説明

ウォラストナイト微粒子の製造方法

【課題】 粉砕作業に手間をかけることなく、簡便にウォラストナイト微粒子を製造できる方法を開発すること。
【解決手段】加水分解可能な有機ケイ素化合物、好適には一般式(1)
Si(OR) (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)で示されるアルコキシシラン化合物を酸水溶液中で加水分解し、得られた加水分解物とカルシウム塩とを、アルカリ水溶液中で反応させ、析出した反応生成物微粒子を焼成させた後、解砕するウォラストナイト微粒子の製造方法であり、通常は、平均粒子径0.1μm〜10μmのβ―ウォラストナイトが製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス原料として有用なウォラストナイト微粒子を、容易に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォラストナイトは、化学式CaSiO3で示される結晶系が三斜晶系のケイ酸塩であり、セラミックス原料等として汎用されている。ウォラストナイトには、β-ウォラストナイトとα−ウォラストナイトの二種類があり、天然にはβ-ウォラストナイトが豊富に産する。
【0003】
ウォラストナイトの微粒子を用いて製造した成形体を焼成して得たセラミックスは、機械的強度、切削性、及び加工面の平滑さが非常に優れている。したがって、ウォラストナイト微粒子が必要とされており、一般には天然のウォラストナイトを粉砕・解砕して使用されている。しかし、天然のウォラストナイトを微粒子にまで粉砕するには、何段階にも分けて粉砕する必要や、特殊な粉砕装置を使用する必要であり、特にウォラストナイトは微粒子になればなるほど粘性をもつため、上記粉砕作業は場合によっては数日も要し、その製造効率を大きく低下させていた。
【0004】
また、他のウォラストナイト微粒子を得る方法として、珪藻土、珪石等からなる微粒子状のSi源、及び生石灰、炭酸カルシウム等のCa源をそれぞれ含有するスラリーを原料として、水熱合成する方法も知られている。しかし、この方法も、上記Si源について粉砕しなければならず、その作業に手間や時間がかかっていた(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−79729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、ウォラストナイト微粒子を得る従来の方法は、いずれも手間や時間がかかる粉砕作業が必要であり、このような粉砕作業に手間をかけることなく簡便にウォラストナイト微粒子を製造できる方法を開発することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記技術課題を克服すべく鋭意検討を重ねた結果、有機ケイ素化合物の加水分解物とカルシウム塩とを反応させて析出した反応生成物微粒子を焼成、解砕することにより、上記の課題が解決可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、加水分解可能な有機ケイ素化合物を酸水溶液中で加水分解し、得られた加水分解物とカルシウム塩とを、アルカリ水溶液中で反応させ、析出した反応生成物微粒子を焼成させた後、解砕することを特徴とするウォラストナイト微粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加水分解可能な有機ケイ素化合物とカルシウム塩を原料に、ウォラストナイトの前駆体となる反応生成物微粒子を得、これを焼成し、解砕する極めて簡単な方法により、ウォラストナイト微粒子を効率的に製造することができる。すなわち、製造工程中に粉砕作業がなく、上記反応生成物微粒子を焼成した後の解砕は、ウォラストナイト微粒子の凝集物を解す操作であるため、天然のウォラストナイトの粉砕や、前記水熱合成で使用する原料鉱物の粉砕よりも容易であり、短時間に実施でき工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法において、加水分解可能な有機ケイ素化合物は公知のものが制限無く使用できる。