説明

ウォーターサーバー

【課題】冷水が早いうちに取水でき、それに引き続いて飲料水を入れた飲料水バッグ全体の水温も比較的早く下げることが可能なウォーターサーバーを提供する。
【解決手段】外ケースの底部を切除してその開口部から給水栓を取り出し、外ケースの底部の他の開口部からは飲料水バッグの一部が露出した状態で、水収納容器を傾斜した冷却熱導体の上に装着して、給水栓を容器受け部の切欠部に挿通するとともに、対流領域規制突出部を外ケースの開口部から挿入して露出した飲料水バッグの一部と接触させ、水収納容器のセット状態で、水収納容器の給水栓がある側とは反対側の一方の底角部から給水栓側の水収納容器の他方の底角部に向けて仮想水平線を引いたとき、仮想水平線の下側を初期冷水取水水量規定領域とし、対流領域規制突出部の上面が前記仮想水平線よりも上側には突出していないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水を供給する冷水サーバーあるいは冷水・熱水サーバーなどのウォーターサーバーに係り、特に電子冷却素子(ペルチェ素子)の冷却機能を利用して少なくとも冷水を供給するウォーターサーバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料水への雑菌の侵入、繁殖を阻止するために、天然水(ミネラルウォーター)などの飲料水を柔軟性材料からなる飲料水バッグに封入して、これをダンボール箱などの外ケースに入れたバッグインボックス(Bag in Box:BIB)が使用されている。
【0003】
この柔軟性を有する飲料水バッグは、内部の飲料水の取水に合わせて飲料水バッグが収縮するため、外気が飲料水バッグ内に入らず、従って外部からの雑菌の侵入が阻止できるという特長を有している。
前記BIBを使用したウォーターサーバーに関して種々の提案がなされている。
【0004】
(従来技術1)
特開2003−206000号公報(特許文献1)には、柔軟性を有する飲料水バッグをダンボール箱などの外ケースから取り出して、ウォーターサーバーの冷却板の上に前記飲料水バッグを載置し、飲料水バッグの給水栓を前方下方に位置させて、冷却板で飲料水バッグ中の飲料水を直接冷却して、飲料水バッグから冷却水を取水するウォーターサーバーが記載されている。
【0005】
(従来技術2)
特開2008−37445号公報(特許文献2)には、冷水生成用と熱水生成用とを並設したウォーターサーバーが記載されている。
そして冷水生成用のウォーターサーバーは、正面奥側に冷却のための突起部を設けた正面ドア開閉式の冷水用容器内に、前記冷却突起部が入り込むための穴を開けたバッグインボックスを押し込み、飲料水バッグを冷却突起部に接触させて、飲料水バッグ中の飲料水を冷却し、生成した冷水を正面の冷水取水口のレバー開閉で取水する構成になっている。
【0006】
一方、熱水生成用のウォーターサーバーは、冷水用とは別のバッグインボックスを使用し、同じように正面ドア開閉式の熱水用容器内にバッグインボックスを設置し、正面ドア部に固定した給水口を下部に設置してある熱水タンクに手作業で接続して給水し、沸かした熱水を正面の熱水取水口のレバー開閉で取水する構成になっている。
【0007】
図13は、前記特許文献3に記載されているウォーターサーバーの構成図である。このウォーターサーバーは、本体100と、その上に装着されるカバー部材101とから主に構成されている。
本体100の上部中央には、熱伝導性の良い金属材料からなりドーム状をしたエバポレーター・チャンバー102が断熱材103を介してベースプレート104上に設置されている。
【0008】
エバポレーター・チャンバー102の内側中央部にはノズル105が設置され、このノズル105からエバポレーター・チャンバー102の内側中央部に向けて冷媒ガス106が噴射され、エバポレーター・チャンバー102の表面が例えば−20℃程度に冷却される。
【0009】
前記ベースプレート104上には、バッグインボックス107が載置されている。このバッグインボックス107は、飲料水108を封入した柔軟性材料からなる飲料水バッグ109と、飲料水バッグ109の周囲を覆った外ケース110から構成されている。
【0010】
図に示すように外ケース110の底部は取り除かれて開口部が形成され、その開口部からドーム状のエバポレーター・チャンバー102がバッグインボックス107内に入り込み、飲料水バッグ109と接触している。
そして前記エバポレーター・チャンバー102によりバッグインボックス107内の飲料水108を直接冷却して冷水116を生成し、冷水116は取水部111を通してコップ112に取り出される仕組みになっている。
図中の113は冷媒ガス106の回収部、114は冷媒ガス圧縮機、115は蓄圧器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−206000号公報
【特許文献2】特開2008−37445号公報
【特許文献3】特開2008−56325号公報
【特許文献4】特開2009−275933号公報
【特許文献5】特開2008−156001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記従来技術1に係るウォーターサーバーでは、飲料水バッグを入れるバック収納室が断熱されておらず、飲料水バッグも断熱効果のあるダンボール箱から出してバック収納室に入れるため、飲料水バッグの冷却効率が悪く、長時間保冷するときの電力消費量が多くて、ランニングコストが高い。
【0013】
またこのウォーターサーバーは冷水のみの生成しかできず、冷水と熱水が供給できるウォーターサーバーにするためには、冷水生成用の飲料水バッグと熱水生成用の飲料水バッグを別々に用意する必要があり、配管なども必要となるため、衛生の完全維持が難しくなる。
【0014】
前記従来技術2に係るウォーターサーバーでは、冷水生成用のウォーターサーバーと熱水生成用のウォーターサーバーが別々になっており、冷水と熱水が欲しいというニーズに対しては2台のウォーターサーバーが必要であるため、設置スペースやコストの問題がある。また、床置きなどの背の高い装置に対応する場合、転倒し易い恐れがある。
【0015】
