説明

エアーバッグのフィルタ部分用の織布を製造する方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エアーバッグ用の織布を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】エアーバッグ用の織布では、自動車の座席に向いた側のためには通常、低い通気性が必要とされており、この通気性は、500Paの検査差圧において10l/dm2・min の値を上回るべきではない。エアーバッグがこのような織布からのみ製造される場合には、火薬技術式のガス発生機の点火によってエアーバッグが膨らんだ時に、極めて硬い空気クッションが生ぜしめられる。このような空気クッションにおいては、大きな力で衝突した場合にまず初め前方に向かって投げ出されるドライバ又は同乗者の体は、その運動を急激に停止させられるので、特に、頭部及び頸部の範囲において損傷の発生するおそれがある。
【0003】従ってエアーバッグは、衝突時にドライバ又は同乗者に大きな衝撃を与えることなしに、ドライバ又は同乗者を柔らかくを受け止めることができるように、構成されていなくてはならない。このことは、エアーバッグ機能のトリガ時にエアーバッグに流入したガスを部分的に逃がすことによって、達成することができる。
【0004】このためにUS−A3481625には、エアーバッグに複数の孔を設けることが提案されている。この場合しかしながら、発生機によって生ぜしめられたガスからの高温の粒子が車室内に達する。そしてこれらの高温の粒子は、ドライバ又は同乗者にとって著しく危険である。
【0005】このような粒子の流出を回避するために、DE−C3644554においては、ガスを逃がすために設けられた孔を、アラミド繊維製のフィルタ織布によって覆うことが提案されている。この方法は、フィルタ織布を縫い付けるために著しく面倒な手間を必要とする。そして、この付加的な作業過程とアラミド織布の高い価格とによって、エアーバッグ製造のためのコストが高騰し、この結果比較的安価な製品を得ることは不可能である。
【0006】ある講演(Krummheuer,W.R.,Engineering with Fibres for Airbags,Beg andBelt ′90,International Akzo Symposium,Koeln,25.-27.04.1990)においては従って、2部分から成るエアーバッグを製造することが提案された。このエアーバッグはコンタクト部分とフィルタ部分とから構成されている。コンタクト部分のためには極めて低い通気性(<10 l/dm2・min)を備えた織布が使用される。このコンタクト部分は、事故の際にドライバ又は同乗者を受け止めるために働くエアーバッグ部分である。
【0007】フィルタ部分は、膨らまされたエアーバッグの、ドライバ又は同乗者とは反対側の部分を形成している。このフィルタ部分は、明らかに高い通気性を備えた織布から構成されていて、発生機によって生ぜしめられたガスを逃がすための可能性を提供し、かつ流出するガスを濾過する。さらにこの箇所においては、織布を高温のガスが貫通する際に、熱交換効果が発生し、この結果、ガスは幾分冷却されて車室内に達する。
【0008】EP−A363490には、一体のエアーバッグを円形織布として織ることが提案された。このような形式で製造されたエアーバッグ・織布はしかしながら、2つ又はそれ以上の部分から成るエアーバッグとは異なり、その都度の自動車タイプへの適合が不可能である。例えばこの場合、同乗者用のエアーバッグの構造に対する今日の要求において、この同乗者用のエアーバッグを一体のものから製造することは不可能であり、2つ又はそれ以上の部分を縫い合わせることは不可避である。さらに、保持ベルトの縫付け作業は一体のエアーバッグにおいては、2つまたはそれ以上の部分から成るエアーバッグの場合に比べて、著しく困難である。
【0009】同様に、異なった通気性を有する織布部分を備えた一体のエアーバッグは、W0−A90−09295に記載されている。ここにおいて開示された方法によっては、同乗者用のエアーバッグを製造することは不可能である。
