説明

エアフィルタ装置およびその製造方法

本発明は、エアフィルタ装置およびこのようなエアフィルタ装置の製造方法に関する。エアフィルタ装置は、エアチャネル(2)と、エアチャネル内(2)に取り付けられた第1のエアフィルタ(8)とを備え、第1のエアフィルタは、空気が通過するための少なくとも1つの通路(10a)を備えたフィルタフレーム(10)と、フィルタフレーム(10)に取り付けられた静電的に帯電可能な繊維を含むフィルタ本体(11)とを備え、フィルタ本体(11)は、フィルタフレーム(10)から所定の距離だけ離れた位置であり、かつエアチャネル(2)を通る意図した空気の流れの方向に対してフィルタフレーム(10)の下流の位置まで延在している。エアフィルタ装置は、取り付けられた状態でエアチャネル(2)にわたって延在するように適合されたフィルタクロスを有する第2のエアフィルタを有し、これにより、フィルタクロスを、エアチャネル(2)内を実質的に長手方向に流れる空気が通過し、第2のエアフィルタは、エアチャネル(2)内の、エアチャネル(2)を通る意図した空気の流れの方向に対して第1のエアフィルタ(8)の下流の位置に取り付けられている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ装置およびこのようなエアフィルタ装置の製造方法に関する。このエアフィルタ装置は、エアチャネルと、エアチャネル内に取り付けられた第1のエアフィルタとを備え、第1のエアフィルタは、空気が通過するための少なくとも1つの通路が設けられたフィルタフレームと、フィルタフレームに取り付けられた静電的に帯電可能な繊維を含むフィルタ本体とを備え、フィルタ本体は、フィルタフレームから所定の距離だけ離れた位置であり、かつエアチャネルを通る意図した空気の流れの方向に対してフィルタフレームの下流の位置まで延在している。
【0002】
上記の種類の第1のエアフィルタを空気が通ると、フィルタ本体内の繊維同士が擦れるように互いに移動する。空気流が繊維を通ることで生じるこのような擦れと摩擦の結果、繊維が静電気を保持するようになる。このタイプのエアフィルタは、静電作用と機械的作用の両方によって、空気中から粒子を分離する。このタイプのエアフィルタの特徴は、エアフィルタの圧力降下が、フィルタの寿命の間、実質的に変化しないという点にある。このため、エアフィルタを通る空気流は、フィルタの寿命の間、実質的に一定である。しかし、捕捉されて繊維表面に保持された粒子の数は、時間と共に次第に増え、この結果、静電作用によって更に粒子を捕捉するために用いられる繊維表面が狭くなる。このため、エアフィルタの分離能が時間と共に低下する。このため、エアフィルタによって得られる清浄な空気の量が、時間と共に減少する。分離能が最低許容レベルまで低下すると、エアフィルタが新品と交換される。
【0003】
国際公開第95/33569号パンフレットは、空気中の非常に微細な粒子を分離するための構成を示している。上記文献では、上記の第1のエアフィルタの古い型が使用されており、これは、静電的に帯電可能なストラップ要素が取り付けられたキャリアを備える。上記文献では、第1のエアフィルタのストラップ要素の外側に、フィルタチューブの形の第2のエアフィルタが経方向に配置されている。フィルタチューブには、綿毛状の構造を有する静電的に帯電可能な繊維が設けられている。このため、フィルタチューブを通る空気の流体抵抗が低くなる。第1のエアフィルタは、粒子の予備分離を提供するように適合されている。更に、大きな粒子は落下し、底部プレートで回収される。このような粒子の予備分離は、フィルタチューブの目詰まりを低下させる。また、第1のエアフィルタは、静電的に帯電可能なストラップ要素によって静電界を与えるという役割も担う。このため、空気が第1のエアフィルタを通るとすぐに、経方向に囲むフィルタチューブ内の繊維が静電気を与える。このように、フィルタチューブの繊維は、フィルタチューブを通る空気から、静電作用によって微粒子を分離するように適合されている。上記文献では、これらエアフィルタの上流に、空気を強制的に2つのエアフィルタを通過させるためのファンが配置されている。