説明

ウェビング巻取装置

【課題】移動部材及び筒部材の傾動を抑制すると共に小型化かつ軽量化する。
【解決手段】ウェビング巻取装置10では、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50軸方向中央がシリンダ66の中心軸線に対し脚板12Bとは反対側に配置されている。このため、ピストン88が移動されることでラック96が歯車52に噛合されてピニオン50が回転される際には、ピストン88がピニオン50から脚板12B側への傾動力を作用される。ここで、脚板12Bの脚板12C側にアッパステー74の係止部84Aが配置されている。このため、ピストン88がピニオン50から脚板12B側への傾動力を作用されても、脚板12Bの脚板12C側への移動を係止部84Aが係止できて、ピストン88及びシリンダ66の脚板12B側への傾動を抑制できる。さらに、フレーム12等の強度を高くする必要をなくすことができるため、小型化かつ軽量化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒部材内に供給されたガスの圧力により移動部材が移動されることでウェビングが巻取軸に巻取られるウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のシートベルト用リトラクタでは、シリンダ部のシリンダ本体部内にガスが供給されて、ガスの圧力によりラックが移動されることで、ラックのラック本体部がピニオンギヤ体のピニオンギヤ部に噛合して、ピニオンギヤ体が回転される。これにより、巻取ドラムが巻取方向へ回転されて、巻取ドラムにウェビングが巻取られる。
【0003】
ところで、ラック本体部のピニオンギヤ体軸方向における中央がシリンダ本体部内の中心軸線に対し一側(巻取ドラムとは反対側)に配置されている。このため、ラック本体部がピニオンギヤ部に噛合してピニオンギヤ体が回転される際には、ラック本体部がピニオンギヤ部から他側(巻取ドラム側)への傾動力を作用されて、ラック及びシリンダ部に他側への傾動力が作用される。
【0004】
ここで、仮に、ラック及びシリンダ部が他側へ傾動されると、ラック本体部がピニオンギヤ部に適切に噛合しないため、ラックの移動力のピニオンギヤ体への伝導効率が悪化して、ピニオンギヤ体がラックの移動によって効率的に回転できない。
【0005】
このため、このシートベルト用リトラクタでは、ラック及びシリンダ部の他側への傾動を抑制するために、シリンダ部が取付けられるハウジング体、シリンダ部、ラック及びピニオンギヤ体の強度を高くしている。
【0006】
しかしながら、このようにハウジング体、シリンダ部、ラック及びピニオンギヤ体の強度を高くしているため、シートベルト用リトラクタが大型化かつ重量化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335217公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、移動部材及び筒部材の傾動を抑制できると共に小型化かつ軽量化できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のウェビング巻取装置は、車両の乗員に装着されるウェビングが、巻取方向へ回転されることで巻取られる巻取軸と、所定の機会に内部にガスが供給される筒部材と、回転されることで前記巻取軸が巻取方向へ回転される回転部材と、前記回転部材軸方向における中央が前記筒部材内の中心軸線に対し一側に配置される係合部が設けられ、前記筒部材内に供給されたガスの圧力により移動されることで前記係合部が前記回転部材に係合されて前記回転部材が回転される移動部材と、前記筒部材の他側に配置された配置部材と、前記配置部材の他側に配置され、前記配置部材の他側への移動を係止可能にされた係止部と、を備えている。
【0010】
請求項2に記載のウェビング巻取装置は、請求項1に記載のウェビング巻取装置において、前記係止部を前記配置部材に対し垂直に配置している。
【0011】
請求項3に記載のウェビング巻取装置は、請求項1又は請求項2に記載のウェビング巻取装置において、前記係止部を車体側に固定している。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のウェビング巻取装置では、所定の機会に筒部材内に供給されたガスの圧力により移動部材が移動されることで、移動部材の係合部が回転部材に係合されて、回転部材が回転される。これにより、巻取軸が巻取方向へ回転されて、巻取軸にウェビングが巻取られる。
