説明

ウラン廃棄物の除染方法及び設備

【課題】ウラン廃棄物の除染時に三フッ化塩素を有効利用できるようにする。
【解決手段】ウラン含有の廃棄物21を加熱する反応容器22内部に三フッ化塩素24を循環通気して六フッ化ウラン3を生成させる除染ループ44と、除染ループ44中に組み込まれ且つ六フッ化ウラン3捕捉用のフッ化ナトリウム12を有する吸着回収手段23と、除染ループ44に付帯し且つ三フッ化塩素24を冷却する液化回収手段25と、液化回収手段25に付帯し且つ塩27を生成するためアルカリ48を有する乾式除害手段28とを備え、六フッ化ウラン3を生成した後に、液化回収手段25により三フッ化塩素24を冷却液化して、三フッ化塩素24を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウラン廃棄物の除染方法及び設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉用燃料の製造施設では、燃料製造時に生じるウラン微粉体を排ガス処理系に設置したフィルタにより捕捉し、ウラン微粉体が製造施設外部へ飛散しないようにしている。
【0003】
ウラン微粉体の捕捉によって通気性が低下したフィルタは、新しいものと交換して廃棄される。
【0004】
フィルタを廃棄する際には、ウラン微粉体が付着しているエレメントを金属性のケーシングから分離し、可燃物であるエレメントについては焼却処理を行ない、また、ケーシングについては圧縮処理を行なってそれぞれ体積を縮小したうえ、廃棄物貯蔵施設に保管している。
【0005】
また、フィルタのエレメントに付着したウランや、ウラン吸着剤に使用された後のフッ化ナトリウム(NaF)あるいはフッ化カルシウム(CaF2)などのフッ化物塩を、硝酸あるいは塩酸の溶液に溶解させてウランを抽出し、該ウランをイオン交換樹脂により回収することも検討されているが、このような湿式除染では、多量の溶液が必要になり、イオン交換樹脂そのものも最終的には廃棄物となるため、単に廃棄物を増やすことにしかならないとの見解もある。
【0006】
そこで、近年、フッ素化ガスを用いた乾式のウラン回収方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図2は上記のウラン回収方法に用いる設備の一例であり、この設備は、ヒータを装備し且つウランを含んでいる焼却灰やフッ化物塩などの廃棄物1をフッ素化ガス雰囲気中で加熱する反応容器2と、六フッ化ウラン(UF6)3を回収するための吸着回収塔4及び析出回収塔5とを備えている。
【0008】
反応容器2の下部には、三方切換弁6の出口ポート6aが接続されている。
【0009】
この三方切換弁6は、出口ポート6aに択一的に連通可能な2つの入口ポート6b,6cを有しており、一方の入口ポート6bには、止弁7a,8aを介してガス貯蔵容器7,8が接続されている。
【0010】
ガス貯蔵容器7には、三フッ化塩素(ClF3)などのようなフッ素化ガス9が充填され、ガス貯蔵容器8には、窒素(N2)などのような不活性ガス10が充填されている。
【0011】
吸着回収塔4は、下部が反応容器2内に連通し、上部に三方切換弁11の入口ポート11aが接続され、六フッ化ウラン3を吸着する回収用フッ化ナトリウム(NaF)12を内部に充填している。
【0012】
更に、吸着回収塔4には、回収用フッ化ナトリウム12を加熱して、六フッ化ウラン3を回収用フッ化ナトリウム12から遊離させためのヒータ(図示せず)が装備されている。
【0013】
三方切換弁11は、入口ポート11aに択一的に連通可能な2つの出口ポート11b,11cを有しており、一方の出口ポート11bには、循環用ブロワ13の吸引口が接続されている。
【0014】
また、循環用ブロワ13の吐出口は、三方切換弁6の他方の入口ポート6cに接続されている。
【0015】
