説明

ウエルトおよびその製造方法

【課題】 製造が容易で、表面が平滑化されたウエルトを得る。
【解決手段】 ウエルト10の製造においては、まず芯材13と合成樹脂材とを押出成形して中間成形体を得る。ここで、芯材13を被覆する被覆部14の外面には中空部16を介して表皮層17が形成されており、この表皮層17で被覆部14外面に形成された凹凸部が覆い隠される。次いで中間成形体18を加硫後に断面略U字状に折り曲げる。このとき、表皮層17が引き延ばされて被覆部14外面に実質的に当接する。したがって、所定長さに裁断された押出成形部11の端末11aに型成形部12を型成形する際には、中空部16aが既に閉塞された状態となっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芯材にゴム又は合成樹脂材を被覆した断面略U字状の長尺なウエルトおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車のパネル合わせ部や縁部のようなフランジ部には、帯状の金属からなる芯材にゴム又は合成樹脂材を被覆した断面略U字状のウエルトが嵌着されている。このようなウエルトの製造においては、まず芯材とゴムまたは合成樹脂材とを同時に押し出して得られた中間成形体を、加硫または冷却後にU字状に折り曲げる。この後、所定長さに裁断して得られた押出成形部の端末に、必要に応じて型成形部が一体に型成形,接続される。このようにして製造されるウエルトは、従来、芯材を被覆する押出成形部の被覆部表面に芯材を浮き彫りにした凹凸部を生じ、その外観品質を損ねるといった問題がある。
【0003】このような問題に対処すべく、例えば実開昭62−16543号公報のものでは、芯材を被覆する被覆部の外面に中空部を介在させて膜状の表皮体を一体に形成してあり、この表皮体により凹凸部が形成される被覆部外面を覆い隠すように構成されている。また、実開平3−22954号公報のものでは、中間成形体を押出成形する際に、芯材を被覆する被覆部にサブリップを形成しておき、押出直後にサブリップを被覆部の表面に圧着し、このサブリップで被覆部表面に生じる凹凸部を覆い隠すように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】実開昭62−16543号公報のものでは、中空部を有する押出成形部の端末に型成形部を型成形するときに、押出成形部の端末で開口する中空部への生地流れを阻止するために、中空部へ中子型を挿入しておくか、あるいは金型により中空部を押し潰しておく必要がある。中子型を用いた場合、型成形終了後に製品から中子型を抜き出さねばならず、その製造が煩雑になるとともに、ウエルトの外面に中子抜き用の穴を空けておく必要があるため、外観品質が低下する。一方、型成形時に中空部を押し潰す場合には、型成形後の押出成形部の外面に傷跡や段差が生じ、製品の外観品質を損ねるといった問題がある。また、このような膜状の表皮体は、押出成形時の圧力変動等に起因して波打ち状に撓み易く、製品の外観品質を損ねる虞がある。
【0005】一方、実開平3−22954号公報のものでは、冷却前の柔らかい状態にある被覆部の表面にサブリップを圧着してあるため、サブリップと被覆部とが一体化してしまい、被覆部表面に形成されている凹凸部がサブリップ表面に表出する虞がある。しかしながら、サブリップを冷却成形後に圧着することは難しく、サブリップのはがれを生じ易くなるといった問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、請求項1の発明は、芯材とゴム材又は合成樹脂材とを押出成形して得られた中間成形体を、加硫または冷却した後に断面略U字状に折り曲げて押出成形部を成形したウエルトであって、上記中間成形体が、芯材を被覆する被覆部と、この被覆部の外面に中空部を介在させて一体に形成された薄膜状の表皮層とを有し、上記中間成形体を折り曲げる工程で、上記表皮層が引き延ばされて被覆部の外面に実質的に当接するように構成したことを特徴としている。
【0007】また、請求項2の発明は、上記押出成形部の端末にゴム又は合成樹脂からなる型成形された型成形部を一体に接続したウエルトであって、上記中間成形体を折り曲げる工程で、上記中空部が実質的に閉塞されることを特徴としている。
