説明

ウェビング巻取装置

【課題】外力による荷重が被覆部材に付与された際に、被覆部材を介して該荷重がモータに入力されることを抑制する。
【解決手段】ウェビング巻取装置10では、モータ66がモータカバー90と分離された状態でモータカバー90に被覆されている。また、モータ66の外周部とモータカバー90の周壁の内周部との間には、隙間が設けられている。モータカバー90に荷重が付与されて、モータカバー90の底壁側部分が上方へ移動された際には、モータカバー90の鍔部94がフレーム12に当接されて、モータカバー90の移動が規制される。このため、モータカバー90の周壁の内周部がモータ66の外周部に当接されることを抑制できて、モータカバー90を介してモータ66に衝撃荷重が入力されることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定時にモータが駆動されることで巻取軸が回転されるウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1のシートベルトリトラクタでは、フレームにモータの一端側が固定されており、モータはケースユニットに被覆されている。
【0003】
ケースユニット内には、モータの他端側において、モータストッパが配置されており、モータストッパはケースユニットと一体にユニットステイに固定されると共に、ユニットステイはフレームに固定されている。これにより、モータの他端側がモータストッパ、ケースユニット、及びユニットステイを介してフレームに支持されている。
【0004】
ここで、このシートベルトリトラクタでは、モータの他端側がモータストッパを介してケースユニットに直結されている。このため、ケースユニットに外力による荷重が付与された際には、モータストッパを介してモータに該荷重が入力される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−69901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、外力による荷重が被覆部材に付与された際に、被覆部材を介して該荷重がモータに入力されることを抑制できるウェビング巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のウェビング巻取装置は、車両乗員拘束用のウェビングが巻取られる巻取軸と、前記巻取軸が回転可能に支持されるフレームと、一端側が前記フレームに支持されると共に、前記巻取軸に連絡され、所定時に駆動されることで前記巻取軸が回転されるモータと、前記モータから分離された状態で前記モータを被覆すると共に、当接部が設けられ、外力による荷重が付与された際に前記当接部が前記フレームに当接される被覆部材と、を備えている。
【0008】
請求項2に記載のウェビング巻取装置は、請求項1に記載のウェビング巻取装置において、前記被覆部材に前記当接部の下方において設けられ、前記被覆部材内に浸入した液体を排出する第1排出部を備えている。
【0009】
請求項3に記載のウェビング巻取装置は、請求項2に記載のウェビング巻取装置において、前記第1排出部は前記被覆部材に前記モータの他端側において設けられ、前記被覆部材に前記モータの一端側において設けられ、前記被覆部材内に浸入した液体を排出する第2排出部を備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のウェビング巻取装置では、フレームに回転可能に支持された巻取軸にウェビングが巻取られる。フレームにはモータの一端側が支持されており、モータは被覆部材によって被覆されている。
【0011】
また、モータは巻取軸に連絡されており、所定時にモータが駆動されることで、巻取軸が回転される。
【0012】
ここで、被覆部材はモータから分離されると共に、被覆部材には当接部が設けられて、外力による荷重が被覆部材に付与された際に当接部がフレームに当接される。
【0013】
このため、外力による荷重が被覆部材に付与された際に、被覆部材の移動が当接部によって規制されるため、被覆部材がモータに当接されることが抑制される。これにより、外力による荷重が被覆部材を介してモータに入力されることを抑制できる。
【0014】
請求項2に記載のウェビング巻取装置では、被覆部材には、当接部の下方において、第1排出部が設けられており、第1排出部は被覆部材内に浸入した液体を排出する。