析出回収塔5は、下部に三方切換弁11の他方の出口ポート11cが接続され、2次流体管14を内部に配置している。
【0016】
この2次流体管14には、冷熱媒供給源15から送給される冷却用流体または加熱用流体が選択的に流通するようになっている。
【0017】
析出回収塔5の直下には、その内底部分に連通する回収容器16が設けられている。
【0018】
また、析出回収塔5の上部には、止弁17、微粒子を捕捉するためのフィルタ(HEPAフィルタ)18、フッ素化ガス9を捕捉するためのガス吸着器19、及び吸引用ブロワ20が、順に直列に接続されている。
【0019】
図2に示す設備によりウランの回収を行なう際には、予め粉砕及び乾燥処理が施された廃棄物1を反応容器2へ投入し、当該反応容器2の内部をヒータで加熱しなかがら、真空ポンプ(図示せず)より減圧しておく。
【0020】
次いで、三方切換弁11を入口ポート11aが一方の出口ポート11bに連通する状態にしたうえ、三方切換弁6を一方の入口ポート6bが出口ポート6aに連通する状態にし、止弁7aを開いてガス貯蔵容器8からフッ素化ガス9を反応容器2内へ送給する。
【0021】
反応容器2内がフッ素化ガス9で満たされたならば、止弁7aを閉じたうえ、三方切換弁6を他方の入口ポート6cが出口ポート6aに連通する状態にして、フッ素化ガス9雰囲気中の廃棄物1を常温〜300℃未満の温度範囲に加熱すると、廃棄物1が含有するウラン(フッ化ウラン、フッ化ウラニル、酸化ウラン)とフッ素化ガス9との反応によって、気相状態の六フッ化ウラン3が生成され、廃棄物1そのものは、フッ素化ガス9の影響を受けずに更に酸化する。
【0022】
また、循環用ブロワ13を運転して、反応容器2内のフッ素化ガス9を、吸着回収塔4、循環用ブロワ13、反応容器2の順で循環させると、反応容器2内の廃棄物1が流動層を形成し、六フッ化ウラン3の生成が促進される。
【0023】
この六フッ化ウラン3は、フッ素化ガス9に随伴して吸着回収塔4内に流入し、六フッ化ウラン3だけが回収用フッ化ナトリウム12に選択的に吸着される。
【0024】
フッ素化ガス9雰囲気中で、常温〜300℃未満の温度範囲に廃棄物1を加熱する第1の工程が完了したならば、循環用ブロワ13を停止する。
【0025】
また、三方切換弁6を一方の入口ポート6bが出口ポート6aに連通する状態にし、三方切換弁11を入口ポート11aが他方の出口ポート11cに連通する状態にして、反応容器2からフッ素化ガス9を掃き出せるようにする。
【0026】
更に、止弁8a,17を開き、ガス貯蔵容器8から不活性ガス10を反応容器2内へ送給して、フッ素化ガス9濃度が10%以下になるように、反応容器2内を不活性ガス10雰囲気に置換する。
【0027】
不活性ガス10の導入に伴って掃き出されるフッ素化ガス9は、吸着回収塔4と析出回収塔5を通過した後、フィルタ18により除塵され且つガス吸着器19でフッ素成分が除去される。
【0028】
反応容器2内が不活性ガス10雰囲気になったならば、三方切換弁11を入口ポート11aが一方の出口ポート11bに連通する状態にして、止弁8a,17を閉じ、三方切換弁6を他方の入口ポート6cが出口ポート6aに連通する状態にして、不活性ガス10雰囲気中の廃棄物1を300℃〜600℃の温度範囲に加熱すると、廃棄物1が含有していたアルカリ元素あるいはアルカリ土類元素と六フッ化ウラン3との錯体が分解する。
【0029】
また、循環用ブロワ13を運転して、反応容器2内の不活性ガス10を、吸着回収塔4、循環用ブロワ13、反応容器2の順で循環させて、六フッ化ウラン3の生成の促進を図る。
【0030】
廃棄物1から分離された六フッ化ウラン3は、不活性ガス10に随伴して吸着回収塔4内に流入して、六フッ化ウラン3だけが回収用フッ化ナトリウム12に選択的に吸着される。
【0031】
不活性ガス10雰囲気中で、300℃〜600℃の温度範囲に廃棄物1を加熱する第2の工程が完了したならば、循環用ブロワ13を停止する。