【0013】
また、筒部材の他側に配置部材が配置されている。
【0014】
さらに、移動部材の係合部の回転部材軸方向における中央が、筒部材内の中心軸線に対し一側に配置されている。このため、移動部材の係合部が回転部材に係合されて回転部材が回転される際には、移動部材が回転部材から他側への傾動力を作用されて、移動部材及び筒部材に他側への傾動力が作用される。
【0015】
ここで、配置部材の他側に係止部が配置されており、配置部材の他側への移動を係止部が係止可能にされている。このため、上述の如く移動部材及び筒部材に他側への傾動力が作用されて、配置部材に他側への移動力が作用されても、配置部材の他側への移動を係止部が係止できて、移動部材及び筒部材の他側への傾動を抑制できる。
【0016】
しかも、移動部材及び筒部材の他側への傾動を抑制するために、配置部材、筒部材、移動部材及び回転部材の強度を高くする必要をなくすことができる。このため、ウェビング巻取装置を小型化かつ軽量化できる。
【0017】
請求項2に記載のウェビング巻取装置では、係止部が配置部材に対し垂直に配置されている。このため、配置部材の他側への移動を係止部が効果的に係止できて、移動部材及び筒部材の他側への傾動を効果的に抑制できる。
【0018】
請求項3に記載のウェビング巻取装置では、係止部が車体側に固定されている。このため、配置部材の他側への移動を係止部が効果的に係止できて、移動部材及び筒部材の他側への傾動を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置を示す車幅方向外側かつ車両前後方向一側から見た分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置を示す車両前後方向一側から見た側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置におけるプリテンショナ機構の作動後を示す車両前後方向一側から見た側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置の主要部を示す車幅方向外側から見た断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置の主要部を示す車幅方向内側から見た側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置の主要部を示す上側から見た平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置のフレーム及びサポートバーを示す車幅方向外側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置10が車幅方向外側かつ車両前後方向一側から見た分解斜視図にて示されており、図2には、ウェビング巻取装置10が車両前後方向一側から見た側面図にて示されている。なお、図面では、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両前後方向一側を矢印LOで示し、上方を矢印UPで示す。
【0021】
図1及び図2に示す如く、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10には、配置部材としての金属製で断面U字形板状のフレーム12が設けられており、フレーム12には、車幅方向内側の背板12Aと、車両前後方向一側の脚板12Bと、車両前後方向他側の脚板12Cと、が設けられている。
【0022】
背板12Aの上側には、係止部材としての金属製板状のアッパステー74が配置されている。
【0023】
図5及び図6に詳細に示す如く、アッパステー74の下側部分には、平板状の固定部76が設けられており、固定部76が背板12Aの上部に固定されることで、アッパステー74が背板12Aの上部に固定されている。
【0024】
固定部76の上側には、長尺矩形平板状の案内部78が一体に設けられており、案内部78は、固定部76の上端からフレーム12内側へ水平に延出されている。案内部78の幅方向中央には、長尺矩形状の案内孔82が貫通形成されており、案内孔82の長手方向は、背板12Aと平行に配置されている。