【0015】
このため、被覆部材が、外力による荷重がモータに入力されることを抑制する機能と被覆部材内に浸入した液体を排出する機能との2つの機能を備えることができる。さらに、当接部が第1排出部の上方に配置されるため、当接部によって上方からの液体が第1排出部から被覆部材内へ浸入することを抑制できる。
【0016】
請求項3に記載のウェビング巻取装置では、被覆部材に、モータの他端側において、第1排出部が設けられている。また、被覆部材には、モータの一端側において、第2排出部が設けられており、第2排出部は被覆部材内に浸入した液体を排出する。
【0017】
このため、モータの一端側が他端側に対して下方に配置されてウェビング巻取装置が車体に取付けられる場合でも、モータの他端側が一端側に対して下方に配置されてウェビング巻取装置が車体に取付けられる場合でも、被覆部材内に浸入した液体を排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置のケースをウェビング巻取装置から分解した斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置を車両前後方向他側から見た側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置を車幅方向他側から見た断面図(図3の4−4線断面図)である。
【図5】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置のモータの斜視図である。
【図6】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置のモータを示す図である。(A)は車幅方向一側から見た側面図であり、(B)は車両前後方向他側から見た裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置10の構成が分解斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前後方向一側を矢印LOで示し、車幅方向一側(例えば、車幅方向外側)を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示す。
【0020】
図1に示す如く、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、略板状の背板14と、背板14の幅方向両端のそれぞれから一体に延出する脚板16及び脚板18とによって構成されている。背板14には、クランク状に屈曲された板状のステイ19が固定されており、背板14及びステイ19がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、ウェビング巻取装置10が車体に取付けられる。脚板16及び脚板18には、それぞれ円状の配置孔16A及び配置孔18Aが貫通形成されている。
【0021】
脚板16と脚板18との間には、ダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。スプール20は全体として鼓形状をなしており、スプール20には、長尺帯状に形成されたウェビング30の基端部が連結固定されている。スプール20をその軸線周り一方(図1に示される矢印A方向であり、以下、この方向を「巻取方向」と称する)へ回転させると、ウェビング30がその基端側からスプール20の外周部に層状に巻取られ、一方、ウェビング30をその先端側から引張れば、これに伴いスプール20がその軸線周り他方(図1に示される矢印B方向であり、以下、この方向を「引出方向」と称する)へ回転しながらウェビング30が引出される。
【0022】
スプール20内には、フォースリミッタ機構を構成するエネルギー吸収部材としての図示しないトーションシャフトが同軸上に挿入されており、トーションシャフトの脚板18側の端部は、スプール20の脚板18側の端面から突出されている。トーションシャフトの脚板16側の端部は、スプール20の脚板16側の端部に相対回転不能に連結されており、トーションシャフトは、スプール20と一体に回転可能にされている。トーションシャフトの脚板16側の端部には、スプール20の脚板16側において、略円柱状のラチェット24が相対回転不能に連結されると共に、スクリュー22が固定されており、ラチェット24はスプール20とスクリュー22との間に狭持されている。ラチェット24はスプール20と同軸上に配置されており、ラチェット24の外周部には、ラチェット歯24A(外歯)が形成されている。
