説明

ウェルシュ菌αトキソイドワクチン

本発明は、ウェルシュ菌(C.perfringens)のαトキソイド、その抗原性フラグメント、ウェルシュ菌のα毒素の不活性化抗原性フラグメント、またはその任意の組み合わせを含むワクチンを記載する。本発明はさらに、クロストリジウム感染症に対して動物を防御するためにこれらのワクチンを用いる方法を記載する。本発明はまた、これらのワクチンを作製する方法を記載する。本発明は、抗原として、単一のウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/またはウェルシュ菌のα毒素の不活性化抗原性フラグメント、および/またはその任意の組み合わせから本質的になるワクチンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国出願第60/672,289号(2005年4月18日出願)に対する米国特許法第119条(e)の下の優先権を主張する特許出願であり、この米国出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ウェルシュ菌のαトキソイド、その抗原性フラグメント、α毒素の不活性化抗原性フラグメント、およびその任意の組み合わせを含むワクチンに関する。本発明はさらに、クロストリジウム感染症に対して動物を防御するためにこれらのワクチンを用いる方法に関する。本発明はまた、これらのワクチンを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)は、土壌、腐敗性有機物において、およびヒトを含む動物の正常な腸管内菌叢の一部として自然に見られる嫌気性細菌である。ウェルシュ菌はまた、経済的に価値のある家畜において見られる多数のクロストリジウム感染症の病原因子でもある。ウェルシュ菌は、動物において病的な影響を生じる多数の毒素を生じ、この毒素としてはα毒素、β毒素、β2毒素、ε毒素、θ毒素、μ毒素、δ毒素、ι毒素、κ毒素およびλ毒素が挙げられる。さらに、ウェルシュ菌は、病理学的な影響を生じ得る他の生物学的に活性な物質をコードし、この物質としては、ヒアルロニダーゼ、酸性ホスファターゼ、プロテアーゼ、コラゲナーゼ、スルファターゼおよびノイラミニダーゼが挙げられる。
【0004】
ウェルシュ菌の異なる株は、特定の細菌が生じる毒素のスペクトルに依存して生物型A〜Eと命名されている[Justinら、Biochemistry 41:6253〜6262(2002);McDonel,PHARMACOLOGY OF BACTERIAL TOXINS;F DornerおよびJ Drews(編)Pergamon Press,Oxford(1986)]。最初、このような分類は、マウスまたはモルモットにおける血清学的な中和アッセイに基づいた。さらに最近では、分子分類方法は、ウェルシュ菌の多数の毒素のうちの1つをコードする遺伝子配列を標的にするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する。
【0005】
ウマにおける腸クロストリジウム症は、腸における高濃度のウェルシュ菌A型と関係している。罹患したウマは、激しい水様性の下痢および高い死亡率を有する。ウェルシュ菌のA型はまた、授乳中のブタおよび肥育ブタにおける腸疾患に関連しており、その症状としては、軽度壊死性腸炎および絨毛萎縮が挙げられる[非特許文献1]。
【0006】
ウェルシュ菌によって生じるクロストリジウム感染症は、小腸における(腸溶型)、集密な繊維素壊死病変(「Turkish towel」)を有する肉付きの良いトリでの突然死、および/または胆管肝炎を伴うウェルシュ菌関連性の肝炎、または肝臓におけるフィブリノイド壊死を特徴とする。罹患したトリは、抑うつ、下痢および脱水の急速な経過をたどる。死亡率は2%〜50%におよぶ。肝臓の病理のため、屠殺により死体は没収される。
【0007】
壊死性腸炎(NE)は、家禽に重大な経済的結果をもたらす、ウェルシュ菌によって生じるクロストリジウム腸疾患の例である。この疾患は、2〜10週齢の平飼いのブロイラーにおいて特によく見られるが、疾患はまた、シチメンチョウおよびケージで産卵するメンドリでも報告されている。壊死性の腸炎は一般に、家禽において、二次疾患として、または病原性ウェルシュ菌の異常な増殖を可能にするように正常な腸内ミクロフローラが変化する状況で生じる。無症候性の壊死性腸炎の有病率は未知である。なぜなら、この病変は、死後の検査を通じてしか観察できないからである。しかし、飼料効率の障害および体重の減少の報告は、無症候性の疾患に起因している[LovlandおよびKadhusdal,Avian Path.30:73〜81(2001)]。自然な発生および実験モデルの両方において壊死性腸炎をもたらす誘発因子としては以下が挙げられる:(a)コクシジウム症、(b)寄生幼虫の移動、(c)魚肉またはコムギの高給餌、および(d)免疫抑制性の疾患。さらに、壊死性腸炎は以下によって実験的に再現され得る:(i)動物にウェルシュ菌で汚染された飼料を与えること、(ii)動物に植物性の培養物を経口的にまたは作物に与えること、あるいは(iii)細菌を含まない粗毒素のブロス培養物の動物への十二指腸内投与。
【0008】
A型またはC型のウェルシュ菌は、家禽において壊死性の腸炎を生じる2つの生物型であって、α毒素が、検出される最も一般的な毒素である[Wages and Opengart,Necrotic Enteritis,pp:781〜785:Disease of Poultry,第11版(Saifら編),Iowa State Press,Ames,IA(2003)]。実際は、42個のA型が感染した家禽から得られたウェルシュ菌単離体のうち90%より多くが、致死性のα毒素を、シアリダーゼとともに、そしてθ毒素およびμ毒素を産生した[Daubeら、AJVR 54:496〜501(1996)]。さらに、ウェルシュ菌のA型によって産生されるエンテロトキシンは、壊死性の腸炎を有するニワトリにおいて同定されており、腸内疾患においてある役割を果たし得る[Niilo,Can.J.Comp.Med.42:357−363(1978)]。
【0009】
近年では、ウェルシュ菌A型またはC型は、cpb2遺伝子をコードし得[Gilbertら,Gene 203:56〜73(1997)]、その産物であるβ2毒素を発現することが報告されている。ブタにおいてβ2毒素の発現と新生児の腸炎との間の強力な相関が観察されている[Bueschelら,Vet Micro 94:121〜129(2003)]。β2毒素はまた、ウマおよびウシの腸炎における病原性因子と考えられている。Bueschelら(前出)はさらに、彼らが入手した3020個のウェルシュ菌単離体のうち37.2%がβ2毒素をコードし、試験したウェルシュ菌A型単離体のうち35.1%がβ2毒素をコードすることを報告した。トリのウェルシュ菌のA型の野外単離体の限られたサンプル(n=5)が、cpb2遺伝子型について約35%陽性であり、これらのうち40%がまたβ2毒素を発現した。さらに、PCRを使用して、Engstromら[Vet Micro 94:225−235(2003)]は、肝炎を有するニワトリ由来のウェルシュ菌単離体の12%も、cpb2について陽性であったことを見出した。ウェルシュ菌A型のエンテロトキシンもまた、ニワトリにおいて病原性があり、結紮された腸のループモデルにおいて液体の蓄積を生じることが示されている[Niilo,Appl.Micro.28:889−891(1974)]。
【0010】
ウェルシュ菌を制御するための現在の労力は、動物の給餌における衛生的な手順および抗生物質を入れる事に依存する。疾患のクロスジウムの成分は、抗生物質によく応答し、一般には、抗生物質の給餌添加物およびイオノフォア(ionophorous)系抗生物質によって抑制される。しかし、抗生物質は費用が嵩み、そして細菌耐性の促進に関する懸念を増大することがある。
【0011】
ワクチン接種はまた、家畜において重要な制御方法となっている。なぜなら多くのウェルシュ菌関連疾患の経過は急速かつしばしば致死性であるからである。例えば、米国特許第4,292,307号は、Cl.oedematiensおよびCl.septicumのトキソイド由来のトキソイドをさらに含むA型、B型およびD型のウェルシュ菌のトキソイドから調製された1つの「普遍の」多価ワクチンを規定する。さらに、しばしば多価であって、かつ不活性な細胞、毒素またはこれらの2つの組み合わせからなるワクチンが市販されている[非特許文献1を参照のこと]。
【0012】
雌性の家畜のワクチン接種はまた、それらの引き続く子孫出生の受動的防御を誘発し得る。病原性Clostridial感染に対する哺乳動物新生児の受動的防御は、初乳の抗体の形態での特定の抗体の移行に依存する。例えば、SmithおよびMatsuoka[Am.J.Vet.Res.20:91〜93(1959)]は、不活性化ワクチンを使用して妊娠ヒツジに接種して、ウェルシュ菌のε毒素に対する若齢子ヒツジの母性的に誘導された防御を報告した。若齢の哺乳動物における受動免疫は代表的には、2〜3週間持続する[非特許文献1]。
【0013】
哺乳している哺乳動物とは対照的に、トリでの受動免疫は、いくつかの明白な欠点を有し、最も顕著には、乳から得られる母親由来抗体が完全に欠失している。受動免疫は、その観察される関係についてちょうど1つの可能な説明であるが、Heierら[Avian Diseases 45:724〜732(2001)]は、力価が低い群れよりも高力価の特異的な天然に存在するウェルシュ菌のα毒素に対する母性抗体を有するノルウェーのブロイラーの群れにおいてヒナの生存が有意に高かったことを報告した。さらに、Lovlandら[Avian Pathology 33(1):83〜92(2004)]は、ワクチン接種されていないメンドリの子孫に比較して、A型またはC型のウェルシュ菌のトキソイドに基づくワクチンを接種されたメンドリの子孫でのわずかな受動的防御と一致した結果を報告した。
【0014】
従来、ウェルシュ菌由来の商業的に重要な防御は、ウェルシュ菌細菌によって生じる病原性成分の全部ではないがほとんどについての母性抗体が接種物中に存在するのでなければ達成できないようであった。例えば、エンテロトキシンを含まない産物を用いる母獣のワクチン接種は、仔ブタに部分的な防御しか与えず、母ヤギにおける抗ε毒素抗体は、毒素血症に由来する死亡に対して防御するが全腸炎に対しては防御しない[非特許文献1]。
【非特許文献1】Songer,Clin.Micro.Rev,9(2):216−234(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
実際、種々の生物型のウェルシュ菌およびそれらの対応する毒素および有害な生物活性物質に関するかなりの量のデータの作表にかかわらず、食用動物におけるクロストリジウム感染症は、農業従事者にとって重大な経済的問題のままである。従って、ウェルシュ菌の病理的な影響に対して家畜を防御するためにさらなる手段を得る必要がある。さらに詳細には、家畜においてウェルシュ菌に対する安全かつ有効なワクチンを提供する必要性が依然として存在する。さらに、雌性の動物、特に繁殖性および/または妊娠の雌性家畜に対して投与可能であり、その子孫を受動的に防御する、ウェルシュ菌に対する単純なワクチンを提供する必要性がある。
【0016】
本明細書の任意の引用文献の引用は、このような引用文献が、本出願に対する「先行技術」として利用可能であるという承認と解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、ウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/またはウェルシュ菌のα毒素の不活性な抗原性フラグメント、および/またはその任意の組み合わせを抗原として含むウェルシュ菌に対するワクチンを提供する。本発明はさらに、抗原として、単一のウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/またはウェルシュ菌のα毒素の不活性化抗原性フラグメント、および/またはその任意の組み合わせから本質的になるワクチンを提供する。
【0018】
好ましくは、本発明のワクチンの1用量あたり0.25〜0.6mLの1〜2用量は、このワクチンをワクチン接種された動物(例えば、ニワトリ)の抗血清の1mLあたり少なくとも4抗毒素単位(A.U.)の抗α毒素抗体を誘導するのに十分である。このタイプの1実施形態では、このワクチンをワクチン接種された動物の抗血清の1mLあたりの抗α毒素抗体の抗毒素単位(A.U.)の決定は、免疫の6〜7週後に行う。特定の実施形態では、単回用量のワクチンは、ワクチン接種された動物の抗血清の1mLあたり少なくとも4抗毒素単位(A.U.)の抗α毒素抗体を誘導するのに十分であるが、一方で別の実施形態では、2用量のワクチンが必要である。ある1実施形態では、抗原は2以上の総結合力単位(Total Combining Power units)(TCP)を有する。
【0019】
1つのこのような実施形態では、動物はトリである。特定の実施形態では、トリはニワトリである。別の実施形態では、トリはシチメンチョウである。
【0020】
1実施形態では、この抗原は、ウェルシュ菌のA型細胞、例えば、ウェルシュ菌のA型のαトキソイドに由来する。別の実施形態では、この抗原は、ウェルシュ菌のC型細胞、例えば、ウェルシュ菌のC型α毒素の不活性な抗原性フラグメントに由来する。さらに別の実施形態では、この抗原は、ウェルシュ菌のB型に由来する。さらに別の実施形態では、この抗原は、ウェルシュ菌のD型に由来する。さらに別の実施形態では、この抗原は、ウェルシュ菌のE型に由来する。さらに別の実施形態では、このワクチンは、ウェルシュ菌のサブタイプに由来する抗原を含む。
【0021】
1実施形態では、本発明のワクチンは、単一のウェルシュ菌の生物型の抗原である抗原を含み、ただしこれは、単一のウェルシュ菌の生物型の抗原のみがそのワクチンに存在するという条件である。このタイプの1つの特定の実施形態では、ウェルシュ菌はA型である。関連の実施形態では、ウェルシュ菌はC型である。1実施形態では、この抗原はαトキソイドである。このタイプの特定の実施形態では、このαトキソイドは、ウェルシュ菌のαトキソイド上清に含まれる。特定の実施形態では、このワクチンは、単一のウェルシュ菌の生物型、A型のαトキソイド上清を含む。
【0022】
本発明の1ワクチンでは、この抗原は、ウェルシュ菌の細胞によって天然にコードされるα毒素のαトキソイドである。本発明の別のワクチンでは、この抗原は、組換えポリペプチド、すなわち、遺伝子操作された遺伝子によってコードされる組換えポリペプチドである。このタイプの実施形態では、この組換えポリペプチドは、αトキソイドであって、対応するα毒素の酵素領域は、遺伝子的に除去されているかまたは変更されていたが、1つ以上の抗原性エピトープが保持されていたαトキソイドである。
