説明

エアフィルタ

【課題】通気抵抗を上げることなく、通気通路から導入した気体をフィルタエレメント面に分散してフィルタエレメントの全面をろ過に供することができるエアフィルタを提供する。
【解決手段】通気通路内の気体をろ過するフィルタエレメントと、前記気体を導入する吸入口と、前記フィルタエレメントによってろ過された気体を前記通気通路に排出する排出口とが形成されると共に、前記吸入口と連通するダストサイドと前記排出口と連通するクリーンサイドとに区画するように前記フィルタエレメントを収納するケースとを備えるエアフィルタにおいて、前記クリーンサイドに、前記フィルタエレメントと当接する背面壁部が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気通路内の気体をろ過するエアフィルタの構造に係り、特に、内燃機関の通気通路に設けられたエアフィルタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通気通路内の気体をろ過するエアフィルタとして種々のエアフィルタが知られている。このようなエアフィルタにおいて、エアフィルタに収納されたフィルタエレメントの位置が、通気通路内を通過した気体の流れ方向と直角方向に位置する場合、流入した気体がフィルタエレメントに直接あたり、当該気体が直接当たる箇所に気体内の塵埃等のダストが集中してしまうため、フィルタエレメントが早期に目詰まりを起こし、クリーンサイドにダストが吹き抜けてしまうという問題があった。
【0003】
このようなダストの吹き抜けを防止するためには、気体の流入方向上にフィルタエレメントを配置しないなどの設計を行う他、フィルタエレメントの一部にダストが集中することを防止することを目的として、種々の構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188363号公報
【特許文献2】特開平8−100718号公報
【0005】
特許文献1に記載されたエアクリーナは、ケースにフィルタエレメントから上流側に向けて通路幅が漸減する錐形状に形成されるとともに、その先端に所定の大きさの開口部を有し、該開口部には、フィルタ中心から上流側に向けて移動可能に突出するロッドと、該ロッドの先端に配され、上流側先端が流線型形状に形成される整流ブロックと、開口部の周縁と所定の間隔が空いた位置に整流ブロックを保持するスプリングを具備している。
【0006】
このような構成を備えることで、特許文献1に記載されたエアクリーナは、整流ブロックが流線型に形成されているので、フィルタエレメントへの通気を均等にでき、フィルタエレメントの寿命を向上させることができる。
【0007】
特許文献2に記載されたエアクリーナは、吸気開口を有するカバーと、排出口を有するボディとでケーシングを構成し、ケーシング内の吸気開口近傍に、吸入空気の流量に応じて開度が変化する偏流板を吸気開口に向けて傾斜させて配設している。
【0008】
このような構成を備えることで、特許文献2に記載されたエアクリーナは、流入する空気が偏流板に衝突し流れの向きが変えられるとともに偏流板もその開度が変わり、流入空気はその流量に応じフィルタエレメント面に適度に分散されるので、フィルタエレメントの全面がろ過に供され、長期に亘って急激な吸入抵抗の増加が抑制されろ過寿命も長く維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来のエアクリーナの構成によると、通気通路内の気体を導入する吸入口の近傍に整流ブロックや偏流板を配設して気体の流れを分散させているので、通気抵抗が大きくなってしまい、エアフィルタとしての機能の低下を避けることができないといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、通気抵抗を上げることなく、通気通路から導入した気体をフィルタエレメント面に分散してフィルタエレメントの全面をろ過に供することができるエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエアフィルタは、通気通路内の気体をろ過するフィルタエレメントと、前記気体を導入する吸入口と、前記フィルタエレメントによってろ過された気体を前記通気通路に排出する排出口とが形成されると共に、前記吸入口と連通するダストサイドと前記排出口と連通するクリーンサイドとに区画するように前記フィルタエレメントを収納するケースとを備えるエアフィルタにおいて、前記クリーンサイドに、前記フィルタエレメントと当接する背面壁部が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るエアフィルタにおいて、前記背面壁部の前記フィルタエレメントとの当接面の形状は、前記吸入口の開口形状を前記気体の吸入方向に沿って前記フィルタエレメントに投影した投影像と等しい又は、前記投影像よりも大きいと好適である。