【0023】
スプール20の脚板18側には、回転部材としての略円柱状のロックギヤ26が設けられており、ロックギヤ26にはトーションシャフトが同軸上に貫通されている。また、ロックギヤ26には、トーションシャフトが相対回転不能に固定されており、ロックギヤ26は、トーションシャフトと一体に回転可能にされている。さらに、ロックギヤ26の外周全体には、ラチェット歯26A(外歯)が形成されている。
【0024】
フレーム12の脚板18外側(図1に示される矢印D側)には、箱状のセンサカバー32が取付けられており、センサカバー32は脚板18側に向けて開口されている。トーションシャフトの脚板18側の端部は、センサカバー32の内側に挿入されて、センサカバー32に設けられた図示しない軸受部に回転可能に支持されている。センサカバー32の内側には図示しない周知のロック機構が収容されている。このロック機構が、車両の急減速時などに、ロックギヤ26のラチェット歯26Aに係合することで、トーションシャフトの引出方向への回転が規制される。
【0025】
さらに、センサカバー32と脚板18との間には、プリテンショナ機構34が設けられている。プリテンショナ機構34は、脚板18に固定されたシリンダ36を備えており、シリンダ36の上端部には、ガスジェネレータ38が収容されている。このガスジェネレータ38は、図示しない点火装置が作動することで、シリンダ36内に高圧のガスを発生させる。シリンダ36の内側には図示しないピストンが収容されており、シリンダ36内にガスが発生すると、このピストンがシリンダ36から突出してトーションシャフトを巻取方向へ強制的に回転させる。
【0026】
図2にも示す如く、フレーム12の脚板16外側(図1に示される矢印C側)には、樹脂により製作された略有底円筒状のケース54が設けられており、ケース54は、脚板16側に向けて開口されている。ケース54の開口部はカバー56によって閉塞されている。ケース54は、後述するギヤハウジング42を介して脚板16に取付けられている。ケース54の内側には、スプール20のスクリュー22が挿入されており、スクリュー22はケース54内に設けられた軸受部57に回転可能に支持されている。
【0027】
また、ケース54内には、図示しない渦巻き状のぜんまいばねが収容されている。このぜんまいばねは、渦巻き方向外側端部がケース54に係止されると共に、渦巻き方向内側端部がスクリュー22に係止されており、スプール20を巻取方向へ付勢している。
【0028】
また、カバー56には凹部58が設けられており、凹部58は、ケース54側へ突出する後述するギヤカバー114を収容可能されている。このため、ウェビング巻取装置10の大型化が抑制される。カバー56(凹部58も含む)とケース54との間には、図示しないテンションリデューサ機構が収容されており、テンションリデューサ機構は、後述の如くウェビング30が乗員に装着された際に、ぜんまいばねによるスプール20の巻取方向への付勢力を低減可能にされている。
【0029】
図1に示す如く、フレーム12の脚板16とケース54との間には、後述する減速機構40を収容する樹脂により製作されたギヤハウジング42が設けられており、ギヤハウジング42は脚板16に取付けられている。ギヤハウジング42の上側部分には、脚板16側部において、図示しないクラッチ収容部が設けられており、クラッチ収容部は脚板16側に向けて開口されている。
【0030】
クラッチ収容部の底壁には、断面円状の貫通孔44が貫通形成されている。貫通孔44は、スプール20と同軸上に配置されており、貫通孔44内にスクリュー22が貫通されている。また、クラッチ収容部の底面には、円筒状の支軸部46が設けられており、支軸部46は、スプール20と同軸上に配置されて、脚板16側へ突出されている。
【0031】
ギヤハウジング42の下側部分には、ケース54側部において、ギヤ収容部48が設けられており、ギヤ収容部48はケース54側に向けて開口されている。ギヤハウジング42には、クラッチ収容部とギヤ収容部48との間において、連通孔50が貫通形成されており、連通孔50はクラッチ収容部とギヤ収容部48との間を連通している。
【0032】
