説明

ウエットブラスト処理装置

【課題】微細な砥粒を使用できて従来にない作用効果を発揮するウエットブラスト処理装置を提供する。
【解決手段】 ワークに液体と砥粒との混合物であるスラリを圧縮空気とともに噴射するスラリ噴射装置19,20のノズル15、17において、スラリ作出部22に開口するそれぞれ複数の圧縮空気供給孔24aおよびスラリ供給孔23aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットブラスト処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワーク1に液体2と砥粒3との混合物であるスラリ4を噴射して該ワーク1の表面処理を行なうウエットブラスト処理装置(以下、従来例)が提案されている。尚、本実施例と同一構成部分には同一符号を付した。
【0003】
この従来例は、ワーク1に液体2と砥粒3との混合物であるスラリ4を圧縮空気とともに噴射するスラリ噴射部5を有する構造である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スラリ4を構成する砥粒3が微細になればなるほど、1)ワーク1への衝撃が少なく緻密な処理が行なうことができる、2)スラリ噴射部5のノズルが詰まりにくい、3)装置全体をコンパクトにできる、などの理由からより微細な砥粒3を用いたウエットブラスト処理が望まれているが、従来例は、未だスラリ噴射部5において約20μmよりも小さな砥粒3を良好に噴射させることができず、よって、約20μmよりも小さな砥粒3を使用したウエットブラスト処理は行なえないのが現状である。
【0005】
本発明者等は、上述した問題点に鑑み、種々の実験・研究を重ねた結果、従来にない作用効果を発揮する画期的なウエットブラスト処理装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
ワーク1に液体2と砥粒3との混合物であるスラリ4を圧縮空気とともに噴射するスラリ噴射部5を有するウエットブラスト処理装置であって、前記スラリ噴射部5は、スラリ供給部23から供給されるスラリ4と、圧縮空気供給部24から供給される圧縮空気とを噴射スラリ作出部22で混合しノズル15,17から噴射させる構成であり、前記スラリ供給部23は噴射スラリ作出部22に開口するスラリ供給孔23aを複数並設した構成であり、前記圧縮空気供給部24は圧縮空気供給孔24aを複数並設した構成であり、このスラリ供給孔23aのピッチと圧縮空気供給孔24aのピッチとは同一に設定されていることを特徴とするウエットブラスト処理装置に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載のウエットブラスト処理装置において、スラリ供給孔23aの径を3mm以下とするとともにスラリ供給孔23aのピッチを10mm以下とし、圧縮空気供給孔24aの径を5mm以下とするともに圧縮空気供給孔24aのピッチを10mm以下としたことを特徴とするウエットブラスト処理装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト処理装置において、前記ノズル15,17としてスリット状のノズル開口部15a,17aを有する巾広ノズルが採用され、このノズル15,17のスラリ通過孔部15b,17bはノズル開口部15a,17aの厚さの10倍以上の長さの直線部を有することを特徴とするウエットブラスト処理装置に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例で不可能とされてきた微細な砥粒を使用してのウエットブラスト処理が行なえることになるなど従来にない作用効果を発揮する画期的なウエットブラスト装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0012】
スラリ噴射部5にて液体2と砥粒3との混合物であるスラリ4を圧縮空気とともに噴射してワーク1のウエットブラスト処理が行なわれる。
【0013】