また、冷却部が正面奥側の冷却突起物のみであり、取水によりバッグインボックス内の水位が冷却突起物より低くなった場合、水の冷却効率が極端に下がる。またこれに加えて全体の断熱に対して考慮されておらず、保冷性能が低いため、消費電力が嵩む。
【0016】
さらに熱水を得るためには、熱水用容器内に設置したバッグインボックスと熱水タンクとを外部接続して、熱水タンクに水を溜める訳であるが、前記外部接続の際に配管を手で触るため、衛生管理上好ましくない。
【0017】
前記従来技術3に係るウォーターサーバーの場合も、バッグインボックス全体の断熱に関しては考慮されておらず、冷却効率が悪く、長時間保冷するときの電力消費量が多くて、ランニングコストが高い。
またこのバッグインボックスは冷水のみの生成しかできず、冷水と熱水が供給できるウォーターサーバーにするためには、熱水生成用に別のバッグインボックスを用意する必要がある。
【0018】
前記従来技術4に係るウォーターサーバーの場合、バッグインボックスの他に冷水タンクと熱水タンクを設けているため、全体的に大型化し、大きな設置スペースが必要であり、構造が複雑で、重量が重く、製造コストが高い。
【0019】
また冷水タンク内を加熱除菌する際に、先ず冷水タンク内の冷水を排出し、熱水タンクで生成した熱水を冷水タンク内に充満してタンク内全体の加熱除菌を行ない、除菌後には冷水タンク内の処理済み熱水を排出して、新しい飲料水を冷水タンク内に充満する必要があり、除菌が終了するまでに長時間(例えば5〜6時間程度)かかり、しかも消費電力も嵩むという問題がある。
【0020】
このように従来技術においては、冷水が速く取水できるという点に注力されているが、効率の良い保冷に関しては殆ど考慮されておらず、従って消費電力のロスが大きく、ランニングコストが高い。
【0021】
また、冷水のみの取水には簡便な構成となっているが、冷水と熱水の両方を取水する場合、冷水の取水系統を熱水で除菌・クリーニングする場合などについては十分な対策がなされていないという課題がある。
【0022】
前記図13に示すウォーターサーバーはバッグインボックス107内の水の一部を−20℃の冷媒ガス106を用いて短時間に冷却して冷水を得ることを目的としている。そのため前述のように、−20℃の冷媒ガス106を流すエバポレーター・チャンバー102により、バッグインボックス107内の飲料水108を直接冷却することで、短時間で冷水116にしている。
【0023】
前記ノズル105の内部に温度センサーを設置して冷媒ガス106の温度を検出し、冷媒ガス圧縮機114の駆動制御により水温を5〜10℃に温度制御している。エバポレーター・チャンバー102の高さ以下の水域が早く冷却される範囲となっており、実施例によればその水域の水量は500〜1000CCとなっている。
【0024】
ところでこのウォーターサーバーでは、従来のコンプレッサー式ウォーターサーバー以上に、制御温度が−20℃という極低温で、水の凍結を簡単に生じさせる温度領域となっている。また一般の圧縮機冷凍機の制御はON/OFFで温度制御を行うために温度制御の精度が悪く、温度幅が大きくなり、シャープな温度制御ができない。
【0025】
また、水温の直接計測も行なっていないため、さらに凍結を起こし易い条件となっている。さらに、断熱を確実に行なうと飲料水が凍結してしまうため、バッグインボックス107を簡単なカバーで覆っている程度である。生成した冷水が一部凍結すると、希望している温度よりも低い冷水116となるばかりでなく、取水系統が詰まって取水がスムーズに行なわれない。
【0026】
このようなことから、凍結を起こさずにバッグインボックス107内の全体の飲料水108を冷水にすることは難しい。また全体を冷水温度にしても、内部で−20℃の冷媒ガス106を循環しているため、周囲を断熱することができず、そのために保冷効率が非常に悪い。
【0027】
本発明の目的は、ウォーターサーバーを起動して冷水が早いうちに取水でき、それに引き続いて飲料水を入れた飲料水バッグ全体の水温も比較的早く下げることが可能で、しかも消費電力の低減が図れるウォーターサーバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記目的を達成するため、本発明は、中に飲料水を入れて、底部に給水栓を有する柔軟性の飲料水バッグを少なくとも備えた水収納容器を格納する容器格納部と、
前記飲料水バッグ中の飲料水を冷却する電子冷却ユニットを備えて、
前記電子冷却ユニットで冷却生成された前記飲料水バッグ中の冷水を取り出すことのできるウォーターサーバーを対象とするものである。
【0029】
そして本発明の第1の手段は、
前記電子冷却ユニットが、一方の端部に前記給水栓が挿通する切欠部を有する板状の容器受け部と、その容器受け部の上に設けられた対流領域規制突出部を有する熱導電性の良好な金属からなる冷却熱導体を有し、
その冷却熱導体はウォーターサーバー本体内で前記給水栓が挿通する切欠部を有する側が低くなるように傾斜して設置され、
その冷却熱導体の上に前記水収納容器を装着して、前記給水栓を容器受け部の切欠部に挿通するとともに、前記対流領域規制突出部を前記飲料水バッグの一部と接触させ、
その水収納容器の装着状態において、当該水収納容器の給水栓が付設されている側とは反対側の高位置にある一方の底角部から給水栓が付設されている側の低位置にある水収納容器の他方の底角部に向けて仮想水平線を引いたときに、その仮想水平線の下側を初期冷水取水水量規定領域とし、前記対流領域規制突出部の上面が前記仮想水平線よりも上側には突出していないことを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記水収納容器が、前記飲料水バッグと、その飲料水バッグの外周を覆う断熱性の外ケースからなり、
前記外ケースの底部を切除してその開口部分から前記給水栓を取り出すとともに、外ケースの底部の他の開口部分からは前記飲料水バッグの一部が露出した状態で、当該水収納容器を前記冷却熱導体の上に装着して、前記給水栓を容器受け部の切欠部に挿通するとともに、前記対流領域規制突出部を外ケースの開口部分から挿入して露出した前記飲料水バッグの一部と接触させることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第3の手段は前記第1の手段において、