図1及び図2に示す如く、ギヤハウジング42の下側部には、脚板16側の部分において、略円筒状の筒部52が設けられており、筒部52は脚板16側へ突出されている。筒部52の先端部には、外周部において、段差部52Aが設けられている(図4参照)。
【0033】
一方、図1に示す如く、前述したギヤハウジング42のクラッチ収容部内には、減速機構40を構成するクラッチ60が収容されている。クラッチ60は略有底円筒状のクラッチギヤ62を備えており、クラッチギヤ62は脚板16側に向けて開口されている。クラッチギヤ62の底壁には、断面円状の支持孔62Aが貫通形成されており、支持孔62Aは、スプール20と同軸上に配置されて、クラッチ収容部の支軸部46にスプール20に対して相対回転可能に支持されている。クラッチギヤ62の外周部には、外歯62Bが形成されており、外歯62Bは、後述する減速ギヤ列100に対応している。
【0034】
クラッチギヤ62とフレーム12の脚板16との間には、略有底円筒状のクラッチカバー64が設けられており、クラッチカバー64はクラッチギヤ62の開口部を閉塞している。
【0035】
クラッチギヤ62の内側には、スプール20のラチェット24が配置されており、ラチェット24の半径方向外側には、図示しないロックバーが設けられている。このロックバーは、通常は図示しないリターンスプリングの付勢力によってラチェット24のラチェット歯24Aから離間した位置に保持されているが、クラッチギヤ62が巻取方向(図1に示される矢印A方向)へ回転されると、ラチェット24のラチェット歯24Aに噛合する。この噛合状態では、ラチェット24に対するクラッチギヤ62の巻取方向への相対回転が規制されて、ラチェット24がクラッチギヤ62と一体に巻取方向へ回転される。これにより、スプール20が巻取方向へ回転される。また、クラッチギヤ62が引出方向(図1に示される矢印B方向)へ回転されると、上述のロックバーとラチェット24のラチェット歯24Aとの噛合が解除されて、スプール20とクラッチギヤ62との連結が解除される。
【0036】
スプール20の下側には、フレーム12の脚板16と脚板18との間において、モータ66が設けられており、モータ66はスプール20の軸線方向に平行に配置されている。モータ66の一端66A(図1に示される矢印C側の端部)には、一対の螺子部66Bが設けられており、ねじ67をギヤハウジング42の筒部52の底壁に貫通させて螺子部66Bに締結することで、モータ66の一端66Aが筒部52の底壁に固定されている。これにより、モータ66はギヤハウジング42を介してフレーム12に支持されている。モータ66には、出力軸66Cが設けられており、出力軸66Cは、モータ66の一端66Aに対してギヤハウジング42側へ突出されて、図示しないギヤハウジング42の貫通孔を貫通している。出力軸66Cの先端部には、ギヤ68が固定されており、ギヤ68はギヤハウジング42のギヤ収容部48内に配置されている。モータ66の他端66D側(図1に示される矢印D側)の面には、中央部において、円柱状の凸部66Eが設けられており、凸部66Eはモータ66に対してフレーム12の脚板18側へ突出されている(図5参照)。
【0037】
図5及び図6の(A)と(B)とに示す如く、モータ66の他端66D側(図5に示される矢印D側)の部分には、樹脂により製作されたハーネスガイド70が設けられている。ハーネスガイド70は略円板状のベース部71を備えており、ベース部71の中央部には断面円状の取付孔71Aが設けられている。ベース部71の一側(図5に示される矢印C側)の面には、下側部において、周壁部73が一体に設けられており、周壁部73は、ベース部71の外周部に配置されて、ベース部71の周方向に沿って湾曲されている。取付孔71Aにはモータ66の凸部66Eが挿入されると共に、周壁部73の内周部はモータ66の外周部に当接されており、これにより、ハーネスガイド70がモータ66に取付けられている。
【0038】
ハーネスガイド70の周壁部73には、断面略C字形状のガイド爪72が設けられている。また、ハーネスガイド70のベース部71には、一対の断面矩形状の溶接孔74A及び溶接孔74Bが貫通形成されており、溶接孔74Aにはモータ66の端子66Bが貫通されて、溶接孔74Bにはモータ66の端子66Cが貫通されている。
【0039】
