説明

ウェブ連続巻取装置

【課題】本発明は、新側コアと、ウェブが巻回されタッチロールが配設された旧側コアとの間に切断手段を有する可動アームが配設され、前記切断手段よりウェブを切断し、前記新側コアへのウェブの巻取を継続する連続巻取装置であって、旧側コアに巻かれた巻回体端面が不揃いになることなく、均一に巻かれた高品質の巻取ロールが得られるウェブ連続巻取装置を提供することにある。
【解決手段】新側コアと、ウェブが巻回されタッチロールが配設された旧側コアとの間に切断手段を有する可動アームが配設され、前記切断手段よりウェブを切断し、前記新側コアへのウェブの巻取を継続する連続巻取装置であって、前記新側コアの近傍で、該新側コアの軸線方向に沿って配設したウェブを幅方向に切断する切断手段と、前記可動アームに揮発性液体をウェブに向かって噴霧する噴霧手段が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カセットテープまたはビデオテープまたはコンピューター用データテープ等に使用される磁気テープ等の長尺体におけるウェブ連続巻取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のウェブ連続巻取装置としては、例えば、特許文献1に開示された構成のものが公知になっている。この公知のウェブ連続巻取装置は、架台上に支持されたスプールに紙を巻き取るに際し、該スプール上の巻取ロールに当接して紙をニップする支持ドラムと、巻替え時に前記ニップ部より上流側で紙を切断する切断手段を備えたウェブ巻取装置において、前記巻替え時に、前記巻取ロールの表面に向けて液体を噴霧する手段を設けたことを特徴としている。この公知のウェブ連続巻取装置においては、巻替え時に支持ドラムは新ロールをニップするので、支持ドラムによるニップがなくなる旧ロールに対して、ニップする支持ドラムの代わりに水をロール面に噴霧し、巻き取らせるものである。