【0010】2つ又はそれ以上の部分から製造されるエアーバッグは、確かに、その都度の自動車タイプの要求に極めて良好に適合することができ、しかも同乗者用のエアーバッグを問題なく製造する可能性を提供しているが、しかしながらこの場合、互いに極めて異なった通気性を有する2つの織布を違いに縫い合わせねばならないという問題が生じる。エアーバッグのフィルタ部分のために使用される織布の高い通気性は、低い密度の織布によって達成されるのに対して、エアーバッグのコンタクト部分は密な織布から製造されるので、つまりこの場合互いに密度の異なった2つの織布が互いに縫い合わせられねばならない。エアーバッグが膨らんだ場合、低い密度の織布が縫目箇所において裂けたり、低い密度の織布の糸にずれが生じ、これによって、ガスはコントロールされずに流出してしまうことがある。
【0011】さらに、この作業形式は織物工場における処理の問題をも引き起こす。それというのはフィルタ部分の通気性は、自動車形式及び使用される発生機に合わせられねばならないからである。従って、織物工場においては、種々異なった密度の多数の織布を製造しかつ準備することが必要である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ゆえに本発明の課題は、エアーバッグのフィルタ部分における使用時に上述の欠点を有しておらず、極めてフレキシブルでかつ安価な形式で、個々の自動車タイプに対して課せられる要求に適合することができ、さらに、発生機によって生ぜしめられるガスの所望のように逃がすことができ、しかもこの場合ガスにフィルタ効果及び冷却効果を加えることができる織布のための製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】この課題の解決策は、製織技術的な手段によって、形状及び寸法を変化可能な、通気性の高い区域と通気性の低い区域とが生ぜしめられる織布の製造にある。上述の欠点は、本発明のように、通気性の異なった区域を形成することによって、特に有利な形式で排除することができる。本発明のように製造されたフィルタ部分を使用することによって、エアーバッグに対する要求を完全に満たすことができる。
【0014】密度の高い織布区域は、低い通気性を示す。このような密度の高い織布区域は、そこにおいて得られる高い切断強度及び縫目強度のために、裁断のための範囲を形成する。窓の形式で織布に配置されている密度の低い、高い通気性を有している区域は、エアーバッグが膨らんだ場合に発生機によって生ぜしめられるガスのコントロールされた流出及び冷却を可能にする。このような区域は、切断縁部及び縫目縁部には適していない。
【0015】低い通気性を備えた区域は、エアーバッグのフィルタ部分のために製造された織布ににおいて次のように、すなわち該区域が、織布の裁断時に後で行われるエアーバッグ製造のために必然的に縫目箇所を形成するように、配置されている。この比較的密な箇所によって、エアーバッグのフィルタ部分とコンタクト部分との縫い合わせの後で、極めてしっかりとした縫目が得られ、この縫目において、エアーバッグの膨らみ時に裂け目及び糸のずれが生じることはない。さらに、縁部における密な箇所によって裁断時に利点が得られる。それというのは、この密な箇所においては、切れにくい縁部がほつれることなしに生ぜしめられるからである。
【0016】高い通気性もしくは低い通気性は、製織組織の変化によって又は経糸及び緯糸における糸数の変化によって、設定される。例えば、最初に述べた方法では、密な平織りで織布を製造することができる。糸数及び織布の仕上げ条件は次のように、すなわち、地織りが変わらずに維持されている箇所においては低い通気性が、ひいてはこの密な織布箇所においては良好な切断強度及び縫目強度が得られるように、選択される。縫目縁部又は切断縁部を形成することが望まれておらず、発生機によって生ぜしめられたガスの流出が望まれていない箇所においては、織布の組織は、そこにおいて通気性の高い区域が生ぜしめられるように、変えられる。
【0017】このためにどのような形式の製織組織を選択するかは、その都度使用される織機パーク及び通気性に対する要求によって決定される。本発明は、地織りとは異なった製織組織を備えた高い通気性を有する区域を設定するために、規定の製織組織形式に制限されない。このためには、製織技術において知られているすべての製織組織形式が適している。通気性の高い区域における異なった製織組織のための例としては、平織りにおいて綾織り及びパナマ織りを挙げることができる。