ハーネスガイド70のベース部71の他側(図5に示される矢印D側)の面には、溶接孔74Aのガイド爪72側において、略直方体状のガイド部76Aが設けられており、ガイド部76Aには、断面矩形状のガイド孔78Aが溶接孔74Aの長手方向に沿って貫通形成されている。また、ベース部71の他側の面には、溶接孔74Aのガイド部76Aとは反対側において、略直方体柱状の位置出壁80Aが設けられている。
【0040】
さらに、ベース部71の他側の面には、溶接孔74Bのガイド爪72側において、略直方体状のガイド部76Bが設けられており、ガイド部76Bには、断面矩形状のガイド孔78Bが溶接孔74Bの長手方向に沿って貫通形成されている。また、ベース部71の他側の面には、溶接孔74Bのガイド部76Bとは反対側において、略直方体柱状の位置出壁80Bが設けられている。
【0041】
ガイド爪72内には、ハーネス82A及びハーネス82Bが挿入されており、ハーネス82A及びハーネス82Bはそれぞれガイド孔78A及びガイド孔78Bに挿通されている。これにより、モータ66の径方向におけるハーネス82A及びハーネス82Bの位置が設定される。また、ハーネス82A及びハーネス82Bの一端はそれぞれ位置出壁80A及び位置出壁80Bに当接されている。これにより、ハーネスA82及びハーネス82Bの長手方向の位置が設定される。この状態でハーネス82A及びハーネス82Bの一端がそれぞれモータ66の端子66B及び端子66Cに溶接されている。一方、ハーネス82A及びハーネス82Bは、後述するモータカバー90の開口部から延出されると共にギヤハウジング42を貫通されて、他端側部が図示しない制御部に接続されている。
【0042】
図1〜図4に示す如く、ギヤハウジング42のフレーム12の脚板16側には、樹脂により製作された略有底円筒状の被覆部材としてのモータカバー90が設けられており、モータカバー90はギヤハウジング42側に向けて開口されている。
【0043】
モータカバー90の外周部には、開口部において、取付部92が設けられており、モータカバー90の内側にモータ66及びハーネスガイド70を収容した状態で、取付部92がギヤハウジング42に固定されている。これにより、モータカバー90はモータ66及びハーネスガイド70から分離されており(モータ66及びハーネスガイド70に連結されておらず)、さらに、モータ66及びハーネスガイド70の外周部とモータカバー90の周壁の内周部との間には、隙間が設けられている。また、モータカバー90の開口部は、筒部52の段差部52Aに嵌合されている。
【0044】
モータカバー90の底壁の外側面には、断面略U字形状の当接部として鍔部94が一体に設けられている。鍔部94は矩形板状の本体部94Aを備えており、本体部94Aは、モータカバー90の底壁に対してフレーム12の脚板18側へ突出されている。本体部94Aは脚板18の下側に配置されており、本体部94Aと脚板18との間には隙間が設けられている。この隙間は、モータ66及びハーネスガイド70の外周部とモータカバー90の周壁の内周部との間の隙間に比して小さく設定されている。本体部94Aの幅方向両端には、略三角形板状の一対のリブ94B及びリブ94Cが一体に設けられており、リブ94B及びリブ94Cは、本体部94Aの幅方向両端のそれぞれから下方に向けて延出されている。
【0045】
モータカバー90の底壁には、外周部において、略直方体箱状の第1排出部96が設けられており、第1排出部96は、モータカバー90の底壁の外側面に対して脚板18側へ突出されて、鍔部94の下側に配置されている。第1排出部96の下側部には、断面矩形状の第1排出孔96Aが貫通形成されており、第1排出孔96Aはモータカバー90の内側に連通されている。このため、第1排出孔96Aはモータカバー90内に浸入した液体(例えば、水)を排出可能にされている。
【0046】
また、モータカバー90の開口部には、下側部において、略矩形状の第2排出部98が設けられており、第2排出部98はギヤハウジング42側へ向けて開口されている。第2排出部98のモータカバー90軸方向の寸法は、ギヤハウジング42の段差部52Aの突出部52突出方向寸法に比して大きくされている。このため、第2排出部98は、段差部52Aによって閉塞されずに、モータカバー90内に浸入した液体(例えば、水)を排出可能にされている。
【0047】
一方、図1に示す如く、前述したギヤハウジング42のギヤ収容部48内には、前述したモータ66のギヤ68が配置されると共に、減速機構40を構成する減速ギヤ列100が収容されている。
