説明

エアクリーナ

【課題】 給気の圧力損失が少なくてエンジン性能の向上が可能であり、エレメント清掃間隔を長くして整備性を向上でき、かつ多塵地での機械に適切なエアクリーナの提供。【解決手段】 エアクリーナ1において、ケーシング10には、空気を円筒状のフィルタエレメント20の軸心方向に対して略直角方向から流入させる空気入口管11と、濾過後の空気を軸心方向に沿って流出させる空気出口管12とを設け、ケーシングの内部には、フィルタエレメント20の閉塞された谷部23側の端部外周縁を周方向に連続的に密着支持する支持部17と、フィルタエレメント20の閉塞された山部22側の端部内周縁を周方向に連続的に密着支持して中空部分を塞ぐ支持部18とを設け、濾過される空気は、山部22の頂点側の第1流入空間41からと、第2流入空間42側の端部とからフィルタエレメントに20に流入し、流出空間43側の端部と前記中空部分から流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナに関し、特には多塵地で使用される車両のエンジン用のエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアクリーナおよびこれに用いられるフィルタエレメントの構造に関しては、例えば特許文献1には2筒式エアクリーナが記載され、特許文献2には直列エアクリーナが記載されている。
【0003】
図14は前記特許文献1に記載された2筒式エアクリーナ70の側面断面図である。図14において、円筒状ケーシング71は側面部に入口管72を備え、閉塞板中央部に出口管73が設けてあり、出口管73内側に端部が溶接された1対の脚部を有するブリツヂ74がケーシング71開放端側に延び、その頂部にはスタッドボルト75が固設してある。ケーシング71開放端側にはダストパン76が着脱自在に取り付けてある。ケーシング71内にはケーシング内壁側に第1濾過エレメント80、その内側に第2濾過エレメント81が配置され2筒式になっている。
【0004】
図15は第1濾過エレメント80の斜視図である。図15において、多孔を有する内筒82の周りに襞折り加エして筒状とした濾紙あるいは不織布等の濾材83を配置し、さらに濾材83の外周に多孔を有する外筒84を配置しており、その上下端には中央に開口を有する環状端板85と、中央にスタッドボルト75を貫通させる開口を有する閉塞状端板86とを配置し、接着剤で固着してある。
【0005】
第2濾過エレメント81と第1濾過エレメント80とは順次ダストパン76側からケーシング71内に挿入され、それぞれの閉塞状端板86、87はスタッドボルト75に螺子により締着される。
【0006】
入口管72から吸入された外気は第1濾過エレメント80の外周側から入り、濾過された空気は内周側に抜け、第2濾過エレメント81を経て出口管73からエンジンに供給される。第1濾過エレメント80は目詰まりを発生した時点で取り外して清掃される。第2濾過エレメント81は第1濾過エレメント80を取り外して行う清掃中に、大きな異物がエンジン内に侵入するのを防止する。
【0007】
図16は特許文献2に記載された直列エアクリーナ90の斜視図である。図16において、第1の対面シート材91と第2の対面シート材92との間には山部94と谷部95とを交互に形成する溝付きシート材93が配置されている。谷部95および山部94は溝を上方列と下方列とに分割し、上方の溝室96の下流端は第2の端ビード99で閉鎖され、下方の溝室97の上流端は第1の端ビード98で閉鎖されている。中央の溝付きシート材93は濾過媒体である。
【0008】
未濾過の流体は黒塗り矢印で示されるように、上流端が開放している上方の溝室96に流入し、第2の端ビード99で遮断される。したがって、流体は溝付きシート材93を介して白抜き矢印で示されるように下方の溝室97に流れ、その際未濾過の流体は濾過される。濾過された流体は、下方の溝室97の上流側が遮断されているため、下流端から流出する。
【0009】
【特許文献1】実開昭和59−133762号公報(第6−7頁、第2図、第3図)
【特許文献2】特表2000−508974号公報(第12頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の上記構成においては以下のような問題がある。