例えば、トリブチルヒドロキシシラン、トリペンチルヒドロキシシラン、トリヘキシルヒドロキシシラン、トリヘプタヒドロキシシラン、トリオクタヒドロキシシラン、トリノナヒドロキシシランに代表されるシラノール化合物;(3−アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリクロロシランに代表されるハロゲノ化シラン化合物;アリルジメチルシラン、n−オクチルシランに代表されるヒドロシラン類、ヘキサメチルジシラザンに代表されるジシラザン化合物;2−(アクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、N−3−(アクリロキシー2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシランに代表されるアルコキシシラン化合物;アリルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ビニルメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ビニルエチルシランに代表されるアミノシラン化合物等が挙げられる。その中でも、反応収率の観点や、取り扱いや、入手のしやすさから、アルコキシシラン化合物が好ましく、特に下記一般式(1)
Si(OR) (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)で示されるアルコキシシラン化合物が好ましい。ここで、Rのアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状の何れであっても良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、へプチル基、デシル基等であり、その中でも反応性の観点から、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等の炭素数が1〜4の低級アルキル基が好ましい。
【0011】
また、カルシウム塩としては、水に溶解するカルシウム塩であれば公知のものが制限無く使用できる。このようなカルシウム塩としては、25℃における水に対する溶解度は、3質量%以上が好ましく、製造効率を考慮すると、10質量%以上がより好ましい。具体的には、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、安息香酸カルシウム等の有機酸塩;硝酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の無機酸塩が挙げられる。これらのカルシウム塩は水和物であっても良い。上記カルシウム塩の中でも、得られるウォラストナイト微粒子の純度を高くできるため有機酸塩であることが好ましく、溶解度や、入手のし易さから酢酸カルシウム及びその水和物が特に好ましい。
【0012】
次に、これらの加水分解可能な有機ケイ素化合物およびカルシウム塩を製造原料に用いた、本発明の製造方法を説明する。まず、加水分解可能な有機ケイ素化合物を、酸水溶液中で加水分解する。この工程で得られる該有機ケイ素化合物の加水分解物は、シラノール化合物であり、一部加水分解されたものであれば良いが、収率や純度の観点から加水分解可能な部分は全て加水分解されているのが好ましい。なお、加水分解したシラノール化合物は、シラノール基同士で一部縮合反応していても構わない。
【0013】
この有機ケイ素化合物の加水分解は、酸水溶液中であれば進行するが、反応性を高めたり、反応を制御する観点からはpHが3〜6、さらにはpHが4〜6であることが好ましい。pHが3未満の場合は、有機ケイ素化合物の加水分解が早く進んでしまい、大部分縮合する可能性があり、pH6より大きい場合には、加水分解の進行が非常に遅くなる。
【0014】
ここで反応液を酸性とするために使用する酸性化合物は公知のものが制限なく使用でき、具体的には、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0015】
酸水溶液中における上記有機ケイ素化合物の濃度は、特に制限されるものではないが、加水分解した有機ケイ素化合物が縮合しないように比較的低い方が好ましい。ただし、この加水分解可能な有機ケイ素化合物の濃度が低すぎると酸水溶液の液量が増大し、そのままこの反応液中で後段のカルシウム塩との反応を実施すると該反応の反応効率がやや低下する。これらを考慮すると、加水分解可能な有機ケイ素化合物の濃度は、50質量%以下が好ましく、さらには5〜30質量%の範囲が特に好ましい。
【0016】
この加水分解反応の反応温度は、種々の条件によって異なり一概に限定することはできないが、通常は大気圧下0℃〜40℃が好ましく、さらには10℃〜30℃が好ましい。さらに、上記反応は、減圧下あるいは加圧下で行うこともできるが、大気圧下で十分に進行するので、大気圧下で行えばよい。反応時間は1時間〜12時間が一般的であり、反応は、攪拌下に実施するのが望ましい。
【0017】