【0048】
減速ギヤ列100には、ギヤ68の半径方向側方において、ギヤ68よりも大径に形成された平歯のギヤ102が設けられており、ギヤ102はモータ66のギヤ68に噛合された状態でギヤハウジング42に回転可能に支持されている。
【0049】
ギヤ102の軸線方向一側(図1に示される矢印C側)には、ギヤ102よりも小径な平歯のギヤ104が一体に設けられており、ギヤ104はギヤ102に対して同軸上に配置されている。
【0050】
減速ギヤ列100には、ギヤ104の半径方向側方において、オーバーロード開放機構を構成するギヤ104よりも大径な大径ギヤ106が設けられている。大径ギヤ106は、略有底円筒状に形成されて、ケース54側に向けて開口されている。大径ギヤ106の外周部には平歯の外歯106A(外歯)が形成されている。
【0051】
大径ギヤ106のケース54側には、円板状のカバー112が設けられており、カバー112は大径ギヤ106の開口部を閉塞している。
【0052】
減速ギヤ列100には、大径ギヤ106の軸線方向他側(図1に示される矢印D側)において、ギヤ106よりも小径な小径ギヤ108が設けられている。小径ギヤ108の軸線方向一側端は大径ギヤ106内に同軸上に挿入されており、大径ギヤ106が小径ギヤ108に対して相対回転可能に支持されている。また、大径ギヤ106の外歯106Aがギヤ104に噛合された状態で、小径ギヤ108がギヤハウジング42に回転可能に支持されている。
【0053】
大径ギヤ106内には、図示しない板ばねが固定されており、板ばねは小径ギヤ108の軸線方向一側端に係合されている。このため、通常では、大径ギヤ106と小径ギヤ108とは一体回転可能にされている。但し、小径ギヤ108と大径ギヤ106との間に所定値以上の回転力が作用すると、板ばねが弾性変形されることで板ばねと小径ギヤ108との係合が解除されて、大径ギヤ106に対する小径ギヤ108の相対回転が許容される(オーバーロード開放機構が作動される)。
【0054】
一方、小径ギヤ108の軸線方向他側端には、外周部において、平歯の外歯108A(外歯)が設けられている。
【0055】
減速ギヤ列100には、小径ギヤ108の半径方向側方において、小径ギヤ108よりも大径な平歯のギヤ110が設けられており、ギヤ110は、小径ギヤ108の外歯108Aに噛合した状態でギヤハウジング42に回転自在に支持されている。
【0056】
また、ギヤ110は、ギヤハウジング42の連通孔50において、前述したクラッチ60のクラッチギヤ62の外歯62Bに噛合されている。これにより、モータ66の出力軸66Cの回転が減速ギヤ列100を介してクラッチギヤ62に伝達される。
【0057】
なお、モータ66が出力軸66Cを正転させると、クラッチギヤ62が巻取方向(図1に示される矢印A方向)へ回転される。また、モータ66が出力軸66Cを逆転させると、クラッチギヤ62が引出方向(図1に示される矢印B方向)へ回転される。
【0058】
ギヤハウジング42のケース54側には、略円筒状のギヤカバー114が設けられており、ギヤカバー114はギヤハウジング42側に開口されている。ギヤカバー114は、減速ギヤ列100を被覆した状態で、ギヤハウジング42に固定されている。
【0059】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0060】
ウェビング巻取装置10では、乗員が車両の座席に着席して、ウェビング巻取装置10に格納されたウェビング30を引張ると、スプール20が引出方向へ回転しつつウェビング30が引出される。これにより、乗員はウェビング30を身体に掛けまわし、例えば、ウェビング30に設けられたタングプレートをバックル装置に係合させることで、ウェビング30を身体に装着することができる。
【0061】
一方、例えば、車両走行中に車両の前方に障害物が存在し、しかも車両と障害物との間隔(車両から障害物までの距離)が所定範囲内に達すると、モータ66の駆動が開始され、モータ66の出力軸66Cが急激に回転される。
【0062】
モータ66の出力軸66Cが回転されると、その回転力がギヤ68、ギヤ102、ギヤ104、大径ギヤ106、小径ギヤ108、ギヤ110、及びクラッチ60のクラッチギヤ62に伝達され、クラッチギヤ62が急激に巻取方向(図1に示される矢印A方向)へ回転される。