円筒形のエレメント長手方向の両端面を閉塞しているため、空気はエレメントの外周側から内周側に通過することとなり、空気通過面積を充分大きく確保する事が困難である。したがって、吸気の圧力損失が大きくなり易く、エンジンの吸気に使用した場合性能の低下を招くおそれがある。又、エレメントが目詰まりを起こし易くなり、エレメント清掃間隔が短くなるという問題がある。
【0011】
特許文献2記載の上記構成においては、空気の流れ方向がエレメントの軸方向(溝室97に沿った方向)であり、例えば建設機械のように多塵地で使用されるために、機械の上方から外気を取り入れ、水平方向に排出したい場合には構造上不適切である。
【0012】
本発明は上記の問題点に着目してなされたもので、吸気の圧力損失が少なくてエンジン性能の向上が可能であり、エレメント清掃間隔を長くして整備性を向上でき、かつ多塵地で使用される機械に適切なエアクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明は、エアクリーナにおいて、ケーシングと、ケーシング内に配置されるフィルタエレメントとを備え、前記フィルタエレメントには、所定高さで山谷に折られた山部および谷部が交互に連続的に形成され、前記フィルタエレメントの一端側では、少なくとも前記山部の端部が閉塞され、前記フィルタエレメントの他端側では、前記谷部の端部が閉塞され、前記フィルタエレメントで濾過される空気は、少なくとも前記山部の頂点側から当該フィルタエレメントに流入し、少なくとも前記他端側の山部の端部から流出することを特徴とする。
【0014】
第2発明は、第1発明において、前記フィルタエレメントは、中空部分を有する円筒状とされ、前記ケーシングには、濾過するための空気を前記フィルタエレメントの軸心方向に対して略直角方向から流入させる空気入口管と、濾過後の空気を前記軸心方向に沿って流出させる空気出口管とが設けられ、前記ケーシングの内部には、前記フィルタエレメントの閉塞された谷部側の端部外周縁を周方向に連続的に密着支持する支持部と、前記フィルタエレメントの閉塞された山部側の端部内周縁を周方向に連続的に密着支持して前記中空部分を塞ぐ別の支持部とが設けられ、前記フィルタエレメントで濾過される空気は、前記山部の頂点側からと前記一端側の谷部の端部とから当該フィルタエレメントに流入し、前記他端側の山部の端部と前記中空部分の内周側から流出することを特徴とする。
【0015】
第3発明は、第1発明において、前記フィルタエレメントは、中空部分を有する円筒状とされ、前記ケーシングには、濾過するための空気を前記フィルタエレメントの軸心方向に対して略直角方向から流入させる空気入口管と、濾過後の空気を前記軸心方向に沿って流出させる空気出口管とが設けられ、前記ケーシングの内部には、前記フィルタエレメントの閉塞された谷部側の端部外周縁を周方向に連続して密着支持する支持部と、前記フィルタエレメントの閉塞された山部側の端部外周縁を周方向に断続的に支持する別の支持部とが設けられ、前記フィルタエレメントには、前記中空部分の前記閉塞された山部側の端部開口を塞ぐ中央閉塞部が設けられ、前記フィルタエレメントで濾過される空気は、前記山部の頂点側からと前記一端側の谷部の端部とから当該フィルタエレメントに流入し、前記他端側の山部の端部と前記中空部分の内周側から流出することを特徴とする。
【0016】
第4発明は、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記フィルタエレメントの下流側には、当該フィルタエレメントが外された際に異物の浸入を防ぐセーフティフィルタが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明によれば、フィルタエレメントの山部の頂点側から流入した空気を、フィルタエレメントの少なくとも片方の端部からも流出可能にしたので、濾過空気の通路面積(濾過面積)を大きくでき、通路抵抗の少ないエアクリーナを提供できる。また、濾過後の空気を片方の端部のみから流出させる場合にも本発明に含まれるが(図12に示す第6実施形態参照)、この場合では、頂部側から流入した全空気の流れ方向を、フィルタエレメント内部で確実に変えて流出させることができるので、上方から空気を取り入れて水平方向に出したい場合等にコンパクトな構造にでき、多塵地で使用される機械等に好適に用いることができる。
【0018】
第2、第3発明によれば、空気を円筒状のフィルタエレメントの山部の頂点側と一端側の端部とから流入させ、他端側の端部と中空部の内周部分とから流出させるため、濾過空気の通路面積を一層大きくでき、通路抵抗のさらに少ないエアクリーナを提供できる。