ところで、本発明は、スラリ噴射部5は、スラリ供給部23から供給されるスラリ4と、圧縮空気供給部24から供給される圧縮空気とを噴射スラリ作出部22で混合しノズル15,17から噴射させる構成であり、前記スラリ供給部23は噴射スラリ作出部22に開口するスラリ供給孔23aを複数並設した構成であり、前記圧縮空気供給部24は圧縮空気供給孔24aを複数並設した構成であり、このスラリ供給孔23aのピッチと圧縮空気供給孔24aのピッチとは同一に設定されており、このスラリ供給孔23aから供給されるスラリ4と圧縮空気供給孔24aから供給される圧縮空気とを噴射スラリ作出部22で混合したものをノズル15,17から噴射させることになる。
【0014】
その理由については不明であるが、前述した構成からスラリ4と圧縮空気との良好な混合が達成されることになり、約20μm以下の微細な砥粒3を使用したスラリ4を均一に噴射できることが確認された。
【実施例】
【0015】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施例は、ワーク1にウエットブラスト処理をするものである。
【0017】
具体的には、ボックス状の基体12にワーク搬送機構とワーク処理機構とを設けて構成されている。
【0018】
ワーク搬送機構は、図1に図示したように基体12の前後位置のワーク導入部12A及びワーク導出部12Bと、基体12の内部(後述するフィルム処理機構を構成するスラリ噴射部5、ワーク洗浄部6、仕上げ乾燥部13)夫々に、複数の回動ローラー14を配置して構成されている。
【0019】
この回動ローラー14には、所定間隔を介して対向位置に配されワーク1を挟持状態で搬送する挟持ローラー14aと、搬送されるワーク1の下方に配され該ワーク1の下面を支持する支持ローラー14bとがある。
【0020】
ワーク処理機構は、スラリ噴射部5と、ワーク洗浄部6と、仕上げ乾燥部13とで構成され、このスラリ噴射部5と、ワーク洗浄部6と、仕上げ乾燥部13は、基体12内を仕切り壁12aで区切って形成された処理空間に夫々設けられている。
【0021】
スラリ噴射部5は、図2,3,4に図示したように基体12内に形成された処理空間S1に配される第一処理部5Aと該第一処理部5Aの下流側位置に並設される第二処理部5Bとで構成され、第一処理部5Aは、ワーク1の裏面1bの側に設けられる第一ノズル15と、ワーク1の表面1aを支持する第一面材16とで構成され、第二処理部5Bは、ワーク1の表面1aの側に設けられる第二ノズル17と、ワーク1の裏面1bを支持する第二面材18とで構成されている。尚、図2に図示したようにスラリ処理部5においてワーク1はワーク搬送機構により搬送される。
【0022】
第一ノズル15及び第二ノズル17は、夫々図2,3,4に図示したようにスラリ噴出装置19,20から突設され、夫々搬送されるワーク1の巾とほぼ同じ巾のノズル開口部15a,17aを有し、このノズル開口部15a,17aからスラリ4を噴出する所謂巾広ガンタイプに構成されている。尚、この第一ノズル15及び第二ノズル17からは後述するスラリ循環部21から供給されるスラリ4が噴射される。この本実施例に係るスラリ4は、液体2としての水と砥粒3としてのアルミナとを混合してなるものである。
【0023】
従って、第一ノズル15及び第二ノズル17夫々を巾広ガンタイプとすることでワーク1に対する均一なスラリ4の噴出が行われ処理ムラが生じることを防止することができる。
【0024】
また、本実施例では、第一ノズル15及び第二ノズル17のみが基体12内に形成された処理空間S1に配され、この処理空間S1は図示省略の排気装置が接続されて常時負圧状態とされている。
【0025】
この構成は、処理空間S1を小さくすることで装置自体を可及的にコンパクトにすることができ、しかも、処理空間S1は小さく内部にスラリ6(砥粒3)が残存しにくく装置内のスラリ濃度が安定することに貢献する。
【0026】
第一面材16及び第二面材18は、夫々図2に図示したように2本の回転体25,26間に懸環される帯状体であり、この第一面材16及び第二面材18によりスラリ4が噴出されて処理されるワーク1の処理面と反対の面を面当接して支持するように構成されている。
【0027】
従って、第一ノズル15及び第二ノズル17から噴出されるスラリ4の勢いからワーク1は安定的に支持されることになり、波打つことがなく均一な処理(処理ムラの生じない処理)が行われる。後述するように単にローラーを並設しただけの場合には、該ローラー間位置においてワーク1が入り込み波打つことになってムラが生じることが懸念されるが、この点、帯状体である第一面材16及び第二面材18が面当接して支持する構成の為、ワーク1の波立ちが防止されて均一な処理が行われることになる。