【0063】
クラッチギヤ62が巻取方向へ回転されると、クラッチ60のロックバーがスプール20のラチェット歯24Aに噛合して、ラチェット24がクラッチギヤ62と一体に巻取方向へ回転される。これにより、スプール20が巻取方向へ急激に回転される。
【0064】
これにより、ウェビング30がスプール20に巻取られて、ウェビング30の僅かな緩み、所謂「スラック」が解消されて、ウェビング30による乗員の身体に対する拘束力が向上する。
【0065】
さらに、「スラック」が解消された状態では、乗員の身体が障害となり基本的にはそれ以上スプール20にウェビング30を巻取ることはできなくなる。このため、スプール20には、ウェビング30から所定値以上の荷重が作用し、その結果、クラッチギヤ62及びギヤ110を介して小径ギヤ108に所定値以上の荷重が作用する。
【0066】
このとき、大径ギヤ106は、モータ66の駆動力によって巻取方向へ回転しようとしているため、小径ギヤ108と大径ギヤ106との間には相対的な回転力が作用する。この回転力が所定値以上になると、大径ギヤ106に固定された板ばねと小径ギヤの軸線方向一側端との係合が解除される。したがって、大径ギヤ106と小径ギヤ108との相対回転が許容される。
【0067】
これにより、スプール20が、モータ66の駆動力によって必要以上の力で巻取方向へ回転されることを防止でき、ウェビング30が必要以上の力で乗員の身体を締め付けることを防止できる。
【0068】
一方、車両衝突の危険が回避された場合には、モータ66の出力軸66Cが逆転される。この出力軸66Cの回転力は、ギヤ68、ギヤ102、ギヤ104、大径ギヤ106、小径ギヤ108、ギヤ110、及びクラッチ60のクラッチギヤ62に伝達され、クラッチギヤ62が急激に引出方向(図1に示される矢印B方向)へ回転される。
【0069】
クラッチギヤ62が引出方向へ回転されると、クラッチ60のロックバーとスプール20のラチェット歯24Aとの噛合が解除されて、スプール20とクラッチギヤ62との連結が解除される。これにより、スプール20の自在な回転が可能となる。
【0070】
ここで、モータ66の一端面66Aはギヤハウジング42を介してフレーム12の脚板16に支持されている。また、モータ66及びハーネスガイド70はモータカバー90に被覆されており、モータ66及びハーネスガイド70はモータカバー90に分離されると共に、モータ66及びハーネスガイド70の外周部とモータカバー90の周壁の内周部との間には、隙間が設けられている。さらに、モータカバー90の取付部92はギヤハウジング42に固定されており、モータカバー90の底壁には、鍔部94が設けられている。また、鍔部94とフレーム12の脚板18との間の隙間は、モータ66及びハーネスガイド70の外周部とモータカバー90の周壁の内周部との間の隙間に比して小さく設定されている。
【0071】
このため、例えば、ウェビング巻取装置10を車体に取付ける前に、ウェビング巻取装置10の落下などによる衝撃荷重がモータカバー90に下方から付与された際には、モータカバー90に付与された衝撃荷重によって、モータカバー90の底壁側部分が上方へ移動される。この際には、モータカバー90の鍔部94がフレーム12の脚板18に当接されて、モータカバー90の移動が規制される。このため、モータカバー90の周壁の内周部がモータ66及びハーネスガイド70の外周部に当接されることが抑制又は防止されて、好ましくは、モータ66及びハーネスガイド70の外周部とモータカバー90の周壁の内周部との間に依然として隙間が設けられる。これにより、モータカバー90を介してモータ66に衝撃荷重が入力されることを抑制又は防止できる。したがって、例えば、衝撃荷重によってモータ66の一端66A又はギヤハウジング42が変形されることが抑制又は防止されて、モータ66のギヤ68とギヤ102との噛合を良好にできる。
【0072】
また、モータカバー90の底壁には、鍔部94の下側において、第1排出部96が設けられており、モータカバー90の開口部には、下側部において、第2排出部98が設けられている。このため、仮に、液体(水)がモータカバー90内に浸入した際には、第1排出部96の第1排出孔96A及び第2排出部98がモータカバー90内に浸入した液体を排出する。これにより、モータカバー90が、外力による衝撃荷重がモータ66に入力されることを抑制又は防止する機能とモータカバー90内に浸入した液体を排出する機能との2つの機能を備えることができる。さらに、鍔部94は第1排出部96の上側に配置されているため、上方からの液体が第1排出部からモータカバー90内へ浸入することを鍔部94によって抑制できる。
