説明

エアクリーナ

【課題】機械的強度が高く、長寿命かつ放電能力の劣化が小さく、安価な放電電極を備えたエアクリーナを提供する。
【解決手段】放電によって気流中の粒子を荷電するイオナイザ5と、イオナイザ5より下流側に設置され、イオナイザ5により荷電された粒子を吸着するコレクタ6と、イオナイザ5に粒子を荷電するのに必要な高電圧を印加するとともに、コレクタ6に粒子を吸着するのに必要な高電圧を印加する高電圧印加部4とを有するエアクリーナ1において、イオナイザ5は、気流と平行に設置される複数の対向電極板7と、対向電極板7間に間隔をおいて、対向電極板7と垂直に設置される放電電極板8とで構成され、対向電極板7に対向する放電電極板8の面には対向電極板7との間で放電を行う放電部8aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電により気流中の粒子を荷電し、荷電された粒子を吸着するエアクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集塵セルとフィルタを内蔵したエアクリーナが利用されているが、この集塵セル内には上流側にイオナイザ、下流側にコレクタが順次並設されている(例えば、特許文献1参照)。このエアクリーナでは、電源が投入されると、その内部の高電圧出力装置で高電圧を発生し、この高電圧をイオナイザの入力線及びコレクタの入力線にそれぞれ供給する。すなわち、イオナイザ内の放電電極と対向電極との間及びコレクタのコレクタ電極にそれぞれ高電圧が入力される。すると、イオナイザ内に導入されたホコリの粒子はイオナイザの放電電極の放電により生じた静電界内で荷電されて正または負に帯電される。そして、正または負に帯電された粒子はコレクタの各コレクタ電極に到達して、正に帯電した粒子は接地されたコレクタ電極に、負に帯電した粒子は高電圧がコレクタ入力線を介して印加されているコレクタ電極にそれぞれ吸着される。
【0003】
また、イオナイザに設けられる放電電極は、様々な形状のものが考案され使用されているが、大別すると線状放電電極と板状放電電極に分類される(例えば、特許文献2参照)。線状放電電極は、例えばタングステン線が用いられるが、使用初期から長期経過しても放電性能の劣化は少ないという利点を有する。一方、板状放電電極は、線状放電電極よりも肉厚であるので、強靭で長持ちする反面、通常、放電電極として使用される際、対向電極と平行に配置されるため、単純な角材の板状電極では放電能力が低い。そこで、この板状放電電極に刺や針を設けることで放電能力を高めるように工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案2539206号公報
【特許文献2】特開2007−136284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、線状放電電極では、放電を繰り返すにしたがい、放電電極の線が細くなり断線し易くなるという課題がある。
【0006】
また、刺や針を有する板状放電電極では、使用し始めると、放電の度にこれらの刺や針が集中的に損耗するため、この損耗により放電能力が比較的早く劣化してしまうという課題がある。
【0007】
このように線状放電電極も板状放電電極も耐久性や放電性能の面で課題を有すると共に、市場では長寿命かつ放電能力の劣化が小さく安価な放電電極が望まれている。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、機械的強度が高く、長寿命かつ放電能力の劣化が小さく、安価な放電電極を備えたエアクリーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエアクリーナは、放電によって気流中の粒子を荷電するイオナイザと、イオナイザより下流側に設置され、イオナイザにより荷電された粒子を吸着するコレクタと、イオナイザに粒子を荷電するのに必要な高電圧を印加するとともに、コレクタに粒子を吸着するのに必要な高電圧を印加する高電圧印加部とを有するエアクリーナにおいて、イオナイザは、気流と平行に設置される複数の対向電極板と、対向電極板間に間隔をおいて、対向電極板と垂直に設置される放電電極板とで構成され、対向電極板に対向する放電電極板の面には対向電極板との間で放電を行う放電部が形成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、機械的強度が高く、また放電が繰り返されても放電特性の劣化を抑えることができ、長寿命で安価な放電電極を有するエアクリーナを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエアクリーナの構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における放電電極の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエアクリーナ1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、エアクリーナ1は、プレフィルタ2、集塵セル3及び高電圧印加部4により構成される。