【0023】
特定の実施形態では、この抗原は全細胞調製物である。別の実施形態では、この抗原は無細胞調製物である。さらに別の実施形態では、この抗原は、ウェルシュ菌のαトキソイド上清におけるαトキソイドである。このタイプの特定の実施形態では、ウェルシュ菌のαトキソイド上清はまた、無細胞調製物である。
【0024】
本発明の別の局面では、ワクチンはまた、動物の被験体に投与された場合に種々の特異性の抗体の産生を生じ得る複数の抗原を含んでもよい。全てではないがこれらの抗体は、疾患に対して防御的である必要がある。このタイプの特定の実施形態では、このような抗原はまた、ウェルシュ菌由来である。従って、本発明のワクチンは、αトキソイドとともに、種々の他の活性または不活性な病原性因子を含んでもよい。従って、本発明によれば、αトキソイドは、他のクロストリジウム細胞、非クロストリジウム細胞、トキソイドおよび抽出物と、ならびにα毒素の不活性な抗原性フラグメントと組み合わすことができる。
【0025】
本発明の1つのこのような多価ワクチンは、ウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/またはウェルシュ菌のα毒素の不活性化抗原性フラグメント、および/またはその任意の組み合わせを含み、そしてさらに、ウイルス抗原、および/または細菌抗原および/または寄生生物抗原を含む。このタイプの特定の実施形態では、抗原のウイルス供給源は、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルスである。別の実施形態では、抗原のウイルス供給源は、伝染性気管支炎ウイルスである。さらに別の実施形態では、抗原のウイルス供給源は、レオウイルスである。さらに別の実施形態では、抗原のウイルス供給源は、ニューカッスル病ウイルスである。さらに別の実施形態では、抗原の細菌供給源は、大腸菌である。さらに別の実施形態では、抗原の細菌供給源は、Salmonellaである。さらに別の実施形態では、抗原の細菌供給源は、Campylobacterである。さらに別の実施形態では、抗原の寄生生物供給源は、Eimeria由来である。このタイプの特定の実施形態では、ワクチンに使用される抗原は、Eimeriaのメロゾイトの一部、Eimeriaの卵母細胞、またはその混合物である。関連の実施形態では、寄生生物の天然の宿主はトリである。タイプの特定の実施形態では、寄生生物はEimeriaであり、この寄生生物の天然の宿主は、ニワトリである。
【0026】
本発明の多価ワクチンはまた、以下の抗原のうち1つ以上を含み得る:ウェルシュ菌のβ毒素、ウェルシュ菌のβ2毒素、ウェルシュ菌のエンテロトキシン、ウェルシュ菌のε毒素、ウェルシュ菌のι毒素、ウェルシュ菌のκ毒素、ウェルシュ菌のλ毒素、ウェルシュ菌のθ毒素、C.sordelliiの出血性毒素、C.sordelliiの致死性毒素、C.difficileのA毒素、C.difficileのB毒素、C.septicumのα毒素、C.novyiのα毒素、およびC.novyiのβ毒素。
【0027】
本発明の特定の多価ワクチンでは、このワクチンは、ウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のα毒素の抗原性フラグメント、および/またはウェルシュ菌のα毒素の不活性な抗原性フラグメント、および/またはその任意の組み合わせを含み、さらに、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、および/または伝染性気管支炎ウイルス、および/またはレオウイルス、および/またはニューカッスル病ウイルス由来の1つ以上のウイルス抗原、ならびに/あるいは、大腸菌、および/またはSalmonella、および/またはCampylobacter由来の細菌抗原、ならびに/あるいは、Eimeria由来の寄生生物抗原を含む。
【0028】
別の実施形態では、本発明の多価ワクチンは、単一のウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/またはウェルシュ菌のα毒素の不活性な抗原性フラグメント、および/またはその任意の組み合わせから本質的になる。関連の実施形態では、このワクチンはさらに、本明細書に提供されるような、ウイルス抗原、および/または細菌抗原、および/または寄生生物抗原を含む。
【0029】
本発明のワクチンはまた、アジュバントを含んでもよい。1つの特定の動物アジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバントである。別のアジュバントが、抗原とともに油中水型エマルジョンに含まれてもよい。このタイプの特定のワクチンでは、油中水型エマルジョンは、70%の油相および30%の水相で調製される。別の実施形態では、このアジュバントは詳細には、水酸化アルミニウムアジュバントではない。1つのこのような実施形態では、非水酸化アルミニウムアジュバントを含むワクチンを家禽に投与する。特定の実施形態では、ワクチンは、ウェルシュ菌のαトキソイド、アジュバント、および1つ以上の防御抗原であって、組換えまたは天然の、ウイルス、細菌および/または細菌抽出物から得られた抗原を含む。
【0030】
別の局面では、本発明は、本発明のワクチンを用いてトリを免疫することによってトリに対して能動免疫を提供する方法を提供する。特定の実施形態では、このような能動免疫のためのワクチン投薬量は、約0.05〜約0.1mLである。1実施形態では、このトリはシチメンチョウである。別の実施形態ではこのトリは、ニワトリである。さらに別の実施形態では、このトリはキジである。本発明はまた、複数の疾患に対してトリを防御するためにこのトリに対して本発明の多価ワクチンを投与する方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、雌性動物(例えば、妊娠中)の子孫に対して受動免疫を提供する方法を提供し、この方法は、本発明のワクチンをその雌性動物(例えば、母体)に対して、その出生前に投与する工程を包含する。1実施形態では、このメスは、トリであって、そのワクチンは、子孫を含む卵の産卵の前にこの雌性トリに投与される。その子孫は、このようにして受動免疫を与えられる。1つのこのような実施形態では、このトリはニワトリである。別の実施形態では、このトリはシチメンチョウである。さらに別の実施形態では、このトリはキジである。
【0032】
特定の実施形態では、本発明の方法は、ワクチン接種された動物の子孫に対して、クロストリジウム感染症に対する受動免疫を提供する。1つのこのような方法では、このクロストリジウム感染症は、クロストリジウム腸疾患である。このタイプの特定の方法では、このクロストリジウム腸疾患は、壊死性腸炎である。別のこのような方法では、クロストリジウム感染症は、胆管肝炎である。さらに別の実施形態では、この方法は、ワクチン接種された動物の子孫に対してクロストリジウム感染症に対する受動免疫を提供し、そして壊疽性皮膚炎、セプチカムおよび/または肝炎に対する防御を提供する。
【0033】
1実施形態では、雌性動物の子孫に対して受動免疫を提供する方法は、雌性動物に対して多価ワクチンを投与して、複数の疾患に対してその子孫を防御する工程を包含する。このタイプの特定の実施形態では、この雌性動物は、家禽のファミリーであって、その子孫は、複数の家禽疾患から防御される。
【0034】
特定の実施形態では、雌性動物の子孫に受動免疫を与えるための投薬量は、このワクチンの1用量あたり約0.25mLである。別の実施形態では、この投薬量は、このワクチンの1用量あたり約0.4mLである。さらに別の実施形態では、この投薬量は、このワクチンの1用量あたり約0.6mLである。下に例示される実施形態では、この投薬量はこのワクチンの1用量あたり約0.5mLである。
【0035】
本発明はさらに、本発明のウェルシュ菌のαトキソイドワクチンを作製するためのプロセスを提供する。1つのこのような方法は、培養培地中でウェルシュ菌細胞を増殖させて、細胞培地中にウェルシュ菌のα毒素を分泌する培養細胞の量を生成する工程を包含する。次いで、この分泌されたα毒素を不活性化することによって、ウェルシュ菌のαトキソイドを生成する。この培養培地からこの培養された細胞のほとんどを取り出して、ウェルシュ菌のαトキソイド上清を形成する。本発明の特定の実施形態では、このワクチンの1用量あたり0.25〜0.6mLの1または2用量のいずれかを用いてワクチン接種されている動物(例えば、ニワトリ)の抗血清の1mLあたり少なくとも4抗毒素単位(A.U.)の抗α毒素抗体を誘導するのに十分であるように、ウェルシュ菌のαトキソイド上清の濃度を調節する。1つのこのような実施形態では、この濃縮プロセスは、低分子量混入物を除くために緩衝化生理食塩水に対するダイアフィルトレーションを包含する。
【0036】
本発明のウェルシュ菌のαトキソイドワクチンを作成するプロセスはさらに、ウェルシュ菌のαトキソイド上清とアジュバントとを混合する工程を包含し得る。1つのこのような実施形態では、ウェルシュ菌のαトキソイド上清を、油中水型エマルジョン中で混合する。このタイプの特定の実施形態では、この油中水型エマルジョンは、70%の油相および30%の水相を用いて調製される。
【0037】
このプロセスで使用されるウェルシュ菌の細胞は、単一のウェルシュ菌の生物型の細胞由来である。このタイプの特定の実施形態では、この単一のウェルシュ菌の生物型の細胞は、ウェルシュ菌のA型の細胞である。別の実施形態では、この単一のウェルシュ菌の生物型の細胞は、ウェルシュ菌のC型の細胞である。
【0038】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明を参照してより良好に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、動物においてクロストリジウム感染症の予防に安全でかつ効率的であるウェルシュ菌に対する独自のワクチンを提供する。特定の実施形態では、雌性動物被験体に対する本発明のワクチンの投与は、雌性動物の免疫、およびその後に出生する子孫に対して受動的に移行され得る抗体の発達の両方を生じる。1実施形態では、本発明は、有害なウェルシュ菌感染に対して有効である単一のウェルシュ菌のαトキソイドの特定の最小量を含むワクチンを提供する。特定の実施形態では、ワクチンは、本発明のαトキソイドおよび薬学的に受容可能なアジュバントの安全かつ免疫学的に有効な組み合わせを含む。
【0040】
本発明のワクチンは、ウェルシュ菌がある役割を果たす任意の状態または疾患に対して防御するために用いられ得る。このような疾患としては、クロストリジウム感染症が挙げられる。このタイプの1実施形態では、クロストリジウム感染症は、クロストリジウム腸疾患である。従って、特定の実施形態では、本発明は、壊死性腸炎として公知の、家禽におけるクストリジウム腸疾患の予防のために有効であるワクチンを提供する。他の疾患症候群も本発明のワクチンによって防止され得、そしてこれには限定はしないが、クロストリジウム関連肝炎、胆嚢炎および壊疽性皮膚炎が挙げられる。
【0041】
本発明は、任意のさらなる致死性毒素がウェルシュ菌のチャレンジによって発現されるか否かにかかわらず、単一のウェルシュ菌の生物型から得られた、特定の最小量のαトキソイド(すなわち、特定の最小量のTCPを有する)を含むワクチンが、壊死性腸炎のようなクロストリジウム疾患から、ワクチン摂取された雌性動物被験体の子孫を防御することを開示する。本発明はさらに、ワクチン接種された雌性動物から特定の最小抗α毒素応答を排除するワクチンを開示する。このワクチンはまた、天然に存在するウェルシュ菌によって任意のさらなる致死性毒素が発現されるか否かにかかわらず、クロストリジウム感染症からそのワクチン接種された雌性動物被験体の子孫を防御する。本発明のワクチンはまた、受容可能なアジュバントとともに投与され得る。
【0042】
下に例示されるとおり、予想外に、α毒素を発現するが、対応するβ2毒素を発現しない、不活性化ウェルシュ菌のA型単離体由来のワクチンを用いるメンドリのワクチン接種は、α毒素およびβ2毒素の両方を発現するウェルシュ菌株由来のチャレンジに対して3週齢の子孫のニワトリの受動免疫をもたらした。従来、これらの2つの異なる毒素に対するこのような交差防御の証明はなかった。従って、本発明は、特定の最小量の抗α毒素を刺激し得、それによってウェルシュ菌のチャレンジ株の他のどの毒素が発現し得るかにかかわらず、クロストリジウム感染症、例えば、壊死性腸炎に対して防御する、比較的単純なワクチンを提供する。
【0043】
実際、動物に対して病原性の影響を有することが示されているウェルシュ菌によって生成される多数の毒素および他の生物学的に活性なタンパク質、ならびに壊死性腸炎の病理に対するこれらの種々の毒素および他のタンパク質の寄与についての文献における多数の引用にかかわらず、本明細書に開示される特有のワクチンは、ワクチン接種されたブロイラーのメンドリにおけるウェルシュ菌に対する実質的な免疫応答、およびその後に出生する子孫に対する受動免疫の両方を提供する。
【0044】
本発明は、いかなる理論にもモデルにも全く依拠しないが、本明細書において提供される結果は、ウェルシュ菌のα毒素が壊死性腸炎に対する防御に必要かつ十分である抗原性成分であるということと一致する。β、β2およびエンテロトキシンは、壊死性腸炎の病理に対して重要であり得るが、本明細書で提供される結果は、αトキソイドが壊死性腸炎のワクチンにおいて必要な唯一のトキソイドであることと一致している。さらに、α毒素産生は一般に、A型株で最高であるので、ウェルシュ菌のA型株はウェルシュ菌のα毒素の供給源として特に有用である。しかし、他のウェルシュ菌の生物型も、遺伝子操作を用いてこれらの他の生物型におけるα毒素産生のレベルを増大した場合特に、首尾よく使用可能である。
【0045】
本明細書において用いる場合、以下の用語は、下に示される定義を有するものとする。本明細書において用いる場合、「防御抗原」とは、その抗原でワクチン接種された動物および/またはその子孫に対して、感染および/または疾患に対する防御を付与する特定の抗体の産生を生じる抗原である。このような防御抗原を含むワクチンは、「免疫学的に有効((immunologically effective」と言われる。
【0046】