【0008】請求項3の発明は、芯材とゴム又は合成樹脂材とを押し出して中間成形体を得る押出工程と、この中間成形体を加硫または冷却する工程と、中間成形体を断面略U字状に折り曲げる折曲工程と、中間成形体を所定長さに裁断して得られた長尺な押出成形部の端末に、ゴム又は合成樹脂からなる型成形部を一体に型成形,接続する工程と、を有し、上記中間成形体が、芯材を被覆する被覆部と、この被覆部の外面に中空部を介在させて一体に形成された薄膜状の表皮層とを有し、上記折曲工程で、上記表皮層が引き延ばされて被覆部に実質的に当接し、上記中空部が実質的に閉塞されることを特徴としている。
【0009】上記型成形部は、例えばウエルト端末部を構成するものであり、あるいは折曲するコーナー部に取り付けられるウエルトにあっては、2本の異なる押出成形部の端末同士を接続するように成形されたコーナー部を構成するものである。また、閉環状のウエルトにあっては、型成形部は一本の押出成形部の端末同士を接続するように成形される。
【0010】
【発明の効果】請求項1,3の発明によれば、押出直後の中間成形体の被覆部外面に形成された芯材の浮き出しによる凹凸部が、表皮層によって覆い隠されて外部に表出することがないので、製品としてのウエルトの外観品質が著しく向上する。
【0011】ここで、表皮層は、押出成形直後の柔らかい状態のときには中空部を介して被覆部外面と離間しており、加硫または冷却後の折曲工程で被覆部外面に実質的に当接することから、被覆部と一体化するようなことはなく、したがって被覆部外面に形成された凹凸部が表皮層の外面に影響を与えることはない。
【0012】また、表皮層は、中空部を介して薄膜状に形成されていることから、押出工程から加硫または冷却工程へと至る段階で撓むこともあるが、この後に続く折曲工程で引き延ばされて平滑化される。したがって、成形後のウエルト表面は平滑化された見栄えのよいものとなる。
【0013】さらに、請求項2,3の発明のように、押出成形部の端末に型成形部を成形する際、押出成形部の中空部が折曲工程で既に実質的に閉塞されているので、従来例のように中空部に予め中子型を挿入したり、あるいは型成形時に中空部を押し潰す必要がない。したがって、その製造が容易になるとともに、ウエルト表面に中子型抜き用の穴や傷跡,段差を生じることがなく、外観品質に優れたものとなる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の最適な実施の形態を添付図面を参照して詳述するが、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。
【0015】図1,2は、本発明の第1実施例に係わるウエルト10を示している。このウエルト10は、断面略U字状の長尺な押出成形部11の端末11aに、ウエルト端末部としての型成形部12を一体に型成形,接続した構成となっている。押出成形部11は、帯状の金属からなる芯材13と、この芯材13を被覆する合成樹脂からなる被覆部14とを有し、対向する一対の側壁部11bと基部11cとを有するチャンネル状に形成されている。チャンネル内側面には合計4本のフランジ保持リップ15が一体に突設され、そして、チャンネル外側となる被覆部14の外面には、後述する製造時の折曲工程において閉塞された中空部16aを介して薄膜状の表皮層17が一体に形成されている。
【0016】次に、ウエルト10の製造方法を図4に示す工程(ステップ)順に説明する。まずステップS1では、プリベンダー等を用いて平板状の芯材13を図3に示すように略くの字状に折り曲げる一次曲げが施される。続くステップS2では、その一次曲げした芯材13と合成樹脂材料とを図外の口金から同時に押し出して、図3に示すように被覆部14内に芯材13が埋設された中間成形体18を連続的に押出成形する。ここで、被覆部14は、チャンネル内面側にフランジ保持リップ15が突設されるとともに、外面側には扁平な中空部16を介在させた状態で薄膜状の表皮層17が一体に張り出し形成されている。
【0017】この中間成形体18は、ステップS3で冷却された後、ステップS4でベンダー等を用いた二次曲げが施されて、正確な断面略U字形状に折り曲げられ、続くステップS5で適宜な長さに裁断されて、図1に示すような断面略U字状の長尺な押出成形部11が連続的に成形される。
【0018】ここで、表皮層17は、基部11cおよび側壁部11bへと折曲するコーナー部の領域にわたって幅方向に延在しているため、ステップS4の折曲工程において、幅方向に引き延ばされて内側へシフトするように弾性変形する。この結果、表皮層17と被覆部14の外面とが実質的に当接,密着し、中空部16が実質的に閉塞,消失したものとなる(図1,2参照)。