空気がフィルタチューブを通る際に、空気が外向きに経方向に分配され、ファンを2つのエアフィルタの下流に配置することが困難であるため、上記文献ではファンがこの位置に設けられている。ファンがこの位置にあるため、ファンをフィルタされてない空気が通る。このため、ファンの繊細な部品が、空気中の粒子によって目詰まりするおそれがある。上記文献のファンは寿命が非常に短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第95/33569号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、空気中から粒子をフィルタするために、異なる種類のバリアフィルタが使用される。一般に、バリアフィルタは、空気は通過させるが、空気中の粒子が、フィルタクロスに捕捉されるように意図された微細な通路を有するフィルタクロスを備える。フィルタクロスは繊維材料によって形成されうるが、他のタイプの材料が使用されてもよい。しかし、通路は、フィルタクロスに捕捉された粒子によって次第に目詰まりする。バリアフィルタの分離能は、通路の目詰まりと共に上昇していく。同時に、バリアフィルタの圧力降下も上昇し、この結果、フィルタを通る空気流が減少する。しかし、バリアフィルタを通る空気流の低下の効果は、フィルタの分離能の向上よりも顕著である。このため、バリアフィルタによって供給される清浄な空気の量は、時間と共に減少していく。バリアフィルタの閉塞度がある値に達すると、バリアフィルタが新品と交換される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、長寿命を有すると同時に、フィルタ装置のほぼ全寿命にわたって、実質的に一定量の清浄な空気を供給することができるエアフィルタ装置を提供することにある。
【0007】
この目的は、取り付けられた状態でエアチャネルにわたって延在するように適合されたフィルタクロスを有する第2のエアフィルタを有し、これにより、フィルタクロスを、エアチャネル内を実質的に長手方向に流れる空気が通過し、第2のエアフィルタは、エアチャネル内の、エアチャネルを通る意図した空気の流れの方向に対して第1のエアフィルタの下流の位置に取り付けられていることを特徴とする上記のエアフィルタ装置によって達成される。多くの場合、フィルタクロスはその延在部分に関しては比較的薄いが、当然、かなりの厚さを有してもよい。本発明によるフィルタ装置を空気が通る初期の段階は、空気中の粒子のフィルタリングの全てが、実質的に第1のエアフィルタで行われる。第2のエアフィルタに達した空気には、粒子が実質的に存在しない。エアフィルタ装置の使用後は、第1のエアフィルタの静電的に帯電された繊維表面に収集される粒子の数が増えていく。このため、その後、空気中から粒子を分離する繊維の能力が低下する。下流に配置された第2のエアフィルタに達した空気に含まれる粒子の量が増えていく。これらの粒子は、第2のエアフィルタのフィルタ本体で空気からフィルタされる。このため、第2のエアフィルタのフィルタクロスの通路が狭くなっていく。したがって、第1のエアフィルタの分離能が時間と共に低下するのと同時に、第2のエアフィルタの分離能が時間と共に向上する。この結果、前記エアフィルタのコンビネーションは、その寿命の長い期間、一定の高い粒子分離能を与える。
【0008】
フィルタのコンビネーションの総圧力降下は、第1のエアフィルタの圧力降下と第2のエアフィルタの圧力降下の合計からなる。したがって、第1のエアフィルタは、作動中は実質的に目詰まりしないタイプのフィルタである。このため、第1のエアフィルタの圧力降下は実質的に一定である。一方、第2のエアフィルタは次第に目詰まりしていく。このため、第2のフィルタの圧力降下は、フィルタの目詰まりの度合いに伴って上昇する。第2のエアフィルタはフィルタ装置の寿命の終点になって目詰まりするため、第2のエアフィルタの圧力降下は、エアフィルタ装置の寿命の長い期間、実質的に一定のレベルにある。このため、第1のエアフィルタと第2のエアフィルタの総圧力降下も、実質的に一定のレベルにある。このため、圧力降下に関連のあるフィルタのコンビネーションを通る気流も、実質的に一定のレベルに維持される。この結果、エアフィルタ装置は、その寿命の長い期間、実質的に一定量の清浄な空気を供給することができる。