本明細書において用いる場合、特定のタンパク質に関して「抗原性フラグメント(antigenic fragment)」という用語は、抗原性であるそのタンパク質のフラグメントである。例えば、α毒素またはαトキソイドの抗原性フラグメントは、抗原性であるα毒素またはαトキソイドのフラグメントである。本明細書において用いる場合、α毒素またはαトキソイドの抗原性フラグメントは、それぞれα毒素またはαトキソイドの任意のフラグメントであってもよく、これは、全長タンパク質から単一のアミノ酸程度の小さい欠失がある大きいフラグメントを含む。特定の実施形態では、α毒素またはαトキソイドの抗原性フラグメントは、6〜120個のアミノ酸残基を含む。さらに、所定のα毒素の抗原性フラグメントは、組換え供給源によって、天然の供給源から単離されたタンパク質から、または化学的合成を通じて得られてもよい。さらに、抗原性フラグメントは、α毒素、αトキソイドまたはそのフラグメントのタンパク質分解消化後に、組換え発現を通じて得られてもよく、あるいは、新規に、例えば、ペプチド合成を通じて生成されてもよい。
【0047】
本明細書において用いる場合、C.perfingensのα毒素の「不活性な抗原性フラグメント(inactive antigenic fragment)」とは、少なくとも1つの抗原性エピトープを保持するが、α毒素を有害にするのに十分な触媒活性を保有しないC.perfingensのα毒素の抗原性フラグメントである。このような不活性な抗原性フラグメントは、単独で用いられてもよく、あるいは、融合タンパク質に組み込まれてもよい。
【0048】
本明細書において用いる場合、「αトキソイド(alpha toxoid)」という用語は、任意の不活性なα毒素(例えば、不活性な全長α毒素)を指すが、そのαトキソイドを産生するためにα毒素を不活性化する特定の手段を決して限定する意味ではない。このような不活性化の方法論としては以下が挙げられる:(i)無傷タンパク質を改変する化学的方法、例えば、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド処理;(ii)物理的方法、例えば、加熱;(iii)タンパク質を変化させる酵素的方法、例えば、毒素をフラグメントに切断するプロテアーゼ;(iv)組換え方法、例えば、タンパク質の酵素的領域を除去するかまたは変化させるが、1つ以上の抗原性エピトープを保持するためのα毒素遺伝子の遺伝的操作(例えば、その内容が全体として参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,817,317号を参照のこと);および/または上記のいずれかもしくは全ての組み合わせ。
【0049】
本明細書において用いる場合、C.perfingensの「αトキソイド上清(α toxoid supernatant)」とは、不活性化C.perfingensのα毒素を含む溶液であって、その毒素を産生する細胞の少なくとも大部分が除去されている(すなわち、細胞の70%より多くが除去されており、特定の実施形態では、細胞の90%より多くが除去されている)。特定の実施形態では、この不活性化C.perfingensのα毒素は、培養培地に添加されて、そして/または培養/増殖されたC.perfingens細胞によって培養培地に分泌され、次いで不活性化された。別の実施形態では、この不活性化C.perfingensのα毒素は、細胞溶解物を通じて解放された、細胞と会合したC.perfingensのα毒素を含み、次いで不活性化される。「αトキソイド上清(alpha toxoid supernatant)」を調製する方法は、溶液から細胞または細胞細片を除去する任意の特定の方法には決して限定されず、そしてこれには、遠心分離、カラムクロマトグラフィー、超遠心などを包含する。
【0050】
本明細書において用いる場合、「無細胞(cell−free)」溶液とは、培養物由来の細胞の90%より多くが除去されている溶液である。「無細胞」溶液を調製する方法は、溶液から細胞または細胞細片を除去する任意の特定の方法には決して限定されるものではなく、そしてこれには、遠心分離、カラムクロマトグラフィー、超遠心などを包含する。
【0051】
本明細書において用いる場合、「単一のウェルシュ菌の生物型(single ウェルシュ菌 Type)」という用語は、複数の生物型、例えば、A型およびB型およびC型に対向して、1つのウェルシュ菌の生物型、例えば、A型またはB型またはC型などをいう。従って、「単一のウェルシュ菌の生物型」のαトキソイドを含む細胞、上清、組成物、調製物、ワクチンなどとは、その1つの特異的なウェルシュ菌生物型のみに由来するαトキソイドを含み、かついかなる他のウェルシュ菌の生物型に由来するαトキソイドも含まない細胞、上清、組成物、調製物、ワクチンなどである。他方では、このような細胞、上清、組成物、調製物、ワクチンなどは、他の非αトキソイド成分を含んでもよく、この成分としては、他のウェルシュ菌のトキソイド、および/またはアジュバント、および/または免疫刺激因子などが挙げられる。
【0052】
本明細書において用いる場合、抗血清の1mLあたりの抗α毒素抗体の「抗毒素単位(antitoxin unit)」または「A.U.」とは、「抗α毒素中和試験(anti−α Toxin Neutralizing Test)」単位または「TNT」単位と交換可能に用いられ、そしてマウスのバイオアッセイにおいてα毒素の毒性効果を血清が中和する能力によって規定される。この試験では、国際標準[EU Pharmacopoeia 5.0.:01/2005:0088,pp.803〜804]によって確立されたα毒素の既知の量を、ワクチン接種動物由来の血清の階段希釈物と混合する。この混合物を室温で1時間インキュベートし、次いでマウスに静脈内注射する。このマウスは、毒素が完全に血清で中和される場合に生残するが、そうでなければ死ぬ。抗毒素単位または力価は、その毒素を中和した血清の最高希釈の逆数として決定される。
【0053】
本明細書において用いる場合、「総結合力(Total Combining Power)」という用語は、「TCP」に略され、そしてBatty[Toxin−Antitoxin Assay,Methods in Microbiology,第8章,第5A巻(1971),編.JR NorrisおよびDW Ribbons]によって記載されるとおり規定される。このアッセイでは、αトキソイド上清の特定の容積を、既知の量の抗毒素単位と接触させる。抗毒素およびαトキソイドが結合することを可能にするのに適切なインキュベーション期間を与えられた後、例えば、室温で1時間後に、既知の量のα毒素を添加する。次いで、残りの遊離の抗毒素に、α毒素との結合に適切な期間、例えば室温で1時間を与える。次いで、遊離のα毒素の量を、この溶液に基質を添加して、α毒素の酵素活性を測定することによって決定する。適切な基質としては、赤血球(特にヒツジ赤血球)およびレシチンが挙げられる。次いで、αトキソイドは、決定される酵素活性の量に基づいて計算によって定量してもよい。アッセイ溶液に存在するαトキソイドの量が多いほど、このアッセイで測定される酵素活性の量が高くなる。
【0054】
「生物型、型(type)」および「バイオタイプ(biotype)」という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、そして種々の毒素遺伝子の発現に基づいて特定の表現型のウェルシュ菌を指す。クロストリジウム・パーフリンジェンスは、4つの主要な毒素、α、β、εおよびιの産生に基づいて型に分けられる。ウェルシュ菌のA型は、α毒素を産生し;B型は、α、βおよびε毒素を産生する;C型は、αおよびβ毒素を産生し、D型は、αおよびε毒素を産生し、E型は、αおよびι毒素を産生する。ウェルシュ菌の17程度の多い外毒素が記載されている。ウェルシュ菌の生物型は、さらなるクロストリジウム毒素および/または酵素のいくつかまたは全ての産生に基づく分類である。例えば、ウェルシュ菌のA型の腸内毒素原性の表現型は、α毒素に加えて、θ毒素およびμ毒素を産生し得る。
【0055】
本明細書において用いる場合、多価ワクチンは、2つ以上の異なる抗原を含むワクチンである。このタイプの特定の実施形態では、この多価ワクチンは、2つ以上の異なる病原体に対してレシピエントの免疫系を刺激する。
【0056】
「アジュバント(adjuvant)」および「免疫刺激因子(immune stimulant)」という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、そして免疫系の刺激を生じる1つ以上の物質として規定される。この文脈では、アジュバントを用いて、1つ以上のワクチン抗原に対する免疫応答を増強する。アジュバントは、ワクチンの投与の前に、ワクチン投与と組み合わせて、またはワクチン投与の後に標的動物に投与され得る。本発明のアジュバントは、天然の供給源、組換え供給源由来を含む任意の多数の供給源から得られてもよく、そして/または化学的に合成されるなどでもよい。アジュバントとして用いられる化合物の例としては、限定はしないが、アルミニウム化合物、代謝性および非代謝性のオイル、ブロックポリマー、ISCOM’s(免疫刺激複合体)、ビタミンおよびミネラル(限定はしないが、以下が挙げられる:ビタミンE、ビタミンA、セレニウム、およびビタミンB12)、Quil A(サポニン)、およびCARBOPOL(登録商標)が挙げられる。時に、詳細には免疫刺激因子と呼ばれているアジュバントのさらなる例としては、細菌および真菌の細胞壁成分(例えば、リポポリサッカライド、リポタンパク質、糖タンパク質、ムラミルペプチド、β−1,3/1,6−グルカン)、植物由来の種々の複合炭水化物(例えば、グリカン、アセマンナン)、動物由来の種々のタンパク質およびペプチド(例えば、ホルモン、サイトカイン、同時刺激因子)およびウイルスおよび他の供給源由来の新規な核酸(例えば、二本鎖RNA、CpG)が挙げられる。さらに、前述の物質の多数の組み合わせが、アジュバント効果を提供し得、従って、本発明のアジュバントを形成し得る。
【0057】
本明細書において用いる場合、「抗α毒素(anti−alpha toxin)」とは、α毒素に結合する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)である。α毒素に対する抗体は、上記のようなTNAアッセイによって測定され得る。あるいは、抗体は、α毒素の溶血性効果をブロックする能力によって検出され得る。溶血阻害アッセイでは、ヒツジ赤血球の所定の調製物の完全な溶解を触媒するのに十分な、既知の量のα毒素を血清の階段希釈物と混合して、36±2℃で1時間インキュベートする。次いで、この混合物を0.5%のヒツジ赤血球とともに36±2℃で3時間インキュベートする。α毒素に抗体が結合する場合、この毒素は、赤血球細胞を溶血できない。力価は、溶血を生じない血清の最高希釈の逆数で決定する。同様のアッセイでは、α毒素に結合する抗体がホスホリパーゼ活性を阻害する能力は、レシチンの酵素切断をブロックする抗血清の最高希釈を決定することによって測定され得る。
【0058】
本明細書において用いる場合、「ポリペプチド(polypeptide)」という用語は、「タンパク質(protein)」という用語と交換可能に用いられ、そしてさらに、ペプチドを包含することを意味する。従って、本明細書において用いる場合、ポリペプチドとは、ペプチド結合によって一緒に結合された2つ以上のアミノ酸のポリマーである。本発明のポリペプチドは、天然に存在するタンパク質;組換えタンパク質;化学合成されたタンパク質;任意の天然に存在するタンパク質、組換えタンパク質または化学合成されたタンパク質のフラグメント;ならびに任意の天然に存在するタンパク質、組換えタンパク質および/または化学的に合成されたタンパク質を含む融合タンパク質、ならびに/あるいはそれらの任意のフラグメントを包含する。好ましくは、ポリペプチドという用語は、ペプチド結合によって一緒に結合される20以上のアミノ酸残基を含むポリマーを意味するために用いられるが、一方、ペプチドという用語は、ペプチド結合によって一緒に結合された2〜20個のアミノ酸残基を含むポリマーを意味するために用いられる。
【0059】
「異種ヌクレオチド配列(heterologous nucleotide sequence)」とは、本明細書において用いる場合、本発明のタンパク質、例えば、本発明のα毒素をコードするか、またはそのフラグメント(例えば、不活性な抗原性フラグメント)をコードするヌクレオチド配列に対して組換え方法によって付加されて、天然には通常形成されない核酸を形成するヌクレオチド配列である。このような核酸は、融合タンパク質をコードし得る。さらに、本明細書において用いる場合、異種ヌクレオチド配列は、単一の連続ヌクレオチド配列である必要はないが、本発明のポリペプチド、またはその一部をコードするヌクレオチド配列と組み合わされている複数の不連続のヌクレオチド配列を含み得る。異種ヌクレオチド配列は、非コード配列を含んでもよく、これには、制限部位、調節部位、プロモーターなどを含む。さらに別の実施形態では、この異種ヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列を検出する手段として機能し得る。本発明は、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列と組み合わされた場合、本発明の融合タンパク質の全てをコードするために必要かつ十分である異種ヌクレオチド配列を提供する。
【0060】
本明細書において用いる場合、単一のウェルシュ菌のα型トキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/または対応するα毒素の不活性な抗原性フラグメント「から本質的になる(consisting essentially of)」または「本質的に〜からなる(consists essentially of)」ワクチンとは、単一のウェルシュ菌のαトキソイド、および/またはウェルシュ菌のαトキソイドの抗原性フラグメント、および/または対応するα毒素の不活性な抗原性フラグメントの、クロストリジウム感染症に対して防御するために免疫学的に有効な量を含むが、クロストリジウム感染症に対して防御することが公知のいかなる他の抗原、例えば、別のウェルシュ菌抗原、または別のウェルシュ菌のα毒素、αトキソイドまたはそのフラグメントの免疫学的に有効な量も含まないワクチンである。このようなワクチンはさらに、他の疾患に関連する抗原、例えば、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、レオウイルス、およびニューカッスル病ウイルス由来のウイルス抗原;大腸菌、Salmonella、およびCampylobacter由来の細菌抗原;ならびにEimeria由来の抗原のような寄生生物抗原を含んでもよい。