【0032】
次いで、2次流体管14へ冷熱媒供給源15から冷却用流体を連続的に送給し、三方切換弁11を入口ポート11aが他方の出口ポート11cに連通する状態に設定して止弁17を開き、吸引用ブロワ20を運転する。
【0033】
更に、吸着回収塔4内の回収用フッ化ナトリウム12を加熱すると、六フッ化ウラン3が回収用フッ化ナトリウム12から遊離して析出回収塔5内へ流入する。
【0034】
上記の六フッ化ウラン3は、2次流体管14を流通している冷却用流体により冷却され、固体として析出する。
【0035】
また、析出回収塔5を通過したフッ素化ガス9や不活性ガス10は、フィルタ18により除塵され、ガス吸着器19でフッ素成分が除去される。
【0036】
この後、止弁17を閉じたうえ、2次流体管14へ冷熱媒供給源15から加熱用流体を連続的に送給し、昇温液化した六フッ化ウラン3を回収容器16へ流入させ、廃棄物1に含まれているウランを選択的に回収する。
【特許文献1】特開2002−236198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
しかしながら、図2に示す設備を用いたウラン回収方法では、六フッ化ウラン3を生成させる工程が完了した後、反応容器2内を不活性ガス10雰囲気に置換する際に、フッ素化ガス9がガス吸着器19で処理されてしまうため、フッ素化ガス9を有効に利用することができなかった。
【0038】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、三フッ化塩素を有効利用できるウラン廃棄物の除染方法及び設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載のウラン廃棄物の除染方法では、三フッ化塩素を循環通気しながら、ウランを含んだ廃棄物を加熱して六フッ化ウランを生成し、フッ化ナトリウムによって六フッ化ウランを捕捉した後、前記の三フッ化塩素を冷却して液化回収し、ハロゲン系副次生成物をアルカリと反応させて塩を生成する。
【0040】
本発明の請求項2に記載のウラン廃棄物の除染方法では、二酸化ケイ素及びウランを含んだ廃棄物を加熱し、該廃棄物にフッ化水素を吹き付けて四フッ化ケイ素を生成し、該四フッ化ケイ素を除去し、三フッ化塩素を循環通気しながら、廃棄物を加熱して六フッ化ウランを生成し、フッ化ナトリウムによって六フッ化ウランを捕捉した後、前記の三フッ化塩素を冷却して液化回収し、ハロゲン系副次生成物をアルカリと反応させて塩を生成する。
【0041】
本発明の請求項3に記載のウラン廃棄物の除染設備では、ウランを含んだ廃棄物を加熱する反応容器に三フッ化塩素を循環通気して六フッ化ウランを生成させる除染ループと、該除染ループ中に組み込まれ且つ六フッ化ウラン捕捉用のフッ化ナトリウムを有する吸着回収手段と、前記の除染ループに付帯し且つ三フッ化塩素を冷却する液化回収手段と、該液化回収手段に付帯し且つ塩生成用のアルカリを有する乾式除害手段とを備えている。
【0042】
本発明の請求項4に記載のウラン廃棄物の除染設備では、二酸化ケイ素及びウランを含んだ廃棄物を加熱する反応容器へフッ化水素を吹き込んで四フッ化ケイ素を生成させるフッ化水素供給手段と、反応容器に三フッ化塩素を循環通気して六フッ化ウランを生成させる除染ループと、該除染ループ中に組み込まれ且つ六フッ化ウラン捕捉用のフッ化ナトリウムを有する吸着回収手段と、前記の除染ループに付帯し且つ三フッ化塩素を冷却する液化回収手段と、該液化回収手段に付帯し且つ塩生成用のアルカリを有する乾式除害手段と、前記の四フッ化ケイ素に水を噴霧してケイ酸塩スラッジを生成させる湿式除害手段とを備えている。
【0043】
本発明の請求項1あるいは請求項2に記載のウラン廃棄物の除染方法のいずれにおいても、六フッ化ウランを生成した後に、三フッ化塩素を冷却液化し、当該三フッ化塩素の有効利用を図る。
【0044】