【特許文献1】特許3592916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述したウェブ連続巻取装置においては、生産効率の向上の観点から、巻取りの高速化が要求されており、また、生産時のロスを可能な限り、削減させる手段として、巻回体の最大径を大きくして生産性向上を図ってきている。このような径が大きくなるウェブの高速巻取りにおいては、走行中の同伴空気が巻回体内部に蓄積されており、通常走行の巻取時は、押圧をコントロール可能なタッチ(ニップ)ロールによって、押しつけて巻き取らせているが、新側コアと、ウェブが巻回されタッチロールが配設された旧側コアとの間に切断手段を有する可動アームが配設され、前記切断手段よりウェブを切断し、前記新側コアへのウェブの巻取を継続する連続巻取装置の切替時においては、切替られる旧側コアに巻かれたウェブ巻回体は、ウェブ切断に際し、張力が瞬時に開放されることによって発生するバックテンションにより、巻き戻り現象が発生し、その際に巻きが緩むために、押圧をコントロール可能なタッチロールによって、押しつけて巻き取らせているだけでは不十分であり、その際に巻回体が幅方向に巻きズレ、端面が不揃いとなり、高質な巻取ロールを得られないという問題点がある。
【0004】
本発明は、旧側コアに巻かれたウェブ巻回体端面が不揃いになることはなく、均一に巻かれた高品質の巻取ロールが得られるウェブ連続巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、新側コアと、ウェブが巻回されタッチロールが配設された旧側コアとの間に切断手段を有する可動アームが配設され、前記切断手段により前記ウェブを切断し、前記新側コアへのウェブの巻取を継続する連続巻取装置であって、前記可動アームに揮発性液体をウェブに向かって噴霧する噴霧手段が設けられていることを特徴とする。
【0006】
前記タッチロールの押圧強さが、前記ウェブの切断に対応して、大きくなるように制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
コアの切替タイミングであるウェブ切断直前にウェブに揮発性液体を噴霧することにより、巻回体最表層内部層への揮発性液体の転写を行い、巻回体最表層内部の密着が良好に行われる。また、揮発性液体の噴霧はウェブの幅方向に直線状に配設された複数の噴霧ノズルにより行われるため、ムラなく行われ、さらに、ウェブ速度に自動追従制御して、ウェブ切断直前に噴霧が行われるため、安定した噴霧塗布、巻回体の密着が行われ、高品質の巻取りロールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を図示の好ましい実施の形態により更に詳しく説明する。図1は本発明のウェブ連続巻取装置の一例を略示的に示した説明図である。ウェブ連続巻取装置1は、例えば、コーティングまたはキュアリング等の処理を施したウェブ2を所定の巻取位置A、Bにおいて、新側コア3及び旧側コア4に巻き取るものであって、ウェブ2は複数のガイドロール5、6、7、8、9を介して供給され、各々の新側コア3、旧側コア4においては、それぞれ外周面に当接するタッチロール15、17が設けられており、これらタッチロールによって巻き取られるウェブ2の積層内部に空気を取り込まないように押圧をコントロールされた状態で新側コア3、旧側コア4に巻き取られるものである。1つの切替動作が終了すると、一定の時間に達した後、ウェブ連続巻取装置1の中央にある旋回用シャフト14を中心とし、旋回動作を実施し、巻取位置A、Bが交互に入れ替わることになる。
【0009】
このウェブ連続巻取装置1においては、搬送されたウェブ2が新側コア3の外周面を通過して旧側コア4に至るものであり、ウェブ2の処理において、処理の初期は旧側コア4にウェブ2を巻き取らせ、適正に処理された部分が新側コア3に至って所定の巻取長さを通過した時点で、ウェブ2の処理速度をそのまま維持し、ウェブ2を切断ナイフ20により幅方向に切断して、新側コア3にそのまま連続して巻き取らせるものである。そして、新側コア3に対しては、可動アーム19が離隔位置から徐々に近接位置に昇降し、ガイドロール10も離隔位置から徐々に近接位置に移動可能な状態で配設され、そのガイドロール10と可動アーム19が、一緒に昇降でき、且つ新側コア3の上部側とガイドロール10との間に位置するように切断手段、即ち、切断ナイフ20を配設してある。揮発性液体噴霧手段としての噴霧ノズル21は可動アーム19上の切断ナイフ20に対し、ライン下流側に配設され、幅方向に3個〜7個配設される。可動アーム19上に噴霧ノズル21を配設させることで配設箇所が1箇所で済み、例えば、巻取位置Aとガイドロール12間及び巻取位置Bとガイドロール13間に揮発性液体噴霧手段を各々1式ずつ配設させる方法を取るよりも経済的に有効な配設手段である。
【0010】
そして、ウェブ2を切断するための切断手段である切断ナイフ20は、新側コア3の上部側で且つガイドロール10との間に設けられると共に、該新側コア3の軸心に沿って水平に移動できるように配設してある。なお、タッチロール15、17はアーム16,18と図外の圧力調整部材を介して押圧力が調整できるようになっており、これらの圧力調整については従来技術と略同じである。
【0011】
揮発性液体噴霧手段は、図外の圧縮空気の供給源と、空気圧力を所定値に調整する減圧弁22・27・31と、流量を調整するバルブ25、32と、揮発性液体24を保持する液体タンク23と、揮発性液体24を噴霧塗布する3個〜7個の噴霧ノズル21と、噴霧ノズル21を支持するプレート34で構成する。液体タンク23内の液体は、減圧弁22を介してタンク内へ送給される空気の圧力によって、流量調整弁25と通路26を介して各噴霧ノズル21へと圧送される。各噴霧ノズル21には、減圧弁27と通路29とを介して制御用の圧縮空気が送給され、さらに、減圧弁31と流量調整弁32と通路33とを介して噴霧塗布用の圧縮空気がエアーキャップ35へと送給される。圧縮空気の送給制御は、電磁弁28、30によって行っている。揮発性液体24としては、揮発性を有する液体であれば特に制限はなく、水、アルコール類、有機溶剤が用いられる。作業場所の環境の安全性を考えると無毒で引火性のないものが好ましく、水が好ましく用いられる。また、ウェブへの塗布を良好に行うために必要に応じて揮発性液体に界面活性剤等の各種添加剤を混合しても良い。