【0013】
また、本発明に係るエアフィルタにおいて、前記吸入口の開口端縁は、前記吸入口から前記ダストサイドに向かって広がるR形状に形成されると好適である。
【0014】
また、本発明に係るエアフィルタにおいて、前記ダストサイドは、前記吸入口から導入された前記気体を、前記通気通路と交差する方向に分散する分散リブを備えると好適である。
【0015】
また、本発明に係るエアフィルタは、前記ケースは、前記ダストサイドを隔成する有底筒状の第1ケースと、前記クリーンサイドを隔成する有底筒状の第2ケースとを備え、前記第1ケースと前記第2ケースとを係合させると共に、前記第1ケースと第2ケースとによって前記フィルタエレメントを挟持して収納することができる。
【0016】
また、本発明に係るエアフィルタは、前記分散リブは、前記第1ケースの底部から突出して形成されると好適である。
【0017】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るエアフィルタは、フィルタエレメントと当接する背面壁部を備えているので、クリーンサイドへのダストの吹き抜けを防止することができるとともに、吸気口の開口面積を狭めることがないので、通気抵抗が大きくなることを抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係るエアフィルタは、吸気口の開口端縁がR形状(ファンネル形状)に形成されているので、吸気口から導入された気体をダストサイド内で適当に分散させることができ、フィルタエレメントの性能を長期間維持することができる。
【0020】
また、本発明に係るエアフィルタは、ダストサイドに分散リブを備えているので、吸気口から導入された気体をダストサイド内で適当に分散させることができ、フィルタエレメントの性能を長期間維持することができる。
【0021】
また、本発明に係るエアフィルタは、有底筒状の第1のケースと有底筒状の第2のケースとによってフィルタエレメントを挟持するように形成しているので、容易にエアフィルタを製造することができる。
【0022】
また、本発明に係るエアフィルタは、分散リブを第1のケースの底部から突出して形成したので、容易に分散リブを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るエアフィルタの概要を説明するための平面図。
【図2】図1におけるA−A断面図。
【図3】本実施形態に係るエアフィルタを構成する第1のケースを説明するための平面図。
【図4】本実施形態に係るエアフィルタを構成する第1のケースの開口部の形状を示す側面図。
【図5】本実施形態に係るエアフィルタを構成する第2のケースを説明するための平面図。
【図6】本実施形態に係るエアフィルタを構成する第2のケースの開口部の形状を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るエアフィルタの概要を説明するための平面図であり、図2は、図1におけるA−A断面図であり、図3は、本実施形態に係るエアフィルタを構成する第1のケースを説明するための平面図であり、図4は、本実施形態に係るエアフィルタを構成する第1のケースの開口部の形状を示す側面図であり、図5は、本実施形態に係るエアフィルタを構成する第2のケースを説明するための平面図であり、図6は、本実施形態に係るエアフィルタを構成する第2のケースの開口部の形状を示す側面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るエアフィルタ1は、吸入口11及び排出口21がそれぞれ通気通路(図示せず)に接続されることで通気通路に介在されている。このように、エアフィルタ1が通気通路に介在されることで、通気通路内を通過する気体をろ過できるようになっている。
【0027】
図2に示すように、エアフィルタ1は、底部15に吸入口11が形成された有底筒状の第1のケース10と、底部25に排出口21が形成された有底筒状の第2のケース20とが組み合わされている。また、第1のケース10と第2のケース20とによって、フィルタエレメント30が挟持されており、該フィルタエレメント30によって、第1のケース10と第2のケース20とによって隔成される空間が、ダストサイドDとクリーンサイドCとに区画されている。
【0028】
フィルタエレメント30は、フェルト、不織布、濾紙等の周知のろ材を用いることができ、その形状はプリーツ形状、シート形状その他、所望の形状に形成することができる。このように、エアフィルタ1の内部がフィルタエレメント30によってダストサイドDとクリーンサイドCとに区画されているので、吸入口11から導入された気体が排出口21へ排出される際に、フィルタエレメント30を通過することで、気体内の塵埃等のダストを除去することができ、ろ過された気体を排出口21から排出することができるようになっている。