また、ハロゲン系の副次生成物をアルカリと反応させてクリアランスレベルの塩を生成し、廃棄物の減容を図る。
【0045】
本発明の請求項2に記載のウラン廃棄物の除染方法においては、廃棄物が含んでいるケイ素成分とフッ化水素とによりクリアランスレベルの四フッ化ケイ素を生成し、当該四フッ化ケイ素を取り除いて、廃棄物の減容を図る。
【0046】
本発明の請求項3あるいは請求項4に記載のウラン廃棄物の除染設備のいずれにおいても、六フッ化ウランを生成した後に、液化回収手段により三フッ化塩素を冷却液化し、当該三フッ化塩素の有効利用を図る。
【0047】
また、ハロゲン系の副次生成物を乾式除害手段のアルカリと反応させることによりクリアランスレベルの塩を生成し、廃棄物の減容を図る。
【0048】
本発明の請求項4に記載のウラン廃棄物の除染設備においては、反応容器内部で加熱中に廃棄物に対して、フッ化水素供給手段によりフッ化水素を吹き込んで四フッ化ケイ素を生成したうえ、湿式除害手段により四フッ化ケイ素に水を噴霧してクリアランスレベルのケイ酸塩スラッジを生成し、廃棄物の減容を図る。
【発明の効果】
【0049】
本発明のウラン廃棄物の除染方法及び設備によれば、下記のような種々の優れた効果を奏し得る。
【0050】
(1)本発明の請求項1あるいは請求項2に記載のウラン廃棄物の除染方法のいずれにおいても、六フッ化ウランを生成した後、三フッ化塩素を冷却液化するので、当該三フッ化塩素の有効利用を図ることが可能になる。
【0051】
(2)ハロゲン系の副次生成物をアルカリと反応させてクリアランスレベルの塩を生成するので、廃棄物を減容できる。
【0052】
(3)本発明の請求項2に記載のウラン廃棄物の除染方法においては、廃棄物が含んでいるケイ素成分とフッ化水素との反応によって、クリアランスレベルの四フッ化ケイ素を生成させたうえ、当該四フッ化ケイ素を取り除くので、廃棄物を減容できる。
【0053】
(4)本発明の請求項3あるいは請求項4に記載のウラン廃棄物の除染装置のいずれにおいても、六フッ化ウランを生成した後、液化回収手段により三フッ化塩素を冷却液化するので、当該三フッ化塩素の有効利用を図ることが可能なる。
【0054】
(5)ハロゲン系の副次生成物を乾式除害手段のアルカリに反応させることによりクリアランスレベルの塩を生成するので、廃棄物を減容できる。
【0055】
(6)本発明の請求項4に記載のウラン廃棄物の除染設備においては、フッ化水素供給手段によって、反応容器内部で加熱中の廃棄物にフッ化水素を吹き込んで四フッ化ケイ素を生成し、湿式除害手段により四フッ化ケイ素に水を噴霧してクリアランスレベルのケイ酸塩スラッジを生成するので、廃棄物を減容できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。
【0057】
図1は本発明のウラン廃棄物の除染設備の実施の形態の一例であり、この設備は、廃棄物21を加熱するためのヒータ(図示せず)を装備した反応容器22と、六フッ化ウラン3を回収するための吸着回収手段23と、三フッ化塩素24を回収するための液化回収手段25と、フッ化塩素(ClF)や酸化フッ化塩素(ClO2F)のようなハロゲン系の副次生成物26から塩化カルシウム(CaCl2)あるいはフッ化カルシウム(CaF2)などの塩27を生成させるための乾式除害手段28と、四フッ化ケイ素(SiF4)29を捕捉するための湿式除害手段30とを備えている。
【0058】
反応容器22は、強制通気方式のロータリキルンであって、その通気方向上流には、三方切換弁31の出口ポート31aが接続され、通気方向下流には、三方切換弁32の入口ポート32aが接続されている。
【0059】
三方切換弁31は、出口ポート31aに択一的に連通可能な2つの入口ポート31b,31cを有し、一方の入口ポート31bは、ガス混合器33の流出口に接続され、他方の入口ポート31cは、バッファタンク34の流出口に接続されている。
