説明

エアゾール容器用バルブ、該バルブを備えたエアゾール容器、該エアゾール容器に内容物が充填されたエアゾール製品

【課題】 ハウジング内に存在する析出物や不純物の沈降に起因する流入孔の目詰まりを防止することができるエアゾール容器用バルブ、該バルブを備えたエアゾール容器、該エアゾール容器に充填されたエアゾール製品を提供する。
【解決手段】 エアゾール容器本体の頭頂部に設けられ且つエアゾール容器本体に充填された内容物が流入孔から流入するハウジングと、該ハウジング上部から突出して設けられ且つ付勢手段により上方向に付勢されたステムを有するエアゾール容器用バルブであって、前記ハウジング内の底部において、前記流入孔の開口部が、前記底部の最下部よりも高い位置にあることを特徴とするエアゾール容器用バルブ、該バルブを備えたエアゾール容器、該エアゾール容器に内容物が充填されたエアゾール製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内部の目詰まり(特にハウジングの流入孔(アンダータップ孔)の目詰まり)を防止するためのエアゾール容器用バルブ、該バルブを備えたエアゾール容器、該エアゾール容器に内容物が充填されたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器に原液と噴射剤からなる内容物が充填されたエアゾール製品は、押圧部を押圧するだけで簡単に内容物を吐出することが可能であることから、現在様々な分野における商品、例えば、化粧料、殺虫剤、芳香剤、消臭剤等に使用されている。
【0003】
エアゾール製品は、原液と原液を噴射するための噴射剤を収容した容器本体と、容器本体頭頂部に取り付けられたバルブとから構成されている。
図9は従来のエアゾール製品を説明するための図であり、バルブ周辺を示している。
図9に示すバルブ(5)は容器本体の頭頂部に設けられたハウジング(6)と、ハウジング(6)に収容され且つ上部に突出して設けられたステム(7)を有している。そして、ステム(7)に取り付けられた押圧部(8)を押圧することで、ステム(7)を押し下げる。それにより、バルブ(5)が開放され、ディップチューブ(9)から吸い上げられた内容物が流入孔(アンダータップ孔)(61)、ステム孔(71)、ステム(7)の内部流路(72)を順に通って、霧状、粘性液体状、又は泡沫状となり、押圧部(8)の吐出孔(81)から外部へと吐出される。
【0004】
また、ハウジング(6)にはベーパータップ孔(62)が設けられている。ベーパータップ孔(62)は、容器本体内部の気相部にある液化ガス等の噴射剤をハウジング(6)内部に導入するための孔である。
ベーパータップ孔(62)を設けることにより、吐出した内容物中の気相の割合を多くすることができ、内容物を細かく霧状にして均一に吐出させることができる。
【0005】
一方、例えば、毛髪化粧料の場合、原液中にセット樹脂やオイル成分を多量に配合すると、これらの成分によるべたつき感が生じ易くなる。当該べたつき感を低減させるために、原液比を低くする方法を採用することができるが、原液比を低くした場合、ベーパータップ孔(62)を設けると、吐出した内容物中の気相の割合が多くなり過ぎて、吐出時の舞い散りが過剰となってしまう。
そのため、毛髪化粧料の場合等は、吐出時の舞い散りを抑えるために、ベーパータップ孔(62)を設けないこともある。
【0006】
しかし、ベーパータップ孔(62)を設けない場合、噴射剤を充填することにより、ハウジング(6)内は噴射剤で満たされた状態となる。その状態でステム(7)に押圧部(8)を取り付けるため、ステム(7)を押し下げると、内容物がハウジング(6)内に入り込んでしまう。その場合、吸い込まれた原液中に含まれる特定の成分(毛髪化粧料の場合、主にセット樹脂)が析出し、流入孔(61)に侵入し、目詰まりが発生するという問題が生じることがある。
【0007】
ベーパータップ孔(62)を設けた場合、使用前にハウジング(6)内が噴射剤により満たされることが少ないため、上記理由による流入孔(61)の目詰まりは生じにくいが、下記(a)〜(c)の理由により、流入孔(61)が目詰まりするという問題が生じる。
(a)内容物を吐出した後、ハウジング(6)内に残った原液中の特定の成分(毛髪化粧料の場合、主にセット樹脂)が析出し、内容物の吐出を再度行う際、析出した特定の成分が剥離され、沈降して流入孔(61)に侵入し、目詰まりが発生する。
(b)経時的に容器内で析出した析出物が、内容物を吐出する際にハウジング(6)内に侵入し、内容物の吐出終了後、ハウジング(6)内に侵入した析出物が沈降して流入孔(61)に侵入することにより目詰まりが発生する。
(c)エアゾール製品の製造時に容器内に混入した不純物が、内容物を吐出する際にハウジング(6)内に侵入し、内容物の吐出終了後、不純物が沈降して流入孔(61)に侵入することにより目詰まりが発生する。
【0008】
流入孔(61)の目詰まりが発生すると、内容物の吐出時に一定量吐出できない、経時的に吐出量が減少する、全く吐出できなくなるといった吐出不良の問題が生じる。
【0009】
従来から目詰まりを解消するための技術は種々開示されている。目詰まりを解消するための技術としては、例えば下記特許文献1乃至4の開示技術を挙げることができる。しかしながら、特許文献1,2,3の開示技術は、吐出時におけるハウジング内への析出物等の流入を防ぐものであり、特許文献4の開示技術は吐出時におけるステム口内への析出物等の流入を防ぐものである。
つまり、特許文献1乃至4の開示技術は吐出時の目詰まりを防止するためのものであり、吐出後や保管時等にハウジング(6)内に既に存在する析出物や不純物が沈降することによって発生する流入孔(61)の目詰まりを防止することはできない。
【0010】
【特許文献1】特許第3409240号公報
【特許文献2】特許第3409241号公報
【特許文献3】特開2003−81371号公報
【特許文献4】特開2003−72869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ハウジング内に存在する析出物や不純物の沈降に起因する流入孔の目詰まりを防止することができるエアゾール容器用バルブ、該バルブを備えたエアゾール容器、該エアゾール容器に内容物が充填されたエアゾール製品を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、エアゾール容器本体の頭頂部に設けられ且つエアゾール容器本体に充填された内容物が流入孔から流入するハウジングと、該ハウジング上部から突出して設けられ且つ付勢手段により上方向に付勢されたステムを有するエアゾール容器用バルブであって、前記ハウジング内の底部において、前記流入孔の開口部が、前記底部の最下部よりも高い位置にあることを特徴とするエアゾール容器用バルブに関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記開口部から前記最下部に向けて下方に傾斜していることを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器用バルブに関する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記底部上に隆起部が設けられており、前記流入孔が前記隆起部を貫通していることを特徴とする請求項1又は2記載のエアゾール容器用バルブに関する。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記隆起部が円錐台状であり、前記流入孔が前記隆起部の中心線上を貫通していることを特徴とする請求項3記載のエアゾール容器用バルブに関する。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記流入孔の中心軸が、前記ステムの中心軸と一致しないことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のエアゾール容器用バルブに関する。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記ハウジングにベーパータップ孔が設けられていないことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のエアゾール容器用バルブに関する。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6いずれかに記載のエアゾール容器用バルブを備えたエアゾール容器に関する。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項7記載のエアゾール容器に前記内容物が充填されたエアゾール製品に関する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、エアゾール容器本体の頭頂部に設けられ且つエアゾール容器本体に充填された内容物が流入孔から流入するハウジングと、該ハウジング上部から突出して設けられ且つ付勢手段により上方向に付勢されたステムを有するエアゾール容器用バルブであって、前記ハウジング内の底部において、前記流入孔の開口部が、前記底部の最下部よりも高い位置にあることにより、ハウジング内に存在する析出物や不純物が沈降したとしても、該析出物や不純物(以下、沈降物と称す)が最下部に蓄積する。そのため、沈降物に起因する流入孔の目詰まりを防止することができる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、前記開口部から前記最下部に向けて下方に傾斜していることにより、傾斜面に沿って沈降物が移動するので、沈降物に起因する流入孔の目詰まりをより確実に防止することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、前記底部上に隆起部が設けられており、前記流入孔が前記隆起部を貫通していることにより、開口部が最下部より高い位置に存在することとなり、沈降物を最下部に蓄積させることができる。そのため、沈降物に起因する流入孔の目詰まりを防止することができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、前記隆起部が円錐台状であり、前記流入孔が前記隆起部の中心線上を貫通していることにより、流入口から最下部に向けて下方に傾斜することとなる。そのため、沈降物に起因する流入孔の目詰まりをより確実に防止することができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、前記流入孔の中心軸が、前記ステムの中心軸と一致しないことにより、開口部を最下部から離れた位置とすることができ、開口部と最下部との高低差も大きくすることができる。その結果、開口部から最下部の部分の容積を大きくすることができ、最下部により多くの沈降物を蓄積することができるので、流入孔の目詰まりをより確実に防止することができる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、前記ハウジングにベーパータップ孔が設けられていないことにより、ステムに押圧部を取り付ける際にハウジングに吸い込まれた原液中に含まれる成分に起因する沈降物が生じるが、当該沈降物による流入孔の目詰まりも防止することができる。また、原液中にセット樹脂やオイル成分を配合した毛髪化粧料等を用いた場合、べたつきを抑えるために原液比を低くすることがあるが、そのような場合でも、ベーパータップ孔を設けないことにより、吐出時の舞い散りを抑えることができる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、請求項1乃至6いずれかに記載のエアゾール容器用バルブを備えたエアゾール容器であることにより、目詰まりの発生を抑えることができるエアゾール容器となる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、請求項7記載のエアゾール容器に前記内容物が充填されたエアゾール製品であることにより、セット樹脂等の目詰まりが発生しやすい成分を用いたとしても、目詰まりの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るエアゾール容器用バルブ、該バルブを備えたエアゾール容器、該エアゾール容器に内容物が充填されたエアゾール製品の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
図1は、内容物が充填された本発明の実施形態に係るエアゾール容器(エアゾール製品)全体を示す図である。
図2は、本発明の実施形態に係るエアゾール容器用バルブの周辺を示す図であり、不使用時(吐出していないとき)の図を示す。
図3は、本発明の実施形態に係るエアゾール容器用バルブの周辺を示す図であり、使用時(吐出時)の図を示す。
図4は、本発明の実施形態に係るエアゾール容器用バルブの流入孔(アンダータップ孔)を説明するための説明図であり、ハウジングの形状を示している。また、図4(b)は(a)の(X)の部分を示す拡大図である。また、図4において、説明の都合上、ステム等は省略している。
なお、明細書中上下方向とは、図1〜4の上下方向を指す。
【0029】
本実施形態に係るエアゾール容器は、図1に示す如く、容器本体(A)と吐出装置(B)より構成される。
容器本体(A)の中には原液(C)と噴射剤(D)が収容されている。なお、本明細書において、原液(C)と噴射剤(D)をあわせて内容物と称す。また、図1では、原液(C)と噴射剤(D)が容器内に収容されている一例を示しているが、原液(C)中に噴射剤(D)の一部が溶け込み完全に相溶し均一になっている場合もあれば、噴射剤(D)が原液(C)に溶け込まず両者が不均一に分離している場合もある。
噴射剤(D)は原液(C)を噴射させるためのものであり、空気・窒素等の圧縮ガスとジメチルエーテル(DME:Dimethyl ether)・液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガスの混合物等を挙げることができる。
【0030】
吐出装置(B)は、図2,3に示す如く、押圧部(1)、エアゾール容器用バルブ(2)(以下、単にバルブ(2)と称すこともある)等から構成され、バルブ(2)は、マウンテンカップ(4)、ハウジング(21)、ディップチューブ(3)等からなる。
具体的には、容器本体(A)の頭頂部に備えられたマウンテンカップ(4)のボス部(41)にバルブ(2)のハウジング(21)等が嵌着され、バルブ(2)上端部に押圧部(1)が装着されている。また、バルブ(2)の下端部からはディップチューブ(3)が下方に延設されており、ディップチューブ(3)の下部は容器本体(A)の原液(C)内に浸漬されている。
【0031】
バルブ(2)は、エアゾール容器本体の頭頂部に設けられたハウジング(21)と、ハウジング(21)上部から突出して設けられ且つ付勢手段(23)により上方向に付勢されたステム(22)を有する。また、ハウジング(21)の内部空間は、ステム基端部(22a)が挿入される上方空間(2121)と、ディップチューブ(3)の内部空間と連通する下方空間(2122)とを備えており、上方空間(2121)と下方空間(2122)が流入孔(211)で連通されている。さらに、上方空間(2121)は、上方に大径部(2121a)と下方に小径部(2121b)を有し、流入孔(211)は小径部(2121b)の底部(216)(即ち、ハウジング(21)の底部(216))に形成されている。そして、ディップチューブ(3)から吸い上げられた原液(C)が、原液(C)内に溶け込んでいる噴射剤(D)とともに流入孔(211)を通ってハウジング(21)内へ吸い上げられるように構成されている。
なお、付勢手段(23)としてはコイルバネ等を用いることができる。
【0032】
エアゾール容器における内容物の吐出操作について説明することにより、バルブ(2)についてより詳しく説明する(主に図2,3参照)。
不使用時(吐出時以外のとき)、ステム(22)は付勢手段(23)により上方向へと付勢されている(図2参照)。これにより、ステム(22)下部とハウジング(21)上部とがガスケット(24)を介して密接した状態、即ちバルブ(2)が閉鎖した状態となっている。
そして、内容物を吐出する際は、付勢手段(23)の上方向の付勢力に抗してステム(22)を下動させることにより、バルブ(2)を開放する(図3参照)。具体的には、ステム(22)上に備えられた押圧部(1)を押圧することによりステム(22)を押し下げる。ステム(22)を押し下げると、ガスケット(24)が下方へ撓みステム孔(221)が開放される。そして、容器本体(A)内に充填された原液(C)の界面が噴射剤(D)によって下方向に押され、内容物(原液(C)及び原液(C)内に溶け込んでいる噴射剤(D))がディップチューブ(3)から吸い上げられる。ディップチューブ(3)から吸い上げられた内容物は、下方空間(2122)、流入孔(211)、小径部(2121b)、大径部(2121a)、ステム孔(221)、ステム(22)の内部流路(222)を順に通って、押圧部(1)の吐出孔(11)から吐出される。
【0033】
ここで、ハウジング(21)内の底部(216)において、流入孔(211)の開口部(211a)は、図4(特に図4(b))で示す如く、最下部(213)よりも高い位置にある。
具体的には、ハウジング(21)の底部(216)上に円錐台状の隆起部(214)が設けられており、隆起部(214)の中心線上を流入孔(211)が貫通している。これにより、開口部(211a)を最下部(213)より高くしている。また、底部(216)において、隆起部(214)が存在しない場所が最下部(213)となる。隆起部(214)を有することにより、開口部(211a)の位置が最下部(213)よりも高い位置となる。
【0034】
開口部(211a)が最下部(213)よりも高い位置にあることにより、ハウジング(21)内の析出物や不純物が沈降したとしても、沈降した析出物や不純物(沈降物)が図4(b)矢印のように沈降し、最下部(213)に蓄積する。そのため、沈降物が開口部(211a)から流入孔(211)に侵入し、目詰まりが発生することを防ぐことができる。
また、本実施形態では、底部(216)は開口部(211a)から最下部(213)に向けて下方に傾斜している。これにより、沈降物は傾斜面に沿って最下部(213)の方に移動するため、沈降物の流入孔(211)への侵入をより確実に抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態では、ハウジング(21)にベーパータップ孔を設けていない。
ベーパータップ孔を設けない場合、ベーパータップ孔からの気相の流入がないため気相の割合が増加し過ぎず、吐出の舞い散りの増大を抑えることができる。
ベーパータップ孔を設けない場合、ハウジング(21)内が噴射剤(D)(特に液化ガス)で満たされやすくなる。そのため、ステム(22)に押圧部(1)を取り付ける際、ステム(22)を押し下げてしまい、内容物がハウジング(21)内に吸い込まれてしまう。その結果、吸い込まれた内容物における原液(C)に含まれる特定の成分が析出し、凝縮・沈降する。
しかし、本実施形態では開口部(211a)が最下部(213)よりも高い位置にあるため、沈降物は開口部(211a)ではなく、最下部(213)に蓄積される。それにより、沈降物による流入孔(211)の目詰まりを防止することができる。
【0036】
なお、本発明には、ハウジング(21)にベーパータップ孔を設けたバルブも含まれる。ベーパータップ孔を設けることにより、吐出する内容物において気相の割合を多くすることができ、内容物を細かく霧状にして均一に吐出させることができる。
また、ハウジング(21)にベーパータップ孔を設けた場合でも、「技術分野」の項で記載した(a)〜(c)の理由により、ハウジング内で沈降物が生じる。その場合でも、開口部(211a)が最下部(213)よりも高い位置にあることにより、沈降物は最下部(213)に蓄積されるので、沈降物による流入孔(211)の目詰まりを防止することができる。
【0037】
上記実施形態では、円錐台状の隆起部(214)を設けることにより、開口部(211a)を最下部(213)よりも高い位置にしたが、上記実施形態に限定されるわけではなく、ハウジング(21)の底部(216)において、開口部(211a)が最下部(213)よりも高い位置にあるバルブであれば本発明に含まれる。
【0038】
図5〜8は、バルブ(2)の他の実施形態を示す図であり、図4(a)と同様に、ハウジングの形状を示している。なお、図7では、(b)に(a)のY−Y線断面図を示す。また、図8では、(b)にハウジング(21)の概略立体図を示す。また、図1〜8において同じ構成には同じ符号を付している。
【0039】
図1〜4に示す実施形態では、ハウジング(21)の上方空間(2121)に小径部(2121b)を設け、小径部(2121b)中に開口部(211a)や隆起部(214)を設けたが、図5のように上方空間(2121)に小径部(2121b)を設けない構造としてもよい。
また、図6に示す如く、流入孔(211)が貫通した隆起部(214)を円柱状又は直方体状にしてもよい。
また、図1〜4に示す実施形態では、隆起部(214)を円錐台状としたが、図7(a)のように、隆起部(214)を、形状が長方形の最下部(213)側を切り取った台形状(最下部(213)に向けて下方に傾斜した面を有する台形状)である複数の隆起板(2141)から構成してもよい。この場合、図7(b)に示す如く、隆起板(2141)を放射線状に配置することにより流入孔(211)の上端部分を形成し、開口部(211a)の位置を最下部(213)より高くしている。隆起板(2141)を放射線状に配置することにより、隆起板(2141)同士の間にも沈降物が蓄積されるので、流入孔(211)の目詰まりをより確実に防止することができる。
なお、隆起板の形状は、台形状に限定されるわけでなく、方形状等であってもよい。
【0040】
また、図1〜4に示す実施形態では、流入孔(211)の中心軸をハウジング(21)の中心線と同一線上、即ちステム(22)の中心軸と同一線上に設けたが、図8に示す如く、流入孔(211)を、中心軸がステム(22)の中心軸と一致しない位置に設けてもよい。図8では、開口部(211a)が、ハウジング(21)の内周壁付近に位置するように流入孔(211)を設け、最下部(213)を底部(216)の中心を挟んで開口部(211a)と対向する位置に設けている。そして、底部(216)を開口部(211a)から最下部(213)に向けて傾斜させ、開口部(211a)から最下部(213)に至る部分の形状(図8(b)中の斜線部の形状)を円錐台としている。これにより、開口部(211a)を最下部(213)から離れた位置とすることができる。また、開口部(211a)と最下部(213)との高低差も大きくすることができる。その結果、開口部(211a)から最下部(213)の部分(図8(b)中の斜線部の部分)の容積が大きくなり、最下部(213)により多くの沈降物を蓄積することができるので、流入孔(211)の目詰まりをより確実に防止することができる。
【0041】
また、本発明には、上記したエアゾール容器用バルブ(2)だけでなく、エアゾール容器用バルブ(2)を容器本体(A)に取り付けることにより構成されたエアゾール容器も含まれる。
さらに、本発明に係るエアゾール容器の容器本体(A)内部に化粧料、医薬品、医薬部外品、香料等の原液(C)と充填剤(D)からなる内容物が充填されたエアゾール製品も本発明に含まれる。
具体的なエアゾール製品から吐出される内容物の形態としては、霧状、泡沫状、又は粘性液体状の形態で吐出されれば特に限定されない。また、エアゾール製品としては、例えば、整髪剤、染毛剤、育毛剤等の毛髪化粧料;スキンケア剤、シェービング剤、デオドラント剤、フレグランス剤等の皮膚化粧料;鎮痛消炎剤、殺虫剤等の医薬品;殺菌・消毒剤等の医薬部外品等を例示することができる。特にセット樹脂などの目詰まりが発生し易いと考えられる成分を含有する原液(C)は、本発明に係るエアゾール容器に充填するのに適している。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
(目詰まり試験)
ベーパータップ孔のない本発明に係るエアゾール容器(図1〜4参照)と、ベーパータップ孔のない従来のエアゾール容器(図9参照。但し、図9にはベーパータップ孔が設けられているが、本実施例にはベーパータップ孔が設けられていない)に内容物を充填し、エアゾール製品を製造した。
内容物としては、表1における配合例1〜6に示す原液と、噴射剤である液化石油ガスを、6:4で混合したものを用いた。
そして、製造したエアゾール製品を1週間静置させた後、内容物を吐出させたときの吐出状態を下記評価基準に従って評価し、表1に示した。
(評価基準)
○:吐出状態に異常は認められない
×:吐出量が少ない、又は全く吐出しない(目詰まりが発生している)
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、従来のエアゾール製品は、全ての配合例において目詰まりが確認されたのに対し、本発明のエアゾール製品は、全ての配合例において吐出状態に異常は認められなかった。つまり、本発明のエアゾール製品は、内容物の目詰まりが抑制されているということがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、バルブを接続して内容物を霧状、泡沫状、又は粘性液体状に吐出する形式のエアゾール製品に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】内容物が充填された本発明の実施形態に係るエアゾール容器(エアゾール製品)全体を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエアゾール容器用バルブの周辺を示す図であり、不使用持の図を示す。
【図3】本発明の実施形態に係るエアゾール容器用バルブの周辺を示す図であり、吐出時の図を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るエアゾール容器用バルブの流入孔を説明するための説明図である。
【図5】本発明のバルブの他の実施形態を示す図である。
【図6】本発明のバルブの他の実施形態を示す図である。
【図7】本発明のバルブの他の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のバルブの他の実施形態を示す図である。
【図9】従来のエアゾール製品を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0047】
2 エアゾール容器用バルブ
21 ハウジング
211 流入孔
211a 開口部
213 最下部
214 隆起部
216 底部
23 付勢手段
22 ステム
A 容器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器本体の頭頂部に設けられ且つエアゾール容器本体に充填された内容物が流入孔から流入するハウジングと、該ハウジング上部から突出して設けられ且つ付勢手段により上方向に付勢されたステムを有するエアゾール容器用バルブであって、
前記ハウジング内の底部において、前記流入孔の開口部が、前記底部の最下部よりも高い位置にあることを特徴とするエアゾール容器用バルブ。
【請求項2】
前記開口部から前記最下部に向けて下方に傾斜していることを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器用バルブ。
【請求項3】
前記底部上に隆起部が設けられており、
前記流入孔が前記隆起部を貫通していることを特徴とする請求項1又は2記載のエアゾール容器用バルブ。
【請求項4】
前記隆起部が円錐台状であり、前記流入孔が前記隆起部の中心線上を貫通していることを特徴とする請求項3記載のエアゾール容器用バルブ。
【請求項5】
前記流入孔の中心軸が、前記ステムの中心軸と一致しないことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のエアゾール容器用バルブ。
【請求項6】
前記ハウジングにベーパータップ孔が設けられていないことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のエアゾール容器用バルブ。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載のエアゾール容器用バルブを備えたエアゾール容器。
【請求項8】
請求項7記載のエアゾール容器に前記内容物が充填されたエアゾール製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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