空気中から粒子を清浄するために2つのエアフィルタが使用されるため、捕捉された粒子は、それぞれのエアフィルタに散らばる。このため、エアフィルタをいくつか有するエアフィルタ装置は、1つのエアフィルタのみを有するエアフィルタ装置よりも寿命が長くなる。この結果、エアフィルタ装置内のエアフィルタは、1つのエアフィルタのみを使用する場合ほど、頻繁に交換する必要がない。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、フィルタ装置は、エアチャネルを通る前記空気流を発生させるように適合されたファンを有し、ファンは、エアチャネル内の、第2のエアフィルタの下流の位置に配置されている。このため、粒子がフィルタ済みの空気がファンを通る。このため、エアフィルタを上流に配置した場合よりも、ファンに接触する粒子の数が大幅に減少する。大量の粒子に曝されるファンの寿命は、通常はかなり短い。第1のエアフィルタおよび第2のエアフィルタを含むエアチャネルの少なくとも一部は直線部分を有することが有利である。このため、エアチャネル内にカーブがなくなり、エアチャネル内の流れの損失を無視できる程度に保つことができる。第1のエアフィルタと第2のエアフィルタ間の距離は、比較的短く設定すべきである。これにより、エアフィルタ装置をかなりの程度小型化することができる。フィルタ装置は、エアチャネルを画定している壁要素を有してもよく、前記壁要素は、エアチャネル内に第1のエアフィルタを取り付けるための第1の開口と、エアチャネル内に第2のエアフィルタを取り付けるための第2の開口と、を有する。エアチャネル内にエアフィルタを取り付ける際には、開口がカバーなどで封止されうる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、第1のエアフィルタは、一体型ユニットとしてエアチャネル内に取り付け可能である。このため、エアチャネルの第1のエアフィルタへの着脱が簡略化され、迅速化される。第1のエアフィルタおよび第2のエアフィルタは、一体型ユニットとしてエアチャネル内に取り付け可能である。この場合は、エアチャネルを画定している壁要素に、エアフィルタを着脱するための1つの開口があればよい。第1のエアフィルタおよび第2のエアフィルタは、囲繞ケーシングによって相互に連結されうる。この結果、2つのエアフィルタが、単純であるが機能的に一緒に固定される。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、第2のフィルタはバッグフィルタを有する。バッグフィルタは、いくつかのバッグ状の部分を有するフィルタクロスを備える。このため、フィルタクロスは、バッグフィルタを通る空気中から粒子をフィルタするために使用可能な広い表面を与える。このため、フィルタバッグは、目詰まりして交換が必要となるまでに、比較的長い期間、使用することができる。別の実施形態では、第2のフィルタは、折返しフィルタまたは平面フィルタを有してもよい。
【0012】
上記の目的は、請求項11に記載の方法によっても達成される。
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態に関して、添付の図面を参照して例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフィルタ装置を示す。
【図2】本発明の第2実施形態に係るフィルタ装置の断面図を示す。
【図3】本発明の第3実施形態に係るフィルタ装置の断面図を示す。
【図4】本発明の第4実施形態に係るフィルタ装置の断面図を示す。
【図5】エアフィルタの圧力降下の経時変化を示す簡略的なグラフを示す。