次に、本発明の製造方法では、上記により得られた有機ケイ素化合物の加水分解物をカルシウム塩とアルカリ水溶液中で反応させる。これにより、加水分解物であるシラノール化合物とカルシウムイオンとが反応して粒成長して、ウォラストナイト微粒子の前駆体となる反応性生物微粒子(以下、「ウォラストナイト前駆体微粒子」とも称する)が析出する。この反応はアルカリ性でなければ、十分に進行せず、酸性や中性化で実施すると、通常CaOおよびCa2SiO4の混合物が得られ、目的とする微粒子は析出しない。また、反応液のアルカリ度があまり高すぎても、析出する上記微粒子の粒子径が大きくなりすぎる傾向がある。これらから、アルカリ水溶液のpHは9〜13であるのが好ましく、さらには、10〜12であるのが特に好ましい。
【0018】
この有機ケイ素化合物の加水分解物とカルシウム塩との反応は、一旦、該加水分解物を前段の反応液から分取して、新たな反応系で実施してもよいが、通常は、該加水分解反応物を得た前段の反応液をそのまま利用して実施するのが効率的である。その際の反応手順は特に指定しないが、高収率でウォラストナイト微粒子を得るためには、前記加水分解反応の反応液にカルシウム塩を配合し、この有機ケイ素化合物とカルシウム塩の混合溶液をアルカリ水溶液と混合する方法が好適である。この場合、上記有機ケイ素化合物の加水分解反応の反応液は酸性であるため、使用するアルカリ水溶液は、これらが混合された後も後述するアルカリ性が保持されるように、そのpHを十分に高くしておくのが望ましい。また、この有機ケイ素化合物とカルシウム塩の混合溶液とアルカリ水溶液との混合は、前者を後者に少量ずつ添加(通常数分〜数時間の範囲)することで実施するのが微粒子を高収率で得る観点から好ましい。
【0019】
この工程での反応において、カルシウム塩の使用量は、純度や収率を考慮すると、有機ケイ素化合物の加水分解物に対してSi/Caのモル比が0.5〜1.5になる量であることが好ましく、さらに0.8〜1.2になる量であるのがより好ましく、実質的に等モル量であるのが最も好ましい。
【0020】
反応液をアルカリ性にするために使用する塩基性化合物は、例えば水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の無機塩基が挙げられる。pHの調節のしやすさや、純度の高いウォラストナイトを合成する観点から、アンモニアが最も好ましい。
【0021】
このウォラストナイト前駆体微粒子を析出させる反応の反応温度は、種々の条件によって異なり一概に限定することはできないが、通常は大気圧下0℃〜40℃が好ましく、さらには10℃〜30℃が好ましい。さらに、上記反応は、減圧下あるいは加圧下で行うこともできるが、大気圧下で十分に進行するので、大気圧下で行えばよい。反応時間は数分〜数時間が一般的であり、反応は、攪拌下に実施するのが望ましい。
【0022】
上記説明した、前段の加水分解反応も、後段のウォラストナイト前駆体微粒子を製造する反応も、水溶液中で実施するものであるが、それぞれ必要に応じて反応を制御する目的で、有機溶媒を配合しても良い。これらの反応の反応速度は、水や原料の比に依存するため、有機溶媒により濃度を薄めることにより、反応速度を制御することが可能になる。使用できる有機溶媒は、水溶性有機溶媒であれば制限なく使用できるが、その中でもエタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類やアセトンが好ましい。
【0023】
上記反応により得られたウォラストナイト前駆体微粒子は、通常の方法により固液分離した後、焼成し解砕することでウォラストナイト微粒子が得られる。固液分離の方法としては例えば、デカンテーション、遠心分離機等で溶媒と微粒子を分離する方法や、エバポレーターで溶媒を揮発させる方法等が挙げられる。また、デカンテーションや遠心分離機で固液分離した後、常圧送風または真空で乾燥させてもよい。
【0024】
このようにして分離されたウォラストナイト前駆体微粒子の焼成温度は、700℃〜1200℃であることが好ましい。焼成温度が700℃以上でウォラストナイト生成効率が高くなる。また、焼成温度が余りに高くなると、焼成時間にも依存するが、ウォラストナイトが低温型のβ型からα型に転移し、その際に液相生成に伴う著しい粒成長を起こすため、焼成温度が1200℃以下であるのが好ましい。焼成温度は、より好ましくは800℃〜1200℃であり、特に好ましくは900℃〜1000℃である。また、焼成時間はウォラストナイト前駆体の純度や焼成温度にもよるが、通常は通常は0.3〜3時間、より好適には0.5〜2時間から採択される。
【0025】