【0028】
また、第一面材16と第二面材18とは、図2に図示したように側面方向から見て一部が重なり支持状態、即ち、第一面材16の先端側寄りと第二面材18の後端側寄りにおいてワーク1の所定位置の表裏面を同時に支持するように構成されている。この点においてもワーク1の波打ちを防止する安定的な支持状態が得られることになる。
【0029】
また、本実施例は、第一ノズル15及び第二ノズル17ノズルと、スラリ噴射装置19,20を、微細な砥粒3(20μm以下の砥粒)を混合したスラリ4でも均一に噴射し得る構造としている。
【0030】
即ち、第一ノズル15及び第二ノズル17ノズルは、図5に図示したようにスラリ通過孔部15b,17bはノズル開口部15a,17aの厚さ(図5中W)の10倍以上(本実施例では30倍)の長さ(図5中L)の直線部を有するように構成されている。
【0031】
この構成から、微細な砥粒3を採用した場合に不安定になり易い(周囲に広がり易い)スラリ4の安定的な直進性(まとまった状態)が得られることになる(直線部の長さが短いと、スラリ6内の砥粒3が加速されず必要とされる加工力が得られない。)。
【0032】
スラリ噴射装置19,20は、互いに同構造であり、図5に図示したように第一ノズル15及び第二ノズル17夫々の基端部が連設され、スラリ4と圧縮空気を混合して噴射スラリを作出する噴射スラリ作出部22(ミキシングチャンバー)に接続されるものであって、後述するスラリ循環部21から搬送されるスラリ4を供給するスラリ供給部23と、別回路で設けられる圧縮空気搬送部27から搬送される圧縮空気を供給する圧縮空気供給部24とで構成されている。
【0033】
スラリ供給部23は、図5,6に図示したように噴射スラリ作出部22に開口するスラリ供給孔23aを複数並設して構成されており、このスラリ供給孔23aの径を3mm以下(本実施例では1.2mm)、スラリ供給孔23aのピッチを10mm以下(本実施例では4mm)に設定している。
【0034】
20μm以下の砥粒3を採用したスラリ4の場合、スラリ4を噴射スラリ作出部22に入れる前に絞って抵抗を付けることでスラリ4の均一性を保つことができ、スラリ供給孔23aを3mmよりも大きくするとスラリ4の均一な制御が達成されなくなり、また、スラリ供給孔23aのピッチを10mmよりも広げると処理ムラが発生する。
【0035】
圧縮空気供給部24は、図5,7に図示したように噴射スラリ作出部22に開口する圧縮空気供給孔24aを複数並設して構成されており、圧縮空気供給孔24aの径を2.5mm以下(本実施例では2mm)、圧縮空気供給孔24aのピッチを10mm以下(本実施例では4mm)にして前記スラリ供給孔23aのピッチと同一となるように設定している(図8参照)。圧縮空気供給孔24aを5mmよりも大きくするとスラリ4の均一な制御が達成されなくなってしまう。前述したスラリ4と同様、圧縮空気を噴射スラリ作出部22に入れる前に絞って抵抗を付けている。
【0036】
また、本実施例では、スラリ供給孔23aの総面積は圧縮空気供給孔24aの総面積に対し2.5〜5倍の範囲となるように設定されている。
【0037】
また、本実施例では圧縮空気の導入圧は0.1MPa〜0.25MPa、スラリ4の導入圧は前記エアー圧と同一若しくは−0.08MPa程度である。この圧縮空気とスラリ4との導入圧に差を設けるのは、圧縮空気供給部24内へのスラリ4の逆流を防ぐ為であり、圧縮空気の導入圧はスラリ4の導入圧より若干高めに設定される。
【0038】
本発明者等は、前述したような第一ノズル15及び第二ノズル17ノズルと、スラリ供給部23と、圧縮空気供給部24との設定により微細な砥粒3(20μm以下の砥粒)が採用されたスラリ4を均一に噴射させることができることを確認している。
【0039】
ワーク洗浄部6は、図1に図示したように基体12内に形成された処理空間S1の下流側に位置する処理空間S2に配される第一洗浄部6Aと、処理空間S2の下流側に位置する処理空間S3に配される第二洗浄部6Bと、処理空間S3の下流側に位置する処理空間S4に配される第三洗浄部6Cと、処理空間S4の下流側に位置する処理空間S5に配される第四洗浄部6Dとで構成され、この各処理空間内に洗浄液(洗浄水)を噴出する洗浄ノズル6a,6b,6c,6dを配設して構成されている。