【0025】
案内部78の上側には、L字形平板状の設置部84が一体に設けられており、設置部84は、案内部78の固定部76とは反対側の端部から上方へ垂直に延出されている。設置部84の下側かつ脚板12B側の部分には、矩形平板状の係止部84Aが形成されており、係止部84Aは、脚板12Bに対し垂直に配置されている。
【0026】
フレーム12は、背板12Aの下部において、車体側に固定されると共に、アッパステー74は、設置部84の上部において、車体側に固定されており、これにより、ウェビング巻取装置10が車両に設置されている。
【0027】
図7に詳細に示す如く、フレーム12の脚板12Bと脚板12Cとの間には、背板12Aとは反対側の端部において、支持部材としての平板状のサポート板13が架け渡されており、サポート板13には、本体部としての長尺板状の第1支持板13Aが設けられている。第1支持板13Aの両端部には、略T字形板状の固定片13Bが一体に突出形成されており、第1支持板13Aの両端部は、固定片13Bの基端部において、それぞれ脚板12Bと脚板12Cとの上下方向中間部(中央部)に加締め固定されている。
【0028】
第1支持板13Aの脚板12B側の端部近傍には、支持部としての略三角形板状の第2支持板13Cが一体に形成されており、第2支持板13Cは、第1支持板13Aから上側に延出されている。第2支持板13Cの上部には、上記と同様の固定片13Bが一体に突出形成されており、第2支持板13Cの上部は、固定片13Bの基端部において、脚板12Bに加締め固定されている。第2支持板13Cは、脚板12Bのうち第1支持板13Aより上側部分の一部で上下方向に接触している。第2支持板13Cは、脚板12Bにおける第1支持板13Aより上側部分を支持しており、脚板12Bの脚板12C側への移動を制することが可能である。
【0029】
第1支持板13Aの脚板12C側の端部近傍には、追加支持部としての略三角形板状の第3支持板13Dが一体に形成されており、第3支持板13Dは、第1支持板13Aから下側に延出されている。第3支持板13Dは、脚板12Cのうち第1支持板13Aより下側部分の一部で上下方向に接触している。第3支持板13Dは、脚板12Cにおける第1支持板13Aより下側部分を支持しており、脚板12Cの脚板12B側への移動を制することが可能である。
【0030】
フレーム12の脚板12B及び脚板12Cには、それぞれ円状の配置孔14及び配置孔16が貫通形成されており、配置孔14と配置孔16とは、互いに対向されている。
【0031】
脚板12Bには、配置孔14の上側かつ背板12A側において、長尺矩形状の第1係止孔18が貫通形成されており、第1係止孔18は、背板12A側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ僅かに傾斜されている。脚板12Bには、第1係止孔18の直下において、長尺矩形状の第2係止孔20が貫通形成されており、第2係止孔20は、第1係止孔18に平行に配置されて、第1係止孔18に連通されている。
【0032】
脚板12Bには、第1係止孔18の直上から上縁まで間において、配置部としての配置壁86が形成されており、配置壁86は、円弧状に湾曲されて、脚板12C側へ突出されている。また、配置壁86の長手方向(湾曲軸方向)は、上側へ向かうに従い背板12A側へ向かう方向へ僅かに傾斜されている。
【0033】
図5及び図6に詳細に示す如く、配置壁86の脚板12C側には、アッパステー74の係止部84Aが配置されており、係止部84Aは、配置壁86から僅かに離間されている。係止部84Aは、配置壁86(特に配置壁86の上部)の幅方向中央部に対向されており、係止部84Aは、配置壁86(特に配置壁86の上部)との対向部分に対し垂直に配置されている。
【0034】
フレーム12の脚板12B(配置孔14)と脚板12C(配置孔16)との間には、巻取軸22が回転可能に支持(配置)されている。
【0035】
巻取軸22には、巻取部材としての略円筒状のスプール24が設けられており、スプール24には、長尺帯状のウェビング26(ベルト)が基端側から巻取られている。ウェビング26は、スプール24の背板12A側から上側へ延出されて、アッパステー74(案内部78)の案内孔82に長手方向へ移動可能に挿通されている。これにより、ウェビング26がフレーム12及びアッパステー74から上側へ延出されており、ウェビング26は、車両のシート(図示省略)に着座した乗員に装着可能にされている。