【0061】
本明細書において用いる場合、「約、およそ、ほぼ(about)」という用語は、特定の投薬量の値と組み合わせて用いられる場合、その投薬量の値が示された値の20%内であることを意味しており、例えば、約0.5mLの投薬量は、0.4mL〜0.6mLを含み得る。
【0062】
A型のウェルシュ菌の単離
ウェルシュ菌の単離体、例えば、ウェルシュ菌のA型は、感染した動物の糞便のサンプルおよび/または腸内剥離物から得ることができる。このサンプル/剥離物を、血液寒天プレート上に画線して、嫌気的に35±1℃で24〜48時間インキュベートしてもよく、そしてウェルシュ菌のA型に似ているコロニーを個々に採取する。それらのコロニーをウェルシュ菌のA型単離物と確認するために、この選択したコロニーをさらに、遺伝子構造を含む、特徴的なウェルシュ菌のA型の生化学的な特性について試験してもよい。
【0063】
この単離物中のα毒素遺伝子の存在は、遺伝子分析によって、例えば、PCRによって決定し得る。α毒素の発現は、卵黄を用いるアッセイにおけるレシチナーゼ活性によって、および/またはヒツジ赤血球を使用する溶血アッセイによって示され得る。特定の実施形態では、高レベルのα毒素を発現するウェルシュ菌の単離物を、本発明のワクチンの調製物において用いる。選択されたウェルシュ菌の単離物(単数または複数)は、栄養ブロス中で嫌気的に4〜24時間増殖してもよい。培養物は、例えば、ホルマリンを用いて不活性化して、濃縮し、そしてこのようなワクチンに混合してもよい。
【0064】
ウェルシュ菌の毒素
α毒素−α毒素は、全ての生物型のウェルシュ菌によって産生される。α毒素は、レシチンを分けて、ホスホリルコリンおよびジグリセリドを形成し得る、多機能性のホスホリパーゼCである。静脈内投与された場合、α毒素は、マウスに致死性であることが示されている。α毒素はまた顕著に溶血性である。しかし、赤血球の感受性は、赤血球の供給源として用いられる動物の種に依存して大きく変化し得る。α毒素はまた、血小板の凝集、血小板、白血球および他の体細胞の溶解をもたらし、そして血管透過性の増大を生じる。
【0065】
β毒素−β毒素は、ウェルシュ菌のB型およびC型によって産生される。このβ毒素は、腸の炎症および粘膜の大きい損失、ならびに腸の動きの阻害を担う。β毒素は、35kDaの分子量を有するタンパク質であって、トリプシンのようなタンパク質分解性の酵素に対して他のウェルシュ菌毒素よりもかなり感受性である。β毒素は、動物に致死性であることが報告されており、マウスが最も感受性で、ニワトリは感受性が最小である。
【0066】
β2毒素−β2毒素は、ウェルシュ菌の最も近年に発見された毒素である。その名称は同様だが、β2毒素およびβ毒素のアミノ酸配列は、相同性を示さない。文献では、特定の動物においてβ2毒素と壊死性腸炎との間に強力な相関が示されている[Garmoryら,Epidemiol.Infect.124:61〜67(2000),Herholzら,J.Clin.Morco,Feb:358〜361(1999)]。β2毒素は28kDaの分子量を有する。β2毒素は、マウスに対して致死性であり、特定の細胞株に対して細胞傷害性であることが見出されており、細胞の丸まりおよびアクチン細胞骨格に影響することのない溶解を誘発する[Mantecaら,Vet.Microb.86:191〜202(2002),Schotteら,J.Vet Med B 51:423〜416(2004),Gilbertら,Gene 203:65〜73(1997)]。
【0067】
エンテロトキシン−エンテロトキシンは代表的には、ウェルシュ菌のA型株によって産生される。エンテロトキシンの存在は、組織のガス壊疽を伴う株由来の腸疾患関連株を表すために伝統的に用いられている。ガス壊疽を生じる株は代表的にはエンテロトキシンを有さない。エンテロトキシンは、34kDaの分子量を有する熱感受性タンパク質である。マウスの致死用量は、約10μgである。エンテロトキシンの初期相互作用は、宿主細胞に孔を形成し、その後に細胞の透過性が変更、高分子合成の阻害、細胞骨格崩壊および最終的には、溶解が続く[Songer,Clin.Micro.Rev,9(2):216〜234(1996)を参照のこと]。エンテロトキシンは、腸の細胞における総輸送量の逆転を達成する。
【0068】
ε毒素−ε毒素は、ウェルシュ菌のB型およびD型によって産生される。ε毒素は、内因性トリプシンによって、極度に強力な神経毒に変換される、プロトキシン(protoxin)として分泌される。静脈内投与された場合、ε毒素は、マウスに対して極めて致死性であり得る。ε毒素は、神経組織に高い親和性を有し、そして血管透過性を生じる効果を有する。ε毒素はまた、腸壁の透過性を生じて、それ自体を含む、高分子を血流中に入れることを可能にする。次いで、このε毒素は、血流を通って脳に進行し、ここで浸透圧バランスを破壊する。脳におけるこの浸透圧平衡の破壊は、罹患した動物の死亡の前に観察される神経学的な徴候を生じる。
【0069】
κ毒素−κ毒素は、ウェルシュ菌のA型、D型、E型ならびにBおよびCいくつかの生物型によって産生されるコラーゲン加水分解酵素である。κ毒素は、80kDaの分子量を有し、そしてマウスに致死である。マウスに対するκ毒素の静脈内注射は、肺の強度の大量出血に起因して1時間内に死亡をもたらす。
【0070】
θ毒素−ウェルシュ菌のほとんどの株がθ毒素を産生する。θ毒素は、血液寒天プレート上のコロニー周囲にみられる溶血の透明なゾーンを担う74kDaのタンパク質である。精製されたθ毒素はマウスにとって極めて毒性であって、ほんの数分で死をもたらす。θ毒素は、特定のステロイドによって阻害されるが、コレステロールが最も強力なインヒビターである。
【0071】
受動免疫
本発明は、非ヒト雌性、特に繁殖性および/または妊娠雌性のワクチン接種のためであって、次にその新生児へそのワクチンの効果を移行し得るワクチン接種のための、本発明の抗原、例えばαトキソイドの最小量の安全かつ免疫学的に有効な調製物からなるワクチンを含む。母から子孫への免疫のこのような移行は、「受動免疫(passive immunity)」と呼ばれる。受動免疫は、とりわけ、哺乳動物において生じるような初乳の摂取、または家禽で生じるような卵黄から血流への抗体の吸収を通じて達成され得る。さらに、本明細書で開示されるように、家禽は、卵内で抗体を消費し得、これによって循環中の全身性の抗体のレベルが上昇する。
【0072】
本明細書において実証されるとおり、新生動物への特定量の抗α毒素の受動的な移行によって、病原性のClostridium perfringensのチャレンジに対して新生児は防御される。防御の程度は、下に開示されるとおり、全く期待されていないものである。なぜなら、従来は、経口のウェルシュ菌のA型のチャレンジに対して有意に防御するためには抗体で腸が浸されなければならないと信じられていたからである。同様に、新生の哺乳動物における初乳の摂取および卵における母親の抗体の吸収を通じた粘膜免疫の母性抗体の移行の間には相関が存在することは全く驚くべきことである。ニワトリについて下に実証されたとおり、抗α毒素抗体は、卵内で血流に吸収される。さらに、本発明は、メンドリの血流において特定の規定された最小の抗α毒素抗体力価を誘導することが、子孫の出生の数週後に行われたウェルシュ菌のA型のチャレンジから、そのメンドリのワクチン接種された子孫を防御するために十分であるということを開示する。
【0073】
能動免疫
本発明は、壊死性腸炎、壊死性皮膚炎および壊疽性皮膚炎に対して能動免疫を提供するためのニワトリのヒヨコ(例えば、ブロイラーのヒヨコ)および/またはシチメンチョウのヒナのワクチン接種を包含する。このヒヨコおよび/またはヒナは、出生後早期に、ほぼ1日齢またはわずかに後に(出生の最初の1週内)に、1または2用量のワクチンを用いてワクチン接種される。能動免疫を達成するための適切なワクチン投薬量は、約0.05mL〜約0.5mLに変化し得る。特定の実施形態では、このワクチン投薬量は約0.05mL〜約0.1mLである。
【0074】
細胞培養物
Clostridium perfringensは、培養間に培地中にα毒素を分泌する。増殖培地から細胞の少なくともほとんどを不活性化および除去した後、得られた溶液をαトキソイド上清と呼ぶ。この細胞を穏やかに除去して、そうでなければ反応性を促進しかつ免疫応答を減少させ得る、ワクチン中の外来の抗原を最小限にする。しかし、細胞関連のα毒素の量も限られている。従って、α毒素抗原は、細胞および/または培地から、濃縮型で除去されても、または非濃縮型で除去されてもよい。
【0075】
ウェルシュ菌は、フラスコ、ボトル、水差しまたは機械的発酵槽を含む任意の適切な容器中で増殖され得る。発酵は、α毒素の産生がピークの時に発酵槽を回収するように増殖の間にモニターされ得る。代表的な方法としては、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動(PHASTシステムなど)、イムノアッセイ、溶血素およびレシチナーゼ活性アッセイが挙げられる。細胞培養液または細胞抽出液は、ホルムアルデヒド(0.1〜2.0%)またはホルムアルデヒドおよび熱の組み合わせで不活性化され得る。タンパク質変性のために代表的に用いられ、そして用いられ得る他の化学薬品としては、限定はしないが以下が挙げられる:グルタルアルデヒド、フェノール、種々の界面活性剤、例えば、Triton X−100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびアルコール類。残留ホルムアルデヒドレベルは、過量または不足のトキソイディング(toxoiding)にならない最適レベルを維持するように不活性化の間モニターし得る。遊離のホルムアルデヒドを測定するための代表的な方法は、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)(01/2005:20418)または9CFR(連邦規制基準)(113.100)に列挙される。同様の方法が、他のタイプの毒素不活性化物質を測定するために利用可能である。特定の場合、α毒素は、抗毒素の発生に重要なエピトープの変性を最小化するために、この時点で故意にトキソイド未満であり、次いでこのプロセスの後の時点で解毒のためにさらに処理される。グルタルアルデヒド、フェノール、種々の界面活性剤、例えば、TritonX−100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびアルコール類のような、毒素を不活性化し得る他の適切な化合物または生物学的因子も用いられ得る。
【0076】
得られたαトキソイドは、有害な影響なしに、任意のさらなる処理の前にある期間保管され得る。代表的には、最適の保管は2〜8℃である。しかし、不活性化されたクロストリジウムトキソイドは極めて安定であって、高温で保管されてもよい。6ヶ月より長く、かつ8℃より高い温度での保管の期間にわたって、総結合能試験(TCP)、またはこのトキソイドの免疫原性の安定性を決定するための別の同様の免疫学的アッセイによってトキソイドの力価を再試験することが望ましいかもしれない。
【0077】
細胞は、トキソイド上清を得るために、遠心分離および/または濾過によって不活性化培養培地から除去されてもよい。細胞の除去は、細胞成分によって生じ得る組織反応性を減じるように働くが、一方で調製物からの外因性の抗原の除去は、ワクチンのトキソイド成分に対して免疫応答が集中するように補助する。
【0078】
不活性化された培養培地は、濾過(好ましくは、30,000分子量カットオフ以下の限外濾過膜を用いる)を含む任意の多数の手段によって、または凍結乾燥によって濃縮され得る。この濃縮プロセスは、調製物から低分子量混入物を除去するために、水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)に対するダイアフィルトレーションを含んでもよい。この濃縮された液体は、この液体が残留毒素を含まないことが適切なアッセイで示されるまで、ホルムアルデヒドおよび/または熱のいずれかを用いて1回以上再処理され得る。このようなアッセイとしては、マウスバイオアッセイ、すなわち、マウスへの液体の注射、およびマウスでのその影響の観察;または溶血素活性、もしくはレシンチナーゼ(lecinthinase)活性を測定すること、などが挙げられる。
【0079】
溶液のpHは、アジュバントに対する最適結合、オイルとの乳化、および/または溶液の安定性を確実にするために混合の前に調節しなければならないかもしれない。α毒素の等電点(pI)は約5.5である[Smithら,The Pathogenic Anaerobic Bacteria,(第3版)Charles Thomas Publishers,p.116(1984)]。トキソイド溶液のpHの調節は、タンパク質の正味の荷電を変更し、これが特定のアジュバント、例えばアルミニウムアジュバントに対する結合の増強に有利である。pHはまた、長期間にわたる貯蔵のためにαトキソイドの安定性を増大するレベルに調節され得る。例えば、タンパク質は、そのpIで溶液から沈殿する可能性が高いが、通常はこの値よりpHが1単位上または下で安定である。
【0080】
本発明のポリペプチドをコードする核酸
核酸、例えば、本発明のポリペプチドをコードするcDNAは、本発明のタンパク質および/または抗原、例えば、α毒素を発現する組換え細菌宿主細胞を生成するために用いられ得る。このような組換え宿主細胞は、不活性化され、すなわち、バクテリンに変換され得、そしてワクチンのような免疫原性組成物中で用いられ得る。
【0081】
さらに、本発明のα毒素、またはその不活性な抗原性フラグメントをコードする核酸を含む、本発明のポリペプチドをコードする核酸を得ることおよび/または構築することは、α毒素、αトキソイドまたはそのフラグメントの産生を促進し得る。このα毒素、αトキソイドおよび/またはいずれかの抗原性フラグメントは、本発明の特定のワクチンを作製するために有用である。
【0082】
従って、本発明は、本発明のタンパク質および/または抗原性フラグメントの発現および単離を可能にする核酸構築物を包含する。本発明のこの局面において用いられるべき抗原のこのような核酸および対応する組換えタンパク質の配列は当業者に周知である。本発明のワクチンにおいて用いられ得る抗原の小サンプリング、それにともなうGenBankアクセッション番号、およびそのアミノ酸配列を開示する科学文献を以下に示す。
【0083】
(ワクチンで用いられ得る抗原の例)
【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

