度を設定する。
【0048】
また、DSP604は別の出力、キャリア周波数パラメータ入力620を提供し、それはツール制御装置608を迂回してウェハキャリア位置制御装置606に直接供給されることに留意する。これは、DSP604が許容できない量の過剰振動があると判断する場合に、DSP604がウェハキャリア位置制御装置606を直接制御できるように実施される。この場合、キャリア周波数パラメータ入力620は、これらの過剰振動を減少させるためにウェハキャリア104の移動を減速するように設計される信号のためのパラメータを含む。ウェハキャリア位置制御装置606は、キャリア周波数パラメータ入力620を受信し、適切な速度設定点626を出力し、過剰振動が可能な限り減少するようにウェハキャリア104の速度を設定する。過剰振動がきわめて高い場合、ウェハキャリア位置制御装置606は、ウェハ108がウェハキャリア104から落下するのを防ぐために単に速度設定点626をゼロに設定(これにより、ウェハキャリア104を一時的に停止)してもよい。
【0049】
このようにして、洗浄制御システム600ではウェハキャリア104内のウェハ108の安定性が改善され、ウェハ108のウェハキャリア104からの落下による突発故障を防ぎ、これにより洗浄処理の全体効率を改善する。さらに、SPCがウェハキャリア104の制御にも利用される場合、同じロットを通して処理均一性は改善される。
【0050】
ここで、本発明の一態様による洗浄制御システム600を動作させる例示的な方法を、図7をさらに参照して説明する。
【0051】
プロセス700が開始し(ステップS702)、洗浄処理時のウェハキャリア104の振動に対する基準が確立される(ステップS704)。上で説明したとおり、これは「乾式」洗浄試験処理時にセンサ1およびセンサ2からの応答を測定することによって実施され、非駆動レール128にも駆動レール112にも液体や残渣は存在しない。次に、各センサからの応答は処理され、洗浄処理時の振動の理想量または最小量である基準応答を得る。また、基準を特定量超える振動の閾値を確立してもよく、これにより特定の閾値を超えた場合は所定の振動応答が許容できないと判断されることから調整が必要とされる。
【0052】
次に、製造ウェハが載せられ(ステップS706)、洗浄制御システム600で処理される(ステップS708)。ウェハが処理されている間、センサ1およびセンサ2からの応答が監視され、in situ周波数解析およびSPCが実行される(ステップS710)。上で図6を参照して説明したとおり、DSP604は両方のセンサからのデジタル応答を処理し、周波数解析を実行して周波数パラメータを確立した基準応答と比較する。ツール制御装置608は、実施中の試験からの周波数パラメータデータを同じロットの他の試験のものを比較することによってSPCを実行し、それに応じてウェハキャリア104の速度を調整するようにウェハキャリア位置制御装置606に命令する。また、他の処理パラメータ(投じられた洗浄液の量、処理用シャワーヘッド120の位置など)を調整してもよい。
【0053】
測定された振動応答が確立した振動閾値を超えている場合(ステップS712)、ウェハキャリア104の速度および/または他の処理パラメータは、許容レベルに振動を減少させるように適切に調整される(ステップS714)。図6に示すように、測定された振動を確立した基準応答と比較することによって、DSP604は過剰振動の量が確立した閾値以内であるかを判断する。過剰振動の量が確立した閾値以内でない場合、DSP604はキャリア周波数パラメータ入力620をウェハキャリア位置制御装置606に出力し、洗浄処理時のウェハキャリア104の速度は調整され、これにより過剰振動は相殺的干渉で相殺されるか、あるいは、減少する。
【0054】
適切なパラメータが調整された後に、現在測定されている振動が許容可能であるかを再度判断する(ステップS712)まで洗浄処理と振動のその場での監視が繰り返される(ステップS708)。現在測定されている振動が許容可能である場合、処理中のウェハの洗浄処理が終了したかどうかを判断する(ステップS716)。
【0055】
洗浄処理が終了していないと判断される場合、洗浄処理およびその場監視処理が継続する(ステップS708)。
【0056】
洗浄処理が終了したと判断される場合、さらに製造ウェハを処理する必要があるかどうかを判断する(ステップS718)。さらに製造ウェハを処理する必要がない場合、処理は終了してもよく(ステップS720)、そうでない場合、次の製造ウェハが載せられ(ステップS706)、処理は繰り返される。
【0057】
本発明の態様によれば、湿式化学洗浄システムにおけるウェハキャリア移動による振動を検知し、ウェハがキャリア構造内で動かないようにするために使用することができる。振動センサを使用してシステムトラックに沿った移動に対してキャリア振動を検知してもよく、さらに、動力学的なin−situ周波数解析によってウェハキャリア速度制御ループへの入力として適切なフィードバックパラメータを提供し、これによりウェハの置換による望ましくない周波数を減衰させることができる。
【0058】
発明のさまざまな好ましい実施形態の上記内容は、説明目的および記載目的のために示している。これは包括的なものにしたり、開示した精確な形態に本発明を限定したりすることを意図しておらず、明らかに上記の教示を踏まえた多くの改変および変形が可能である。上に示すとおり、発明およびその実用化の原理を最も良く説明するために例示的実施形態を選択して記載しており、これにより他の当業者は想定された特定の用途に合うようにさまざまな実施形態およびさまざまに改変した本発明を最も良く利用することが可能となる。本発明の範囲は、本願特許請求の範囲によって定義することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハキャリアおよび作動部を有するウェハ洗浄システムとともに使用し、前記ウェハキャリアは進路に沿って第1の方向および第2の方向に移動するように動作可能であり、前記作動部は前記ウェハキャリアを前記第1の方向および前記第2の方向に移動制御可能である制御システムであって、
前記ウェハキャリアの振動を検知し、検知された前記振動に基づいて振動信号を出力するように動作可能な振動センサ部と、