【0036】
スプール24が巻取方向(図1及び図2の矢印Aの方向)へ回転されることで、ウェビング26がスプール24に巻取られると共に、ウェビング26がスプール24から引出されることで、スプール24が引出方向(図1及び図2の矢印Bの方向)へ回転される。また、スプール24に対するウェビング26の巻取り及び引出しは、アッパステー74(案内部78)の案内孔82に案内される。
【0037】
スプール24内には、フォースリミッタ機構を構成するエネルギー吸収部材としてのトーションシャフト28が同軸上に挿入されており、トーションシャフト28の脚板12B側の一端28Aは、スプール24の脚板12B側の一端面から突出されている。トーションシャフト28の脚板12C側の他端28Bは、スプール24の脚板12C側の他端内に相対回転不能に固定されており、トーションシャフト28は、スプール24と一体に回転可能にされている。
【0038】
スプール24の一端には、係合部材としての略円柱状のロックギヤ30が設けられており、ロックギヤ30には、トーションシャフト28が同軸上に貫通されている。ロックギヤ30には、トーションシャフト28が相対回転不能に固定されており、ロックギヤ30は、トーションシャフト28と一体に回転可能にされている。また、ロックギヤ30の外周全体には、ラチェット歯30A(外歯)が形成されている。
【0039】
ロックギヤ30のスプール24とは反対側の面には、クラッチ機構を構成する円柱状のクラッチ凹部32が形成されており、クラッチ凹部32の外周面は、摩擦係数が高くされている。
【0040】
フレーム12の脚板12C外側には、付勢手段としての付勢機構(図示省略)が設けられており、付勢機構は、スプール24に連結されて、スプール24に巻取方向への付勢力を作用させている。
【0041】
フレーム12の脚板12Bには、配置孔14の近傍において、規制部材(ロック部材)としての板状のロックプレート34が回動可能に支持されており、ロックプレート34には、ロック歯34Aが形成されている。ロックプレート34は、規制手段(ロック手段)としてのロック機構(図示省略)に連絡されており、ウェビング26のスプール24からの急激な引出し時や車両の急減速時には、ロック機構が作動されることで、ロックプレート34が回動されて、ロック歯34Aがロックギヤ30のラチェット歯30Aに噛合(係合)される。これにより、ロックギヤ30の引出方向への回転が規制(ロック)されて、スプール24の引出方向への回転が規制される(スプール24の巻取方向への回転は許容される)。
【0042】
フレーム12の脚板12B外側には、ラック&ピニオン方式によるプリテンショナ機構36が設けられている。
【0043】
プリテンショナ機構36には、保持部材としての樹脂製で略円環状のギヤケース38が設けられており、ギヤケース38は、脚板12Bに固定されている。ギヤケース38の外周部は、ロックギヤ30の外周部分を被覆しており、ギヤケース38の内側には、ロックギヤ30のクラッチ凹部32が配置されると共に、トーションシャフト28の一端28Aが貫通されている。
【0044】
ギヤケース38の外周部には、所定数の円柱状の保持ピン40(シェアピン)が一体に形成されており、保持ピン40は、ギヤケース38からロックギヤ30とは反対側へ突出されている。ギヤケース38の上部には、円柱状の係止ピン42(シェアピン)が一体に形成されており、係止ピン42は、ギヤケース38から脚板12Bとは反対側へ突出されている。
【0045】
ギヤケース38のロックギヤ30とは反対側には、クラッチ機構を構成するクラッチ部材としての略円環板状のクラッチプレート44が配置されている。クラッチプレート44の外周縁には、半円状の装着孔46が所定数形成されており、所定数の装着孔46は、クラッチプレート44の周方向に沿って等間隔に配置されている。装着孔46には、ギヤケース38の保持ピン40が嵌入されており、これにより、クラッチプレート44がギヤケース38に保持されている。
【0046】
クラッチプレート44の内周には、L字形板状の延出部48が所定数(本実施の形態では6つ)一体に形成されており、所定数の延出部48は、クラッチプレート44の周方向に沿って等間隔に配置されている。延出部48の先端には、柱状の噛込部48Aが一体に形成されており、噛込部48Aは、延出部48からギヤケース38側へ突出されて、ギヤケース38内側を介してロックギヤ30のクラッチ凹部32内に挿入されている。噛込部48Aは、クラッチ凹部32の外周面から離間されており、クラッチプレート44は、ロックギヤ30の回転を許容している。