前記冷却熱導体の上に装着する水収納容器が前記飲料水バッグ単体からなり、
その飲料水バッグの底部を、前記容器受け部から前記対流領域規制突出部にかけて接触させることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、
前記冷却熱導体の上に装着された前記水収納容器の給水栓に接続する3方取水管と、
ヒーターを有する熱水タンクと、
途中に第1の2方電磁弁を有し、前記3方取水管の一方の出口と前記熱水タンクを接続する給水配管と、
出口側に冷水取水コックを接続した冷水取水電磁弁を有し、前記3方取水管の他方の出口に接続された冷水配管と、
出口側に熱水取水コックを接続した熱水取水電磁弁を有し、前記熱水タンクに接続された熱水配管と、
その熱水配管の途中に設けられたポンプと、
途中に第2の2方電磁弁を有し、前記冷水取水電磁弁と熱水取水電磁弁を接続する連絡管を備え、
除菌時に前記ポンプを駆動して、前記熱水タンク中の熱水を汲み上げて、その熱水を前記熱水配管、熱水取水電磁弁、連絡管、第2の2方電磁弁、冷水取水電磁弁、冷水配管、3方取水管、給水配管ならびに第1の2方電磁弁の順に通して前記熱水タンクに戻すようにして、前記熱水を循環させる構成になっていることを特徴とするものである。
【0033】
本発明の第5の手段は、
中に飲料水を入れて、底部に給水栓を有する柔軟性の飲料水バッグを少なくとも備えた水収納容器を格納する容器格納部と、
その容器格納部の底部に設置されて前記飲料水バッグ中の飲料水を冷却する電子冷却ユニットを備えて、
前記電子冷却ユニットで冷却生成された前記飲料水バッグ中の冷水を取り出すことのできるウォーターサーバーにおいて、
前記電子冷却ユニットが熱導電性の良好な金属からなる冷却熱導体を有し、
その冷却熱導体は、第1平面部と、第2平面部と、前記第1平面部と第2平面部を連結するコーナ部とから構成された断面形状がほぼV字形をしており、
前記第1平面部の底部側に前記電子冷却ユニットが取り付けられており、
前記冷却熱導体の内側に第1平面部と第2平面部によって囲まれた初期冷水取水水量規定領域が形成されることを特徴とするものである。
【0034】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、
前記第2平面部側に冷水取水口が設けられていることを特徴とするものである。
【0035】
本発明の第7の手段は前記第1または5の手段において、
前記冷却熱導体の表面温度あるいは前記冷却熱導体近傍の水温を検出する温度センサーと、
その温度センサーからの検出信号に基づいて、前記電子冷却ユニットへ供給する電力を通常運転モードの1次電力からその1次電力よりも少ない2次電力に切り替える制御部を備え、
その制御部で設定されている前記1次電力を前記電子冷却ユニットに供給して前記飲料水の冷却を行い、
前記温度センサーからの検出信号が前記飲料水の凍結を予測する基準値よりも下がると、
前記制御部によって、前記電子冷却ユニットへ供給する電力を前記1次電力から2次電力に切り替えて前記飲料水の冷却を続行する構成になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明は前述のような構成になっており、ウォーターサーバーを起動して冷水が早いうちに取水でき、それに引き続いて飲料水を入れた飲料水バッグ全体の水温も比較的早く下げることが可能で、しかも消費電力の低減が図れるウォーターサーバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に係るウォーターサーバーの概略構成図である。
【図2】本実施例に用いられる板状冷却熱導体の斜視図である。
【図3】そのウォーターサーバーの要部拡大断面図である。
【図4】本実施例においてウォーターサーバーに装着する前の水収納容器の底面図である。
【図5】そのウォーターサーバーにおいて、冷水あるいは熱水の取水動作を説明するための図である。
【図6】そのウォーターサーバーにおいて、熱水による各部位の除菌・クリーニング動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例に係るウォーターサーバーで飲料水を冷却した際の各部の温度変化を示す特性図である。
【図8】比較品のウォーターサーバーで飲料水を冷却した際の各部の温度変化を示す特性図である。
【図9】本実施例に係るウォーターサーバーの底面冷却と水収納容器内の各位置の水温変化を示す特性図である。
【図10】本発明の他の実施例に係るウォーターサーバーの概略構成図である。
【図11】本発明のさらに他の実施例に係るウォーターサーバーの要部拡大断面図である。
【図12】そのウォーターサーバーに用いる冷却熱導体の斜視図である。
【図13】従来提案されたウォーターサーバーの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。
(ウォーターサーバーの概略構成)
まず、図1を用いて本発明の実施例に係るウォーターサーバーの概略構成について説明する。
【0039】
本実施例に係るウォーターサーバーは図に示すように、上方が開放した容器装着部1と、その容器装着部1の上部に着脱可能に装着される上カバー部材2とを有し、両者で容器格納部3を構成している。この容器格納部3(容器装着部1、カバー部材2)の外周部には例えば真空断熱などの断熱構造が施されており、容器格納部3の内部に箱型の収納空間部4が形成される。
【0040】
前記収納空間部4には、バッグインボックス(BIB)型の水収納容器5が収納・装着される。この水収納容器5は、フレキシブル性を有する例えばポリエチレンやビニール樹脂等の合成樹脂製の密閉袋からなる飲料水バッグ6と、その飲料水バッグ6の外周を保護する例えばダンボール箱などの外ケース7とから構成されており、飲料水バッグ6の中にはミネラルウォーターなどの飲料水8が充填されている。
【0041】
この水収納容器5の底部には前記飲料水バッグ6に取り付けられた合成樹脂製の給水栓9が設けられており、この給水栓9は図に示すように外ケース7から外側に取り出せるようになっている。
【0042】