【0029】
図3及び図4に示すように、第1のケース10は、有底筒状に形成されており、底部15には、吸入口11が開口して形成されている。また、底部15には、吸入口11から導入された気体を通気通路と交差する方向(フィルタエレメント30の面方向)に分散することができるように、複数の分散リブ14が突出するように立設されている。また、図2に示すように、吸入口11のダストサイドD側の開口端縁12は、R形状に形成されており、該R形状によって、開口端縁12において、導入された気体を通気通路と交差する方向(フィルタエレメント30の面方向)に分散することができるように形成されている。なお、R形状は吸入口11からダストサイドDに向かって広がるファンネル形状に形成しても構わない。
【0030】
さらに、第1のケース10の開口端縁には、全周に溶着リブ13が形成されており、後述する第2のケース20と組み合わせた際に溶着フランジ24と当接する位置に形成されている。
【0031】
図5及び図6に示すように、第2のケース20は、有底筒状に形成されており、底部25には、排出口21が開口して形成されている。また、底部25には、気体の通過に対してフィルタエレメント30が変形・脱落することを防止するために、複数の押さえリブ23が突出するように立設している。押さえリブ23の形状は、図6に示すように、板状に形成しても構わないし、棒状に形成しても構わない。このような形状は、気体の通過する量や位置に応じて適宜変更することができる。また、第2のケース20の開口端縁には、全周に溶着フランジ24が形成されている。
【0032】
なお、第1のケース10及び第2のケース20はともにポリプロピレンなどの合成樹脂によって形成されており、第1のケース10と第2のケース20の開口端を夫々当接させるように組み合わせた後、夫々のケースに形成された溶着リブ13及び溶着フランジ24とを振動溶着によって溶着してエアフィルタ1を形成している。
【0033】
さらに、第2のケース20には、クリーンサイドCにおいて、フィルタエレメント30と当接する背面壁部22が形成されている。図4及び図6に示すように、背面壁部22は、吸入口11から導入された気体が吸入方向に沿って導入された際に面直する位置に形成されている。また、背面壁部22のフィルタエレメント30と当接する当接面の形状は、吸入口11の開口形状を気体の吸入方向に沿ってフィルタエレメント30に投影した投影像よりも大きく形成されている。
【0034】
次に、再び図2を参照してエアクリーナ1内での気体の通気方向について説明する。
【0035】
図2に示すように、吸入口11から導入された気体は、通気方向Bに沿ってエアフィルタ1内に導入される。ここで、導入された気体の一部は、通気方向Bに沿って吸入口11からフィルタエレメント30に向かって直接進行する。その後、フィルタエレメント30を通過してクリーンサイドCへ通過する。この際、フィルタエレメント30のクリーンサイドC側には、背面壁部22が形成されているので、吸気口11から直接導入された気体は、背面壁部22に当たるため、クリーンサイドCに吹き抜けることはない。また、背面壁部22に当たった気体は、通気方向B1に示すように、その通気方向を背面壁部22に沿って変え、フィルタエレメント30内を進行した後、クリーンサイドC側に抜けるように通過する。
【0036】
このように、背面壁部22に当たった気体は、進行方向を変えてフィルタエレメント30内を進行するため、クリーンサイドCに背面壁部22を形成しても、背面壁部22によって、エアフィルタ1のフィルタ機能が損なわれることはない。
【0037】
さらに、吸気口11から導入された気体のうち、フィルタエレメント30に向かって直接進行する気体以外の気体は、吸気口11の開口端縁12に形成されたR形状によって、通気方向B2に示すようにダストサイドD内に分散される。また、ダストサイドD側には、図4に示すような分散リブ14が第1のケース10の底部15から突出して形成されているので、ダストサイドD内での気体の分散が促進される。
【0038】
このように形成されたエアフィルタ1は、吸気口11から導入した気体がダストサイドD内で分散されるので、フィルタエレメント30の全面を気体のろ過に供することができるので、フィルタエレメント30の一部にダストが堆積することを防止することができ、フィルタエレメント30の性能を長く維持することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るエアクリーナ1は、クリーンサイドC側で、フィルタエレメント30と当接する背面壁部22を備えているので、吸入口11から導入された気体が直接フィルタエレメント30に当たっても、ダストがクリーンサイドC側に吹き抜けることを防止することができる。また、吸気口11の開口部を覆うような整流板など、通気抵抗となる部材を配置していないので、通気抵抗が大きくなることを抑制することができる。