【0047】
クラッチプレート44の内周側には、回転部材としてのピニオン50が設けられており、ピニオン50には、トーションシャフト28の一端28Aが同軸上かつ相対回転可能に貫通されている。ピニオン50の軸方向中間部分には、歯車52が同軸上に設けられており、歯車52の外周全体には、ピニオン歯52Aが形成されている。さらに、ピニオン50のロックギヤ30とは反対側部分には、円筒状の支持筒54が同軸上に形成されている。
【0048】
ピニオン50のロックギヤ30側部分には、クラッチ機構を構成するクラッチ部56が同軸上に形成されており、クラッチ部56は、ロックギヤ30のクラッチ凹部32内に挿入されている。クラッチ部56の外周面には、所定数(本実施の形態では6つ)の凸部56Aが形成されており、所定数の凸部56Aは、クラッチ部56の周方向に沿って等間隔に配置されると共に、それぞれ突出高さが引出方向へ向かうに従い徐々に高くされている。クラッチ部56には、各凸部56Aの巻取方向側部分において、クラッチプレート44の噛込部48Aが装着(圧接)されており、これにより、ピニオン50がクラッチプレート44に保持されている。
【0049】
フレーム12の脚板12B外側には、組付部材としての金属製板状のカバープレート58が設けられており、カバープレート58は、複数の固定スクリュー60によって脚板12Bに固定(締結)されている。カバープレート58は、ギヤケース38、クラッチプレート44及びピニオン50をロックギヤ30とは反対側から被覆している。
【0050】
カバープレート58には、ピニオン50の支持筒54が貫通されており、カバープレート58は、ピニオン50を回転自在に支持している。ピニオン50の支持筒54には、カバープレート58より脚板12Bとは反対側において、係止部材としての正面視略C字状のKリング62が嵌合固定されており、Kリング62がカバープレート58に係止されることで、ピニオン50のカバープレート58からの離脱が規制されている。
【0051】
カバープレート58の上部には、長尺矩形状の第3係止孔64が貫通形成されており、第3係止孔64は、背板12A側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ僅かに傾斜されて、脚板12Bの第1係止孔18及び第2係止孔20に対向されている。
【0052】
カバープレート58には、第3係止孔64の直上から上縁まで間において、組付部としての組付壁98が形成されており、組付壁98は、円弧状に湾曲されて、脚板12Bとは反対側へ突出されている。また、組付壁98の湾曲軸方向は、上側へ向かうに従い背板12A側へ向かう方向へ僅かに傾斜されている。
【0053】
フレーム12の脚板12Bの上部とカバープレート58の上部との間には、筒部材としての円筒状のシリンダ66が設けられており、シリンダ66は、脚板12B及びカバープレート58から上側に延出されている。
【0054】
シリンダ66は、脚板12Bの配置壁86とカバープレート58の組付壁98との間に嵌合されている。さらに、シリンダ66は、カバープレート58の上側において、断面略U字形板状のシリンダホルダ68内に嵌合されており、シリンダホルダ68は、長手方向両端部において脚板12Bの上部に係合されて、脚板12Bに固定されている。これにより、配置壁86、組付壁98及びシリンダホルダ68が、シリンダ66の径方向への移動を規制している。また、シリンダ66が脚板12Bの配置壁86内に挿入されることで、ウェビング巻取装置10の小型化が図られている。
【0055】
シリンダ66の下端には、周縁部66Aが一体に形成されており、周縁部66Aは、シリンダ66の外周全体に突出されている。周縁部66Aは、脚板12Bの第1係止孔18及びカバープレート58の第3係止孔64上側部分に嵌合されている。
【0056】
シリンダ66の直下には、ストッパ部材としての略矩形板状のピストンストッパ70が配置されており、ピストンストッパ70は、シリンダ66の下端(周縁部66Aを含む)に当接(面接触)されると共に、脚板12Bの第2係止孔20及びカバープレート58の第3係止孔64下側部分に嵌合されている。これにより、ピストンストッパ70の移動及びシリンダ66の軸方向への移動が係止されて、ピストンストッパ70及びシリンダ66が脚板12Bとカバープレート58との間に固定されている。