特に第2発明では、フィルタエレメントの一端側を中空部で支持するため、この一端側への空気の流れをスムーズにできるとともに、ケーシングの底側の容量を大きくできて砂塵等を余裕をもってためることができたり、砂塵等を排出する開口部分を最適な位置に設けたりすることができる。
【0019】
第4発明によれば、セーフティフィルタを設けることで、フィルタエレメントの交換時に異物が侵入するのを防止できるうえ、例えば第2、第3発明において、このセーフティフィルタを設けた場合など、フィルタエレメントの中空部にセーフティフィルタが配置されるわけではないので、フィルタエレメントを内径側に厚くでき、通路面積をより大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第2実施形態以降においては、次説する第1実施形態と同じ部材および同じ機能を有する部材には同一符号を付し、第2実施形態以降でのそれらの部材の説明を省略または簡略化する。
【0021】
図1は、第1実施形態に係るエアクリーナ1の断面図が示されている。図2は、図1のII−II線矢視図である。
図1、図2において、エアクリーナ1は、砂塵の多い建設現場等で稼動する建設機械に搭載されるものであって、一端が開口したケーシング本体10Aを有する筒状のケーシング10と、ケーシング10内に配置されたフィルタエレメント20と、同じくケーシング10内においてフィルタエレメント20の下流側に配置されたセーフティフィルタ30とを備えている。
【0022】
ケーシング10の外周部分には、図2に示す中心線C−Cに対して偏心した位置で、かつ前記開口とは反対の他端寄りに空気入口管11が設けられ、外部の空気がケーシング10の内部に対して上方から中心線C−Cに沿って入り込むようになっている。また、ケーシング10の他端には、フィルタエレメント20にて濾過された空気が流出する空気出口管12が設けられている。
【0023】
さらに、ケーシング10の外周部分において、空気入口管11とは反対の下部側には、ケーシング10内にたまった砂塵等を排出する排出口13が設けられ、この排出口13には開閉弁として機能する弁部材14が取り付けられている。砂塵等を含んだ空気は、空気入口管11を通してフィルタエレメント20の外周を旋回しながら入り込んでくるため、砂塵等がケーシング10内の底側でかつ一端側寄りにたまる。
【0024】
ここで、弁部材14は例えばゴム等の軟質材料で形成されており、エンジンが駆動されている場合には、ケーシング10内が負圧気味になるために、弁部材14が弾性変形して排出口13を塞ぐが(図1中実線の状態)、エンジンが停止している状態では、変形状態から復帰して排出口13を開放し(図1中の2点鎖線)、たまった砂塵を下方に落として排出する。
【0025】
カバー15は、ケーシング本体10A側に設けられたクランプ10Bにより着脱可能である。この際、カバー15の内側中央には、ケーシング本体10A内側に突出した突出部16が設けられ、カバー15をケーシング本体10Aに装着した状態では、この突出部16がフィルタエレメント20の中空部分に挿入されるようになっている。
【0026】
一方、フィルタエレメント20の空気出口側の端部外周には、例えばゴム等の弾性体よりなる外周側保持部材20Aが接着剤等にて周方向に連続して固着されている。この外周側保持部材20Aは、ケーシング10の内周に設けられた段付状の支持部17に当接され、これによってフィルタエレメント20の空気出口側の位置が決められている。また、外周側保持部材20Aのさらに外周部分は、例えば発泡エラストマ材料等の柔軟な弾性体からなる密封部20Bとされ、密封部20Bが支持部17の大径側の内周と密着することで、濾過された空気が位置決め部分から漏れるのを防止している。
【0027】
また、フィルタエレメント20の中空部分において、空気出口側とは反対の端部内周には、同様な材料よりなる内周側保持部材20Cが周方向に連続して固着され、内周側保持部材20Cのさらに内周部分は、カバー15の突出部16の外周と密着する密封部20Dとされている。このような内周側保持部材20Cには突出部16に設けられた支持部18が当接するようになっており、前述した空気出口側の当接とあわせて、ケーシング10内でのフィルタエレメント20全体の位置決めがなされている。
【0028】