本発明のワクチンで用いられ得るタンパク質抗原をコードする核酸はさらに、異種ヌクレオチド配列を含み得る。宿主細胞において本発明の組換えタンパク質を発現するため、対応するcDNAを含む発現ベクターを構築してもよい。従って、本発明は、本発明の組換えタンパク質をコードする核酸であって、その改変体を含む核酸を含む発現ベクターを包含し、これにはその改変体を包含する。
【0086】
ヌクレオチドコード配列の縮重に起因して、本発明のポリペプチドをコードする核酸と実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のヌクレオチド配列を、本発明の実施に用いてもよい。これらとしては、限定はしないが、対立遺伝子、他の株由来の相同な遺伝子、および/またはこの配列内の同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変更され、従ってサイレント変化を生じる遺伝子が挙げられる。本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も含まれる。1つの共通して使用される宿主細胞は、大腸菌細胞である。
【0087】
cDNAのクローニングおよびその対応する組換えタンパク質の発現のための一般的方法は、記載されている[Sambrook and Russell,Molecular Cloning,A laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor L.I.(2000)を参照のこと]。
【0088】
さらに、当該分野で公知の突然変異誘発のための任意の技術が、本発明の天然のα毒素を改変するために用いられてもよく、これには、限定はしないが、インビトロ部位特異的突然変異誘発が挙げられる[その内容が全体として参照によって本明細書に援用される、Hutchinsonら,J.Biol.Chem.,253:6551(1978);ZollerおよびSmith,DNA,3:479〜488(1984);Oliphantら,Gene,44:177(1986);Hutchinsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,83:710(1986);WangおよびMalcolm,BioTechniques 26:680〜682(1999)]。TAB@リンカー(Pharmacia)などの使用、およびPCR技術を、部位指向性の突然変異誘発に使用してもよい[Higuchi,「Using PCR to Engineer DNA」,PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H.Erlich編,Stockton Press,第6章,pp.61〜70(1989)を参照のこと]。
【0089】
本発明のポリペプチド
本発明は、単離されたポリペプチドおよび/または組換えポリペプチドを包含し、これには、本発明のα毒素およびαトキソイド、その変異株、その不活性な抗原性フラグメント、およびその融合タンパク質が含まれる。さらに、機能的に等価なアミノ酸残基が野性型アミノ酸配列内の残基と置換されて保存アミノ酸置換を生じる、変更された配列を含むポリペプチドも、本発明によって包含される。
【0090】
例えば、この配列内のこれらのアミノ酸残基の1つ以上が、機能的な等価物として働き、サイレントな変更を生じる、同様の極性の別のアミノ酸によって置換されてもよい。配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。
【0091】
例えば、非極性のアミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性の天然のアミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニンおよびリジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0092】
特に好ましい保存アミノ酸交換は以下である:
(a)正の電荷が維持され得るようにLysをArgに、また逆も同様;
(b)負の電荷が維持され得るようにGluをAspに、また逆も同様;
(c)遊離の−OHが維持され得るようにSerをThrに、また逆も同様;
(d)遊離のNHが維持され得るようにGlnをAsnに、また逆も同様;そして
(e)ほぼ等価な疎水性アミノ酸として、IleをLeuもしくはValに、また逆も同様。
【0093】
抗原性フラグメントを含む、本発明の全てのポリペプチドは、融合タンパク質の一部であってもよい。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは原核生物細胞で発現される。このような融合タンパク質は、例えば、抗原もしくはそのフラグメントの抗原性を増強するために、その抗原性を否定することなくその毒性を低下もしくは除去するために、または本発明の抗原を単離するために用いられ得る。後者の場合の融合タンパク質の単離は、抗原に融合されたタンパク質/ペプチドに特異的であるアフィニティーカラムの使用によって容易にされ得る。このような融合タンパク質としては以下が挙げられる:グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、マルトース−結合タンパク質(MBP)融合タンパク質、FLAGタグ化融合タンパク質、またはポリ−ヒスチジン−タグ化融合タンパク質。特定のリンカー配列、例えば、Ser−Glyリンカーもこのような融合タンパク質の一部であり得る。
【0094】
実際、融合ポリペプチドの発現は、安定な発現を容易にし得、そして/または融合パートナーの特性に基づいて精製を可能にし得る。従って、本発明の組換えポリペプチドの精製は、親和性タグを有する融合タンパク質の使用を通じて簡単になり得る。例えば、GSTは、固体支持マトリックスに結合体化されたグルタチオンに結合し、MBPはマルトースマトリックスに結合し、そしてポリ−ヒスチジンはNi−キレート化支持マトリックスに対してキレートする[Hochuliら、Biotechnology 6:1321〜1325(1998)を参照のこと]。
【0095】
融合タンパク質は、適切な緩衝液を用いて、またはα毒素と例えばその融合パートナーとの間で遺伝子操作されている切断部位に特異的であるプロテアーゼでの処理によって、特定のマトリックスから溶出され得る。あるいは、α毒素は、緑色蛍光タンパク質のようなマーカータンパク質と組み合わされてもよい[その内容が、全体として参照によって本明細書に援用される、Waldoら、Nature Biotech.17:691〜695(1999);米国特許第No.5,625,048号およびWO97/26333]。
【0096】
あるいは、またはさらに、他のカラムクロマトグラフィー工程(例えば、ゲル濾過、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィーなど)を用いて、本発明の天然または組換えのポリペプチドを精製してもよい(下記を参照のこと)。多くの場合、このようなカラムクロマトグラフィー工程は、高速液体クロマトグラフィーまたは類似の方法を、より古典的な重力に基づく手順の代わりに使用する。
【0097】
さらに、α毒素およびその不活性な抗原性フラグメントを含む本発明のポリペプチドは化学的に合成されてもよい[例えば、Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman & Co.,New York,N.Y.,pp.382,Grant,編(1992)を参照のこと]。
【0098】
一般的なポリペプチド精製手順
一般的に、本発明のポリペプチドを精製するための最初の工程としては、例えば、硫酸アンモニウム分画における、塩溶または塩析;溶媒排除分画、例えば、エタノール沈殿を挙げることができる。さらに、高速の超遠心を、単独で、または他の抽出技術と組み合わせて用いてもよい。
【0099】
一般的に良好な二次単離または精製の工程としては、リン酸カルシウムゲル、ヒドロキシアパタイト用いる固相吸収、または固相結合が挙げられる。固相結合は、陰イオン交換体、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)、もしくはジエチル[2−ヒドロキシプロピルアミノエチル(QAE)SEPHADEXもしくはセルロース;または陽イオン交換体、例えば、カルボキシメチル(CM)もしくはスルホプロピル(SP)SEPHADEXもしくはセルロースのいずれかとのイオン結合を通じて行われてもよい。固相結合の別の手段としては、疎水性相互作用の利用、例えば、固体支持体、例えば、フェニルセファロースおよび高塩緩衝液の使用;例えば、活性化支持体に結合したα毒素−抗体を用いる、アフィニティー結合イムノ結合の使用が挙げられる。他の固相支持体としては、特定の色素またはレクチンなどを含む支持体が挙げられる。
【0100】
精製手順の終わりにしばしば用いられるさらなる固相支持技術は、サイズ排除、例えば、SEPHADEXおよびSEPHAROSEゲルなどに依拠する。あるいは、サイズ排除メンブレンフィルターを用いる、加圧または遠心分離膜技術が使用されてもよい。しばしば、これらの2つの方法論を平行して用いる。
【0101】
固相支持分離は一般に、低速遠心のバッチ式で、またはカラムクロマトグラフィーによって行われる。FPLCのような関連の技術を含む、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は現在、液体クロマトグラフィーを行う最も一般的な手段である。サイズ排除技術はまた、低速の遠心分離で達成され得る。さらに、ゲル電気泳動技術のようなサイズ浸透技術が使用されてもよい。これらの技術は一般に、チューブ、スラブで、またはキャピラリー電気泳動で行われる。
【0102】
ポリペプチド精製に関与するほぼ全ての工程が、緩衝化溶液を使用する。他に特定しない限り、一般には25〜100mM濃度の緩衝塩を使用する。低濃度緩衝液とは一般に、5〜25mMの濃度を意味する。高濃度の緩衝液とは一般に、0.1〜2.0M濃度の緩衝化剤の濃度を意味する。代表的な緩衝液は、ほとんどの生化学的なカタログから購入され得、そしてこれには、古典的な緩衝液、例えば、Tris、ピロリン酸塩、一リン酸塩、および二リン酸塩、ならびにグッドの緩衝液、例えば、Mes、Hepes、Mops、TricineおよびChesが挙げられる[Goodら、Biochemistry,5:467(1966);GoodおよびIzawa,Meth.Enzymol.,24B:53(1972);ならびにFergunsonおよびGood,Anal.Biochem.,104:300(1980)]。
【0103】
これらの技術の全てを行うための物質は、Sigma Chemical社(セントルイス、ミズーリ州)のような種々の市販の供給源から入手可能である。
【0104】
ワクチン成分
ウェルシュ菌のαトキソイド:特定の実施形態では、壊死性腸炎に対する防御に必要な最小量のαトキソイドを含む動物ワクチンが有利である。そのレベルは、下に例示される特定の条件下で1用量あたり2の総結合力単位(TCP)であると決定された。TCP単位は、国際標準に基づいて設定され[Batty,Toxin−Antitoxin Assay,Methods in Microbiology,第8章、第5A巻(1971)JR NorrisおよびDW Ribbons編]、そして本発明のワクチンは、所望の力価を有するように容易に混合され得る。このワクチンが免疫刺激因子をさらに含む場合、これらの条件下でさえ、2TCP単位未満を用いてもよい。あらゆる場合に、このワクチンは動物血清の1mLあたり4以上の抗毒素を誘発することが好ましい。
【0105】
αトキソイドの定量:ワクチンに最適レベルが含まれることを確実にするためにαトキソイドを定量することが一般には所望される。トキソイドを定量する1つの従来の方法は、総結合力(TCP)試験を使用する。このアッセイでは、αトキソイド上清の特定の容積を、既知量の抗毒素単位と接触させる。抗毒素およびαトキソイドが結合することを可能にする適切なインキュベーション期間、例えば、0.5〜2時間後、既知量のα毒素を添加する。次いで、残りの遊離の抗毒素を、α毒素と結合するために適切な期間与える。次いで、遊離α毒素の量を、α毒素のホスホリパーゼC活性についての基質を溶液に添加することによって決定する。適切な基質としては、赤血球(特にヒツジ赤血球)およびレシチンが挙げられる。次いで、αトキソイドは、ホスホリパーゼC活性の量に基づく計算によって定量してもよい。アッセイ溶液中に存在するαトキソイドの量が大きいほど、アッセイ中で測定されるホスホリパーゼC活性の量が大きい。あるいは、この決定は、ホスホリパーゼC活性を測定することなく行われ得、例えば、競合的な抗体結合分析が用いられてもよく、これには、クロマトグラフィー工程、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはBiacore装置による競合結合分析を組み込むことなどが挙げられる。
【0106】
さらなる抗原:クロストリジウム感染症はしばしば、混合感染として生じ、従って、他のクロストリジウムトキソイドの添加は、病理および臨床の徴候をさらに軽減し得る。ウェルシュ菌由来のトキソイドを含む、胃腸炎を生じることが公知である生物体からの他のクロストリジウムトキソイドであって、混合感染に対する力価を増大するために本発明のワクチンに添加され得るトキソイドの非限定的な例としては以下が挙げられる:ウェルシュ菌のβ毒素、β2毒素、θ毒素、ε毒素、エンテロトキシン、κ毒素、λ毒素およびι毒素;C.sordelliiの出血性毒素(HT)および致死性毒素(LT)、C.difficileのA毒素およびB毒素;C.septicumのα毒素;ならびにC.novyiのα(A)およびβ(B)毒素。
【0107】
他の細菌、ウイルス、真菌および寄生生物由来の抗原も、本発明のワクチンに含まれてもよい。このような抗原としては、他の毒素またはトキソイド、細菌、および/または細菌抽出物;真菌および/または真菌抽出物;ウイルスおよび/またはウイルスタンパク質;ならびに/あるいは寄生生物または寄生生物由来のタンパク質が挙げられる。本明細書に提供される供給源由来の適切なウイルス、細菌および寄生生物抗原は当該分野で周知である。
【0108】
細菌性生物の非限定的な例は以下である:Escherichia coli、Camplobacter spp.、Pasteurella spp.、Staphylococcus spp.、Streptococcus spp.、Enterococcus spp.、Chlamydia,Erysipelas spp.、Pasteurella、Bordetella、およびOrnithobacterium。
【0109】
関連の毒素の非限定的な例は以下である:ワクチンの免疫学的応答を増強し、従って、ウェルシュ菌およびマイコトキシンのα毒素に対する抗毒素の産生を改善することが公知であるグラム因性の細菌のリポポリサッカライド(LPS)。適切なウイルスの非限定的な例は以下である:コロナウイルス、ロタウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルス様ウイルス、トロウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、ビルナウイルス、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、マレック病ウイルス、出血性腸炎ウイルス、およびニューカッスル病ウイルス。
【0110】
寄生生物の非限定的な例は以下である:コクシジア(Coccidia)、アイメリア(Eimeria)種例えば、そしてクリプトスポリジア(Cryptosporidia)[その内容が、その全体として参照によって本明細書に援用される、米国特許第2004/0018215号A1を参照のこと]。
【0111】
アジュバント
アジュバントはまた、免疫応答を改善するために、および/またはワクチン調製物の安定性を増大するために有用である。アジュバントは代表的には、免疫系の非特異的な刺激因子として記載されているが、また、免疫系の特定のアームを標的するためにも有用であり得る。この活性を有する1つ以上の化合物がワクチンに添加されてもよい。従って、本発明の特定のワクチンはさらに、アジュバントを含む。アジュバントとして用いられ得る化合物の例としては、限定はしないが、アルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウム)、代謝性および非代謝性のオイル、鉱油溶液中にマンニドオレアート誘導体を含む鉱油(例えば、Seppic SA(フランス)のMONTANIDE ISA 70)、および軽鉱油、例えば、DRAKEOL 6VR、ブロックポリマー、ISCOM’s(免疫刺激複合体)、ビタミンおよびミネラル(ビタミンE、ビタミンA、セレニウムおよびビタミンB12を含むがこれに限定されない)およびCARBOPOL(登録商標)が挙げられる。
【0112】
時には免疫刺激因子と呼ばれている他の適切なアジュバントとしては、限定はしないが以下が挙げられる:サイトカイン、増殖因子、ケモカイン、リンパ球の細胞培養物由来の上清、単球、リンパ器官由来の細胞、細胞調製物および/または植物からの調製物、細菌または寄生生物(Staphylococcus aureusまたはリポポリサッカライド調製物)または分裂促進因子。
【0113】
一般には、アジュバントは、本発明の抗原と同時に投与される。しかし、アジュバントはまた、あるいは、ワクチン接種前の2週間以内に、そして/またはワクチン接種後一定期間に、すなわち組織中に抗原、例えば、αトキソイドが存続する間に投与されてもよい。
【0114】
ワクチンの調製
本発明のワクチンを作製するためのプロセスも提供される。1実施形態では、このワクチンは、本発明の抗原、例えば単一のウェルシュ菌の生物型のαトキソイド上清、および薬学的に受容可能なアジュバントの安全かつ免疫学的に有効な組み合わせを混合する工程を含む。αトキソイドの量は、ワクチンの1用量あたり少なくとも2総結合力(TCP)を含むように定量され得る。このαトキソイド上清は、ワクチン接種された動物由来の抗血清の1mLあたり少なくとも4.0の抗毒素単位(A.U.)を得るのに必要な用量サイズを最小化するために濃縮されてもよい。他の薬学的に受容可能な免疫調節因子の添加は、ワクチン接種がこのワクチン接種された動物由来の抗血清1mLあたり4.0A.U.の抗α毒素抗体を依然として必要とする限り、1用量あたり2単位未満に下がるためのTCP要件を減少し得る。特定の実施形態では、ウェルシュ菌のαトキソイドはさらに、限定はしないが、濃度/超遠心、クロマトグラフィーおよび遠心分離のような技術によってαトキソイド上清から精製される。
【0115】
ワクチンの投与
ワクチンは、液体、エマルジョン、乾燥粉末として、および/または任意の非経口投与を通じてミスト中で、静脈内に、腹腔内に、経皮的に、乱切りによって、皮下に、筋肉内に投与されてもよく、または粘膜経路によって、例えば、経口的に、鼻腔内に、エアロゾルとして、点眼によって、卵内投与によって接種されてもよく、または凍結乾燥粉末として移植されてもよい。
【0116】
動物被験体
「動物被験体(animal subject)」という用語は、病原性細菌によって感染され得る動物種をいい、そして特定の実施形態ではヒトを含む。適切な動物被験体としてはまた、世界中の動物、家畜(例えば、肉用、乳用、バター、卵、毛皮、皮、羽毛および/または羊毛用に飼育される)、荷役用動物、研究用動物、愛玩動物、ならびに、動物園、野生動植物の生息地および/またはサーカスで飼育される動物が挙げられる。
【0117】
特定の実施形態では、本発明の動物被験体は、「食用、食料生産(food producing)」動物である。本発明の目的のためには、「食用」動物とは、ヒトおよび/または他の動物によって、消費用に(例えば、シチメンチョウ、ブロイラーのニワトリ)、または消耗のために(例えば、乳牛、産卵用メンドリなど)育てられる全ての動物を包含することが理解されるべきである。このような動物の非限定的な例としては、トリ、例えば、家禽、すなわち、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、ダチョウなど、ウシ(例えば、畜牛、乳牛、水牛)、ヒツジ類(例えば、ヤギまたはヒツジ)、ブタ(例えば、ブタ、雄ブタまたは子ブタ)およびウマ類(例えば、ウマ)などが挙げられる。
【0118】
別の実施形態では、動物被験体は、愛玩動物(ペット)(companion animal)である。本発明の目的のためには、「コンパニオン(companion)」動物は、家ネコ(ネコ)、犬(イヌ)、ウサギ種、馬(ウマ)、げっ歯類(例えば、モルモット、リス、ラット、マウス、スナネズミ、およびハムスター)、霊長類(例えば、サル)、およびトリ、例えば、ハト(pigeons)、ハト(doves)、オウム(parrots)、インコ(parakeets)、金剛インコ(macaws)、カナリア(canaries)などを包含することが理解されるべきである。
【0119】
他の動物も、本発明のワクチンからの利益を得ることが考えられ、この動物としては、有袋類(例えば、カンガルー)、爬虫類(例えば、養殖されたカメ)、狩猟鳥、ハクチョウ、走トリおよび他の経済的に重要な家畜が挙げられる。
【0120】
以下の例は、本発明の例示を意図しているに過ぎず、そして決して、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
皮下経路によってワクチン接種されたブロイラーのメンドリにおけるワクチンの有効性
要旨
単一のウェルシュ菌のαトキソイド(A型)を含むワクチンを用いる皮下経路によるブロイラーのメンドリのワクチン接種は、(i)ワクチン接種されたブロイラーのメンドリにおいて免疫原性の応答を、(ii)ワクチン接種されたブロイラーのメンドリの卵において有意な抗αトキソイド抗体を、そして(iii)ワクチン接種されたブロイラーのメンドリのその後に出生する子孫の受動防御を生じる。
【0122】
材料
ウェルシュ菌のA型のαトキソイド:ウェルシュ菌のA型のαトキソイドは以下のように調製する:ウェルシュ菌のA型培養物は、37℃±2の温度で大規模の発酵槽(5000L)中で嫌気的条件下で増殖させる。発酵の間、7.8±2のpHを維持するため、水酸化ナトリウムを添加して。成長を促進するために、発酵の間に、炭水化物(デキストリン)も添加する(最大1%w/v)。この培養物を、3〜6時間まで増殖させる。増殖期間の終わりに、ホルムアルデヒド溶液をこの発酵槽中に、0.5%を超えない最終レベルまで添加する。細胞を遠心分離によって除去して、得られた上清を、0.25〜2.0μmの範囲の細孔サイズを有するデプス・フィルターを用いて、濾過させる。温度は、このプロセスの間5±3℃で維持する。次いで、不活性化培養上清をダイアフィルトで濾過して、20,000分子量カットオフを超えないフィルターでの超遠心を用いて10〜30倍に濃縮する。ワクチンへの将来の混合のために濃縮上清を2〜8℃で保管する。混合の前に、濃縮された上清を、上記で記載される結合力試験(TCP)を用いることによって力価についてアッセイする。トキソイドの各々のバッチの力価を、mLあたりのTCP単位に割り当てる。
【0123】
ワクチン:不活性化ウェルシュ菌のA型のαトキソイドを含む上清を、1mLあたり4結合力単位(Combining Power Units)(TCP)を含む油中水型エマルジョンとして混合する。そのエマルジョンは、70%油相および30%水相で調製する。
【0124】
油相は、以下のように調製する:
鉱油 89.20%
Span 80 10.00%
ベンジルアルコール 0.75%
トリエタノールアミン 0.05%
この水相は以下のとおり調製する:
ウェルシュ菌のA型のトキソイド+生理食塩水 88%
33% Tween 80/生理食塩水溶液 12%
全部で30%の水相を70%の油相にゆっくり添加し、そしてSilversonホモジナイザーで乳化する(他のインラインホモジナイザーも用いてよい)。ホモジナイゼーションの時間は、エマルジョンの容積に依存し、そして粘度、粒子サイズおよび37℃で少なくとも3日間のエマルジョンの安定性によって決定される。ゲンタマイシンを水相に添加して、最大30μg/mLまでの最終濃度の連続容積を与える。チメロサールを水相に添加して、最大0.01%までの最終濃度の連続容積を得る。
【0125】
ワクチン接種:ピューレットを、混合されたワクチンの1用量あたり0.5mL用いて皮下ワクチン接種する。ワクチンの第一用量は、14週齢で投与し、そして第二用量は、20週齢で投与する。20羽のブロイラーのメンドリを、1用量あたり1TCPを含む上記の混合ワクチンを用いてワクチン接種する。第二群の20羽のメンドリを、1用量あたり2TCPを含む上記の混合ワクチンを用いてワクチン接種する。第三群の20羽のメンドリは、コントロールとして用い、そしてワクチン接種しない。全部で2〜3羽のオンドリを各々の群のメンドリと混ぜ合わせて、受精卵を産出させる。
【0126】
受動免疫
卵は、32、52および65週齢のワクチン接種されたメンドリおよびコントロールのメンドリから回収する。これらの卵から孵化した子孫のニワトリを、表1に列挙される受動的な防御を評価するために用いる。
【0127】
(表1)
各時点で用いられる子孫のニワトリの数
【0128】
【化41】