【0057】
ピストンストッパ70には、矩形状の挿通孔72が貫通形成されており、シリンダ66内は、挿通孔72を介して、ピニオン50の上側に開口されている。
【0058】
図4に詳細に示す如く、シリンダ66の中心軸線CC(シリンダ66内の中心軸線)は、ピニオン50の歯車52の軸方向中央に対し、脚板12B側(他側)に配置されている。
【0059】
シリンダ66内の上端には、駆動手段としての略円柱状のガスジェネレータ80が嵌入かつ固定されており、ガスジェネレータ80は、シリンダ66の上端を閉塞している。ガスジェネレータ80には、車両の制御装置(図示省略)に電気的に接続されている。車両の衝突時(車両の衝突が検出された際、車両の緊急時である所定の機会)には、制御装置の制御によって、プリテンショナ機構36が作動されることで、ガスジェネレータ80が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ66内の上端に供給する。
【0060】
シリンダ66内には、移動部材としてのピストン88が設けられている。
【0061】
ピストン88の上端には、円柱状の基部90が設けられており、基部90は、シリンダ66と同軸上に配置されている。ピストン88には、基部90の直下において、円板状のフランジ92が設けられており、フランジ92は、シリンダ66と同軸上に配置されると共に、基部90の外周全体に突出されて、シリンダ66の内周面に略嵌合されている。
【0062】
基部90の外周には、シール部材としての円環状かつ断面X字状のXリング94が配置されており、Xリング94は、ゴム製等にされて、弾性及びシール性を有している。Xリング94は、弾性変形された状態で、基部90の外周面、フランジ92の上面及びシリンダ66の内周面における全周に接触されており、Xリング94は、シリンダ66とピストン88との間をシールしている。
【0063】
ピストン88には、フランジ92より下側において、係合部としての略矩形柱状のラック96が設けられている。ラック96の背板12Aとは反対側の部分には、ラック歯96Aが形成されており、ラック歯96Aは、ラック96の長手方向(軸方向)に対し、垂直に配置されている。ラック96は、シリンダ66の下端から突出されると共に、ピストンストッパ70の挿通孔72に挿通されており、ラック歯96Aがギヤケース38の係止ピン42に係止されることで、ラック96の下端がピニオン50の歯車52の上側近傍に配置されている。
【0064】
図4に詳細に示す如く、ラック96は、基部90及びフランジ92に対し脚板12Bとは反対側(一側)にずれて配置されており、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50(歯車52)軸方向中央RCは、シリンダ66の中心軸線CC(基部90及びフランジ92の中心軸線)に対し脚板12Bとは反対側に配置されている。これにより、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50軸方向における配置範囲が、歯車52の軸方向における配置範囲と一致されると共に、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50軸方向中央RCが、歯車52の軸方向中央と一致されている。
【0065】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0066】
以上の構成のウェビング巻取装置10では、車両のシートに着座した乗員にウェビング26が装着された際に、付勢機構がスプール24に巻取方向への付勢力を作用させることで、ウェビング26の緩みが除去される。
【0067】
車両の衝突時には、ウェビング26がスプール24から急激に引出され又は車両が急減速されて、ロック機構が作動されることで、ロックプレート34のロック歯34Aがロックギヤ30のラチェット歯30Aに噛合される。これにより、ロックギヤ30の引出方向への回転が規制されて、スプール24の引出方向への回転が規制されることで、ウェビング26のスプール24からの引出しが規制されて、ウェビング26が乗員を拘束する。
【0068】
