ウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラム
【課題】ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させるための、ウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムを提供する。
【解決手段】診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析部14と、予め設定された、HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積部11と、前記解析結果情報の識別情報ごとに、情報蓄積部に記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成部15とを備える。
【解決手段】診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析部14と、予め設定された、HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積部11と、前記解析結果情報の識別情報ごとに、情報蓄積部に記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成部15とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させるための、ウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及によって、様々な情報が得られるようになってきた。インターネットの主な利用方法の一つにウェブページの閲覧がある。ウェブページは、HTML(Hyper Text Markup Language)ファイル、スタイルシート、画像情報、映像情報などから構成され、HTMLファイルに記述されたとおりに、テキストや画像情報をブラウザ上に表示するものが一般的である。
【0003】
しかし、ウェブページはブラウザを使って表示に利用されるだけでなく、音声読み上げソフトを始めとした様々なソフトウェアやシステムで利用されている。
【0004】
そのため、様々なソフトウェアやシステムに対応したブラウザで利用できるように、アクセシビリティに配慮したウェブページをデザインすることが求められている。特に自治体等の公共向けサイトではウェブページの利用のしやすさが広く求められており、アクセシビリティに配慮したサイトも増えている。
【0005】
利用しやすいウェブページを作成するために、アクセシビリティの観点から不適切であると診断されるデザイン部分を自動的にチェックするツールも開発されている。診断する項目はJIS規格(JIS X 8341-3)やWCAG 2.0(Web Content Accessibility Guidelines 2.0)などのガイドラインを基に作られる。
【0006】
このようなチェックツールを使うことにより、不適切なデザイン部分を発見し、そのデザインを修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−140642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このとき、HTMLタグの使い方などから不適切なデザイン部分を自動的に発見することで簡易な診断を行うことはできるが、最終的にはアクセシビリティに配慮しているかどうかを人間が判定することが必要な項目がある。
【0009】
例えば、適切なデザインで構成されたウェブページを生成するための項目の一つに「画像に適切な代替テキストを付ける」というものがある。この項目は、画像の情報を閲覧することができない全盲のユーザが、音声読み上げソフトにより読み上げられる代替テキストの合成音声により画像の情報を取得できるようにするためのものである。
【0010】
この項目に関して、チェックツールを用いた自動診断により代替テキストの有無をチェックし、代替テキストがない、または、空白の場合に指摘をすることはできる。しかし、代替テキストが画像の情報を適切に表しているかまではチェックツールによる自動診断は難しく、人間が画像と代替テキストを見比べて判定する必要がある。
【0011】
一つのウェブサイトは複数のウェブページから構成され、一つのウェブページは画像などの複数の要素から構成されている。一つのウェブサイトは数万のウェブページから構成されていることもある。こうした大規模のウェブサイトの全ウェブページについてアクセシビリティに配慮しているかどうかを診断する場合に、人による判定が必要な箇所が膨大な数であるため、処理に非常に時間がかかるという問題があった。
【0012】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させるための、ウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明のウェブページ診断支援装置は、診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析部と、予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積部と、前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積部に記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成部とを備えることを特徴とする。
【0014】
またこのウェブページ診断支援装置の前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、前記解析結果情報内のHTML要素のうち、表示スタイルの指定により変化しない要素に関して、表示スタイルに関する診断項目が該当する場合に、当該診断項目については診断処理をさせないように警告を表示する情報を含めてもよい。
【0015】
またこのウェブページ診断支援装置の前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面として、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面を同一画面上に表示させるための情報を含めてもよい。
【0016】
また本発明のウェブページ診断支援方法は、ウェブページ診断支援装置が、診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析ステップと、予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積ステップと、前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積ステップで記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成ステップとを有することを特徴とする。
【0017】