前記容器装着部1の内側底部には、図2に示すような板状冷却熱導体10が設置されている。この冷却熱導体10は例えばアルミニウムや銅などの熱伝導性の良好な金属からなり、板状の容器受け部11と、その容器受け部11の上に設けられた上面がフラットで断面形状が台形の対流領域規制突出部12とを備えている。
【0043】
本実施例の場合、前記容器受け部11の板厚tは1.5mm〜5.0mm、前記対流領域規制突出部12の高さHは10mm〜20mmである。また前記容器受け部11は、水収納容器5の底面積とほぼ等しいかあるいは若干狭い面積を有している。
【0044】
本実施例では容器受け板状部11と対流領域規制突出部12を別部材で構成したが、容器受け板状部11と対流領域規制突出部12を連続した一体物で構成することもできる。
【0045】
図2に示すよう、この冷却熱導体10の前記対流領域規制突出部12が設けられている側の端部とは反対側の端部には、前記給水栓9を固定するために一段と低くなった平面形状がほぼU字形をした係合段部13が設けられ、その係合段部13の底部中央には切欠き状の挿入溝13aが形成されている。
【0046】
この冷却熱導体10は図3に示すように、前記係合段部13側が低くなるように傾斜しており、この板状冷却熱導体10の傾斜角度θ1は10°以下、好ましくは5°以下に設定されている。
【0047】
図3に示すように容器受け部11の係合段部13の下方には、取水ノズル14を上方に突出した3方取水管15が設置されている。給水栓9を外ケース7から外側に取り出した状態で水収納容器5を容器装着部1内に挿入すると、前記取水ノズル14が給水栓9内に差し込まれて、取水ノズル14の先端部が水収納容器5の内側に到達する。前記3方取水管15の周囲も保冷のために、真空断熱などの断熱手段16が施されている。
【0048】
前記3方取水管15の一方の出口側には給水配管17が接続され、この給水配管17は途中に第1の2方電磁弁18を有し、熱水タンク19に接続されている。熱水タンク19にはヒーター20が付設されており、図示していないが熱水タンク19の外周部にも例えば真空断熱などの断熱手段が施されている。
【0049】
熱水タンク19には、途中にポンプ21を有する熱水配管22が接続されており、熱水配管22の先端部は常閉電磁弁からなる熱水取水電磁弁23を介して熱水取水管24に接続されている。熱水取水管24の先端部には、熱水コック25が設けられている。
【0050】
本実施例では、熱水取水電磁弁23と熱水コック25が熱水取水管24を介して接続されているが、熱水取水電磁弁23の出口側に熱水コック25を直接接続することもできる。
【0051】
前記3方取水管15の他方の出口側には冷水配管26が接続され、冷水配管26の先端部は常閉電磁弁からなる冷水取水電磁弁27を介して冷水取水管28に接続されている。冷水取水管28の先端部には、冷水コック29が設けられている。この冷水コック29と前記熱水コック25は、ウォーターサーバーの前面に面して配置されている。
【0052】
本実施例では、冷水取水電磁弁27と冷水コック29が冷水取水管28を介して接続されているが、冷水取水電磁弁27の出口側に冷水コック29を直接接続することもできる。
前記熱水取水電磁弁23と冷水取水電磁弁27の間は、途中に常閉電磁弁からなる第2の2方電磁弁30を有する連絡管31で接続されている。
【0053】
図に示すように、冷水配管26、冷水取水電磁弁27、冷水取水管28ならびに冷水コック29からなる冷水供給系統は、水収納容器5よりも下方に設置されている。
【0054】
前記冷却熱導体10の対流領域規制突出部12と対向する下面には電子冷却素子32がビス止めで密着され、その電子冷却素子32の下面にはフィン構造を有する放熱熱導体33が密着され、さらに放熱熱導体33の下方には放熱ファン34が配置されている。前記冷却熱導体10、電子冷却素子32、放熱熱導体33ならびに放熱ファン34で電子冷却ユニット41が構成されている。
【0055】
また図1ならびに図3に示すように冷却熱導体10の一部(本実施例では容器受け部11の下面)には、冷却熱導体10の表面温度を検出するための温度センサー42が取り付けられている。本実施例では温度センサー42を容器受け部11の下面に取り付けたが、前記対流領域規制突出部12の内側に埋め込むこともできる。
【0056】
前記ヒーター20、電子冷却素子32、放熱ファン34ならびに温度センサー42などは制御部35に接続されている。なお、図1中の符号43は、前記放熱ファン34から放熱熱導体33側に向けて延びた送風ガイド部材である。
【0057】
(冷水あるいは熱水の取水動作)
次にこのウォーターサーバーの冷水あるいは熱水の取水動作について図4ならびに図5を用いて説明する。
【0058】
図4は、本実施例においてウォーターサーバーに装着する前の水収納容器5の底面図である。同図に示すように、外ケース7の底部に相当する側の所定位置(給水栓9がある位置)をミシン目(図示せず)に沿って円形に切除して給水栓9よりも広い第1開口部36を形成し、外ケース7の内側から給水栓9を引き出すことができる。
【0059】
また外ケース7の前記対流領域規制突出部12と対向する位置に設けられているミシン目(図示せず)に沿って四角形に切除することにより、比較的面積の広い第2開口部37を形成する。前記開口部36,37内の斜線は開口部36,37から露出した飲料水バッグ6の部分を示している。
【0060】
本実施例では外ケース7を構成するダンボール素材の継ぎ目部44が外ケース7の前記開口部36,37の間にくる関係上、第1開口部36と第2開口部37を離して別々に形成したが、継ぎ目部44が底部にない外ケース7を使用する場合は、外ケース7の底部に相当する所に大きな開口部を1つ形成して、その開口部から給水栓9を取り出すとともに、飲料水バッグ6の底部の一部を露出することも可能である。
【0061】
上カバー部材2を開いて、前記開口部36,37が形成された面を下側にして水収納容器5を冷却熱導体10の上に載置すれば、図3に示すように前記給水栓9の内側を取水ノズル14が貫通して、取水ノズル14の先端部が水収納容器5の内側底部から若干突出する。また、給水栓9は冷却熱導体10の係合段部13(図2参照)によって取り囲まれて固定されている。
【0062】