【図6】エアフィルタの分離能の経時変化を示す簡略的なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、内部のエアチャネル2を画定している壁要素1によって実施されたフィルタ装置を示す。本例では、フィルタ装置は、床面に配置可能となるように脚3が設けられている。別の実施形態では、フィルタ装置が、高い位置に配置され、壁面、屋根面などに取り付けられてもよい。エアチャネル2は、フィルタ装置の上端に設けられた空気の軸方向の入口孔2aと、フィルタ装置の下端に設けられた径方向の出口孔2bを有する。フィルタ装置は、空気が、径方向の出口孔2bを通ってしかフィルタ装置から流出できないようにする均質な底部プレート1aを備える。模式的に図示されたファン4は、空気を強制的にエアチャネル2を通過させるように適合されている。フィルタ装置は開閉可能なカバー5を備え、カバー5は、閉位置で、第1の開口6と第2の開口7をエアチャネル2に封止する。カバー5が開位置のときには、開口6を介して第1のエアフィルタ8をエアチャネル2内に、開口7を介して第2のエアフィルタ9をエアチャネル2内に、それぞれ着脱することが可能である。
【0016】
第1のエアフィルタ8は、静電的に帯電可能な繊維のフィルタ本体11が取り付けられたフレーム10を少なくとも備える。しかし、フィルタ本体11は図1には図示されていない。フィルタフレーム10は、空気の中間通路10aを画定している、縦方向および横方向の離間要素によって形成されている。このようなエアフィルタ8を空気が通ると、空気は、まず前記通気道10aを通る。その後、空気は、フィルタ本体11を、静電的に帯電可能な繊維に対して実質的に長手方向に通る。このため、フィルタ本体11内で隣接する繊維同士の相対移動が生じ、これにより、繊維が静電的に帯電される。この結果、空気中の粒子と帯電した繊維との間に静電引力が生じ、粒子が繊維表面に捕捉される。更に、フィルタ本体11を空気が通る際に、粒子の機械的分離が行われる。図1に示す第1のエアフィルタ8は、フィルタ本体11が取り付けられている3つのフィルタフレーム10を囲み、これらを一緒に固定しているケーシング12を備える。このため、第1のエアフィルタ8は、一体型ユニットとしてエアチャネル2内に取り付けることができる。
【0017】
第2のエアフィルタ9は、取り付けられた状態で、エアチャネル2にわたって延在するように適合されたフィルタクロス9aを有する。このため、フィルタクロス9aを、エアチャネル2の長手方向に流れる空気が通る。フィルタクロス9aは繊維によって構成することができ、この繊維を空気が横切る。フィルタクロス9aは、繊維材料によって実施されうる。本発明によれば、第2のエアフィルタ9は、フィルタ装置を通る意図した空気の流れの方向に対して、第1のエアフィルタ8の下流に取り付けられる。第2のエアフィルタ9は、図1ではバッグフィルタ13aとして例示されている。バッグフィルタ13aは、複数のバッグ状の部分を有するフィルタクロス9aを有する。このため、粒子を捕捉するための広いフィルタ面積と、空気が流れることができる多数の通路が得られる。このため、バッグフィルタ13aは、比較的長寿命である。バッグフィルタ13aは、一体型ユニットとしてエアチャネル2内に取り付けることができるように、囲繞フレーム14aに取り付けられる。
【0018】
図2は、本発明による更に別のフィルタ装置の断面図を示す。このフィルタ装置は、既存のエアチャネル、換気チャネル、清浄集合体(cleaning
aggregate)などに取り付けることができる。また、ここでも、フィルタ装置は、内部のエアチャネル2を画定している壁要素1を備える。内部のエアチャネル2には、エアフィルタ8,9が取り付けられており、入口孔2aと出口孔2bを有する。ファン4は、エアチャネル2内の、空気フィルタ8,9の下流の適切な位置に取り付けられている。ファン4は、空気を強制的にエアチャネル2を通過させるように適合されている。第1のエアフィルタ8はフレーム10からなり、フレーム10は、通気道10aが形成されるように配置された離間要素を有する。空気が通気道10aを通る際の、空気の流れの損失が少なくなるように、離間要素10は比較的薄い。フィルタフレーム10の上端に多数の静電的に帯電可能な繊維が取り付けられている。繊維は、フレーム10から下端に向かってゆるく垂れている。このため、繊維は、フィルタフレーム10から所定の距離だけ離れた位置であり、かつエアチャネル2を通る意図した空気の流れの方向に対してフィルタフレームの下流の位置まで延在している。繊維の長さは任意選択である。フィルタ本体11は、ポリマー繊維などの多数の合成繊維からなるのが有利である。しかし、繊維本体11は、他の合成材料または天然材料、あるいはこれらの混合物の繊維を含んでいてもよい。しかし、繊維が、フィルタ本体を通る空気と共に運ばれた粒子を引き付け、これらと結合することができるように、繊維は、電気的に帯電可能な特性を備えていなければならない。