また本発明のウェブページ診断支援プログラムは、このウェブページ診断支援方法を、コンピュータで実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムによれば、ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置を利用したウェブページ診断システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の情報蓄積部に記憶された診断対象のウェブページのURL情報の一例を示す表である。
【図3】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の情報蓄積部に記憶された診断項目情報の一例を示す表である。
【図4】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置で取得された、診断対象のウェブページのHTML文書の一例である。
【図6】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置で診断されるHTML文書の要素が階層的に分類された状態を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の情報解析部で生成された解析結果の一例を示す表である。
【図8】従来のウェブページ診断処理により表示される診断項目一覧の一例を示す画面表示図である。
【図9】従来のウェブページ診断処理により表示される一の診断項目とこれに対応するHTMLソースとの一例を示す画面表示図である。
【図10】従来のウェブページ診断処理により表示される一の診断項目とこれに対応するCSSソースとの一例を示す画面表示図である。
【図11】従来のウェブページ診断処理による表示される一の診断項目とこれに対応するレンダリング後の描画画面構成との一例を示す画面表示図である。
【図12】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置に接続された診断者利用端末で表示された診断用画面の一例を示す画面表示図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〈一実施形態によるウェブページ診断システムの構成〉
本発明の一実施形態として、ウェブページ診断支援装置を利用したウェブページ診断システム1の構成について、図1を参照して説明する。
【0021】
ウェブページ診断システム1は、ウェブページ診断支援装置10と、診断者利用端末20と、ウェブサーバ30とが、ネットワーク40を介して接続されている。
【0022】
ウェブページ診断支援装置10は、情報蓄積部11と、送受信部12と、制御部13と、情報解析部14と、情報構成部15とを備える。
【0023】
このウェブページ診断支援装置10は、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置とを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされたウェブページ診断支援装置10用のプログラムを実行することにより、ウェブページ診断支援装置10の各機能が実現される。
【0024】
診断者利用端末20は、情報入力部21と、制御部22と、送受信部23と、情報出力部24とを備える。図示する診断者利用端末20を、PC(Personal Computer)で実現する場合には、情報入力部21としてはキーボード、マウス等の入力システムが用いられ、情報出力部24としてはモニタ(ディスプレイ)やスピーカ等が用いられる。
【0025】
〈一実施形態によるウェブページ診断システムの動作〉
以下にウェブページ診断システム1により、ウェブサーバ30で提供されるウェブサイトのウェブページが、アクセシビリティに配慮した適切なウェブページであるか否かが診断されるときの動作を説明する。
【0026】
本実施形態において、ウェブページ診断支援装置10の情報蓄積部11には予め、診断対象となるウェブサイトの各ウェブページのURL情報と、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目情報とが記憶されている。
【0027】
情報蓄積部11に記憶された、診断対象となるウェブサイトの各ウェブページのURL情報の一例を図2に示す。図2の情報では、診断対象となるウェブサーバ30のウェブサイトの各ウェブページを示すURL情報のリストと、これらのURL情報を識別するためのURLIDとが対応付けられた表(テーブル)で構成されている。
【0028】
なお、診断対象となるウェブサイトのウェブページを示すURL情報は図2に示す表に限定されず、ウェブサイトのトップページのURLのみが設定され、その配下のウェブページ全てを診断対象としてもよい。また、英語ページと日本語ページなど言語的な違いによって分けて処理することも考えられるため、ウェブサイトのトップページのURL情報のみを診断対象として設定し、さらにその配下の日本語のウェブページ、あるいは、英語のウェブページを全て診断対象とするように指定することもできる。英語ページか、日本語ページかは、body要素のlang属性に主要言語が明記されているので、トップページのURLにアクセスし、配下のウェブページを取得した際に自動的に判別することができる。
【0029】
また情報蓄積部11に記憶された、診断項目情報の一例を図3に示す。図3の情報では、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目のリストと、これらの診断項目ごとに識別情報として付せられた診断ルール番号とが対応付けられた表(テーブル)で構成されている。この診断項目情報には、診断項目ごとの、診断対象とする要素に関する情報、および自装置10内で自動で診断するか診断者に手動で診断させるかを示す診断種別情報が設定されている。この診断項目は、HTML文書を構成する要素のいずれかに対応して設定されている。
【0030】
これらの情報がウェブページ診断支援装置10の情報蓄積部11に記憶されている状態で、診断者利用端末20において、診断者の操作により情報入力部21からウェブサーバ30のウェブサイトに含まれるウェブページの診断を実行する指示が入力されると、この指示が制御部22の制御により送受信部23からネットワーク40を介してウェブページ診断支援装置10に送信される。
【0031】
ウェブページ診断支援装置10において、診断者利用端末20から送信された指示が受信されたときに実行される処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