【0040】
さらに、吸気口11から導入された気体をダストサイドD内で分散することができるので、フィルタエレメント30の全面を気体のろ過に供することができ、フィルタエレメント30の性能を長く維持することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、第1のケース10と第2のケース20とを合成樹脂で形成し、これらを振動溶着で溶着したエアフィルタ1について説明したが、本実施形態に係るエアフィルタはこれらに限定されず、例えば、第1のケース10及び第2のケース20を夫々金属で形成しても構わないし、第1のケース10及び第2のケース20を周知のボルト及びナットで締結しても構わない。この場合、必要に応じて気密手段としてパッキンを第1のケース10及び第2のケース20の当接面に介在させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態においては、背面壁部22の形状が、吸気口11の開口形状よりも大きい場合について説明したが、背面壁部22は、吸気口11から導入された気体が直接当たる位置に形成されていれば良いので、背面壁部22のフィルタエレメント30との当接面の形状は、吸気口11の開口形状と同一に形成しても構わない。
【0043】
また、本実施形態においては、エアフィルタ1について説明したが、本実施形態に係るエアフィルタ1は、この用途に限定されず、例えば、エアクリーナやキャニスタに適用することもできる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 エアフィルタ, 10 第1のケース, 11 吸入口, 12 ファンネル部, 13 溶着リブ, 14 分散リブ, 15,25 底部, 20 第2のケース, 21 排出口, 22 背面壁部, 23 押さえリブ, 24 溶着フランジ, 30 フィルタエレメント, B,B1,B2 通気方向, C クリーンサイド, D ダストサイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気通路内の気体をろ過するフィルタエレメントと、
前記気体を導入する吸入口と、前記フィルタエレメントによってろ過された気体を前記通気通路に排出する排出口とが形成されると共に、前記吸入口と連通するダストサイドと前記排出口と連通するクリーンサイドとに区画するように前記フィルタエレメントを収納するケースとを備えるエアフィルタにおいて、
前記クリーンサイドに、前記フィルタエレメントと当接する背面壁部が形成されることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記背面壁部の前記フィルタエレメントとの当接面の形状は、前記吸入口の開口形状を前記気体の吸入方向に沿って前記フィルタエレメントに投影した投影像と等しい又は、前記投影像よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記吸入口の開口端縁は、前記吸入口から前記ダストサイドに向かって広がるR形状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記ダストサイドは、前記吸入口から導入された前記気体を、前記通気通路と交差する方向に分散する分散リブを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記ケースは、前記ダストサイドを隔成する有底筒状の第1ケースと、前記クリーンサイドを隔成する有底筒状の第2ケースとを備え、
前記第1ケースと前記第2ケースとを係合させると共に、前記第1ケースと第2ケースとによって前記フィルタエレメントを挟持して収納することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記分散リブは、前記第1ケースの底部から突出して形成されることを特徴とする請求項5に記載のエアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−58404(P2011−58404A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207767(P2009−207767)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000223034)株式会社ROKI (51)