さらに、対流領域規制突出部12が第2開口部37(図4参照)から挿入されて、図3に示すように飲料水バッグ3の底部の一部を若干押し上げた状態となる。飲料水バッグ3は柔軟性(フレキシブル性)を有しているため、対流領域規制突出部12が押し込まれても破られる心配はない。
【0063】
なお、本実施例では対流領域規制突出部12が第2開口部37(外ケース7)からケース内側に若干突出しているが、対流領域規制突出部12の上面が外ケース7の内面と略面一であってもよい。
【0064】
飲料水バッグ6は柔軟性(フレキシブル性)を有しており、しかも飲料水バッグ6内の水圧が作用して、飲料水バッグ6の一部が対流領域規制突出部12と良好に密着する。
【0065】
図3に示されているように、冷却熱導体10はウォーターサーバーの前面側に向って若干傾斜しているため、水収納容器5は容器格納部3内で若干ウォーターサーバーの前面側に傾いた状態にセットされる。
【0066】
この水収納容器5のセット状態において、同図に示すように、水収納容器5の給水栓9が付設されている側とは反対側(ウォーターサーバーの後面側)の高位置にある一方の底角部45aから給水栓9が付設されている側の低位置にある水収納容器5の他方の底角部45bに向けて仮想水平線46を引いたときに、その仮想水平線46の下側に断面形状が略三角形の初期冷水取水水量規定領域47が形成され、傾斜による溜りとなっている。
【0067】
この初期冷水取水水量規定領域47は、水収納容器5内に保有されている飲料水8の中で、いち早く冷水を生成する領域を特定したもので、水収納容器5の底部に設定されている。
【0068】
この水収納容器5の底部は、水収納容器5の底面とほぼ同じ冷却面積を有する板状の容器受け部11と、その容器受け部11から突出して第2開口部37から内側に入り込んだ対流領域規制突出部12とにより冷却される。図3に示すように、給水栓9を外ケース7から取り出した際に、その給水栓9に連結されている飲料水バッグ6の部分も第1開口部36側に引き出されて、容器受け部11の一部(係合段部13)と近接対向し、第1開口部36を通しての冷却に大きく関与している。
【0069】
前記対流領域規制突出部12の上面は、仮想水平線46よりも上側には突出していない。図13に示すようにエバポレーター・チャンバー102の突出量を長くすると、冷却時の対流領域が必然的に大きくなり、すなわち初期冷却の対象となる水量が多くなり、そのため初期に冷水が得られるまでの時間が長くかかり、いち早く冷水を取水したいというニーズに応えることができない。
【0070】
前記初期冷水取水水量規定領域47の水量、すなわち初期に取水できる冷水の量は、本実施例では例えば500〜700CCとなっている。
水収納容器5の装着が終了すると、上カバー部材2を閉じて収納空間部4を密閉する。後述するように水収納容器5は前記電子冷却ユニット41によって直接冷却して低温状態に保持され、その低温状態は容器装着部1、上カバー部材2ならびにその内側にある外ケース7の断熱効果により長期間良好に保持される。
【0071】
前記水収納容器5の装着が終了すると、自動的に第1の2方電磁弁18が開き、水収納容器5内の飲料水8が給水配管17を通って熱水タンク19へ供給される。所定の水位レベルになると熱水タンク19に付設されている水位センサー(図示せず)の検出信号により第1の2方電磁弁18が閉じて、熱水タンク19への給水が自動的に停止する。
【0072】
本実施例では熱水タンク19に水位センサーを設けて熱水タンク19への自動給水を行なったが、手動で電磁弁18,23を開いて水収納容器5の飲料水8を熱水タンク19へ供給し、熱水タンク19が満水になって、飲料水8の一部が熱水コック25から出たことを確認して、前記電磁弁18,23を閉じるようにしてもよい。
【0073】
その後、前記電源制御部35からの駆動信号によりヒーター20、電子冷却素子32ならびに放熱ファン34に給電がなされ、水収納容器5内の飲料水8の冷却と、熱水タンク19内の水の加熱が開始される。
【0074】
水収納容器5内および熱水タンク19内の水が所定温度になった後、操作パネル上の冷水取水スイッチ(図示せず)を押すと、冷水取水電磁弁27が開き、水収納容器5の底部にある例えば10℃以下の冷水38が、その自重と水収納容器5内の水圧により、矢印で示すように冷水配管26→冷水取水電磁弁27→冷水取水管28を通って冷水コック29から取り出される。
【0075】
また、操作パネル上の熱水取水スイッチ(図示せず)を押すと、熱水取水電磁弁23が開き、ポンプ21が駆動して、熱水タンク19内の例えば90℃にセットされた熱水39を汲み上げて、矢印で示すように熱水配管22→熱水取水電磁弁23→熱水取水管24を通って熱水コック25から取り出される。
【0076】
熱水39の取り出しによって熱水タンク19内の熱水量が少なくなると、前記水位センサー(図示せず)がそれを検出して、第1の2方電磁弁18が開き、熱水タンク19への給水が開始され、所定の水位レベルになると自動的に停止する。
【0077】
なお、冷水38ならびに熱水39の取水が可能な状態のときには、冷水38が前記熱水供給系統に流れたり、あるいは反対に熱水39が前記冷水供給系統に流れたりしないように、第2の2方電磁弁30は閉じている。
【0078】
(熱水による除菌とクリーニング動作)
図6は、熱水による除菌とクリーニング動作を説明するための図である。ウォーターサーバー内の通水経路を常に衛生的に維持するために、熱水39の循環による除菌とクリーニングが行われる。この熱水39による除菌・クリーニング動作は予めプログラムされており、例えば1日1回程度実行される。
【0079】
除菌・クリーニングの動作プログラムが起動すると、ヒーター20が所定時間(本実施例では3分間)ONになり、熱水タンク19内の熱水39を再沸騰する。次に第2の2方電磁弁30を開き、ポンプ21を駆動する。
【0080】
熱水取水電磁弁23と冷水取水電磁弁27は常閉電磁弁で、弁出口側は閉じているから、熱水タンク19内の熱水39は矢印で示すように、熱水タンク19→熱水配管22→熱水取水電磁弁23→連絡管31→第2の2方電磁弁30→冷水取水電磁弁27→冷水配管26→3方取水管15→給水配管17→第1の2方電磁弁18→熱水タンク19の順に流通する。
【0081】