【0040】
第一洗浄部6Aは、後述する濃度低減処理部7から供給される洗浄液を利用して洗浄が行なわれ、第二洗浄部6B及び第三洗浄部6Cは別途設けられる洗浄液循環部28の洗浄液を用いて洗浄が行なわれ、第四洗浄部6Dは水道水を利用して洗浄が行なわれる。
【0041】
従って、このワーク洗浄部6によりスラリ噴射部5でワーク1に噴出されたスラリ4を落とす四段階洗浄処理が行われる。
【0042】
仕上げ乾燥部13は、図1,2に図示したように基体12内に形成された処理空間S6にヒーター29を配設して構成されている。
【0043】
従って、この仕上げ乾燥部13によりワーク洗浄部6での処理によってワーク1に付着している不要な水分を完全に取り除くことができることになる。
【0044】
スラリ循環部21は、図9に図示したようにスラリ4を貯留するスラリ貯留部30を設け、このスラリ貯留部30から循環ポンプ装置31を介してスラリ噴射部5にスラリ4を搬送する第一スラリ搬送部32Aを設け、スラリ噴射部5で噴射されたスラリ4及び第一洗浄部6Aで使用されたスラリ4を回収して再びスラリ貯留部30へと第二スラリ搬送部32Bを設けた構造である。符号37はポンプ装置38により内部が負圧となり第二スラリ搬送部32Bからスラリ4を引き込むスラリ引き込み部である。
【0045】
循環ポンプ装置31は、図10に図示したように駆動モータ31aとインペラー31bと吸い込み口31cを上下位置に並設した所謂縦型ポンプが採用されており、これは微細な砥粒3を採用した場合、停止した循環ポンプ装置31を再指導する際に生じる問題を解消することになる。
【0046】
即ち、循環ポンプ装置31の停止時にはスラリ4中の砥粒3が沈殿してスラリ貯留部30の底に沈殿して凝固した状態(パック状態)となってしまい、この沈殿した砥粒3は、砥粒3が微細になればなるほど硬いものとなってしまうが(砥粒3が大きければ大きいほど砥粒3同志の間に水分が入り込んで固まりにくいが、砥粒3が微細になればなるほど硬いものとなってしまう。)、この沈殿した砥粒3にインペラー31bが埋もれる構造の場合、再始動する際には沈殿した砥粒3が凝固しているとインペラー31bが回動しない場合がある。
【0047】
そこで、本実施例では、循環ポンプ装置31として吸い込み口31cに対してインペラー31bが上方に位置する縦型ポンプを採用することで、沈殿した砥粒3にインペラー31bが埋もれてしまうことが防止し、再始動の際には常にインペラー31bは良好に回動するように構成している。
【0048】
また、スラリ貯留部30には、該スラリ貯留部30の底部に沈殿した砥粒3を拡散する沈殿砥粒拡散部33が設けられている。
【0049】
この沈殿砥粒拡散部33は、図9,10に図示したように第一スラリ搬送部32Aの途中位置にして循環ポンプ装置31が設けられる位置よりも下流側位置から分岐してスラリ4の一部をスラリ貯留部30へ戻すスラリ戻し部33aを設けて構成されており、このスラリ戻し部33aの先端部に設けられるノズル33bはスラリ貯留部30内に配され、このノズル33bからスラリ貯留部30の底部へ向けてスラリ4を噴射するように構成されている。従って、スラリ4を噴射することでスラリ貯留部30の底部に沈殿した砥粒3を拡散することができる。
【0050】
また、本実施例は、スラリ4の濃度を低減することで前記ワーク洗浄部6に供給する洗浄液を作出する濃度低減処理部7が設けられている。
【0051】
この濃度低減処理部7は、図9に図示したように処理容体8A,8Bを2つ並設して構成されている。第一処理容体8aは第一スラリ循環部32Aから分岐した分岐部34に接続されている。また、第二処理容体8bは第一処理容体8aから導出された低濃度のスラリ4が導入されるスラリ貯留部35に接続される。
【0052】
この2つの第一処理容体8A及び第二処理容体8Bは、図11に図示したように同構造であり、ウレタン樹脂を筒状に成形し、下端程径小となるように構成されている。符号36は前記ポンプ装置31と同構造のポンプ装置である。
【0053】