【0060】
ガス混合器33は、流出口に連なる4つの流入口を有し、これらの流入口は、止弁35a,36a,37a,38aを介してガス貯蔵容器35,36,37,38に接続され、ガス貯蔵容器38には、保冷装置38bが付帯している。
【0061】
ガス貯蔵容器35,36,37のそれぞれには、未使用の三フッ化塩素24、フッ化水素(HF)39、窒素(N2)40が充填されている。
【0062】
また、ガス貯蔵容器38は、回収した三フッ化塩素24の貯蔵に用いられる。
【0063】
三方切換弁32は、入口ポート32aに択一的に連通可能な2つの出口ポート32b,32cを有し、一方の出口ポート32bは、吸着回収手段23の流入口が接続され、他方の出口ポート32cは、バイパス流路41の上流端が接続されている。
【0064】
吸着回収手段23には、六フッ化ウラン3を吸着する回収用フッ化ナトリウム12が充填されている。
【0065】
この吸着回収手段23の流出口は、三方切換弁42の入口ポート42aに接続されている。
【0066】
三方切換弁42は、入口ポート42aに択一的に連通可能な2つの出口ポート42b,42cを有し、一方の出口ポート42bは、液化回収手段25の流入口に接続され、他方の出口ポート42cは、循環用ブロワ43の吸引口に接続されている。
【0067】
この循環用ブロワ43の吐出口は、前述のバッファタンク34の流入口に接続され、循環用ブロワ43、バッファタンク34、三方切換弁31、反応容器22、三方切換弁32、吸着回収手段23、三方切換弁42により、除染ループ44を構成している。
【0068】
液化回収手段25は、気相の三フッ化塩素24を冷却して液化する機能を具備している。
【0069】
この液化回収手段25の流出口は、三方切換弁45の入口ポート45aに接続されている。
【0070】
三方切換弁45は、入口ポート45aに択一的に連通可能な2つの出口ポート45b,45cを有し、一方の出口ポート45bは、ガス圧縮機46の吸引口に接続されている。
【0071】
このガス圧縮機46の吐出口は、前述したガス貯蔵容器38に接続され、三方切換弁45、ガス圧縮機46、ガス貯蔵容器38、止弁38a、ガス混合器33によって、回収ライン47を構成している。
【0072】
乾式除害手段28には、前記のハロゲン系の副次生成物26から塩27を生成するために水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などのアルカリ48が充填されている。
【0073】
この乾式除害手段28の流入口は、三方切換弁49の出口ポート49aに接続されている。
【0074】
三方切換弁49は、出口ポート49aに択一的に連通可能な2つの入口ポート49b,49cを有し、一方の入口ポート49bは、前述した三方切換弁32の他方の出口ポート32cに接続され、他方の入口ポート49cは、前述した三方切換弁45の他方の出口ポート45cに接続されている。
【0075】
湿式除害手段30は、気相の四フッ化ケイ素29に水53を噴霧してケイ酸塩スラッジ50を生成する機能を具備している。
【0076】
この湿式除害手段30の流出口は、吸引用ブロワ51を介して排ガス処理装置(図示せず)に接続されている。
【0077】
なお、52は、二酸化ケイ素及びウランを除去した残渣である。
【0078】
廃棄物21の除染を行なうときには、反応容器22に廃棄物21を投入して、約150℃〜450℃の温度範囲に加熱する。
【0079】
次いで、ガス貯蔵容器36から反応容器22内部にフッ化水素39を送給して廃棄物21に吹き付け、フッ化水素39と廃棄物21が含んでいる二酸化ケイ素とを反応させて、気相状態の四フッ化ケイ素29を生成する。
【0080】
また、反応容器22内部ではフッ素成分とウラン成分とが反応して、四フッ化ウラン(UF4)成分が生成されるが、四フッ化ケイ素29のほうが、四フッ化ウランよりも蒸気圧が高いので、四フッ化ウラン成分の揮発を抑止して、廃棄物21からケイ素成分を選択的に分離させることができる。