診断者利用端末20から送信された、ウェブサーバ30のウェブサイトに含まれるウェブページの診断を実行する指示は、ウェブページ診断支援装置10の送受信部12で受信され(S1の「YES」)、制御部13により、情報蓄積部11に蓄積された表の1行目に記憶されたURLID「1」のURL情報「www.xxx.jp/index1.html」が読み出される(S2)。さらに、読み出されたURL情報で示されるウェブページを示すHTML文書がウェブサーバ30から取得され、情報蓄積部11に記録される(S3)。蓄積されたHTML文書の一例を、図5に示す。図5のHTML文書では、画像情報(.image/copy-01.gif)やテキスト情報(「ユニバーサルITデザインセンタ」等)を含むウェブページの構造が示されている。 次に情報解析部14により、ステップS2で記録されたウェブページを示すHTML文書が解析され、解析結果が制御部13により情報蓄積部11に記録される(S4)。情報解析部14で実行される解析処理について、詳細に説明する。
【0033】
HTML文書は、文書の一部を“<”と“>”で挟まれた「タグ」と呼ばれる特別な文字列で囲うことにより、文章の構造や修飾についての情報を文書に埋め込んで記述しており、開始タグと終了タグで囲まれた部分、例えば<HTML>〜</HTML>部分は要素と呼ばれる。これら開始タグと終了タグの中にはさらにHTMLの様々な下位の要素が階層的に含まれている。
【0034】
情報解析部14ではまず、HTML文書が解析され、HTML要素が上位から下位へ階層的に分類される。
【0035】
階層的に分類されたHTML要素を樹形図で表現した一例を、図6に示す。この階層構造については、一般的に存在するHTMLパーサ(parser)によって解析が可能である。HTMLパーサは、HTMLに含まれるタグとテキストを分離し、タグを解析することでHTML文書をウェブページとして解釈する。
【0036】
次に、図6のようにHTML要素が分類された情報に基づいて、図7に示す解析結果表(テーブル)が生成される。図7の解析結果表では、HTML文書の最上位層(第1階層)から最下位層(第6階層)までを示す列と、最下位層に分類されたHTML要素ごとに設けられた行(レコード)とにより構成されている。この1つの行を構成要素と呼ぶことにし、この行(レコード)ごとに構成要素を識別する構成要素IDが付与される。
【0037】
図7に示す例では、最下位層のHTML要素は、構成要素ID「1」のようにmeta要素(第3階層)である場合、構成要素ID「3」のようにテキスト(第4階層)である場合等がある。ここでは、構成要素IDはウェブページごとに割り振っているため、URLが異なるウェブページ間では構成要素IDが重複することがある。そのため、構成要素IDとURLを合わせたものを固有の構成要素IDとして重複をなくすようにしてもよい。
【0038】
またこの解析結果表には、各構成要素がスタイルシートによって指定されたスタイルが有るか否かが「スタイル指定の有無」欄に追記される。指定されたスタイルが有る場合には、「スタイルシート」欄にどのCSS(スタイルシート)ファイルを参照しているかが追記される。また、その構成要素に対して、該当するスタイル指定が適用できるか否かが「スタイル指定適用の可否」欄に追記される。また、それぞれ指定されたスタイルの内容が「スタイルの内容」欄に追記される。
【0039】
ここで、HTML文書とスタイルシートとの関係について説明する。ウェブページは、HTMLのタグ付けの他に、CSS(スタイルシート)によって要素の表示スタイルである見栄えを変更することができる。例えば、次の[HTML]で示すようなテキストの文章に、[CSS]で示す情報を指定することによって背景色を付けることができる。
【0040】
[HTML]
<p>おはようございます。今日の天気は晴れです。気温は30度まで上がります。…</p>
[CSS]
p {background-color:yellow;}
この[CSS]では、p要素のテキストに対して背景色を黄色に指定している。また、テキスト色を変更することもできる。その場合には、スタイルシートに、テキスト色を指定する情報を追記して次のように指定する。
【0041】
[CSS]
p {background-color:yellow;color:red;}
この[CSS]では、p要素に対して背景色を黄色に指定し、テキスト色を赤色に指定している。
【0042】
スタイル指定の対象はテキストであることが多い。図7において、構成要素ID「4」の場合では、画像(img)に対して背景色と文字色の表示スタイルが指定されているが、画像はこれらの指定によっては変化しない。そのため、「スタイルが指定できない」ということになるため、構成要素ID「4」の「スタイル指定適用の可否」欄は「不可」と設定される。また、構成要素ID「11」の場合はタグがあっても中身のテキストが無いことを示している。この場合もスタイルを指定する対象がないので、「スタイルが指定できない」ということになるため、「スタイル指定適用の可否」欄は「不可」と設定される。
【0043】
さらに、構成要素(最下層の要素)の当該HTMLファイル内での開始文字番号(何文字目から開始されるか)と終了文字番号(何文字目で終了されるか)とが「開始文字番号」欄および「終了文字番号」欄に追記される。
【0044】
このようにして生成された当該ウェブページの解析結果表の情報は、情報蓄積部11に記録される。
【0045】
そして、図2に示すURL情報で示されるすべてのウェブページの解析が終了するまで(S5の「NO」)、ステップS2からステップS4の過程が繰り返される。
【0046】
すべてのウェブページの解析が終了して解析結果表が完成すると(S5の「YES」)、制御部13において、図3の診断項目情報の診断項目ごとに解析結果表で示される診断対象の構成要素が構成要素IDごとに抽出され、診断処理が行われる(S6)。ここで、それぞれの診断項目に関し、抽出された構成要素の数が、図3に示すように診断項目情報に追加される。
【0047】
診断処理は、診断項目情報において診断種別情報が「自動」と設定された診断項目に関しては、制御部13により診断の基準を満たしているか否かが診断される。例えば、診断ルール番号「1」に設定された診断項目「img要素にalt属性があるか?」についての診断が、HTML要素が参照されて行われる。
【0048】
また、診断種別情報が「手動」と設定された診断項目に関しては、情報構成部15により診断者により手動で診断させるための診断用画面情報が生成される。
【0049】
診断者による診断処理は、HTML要素を参照して診断するもの、CSSを参照して判断するもの、そして、要素とCSSとの両方を参照して診断するものがある。
【0050】
例えば、HTML文書およびCSSファイルにおいて、次のようにh2要素が設定されている場合について説明する。
【0051】
[HTML]
<h2 class="index"><span class="news">センタからの最新情報</span></h2> [CSS]
h2 {background-color:yellow;}
この構成要素に関して、図3の診断項目情報の中の該当する診断項目は次の3つがある。
【0052】
診断ルール番号5: h2要素でマークアップされているテキストは見出しであるか?また、そのテキストは段落の内容を表しているか?
診断ルール番号6: テキストの背景色とテキスト色の輝度コントラストは十分であるか?
診断ルール番号7: テキストに与えられているスタイル(見栄え)による情報は、スタイルがなくても伝えられているか?