【0073】
しかも、第1排出部96は、モータカバー90のモータ66の他端側において設けられており、第2排出部98は、モータカバー90のモータ66の一端側において設けられている。このため、モータ66の一端66Aが他端66Dに対して下方に配置されてウェビング巻取装置10が車体に取付けられる場合でも、モータ66の他端66Dが一端66Aに対して下方に配置されてウェビング巻取装置10が車体に取付けられる場合でも、モータカバー90内に浸入した液体を排出できる。
【0074】
また、モータカバー90には鍔部94が一体に設けられている。このため、モータカバー94をギヤハウジング42に取付けることで、鍔部94をフレーム12の脚板18の下側に配置できる。これにより、鍔部94をウェビング巻取装置10に設ける際の組付工数を削減できる。
【0075】
さらに、モータカバー90は樹脂により製作されている。このため、モータカバー90を安価に製作できると共に軽量化できる。
【0076】
なお、本実施の形態では、モータカバー90の鍔部94とフレーム12の脚板18の下側縁部との間に隙間が設けられている。これに替えて、例えば、脚板18を下側に延設させて、脚板18に略矩形状の孔を貫通形成する。さらに、この孔に鍔部94を挿入して、この孔の縁部の内周面と鍔部94との間に隙間を設けてもよい。これにより、モータカバー90に外力による荷重が上下方向及び車幅方向に付与された際でも、モータカバー90の鍔部94が孔の縁部の内周面に当接されて、モータカバー90の移動が規制される。したがって、モータカバー90の周壁の内周部がモータ66及びハーネスガイド70の外周部に当接されることが抑制又は防止される。つまり、モータカバー90に外力による荷重が上下方向及び車幅方向に付与された際に、モータカバー90の鍔部94が当接されて、モータカバー90の移動が規制される構成にしてもよい。
【0077】
また、本実施の形態では、外力による荷重がモータカバー90に付与された際に、モータカバー90の鍔部94がフレーム12の脚板18に当接される。これに替えて、モータカバー90の鍔部94がフレーム12に取付けられたセンサカバー32に当接されてもよい。つまり、モータカバー90の鍔部94がそれぞれ支持体を構成するフレーム12又はフレーム12に固定されている部材に当接されればよい。
【符号の説明】
【0078】
10 ウェビング巻取装置
12 フレーム
20 スプール(巻取軸)
30 ウェビング
66 モータ
90 モータカバー(被覆部材)
94 鍔部(当接部)
96 第1排出部
98 第2排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員拘束用のウェビングが巻取られる巻取軸と、
前記巻取軸が回転可能に支持されるフレームと、
一端側が前記フレームに支持されると共に、前記巻取軸に連絡され、所定時に駆動されることで前記巻取軸が回転されるモータと、
前記モータから分離された状態で前記モータを被覆すると共に、当接部が設けられ、外力による荷重が付与された際に前記当接部が前記フレームに当接される被覆部材と、
を備えたウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記被覆部材に前記当接部の下方において設けられ、前記被覆部材内に浸入した液体を排出する第1排出部を備えた請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記第1排出部は前記被覆部材に前記モータの他端側において設けられ、
前記被覆部材に前記モータの一端側において設けられ、前記被覆部材内に浸入した液体を排出する第2排出部を備えた請求項2に記載のウェビング巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131358(P2012−131358A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285017(P2010−285017)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】