【0012】
噴霧ノズル21から押し出された揮発性液体24は、エアーキャップ35から噴出される圧縮空気によって霧化され、圧縮空気と共に空気中を飛翔して、ガイドロール10のライン下流側の対向するウェブ2に連続して塗布される。
【0013】
このように構成された本発明のウェブ連続巻取装置1の動作について説明すると、例えば、コーティングまたはキュアリング等の処理において、処理されるべきウェブ2が、一定の巻取長さに到達すると、ウェブ2の自動切替動作を開始する。切替準備の信号により、可動アーム19が、新側コア3に向って昇降を開始し、離隔位置から徐々に近接位置に移動可能な状態で配設され、ウェブ2を新側コア3の外周面に接するようにしてガイドロール10側に取り出し、更に、ガイドロール12を介して旧側コア4に巻き付けるものである。そして、旧側コア4側においては、タッチロール17でウェブ2を押圧し、挟み付けるようにする。さらに、一定の時間が通過した時点で、切替信号を押下することで、処理ラインの速度をそのまま維持した状態で切断ナイフ20を動作し、ウェブ2を幅方向に切断して新側コア3にそのまま連続して巻き取らせるものである。
【0014】
この切断ナイフ20を動作させる直前に、揮発性液体噴霧手段の噴霧ノズル21より揮発性液体24を噴霧し、ウェブ2の巾方向に均一に塗布し、巻取位置Bに配置させた旧側コア4に巻かれている巻回体の最上層部内側の数巻層の巾方向に揮発性液体が達し、巻回体の表層部を徐々に密着させながら、その後、可動アーム19上の切断ナイフ20により、ウェブ2を切断するものである。
切断ナイフ20によってウェブ2の端部が切断された直後は、巻取位置Bに配置させた旧側コア4に巻かれている巻回体は瞬時に張力を失い、通常の連続切替動作では、前記巻回体は積層された巻回数が多ければ多いほど、さらにウェブ2の処理速度が速ければ速いほど、バックテンションによって巻き戻り現象を発生させ、巻きが緩むために、通常に巻かれていた巻回体が巻きズレを起こし、巻回体端面を不均一にする。しかし、本発明は、揮発性液体24により、巻取位置Bに配置させた旧側コア4に巻かれている巻回体の最上層部内側の数巻層の巾方向に揮発性液体が達することで、巻回体の表層部を徐々に密着していき、その直後にウェブ2が完全に切断されると、その瞬間に前記同様にバックテンションが発生しても、揮発性液体が巻回体をしっかりと密着させている為、巻きズレが発生することなく、巻回体の端面を均一に保ったまま、ライン速度を維持した状態で、ウェブ2を高品質に巻き取られることができる。
【0015】
このようにして新側コア3にウェブ2の巻き取りが開始された後においては、図1に示したように、可動アーム19がガイドロール10と切断ナイフ20および、噴霧ノズル21と共に、各々仮想線で示した離隔位置まで退避させ、タッチロール15でウェブ2を押圧し挟み付け、今度は新側コア3に対し、ウェブ2の巻き取り動作を継続させるのである。
【0016】
さらに、前記の揮発性液体噴霧タイミングと同一時に、巻回体を押圧し挟み付けしているタッチロール17の押圧力を図外の圧力調整部材を介して、前記ウェブの切断直前に瞬時に大きくなるように制御することで、前記の巻き戻り現象による巻回体の巻きズレ防止をより効果的に行うことができる。押圧は、通常時の50〜500%増とすることが好ましい。
【0017】
本発明に係る実施例と従来の巻取装置について、ウェブの処理速度を変化させ、それぞれテストを行った。なお、ウェブは、厚さ11μm、幅約1000mm程度の磁気テープシートを使用した。
タッチ圧の増加は、通常圧の100%増とした。テストの結果は表1に示す通りであった。なお、表中の記号○は巻回体の巻き取りにおいて巻きズレ等の問題が全く無かったことを表すものであり、記号×は巻回体に巻きズレが発生したことを表すものである。
【0018】
【表1】

【0019】

表1から明らかなように、揮発性液体塗布手段とを設けた本発明のウェブ連続巻取装置は、従来の物に比較して高速で連続巻取りが可能であり、さらに、切替え時のタッチ圧の瞬時増加を行うことにより、より高速で連続巻取りが行えることが分る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るウェブ連続巻取装置を略示的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ウェブ連続巻取装置
2 ウェブ
3 新側コア
4 旧側コア
5〜13 ガイドロール
15、17 タッチロール
19 可動アーム
20 切断ナイフ
21 噴霧ノズル
23 液体タンク
24 揮発性液体
35 エアーキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新側コアと、ウェブが巻回されタッチロールが配設された旧側コアとの間に切断手段を有する可動アームが配設され、前記切断手段により前記ウェブを切断し、前記新側コアへのウェブの巻取を継続する連続巻取装置であって、前記可動アームに揮発性液体をウェブに向かって噴霧する噴霧手段が設けられていることを特徴とするウェブ連続巻取装置。
【請求項2】
前記タッチロールの押圧強さが、前記ウェブの切断に対応して、大きくなるように制御されることを特徴とする請求項1に記載のウェブ連続巻取装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−248665(P2006−248665A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66430(P2005−66430)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】