これらの診断項目について診断者が手動で診断する際は、まずHTML文書を参照して、診断ルール番号5に基づき、「センタからの最新情報」というテキストがh2要素を用いてマークアップされているが、このテキスト情報「センタからの最新情報」が見出しを表しているのかを診断する。また、「センタからの最新情報」が後に続く段落の内容を表しているのかを診断する。
【0053】
続いてCSSを参照して、診断ルール番号6に基づき、背景色とテキスト色の輝度コントラストは十分であるのかを診断する。
【0054】
そして最後にHTML文書とCSSを参照して、診断ルール番号7に基づき、h2要素の色によって伝えられる情報は、色がなくても伝えられているかを診断する。
【0055】
h2要素に関してはこれら3つの診断が必要となるが、これらは別々の診断項目になる。
【0056】
このような場合、従来は診断ツールにより診断項目ごとにこれらが指摘され、それに応じて診断者がHTMLソースファイル、CSSソースファイルを別ウィンドウとして開くなどして診断している。従来の診断の手順について説明する。
【0057】
例えば、手動による診断項目の一覧を、図8のように診断者利用端末の情報出力部24に表示させる。図8の各診断項目(診断ルール番号5〜7)にはそれぞれ、「HTMLを見る」、「CSSを見る」、「画面を見る」、という3つのリンクが貼られている。
【0058】
「HTMLを見る」というリンクをたどると図9のようなHTMLソースの内容が表示される。「CSSを見る」というリンクをたどると図10のようなCSSソースの内容が表示される。「画面を見る」というリンクをたどると図11のようなレンダリング後の描画画面が表示される。いずれも、指摘する部分が太線枠で表示されており、太線枠で囲まれた部分を診断者が見てアクセシビリティの良し悪しを判定する。
【0059】
このような手順であると、同じ診断対象(ここではh2要素のテキスト情報「センタからの最新情報」)に対して別々の画面(HTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面等)を都度表示させて確認させることになるため効率的ではない。つまり、図9、図10、図11は、構成要素ID「5」に関して診断ルール番号5の診断項目に対しても表示されるだけでなく、診断ルール番号6、7の診断項目に対しても表示されることになる。
【0060】
これらが同じ診断対象に関するものであるのかは、診断者には判断が難しい。診断対象が同じである場合は、図8中の異なるリンクから図9、10、および11を参照することになるため、作業が煩雑になり、効率的ではない。
【0061】
そこで本実施形態においては、ある診断対象に対して適用される診断項目をまとめて(S7)、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面とともに同一画面上に表示させるための診断用画面情報が生成される。
【0062】
情報構成部15において生成された診断用画面情報は、制御部13により送受信部12を介して診断者利用端末20に送信される。
【0063】
診断者利用端末20では、診断用画面情報が送受信部23で受信され、制御部22により情報出力部24により表示される(S8)。表示された診断用画面情報の一例を、図12に示す。
【0064】
図12は、構成要素ID「5」のテキスト「センタからの最新情報」に関する診断ルール番号5〜7の診断項目がまとめて表示され、さらに対象となるHTMLソースファイル、CSSソースファイル、およびレンダリング描画後の描画画面も併せて同一画面上に表示された例である。HTMLソースファイル、CSSソースファイル、およびレンダリング描画後の描画画面ではそれぞれ、診断対象とする要素部分が、図7のような解析結果表の開始文字番号および終了文字情報を利用して太線枠で表示され、診断者に提供される。
【0065】
このように診断用画面が生成されることで、同じ診断対象に対して診断者がまとめて効率よく診断を行うことができる。
【0066】
この診断用画面情報においては、ステップS4において「スタイル指定適用の可否」が「不可」と設定された構成要素に対して表示スタイルに関する診断項目が該当する場合には、診断者は判断不可能であるため、当該診断項目については診断者による診断をさせないように警告を表示することで診断項目を減らすことができ、さらに効率化を図ることができる。
【0067】
表示された診断用画面において、それぞれの診断項目に対してウェブページが適正に構成されているか否かが診断者により診断され、診断結果が情報入力部21から入力される。
【0068】
入力された診断結果は、制御部22により送受信部23からウェブページ診断支援装置10に送信される。ウェブページ診断支援装置10では、送受信部12において受信された診断結果が制御部13で取得される(S9の「YES」)。
【0069】
そして、当該診断対象についての診断結果が取得されると順次次の構成要素IDで示される診断対象についての診断用画面の表示、ユーザによる診断結果の取得処理が行われ、一定時間診断結果の入力がされなくなり(S9の「NO」)、制御部13においてすべてのウェブページの診断対象についての診断結果が取得され要診断項目がなくなったと判断されると(S10の「YES」)、当該ウェブサイトのアクセシビリティについての診断処理が終了する。
【0070】
以上の本実施形態によれば、ウェブページのアクセシビリティを診断する際に、ウェブページを構成するHTML要素のうち、診断者に手動で診断させる診断項目に関し、同一の要素(診断対象)に対する診断項目、HTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング描画後の描画画面をまとめて診断用画面に表示することにより、診断者が効率よく診断できるように支援することができる。
【0071】
また、上述したウェブページ診断支援装置の制御部、情報解析部、および情報構成部の機能をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータをウェブページ診断支援装置として機能させるウェブページ診断支援プログラムを構築することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…ウェブページ診断システム
10…ウェブページ診断支援装置
11…情報蓄積部
12…送受信部
13…制御部
14…情報解析部
15…情報構成部
20…診断者利用端末
21…情報入力部
22…制御部
23…送受信部
24…情報出力部
30…ウェブサーバ
40…ネットワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させるための、ウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及によって、様々な情報が得られるようになってきた。インターネットの主な利用方法の一つにウェブページの閲覧がある。ウェブページは、HTML(Hyper Text Markup Language)ファイル、スタイルシート、画像情報、映像情報などから構成され、HTMLファイルに記述されたとおりに、テキストや画像情報をブラウザ上に表示するものが一般的である。
【0003】
しかし、ウェブページはブラウザを使って表示に利用されるだけでなく、音声読み上げソフトを始めとした様々なソフトウェアやシステムで利用されている。
【0004】
そのため、様々なソフトウェアやシステムに対応したブラウザで利用できるように、アクセシビリティに配慮したウェブページをデザインすることが求められている。特に自治体等の公共向けサイトではウェブページの利用のしやすさが広く求められており、アクセシビリティに配慮したサイトも増えている。
【0005】
利用しやすいウェブページを作成するために、アクセシビリティの観点から不適切であると診断されるデザイン部分を自動的にチェックするツールも開発されている。診断する項目はJIS規格(JIS X 8341-3)やWCAG 2.0(Web Content Accessibility Guidelines 2.0)などのガイドラインを基に作られる。