【0019】
図2においても、第2のエアフィルタ9は、取り付けられた状態で、エアチャネル2に延在するフィルタクロスを有するバッグフィルタ13aとして例示されている。バッグフィルタ13aは、囲繞フレーム14aに取り付けられている。ここでは、囲繞フレーム14aとバッグフィルタ13aは、第1のエアフィルタ8も囲んでいるケーシング12a内に取り付けられている。このため、本例では、第1のエアフィルタ8と第2のエアフィルタ9は、一体型ユニットとしてエアチャネル2内に取り付けることができる。
【0020】
図3は、更に別の実施形態に係るフィルタ装置の断面図を示す。ここでは、第2のフィルタ9は、折返しフィルタ13bとして例示されている。折返しフィルタ13bは、エアチャネル2に延在する折返しフィルタクロスを備える。折返しフィルタ13bは、囲繞フレーム14bに取り付けられている。図4は、更に別の実施形態に係るフィルタ装置の断面図を示す。ここでは、第2のフィルタ9は、平面フィルタ13cとして例示されている。平面フィルタ13cは、エアチャネル2に延在する実質的に平面のフィルタクロスを備える。平面フィルタ13cは、囲繞フレーム14cに取り付けられている。
【0021】
図5は、破線のグラフ8'を示しており、グラフ8'は、フィルタ装置で第1のエアフィルタ8として使用されるタイプのエアフィルタ単独の圧力降下Δpが時間tと共に変化する様子を模式的に示す。第1のエアフィルタ8の単独で使用されたときの寿命がtであるとする。このようなエアフィルタにおける粒子のフィルタリングは、繊維の長手方向に行われるため、第1のエアフィルタ8は、実質的に目詰まりしない。このため、フィルタの寿命tの間に、圧力降下Δpは極めてわずかにしか上昇しない。破線のグラフ9'は、フィルタ装置で第2のエアフィルタ9として使用されるタイプのエアフィルタ単独の圧力降下Δpが時間tと共に変化する様子を模式的に示す。第2のエアフィルタ9の単独の状態での寿命がtであるとする。このようなフィルタは徐々に目詰まりするため、フィルタの圧力降下Δpは時間tと共に上昇する。圧力降下Δpは時間tと共に実質的に線形的に上昇しうる。ここで用いられる「時間」とは、エアフィルタの使用時間を指す。
【0022】
図6は、破線のグラフ8”を示しており、グラフ8”は、第1のエアフィルタ8として使用されるタイプのエアフィルタ単独の分離能sが時間tと共に変化する様子を模式的に示す。作動中に、時間tと共に繊維表面に捕捉される粒子が増え、エアフィルタ8が静電作用によって粒子を分離できる能力が低下する。この結果、このタイプのエアフィルタの分離能sは、時間tと共に低下する。破線のグラフ9”は、第2のエアフィルタ9を有するエアフィルタの分離能sが時間tと共に変化する様子を模式的に示す。このようなエアフィルタは、時間tと共に粒子によって徐々に目詰まりするため、その後粒子がフィルタを通るのが次第に困難となる。このため、バリアフィルタの分離能sは、時間tと共に上昇する。
【0023】
上記によれば、フィルタ装置の作動中に、ファン4は、それぞれのエアチャネル2を通る空気流を与える。ファン4は、空気フィルタ8,9の下流の位置にある。この結果、空気が、第1のエアフィルタ8を通って吸引され、続いて第2のエアフィルタ9を通って吸引される。第1のエアフィルタ8が新品のときには、第1のエアフィルタ8は、エアチャネル2を通る空気中からの粒子の分離を主として担う。このため、下流に配置された第2のエアフィルタ9に達した空気は比較的粒子を含まない。このため、初期には、第2のエアフィルタ9は、比較的未使用の状態に保たれる。このため、初期には、第2のエアフィルタの圧力降下Δpは初期レベルにとどまる。この結果、第1のエアフィルタ8の圧力降下Δpが実質的に一定であるため、エアフィルタ8,9の全体の圧力降下Δpは、前記初期には実質的に一定となる。しかし、第1のエアフィルタ8の粒子分離能は、徐々に低下していく。このため、第2のエアフィルタ9が担う粒子の分離の負荷が増えていく。このため、フィルタのコンビネーションの圧力降下Δpが徐々に上昇し始める。しかし、フィルタのコンビネーションの寿命(分離エアフィルタ8,9の寿命の合計t+tに対応しうる)の終点に達するまで、第2のエアフィルタ9の圧力降下Δpが大きく上昇することはない。図5の実線グラフ15は、フィルタのコンビネーションの圧力降下Δpが時間tと共に変化する様子を示す。