フィルタエレメント20がケーシング10内に配置された状態において、当該フィルタエレメント20の外周とケーシング10の内周との間には、周方向にわたって連通した第1流入空間41が形成され、フィルタエレメント20の片方の端部とカバー15との間には、第1流入空間41と連通した第2流入空間42が形成され、フィルタエレメント20の空気出口側の端部の直ぐ下流側には流出空間43が形成されている。
【0029】
つまり、本実施形態で用いられるフィルタエレメント20は、図1中に黒塗り矢印で示すように、その外周部分から第1流入空間41にある空気を吸入し、カバー15側の端部から第2流入空間42にある空気を吸入可能に設けられ、吸入して濾過された空気は、図1中に白抜き矢印で示すように、フィルタエレメント20の内周部分および空気出口側の端部から流出空間43に流出するように設けられている。
【0030】
以下には、図3ないし図6をも参照し、本実施形態でのフィルタエレメント20について詳説する。
図3は、フィルタエレメント20を示す全体斜視図、図4(A)は、フィルタエレメント20を構成する濾材21の一部を展開した場合の正面図であり、(B)は展開した濾材21を空気出口管12(図1)側から見た側面図、(C)はカバー15(図1)側から見た側面図、図5、図6は、フィルタエレメント20の一製造方法を説明するための図である。
【0031】
図3、図4において、フィルタエレメント20は、漉紙あるいは不織布等よりなる濾材21を山部22と谷部23とに交互に襞折り加エし、これを軸心X−X周りに丸めることにより、断面放射状に広がる多数の襞を有した円筒型に形成されている。円筒型の濾材21の外周部、内周部、および軸心X−X方向の両端面は、例えばパンチングメタルやエキスバンドメタル等の穴明き部材24で被覆され、保護されている。そして、この穴明き部材24の表面に前述した外周側保持部材20Aおよび内周側保持部材20C(図1)が固着されているのである。
【0032】
このようなフィルタエレメント20おいて、軸心X−Xに沿った方向の一端側つまりカバー15側での山部22は、例えば比較的柔軟でゴム状の発泡ウレタン材等からなる山部閉塞部25により閉塞され、他端側つまり空気出口管12側での谷部23は、同じ材料よりなる谷部閉塞部26で閉塞されている。
【0033】
空気は濾材21を通過する際に濾過されるが、濾材21を展開した状態で説明すると、図4中に黒塗り矢印で示すように、山部22の頂点側から流入するとともに、開放されている一端側の谷部23からも軸心X−X方向に沿って流入し、濾材21を通過して濾過された後、図の下方すなわち図の白抜き失印で示す山部22の底辺側、および開放されている他端側の山部22から軸心X−X方向に沿って流出する。
【0034】
また、濾材21を円筒状にした状態で説明すると、図1で示したように、第1、第2流入空間41,42にある空気がそれぞれ、フィルタエレメント20の外周部周りに突出した山部22(外周部周りに開いた谷部23)、およびカバー15側に開口した端部の谷部23から流入し、山部22の底辺側から中空部を通して流出空間43に流出するとともに、山部22の空気出口管12側の端部からも流出空間43に流出し、さらにセーフティフィルタ30を通過して空気出口管12に至る。
【0035】
濾材21の山部22および谷部23の各閉塞部25,26の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば図5に示す手順によるものがある。
すなわち先ず、帯状の濾材21を用意するとともに、長手方向に沿った一方の辺縁において、その表面には当該辺縁に沿った所定幅でテープ部材27を貼り付けておき、他方の辺縁において、その裏面にも同様なテープ部材27を貼り付けておく。テープ部材27の貼り付け強度は僅かでよく、襞折り加工時に剥がれない程度であればよい。この後、濾材21の襞折り加工を行うことで、幅方向の一端側では谷部23の辺縁がテープ部材27でマスキングされ、他端側では山部22の辺縁がテープ部材27でマスキングされるようにする。
【0036】
次いで、濾材21を丸めて円筒状にし、片側の端部ずつ溶融したウレタン材料中に漬け込む(ディッピング)。漬け込む深さは、テープ部材27の幅寸法以下である。漬け込みが終了し、濾材21に付着したウレタン材料が十分に硬化したら、山部22および谷部23に貼られていたテープ部材27を剥がす。以上により、一端側においては谷部23にのみ谷部閉塞部26が形成され、他端側においては山部22にのみ山部閉塞部25が形成されるようになる。なお、テープ部材27としては撥水性を有していることが望ましく、この方がテープ部材27にウレタン材料が付着しないので、テープ部材27を容易に剥がすことができる。
【0037】
また、山部22および谷部23の片端を、各閉塞部25,26を形成することなく塞ぐ方法として、接着法がある。
つまり、帯状の濾材21において、前述したテープ部材27の貼付箇所に相当する部分に接着剤を塗布しておき、この状態で襞折り加工を行うとともに、接着剤が塗布された面同士を接着する。こうすることで、先程のテープ部材27を用いた場合とは塞がれる側は異なるが、結果として、図6に示すように、濾材21の一端側においては山部22のみが接着部28により塞がれ、他端側においては谷部23のみが接着部28により塞がれることになる。この濾材21を筒状に丸めてフィルタエレメント20を得る。
【0038】
なお、本実施形態で用いられるセーフティフィルタ30は、フィルタエレメント20の交換時に異物等が空気出口管12内に入り込むのを防ぐために流出空間43内に設けられており、図1に示すように、弾性体よりなる外周側の保持部材31を介してケーシング10の内周に密着しながら段付部19に保持されている。
【0039】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態に係るエアクリーナ2の断面図が示されている。図8は、図7のVIII−VIII線矢視図である。
図7、図8に示すエアクリーナ2において、ケーシング本体10Aのカバー15側の端部内周部には、フィルタエレメント20の外周部分を支持する支持部51が設けられている。そのフィルタエレメント20の外周部分には外周側保持部材61が固着され、フィルタエレメント20をケーシング10に収納しときには、外周側保持部材61が支持部51に当接し、フィルタエレメント20の一端が保持される。カバー15のケーシング本体10A側の端部には当接部52が設けられ、カバー15をケーシング本体10Aに取り付けたときに、当接部52が外周側保持部材61の側面に当接し、フィルタエレメント20の軸心方向の位置を決める。
【0040】
また、フィルタエレメント20の外周側保持部材61およびカバー15の当接部52は、等周間隔で4箇所に設けられ、間隔が空けられていることで形成される隙間により第1流入空間41と第2流入空間42とが連通し、濾過される空気を第2流入空間42に流入し易くしているとともに、空気をフィルタエレメント20の谷部23の端部から軸心に沿って内部に流入させることが可能になっている。この際、砂塵を含む空気がフィルタエレメント20の中空部に入るのを防止するために、中空部の端には中央閉塞部62が形成されている。フィルタエレメント20内での空気の流れ等に関しては第1実施形態のものと同一なので、詳細説明は省略する。
【0041】
〔第3実施形態〕
図9に示す第3実施形態のエアクリーナ3では、ケーシング10およびフィルタエレメント20の形状が第1、第2実施形態とは大きく異なる。
つまり、本実施形態でのケーシング10のケーシング本体10Aは上方に開口した略箱状であり、ケーシング10の下部側に空気出口管12が設けられている。また、ケーシング本体10Aの開口を塞ぐカバー15に空気入口管11が設けられている。
【0042】
ケーシング10内には、直方体状のフィルタエレメント20が収容される収容部53が設けられている。収容部53には、上方からフィルタエレメント20を落とし込むための上側開口部54と、濾過した空気を下方に流出される下側開口部55と、フィルタエレメント20の谷部23の開口した端部と対向した入口側開口部56と、山部22の開口した端部と対向する出口側開口部57とが設けられている。
【0043】
また、フィルタエレメント20の直上はカバー15で形成された第1流入空間41とされ、谷部23の開口した端部(入口側開口部56)の直ぐ上流は第2流入空間42とされ、山部22の開口した端部(出口側開口部57)の直ぐ下流は流出空間43とされ、フィルタエレメント20の直下は大きな流出空間44になっている。第1流入空間41および第2流入空間42は直に連通しており、各流出空間43,44も直に連通している。すなわち、各流入空間41,42と各流出空間43,44とはフィルタエレメント20を介して連通しているのであり、各流入空間41,42から空気が直接各流出空間43,44に流れないよう、収容部53の周囲にはケーシング本体10Aの内周との間で遮蔽部58が形成されている。
【0044】