この熱水39の循環を所定時間(本実施例では5分間)実行し、その後第2の2方電磁弁30を閉じ、ポンプ21の駆動を停止して、熱水39による除菌とクリーニング動作を終了する。
【0082】
本実施例では熱水39による除菌とクリーニング動作を自動的に行なったが、使用者がクリーニングスイッチを手動で押して、熱水39による除菌とクリーニング動作を行なうように構成することもできる。
【0083】
サイズが200mm×200mmで板厚tが3mmの容器受け部11上に、サイズが80mm×160mmで厚さHが10mmの対流領域規制突出部12を取り付けた冷却熱導体10を4°傾斜して設置したウォーターサーバーに、底面サイズが240mm×240mmで外ケース7(ダンボール箱)の厚さが約10mmの水収納容器5(収納容量10L)を搭載した本実施例のウォーターサーバーで冷却した場合の、各部の温度変化を測定した結果を図7に示す。
【0084】
また、対流領域規制突出部12の厚さHを30mm(本実施例の3倍)とした点と、冷却熱導体10を水平に設置した点以外は、前記本実施例と同じ条件のウォーターサーバー(比較品)で冷却した場合の、各部の温度変化を測定した結果を図8に示す。
【0085】
なお、ウォーターサーバーが予め冷却されている状態のところに水収納容器5(BIB)をセットして、冷却時間の経過と共に各部の温度変化を測定した。図中の各記号は次の測定点の温度を示している。
TC1:電子冷却ユニット41の冷却温度
TC2:冷却熱導体10の表面温度
TW1:飲料水バッグ6の内側底面から1cm上方の位置における水温
TW2:飲料水バッグ6の内側底面から14cm上方の位置における水温
【0086】
本実施例に係るウォーターサーバーは、冷却熱導体10を若干傾斜することにより、ある限られた初期冷水取水量規定領域47という溜りを形成し、その初期冷水取水量規定領域47(溜り)から上方に突出しないように、対流領域規制突出部12が設置されており、より具体的には、冷却熱導体10の傾斜角度θ1、対流領域規制突出部12の位置、ならびに対流領域規制突出部12の高さHが設定されている。
【0087】
そしてこの対流領域規制突出部12と給水栓9側まで延びている広い面積を有する容器受け部11(特に給水栓9を取り囲む係合段部13)の共働により、前述の限られた初期冷水取水量規定領域47内で早期に対流48(図3参照)を起こすことができる。
【0088】
そのため図7から明らかなように、初期冷水取水量規制領域47内に入っているTW1の温度が冷却の開始とともに急激に降下し、冷却開始後30分で約11℃と、図8の比較品と比べると低く、さらに60分後では8℃程度の冷水となり、180分を経過するとTW1の温度は対流48が活発に起こり、対流48の領域が徐々に拡大成長する4℃台の冷水となっている。
【0089】
この対流48の拡大成長は、比較的高い所のTW2の温度が240分を経過すると23℃以下になっていることからも窺うことができる。
これに対して比較品は、対流領域規制突出部12の高さHが高く、対流が起こり得る対象領域が対流領域規制突出部12の高さまで拡がっており、初期から冷却すべき水量が多い。
【0090】
そのため図8から明らかなように、冷却を開始してからのTW1の温度降下は緩やかであり、冷却開始後30分では約15℃あり、本実施例に係るウォーターサーバーよりも約4℃高い。さらに60分経過後でもTW1の温度は11℃を超えており冷水とは言い難く、対流が起こり得る対象領域内の水温はまだ高い。90分を経過するとTW1の温度は初めて10℃以下となり、対流が活発に起こり得る時間帯は240分経過後である。
【0091】
このように対流の生成が遅いことから、比較的高い所のTW2の温度降下も遅く、本実施例に係るウォーターサーバーでは30分経過後にTW2の温度は23.5℃であるのに対して、比較品はTW2の温度が同温になるためには240分かかる。
【0092】
図9は、本実施例に係るウォーターサーバーの底面冷却と水収納容器5内の各位置の水温変化を示す特性図である。
【0093】
図中のTC2は冷却熱導体10の表面温度で、図3に示す温度センサー42によって検出される温度である。またTW1〜TW4は水収納容器5内の各位置での測定点を表しており、TW1は水収納容器5の底部に最も近い位置で、それからTW2,TW3,TW4に行くに従って水収納容器5の底部から上方に向けて垂直方向に離れており、TW4は水面近くを示している。なお、この図9に示すTW1,TW2と図7に示すTW1,TW2は位置が異なっている。
【0094】
電子冷却ユニット41に予め設定されている通常運転モードの1次電力を投入して、ウォーターサーバーを冷却状態にしておく。このときのTC2は−0.5℃であった。この冷却状態を維持したままウォーターサーバー内に水収納容器5(BIB)をセットすると、TC2は一時的には上昇するが、直ちに降下を開始し、水収納容器5の底部に最も近い位置であるTW1の水温が約4℃まで下がる少し前にTC2は約0℃まで下がる。
【0095】
引き続き電子冷却ユニット41に所定の1次電力を投入して冷却を継続していくと、TW2,TW3,TW4の順で各測定点の水温は約4℃まで下がり、このテストではTW4の水温が約4℃までに到達するのに約240分経過している。
【0096】
このようにTW1,TW2,TW3,TW4の順で各測定点の水温が約4℃まで下がり、その水温が略4℃に維持されている。また、その間TC2は約0℃に保たれていることは、水収納容器5(BIB)内で対流領域が徐々に上方へ向かって拡大成長していることを意味している。
【0097】
TW4の水温が約4℃までに到達すると、すなわち、水収納容器5(BIB)内の飲料水8の全体が約4℃まで下がると、比較的短時間後にTC2は温度降下を開始し(図中の丸印部分参照)、それに伴いTW1〜TW4の温度も再び降下し、0℃で凍結が起こり、この凍結により各種トラブルが発生する。
【0098】
そこで本発明では、冷却熱導体10に付設した温度センサー42からの検出信号を常時制御部35(図1参照)に入力してTC2の変化を監視しておき、TC2が前述のように対流が生成・成長しているときの基準値(本実施例では0℃)よりも下がると、水収納容器5(BIB)内で凍結が起こることを予測して、電子冷却ユニット41に投入する電力を今までの1次電力よりも少ない予め設定されている2次電力に切り替えて、その2次電力で飲料水8の冷却を続行する制御を行う。