【0024】
図6から、第1のエアフィルタ8と第2のエアフィルタ9は、時間tと共に分離能sが変化する様子に関して異なる特性を持つことが明らかである。しかし、時間tと共に分離能sが変化することは望ましい特性ではなく、分離能sが一定であることが好ましい。このため、フィルタのコンビネーションの分離能sは、それぞれのエアフィルタ8,9の分離能sの影響を受ける。第1のエアフィルタ8の分離能は時間tと共に低下し、第2のエアフィルタの分離能sは時間sと共に上昇するため、フィルタのコンビネーションは、その寿命t+tの長い間、実質的に一定の分離能sを提供することができる。実線グラフ16は、分離能が時間tと共に変化しうる様子を示す。
【0025】
上記に係るエアフィルタ装置のファン4は、一定の効果を伴って作動した場合、エアフィルタ8,9を通る空気流を与え、これは、エアフィルタ8,9の圧力降下Δpに関連している。CADR(クリーンエア供給率)は、エアフィルタ装置の能力を示す指標であり、供給することができる清浄な空気の量として表される。この指標は、エアフィルタを通る空気流と、エアフィルタの粒子分離能の積として計算することができる。第1のエアフィルタ8として使用されるタイプのエアフィルタのみを有するエアフィルタ装置では、その全寿命の間、エアフィルタを通る実質的に一定の空気流が得られる。一方で、分離能sは時間tと共に低下する。このため、このようなエアフィルタ装置の清浄な空気を供給する能力は、時間と共に低下する。第2のエアフィルタ9として使用されるタイプのエアフィルタのみを有するエアフィルタ装置では、フィルタが目詰まりすると、エアフィルタを通る空気流が時間と共に減少する。この場合、分離能sは時間と共に上昇するが、その上昇の程度は、エアフィルタ9を通る空気流の低下を補償できるほどではない。このため、このようなエアフィルタ装置の清浄な空気を供給する能力も、時間と共に低下する。上記の第1のエアフィルタ8と第2のエアフィルタ9を前記順序で備える、本発明によるエアフィルタ装置では、その予想される寿命t+tの長い期間、比較的一定の圧力降下Δp(グラフ15を参照)と一定の分離能2(グラフ16を参照)とが得られる。このため、エアフィルタ装置の新鮮な空気を供給する能力は、その寿命の長い期間、一定の高いレベルに維持される。
【0026】
本発明は、いかなる形であれ図面に記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲内で自由に変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルタ装置であって、
エアチャネル(2)と、
前記エアチャネル内(2)に取り付けられた第1のエアフィルタ(8)とを備え、前記第1のエアフィルタは、
空気が通過するための少なくとも1つの通路(10a)が設けられたフィルタフレーム(10)と、
前記フィルタフレーム(10)に取り付けられた静電的に帯電可能な繊維を含むフィルタ本体(11)とを備え、前記フィルタ本体(11)は、前記フィルタフレーム(10)から所定の距離だけ離れた位置であり、かつ前記エアチャネル(2)を通る意図した空気の流れの方向に対して前記フィルタフレーム(10)の下流の位置まで延在し、
