説明

ウオッシャブル枕

【課題】 家庭用洗濯機で洗濯可能なウオッシャブル枕を得る。
【解決手段】 後頭部が接する部位において上下に多層に重ねられ、嵌合可能に分割された複数の部分からなる通気性を有する低反発ポリウレタンフォーム中材を有する枕で、各層の垂直方向の厚さが出来るだけ均等になるように、即ち、各部分の厚さが1.5〜6cmで、かつ、最大厚さと最小厚さとの差が3cm以内とした。分割されたポリウレタンフォームは、それぞれ通気性を有するカバーで覆い、嵌合組み合わせて枕カバー内に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭において容易に洗濯できるウオッシャブル枕に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中の発汗に加え、毛髪に付着した各種の香料、整髪剤等により、枕は非常に汚れ易いものである。しかも、枕は、十分な睡眠には最も重要な要素として近年様々な工夫がなされている。ウレタンフォームは、そのクッション性、フィット性の優れた特性により、寝具、寝装品に広く使用されているが、通気性を有するとはいえ乾燥に時間がかかり、洗濯をするのは難しいものと考えられている。ウレタンに通気性を持たせるためには、フォームに含まれる気泡と気泡とを連結させる必要がある。そこで、ウレタンフォームの発泡条件を変え、セル皮膜を破る方法や、フォーム形成時にセル皮膜が薄くなるように発泡をコントロールし、その後に例えば対のロールでウレタンフォームをニップし、気泡を押しつぶし、外力で皮膜を破れやすくする方法などにより、通気性を向上させた低反発ウレタン材料なども出現している。然し、過度に気泡を連結するとフォームの強度が弱くなり十分な弾性が得られず、洗濯時にはウレタンフォームが裂け易くなるところから、洗濯可能なウレタンフォームの枕は得られていない。そこで、低反発弾性フォームよりなる枕中材に、表裏両面を貫通する多数の貫通孔を設けたウオッシャブル枕が提案されている。(特許文献1参照。)しかしながら、この枕は、中材が通常使用する枕の大きさと同一であるため、家庭において洗濯機で洗うには大きすぎ、十分な洗浄が出来ない。
【特許文献1】特開平2004−358137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年人気のある、低反発ウレタンフォームは、少しの力で大きく変形し易く枕として使用者の頭部によくなじみ、フィット性に優れているが強度的には弱く、上記のように通気性を向上させるための気泡の連結が過度になると強度が弱くなり、ウオッシャブル枕とすると洗濯時に水の中で受ける力でウレタンフォームが破れてしまう。本発明者は、一つのウレタンフォーム枕を複数個に分割し、小さくすれば、洗濯時の取り扱い、その後の乾燥も容易になることに着目し、その分割形状を工夫することにより、家庭用洗濯機で洗濯可能なウオッシャブル枕を得た。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のウオッシャブル枕は、少なくとも後頭部が接する部位において上下に多層に重ねられ、嵌合可能に分割された複数の部分からなる通気性を有するポリウレタンフォーム中材を有する枕で、各層の垂直方向の厚さが1.5〜6cmで、かつ、最大厚さと最小厚さとの差が3cm以内であることを特徴とする。通気性を有するポリウレタンフォームは、密度50〜90g/cm3、硬度10〜40Nである低反発ポリウレタンフォームであって、分割された複数部分のポリウレタンフォームは、それぞれが通気性を有する布地カバーで覆われ、嵌合組み合わされて枕カバー中に収納される。また、分割された複数部分のポリウレタンフォームが異なる硬度を有し、枕上側の分割された部分のポリウレタンフォームの硬度が、枕下層部分のポリウレタンフォームの硬度より柔らかい硬度を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0005】
枕中材を、嵌合可能に層状に分割された複数の部分からなる通気性を有するポリウレタンフォームより構成し、各部分の厚さが出来るだけ均一になるように分割したので、洗濯時の取り扱い、その後の乾燥も容易になり、分割部分が破損することなく、ポリウレタンフォームの優れたクッション性、フィット性を損なうことなく、家庭用洗濯機で洗濯可能なウオッシャブル枕を得た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
通常のウレタンフォームでは通気性が少なく、洗濯しても乾きにくい欠点がある。ポリウレタンフォームの通気性を向上させるために、ウレタンフォーム形成後に気泡と気泡との境の皮膜を破壊して通気性を向上させる方法がとられている。ウレタンフォームの中でも、低反発ウレタンフォームを用いた枕は、頭部の形状にフィットし易く好ましい素材であるが、わずかの力に対して伸びが大きく、皮膜を破壊することは容易ではない。ウレタンフォームへの通気性の付与のためウレタンフォームのセルをオープンにするためクラッシング処理が行われる。この方法には二つの方法があり、ローラー間を通す圧迫方法、減圧真空法等がある。爆発を利用した方法では、セルの破壊された壁がセルとセルとの間の支柱に巻きつき、フォームの風合いが硬めになる。一方、発泡時にセルの膜厚が薄くなるように原料の配合を考慮してフォームを形成後、ローラー間を通してセルをクラッシュし、オープンにすることでソフトな通気性のあるウレタンフォームを作ることが出来るので、このような方法で得られるウレタンフォームを使用する。
【0007】
本発明においては、上記のようにして得られる、密度50〜90g/cm3、硬度10〜40N、好ましくは、密度60〜75g/cm3、硬度10〜35N、更に、硬度20〜30Nの低反発ウレタンフォーム材料を使用する。これらの低反発ウレタンフォームの通気度は、1.5〜4.0cm3/minであった。