ニワトリには、最初の2週間に非薬用の高タンパク質食餌を供給し、次いで、トライアルの残りには正常な給餌に切り替える。各トリは、α毒素およびβ2毒素の両方を発現する病原性ウェルシュ菌のA型を経口チャレンジする。チャレンジ用量は、3mLの用量に、1mLあたり6.3×10〜6.3×10コロニー形成単位を含む。トリには18齢または19齢で開始して3連続日の間チャレンジする。このチャレンジの最終日の2日後に、トリを屠殺し、次いで壊死性腸炎の病変について試験する。子孫にニワトリについての有効性の結果は、表2〜4に個々に列挙しており、個々のニワトリの母体のワクチン接種状態、およびその壊死性腸炎の病変の程度を、もしあれば、下に提供される評価尺度に従って、示している。表2は、32週齢のメンドリからの子孫ニワトリを示しており、表3は、52週齢のメンドリからの子孫ニワトリを示しており、そして表4は、65週齢のメンドリからの子孫のニワトリを示している。表5は、1用量あたり2TCPをワクチン接種されたメンドリからの子孫ニワトリの中央値スコアを示している。示されるとおり、ワクチン接種されたメンドリの子孫は、ワクチン接種されていないメンドリの子孫に比較して、投与された細菌チャレンジに対して有意に防御される。
【0129】
壊死性腸炎(NE)病変の評価尺度
0=小腸における非壊死性腸炎の肉眼的病変;腸は正常な弾力性を有する(開口された後、それ自体縮小する)。
【0130】
1=薄くかつ柔弱な小腸の壁(腸は、開口された場合平坦なままであり、正常な位置に縮小して戻ることはない);粘液膜を覆う過剰なもしくは肥厚性の粘液、または粘膜の焦点性もしくは多巣性の軽度発赤、または漿膜血管のうっ血。
【0131】
2=腸壁の発赤および腫脹の単一または2〜3の多巣性領域;腸粘膜の潰瘍または壊死の単一または2〜3の多巣性領域。
【0132】
3=腸粘膜の壊死および潰瘍の過剰な多巣性領域±重篤な出血または粘膜表面上のフィブリンもしくは壊死性細片の層(トルコ・タオルの外見)。
【0133】
4=壊死性腸炎の肉眼的病変のスコアが2以上である死んだ動物
(表2)
32週齢のメンドリ由来の個々の子孫ニワトリにおける壊死性腸炎病変のスコア
【0134】
【化42】