さらに、車両の衝突時には、制御装置の制御によって、プリテンショナ機構36が作動されることで、ガスジェネレータ80が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ66内の上端(軸方向一側端)に供給する。このため、シリンダ66とピストン88との間がXリング94によってシールされた状態が維持されつつ、ピストン88(基部90及びフランジ92)及びXリング94が当該ガスの圧力を上側から受けることで、ピストン88のラック96(ラック歯96A)を係止するギヤケース38の係止ピン42がラック歯96Aによって破断されて、ピストン88及びXリング94がシリンダ66の軸方向に沿って下側(シリンダ66内の軸方向他側)へ移動される。これにより、ピストン88のラック96(ラック歯96A)がピニオン50の歯車52(ピニオン歯52A)に噛合(係合)されて、ピニオン50が巻取方向へ回転される。
【0069】
ピニオン50が巻取方向へ回転された際には、クラッチプレート44の噛込部48Aがピニオン50のクラッチ部56における凸部56Aの巻取方向側部分から引出方向側部分に移動されることで、クラッチプレート44の延出部48がクラッチプレート44の外周側へ変形移動されつつ、噛込部48Aがロックギヤ30のクラッチ凹部32外周面側へ移動される。このため、噛込部48Aがクラッチ部56(凸部56Aの周面)とロックギヤ30(クラッチ凹部32の外周面)との間に噛み込まれる(係合される)ことで、ピニオン50、クラッチプレート44、ロックギヤ30、トーションシャフト28及びスプール24が一体回転可能にされる。これにより、クラッチプレート44の装着孔46に嵌入されたギヤケース38の保持ピン40が装着孔46の周縁によって破断されて、クラッチプレート44のギヤケース38への保持が解除されることで、ピニオン50、クラッチプレート44、ロックギヤ30、トーションシャフト28及びスプール24が一体に巻取方向へ回転される。このため、スプール24にウェビング26が巻取られて、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される。
【0070】
図3に示す如く、ピストン88のフランジ92がピストンストッパ70に当接した際には、ピストン88及びXリング94の下側への移動が停止されて、プリテンショナ機構36の作動が終了される。
【0071】
ところで、ピストン88では、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50(歯車52)軸方向における配置範囲が、歯車52の軸方向における配置範囲と一致されると共に、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50軸方向中央RCが、歯車52の軸方向中央と一致されている。
【0072】
このため、上述の如く、ピストン88がシリンダ66の軸方向に沿って下側へ移動されることで、ラック96が歯車52に噛合されて、ピニオン50が巻取方向へ回転される際には、ラック96(ラック歯96A)が歯車52(ピニオン歯52A)に適切に噛合できる。これにより、ピストン88の移動力をピニオン50に効率的に伝達できて、ピストン88の移動によってピニオン50が効率的に回転できる。
【0073】
また、ピストン88では、ラック96が基部90及びフランジ92に対し脚板12Bとは反対側(一側)にずれて配置されて、ラック96及びラック歯96Aのピニオン50軸方向中央RCがシリンダ66の中心軸線CC(基部90及びフランジ92の中心軸線)に対し脚板12Bとは反対側に配置されている。
【0074】
このため、上述の如く、ピストン88がシリンダ66の軸方向に沿って下側へ移動されることで、ラック96が歯車52に噛合されて、ピニオン50が巻取方向へ回転される際には、ピストン88(ラック歯96A)がピニオン50(ピニオン歯52A)から脚板12B側(図4の矢印C側である他側)への傾動力を作用されて、ピストン88及びシリンダ66に脚板12B側への傾動力が作用される。
【0075】
ここで、シリンダ66が組付けられる(固定される)脚板12Bの配置壁86の脚板12C側(他側)に、アッパステー74(設置部84)の係止部84Aが配置されており、配置壁86の脚板12C側への移動を係止部84Aが係止可能にされている。
【0076】