【0081】
更に、気相の四フッ化ケイ素29を、バイパス流路41、乾式除害手段28を介して湿式除害手段30へ導入させ、水53を噴霧してケイ酸塩スラッジ50を生成させる。
【0082】
これにより、廃棄物21に含まれていたケイ素成分を、クリアランスレベルのケイ酸塩スラッジ50として回収し、廃棄物21の減容を図ることができる。
【0083】
ケイ素成分を取り除く工程が完了したならば、ガス貯蔵容器35から反応容器22内部に三フッ化塩素24を送給し、当該三フッ化塩素24が除染ループ44を流通し得る状態に三方切換弁31,32,42を設定して、循環用ブロワ43を作動させ、廃棄物21を常温〜300℃未満の温度範囲に加熱すると、廃棄物21中のウランと三フッ化塩素24とが反応して、気相状態の六フッ化ウラン3が生成され、廃棄物21そのものは、更に酸化する。
【0084】
この六フッ化ウラン3は、三フッ化塩素24に随伴して吸着回収手段23内部に流入し、六フッ化ウラン3だけが回収用フッ化ナトリウム12に選択的に吸着される。
【0085】
三フッ化塩素24雰囲気中で、常温〜300℃未満の温度範囲で廃棄物21を加熱する工程が完了したならば、循環用ブロワ43を停止する。
【0086】
更に、液化回収手段25が回収ライン47とガス混合器33を介して反応容器22に連通し且つ該反応容器22が吸着回収手段23を介して液化回収手段25に連通するように、三方切換弁31,32,42,45及び止弁38aを設定し、液化回収手段25内部を−70℃程度に冷却する。
【0087】
次いで、ガス圧縮機46を作動させて三フッ化塩素24を液化回収手段25へ連続的に送給し、三フッ化塩素24の液化を図りながら、ガス貯蔵容器37から反応容器22内部に窒素40を送給して、三フッ化塩素24の濃度が10%以下の窒素40雰囲気になるようにする。
【0088】
この後に、止弁38aを閉止し、液化回収手段25による三フッ化塩素24の冷却を中断して当該三フッ化塩素24を気化させるとともに、ガス圧縮機46によってガス貯蔵容器38に充填する。
【0089】
これにより、三フッ化塩素24を回収して再利用することが可能になる。
【0090】
反応容器22内部を窒素40雰囲気にしてから、窒素40が除染ループ44を流通し得る状態に三方切換弁31,32,42を設定して、循環用ブロワ43を作動させ、廃棄物21を300℃〜600℃の温度範囲に加熱すると、該廃棄物21が含有していたアルカリ元素あるいはアルカリ土類元素と六フッ化ウラン3との錯体が分解する。
【0091】
廃棄物21から分離された六フッ化ウラン3は、窒素40に随伴して吸着回収手段23内部に流入して、六フッ化ウラン3だけが回収用フッ化ナトリウム12に選択的に吸着される。
【0092】
窒素40雰囲気中で、300℃〜600℃の温度範囲で廃棄物21を加熱する工程が完了したならば、循環用ブロワ43を停止する。
【0093】
更に、反応容器22が吸着回収手段23と液化回収手段25を介して乾式除害手段28及び湿式除害手段30に連通するように三方切換弁32,42,45,49に設定し、吸引用ブロワ51を作動させて窒素40を排ガス処理装置へ掃き出す。
【0094】
このとき、窒素40に随伴して乾式除害手段28内部に流入するフッ化塩素や酸化フッ化塩素のようなハロゲン系の副次生成物26は、水酸化カルシウムなどのアルカリ48と反応して塩27を生成する。
【0095】
これにより、種々のハロゲン系の副次生成物26を、クリアランスレベルの塩27として回収し、廃棄物21の減容を図ることができる。
【0096】
このように、図1に示すウラン廃棄物の除染設備においては、六フッ化ウラン3を生成した後の三フッ化塩素24を、液化回収手段25で冷却液化するので、三フッ化塩素24の有効利用を図ることが可能になる。
【0097】