【0099】
この2次電力への切り替えで電子冷却ユニット41に投入する電力が今までよりも少なくなり、電子冷却ユニット41の冷却効果が若干減少し、そのためにTC2は図中丸印内に点線で示しているように例えば2〜3℃まで上昇し、その温度を維持する。この温度上昇に伴ってTW1〜TW4の温度降下が停止し、飲料水8の凍結が未然に防止できるシステムになっている。
【0100】
図10は、本発明の他の実施例に係るウォーターサーバーの概略構成図である。この実施例で図1に示す前記実施例と相違する点は、外ケース7から飲料水バッグ6を完全に取り出して、飲料水バッグ6のみをウォーターサーバーの収納空間部3に装着した点である。
【0101】
同図に示すように、飲料水バッグ6の底面は板状の容器受け部11と対流領域規制突出部12の全面にわたって接触しているため、飲料水8の冷却効率が良好である。
【0102】
前記実施例では、上方に向けて開口した容器装着部1と、その容器装着部1の上方開口部を開閉する上カバー部材2で容器格納部3を構成したが、前面が開口した容器装着部と、その容器装着部の前面開口部に開閉可能に設けられたドア部材とで容器格納部を構成することもできる。
【0103】
この前面開口部から水収納容器を挿入するウォーターサーバーの場合、対流領域規制突出部の前面傾斜部40(図2,3参照)が、水収納容器の挿入ガイド部として機能する。
【0104】
前記実施例では、冷水配管26と冷水取水管28の間に常閉電磁弁からなる冷水取水電磁弁27を設け、熱水配管22と熱水取水管24の間に常閉電磁弁からなる熱水取水電磁弁23を設けて、さらに熱水取水電磁弁23と冷水取水電磁弁27の間を途中に第2の2方電磁弁30を有する連絡管31で接続した。
【0105】
これ以外に、冷水配管26と冷水取水管28の間に3方電磁弁からなる冷水取水電磁弁を設け、熱水配管22と熱水取水管24の間に3方電磁弁からなる熱水取水電磁弁を設けて、さらに熱水取水電磁弁23と冷水取水電磁弁27の間を連絡管31で接続して、前記3方電磁弁からなる冷水取水電磁弁ならびに熱水取水電磁弁の弁切り替えにより、前述の冷水または熱水の取水ならびに熱水による除菌・クリーニングを行なうことも可能である。
【0106】
図11は本発明のさらに他の実施例に係るウォーターサーバーの要部拡大断面図、図12はそのウォーターサーバーに用いる冷却熱導体の斜視図である。
【0107】
前記実施例では例えば図1や図3に示すように外ケース7(飲料水バッグ6)の底面とほぼ同じ大きさを有する板状の冷却熱導体10を用い、その冷却熱導体10の一方の端部底面側に電子冷却ユニット41を取り付けて、冷却熱導体10の他方の端部側が低くなるように傾斜して設けていた。従って、冷却熱導体10の他方の端部側が深くなった、初期冷水取水量規制領域47(図3)が形成されることになる。
【0108】
これに対して本実施例では図11や図12に示すように、側面形状がほぼL字形あるいはV字形をした冷却熱導体10を用いる。この冷却熱導体10は、底面に電子冷却素子32が直接あるいは他の熱導体を介して間接的に接触する電子冷却素子側の第1平面部49と、その第1平面部49とほぼ直交する方向に延びた第2平面部50と、前記第1平面部49と第2平面部50を連結する若干丸みを持ったコーナ部51とから構成されている。
【0109】
前記第1平面部49は熱容量を持たせるため、全体的に肉厚になっている。前記第2平面部50の所定位置には、取水アダプター52に設けられている取水ノズル14の尖端部(図11参照)が外側から挿入される取水ノズル挿入孔53が設けられている。
【0110】
前述のように飲料水バッグ6には給水栓9が取り付けられており、飲料水バッグ6をウォーターサーバーの容器装着部1に装着することにより、前記取水ノズル14の尖端部が給水栓9を通って飲料水バッグ6の内側に挿入される仕組みになっている。図11に示すように、前記取水アダプター52には取水管15が接続されている。
【0111】
断面形状がほぼL字形あるいはV字形をした冷却熱導体10は図11に示すように、それのコーナ部51が前記第1平面部49や第2平面部50よりも低位置になるように全体が傾斜して設置されている。このようにコーナ部51が低位置になるように冷却熱導体10を傾斜することにより、断面形状がほぼV字形をした冷却熱導体10が構成され、第1平面部49と第2平面部50とで囲まれた、断面形状がほぼ三角形の初期冷水取水量規制領域47が形成される。前記第2平面部50の傾斜角θ2は、45〜60°程度が適当である。
【0112】
本実施例では、箱型をした容器収納部3の一方の角部に前記冷却熱導体10を固定し、その冷却熱導体10を固定した側の角部が下側になるようにして容器収納部3全体を傾斜することにより、前記コーナ部51が第1平面部49や第2平面部50よりも低位置になるように冷却熱導体10も傾斜している。
【0113】
図11に示すように、前記第1平面部49の底面側に電子冷却ユニット41が固定され、前記第2平面部50の底面側に取水アダプター52が固定されて、電子冷却ユニット41と取水アダプター52は初期冷水取水量規制領域47を介して接近・配置されている。
【0114】
この初期冷水取水水量規定領域47は前記実施例と同様に、水収納容器5内に保有されている飲料水8の中で、いち早く冷水38を生成する領域を特定したものである。
【符号の説明】
【0115】
1・・・容器装着部、2・・・上カバー部材、3・・・容器格納部、4・・・収納空間部、5・・・水収納容器、6・・・飲料水バッグ、7・・・外ケース、8・・・飲料水、9・・・給水栓、10・・・冷却熱導体、11・・・容器受け部、12・・・対流領域規制突出部、13・・・係合段部、14・・・取水ノズル、15・・・3方取水管、17・・・給水配管、18・・・第1の2方電磁弁、19・・・熱水タンク、20・・・ヒーター、21・・・ポンプ、22・・・熱水配管、23・・・熱水取水電磁弁、24・・・熱水取水管、26・・・冷水配管、27・・・冷水取水電磁弁、28・・・冷水取水管、30・・・第2の2方電磁弁、31・・・連絡管、32・・・電子冷却素子、33・・・放熱熱導体、35・・・制御部、36・・・第1開口部、37・・・第2開口部、38・・・冷水、39・・・熱水、40・・・前面傾斜部、41・・・電子冷却ユニット、42・・・温度センサー、45a・・・一方の底角部、45b・・・他方の底角部、46・・・仮想水平線、47・・・初期冷水取水量規制領域、48・・・対流、49・・・第1平面部、50・・・第2平面部、51・・・コーナ部、52・・・取水アダプター、53・・・取水ノズル挿入孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に飲料水を入れて、底部に給水栓を有する柔軟性の飲料水バッグを少なくとも備えた水収納容器を格納する容器格納部と、