フィルタエレメント20は、第1実施形態の図4で説明した状態の濾材21が用いられている。したがって、空気入口管11から流入した空気は、図中に黒抜き矢印で示すように、第1、第2流入空間41,42において、山部22の頂点側および開放されている谷部23から流入し、白抜き矢印で示すように、山部22の底辺側から下方の流出空間44へと流出し、また、開放されている山部22の端部から流出空間43へと流出し、大きな流出空間へ流れる。流出空間43へ流出した空気は、流出空間44へと流れ、空気出口管12へ至る。
【0045】
このようなフィルタエレメント20の濾材21も、図示しない穴明き部材で外表面が保護されており、穴明き部材の下部側の周縁、および上部側の周縁には、弾性を有する保持部材63が四周にわたって連続して設けられ、これらの保持部材63が収容部53の内面と密着することで、濾過した空気が漏れ出さない用になっているうえ、フィルタエレメント20はがたのない状態で収容されるようになっており、通常使用時の振動等では上方に外れることがない。なお、本実施形態では、セーフティフィルタが設けられていないが、流出空間44内の適宜な位置にセーフティフィルタを設けてもよい。
【0046】
〔第4実施形態〕
図10は、本発明の第4実施形態に係る濾材21の説明図である。図10において、(D)は正面図であり、(E)は(D)の左側面図、(F)は(D)の右側面図である。
図に示すように、濾材21の下端面、すなわち山部22の底面は、例えばシート状の底面閉塞部64により全面閉塞されている。濾過される流体は図の黒塗り矢印に示すように、山部22の頂点側、および谷部23の開口した端部(右側面側)から流入し、濾過された流体は図の白抜き失印に示すように、山部22の開口した端部(左側面側)から流出する。
このような濾材21を軸心周りに丸めて円筒状とすれば、前述した第1、第2実施形態でのフィルタエレメント20に適用でき、丸めずにそのまま使用することで第3実施形態でのフィルタエレメント20に適用できる。後述する第5、第6実施形態の濾材21も同様である。
【0047】
〔第5実施形態〕
図11は、本発明の第5実施形態に係る濾材21の説明図である。図11において、(G)は正面図であり、(H)は(G)の左側面図、(J)は(G)の右側面図である。
図に示すように、濾材21の右側面は、側面閉塞部65により全面閉塞されている。濾過される流体は図の黒塗り矢印に示すように、山部22の頂点側から流入し、濾過された流体は図の白失印に示すように、山部22の底辺側、および山部22の開口した端部(左側面側)から流出する。
【0048】
〔第6実施形態〕
図12は、本発明の第6実施形態に係る濾材21の説明図である。図12において、(K)は正面図であり、(M)は(K)の左側面図、(N)は(K)の右側面図である。
図に示すように、濾材21の下端面、すなわち山部22の底面は底面閉塞部64により閉塞され、右側面は側面閉塞部65により全面閉塞されている。濾過される流体は図の黒塗り矢印に示すように、山部22の頂点側から流入し、濾過された流体は図の白抜き失印に示すように、山部22の開口した端部(左側面側)からのみ流出する。
【0049】
〔第7実施形態〕
図13は、本発明の第7実施形態のエアクリーナ7の要部を示す断面図である。
本実施形態では、セーフティフィルタ30が空気出口管12内に設けられている点で、第1、第2実施形態とは異なる。このセーフティフィルタ30は、ケーシング10の内径よりも小さい径寸法の空気出口管12内に設けられているために、その全体の厚さ寸法(軸心に沿った方向の寸法)が大きく設定され、濾過面積を稼いでいる。
【0050】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の活用例として、エンジンの吸気用エアクリーナ等がある。そして、例えば本発明のセーフティフィルタを取り付けることによって、多塵地で使用される建設機械等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエアクリーナの断面図。
【図2】図1のII−II線矢視図。
【図3】第1実施形態のエアクリーナに用いられるフィルタエレメントを示す全体斜視図。
【図4】(A)は、前記フィルタエレメントを構成する濾材の一部を展開した場合の正面図であり、(B)は展開した濾材の側面図、(C)は別の方向からの側面図。
【図5】前記フィルタエレメントの製造方法を説明するための図。