【0006】
このようなチェックツールを使うことにより、不適切なデザイン部分を発見し、そのデザインを修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−140642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このとき、HTMLタグの使い方などから不適切なデザイン部分を自動的に発見することで簡易な診断を行うことはできるが、最終的にはアクセシビリティに配慮しているかどうかを人間が判定することが必要な項目がある。
【0009】
例えば、適切なデザインで構成されたウェブページを生成するための項目の一つに「画像に適切な代替テキストを付ける」というものがある。この項目は、画像の情報を閲覧することができない全盲のユーザが、音声読み上げソフトにより読み上げられる代替テキストの合成音声により画像の情報を取得できるようにするためのものである。
【0010】
この項目に関して、チェックツールを用いた自動診断により代替テキストの有無をチェックし、代替テキストがない、または、空白の場合に指摘をすることはできる。しかし、代替テキストが画像の情報を適切に表しているかまではチェックツールによる自動診断は難しく、人間が画像と代替テキストを見比べて判定する必要がある。
【0011】
一つのウェブサイトは複数のウェブページから構成され、一つのウェブページは画像などの複数の要素から構成されている。一つのウェブサイトは数万のウェブページから構成されていることもある。こうした大規模のウェブサイトの全ウェブページについてアクセシビリティに配慮しているかどうかを診断する場合に、人による判定が必要な箇所が膨大な数であるため、処理に非常に時間がかかるという問題があった。
【0012】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させるための、ウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明のウェブページ診断支援装置は、診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析部と、予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積部と、前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積部に記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成部とを備えることを特徴とする。
【0014】
またこのウェブページ診断支援装置の前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、前記解析結果情報内のHTML要素のうち、表示スタイルの指定により変化しない要素に関して、表示スタイルに関する診断項目が該当する場合に、当該診断項目については診断処理をさせないように警告を表示する情報を含めてもよい。
【0015】
またこのウェブページ診断支援装置の前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面として、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面を同一画面上に表示させるための情報を含めてもよい。
【0016】
また本発明のウェブページ診断支援方法は、ウェブページ診断支援装置が、診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析ステップと、予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積ステップと、前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積ステップで記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成ステップとを有することを特徴とする。
【0017】
また本発明のウェブページ診断支援プログラムは、このウェブページ診断支援方法を、コンピュータで実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のウェブページ診断支援装置、ウェブページ診断支援方法、およびウェブページ診断支援プログラムによれば、ウェブページがアクセシビリティにどの程度配慮しているかを効率的に診断させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置を利用したウェブページ診断システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の情報蓄積部に記憶された診断対象のウェブページのURL情報の一例を示す表である。
【図3】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の情報蓄積部に記憶された診断項目情報の一例を示す表である。
【図4】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置で取得された、診断対象のウェブページのHTML文書の一例である。
【図6】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置で診断されるHTML文書の要素が階層的に分類された状態を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置の情報解析部で生成された解析結果の一例を示す表である。
【図8】従来のウェブページ診断処理により表示される診断項目一覧の一例を示す画面表示図である。
【図9】従来のウェブページ診断処理により表示される一の診断項目とこれに対応するHTMLソースとの一例を示す画面表示図である。
【図10】従来のウェブページ診断処理により表示される一の診断項目とこれに対応するCSSソースとの一例を示す画面表示図である。
【図11】従来のウェブページ診断処理による表示される一の診断項目とこれに対応するレンダリング後の描画画面構成との一例を示す画面表示図である。
【図12】本発明の一実施形態によるウェブページ診断支援装置に接続された診断者利用端末で表示された診断用画面の一例を示す画面表示図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〈一実施形態によるウェブページ診断システムの構成〉
本発明の一実施形態として、ウェブページ診断支援装置を利用したウェブページ診断システム1の構成について、図1を参照して説明する。
【0021】
ウェブページ診断システム1は、ウェブページ診断支援装置10と、診断者利用端末20と、ウェブサーバ30とが、ネットワーク40を介して接続されている。
【0022】
ウェブページ診断支援装置10は、情報蓄積部11と、送受信部12と、制御部13と、情報解析部14と、情報構成部15とを備える。
【0023】
このウェブページ診断支援装置10は、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置とを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされたウェブページ診断支援装置10用のプログラムを実行することにより、ウェブページ診断支援装置10の各機能が実現される。
【0024】
診断者利用端末20は、情報入力部21と、制御部22と、送受信部23と、情報出力部24とを備える。図示する診断者利用端末20を、PC(Personal Computer)で実現する場合には、情報入力部21としてはキーボード、マウス等の入力システムが用いられ、情報出力部24としてはモニタ(ディスプレイ)やスピーカ等が用いられる。
【0025】
〈一実施形態によるウェブページ診断システムの動作〉
以下にウェブページ診断システム1により、ウェブサーバ30で提供されるウェブサイトのウェブページが、アクセシビリティに配慮した適切なウェブページであるか否かが診断されるときの動作を説明する。