【0019】この後、ステップS6において、周知の金型成形法によって、押出成形部11の端末11aに型成形部12が型成形されて、図1,2に示すようなウエルト10が製造される。つまり、押出成形部11の端末部を金型内にセットした状態で、金型キャビティ内に樹脂材料を供給し、冷却等の適宜な工程を経て、型成形部12が押出成形部11の端末11aに成形,接続される。
【0020】このようにして製造されるウエルト10は、被覆部14外面に形成された芯材13の浮き出しによる凹凸部19(図3)が、平滑な表皮層17によって覆い隠されているので、ウエルト10の表面が平滑化され、その外観品質が著しく向上する。なお、表皮層17は、外観品質が要求される領域に形成されており、本実施例では押出成形部11の基部11cおよび両側壁部11bへと折曲するコーナー部にわたって形成されている。
【0021】ここで、表皮層17は、ステップS2の押出成形直後の柔らかい状態のときには、中空部16を介して被覆部14外面と離間しており、ステップS3の冷却後に続くステップS4の折曲工程において被覆部14外面に当接することから、被覆部14と一体化するようなことはなく、したがって被覆部14外面に生じた凹凸部19が表皮層17の外面に影響を与えることはない。
【0022】また、ステップS2の押出工程からステップS3の冷却工程へと進む過程で、中空部16内の圧力変動等に起因して表皮層17が波打ち形状に撓むこともあるが、本実施例ではステップS4の折曲工程で表皮層17が引き延ばされるので、最終製品における表皮層17は撓みのない平滑なものとなる。
【0023】さらに、ステップS6における型成形時に、仮に押出成形部端末11aで中空部が開口していると、この中空部への生地流れを阻止するために、中空部内へ予め中子型を挿入したり、あるいは中空部を金型により押し潰す必要があり、その製造が煩雑になるとともに、成形後の押出成形部11の表面に中子抜き用の穴や中空部を押し潰した際の傷跡,段差が残り、外観品質を劣化させることになる。しかし本実施例では、ステップS4における折曲工程において押出成形部11の中空部16が実質的に閉塞されるため、ステップS6の型成形工程においては、当初から中空部16のないものと同じように型成形を行うことができる。この結果、製造が極めて容易となり、かつ、成形後の押出成形部11の表面が中子抜き用の穴や傷跡,段差のない平滑なものとなる。
【0024】図5は本発明の第2実施例に係わるウエルト20の押出成形部21を示し、図6は押出成形部21の中間成形体28を示す横断面図である。なお、以下に示す第2,3,4実施例において、上述した第1実施例で説明した構成に対応する部分にはそれぞれ10,20,30を加算した参照符号を付しており、重複する構成および作用効果の説明を適宜省略している。
【0025】第2実施例のウエルト20は、第1実施例のウエルト10に比し、その表皮層27が幅広に形成されており、具体的には表皮層27および中空部26が芯材23の存在する領域全体にわたって幅方向に延在している。このため、成形後のウエルト20にあっては、平滑な表皮層27が、芯材23の外側を囲うように押出成形部21の基部21cから両側壁部21bにわたって延在し、被覆部24表面に形成された凹凸部29を覆い隠すことから、ウエルト20の表面全体が平滑化され、外観品質が著しく向上する。
【0026】このウエルト20は、図5のステップS2〜S6と同様の工程を経て製造される。つまり第2実施例ではステップS1の芯材一次曲げ工程が省略されており、先ずステップS2で平板状の中間成形体28が押出成形される。この中間成形体28は、ステップS3で冷却された後、ステップS4における折曲工程で正確な断面略U字形に折り曲げられる。この折曲工程で、凹凸部29が形成された被覆部24表面に表皮層27が実質的に密着し、中空部26が閉塞された形となる。
【0027】このような第2実施例では、上記第1実施例と同様の効果が得られることに加え、平板状の中間成形体28をステップS4で一気に断面略U字状に折り曲げているため、その表皮層27が大きく引き延ばされ、より確実に中空部26が閉塞されるようになる。