また、第一処理容体8A及び第二処理容体8Bは、その上端部にはスラリ導入部8aが設けられており、このスラリ導入部8aから導入されたスラリ4は渦巻き流を発生しながら下方へ導かれるように構成されており(図13参照)、液体2と砥粒3とは遠心分離されて低濃度スラリ4と高濃度スラリ4が作出される。
【0054】
この低濃度スラリ4(比重の軽いスラリ4)は、第一処理容体8A及び第二処理容体8Bの上端部に設けられた第一スラリ導出部8bから導出され、高濃度スラリ4(比重の重いスラリ4)は第一処理容体8A及び第二処理容体8Bの下端部に設けられた第二スラリ導出部8cから導出される。
【0055】
また、スラリ導入部8aは、第一処理容体8A及び第二処理容体8B内にして上面に該第一処理容体8A及び第二処理容体8Bの下流側へ傾斜状となるスラリ誘導面10が形成されている。
【0056】
このスラリ誘導面10は、スラリ4の渦巻き流の発生を円滑に行うものであり、渦巻き流の発生を円滑に行なうことでスラリ4を構成する液体2と砥粒3が良好に分離されることになる。
【0057】
前述したように本実施例は2つの第一処理容体8A及び第二処理容体8Bを並設しており、第一処理容体8Aで処理され導出された低濃度スラリ4を第二処理容体8Bで処理するように構成されている。
【0058】
具体的には、第一処理容体8Aで処理された低濃度スラリ4は第二処理容体8Bへ送られ、高濃度スラリ4はスラリ貯留部30へ戻される。本実施例では、第一処理容体8Aにおいて、およそ20%濃度のスラリ4からおよそ5%濃度の低濃度スラリ4が得られた。
【0059】
第二処理容体8Bでは、第一処理容体8Aから供給されたスラリ4の分離処理が行なわれ、該第二処理容体8Bで処理された低濃度スラリ4はワーク洗浄部6に係る第一洗浄部6Aへ供給され、高濃度スラリ4はスラリ貯留部30へ戻される。本実施例では、第二処理容体8Bにおいておよそ5%濃度のスラリ4から0.5%濃度の低濃度スラリ4が得られた。
【0060】
従って、2つの第一処理容体8A及び第二処理容体8Bを複数並設して構成することで、良好な低濃度処理が行なえることになる。
【0061】
本実施例は上述のように構成したから、スラリ噴射部5にて液体2と砥粒3との混合物であるスラリ4が噴射されてワーク1のウエットブラスト処理が行なわれ、このスラリ噴射部5でウエットブラスト処理されたワーク1はワーク洗浄部6にて洗浄処理が行なわれる。
【0062】
このワーク洗浄部6には濃度低減処理部7でスラリ4から作出された洗浄液が供給されており、このスラリ4から作出された洗浄液でワーク1を洗浄する。濃度低減処理部7では、スラリ4を渦巻き流を発生させながら第一処理容体8A及び第二処理容体8B内を通過させることで液体2と砥粒3とを遠心分離して該処理容体8から低濃度スラリ4と高濃度スラリ4が排出されており、この低濃度スラリ4がワーク洗浄部6に供給されて洗浄液として使用される。
【0063】
本実施例は、第一処理容体8A及び第二処理容体8Bのスラリ導入部9には該第一処理容体8A及び第二処理容体8Bの下流側へ傾斜状となるスラリ誘導面10が形成されており、スラリ導入部9からスラリ4を導入した際、このスラリ誘導面10によりスラリ4は第一処理容体8A及び第二処理容体8Bの下流側へ誘導されることで円滑に渦巻き流が生じることになり、微細な砥粒(約20μm以下の砥粒3)が良好に分離される。
【0064】
よって、本実施例によれば、前述した従来例と異なり、微細な砥粒3でも使用することができることになる。
【0065】
また、本実施例は、処理容体8を複数設けて第一処理容体8Aで処理され導出された低濃度スラリ4を第二処理容体8Bで処理する構成としたから、スラリ4を構成する液体2と砥粒3との良好な分離が行なえることになる。
【0066】
また、本実施例は、第一処理容体8A及び第二処理容体8Bの内壁面をウレタン樹脂製としたから、砥粒3の磨耗が可及的に抑制されることになる。
【0067】
また、本実施例は、スラリ噴射部5は、スラリ供給部23から供給されるスラリ4と、圧縮空気供給部24から供給される圧縮空気とを噴射スラリ作出部22で混合してノズル15,17から噴射させる構成であり、前記スラリ供給部23は噴射スラリ作出部22に開口するスラリ供給孔23aを複数並設した構成であり、前記圧縮空気供給部24は圧縮空気供給孔24aを複数並設した構成であり、このスラリ供給孔23aのピッチと圧縮空気供給孔24aのピッチを同一に設定したから、スラリ4と圧縮空気との良好な混合が達成されることになり、微細な砥粒3(約20μm以下の砥粒)を使用したスラリ4を均一に噴射することができる。