【0013】
プレフィルタ2は、エアクリーナ1内を通過する気流中の比較的大きなホコリ、塵等の粒子を除去するためのものであり、サランネットまたは不織布などにより形成される。
【0014】
集塵セル3は、プレフィルタ2により取り除かれなかった気流中のホコリ、塵等の粒子を荷電して吸着することにより除去するものであり、図1に示すように、イオナイザ5及びコレクタ6により構成される。
【0015】
イオナイザ5は、高電圧印加部4から高電圧を印加されることにより、放電し、静電界を発生させ、このイオナイザ5の静電界内を通過する気流中に含まれるホコリ、塵等の粒子を荷電させて、正または負に帯電させるものであり、図1に示すように、対向電極板7及び放電電極板8により構成される。
【0016】
対向電極板7は、図1に示すように、イオナイザ5内を通過する気流に対してその厚み方向に垂直な面が平行になるように設置される複数の板状の電極板であり、高電圧印加部4の負極側と接続されている。
【0017】
放電電極板8は、図1に示すように、対向電極板7間に所定の間隔をおいて設置される板状の電極板であり、高電圧印加部4の正極側と接続されている。この放電電極板8の厚み方向に垂直な面は、対向電極板7の厚み方向に垂直な面に対して垂直になるように配置される。ここで、対向電極板7に対向する放電電極板8側面には、高電圧印加部4から印加される高電圧により対向電極板7との間で放電を行う放電部8aが形成される。また、この放電電極板8の放電部8aは曲面に形成される。
【0018】
コレクタ6は、イオナイザ5により荷電され、正に帯電された気流中のホコリ、塵等の粒子を静電力により吸着するものであり、図1に示すように、高電圧印加部4の正極側に接続される複数の板状の正極コレクタ電極板6aと、高電圧印加部4の負極側に接続される複数の板状の負極コレクタ電極板6bとが所定の間隔をおいて交互に、イオナイザ5の下流側に、通過する気流に対して厚み方向に垂直な面が平行になるように設置されている。
【0019】
高電圧印加部4は、イオナイザ5に粒子を荷電するのに必要な高電圧を印加するとともに、コレクタ6に粒子を吸着するのに必要な高電圧を印加するものである。図1に示すように、この高電圧印加部4の正極側はイオナイザ5内の放電電極板8及びコレクタ6の正極コレクタ電極板6aに接続され、高電圧印加部4の負極側はイオナイザ5内の対向電極板7及びコレクタ6の負極コレクタ電極板6bに接続されている。
【0020】
次に、上記のように構成されるエアクリーナ1の動作について説明する。
エアクリーナ1に不図示の電源が投入されると、不図示の送風機によりエアクリーナ1内に空気が取り込まれる。この空気はプレフィルタ2により比較的大きなホコリ、塵等の粒子が除去され、集塵セル3内のイオナイザ5に送られる。また、高電圧印加部4では高電圧が発生し、集塵セル3内のイオナイザ5及びコレクタ6にそれぞれ供給する。イオナイザ5に設けられる放電電極板8は高電圧印加部4から高電圧が印加されると、対向電極板7及び放電電極板8の放電部8a間に、高電圧印加部4から印加される高電圧に応じた強さの放電を起こし、静電界が生じる。このイオナイザ5内に発生する静電界内をプレフィルタ2により比較的大きな粒子が除去された空気が通過することにより、この空気中に残っているホコリ、塵等の粒子は荷電され、正に帯電される。このイオナイザ5内で正に帯電された粒子は、イオナイザ5の下流側に設置されるコレクタ6に送られ、正に帯電された粒子は、高電圧印加部4の負極側に接続される負極コレクタ電極板6bに静電力により吸着されることにより、エアクリーナ1内に流入する空気中のホコリ、塵等の汚染物質を除去することができる。
【0021】
ここで、イオナイザ5に設けられる放電電極板8を板状に形成したので、従来の線状放電電極を用いた場合に対して機械的強度を高くすることができる。また、放電電極板8の厚み方向に垂直な面は対向電極板7の厚み方向に垂直な面に対して垂直になるように配置し、対向電極板7に対向する放電電極板8側面に放電部8aが形成されるように構成したので、放電の繰り返しによる放電特性の劣化を減少させることができる。