(表3)
52週齢のメンドリ由来の個々の子孫ニワトリにおける壊死性腸炎の病変のスコア
【0135】
【化43】

(表4)
65週齢のメンドリ由来の個々の子孫ニワトリにおける壊死性腸炎の病変のスコア
【0136】
【化44−1】

(表5)
2TCPの用量でワクチン接種されたメンドリ由来の子孫ニワトルにおける中央値スコア
【0137】
【化44−2】

抗体力価
血清:血液サンプルは、33週齢および78週齢でメンドリから採集する。血液は、室温で2〜4時間凝固させ、次いで血清を遠心分離後に得る。血清は、抗体力価について試験するまで−10℃以下で保管する。ウェルシュ菌のα毒素に対する抗体力価を、以下のように連続希釈およびヒツジ赤血球を用いて、溶血阻害アッセイによって評価する:連続希釈(2倍)を、試験した各々のサンプルについてV底マイクロタイタープレートで行う。既知量のα毒素を、サンプルの希釈物を含む各々のウェルに添加する。次いで、このプレートを36±2℃で1時間インキュベートして、血清から得た抗体をα毒素と複合させる。このインキュベーション後、ヒツジ赤血球の0.5%溶液をウェルに添加して、プレートを36℃±2℃で3時間インキュベートして、未結合のα毒素が赤血球を溶解することを可能にする。次いで、このプレートを溶血の非存在についてチエックする。溶血を示さない試験サンプルの最高希釈の逆数を、エンドポイントとみなす。抗体力価は表6〜8に示す。
【0138】
卵黄:卵黄は、抗体力価を決定するために処理する。要するに、卵黄を分離して、市販の抽出緩衝液(Promega EGGstract System(登録商標),Promega Catalog No.G1531およびG2610,Madison,Wisconsin)と混合する。抽出後、IgYペレットを得て、次いで、これをリン酸緩衝化生理食塩水を用いて卵黄のもとの容積に再懸濁する。卵黄抽出物は少なくとも5つの卵からプールして、上記の血清について記載されるように溶血阻害(HI)アッセイを用いて抗体力価について試験する。40週齢、52週齢および65週齢の産卵鶏から収集した卵由来の卵黄をこの方式で抗体力価について評価する。卵黄の抗体力価は表9に示される。
【0139】
(表6)
33週齢でのウェルシュ菌のA型のα毒素に対する個々のメンドリの血清抗体力価
【0140】
【化46−1】

(表7)
78週齢のウェルシュ菌のA型のα毒素に対する個々のメンドリの血清抗体力価
【0141】
【化46−2】

(表8)
種々の時点でのメンドリの血清中の相乗平均の溶血阻害力価
【0142】
【化47−1】

(表9)
種々の時点で採取したメンドリ由来の卵黄における溶血阻害力価
【0143】
【化47−2】

(実施例2)
筋肉内経路によってワクチン接種されるブロイラーのメンドリにおけるワクチンの有効性
要旨
単一のウェルシュ菌のαトキソイド(A型)を含むワクチンを用いる筋肉内経路によるブロイラーのメンドリのワクチン接種はまた、(i)ワクチン接種されたブロイラーのメンドリにおいて免疫原性の応答を、(ii)ワクチン接種されたブロイラーのメンドリの卵において有意な抗αトキソイド抗体を、そして(iii)ワクチン接種されたブロイラーのメンドリの後に生まれる子孫のための受動的な防御を生じる。
【0144】
受動免疫
全部で14例のブロイラーのメンドリに、2TCPを含有する上記の実施例1のワクチンの0.5mLの2用量を筋肉内にワクチン接種する。40匹のメンドリのさらなる群をコントロールとして用いる。三羽のオンドリを、上記のとおり、各々の群のメンドリと混合する。第一用量のワクチンを、10週齢で投与し、そして第二用量を23週齢で投与する。卵は、32週齢でメンドリから採取して、孵化させ、実験的なウェルシュ菌のチャレンジ後に子孫のニワトリ中で受動的な防御を決定する。
【0145】
表10は、ワクチン接種およびコントロールのメンドリの子孫にニワトリについての、壊死性腸炎の頻度、および上記実施例1の評価尺度によって決定されるような、その対応する病変の中央値スコアを示す。表11は、個々の子孫のニワトリについての壊死性腸炎の病変の中央値スコアを示す。表12は、個々の子孫ニワトリのウェルシュ菌のA型α毒素に対する抗体力価を列挙しているが、32週齢で、ワクチン接種およびコントロールのニワトリから採取された卵由来の卵黄の抗体力価は表13に示す。
【0146】
(表10)
疾患および壊死性腸炎病変の頻度
【0147】
【化48】

(表11)
32週齢のメンドリ由来の個々の子孫のニワトリにおける壊死性腸炎病変のスコア
【0148】
【化49】

(表12)
35週齢での個々のメンドリの血清抗体力価
【0149】
【化50】

(表13)
32週齢でメンドリから採集した卵黄における抗体力価
【0150】
【化51】

(実施例3)
皮下経路によってワクチン接種されたSPF白色レグホンメンドリにおける血清学
抗体力価
抗体力価は、1、2または3TCPを含有する、上記の実施例1のワクチンを皮下にワクチン接種されるSPF白色レグホンメンドリで評価する。このメンドリには、0.5mLのワクチンを15週齢でワクチン接種し、最初のワクチン接種後4週でブースター用量を投与する。血液サンプルをブースターワクチン接種後6週で採取する。各々の個々のトリ由来の血清を、実施例1に上記されるような溶血阻害アッセイによって抗体について評価する。
【0151】
(表14)
ウェルシュ菌のA型のα毒素に対する個々のメンドリ血清抗体力価
【0152】
【化52−1】

白色レグホンの産卵鶏から25週齢で採取した卵での抗体力価を、溶血阻害力価で評価する。その結果は表15に表にする。
【0153】
(表15)
ウェルシュ菌のA型のα毒素に対するプールされた卵黄抗体力価
【0154】
【化52−2】

白色レグホンメンドリのプールされた血清における毒素中和力価(TNT)の決定
メンドリにおけるプールされた血清中のウェルシュ菌のA型α毒素に対する抗毒素力価は、マウスを用いて評価する。プールされた血清を、Code of Federal Regulations,Animal and Plant Health Inspection Service,Department of Agricultureに記載される方法を用いて、抗毒素力価について試験する。抗毒素を測定するために用いた方法は、α毒素および抗毒素試薬がβ毒素および抗毒素の代わりに用いられること以外は、カレント9CFR§113.111(c)と同様であった。以下の試験試薬を、抗毒素力価を決定するために用いる:
1)ウェルシュ菌のA型α抗毒素:IRP426(Center for Veterinary Biologies,USDAから入手)。
【0155】
2)ウェルシュ菌のA型のα毒素IRP446(Center for Veterinary Biologies,USDAから入手)。
【0156】
要するに、希釈された標準の抗毒素または血清を、既知量の標準α毒素と合わせる。次いで、未中和毒素の存在をマウスへのこの混合物の注射によって決定する。次いで、毒素活性に対する既知量の標準のα毒素の効果に対する比較を、バイオアッセイにおいてマウスを死亡から防御する標準血清または試験血清の希釈を決定することで評価する。白色レグホンのメンドリのプールされた血清における抗毒素は下の表16に示されるとおりである。
【0157】
(表16)
ワクチン接種されたメンドリおよびコントロールのメンドリにおける毒素中和力価(TNT)
【0158】
【化53】