上記焼成によりウォラストナイト微粒子の凝集体が得られる。したがって、本発明では、このウォラストナイト微粒子の凝集体を解砕する必要がある。ただし、このウォラストナイト微粒子の凝集体は、個々の粒子が円弧の接点で融着しているのみなので簡単に解すことができ、ウォラストナイトの天然鉱物を粉砕する際のような操作に長時間は要しない。解砕装置および粉砕装置として同じものを用い、同じ平均粒子径のものを得るのであれば、本発明におけるウォラストナイト微粒子の凝集体を解砕は、ウォラストナイトの天然鉱物を粉砕する場合に比べて、その操作時間を通常1/2以下に短縮することが可能である。
【0026】
解砕の方法は公知の方法が制限なく使用できる。例えば、ボールミル、マスコロイダー、ジェットミル、ロールクラッシャー、ライカイ機、ダイナミックミル、アトライタ、ハンディミル、スターミル、マイミル等が挙げられるが、この中でも粉砕エネルギーの小さい簡便な回転ボールミルを用いたとしても十分に解砕できる。この回転ボールミルを用いて解砕するのであれば、その解砕条件はミル回転数が50〜500rpm、メディア径がφ3〜15mmのアルミナボールで湿式粉砕が一般的であり、解砕時間は通常6時間〜12時間の短時間にすることができ、解砕条件の好適さによっては1時間〜4時間の短時間にすることも可能である。
【0027】
以上により製造されるウォラストナイト微粒子の平均粒子径は、通常0.1μm〜10μmであり、好適には0.5μm〜5μmであり、最も好適には1.0μm〜4.0μmである。なお、この平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した値である。
【0028】
また、このウォラストナイト微粒子は、α-ウォラストナイトであっても良いが、前記したように700℃〜1200℃の焼成温度で得られる粒子径の小さいもの(すなわち、前記0.1μm〜10μmの平均粒子径のもの)は、通常β−ウォラストナイトである。ここで、製造されるウォラストナイトの確認、及びβ-ウォラストナイトかα−ウォラストナイトかの確認は、X線解析装置により行うことができる。例えばβ-ウォラストナイトのX線回折パターンは、2θ=23℃、25℃、27℃、29℃、30℃にメインピークが現れるため、これにより確認できる。
【実施例】
【0029】
以下本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。尚、実施例、比較例において、各種物性の測定は以下の方法に従って測定した。
(1)X線分析
X線解析装置「RINT−1200」(株式会社リガク製)を用い得られた微粒子のX線回折を測定し、焼結体の結晶を同定した。
(2)粒度分布測定
レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置である「LS230」(ベックマン・コールター株式会社製)を用い得られた微粒子の平均粒径を測定した。
【0030】
実施例1
1000ccのビーカーに、水400gと20%硫酸50mlを入れ、pH=3の酸水溶液を調整した。これにテトラエトキシシラン100gを攪拌しながらゆっくり添加し、2時間加水分解反応を行った。次に、酢酸カルシウム76g(Si/Caのモル比1)を上記加水分解反応の反応液に添加し30分間攪拌した。該混合溶液を、あらかじめ用意しておいた水70gとアンモニア50mlからなるpH=10のアルカリ水溶液中に少しずつ添加したところ、白色微粒子が析出して沈殿した。遠心分離により固液分離を行い、得られた白色粉体を、株式会社モトヤマ製の電気炉「スーパーバーン」を用いて、950℃、1時間の条件で焼成した。得られた焼成物をボールミルでミル回転数が100rpm、メディア径がφ5mmのアルミナボールで湿式粉砕の条件で解砕し、39gの微粒子を得た。得られた微粒子をX線分析により同定を行ったところ、β―ウォラストナイトであった。また、粒度分布測定を行ったところ、平均粒子径が3.3μmであった。
【0031】
実施例2
実施例1において、酸水溶液をpH=5(水400gと5%硫酸20ml)、及びアルカリ水溶液をpH=11(水70gとアンモニア50ml)に変更する以外は、実施例1と同様に実施し、微粒子(46g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は、1.2μmであった。
【0032】
実施例3
実施例1において、酸水溶液をpH=5(水400gと5%硫酸20ml)、及びアルカリ水溶液をpH=12(水70gとアンモニア80ml)に変更する以外は、実施例1と同様に実施し、微粒子(42g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は、2.2μmであった。
【0033】
実施例4