【0008】
上記の低反発ウレタンフォームを用い、一つのウレタンフォーム枕を複数個に層状に分割する。枕の形状は、図1に示すように頭の形状にフィットし易いように、枕中材1の表面中央部2の後頭当接部3にあたる部分は低く、首当接部4や両サイド5,5は高くしてあるのが通常であり、高さは均一ではない。枕の高さは、図1のI−I線断面を示す説明図である図2に示すように、表面中央部2の枕使用時の垂直方向における厚さXが4〜8cm、首当接部4の厚さYが8〜14cmであり、また、高さを調節するために厚さZが2〜8cm程度のスペーサー6を入れ、調節することもある。従って、枕中材1を層状に分割し、分割した部分を嵌合して一つの枕にするようにする場合、各分割部分の厚さを均一にすることは難しい。単純に枕本体を水平方向に図3のようにA,Bの部分に分割すると、部分Aは、垂直方向での厚さの差が大きく、各部分の洗濯時に水の含有量が異なり、水流で受ける力が異なるためウレタンフォームが破れてしまう。
【0009】
そこで、枕中材の分割方法について検討した。枕の大きさは、寝返りしても頭が落ちず、肩先までしっかり保温するには横幅60cm以上、奥行き40cm以上が必要であり、多くは、43cm×63cm〜43cm×75cm程度が好まれる。そのようなサイズにおいて、分割した部分の厚さの差が小さいほうが均一に水を含み、洗濯中やその後に続く脱水時にも破れることがない。即ち、各部分の厚さが薄すぎると破れてしまい、1.5cm厚さ以下では洗濯耐久性がない。また、出来るだけ厚さを均一にすることが重要であり、各部分の最大厚さと最小厚さの差が3cm以内とすることが必要である。また、ウレタンフォームの厚さが6cmを超えると乾燥性が著しく低下し、折角洗濯をしても乾燥するのに数日間を要することになる。
【0010】
本発明により枕中材1を二等分して、A,Bの部分に分割する例を図4に示す。図4は、枕中材1の中央縦方向の断面図であるが、このような分割は、例えば図5に示すように、水平に置いた枕中材1に、水平面と平行に張られたカッター7を、切断線8、切断予定線9に沿って移動することによって行うことが出来る。このような切断のみでなく、枕中材成形時に、中材各部分A,Bそれぞれを、嵌合可能に成形して使用することが出来ることは言うまでもない。
【0011】
本発明により枕中材1を分割すれば、洗濯は可能となるが、更に、分割された中材各部分A,Bを通気性のある布、例えばA部分全体を布10で、B部分全体を布11で覆えば、各部分の間の摩擦を低減することが出来、一層ウオッシャブル性を向上できる。更に、布で被覆された部分A,Bを嵌合組み合わせて枕カバー12内に収納する。布10,11として使用する通気性を有する布地としては、織物、編み物、不織布いずれでも良いが、伸縮性のあるジャージ地やトリコット地などが適当であり、目付けは30〜150g/cm2程度の薄いもの、好ましくは30〜120g/cm2がよい。
【産業上の利用可能性】
【0012】
上記したように、本発明のウオッシャブル枕は、 枕本体を、嵌合可能に分割された複数の部分からなる通気性を有するポリウレタンフォームより構成したので、洗濯により分割部分が破損することなく、枕全体を家庭用洗濯機で洗濯可能であり、常に清潔に枕を保つことが出来、快適な睡眠を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】枕中材の一例を示す概略斜視図である。
【図2】枕中材の側面視寸法説明図である。
【図3】枕中材の不適例の断面図である。
【図4】本発明枕の中央部垂直方向断面図である。
【図5】枕中材の分割方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0014】
1 枕中材
2 表面中央部
3 後頭当接部
4 首当接部
5 両サイド
6 スペーサー
7 カッター
8 切断線
9 切断予定線
10,11 布
12 枕カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも後頭部が接する部位において上下に多層に重ねられ、嵌合可能に分割された複数の部分からなる通気性を有するポリウレタンフォーム中材を有する枕で、各層の垂直方向の厚さが1.5〜6cmで、かつ、最大厚さと最小厚さとの差が3cm以内であることを特徴とするウオッシャブル枕。
【請求項2】
通気性を有するポリウレタンフォームが、密度50〜90g/cm3、硬度10〜40Nの低反発ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載のウオッシャブル枕。
【請求項3】
分割された複数部分のポリウレタンフォームは、それぞれが通気性を有する布地カバーで覆われ、嵌合組み合わされて枕カバー中に収納されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウオッシャブル枕。
【請求項4】
分割された複数部分のポリウレタンフォームが異なる硬度を有し、枕上層部分のポリウレタンフォームの硬度が、枕下層部分のポリウレタンフォームの硬度より柔らかい硬度を有するものである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のウオッシャブル枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−246956(P2006−246956A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64274(P2005−64274)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000196129)西川産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】