また、廃棄物21が含んでいたケイ素成分、ハロゲン系の副次生成物26を、クリアランスレベルのケイ酸塩スラッジ50や塩27として回収するので、当該廃棄物21の減容を図ることでき、更に、ウラン成分を回収用フッ化ナトリウム12に吸着させるので、最終的には廃棄物21をクリアランスレベルの残渣52として処理することができる。
【0098】
なお、本発明のウラン廃棄物の除染方法及び設備は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のウラン廃棄物の除染設備の実施の形態の一例を示す概念図である。
【図2】従来のウラン廃棄物の除染設備の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0100】
3 六フッ化ウラン
12 回収用フッ化ナトリウム
21 廃棄物
22 反応容器
23 吸着回収手段
24 三フッ化塩素
25 液化回収手段
26 副次生成物
27 塩
28 乾式除害手段
29 四フッ化ケイ素
30 湿式除害手段
36 ガス貯蔵容器(フッ化水素供給手段)
39 フッ化水素
44 除染ループ
48 アルカリ
50 ケイ酸塩スラッジ
53 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三フッ化塩素を循環通気しながら、ウランを含んだ廃棄物を加熱して六フッ化ウランを生成し、フッ化ナトリウムによって六フッ化ウランを捕捉した後、前記の三フッ化塩素を冷却して液化回収し、ハロゲン系副次生成物をアルカリと反応させて塩を生成することを特徴するウラン廃棄物の除染方法。
【請求項2】
二酸化ケイ素及びウランを含んだ廃棄物を加熱し、該廃棄物にフッ化水素を吹き付けて四フッ化ケイ素を生成し、該四フッ化ケイ素を除去し、三フッ化塩素を循環通気しながら、廃棄物を加熱して六フッ化ウランを生成し、フッ化ナトリウムによって六フッ化ウランを捕捉した後、前記の三フッ化塩素を冷却して液化回収し、ハロゲン系副次生成物をアルカリと反応させて塩を生成することを特徴するウラン廃棄物の除染方法。
【請求項3】
ウランを含んだ廃棄物を加熱する反応容器に三フッ化塩素を循環通気して六フッ化ウランを生成させる除染ループと、該除染ループ中に組み込まれ且つ六フッ化ウラン捕捉用のフッ化ナトリウムを有する吸着回収手段と、前記の除染ループに付帯し且つ三フッ化塩素を冷却する液化回収手段と、該液化回収手段に付帯し且つ塩生成用のアルカリを有する乾式除害手段とを備えてなることを特徴とするウラン廃棄物の除染設備。
【請求項4】
二酸化ケイ素及びウランを含んだ廃棄物を加熱する反応容器へフッ化水素を吹き込んで四フッ化ケイ素を生成させるフッ化水素供給手段と、反応容器に三フッ化塩素を循環通気して六フッ化ウランを生成させる除染ループと、該除染ループ中に組み込まれ且つ六フッ化ウラン捕捉用のフッ化ナトリウムを有する吸着回収手段と、前記の除染ループに付帯し且つ三フッ化塩素を冷却する液化回収手段と、該液化回収手段に付帯し且つ塩生成用のアルカリを有する乾式除害手段と、前記の四フッ化ケイ素に水を噴霧してケイ酸塩スラッジを生成させる湿式除害手段とを備えてなることを特徴とするウラン廃棄物の除染設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−116245(P2008−116245A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297732(P2006−297732)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(598150352)財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター (4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】