実施例2において、焼成温度を950℃から1150℃に変更する以外は、実施例2と同様に実施し、微粒子(43g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は、4.1μmであった。
【0034】
実施例5〜8
実施例2において、テトラエトキシシランの仕込み量を60g、90g、110g、140gに変更する以外は、実施例2と同様に実施し、微粒子(それぞれ、39g、43g、45g、38g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径はそれぞれ3.3μm、1.5μm、1.8μm、3.2μmであった
実施例9
実施例2において、pH=3の酸水溶液を調整する際に、イソプロピルアルコール200mlを添加する以外は、実施例2と同様に実施し、微粒子(38g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は1.3μmであった。
【0035】
実施例10、11、12
実施例2において、Si源となる原料をテトラメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、及びビス(ジメチルアミノ)ビニルメチルシランに変更し、Ca源を硝酸カルシウムに変更する以外は、実施例2と同様に各実施し、微粒子(それぞれ、45g、36g、34g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径はそれぞれ2.1μm、1.3μm、及び3.5μmであった。
【0036】
実施例13
実施例1において、酸水溶液を調製するのに用いる酸性化合物を塩酸とし、該酸水溶液を水400gと塩酸4mlからなる、pH=5の液に変更する以外は、実施例1と同様に実施し、微粒子(45g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は1.8μmであった。
【0037】
実施例14
実施例1において、アルカリ水溶液を調製するのに用いる塩基性化合物を水酸化ナトリウムとし、該アルカリ水溶液を水70gと水酸化ナトリウム15gからなる、pH=11の液に変更する以外は、実施例1と同様に実施し、微粒子(45g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は2.3μmであった。
【0038】
実施例15
実施例1において、酸水溶液を、水250gと5%硫酸20mlからなるpH=5の液に変更する以外は、実施例1と同様に実施し、微粒子(41g)を得た。この微粒子はβ―ウォラストナイトであり、平均粒子径は3.9μmであった。
【0039】
比較例1
実施例1において、テトラエトキシシランの加水分解反応を、酸水溶液中ではなく、水400gとアンモニア水10mlからなるpH=9のアルカリ水溶液中で実施するように変更する以外は、実施例1と同様に実施し、微粒子(30g)を得た。この微粒子はSiO2が主であり、目的のβ―ウォラストナイトは得られなかった。
【0040】
比較例2、3
実施例1において、テトラエトキシシランの加水分解物と酢酸カルシウムとの反応を、pH=4の酸性条件下(水70gと硫酸35ml)、及びpH=7(水70g)の中性下に変更する以外は、実施例1と同様に各実施し、焼成物(それぞれ27g、31g)を得た。得られた焼成物は、いずれもCaOおよびCa2SiO4の混合物であり、目的のβ―ウォラストナイト微粒子は得られなかった。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解可能な有機ケイ素化合物を酸水溶液中で加水分解し、得られた加水分解物とカルシウム塩とを、アルカリ水溶液中で反応させ、析出した反応生成物微粒子を焼成させた後、解砕することを特徴とするウォラストナイト微粒子の製造方法。
【請求項2】
加水分解可能な有機ケイ素化合物が、下記一般式(1)
Si(OR) (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)で示されるアルコキシシラン化合物である請求項1記載のウォラストナイト微粒子の製造方法。
【請求項3】
カルシウム塩が、有機酸塩である請求項1または請求項2記載のウォラストナイト微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−42966(P2010−42966A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209726(P2008−209726)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】