【0028】図7は、本発明の第3実施例を示し、ここでは本実施例に係わるウエルト30aを、中空シールリップ30bを有するウエザストリップ30の取付基部として使用している。つまり、このウエザストリップ30は、ウエルト30aの互いに対向する側壁部31bの一方に中空シールリップ30bが付帯形成されている。
【0029】このようなウエザストリップ30の製造方法を図4を参照しつつ説明すると、ステップS1で芯材33をくの字状に折り曲げ、この芯材33と、ウエルト30aの被覆部34および表皮層37を形成するソリッドゴム材料と、中空シールリップ30bを形成するスポンジゴム材料とを同時に押出成形して、芯材33を覆う被覆部34の外面に中空シールリップ30bが付帯形成された中間成形体38を成形する。この中間成形体38は、続くステップS3で加硫された後、ステップS4で正確な形状に折り曲げられ、ステップS5で適宜な長さに裁断されることにより、中空シールリップ30bを備えた断面略U字状の長尺な押出成形部31が連続的に形成される。そしてステップS6では、押出成形部31の端末にソリッドゴムからなる型成形された型成形部(図示省略)が一体に接続される。
【0030】図8は、本発明の第4実施例に係わるウエルト40aを備えたウエザストリップ40を示し、この第4実施例では、第1実施例に対する第2実施例と同様、第3実施例に比して表皮層47が幅広に形成されており、具体的には芯材43が存在する領域全体にわたって幅方向に延在している。このため、成形後のウエルト40にあっては、芯材43の外側を囲うように延在する平滑な表皮層47によって、被覆部44表面に形成された凹凸部49が覆い隠されるため、ウエルト40aの表面全体が平滑化され、その外観品質が著しく向上する。
【0031】このようにウエザストリップの取付基部に使用した第3,4実施例のウエルトにおいても、その表面が平滑化されるとともに製造が容易となる等の実施例1,2と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係わるウエルトの斜視対応図。
【図2】図1のウエルトを長手方向に切断したときの断面対応図。
【図3】図1のウエルトの製造時に形成される中間成形体の横断面図。
【図4】図1のウエルトの製造工程図。
【図5】本発明の第2実施例に係わるウエルトの断面斜視図。
【図6】図5のウエルトの製造時に形成される中間成形体の横断面図。
【図7】本発明の第3実施例に係わるウエルトを備えたウエザストリップの断面斜視図。
【図8】本発明の第4実施例に係わるウエルトを備えたウエザストリップの断面斜視図。
【符号の説明】
10…ウエルト
11…押出成形部
11a…端末
12…型成形部
13…芯材
14…被覆部
16,16a…中空部
17…表皮層
18…中間成形体
19…凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芯材とゴム材又は合成樹脂材とを押出成形して得られた中間成形体を、加硫または冷却した後に断面略U字状に折り曲げて押出成形部を成形したウエルトであって、上記中間成形体が、芯材を被覆する被覆部と、この被覆部の外面に中空部を介在させて一体に形成された薄膜状の表皮層とを有し、上記中間成形体を折り曲げる工程で、上記表皮層が引き延ばされて被覆部の外面に実質的に当接するように構成したことを特徴とするウエルト。
【請求項2】 上記押出成形部の端末にゴム又は合成樹脂からなる型成形された型成形部を一体に接続したウエルトであって、上記中間成形体を折り曲げる工程で、上記中空部が実質的に閉塞されることを特徴とする請求項1に記載のウエルト。
【請求項3】 芯材とゴム又は合成樹脂材とを押し出して中間成形体を得る押出工程と、この中間成形体を加硫または冷却する工程と、中間成形体を断面略U字状に折り曲げる折曲工程と、中間成形体を所定長さに裁断して得られた長尺な押出成形部の端末に、ゴム又は合成樹脂からなる型成形部を一体に型成形,接続する工程と、を有し、上記中間成形体が、芯材を被覆する被覆部と、この被覆部の外面に中空部を介在させて一体に形成された薄膜状の表皮層とを有し、上記折曲工程で、上記表皮層が引き延ばされて被覆部に実質的に当接し、上記中空部が実質的に閉塞されることを特徴とするウエルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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