前記飲料水バッグ中の飲料水を冷却する電子冷却ユニットを備えて、
前記電子冷却ユニットで冷却生成された前記飲料水バッグ中の冷水を取り出すことのできるウォーターサーバーにおいて、
前記電子冷却ユニットが、一方の端部に前記給水栓が挿通する切欠部を有する板状の容器受け部と、その容器受け部の上に設けられた対流領域規制突出部を有する熱導電性の良好な金属からなる冷却熱導体を有し、
その冷却熱導体はウォーターサーバー本体内で前記給水栓が挿通する切欠部を有する側が低くなるように傾斜して設置され、
その冷却熱導体の上に前記水収納容器を装着して、前記給水栓を容器受け部の切欠部に挿通するとともに、前記対流領域規制突出部を前記飲料水バッグの一部と接触させ、
その水収納容器の装着状態において、当該水収納容器の給水栓が付設されている側とは反対側の高位置にある一方の底角部から給水栓が付設されている側の低位置にある水収納容器の他方の底角部に向けて仮想水平線を引いたときに、その仮想水平線の下側を初期冷水取水水量規定領域とし、前記対流領域規制突出部の上面が前記仮想水平線よりも上側には突出していないことを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項2】
請求項1に記載のウォーターサーバーにおいて、
前記水収納容器が、前記飲料水バッグと、その飲料水バッグの外周を覆う断熱性の外ケースからなり、
前記外ケースの底部を切除してその開口部分から前記給水栓を取り出すとともに、外ケースの底部の他の開口部分からは前記飲料水バッグの一部が露出した状態で、当該水収納容器を前記冷却熱導体の上に装着して、前記給水栓を容器受け部の切欠部に挿通するとともに、前記対流領域規制突出部を外ケースの開口部分から挿入して露出した前記飲料水バッグの一部と接触させることを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項3】
請求項1に記載のウォーターサーバーにおいて、
前記冷却熱導体の上に装着する水収納容器が前記飲料水バッグ単体からなり、
その飲料水バッグの底部を、前記容器受け部から前記対流領域規制突出部にかけて接触させることを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項4】
請求項1に記載のウォーターサーバーにおいて、
前記冷却熱導体の上に装着された前記水収納容器の給水栓に接続する3方取水管と、
ヒーターを有する熱水タンクと、
途中に第1の2方電磁弁を有し、前記3方取水管の一方の出口と前記熱水タンクを接続する給水配管と、
出口側に冷水取水コックを接続した冷水取水電磁弁を有し、前記3方取水管の他方の出口に接続された冷水配管と、
出口側に熱水取水コックを接続した熱水取水電磁弁を有し、前記熱水タンクに接続された熱水配管と、
その熱水配管の途中に設けられたポンプと、
途中に第2の2方電磁弁を有し、前記冷水取水電磁弁と熱水取水電磁弁を接続する連絡管を備え、
除菌時に前記ポンプを駆動して、前記熱水タンク中の熱水を汲み上げて、その熱水を前記熱水配管、熱水取水電磁弁、連絡管、第2の2方電磁弁、冷水取水電磁弁、冷水配管、3方取水管、給水配管ならびに第1の2方電磁弁の順に通して前記熱水タンクに戻すようにして、前記熱水を循環させる構成になっていることを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項5】
中に飲料水を入れて、底部に給水栓を有する柔軟性の飲料水バッグを少なくとも備えた水収納容器を格納する容器格納部と、
その容器格納部の底部に設置されて前記飲料水バッグ中の飲料水を冷却する電子冷却ユニットを備えて、
前記電子冷却ユニットで冷却生成された前記飲料水バッグ中の冷水を取り出すことのできるウォーターサーバーにおいて、
前記電子冷却ユニットが熱導電性の良好な金属からなる冷却熱導体を有し、
その冷却熱導体は、第1平面部と、第2平面部と、前記第1平面部と第2平面部を連結するコーナ部とから構成された断面形状がほぼV字形をしており、
前記第1平面部の底部側に前記電子冷却ユニットが取り付けられており、
前記冷却熱導体の内側に第1平面部と第2平面部によって囲まれた初期冷水取水水量規定領域が形成されることを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項6】
請求項5に記載のウォーターサーバーにおいて、
前記第2平面部側に冷水取水口が設けられていることを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項7】
請求項1または5に記載のウォーターサーバーにおいて、
前記冷却熱導体の表面温度あるいは前記冷却熱導体近傍の水温を検出する温度センサーと、
その温度センサーからの検出信号に基づいて、前記電子冷却ユニットへ供給する電力を通常運転モードの1次電力からその1次電力よりも少ない2次電力に切り替える制御部を備え、
その制御部で設定されている前記1次電力を前記電子冷却ユニットに供給して前記飲料水の冷却を行い、
前記温度センサーからの検出信号が前記飲料水の凍結を予測する基準値よりも下がると、
前記制御部によって、前記電子冷却ユニットへ供給する電力を前記1次電力から2次電力に切り替えて前記飲料水の冷却を続行する構成になっていることを特徴とするウォーターサーバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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