【0026】
本実施形態において、ウェブページ診断支援装置10の情報蓄積部11には予め、診断対象となるウェブサイトの各ウェブページのURL情報と、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目情報とが記憶されている。
【0027】
情報蓄積部11に記憶された、診断対象となるウェブサイトの各ウェブページのURL情報の一例を図2に示す。図2の情報では、診断対象となるウェブサーバ30のウェブサイトの各ウェブページを示すURL情報のリストと、これらのURL情報を識別するためのURLIDとが対応付けられた表(テーブル)で構成されている。
【0028】
なお、診断対象となるウェブサイトのウェブページを示すURL情報は図2に示す表に限定されず、ウェブサイトのトップページのURLのみが設定され、その配下のウェブページ全てを診断対象としてもよい。また、英語ページと日本語ページなど言語的な違いによって分けて処理することも考えられるため、ウェブサイトのトップページのURL情報のみを診断対象として設定し、さらにその配下の日本語のウェブページ、あるいは、英語のウェブページを全て診断対象とするように指定することもできる。英語ページか、日本語ページかは、body要素のlang属性に主要言語が明記されているので、トップページのURLにアクセスし、配下のウェブページを取得した際に自動的に判別することができる。
【0029】
また情報蓄積部11に記憶された、診断項目情報の一例を図3に示す。図3の情報では、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目のリストと、これらの診断項目ごとに識別情報として付せられた診断ルール番号とが対応付けられた表(テーブル)で構成されている。この診断項目情報には、診断項目ごとの、診断対象とする要素に関する情報、および自装置10内で自動で診断するか診断者に手動で診断させるかを示す診断種別情報が設定されている。この診断項目は、HTML文書を構成する要素のいずれかに対応して設定されている。
【0030】
これらの情報がウェブページ診断支援装置10の情報蓄積部11に記憶されている状態で、診断者利用端末20において、診断者の操作により情報入力部21からウェブサーバ30のウェブサイトに含まれるウェブページの診断を実行する指示が入力されると、この指示が制御部22の制御により送受信部23からネットワーク40を介してウェブページ診断支援装置10に送信される。
【0031】
ウェブページ診断支援装置10において、診断者利用端末20から送信された指示が受信されたときに実行される処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
診断者利用端末20から送信された、ウェブサーバ30のウェブサイトに含まれるウェブページの診断を実行する指示は、ウェブページ診断支援装置10の送受信部12で受信され(S1の「YES」)、制御部13により、情報蓄積部11に蓄積された表の1行目に記憶されたURLID「1」のURL情報「www.xxx.jp/index1.html」が読み出される(S2)。さらに、読み出されたURL情報で示されるウェブページを示すHTML文書がウェブサーバ30から取得され、情報蓄積部11に記録される(S3)。蓄積されたHTML文書の一例を、図5に示す。図5のHTML文書では、画像情報(.image/copy-01.gif)やテキスト情報(「ユニバーサルITデザインセンタ」等)を含むウェブページの構造が示されている。 次に情報解析部14により、ステップS2で記録されたウェブページを示すHTML文書が解析され、解析結果が制御部13により情報蓄積部11に記録される(S4)。情報解析部14で実行される解析処理について、詳細に説明する。
【0033】
HTML文書は、文書の一部を“<”と“>”で挟まれた「タグ」と呼ばれる特別な文字列で囲うことにより、文章の構造や修飾についての情報を文書に埋め込んで記述しており、開始タグと終了タグで囲まれた部分、例えば<HTML>〜</HTML>部分は要素と呼ばれる。これら開始タグと終了タグの中にはさらにHTMLの様々な下位の要素が階層的に含まれている。
【0034】
情報解析部14ではまず、HTML文書が解析され、HTML要素が上位から下位へ階層的に分類される。
【0035】
階層的に分類されたHTML要素を樹形図で表現した一例を、図6に示す。この階層構造については、一般的に存在するHTMLパーサ(parser)によって解析が可能である。HTMLパーサは、HTMLに含まれるタグとテキストを分離し、タグを解析することでHTML文書をウェブページとして解釈する。
【0036】
次に、図6のようにHTML要素が分類された情報に基づいて、図7に示す解析結果表(テーブル)が生成される。図7の解析結果表では、HTML文書の最上位層(第1階層)から最下位層(第6階層)までを示す列と、最下位層に分類されたHTML要素ごとに設けられた行(レコード)とにより構成されている。この1つの行を構成要素と呼ぶことにし、この行(レコード)ごとに構成要素を識別する構成要素IDが付与される。
【0037】
図7に示す例では、最下位層のHTML要素は、構成要素ID「1」のようにmeta要素(第3階層)である場合、構成要素ID「3」のようにテキスト(第4階層)である場合等がある。ここでは、構成要素IDはウェブページごとに割り振っているため、URLが異なるウェブページ間では構成要素IDが重複することがある。そのため、構成要素IDとURLを合わせたものを固有の構成要素IDとして重複をなくすようにしてもよい。
【0038】
またこの解析結果表には、各構成要素がスタイルシートによって指定されたスタイルが有るか否かが「スタイル指定の有無」欄に追記される。指定されたスタイルが有る場合には、「スタイルシート」欄にどのCSS(スタイルシート)ファイルを参照しているかが追記される。また、その構成要素に対して、該当するスタイル指定が適用できるか否かが「スタイル指定適用の可否」欄に追記される。また、それぞれ指定されたスタイルの内容が「スタイルの内容」欄に追記される。
【0039】
ここで、HTML文書とスタイルシートとの関係について説明する。ウェブページは、HTMLのタグ付けの他に、CSS(スタイルシート)によって要素の表示スタイルである見栄えを変更することができる。例えば、次の[HTML]で示すようなテキストの文章に、[CSS]で示す情報を指定することによって背景色を付けることができる。
【0040】
[HTML]
<p>おはようございます。今日の天気は晴れです。気温は30度まで上がります。…</p>
[CSS]
p {background-color:yellow;}
この[CSS]では、p要素のテキストに対して背景色を黄色に指定している。また、テキスト色を変更することもできる。その場合には、スタイルシートに、テキスト色を指定する情報を追記して次のように指定する。
【0041】
[CSS]
p {background-color:yellow;color:red;}
この[CSS]では、p要素に対して背景色を黄色に指定し、テキスト色を赤色に指定している。
【0042】
スタイル指定の対象はテキストであることが多い。図7において、構成要素ID「4」の場合では、画像(img)に対して背景色と文字色の表示スタイルが指定されているが、画像はこれらの指定によっては変化しない。そのため、「スタイルが指定できない」ということになるため、構成要素ID「4」の「スタイル指定適用の可否」欄は「不可」と設定される。また、構成要素ID「11」の場合はタグがあっても中身のテキストが無いことを示している。この場合もスタイルを指定する対象がないので、「スタイルが指定できない」ということになるため、「スタイル指定適用の可否」欄は「不可」と設定される。
【0043】
さらに、構成要素(最下層の要素)の当該HTMLファイル内での開始文字番号(何文字目から開始されるか)と終了文字番号(何文字目で終了されるか)とが「開始文字番号」欄および「終了文字番号」欄に追記される。