【図6】前記フィルタエレメントの他の製造方法を説明するための図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るエアクリーナの断面図。
【図8】図7のVIII−VIII線矢視図。
【図9】本発明の第3実施形態に係るエアクリーナの断面図。
【図10】本発明の第4実施形態に係る濾材の説明図。
【図11】本発明の第5実施形態に係る濾材の説明図。
【図12】本発明の第6実施形態に係る濾材の説明図。
【図13】本発明の第7実施形態に係るエアクリーナの要部を示す断面図。
【図14】従来の第1例の2筒式エアクリーナの断面図。
【図15】同上の第1濾過エレメントの一部断面図。
【図16】従来の第2例の直列エアクリーナの斜視図。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3,7…エアクリーナ、10…ケーシング、11…空気入口管、12…空気出口管、17,18,51…支持部、20…フィルタエレメント、22…山部、23…谷部、30…セーフティフィルタ、62…中央閉塞部、X−X…軸心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナにおいて、
ケーシングと、
ケーシング内に配置されるフィルタエレメントとを備え、
前記フィルタエレメントには、所定高さで山谷に折られた山部および谷部が交互に連続的に形成され、
前記フィルタエレメントの一端側では、少なくとも前記山部の端部が閉塞され、
前記フィルタエレメントの他端側では、前記谷部の端部が閉塞され、
前記フィルタエレメントで濾過される空気は、少なくとも前記山部の頂点側から当該フィルタエレメントに流入し、少なくとも前記他端側の山部の端部から流出する
ことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアクリーナにおいて、
前記フィルタエレメントは、中空部分を有する円筒状とされ、
前記ケーシングには、濾過するための空気を前記フィルタエレメントの軸心方向に対して略直角方向から流入させる空気入口管と、濾過後の空気を前記軸心方向に沿って流出させる空気出口管とが設けられ、
前記ケーシングの内部には、前記フィルタエレメントの閉塞された谷部側の端部外周縁を周方向に連続的に密着支持する支持部と、前記フィルタエレメントの閉塞された山部側の端部内周縁を周方向に連続的に密着支持して前記中空部分を塞ぐ別の支持部とが設けられ、
前記フィルタエレメントで濾過される空気は、前記山部の頂点側からと前記一端側の谷部の端部とから当該フィルタエレメントに流入し、前記他端側の山部の端部と前記中空部分の内周側から流出する
ことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項3】
請求項1に記載のエアクリーナにおいて、
前記フィルタエレメントは、中空部分を有する円筒状とされ、
前記ケーシングには、濾過するための空気を前記フィルタエレメントの軸心方向に対して略直角方向から流入させる空気入口管と、濾過後の空気を前記軸心方向に沿って流出させる空気出口管とが設けられ、
前記ケーシングの内部には、前記フィルタエレメントの閉塞された谷部側の端部外周縁を周方向に連続して密着支持する支持部と、前記フィルタエレメントの閉塞された山部側の端部外周縁を周方向に断続的に支持する別の支持部とが設けられ、
前記フィルタエレメントには、前記中空部分の前記閉塞された山部側の端部開口を塞ぐ中央閉塞部が設けられ、
前記フィルタエレメントで濾過される空気は、前記山部の頂点側からと前記一端側の谷部の端部とから当該フィルタエレメントに流入し、前記他端側の山部の端部と前記中空部分の内周側から流出する
ことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアクリーナにおいて、
前記フィルタエレメントの下流側には、当該フィルタエレメントが外された際に異物の浸入を防ぐセーフティフィルタが設けられている
ことを特徴とするエアクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−35208(P2006−35208A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164557(P2005−164557)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】