前記エアフィルタ装置は、取り付けられた状態で前記エアチャネル(2)にわたって延在するように適合されたフィルタクロスを有する第2のエアフィルタ(9)を有し、これにより、前記フィルタクロスを、前記エアチャネル(2)内を実質的に長手方向に流れる空気が通過し、前記第2のエアフィルタは、前記エアチャネル(2)内の、前記エアチャネル(2)を通る意図した空気の流れの方向に対して前記第1のエアフィルタ(8)の下流の位置に取り付けられていることを特徴とするエアフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ装置は、前記エアチャネル(2)を通る前記空気流を発生させるように適合されたファン(4)を有し、前記ファン(4)は、前記エアチャネル(2)内の、前記第2のエアフィルタ(8)の下流の位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1のエアフィルタ(8)および前記第2のエアフィルタ(9)を含む前記エアチャネルの少なくとも一部は直線部分を有することを特徴とする請求項2に記載のエアフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタ装置は、前記エアチャネル(2)を画定している壁要素(1)を有し、前記壁要素(1)は、前記エアチャネル(2)内に前記第1のエアフィルタ(8)を取り付けるための第1の開口(6)と、前記エアチャネル(2)内に前記第2のエアフィルタ(9)を取り付けるための第2の開口(7)と、を有することを特徴とする請求項3に記載のエアフィルタ装置。
【請求項5】
前記第1のエアフィルタ(8)は、一体型ユニットとして前記エアチャネル(2)内に取り付け可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアフィルタ装置。
【請求項6】
前記第1のエアフィルタ(8)および前記第2のエアフィルタ(9)は、一体型ユニットとして前記エアチャネル(2)内に取り付け可能であることを特徴とする請求項5に記載のエアフィルタ装置。
【請求項7】
前記第1のエアフィルタ(8)および前記第2のエアフィルタ(9)は、囲繞ケーシング(12a)によって相互に連結されることを特徴とする請求項6に記載のエアフィルタ装置。
【請求項8】
前記第2のフィルタがバッグフィルタ(13a)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアフィルタ装置。
【請求項9】
前記第2のフィルタが平面フィルタ(13b)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアフィルタ装置。
【請求項10】
前記第2のフィルタが折返しフィルタ(13c)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアフィルタ装置。
【請求項11】
エアチャネル(2)を有するエアフィルタ装置の製造方法であって、前記方法は、
前記エアチャネル(2)内に第1のエアフィルタ(8)を取り付けるステップを有し、前記第1のエアフィルタは、空気が通過するための少なくとも1つの通路(10a)を備えたフィルタフレーム(10)と、前記フィルタフレーム(10)に取り付けられた静電的に帯電可能な繊維を含むフィルタ本体(11)とを備え、前記フィルタ本体(11)は、前記フィルタフレーム(10)から所定の距離だけ離れた位置であり、かつ前記エアチャネル(2)を通る意図した空気の流れの方向に対して前記フィルタフレーム(10)の下流の位置まで延在し、
前記エアチャネル(2)にわたって延在するようにフィルタクロスを有する第2のエアフィルタ(9)を前記エアチャネル(2)内に取り付けるステップを有し、これにより、前記フィルタクロスを、前記エアチャネル(2)内を実質的に長手方向に流れる空気が通過し、
前記エアチャネル(2)内の、前記エアチャネル(2)を通る意図した空気の流れの方向に対して前記第1のエアフィルタ(8)の下流の位置に前記第2のエアフィルタを取り付けるステップと、を特徴とするエアフィルタ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−543676(P2009−543676A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519409(P2009−519409)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050452
【国際公開番号】WO2008/008028
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(508206058)
【Fターム(参考)】