(実施例4)
筋肉内経路によってワクチン接種されたSPF白色レグホンメンドリにおける血清学
抗体力価
1、2または3TCPを含有する、上記の実施例1のワクチンを筋肉内に2回ワクチン接種されるSPF白色レグホンメンドリでの抗体力価を評価する。このメンドリには、0.5mLのワクチンを10週齢でワクチン接種し、そして最初のワクチン接種後4週でブースター用量を投与する。血液サンプルをブースターワクチン接種後7週で採取する。個々のメンドリの血清を、上記実施例1に上記されるような溶血阻害アッセイによって抗体について評価し、そして下の表17および表18にする。
【0159】
(表17)
ウェルシュ菌のA型のα毒素に対する個々のメンドリ血清抗体力価
【0160】
【化54】

メンドリのプールした血清における毒素中和力価を、上記の実施例3に記載されるような手順を用いて評価し、その結果を下の表18に示す。
【0161】
(表18)
ワクチン接種されたメンドリおよびコントロールのメンドリにおける毒素中和力価
【0162】
【化55−1】

これらの白色レグホン産卵鶏から25週齢で採取した卵の抗体力価を、上記の実施例1に記載のとおり、溶血阻害力価について評価する。この結果は表19に下にまとめる。
【0163】
(表19)
ウェルシュ菌のA型α毒素に対するプールされた卵黄抗体力価
【0164】
【化55−2】

(実施例5)
ブタにおける多価および単価のウェルシュ菌のαトキソイドワクチンの比較
要旨
方法は、本発明のウェルシュ菌のA型のαトキソイドワクチンを用いて妊娠メスブタ(sows/gilts)をワクチン接種することによって新生ブタにおいて受動的な防御を提供するために記載する。この結果、初乳を通じてブタに移され得るメスブタでの抗体応答が示される。
【0165】
材料
C.perfrinpensのA型のαトキソイド:ウェルシュ菌のA型αトキソイドは上記の実施例1に記載のように調製した。
【0166】
ワクチン:本発明のワクチンは、2を超える総結合力単位を含有する不活性化されたウェルシュ菌のA型のαトキソイドと混合され得る。このワクチンは、本明細書に開示される任意のアジュバントと混合され得、このアジュバントとしては、鉱油、植物油(ピーナツオイル、ダイズ油)、スクアレン、スクアランおよび他に代謝性オイルを含む水中油型エマルジョンが挙げられる。他のアジュバント、例えば、Seponin、CARBOPOL(登録商標)、およびアルミニウム含有アジュバント(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)も、ワクチン調製物中で用いられ得る。このワクチンはさらに、他の抗原を含み、この抗原としては、大腸菌(K88、K99、987P、1型)、ウェルシュ菌由来のトキソイド、および/または他の病原性細菌由来のトキソイド、Clostridium difficile、ロタウイルス、および/またはCryptosporediaが挙げられる。
【0167】
投与
ワクチンを、初乳の摂取を通じて新生ブタに受動的防御を提供するために筋肉内または皮下の経路のいずれかによって分娩前の妊娠メスブタ(gilts/sows)に投与する。
【0168】
結果
本研究は、3つのワクチンを比較する32週齢のブタで行なう:
ワクチン#1:2mLの用量中で4TCPのウェルシュ菌のA型のαトキソイドを含有する水酸化アルミニウムアジュバントと配合。
【0169】
ワクチン#2:2mLの用量中で4TCPのウェルシュ菌のA型のαトキソイド、大腸菌K88、大腸菌K99、大腸菌987P、大腸菌の1型およびウェルシュ菌のC型のβトキソイドと配合。
【0170】
ワクチン#3:2mLの用量中にウェルシュ菌のA型のαトキソイドを含まないが、大腸菌K88、大腸菌K99、大腸菌987P、大腸菌の1型およびウェルシュ菌のC型のβトキソイドを含むプラセボワクチンとして調製。
【0171】
1群の10匹のブタに2mLのワクチン#1を筋肉内にワクチン接種する。第二の群の10匹のブタに2mLのワクチン#2を筋肉内にワクチン接種する。7匹のブタの第三の群に、2mLのワクチン#3をワクチン接種する。2mLのブースター用量は、最初のワクチン接種の20日後に与える。血清サンプルを最初のワクチン接種(0日目)、ブースターワクチン接種の20日後(40日目)、およびブースターワクチン接種の41日後(61日目)の時点で採集する。次いで、血清サンプルを、上記の実施例1に記載される溶血阻害アッセイによってα毒素に対する抗体力価について評価する。3つのワクチンの結果は、それぞれ表20〜22に個々に示す。
【0172】
(表20)
単価のウェルシュ菌のA型のαトキソイドワクチン
【0173】
【化57】

(表21)
大腸菌−ウェルシュ菌のC型のβトキソイドを有するウェルシュ菌のA型のαトキソイドのコンボワクチン
【0174】
【化58−1】

(表22)
大腸菌−ウェルシュ菌のC型のβトキソイド
【0175】
【化58−2】

(実施例6)
ワクチン接種されたメスブタのプールした血清における毒素中和力価(TNT)の決定
4匹の妊娠メスブタを、2つの処置群に均一に分ける。1群は、上記の実施例5のワクチン#1の2mLの用量に4TCPを含有する2.0mLのワクチンを用いて筋肉内経路でワクチン接種される。他の群は、ワクチン接種されていないコントロールである。メスブタは、分娩の前約6〜7週間でワクチン接種し、そしてブースター用量は、3週間後に与える。血液サンプルは、ワクチン接種の前、および分娩の直前に採取する。表23は、上記の実施例3に記載されたとおり毒素中和試験(TNT)を用いるα毒素に対する抗毒素力価についての血清サンプルの評価を示す。
【0176】
(表23)
TNT力価
【0177】
【化59】

本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本明細書に記載される改変に加えて本発明の種々の改変は、前述の説明から当業者に明らかである。このような改変は、添付の特許請求の範囲内におさまるものとする。
【0178】
全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、ならびに核酸またはポリペプチドについて与えられる全ての分子量または分子量値はおよそであって、説明のために示されることがさらに理解されるべきである。種々の刊行物が本明細書に引用されており、その開示はその全体が参照によって本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェルシュ菌αトキソイド、ウェルシュ菌αトキソイドの抗原性フラグメント、ウェルシュ菌α毒素の不活性な抗原性フラグメント、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される抗原を含むワクチンであって;
該ワクチンの1用量あたり0.25〜0.6mLの1〜2用量が、該ワクチンをワクチン接種されたニワトリの抗血清の1mLあたり少なくとも4抗毒素単位(A.U.)の抗α毒素抗体を誘導するのに十分である、ワクチン。
【請求項2】
前記抗原が無細胞調製物にある、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記抗原がウェルシュ菌αトキソイド上清におけるαトキソイドである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
前記抗原が組換えポリペプチドである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
前記抗原が2つ以上のTCPを有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
前記抗原が、ウェルシュ菌のA型のαトキソイド、およびウェルシュ菌のC型のαトキソイドからなる群より選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】
アジュバントをさらに含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
油中水型エマルジョンが抗原およびアジュバントを含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記油中水型エマルジョンが70%の油相および30%の水相で調製された、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記抗原がウェルシュ菌のαトキソイドであり;ただし単一のウェルシュ菌のαトキソイドのみが前記ワクチンに存在するという条件である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記αトキソイドが、ウェルシュ菌のαトキソイド上清に含まれる、請求項10に記載のワクチン
【請求項12】
多価ワクチンである、請求項1に記載のワクチンであって、さらに以下の毒素:ウェルシュ菌のβ毒素、ウェルシュ菌のβ2毒素、ウェルシュ菌のエンテロトキシン、ウェルシュ菌のε毒素、ウェルシュ菌のι毒素、ウェルシュ菌のκ毒素、ウェルシュ菌のλ毒素、ウェルシュ菌のθ毒素、C.sordelliiの出血性毒素、C.sordelliiの致死性毒素、C.difficileのA毒素、C.difficileのB毒素、C.septicumのα毒素、C.novyiのα毒素、およびC.novyiのβ毒素のうち、1つ以上を含む、ワクチン。
【請求項13】
請求項12に記載のワクチンであって、前記多価ワクチンがさらに、1つ以上のウイルス抗原、1つ以上の細菌抗原、および1つ以上の寄生生物抗原を含み、
該1つ以上のウイルス抗原が、以下の供給源:伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、レオウイルスおよびニューカッスル病ウイルスのうちの1つ以上に由来し;
該1つ以上の細菌抗原が、以下の供給源:大腸菌、SalmonellaおよびCampylobacterのうちの1つ以上に由来し;そして
該1つ以上の寄生生物抗原がEimeria由来である、ワクチン。
【請求項14】
多価ワクチンである請求項1に記載のワクチンであって、さらに、1つ以上のさらなる抗原を含み;
該さらなる抗原が、以下の供給源:伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、大腸菌、Salmonella、CampylobacterおよびEimeriaのうちの1つ以上に由来する、ワクチン。
【請求項15】
単一のウェルシュ菌のαトキソイド、αトキソイドの抗原性フラグメント、単一のウェルシュ菌のα毒素の不活性な抗原性フラグメント、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される抗原から本質的になるワクチンであって;
該単一のウェルシュ菌のαトキソイド、および該単一のウェルシュ菌のα毒素の不活性な抗原性フラグメントが同じタイプであり;
該ワクチンの1用量あたり0.25〜0.6mLの1〜2用量が、該ワクチンをワクチン接種されたニワトリの抗血清の1mLあたり少なくとも4抗毒素単位(A.U.)の抗α毒素抗体を誘導するのに十分である、ワクチン。
【請求項16】
雌性トリの子孫に対して複数の家禽の疾患に対する受動免疫を提供する方法であって、該子孫を含む卵の産卵の前に該雌性トリに対して請求項13に記載のワクチンを投与する工程を包含し;該子孫が複数の疾患から受動免疫を提供される、方法。
【請求項17】
雌性トリの子孫に対してクロストリジウム感染症に対する受動免疫を提供する方法であって、該子孫を含む卵の産卵の前に該雌性トリに対して請求項1に記載のワクチンを投与する工程を包含し;該子孫が受動免疫を提供される、方法。
【請求項18】
前記トリがニワトリまたはシチメンチョウである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クロストリジウム感染症がクロストリジウム腸疾患である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記クロストリジウム腸疾患が壊死性腸炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記クロストリジウム感染症が、胆管肝炎、壊疽性皮膚炎および蜂巣炎からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ウェルシュ菌のαトキソイドワクチンを作成する方法であって:
(a)培養培地中でウェルシュ菌細胞を増殖させて、ある量の培養細胞を産生する工程であって;該量の培養細胞がウェルシュ菌のα毒素を細胞培地に分泌する工程と;
(b)該分泌されたα毒素を不活性化してウェルシュ菌のαトキソイドを産生する工程と;
(c)該培養培地から該量の培養細胞のほとんどを取り出して、ウェルシュ菌のαトキソイド上清を形成する工程と;
(d)該ワクチンの1用量あたり0.25〜0.6mLの1または2用量のいずれかを用いてワクチン接種されているトリの抗血清の1mLあたり少なくとも4抗毒素単位(A.U.)の抗α毒素抗体を誘導するのに十分であるように、該ウェルシュ菌のαトキソイド上清の濃度を調節する工程と、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記ウェルシュ菌のαトキソイド上清と油中水型エマルジョンとを混合する工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記油中水型エマルジョンが、70%の油相および30%の水相を用いて調製される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウェルシュ菌の細胞が、単一のウェルシュ菌の生物型の細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記単一のウェルシュ菌の生物型の細胞が、ウェルシュ菌のA型の細胞およびウェルシュ菌のC型の細胞からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2008−536936(P2008−536936A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507827(P2008−507827)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/014669
【国際公開番号】WO2006/113772
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503442097)シェーリング−プラウ・リミテッド (47)
【住所又は居所原語表記】Weystrasse20,Lucerne6,CH−6000,Switzerland
【Fターム(参考)】