【0044】
このようにして生成された当該ウェブページの解析結果表の情報は、情報蓄積部11に記録される。
【0045】
そして、図2に示すURL情報で示されるすべてのウェブページの解析が終了するまで(S5の「NO」)、ステップS2からステップS4の過程が繰り返される。
【0046】
すべてのウェブページの解析が終了して解析結果表が完成すると(S5の「YES」)、制御部13において、図3の診断項目情報の診断項目ごとに解析結果表で示される診断対象の構成要素が構成要素IDごとに抽出され、診断処理が行われる(S6)。ここで、それぞれの診断項目に関し、抽出された構成要素の数が、図3に示すように診断項目情報に追加される。
【0047】
診断処理は、診断項目情報において診断種別情報が「自動」と設定された診断項目に関しては、制御部13により診断の基準を満たしているか否かが診断される。例えば、診断ルール番号「1」に設定された診断項目「img要素にalt属性があるか?」についての診断が、HTML要素が参照されて行われる。
【0048】
また、診断種別情報が「手動」と設定された診断項目に関しては、情報構成部15により診断者により手動で診断させるための診断用画面情報が生成される。
【0049】
診断者による診断処理は、HTML要素を参照して診断するもの、CSSを参照して判断するもの、そして、要素とCSSとの両方を参照して診断するものがある。
【0050】
例えば、HTML文書およびCSSファイルにおいて、次のようにh2要素が設定されている場合について説明する。
【0051】
[HTML]
<h2 class="index"><span class="news">センタからの最新情報</span></h2> [CSS]
h2 {background-color:yellow;}
この構成要素に関して、図3の診断項目情報の中の該当する診断項目は次の3つがある。
【0052】
診断ルール番号5: h2要素でマークアップされているテキストは見出しであるか?また、そのテキストは段落の内容を表しているか?
診断ルール番号6: テキストの背景色とテキスト色の輝度コントラストは十分であるか?
診断ルール番号7: テキストに与えられているスタイル(見栄え)による情報は、スタイルがなくても伝えられているか?
これらの診断項目について診断者が手動で診断する際は、まずHTML文書を参照して、診断ルール番号5に基づき、「センタからの最新情報」というテキストがh2要素を用いてマークアップされているが、このテキスト情報「センタからの最新情報」が見出しを表しているのかを診断する。また、「センタからの最新情報」が後に続く段落の内容を表しているのかを診断する。
【0053】
続いてCSSを参照して、診断ルール番号6に基づき、背景色とテキスト色の輝度コントラストは十分であるのかを診断する。
【0054】
そして最後にHTML文書とCSSを参照して、診断ルール番号7に基づき、h2要素の色によって伝えられる情報は、色がなくても伝えられているかを診断する。
【0055】
h2要素に関してはこれら3つの診断が必要となるが、これらは別々の診断項目になる。
【0056】
このような場合、従来は診断ツールにより診断項目ごとにこれらが指摘され、それに応じて診断者がHTMLソースファイル、CSSソースファイルを別ウィンドウとして開くなどして診断している。従来の診断の手順について説明する。
【0057】
例えば、手動による診断項目の一覧を、図8のように診断者利用端末の情報出力部24に表示させる。図8の各診断項目(診断ルール番号5〜7)にはそれぞれ、「HTMLを見る」、「CSSを見る」、「画面を見る」、という3つのリンクが貼られている。
【0058】
「HTMLを見る」というリンクをたどると図9のようなHTMLソースの内容が表示される。「CSSを見る」というリンクをたどると図10のようなCSSソースの内容が表示される。「画面を見る」というリンクをたどると図11のようなレンダリング後の描画画面が表示される。いずれも、指摘する部分が太線枠で表示されており、太線枠で囲まれた部分を診断者が見てアクセシビリティの良し悪しを判定する。
【0059】
このような手順であると、同じ診断対象(ここではh2要素のテキスト情報「センタからの最新情報」)に対して別々の画面(HTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面等)を都度表示させて確認させることになるため効率的ではない。つまり、図9、図10、図11は、構成要素ID「5」に関して診断ルール番号5の診断項目に対しても表示されるだけでなく、診断ルール番号6、7の診断項目に対しても表示されることになる。
【0060】
これらが同じ診断対象に関するものであるのかは、診断者には判断が難しい。診断対象が同じである場合は、図8中の異なるリンクから図9、10、および11を参照することになるため、作業が煩雑になり、効率的ではない。
【0061】
そこで本実施形態においては、ある診断対象に対して適用される診断項目をまとめて(S7)、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面とともに同一画面上に表示させるための診断用画面情報が生成される。
【0062】
情報構成部15において生成された診断用画面情報は、制御部13により送受信部12を介して診断者利用端末20に送信される。
【0063】
診断者利用端末20では、診断用画面情報が送受信部23で受信され、制御部22により情報出力部24により表示される(S8)。表示された診断用画面情報の一例を、図12に示す。
【0064】
図12は、構成要素ID「5」のテキスト「センタからの最新情報」に関する診断ルール番号5〜7の診断項目がまとめて表示され、さらに対象となるHTMLソースファイル、CSSソースファイル、およびレンダリング描画後の描画画面も併せて同一画面上に表示された例である。HTMLソースファイル、CSSソースファイル、およびレンダリング描画後の描画画面ではそれぞれ、診断対象とする要素部分が、図7のような解析結果表の開始文字番号および終了文字情報を利用して太線枠で表示され、診断者に提供される。
【0065】
このように診断用画面が生成されることで、同じ診断対象に対して診断者がまとめて効率よく診断を行うことができる。
【0066】
この診断用画面情報においては、ステップS4において「スタイル指定適用の可否」が「不可」と設定された構成要素に対して表示スタイルに関する診断項目が該当する場合には、診断者は判断不可能であるため、当該診断項目については診断者による診断をさせないように警告を表示することで診断項目を減らすことができ、さらに効率化を図ることができる。
【0067】
表示された診断用画面において、それぞれの診断項目に対してウェブページが適正に構成されているか否かが診断者により診断され、診断結果が情報入力部21から入力される。
【0068】
入力された診断結果は、制御部22により送受信部23からウェブページ診断支援装置10に送信される。ウェブページ診断支援装置10では、送受信部12において受信された診断結果が制御部13で取得される(S9の「YES」)。
【0069】
そして、当該診断対象についての診断結果が取得されると順次次の構成要素IDで示される診断対象についての診断用画面の表示、ユーザによる診断結果の取得処理が行われ、一定時間診断結果の入力がされなくなり(S9の「NO」)、制御部13においてすべてのウェブページの診断対象についての診断結果が取得され要診断項目がなくなったと判断されると(S10の「YES」)、当該ウェブサイトのアクセシビリティについての診断処理が終了する。
【0070】
以上の本実施形態によれば、ウェブページのアクセシビリティを診断する際に、ウェブページを構成するHTML要素のうち、診断者に手動で診断させる診断項目に関し、同一の要素(診断対象)に対する診断項目、HTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング描画後の描画画面をまとめて診断用画面に表示することにより、診断者が効率よく診断できるように支援することができる。
【0071】