検知された前記振動を減少させるために、前記振動信号に基づいて前記ウェハキャリアの移動を修正するように前記作動部に命令するように動作可能なウェハキャリア位置制御装置と
を備えた制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムであって、更に、
第1の周期において前記ウェハキャリアの振動の第1の解析を前記第1の周期における前記振動信号に基づいて実施し、第2の周期において前記ウェハキャリアの振動の第2の解析を前記第2の周期における前記振動信号に基づいて実施し、前記第1の解析と前記第2の解析との比較に基づいて比較信号を生成するように動作可能な処理部を備えた制御システム。
【請求項3】
前記処理部は、閾値を確立し、前記第1の解析と前記第2の解析との差が前記閾値より大きい場合に限界信号を生成するように動作可能である請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ウェハキャリア位置制御装置は、前記限界信号に基づいて前記ウェハキャリアの移動を修正するように前記作動部に命令するように動作可能である請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記センサ部は、第1の振動センサおよび第2の振動センサを含み、
前記第1の振動センサは、第1の位置に配置され、前記ウェハキャリアの第1の振動を検知し、検知された前記第1の振動に基づいて第1の振動信号を出力するように動作可能であり、
前記第2の振動センサは、第2の位置に配置され、前記ウェハキャリアの第2の振動を検知し、検知された前記第2の振動に基づいて第2の振動信号を出力するように動作可能である請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の制御システムであって、更に、
第1の周期において前記ウェハキャリアの振動の第1の解析を前記第1の周期における前記第1の振動信号および前記第1の周期における前記第2の振動信号の少なくとも1つに基づいて実施し、第2の周期において前記ウェハキャリアの振動の第2の解析を前記第2の周期における前記第1の振動信号および前記第2の周期における前記第2の振動信号の少なくとも1つに基づいて実施し、前記第1の解析と前記第2の解析との比較に基づいて比較信号を生成するように動作可能な処理部を備える制御システム。
【請求項7】
前記処理部は、閾値を確立し、前記第1の解析と前記第2の解析との差が前記閾値より大きい場合に限界信号を生成するように動作可能である請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記ウェハキャリア位置制御装置は、前記限界信号に基づいて前記ウェハキャリアの移動を修正するように前記作動部に命令するように動作可能である請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
ウェハキャリアおよび作動部を有するウェハ洗浄システムを制御し、前記ウェハキャリアは進路に沿って第1の方向および第2の方向に移動するように動作可能であり、前記作動部は前記ウェハキャリアを前記第1の方向および前記第2の方向に移動制御可能である方法であって、
前記ウェハキャリアの振動を検知し、
検知された前記振動に基づいて振動信号を出力し、
検知された前記振動を減少させるために、前記作動部に命令して前記振動信号に基づいて前記ウェハキャリアの移動を修正する
方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、更に、
第1の周期において前記ウェハキャリアの振動の第1の解析を前記第1の周期における前記振動信号に基づいて実施し、
第2の周期において前記ウェハキャリアの振動の第2の解析を前記第2の周期における前記振動信号に基づいて実施し、
前記第1の解析と前記第2の解析との比較に基づいて比較信号を生成する
方法
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、更に、
閾値を確立し、
前記第1の解析と前記第2の解析との差が前記閾値より大きい場合に限界信号を生成する
方法。
【請求項12】
前記作動部に命令して前記限界信号に基づいて前記ウェハキャリアの移動を修正する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、
前記ウェハキャリアの振動の前記検知は、前記ウェハキャリアの第1の振動の検知と、前記ウェハキャリアの第2の振動の検知とを含み、
検知された前記振動に基づく振動信号の前記出力は、検知された前記第1の振動に基づく第1の振動信号の出力と、検知された前記第2の振動に基づく第2の振動信号の出力とを含む
方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、更に、
第1の周期において前記ウェハキャリアの振動の第1の解析を前記第1の周期における前記第1の振動信号および前記第1の周期における前記第2の振動信号の少なくとも1つに基づいて実施し、
第2の周期において前記ウェハキャリアの振動の第2の解析を前記第2の周期における前記第1の振動信号および前記第2の周期における前記第2の振動信号の少なくとも1つに基づいて実施し、
前記第1の解析と前記第2の解析との比較に基づいて比較信号を生成する
方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、更に、
閾値を確立し、
前記第1の解析と前記第2の解析との差が前記閾値より大きい場合に限界信号を生成する
方法。
【請求項16】
前記作動部に命令して前記限界信号に基づいて前記ウェハキャリアの移動を修正する請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−508982(P2013−508982A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535350(P2012−535350)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053455
【国際公開番号】WO2011/050117
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】