【0068】
また、本実施例は、スラリ供給孔23aの径を1.5mm以下とするとともにスラリ供給孔23aのピッチを3mm以下とし、圧縮空気供給孔24aの径を2.5mm以下とするともに圧縮空気供給孔24aのピッチを5mm以下としたから、より一層微細な砥粒3(約20μm以下の砥粒)を使用したスラリ4を均一に噴射することができる。
【0069】
また、本実施例は、ノズル15,17としてスリット状のノズル開口部15a,17aを有する巾広ノズルが採用され、このノズル15,17のスラリ通過孔部15b,17bはノズル開口部15a,17aの厚さの10倍以上の直線部を有する構成としたから、より一層微細な砥粒3(約20μm以下の砥粒)を使用したスラリ4を均一に噴射することができる。
【0070】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施例の説明図である。
【図2】本実施例に係る要部の説明図である。
【図3】本実施例に係る要部の説明図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明図である。
【図5】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図6】本実施例に係る要部の説明図である。
【図7】本実施例に係る要部の説明図である。
【図8】本実施例に係る要部の説明図である。
【図9】本実施例の概略説明図である。
【図10】本実施例に係る要部の説明図である。
【図11】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図12】本実施例に係る要部の説明図である。
【図13】本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 ワーク
2 液体
3 砥粒
4 スラリ
5 スラリ噴射部
15 ノズル
15a ノズル開口部
15b スラリ通過孔部
17 ノズル
17a ノズル開口部
17b スラリ通過孔部
22 噴射スラリ作出部
23 スラリ供給部
23a スラリ供給孔
24 圧縮空気供給部
24a 圧縮空気供給孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに液体と砥粒との混合物であるスラリを圧縮空気とともに噴射するスラリ噴射部を有するウエットブラスト処理装置であって、前記スラリ噴射部は、スラリ供給部から供給されるスラリと、圧縮空気供給部から供給される圧縮空気とを噴射スラリ作出部で混合しノズルから噴射させる構成であり、前記スラリ供給部は噴射スラリ作出部に開口するスラリ供給孔を複数並設した構成であり、前記圧縮空気供給部は圧縮空気供給孔を複数並設した構成であり、このスラリ供給孔のピッチと圧縮空気供給孔のピッチとは同一に設定されていることを特徴とするウエットブラスト処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエットブラスト処理装置において、スラリ供給孔の径を3mm以下とするとともにスラリ供給孔のピッチを10mm以下とし、圧縮空気供給孔の径を5mm以下とするともに圧縮空気供給孔のピッチを10mm以下としたことを特徴とするウエットブラスト処理装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト処理装置において、前記ノズルとしてスリット状のノズル開口部を有する巾広ノズルが採用され、このノズルのスラリ通過孔部はノズル開口部の厚さの10倍以上の長さの直線部を有することを特徴とするウエットブラスト処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−152441(P2007−152441A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347238(P2005−347238)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(591205732)マコー株式会社 (12)