【0018】異なった製織組織ひいては高い通気性を備えた区域を得るための可能性は、製織技術において一般に公知のタペット式織機及びドビー織機によって提供される。ドビー織機は、いかなる任意の織機においても付加装置として使用ことができる。ドビー織機は、織機のシャフトを制御して、種々様々な製織組織を織布の中に設定することができる。同様にタペット式織機も使用することが可能である。
【0019】図1〜図4には、どのような形式においてドビー織機を用いて製織組織を変化させ、これによって高い通気性を備えた区域を得ることができるかが、示されている。
【0020】図1には、密な平織り(1)による織布の製織組織パターンが示されている。この平織りにはドビー織機を用いて、パナマ織り(2)による窓が織り込まれている。図2には、対応する織布が断面図で示されている。パナマ織りによって窓状に織り込まれた区域においては、高い通気性が得られる。
【0021】図3には、密な平織り(1)による織布の製織組織パターンが示されている。この平織りにはドビー織機を用いて、綾織り3/1(3)による窓が織り込まれている。図4には、対応する織布が断面図で示されている。綾織りによって窓状に織り込まれた区域においては、高い通気性が得られる。
【0022】密な地織りの箇所は織布構造において次のように、すなわち、該箇所がエアーバッグのフィルタ部分のための後で行われる織布の裁断時に、必然的に切断縁部及び縫目縁部を生ぜしめるように、所定されている。断裁の輪郭は、低い通気性を備えた区域の縁部を形成しているか、又はこの区域に位置している。織布の地織りとは異なった製織組織で織り込まれた、高い通気性を備えた箇所は、エアーバッグの膨らみ時に発生機によって生ぜしめられるガスのコントロールされた流出を可能にし、しかもこの場合良好なフィルタ効果及び冷却効果をも可能にする。
【0023】製織組織の変更によって通気性にどの程度強い影響を与えることができるかについては、以下に記載の表に示されている。この場合20本/cmの経糸及び緯糸(ポリアミド6.6−ティータ470f72のフィラメント糸)によって平織りされた織布において、種々異なった製織組織の窓が、ドビー織機を用いて織り込まれた。個々の製織組織では以下の通気性が得られた:



この表は、通気性が、異なった製織組織を備えた区域の寸法によってのみならず、製織組織形式を選択することによっても、極めて所望のように制御され得るということを示している。
【0024】縫目箇所を、通気性の低い区域つまりこの場合では密な平織りの区域に位置させることが必要であるということは、縫目強度及び縫目ずれ強度の試験によって、示されている: 平織り パナマ織り2/2縫目強度 強度(N) 1210 840 伸び(%) 18.9 29.1負荷時における縫目のずれ(mm)
5daN 0 4.510daN 0 測定不能パナマ織りの場合には、10daNの測定範囲において縫目は既に裂けてしまい、従って測定を行うことはできなかった。
【0025】異なった製織組織ひいては高い通気性を備えた区域を設定するためには、製織技術において一般に知られているジャカード織機を使用することも可能である。ジャカード織機はドビー織機又はタペット式織機を使用する場合に比べて次のような利点、すなわち、ドビー織機を使用した場合にはよりはグループ毎にしか制御することができないのに対して、よりを個々に制御することができるという利点を有している。従ってジャカード織機の使用によって、製織組織がエアーバッグのために必要な断裁に最適に適合するように、製織組織を変化させることができる。織布構造を決定する場合密な地織りを備えた箇所は、該箇所が、エアーバッグのフィルタ部分の裁断時に必然的に切断箇所を形成し、ひいては後で行われる縫い合わせの際に縫目縁部を形成するように、選択される。この作業形式によって、裁断時には極めて僅かな裁断屑しか生ぜず、このことは、特に製造コストに有利な影響を与える。
【0026】図5には、通気性の高い区域(4)を備えた織物区分が示されており、この場合通気性の高い区域(4)は、密な平織り(1)をタペット式織機又はドビー織機を用いて変化させることによって、異なった製織組織において窓状に形成されている。平織りによる箇所は、後で行われる切断もしくは縫い合わせ時に切断縁部もしくは縫目縁部を形成している。異なった製織組織によって織られた箇所は、発生機によって生ぜしめられたガスのコントロールされた流出を可能にすると共に、極めて良好なフィルタ効果及び冷却効果を可能にする。
【0027】図6には、通気性の高い区域(5)を備えた織物区分が示されており、この場合通気性の高い区域(5)は、密な平織り(1)をジャカード織機を用いて変化させることによって、異なった製織組織において窓状に形成されている。平織りによる箇所は、後で行われる切断もしくは縫い合わせ時に切断縁部もしくは縫目縁部を形成している。異なった製織組織によって織られた箇所は、発生機によって生ぜしめられたガスのコントロールされた流出を可能にすると共に、極めて良好なフィルタ効果及び冷却効果を可能にする。図面から分かるように、ジャカード織機を使用した場合、高い通気性を備えた区域は、該区域が、エアーバッグのフィルタ部分のための断裁形状に最適に適合されるように、構成することができ、この結果、後で行われる裁断時には極めて僅かな裁断屑しか発生せず、コストの点で極めて有利な製造が可能になる。
【0028】上述の方法形式によって、同じ経糸によって、種々様々に使用され得る織布を製造することができ、これによって、エアーバッグを種々異なった自動車タイプ及び種々異なった通気性に関する要求に対して適合させる場合に、極めて安価な織布の製造が可能になる。
【0029】本発明による方法は、エアーバッグのフィルタ部分のための断裁に高い通気性を備えた窓状の区域を織り込むことに制限されるものではない。この場合、断裁毎の窓状の複数の区域をも同様に含まれる。これらの窓の数、断裁におけるその配置形式及びその寸法は、通気性に対するその都度の要求及び自動車の形式によって決定される。
【0030】織布製造時には、製織組織の変更によって生ぜしめられる緊張を補償するために、窓を、織布全長にわたって見て、相前後してではなく、互いにずらして配置すると有利である。このような緊張を補償するための別の可能性としては、第2の経糸を用いた作業が挙げられる。
【0031】ドビー織機又はジャカード織機を用いた上述の方法形式の他に、1つの織布において、通気性及び切断強度もしくは縫目強度の異なった、形状及び大きさを可変の区域を、経糸数及び緯糸数を変化させることによって生ぜしめることも可能である。このためには、リートにおけるcm当たり高い経糸数を備えたセクションとcm当たり低い経糸数を備えたセクションとが互いに交番するように、経糸が処理される。この経糸は平織りによって織られる。緯糸数は次のように、すなわち、電子制御される緯入れによって、経糸におけると同様な形式で、cm当たり高い緯糸数を備えたセクションとcm当たり低い緯糸数を備えたセクションとが互いに交番するように、選択される。
【0032】高い経糸数を備えたセクションのためには、22〜28本/cmの経糸数が選択され、低い経糸数を備えたセクションは、17〜21本/cmの経糸数を有している。同様に、相応な緯糸数によって、高い緯糸数を備えたセクションと低い緯糸数を備えたセクションとが設定される。前記の値は、粗織布設定のための例であり、350dtexの糸ティータに関するものである。別の糸ティータを使用する場合には、糸数をティータに相応に適合させる必要がある。同様に、糸数は、使用される糸の収縮特性にも合わせられねばならない。
【0033】経糸数と緯糸数とを変化させることによって、織布において3つの通気性グループが形成される。高い経糸数を備えたセクションと低い緯糸数を備えたセクションとが交差している箇所においては、低い通気性と良好な切断強度もしくは縫目強度を備えた織布区域が生ぜしめられる。織布構造は、後でこの箇所においてエアーバッグのフィルタ部分のための裁断が行われるように、選択される。それというのはここでは、エアーバッグが膨らんだ際に、縫目が裂けたり、縫目箇所における糸層のずれが生じたりするおそれがないからである。
【0034】低い経糸数を備えたセクションと低い緯糸数を備えたセクションとの交差箇所においては、高い通気性を備えた織布区域が生ぜしめられる。これらの箇所は、後の切断箇所又は縫目箇所として適していない。しかしながらこれらの箇所は、エアーバッグが膨らんだ際に発生機によって生ぜしめられるガスのコントロールされた流出を可能にし、しかもこのガスに極めて良好なフィルタ効果と冷却効果とを作用させる。