このため、上述の如くピストン88及びシリンダ66に脚板12B側への傾動力が作用されて、配置壁86に脚板12C側への移動力(傾動力)が作用されても、配置壁86の脚板12C側への移動(傾動)を係止部84Aが係止できて、ピストン88及びシリンダ66の脚板12B側への傾動を抑制できる。これにより、ラック96(ラック歯96A)が歯車52(ピニオン歯52A)に適切に噛合でき、ピストン88の移動力をピニオン50に効率的に伝達できて、ピストン88の移動によってピニオン50が効率的に回転できる。
【0077】
また、アッパステー74の係止部84Aが、配置壁86(特に配置壁86の上部)の幅方向中央部に対向されて、配置壁86(特に配置壁86の上部)との対向部分に対し垂直に配置されている。このため、配置壁86の脚板12C側への移動を係止部84Aが効果的に係止できて、ピストン88及びシリンダ66の脚板12B側への傾動を効果的に抑制できる。
【0078】
さらに、係止部84Aが設けられたアッパステー74の設置部84が車体側に固定されると共に、アッパステー74が固定されたフレーム12の背板12Aが車体側に固定されている。このため、配置壁86の脚板12C側への移動を係止部84Aが一層効果的に係止できて、ピストン88及びシリンダ66の脚板12B側への傾動を一層効果的に抑制できる。
【0079】
しかも、フレーム12の脚板12Bと脚板12Cとの間に架け渡されたサポート板13の第2支持板13Cが、脚板12Bのうち第1支持板13Aより上側部分の一部で上下方向に接触している。このため、第2支持板13Cが、脚板12Bの脚板12C側への移動を制することができて、配置壁86の脚板12C側への移動を制限でき、ピストン88及びシリンダ66の脚板12B側への傾動を更に一層効果的に抑制できる。
【0080】
また、ピストン88及びシリンダ66の脚板12B側への傾動を抑制するために、フレーム12(配置壁86)、シリンダ66、ピストン88(ラック96)及びピニオン50(歯車52)の強度を高くする必要をなくすことができる。このため、ウェビング巻取装置10を小型化かつ軽量化できる。
【0081】
さらに、アッパステー74が、設置部84においてウェビング巻取装置10を車両に設置する機能を有すると共に、案内部78(案内孔82)においてスプール24に対するウェビング26の巻取り及び引出しを案内する機能を有しており、アッパステー74に係止部84Aが形成されている。このため、部品点数が増加することを防止でき、ウェビング巻取装置10を一層小型化かつ軽量化できる。
【0082】
また、アッパステー74の係止部84Aが脚板12Bの配置壁86から僅かに離間されている。このため、車両の走行時に振動によって係止部84Aと配置壁86との当接音が発生することを防止できる。
【符号の説明】
【0083】
10 ウェビング巻取装置
12 フレーム(配置部材)
22 巻取軸
26 ウェビング
50 ピニオン(回転部材)
66 シリンダ(筒部材)
84A 係止部
88 ピストン(移動部材)
96 ラック(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員に装着されるウェビングが、巻取方向へ回転されることで巻取られる巻取軸と、
所定の機会に内部にガスが供給される筒部材と、
回転されることで前記巻取軸が巻取方向へ回転される回転部材と、
前記回転部材軸方向における中央が前記筒部材内の中心軸線に対し一側に配置される係合部が設けられ、前記筒部材内に供給されたガスの圧力により移動されることで前記係合部が前記回転部材に係合されて前記回転部材が回転される移動部材と、
前記筒部材の他側に配置された配置部材と、
前記配置部材の他側に配置され、前記配置部材の他側への移動を係止可能にされた係止部と、
を備えたウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記係止部を前記配置部材に対し垂直に配置した請求項1記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記係止部を車体側に固定した請求項1又は請求項2記載のウェビング巻取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−62002(P2012−62002A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209405(P2010−209405)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】