【0022】
次に、この発明の実施の形態1に係るエアクリーナ1の放電電極板8の他の構成例について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における放電電極板8の他の構成例を示す図である。
【0023】
図2(a)は曲げ部8bを有する放電電極板8を示す断面図である。
図1に示した、放電電極板8では板状の放電電極板により構成したが、図2(a)に示すように、両端部に放電部8aが形成される面の中央部に曲げ部8bが放電部8aに沿って形成されることにより、放電電極板8の機械的強度をさらに上げることができる。
【0024】
図2(b),(c)は肉厚部8cを有する放電電極板8を示す断面図である。
図2(b),(c)に示すように、両端部に放電部8aが形成される面の中央部の両面または片面に、端部の肉厚よりも厚くなるような肉厚部8cが放電部8aに沿って形成されることでも、放電電極板8の機械的強度をさらに上げることができる。
【0025】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、板状の放電電極板8の厚み方向に垂直な面は対向電極板の厚み方向に垂直な面に対して垂直になるように配置し、対向電極板7に対向する放電電極板8側面に放電部8aが形成されるように構成したので、簡易な構成で、放電電極板8の機械的強度を高めることができ、また放電が繰り返されても初期状態からの放電特性劣化を抑えることができるため、長寿命で安価な放電電極を有するエアクリーナ1を得ることができる。
【0026】
また、放電電極板8の放電部8aは曲面になるように形成したので、放電電極板8の放電特性をさらに向上させることができる。
【0027】
また、この発明の実施の形態1に係るエアクリーナ1では、対向電極板7に高電圧印加部4の負極側を接続し、放電電極板8に高電圧印加部4の正極側を接続するように構成したが、対向電極板7に高電圧印加部4の正極側を接続し、放電電極板8に高電圧印加部4の負極側を接続するように構成してもよい。
【0028】
また、この発明の実施の形態1に係るエアクリーナ1では、放電電極板8は、放電部8aが形成される面が対向電極板7の厚み方向に垂直な面に対向するように配置して説明したが、エアクリーナ1内を通過する気流の影響が大きい場合には、放電電極板8を対向電極板7に対して傾けて配置してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 エアクリーナ
2 プレフィルタ
3 集塵セル
4 高電圧印加部
5 イオナイザ
6 コレクタ
6a 正極コレクタ電極板
6b 負極コレクタ電極板
7 対向電極板
8 放電電極板
8a 放電部
8b 曲げ部
8c 肉厚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電によって気流中の粒子を荷電するイオナイザと、
前記イオナイザより下流側に設置され、前記イオナイザにより荷電された前記粒子を吸着するコレクタと、
前記イオナイザに前記粒子を荷電するのに必要な高電圧を印加するとともに、前記コレクタに前記粒子を吸着するのに必要な高電圧を印加する高電圧印加部と
を有するエアクリーナにおいて、
前記イオナイザは、気流と平行に設置される複数の対向電極板と、前記対向電極板間に間隔をおいて、前記対向電極板と垂直に設置される放電電極板とで構成され、
前記対向電極板に対向する前記放電電極板の面には前記対向電極板との間で放電を行う放電部が形成されることを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
前記放電部は曲面に形成されることを特徴とする請求項1記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記放電電極板の中間部に曲げ部が形成されることを特徴する請求項1または請求項2記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記放電電極板の中間部に端部の肉厚よりも厚くなるような肉厚部が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のエアクリーナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate