説明

エアフィルタ及びこのエアフィルタを備えた空気調和機

【課題】フィルタネットに付着した付着物は勿論、フィルタネットの網目を通過する空気に対しても抗菌機能、脱臭機能を発揮することのできるエアフィルタ及びこれを備えた空気調和機を提供すること。
【解決手段】枠体と、該枠体と一体に設けられたフィルタネット14とからなり、フィルタネット14を、ナノプラチナ粒子を含む合成樹脂繊維によって構成した。
また、上記フィルタネット14を、複数の升状の凹凸により蜂の巣状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌機能、脱臭機能を有するエアフィルタ及びこのエアフィルタを備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエアフィルタ(合成樹脂成型品)に、フィルタネットの繊維として、シリカ、ゼオライト、酸化チタンなどの担体に、白金、銀、銅などの金属を担持させた抗菌性複合粒子を、ポリプロピレンに練り込んで繊維化したものを使用したものがある(例えば、特許文献1参照)。
このようなエアフィルタを、例えば空気調和機の室内機の吸込み口と熱交換器との間に設置すれば、吸込み口から吸引された空気に含まれる塵埃等を捕集し、エアフィルタに付着した塵埃等に含まれる細菌や臭い分子に対して、抗菌効果、脱臭効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 03/33596号公報(第3−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエアフィルタを空気調和機の室内機のエアフィルタとして使用した場合、エアフィルタに付着した塵埃等に対して抗菌効果、脱臭効果を発揮することができるので、エアフィルタ自身が汚れたり悪臭を発したりすることはない。しかし、エアフィルタの網目の間を通過する空気中に含まれる塵埃、細菌、カビ、臭い分子などに対しては、抗菌機能や脱臭機能を作用させることができなかった。
【0005】
そのため、エアフィルタの網目を通過したこれら塵埃などが、エアフィルタの下流側に設置された熱交換器や送風機あるいは風路などに付着、繁殖し、悪臭を発したり空気中に飛散されて、空気調和機の使用者の健康に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、フィルタネットに付着した塵埃等は勿論、フィルタネットの網目を通過する空気に対しても抗菌機能、脱臭機能を発揮することのできるエアフィルタ及びこれを備えた空気調和機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアフィルタは、枠体と、該枠体と一体に設けられたフィルタネットとからなり、前記フィルタネットを、ナノプラチナ粒子を含む合成樹脂繊維によって構成したものである。
【0008】
また、前記のエアフィルタをナノプラチナ粒子を含む合成樹脂繊維によって構成し、該フィルタネットを形成する経糸及び緯糸のうち一番長く浮いているものが一番高く盛り上り、その他の経糸と緯糸は順次低くなって平織りを形成する部分が最低となる複数の升状の凹凸により蜂の巣状に形成したものである。
【0009】
また、本発明に係る空気調和機は、上記のエアフィルタを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルタネットに付着した細菌等の有害物質は勿論、フィルタネットに接触せずに網目を連通する空気中の細菌等の有害物質に対しても抗菌機能、脱臭機能を発揮することのできるエアフィルタ及び空気調和機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係るエアフィルタを備えた空気調和機の室内機の断面説明図である。
【図2】図1のエアフィルタの斜視図である。
【図3】図2のエアフィルタの一部拡大図である。
【図4】エアフィルタのフィルタネットを構成する合成樹脂繊維の一例の断面説明図である。
【図5】図1のエアフィルタの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係るエアフィルタを備えた空気調和機の室内機の断面説明図である。
図において、基台1の前面側のほぼ中央部には送風機2が設けられており、送風機2の上流側の前面側と背面側には例えばフィンチューブ型の熱交換器3が、送風機2を囲むように設置されている。4は前面側の下部に設けられた空気の吸込み口、5は上面に設けられた同じく空気の吸込み口、6は前面側に着脱可能に設けられた前面パネルである。
【0013】
7は送風機2の下流側に設けられた風路で、下端部には調和空気の吹出し口8が設けられており、この吹出し口8には左右のベーン9と上下のベーン10が設けられて、吹出される調和空気の吹出し方向を制御する。11は熱交換器3と吸込み口4,5との間において、熱交換器3の上流側を覆うように、着脱可能に設置されたエアフィルタである。
【0014】
図2はエアフィルタ11の全体構成を示す斜視図、図3はその一部拡大図である。
エアフィルタ11は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂繊維からなる経糸12と緯糸13とによって網目状に織られたフィルタネット14と、樹脂材料などで成形された格子状の枠体15とを一体成形したもので、矢印A方向から吸込み空気が流入する。
【0015】
このフィルタネット14は、図3に示すように、格子状の枠体15の各枠16内が、経糸12のうち一番長く浮いている経糸12aが一番高く盛り上り、緯糸13も一番長く浮いている緯糸13aが一番高く盛り上っていて、その他の経糸12と緯糸13は順次低くなり、平織りを形成する部分が最も低い谷の部分12bとなって蜂の巣状に織られている。
このようにして蜂の巣状に織られたフィルタネット14は、表の山は裏では谷、表の谷は裏では山になるように、複数の升形の凹凸で構成されている。
【0016】
このように、各枠16内が複数の升状の凹凸で形成されたフィルタネット14は、例えば、直径が0.22mm以下のポリプロピレン繊維(合成樹脂繊維)からなる経糸12と緯糸13とによって織られており、1つの升形の大きさが、縦L、横Wがそれぞれ13mm程度になるように形成し、かつ1インチ(25.4mm)あたり経糸12と緯糸13をそれぞれ30本以上用いることにより、凹凸部の深さdを4.0mm以上としてフィルタネット14の表面積を大きくし、多くの塵埃などを捕集して保持できるようになっている。
【0017】
このような経糸12と緯糸13を構成する合成樹脂繊維には、ナノメートル程度の大きさに加工された白金粒子17(以下、ナノプラチナ粒子という)を担持させた多孔質シリカが練り込まれ(含有)ている。なお、図4に示すように、ナノプラチナ粒子17を含有していない合成樹脂繊維の10μm程度の表層部18のみにナノプラチナ粒子17を添加してもよい。
【0018】
次に、上記のように構成したエアフィルタ11の作用について説明する。
フィルタネット14の経糸12及び緯糸13を構成する合成樹脂繊維に含有され、又は表層部18に添加されたナノプラチナ粒子17は、電位が負となるため、図5(a)に示すように、空気中の水分子などから電子19を奪い、マイナスの電荷を帯びるようになる。
【0019】
そして、図5(b)に示すように、マイナスに帯電したナノプラチナ粒子17に空気中の酸素分子20が接触すると、酸素分子20がマイナスに帯電したナノプラチナ粒子17から電子19を受け取り、酸素分子20は活性種である酸化力の強いスーパーオキサイドラジカル21に変化する。この場合、ナノプラチナ粒子17は空気中に無数ある水分子などから電子19を奪い、絶えずマイナスの電荷を帯びているため、電子19が尽きてしまうことがなく、常にスーパーオキサイドラジカル21を発生させることができる。
【0020】
このようなエアフィルタ11が設置された空気調和機の室内機において、運転が開始されると、送風機2の回転によって風路7に空気の流れが生じ、吸込み口4,5から室内の空気が吸込まれる。そして、吸込み口4,5から吸込まれた空気中に存在する細菌やバクテリア、花粉、アレル物質などのタンパク質、カビ、アンモニアなどの悪臭の元となる成分(以下、これらを一括して有害物質22という)が、吸込み口4,5と熱交換器3との間を通過する。
【0021】
その際、図5(c)に示すように、ナノプラチナ粒子17から離れてエアフィルタ11の近傍に浮遊しているスーパーオキサイドラジカル21が、有害物質22に含まれる水素原子と化学反応を起こし、水分子となる。
【0022】
そして、水素原子を奪われた有害物質22は、図5(d)に示すように、無害なタンパク質23へと変化し、熱交換器3、送風機2、風路7を経て、除菌、除臭された無害な調和空気として、吹出し口8から室内へ吹出される。また、フィルタネット14の網目に捕集された塵埃等に存在する有害物質22も、同様の化学反応により無害化される。
【0023】
上記のように構成したエアフィルタ11によれば、フィルタネット14を構成する合成樹脂繊維にナノプラチナ粒子17を含有させ、又は合成樹脂繊維の表層部18にナノプラチナ粒子17を添加させたので、これらナノプラチナ粒子17の還元反応によって生じた酸化力の強いスーパーオキサイドラジカル21が、ナノプラチナ粒子17から離れてフィルタネット14の近傍に浮遊しているため、エアフィルタ11に直接接触した有害物質22は勿論、エアフィルタ11の網目を通過する空気中に存在する有害物質22に対しても、抗菌機能、脱臭機能を発揮することができ、これにより、次のような効果を得ることができる。
【0024】
本発明に係るエアフィルタ11は、エアフィルタ11自体に付着したカビや細菌の繁殖を抑制することができるので、このエアフィルタ11を空気調和機の室内機に使用した場合、悪臭を発生させたり、繁殖したカビや細菌を室内に撒き散らしたりして、使用者の健康を損ねたりするおそれがなく、また、エアフィルタ11への付着物が少ないため、清掃が容易である。
【0025】
また、空気調和機の冷房運転中の熱交換器3は、空気中の水分が凝縮して表面が濡れた状態になるため、熱交換器3や送風機2、さらには風路7や左右ベーン9、上下ベーン10が、湿潤な空気環境下に晒されることになる。そのため、これら構造体にカビや悪臭が発生し易い状態になるが、本発明は、フィルタネット14を構成する合成樹脂繊維にナノプラチナ粒子17を含有させ、又は表層部18に添加させたので、エアフィルタ11の網目を通過する空気に対しても抗菌、脱臭機能を発揮することができるため、エアフィルタ11の下流側に設けられたこれら構造体に発生するカビや悪臭を抑制することができる。
【0026】
さらに、本発明によれば、上記のように熱交換器3に発生するカビや付着する塵埃等を抑制することができるため、フィンチューブ型の熱交換器3のフィン間の目詰りを防止することができる。このため、熱交換器3における圧力損失が減少し、吸込み口4,5から吸込まれた空気と、熱交換器3の内部を循環する冷媒との熱交換を促進することができ、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0027】
また、本発明に係るエアフィルタ11のフィルタネット14は、図3に示すように、蜂の巣状に織られているため、エアフィルタ11による塵埃等の捕集効率を向上することができ、さらに、フィルタネット14の表面積が増加するため、ナノプラチナ粒子17の含有量又は添加量が増加し、これに伴ってフィルタネット14の近傍に発生するスーパーオキサイドラジカル21の発生量が増加するので、吸込み空気中に含まれるより多くの有害物質22に対して抗菌、脱臭作用を発揮することができる。
【0028】
また、図4に示すように、エアフィルタ11のフィルタネット14を構成する合成樹脂繊維の表層部18のみにナノプラチナ粒子17を添加するようにすれば、合成樹脂繊維の全体にナノプラチナ粒子17を含有させた場合と同様の抗菌、脱臭機能を維持したまま製造コストを低減することができ、その上、合成樹脂繊維に対して異物であるナノプラチナ粒子17の量を減らすことができるため、フィルタネット14の強度を高めることができる。
【0029】
[実施の形態2]
実施の形態1では、エアフィルタ11を、ナノプラチナ粒子17を含有させ、又は表層部18にナノプラチナ粒子17を添加した合成樹脂繊維からなる経糸12と緯糸13により、凹凸を有する蜂の巣状のフィルタネット14で構成したが、本実施の形態においては、ナノプラチナ粒子17を含有し、又は表層部18にナノプラチナ粒子17を添加した合成樹脂繊維からなる経糸と緯糸を平織りに織ってフィルタネット14を構成したものである。
【0030】
本実施の形態に係るエアフィルタ11においても、実施の形態1のエアフィルタ11とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0031】
上記の説明では、本発明に係るエアフィルタ11を、少なくとも冷房運転が可能である空気調和機の室内機に用いた場合を示したが、空気調和機としては、このような冷房運転を行う室内機に限定されるものではなく、例えば、エアフィルタを必要とする他の空気調和機である空気清浄器や除湿機、さらには加湿器などにも本発明に係るエアフィルタ11を使用することで同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 基台、2 送風機、3 熱交換器、4,5 吸込み口、6 前面パネル、7 風路、8 吹出し口、9 左右ベーン、10 上下ベーン、11 エアフィルタ、12 経糸、13 緯糸、14 フィルタネット、15 枠体、16 枠、17 ナノプラチナ粒子、18 表層部、19 電子、20 酸素分子、21 スーパーオキサイドラジカル、22 有害物質、23 タンパク質。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、該枠体と一体に設けられたフィルタネットとからなり、
前記フィルタネットを、ナノプラチナ粒子を含む合成樹脂繊維によって構成したことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記フィルタネットを、ナノプラチナ粒子を含む合成樹脂繊維によって構成し、該フィルタネットを形成する経糸及び緯糸のうち一番長く浮いているものが一番高く盛り上り、その他の経糸と緯糸は順次低くなって平織りを形成する部分が最低となる複数の升状の凹凸により蜂の巣状に形成したことを特徴とする請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記フィルタネットを構成する合成樹脂繊維を、ナノプラチナ粒子を含まない合成樹脂繊維の表層部にナノプラチナ粒子を添加して構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかのエアフィルタを備えたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94828(P2011−94828A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246684(P2009−246684)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(596129008)泰陽株式会社 (2)
【Fターム(参考)】