また、上述したウェブページ診断支援装置の制御部、情報解析部、および情報構成部の機能をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータをウェブページ診断支援装置として機能させるウェブページ診断支援プログラムを構築することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…ウェブページ診断システム
10…ウェブページ診断支援装置
11…情報蓄積部
12…送受信部
13…制御部
14…情報解析部
15…情報構成部
20…診断者利用端末
21…情報入力部
22…制御部
23…送受信部
24…情報出力部
30…ウェブサーバ
40…ネットワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析部と、
予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積部と、
前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積部に記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成部と、
を備えることを特徴とするウェブページ診断支援装置。
【請求項2】
前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、前記解析結果情報内のHTML要素のうち、表示スタイルの指定により変化しない要素に関して、表示スタイルに関する診断項目が該当する場合に、当該診断項目については診断処理をさせないように警告を表示する情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のウェブページ診断支援装置。
【請求項3】
前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面として、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面を同一画面上に表示させるための情報を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のウェブページ診断支援装置。
【請求項4】
ウェブページ診断支援装置が、
診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析ステップと、
予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積ステップと、
前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積ステップで記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成ステップと、
を有することを特徴とするウェブページ診断支援方法。
【請求項5】
前記情報構成ステップで生成される診断用画面情報は、前記解析結果情報内のHTML要素のうち、表示スタイルの指定により変化しない要素に対して、表示スタイルに関する診断項目が指定されている場合に、診断処理をさせないように警告を表示する情報を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のウェブページ診断支援方法。
【請求項6】
前記情報構成ステップで生成される診断用画面情報は、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面として、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面を同一画面上に表示させるための情報を含む
ことを特徴とする請求項4または5に記載のウェブページ診断支援方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のウェブページ診断支援方法を、コンピュータで実行させるためのウェブページ診断支援プログラム。
【請求項1】
診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析部と、
予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積部と、
前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積部に記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成部と、
を備えることを特徴とするウェブページ診断支援装置。
【請求項2】
前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、前記解析結果情報内のHTML要素のうち、表示スタイルの指定により変化しない要素に関して、表示スタイルに関する診断項目が該当する場合に、当該診断項目については診断処理をさせないように警告を表示する情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のウェブページ診断支援装置。
【請求項3】
前記情報構成部で生成される診断用画面情報は、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面として、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面を同一画面上に表示させるための情報を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のウェブページ診断支援装置。
【請求項4】
ウェブページ診断支援装置が、
診断対象のウェブページの構成を記述したHTML文書を解析してHTML要素を上位から下位へ階層的に分類し、最下位層に分類されたHTML要素ごとに識別情報を付与した解析結果情報を生成する情報解析ステップと、
予め設定された、前記HTML文書内のいずれかのHTML要素ごとの、アクセシビリティへの配慮の適否を診断するための診断項目を記憶する情報蓄積ステップと、
前記解析結果情報の識別情報ごとに、前記情報蓄積ステップで記憶された診断項目のうち該当する診断項目と、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面とを、同一画面上に表示させるための診断用画面情報を生成する情報構成ステップと、
を有することを特徴とするウェブページ診断支援方法。
【請求項5】
前記情報構成ステップで生成される診断用画面情報は、前記解析結果情報内のHTML要素のうち、表示スタイルの指定により変化しない要素に対して、表示スタイルに関する診断項目が指定されている場合に、診断処理をさせないように警告を表示する情報を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のウェブページ診断支援方法。
【請求項6】
前記情報構成ステップで生成される診断用画面情報は、診断に利用させるための当該ウェブページに関する画面として、対象となるHTMLソースファイル画面、CSSソースファイル画面、およびレンダリング後の描画画面を同一画面上に表示させるための情報を含む
ことを特徴とする請求項4または5に記載のウェブページ診断支援方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のウェブページ診断支援方法を、コンピュータで実行させるためのウェブページ診断支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−92825(P2013−92825A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232884(P2011−232884)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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