【0035】さらに、高い経糸数を備えたセクションと低い緯糸数を備えたセクションとが交差している箇所、もしくは低い経糸数を備えたセクションと高い緯糸数を備えたセクションとが交差している箇所においては、中位の通気性を備えた区域が生ぜしめられる。
【0036】図7には、経糸数と緯糸数との変化によって製造された織布が示されている。経糸において低い糸数を備えたセクション(6)の隣には、高い糸数を備えたセクション(7)が位置している。緯糸においても同様に、低い糸数を備えたセクション(8)の隣には高い糸数を備えたセクション(9)が位置している。このようにして平織りによる織布では、高い経糸数を備えたセクション(7)と、高い緯糸数を備えたセクション(8)との交差箇所に、低い通気性を備えた区域(10)が生ぜしめられている。これらの区域は、この場合、エアーバッグのフィルタ部分の後での裁断時に有利には裁断箇所もしくは後の縫目が位置するように、選択される。さらに、高い通気性を備えた区域は、低い経糸数を備えたセクション(6)と低い緯糸数を備えたセクション(8)とが互いに交差している箇所において、形成される。これらの箇所は、エアーバッグのフィルタ部分におけるフィルタ範囲を形成している。そしてこのフィルタ範囲を形成する箇所は、良好なフィルタ効果及び冷却効果を可能にすると共に、発生機によって生ぜしめられたガスのコントロールされた流出を可能にする。さらにまた、中位の通気性を備えた区域は、低い経糸数を備えたセクション(6)と高い緯糸数を備えたセクション(9)との交差箇所(12)及び、高い経糸数を備えたセクション(7)と低い緯糸数を備えたセクション(8)との交差箇所(12)において生ぜしめられる。
【0037】この作業形式によって、いかなる任意の織機においても、付加的な装置を用いることなしに、織布を製造することができる。
【0038】低い糸数を備えた区域を形成することによってどのようにして、通気性に影響を与えることができるのかは、以下に挙げる表に示されている。表に示された試験は、ポリアミド6.6−ティータ470f72のフィラメント糸を用いて実施された:

図8には、縫目強度を検査するための検査体が略示されている。この縫目強度の検査については、後で検査方法を記載する時に詳しく述べる。
【0039】図9には、縫目ずれ強度を検査するの検査体が略示されている。このための記載は、この検査方法の記載において行う。
【0040】図10には、エアーバッグのフィルタ部分のための断裁を備えた織布が、ドビー織機を一緒に用いて織機においてどのようにして製造され得るかが示されている。これに対する記載は、実施例1において行う。
【0041】図11には、エアーバッグのフィルタ部分のための断裁を備えた織布が、ジャカード織機においてどのようにして製造され得るかが示されている。これに対する記載は、実施例2において行う。
【0042】図12には、エアーバッグのフィルタ部分のための断裁を備えた織布が、経糸数と緯糸数との変化によってどのようにして製造され得るかが示されている。これに対する記載は、実施例3において行う。
【0043】上述の本発明による方法による織布の製造は、エアーバッグのフィルタ部分のための織布に限定されるものではない。この方法は、種々異なった通気性又は種々異なった縫目強度が必要とされるいかなる任意の織布のためにも、使用することができる。特別な形式では本発明による方法は、例えばガスのために区域毎に異なったフィルタ効果が必要とされる場合には、技術的な織布を製造するためにも適している。極めて特殊な形式において、この方法は、エアーバッグのフィルタ部分のための織布を製造するために適している。
【0044】本発明による方法を実施するためには、いかなる任意の糸をも使用することができる。エアーバッグ織布のためには、例えばポリアミド6.6−フィラメント糸が適していることが分かっている。この場合、ティータ235f36、350f72、470f72又は940f140の糸を使用することができる。しかしながらまた別のティータを使用することも可能である。
【0045】収縮加工及び所望の通気性の設定は、ドイツ連邦共和国特許出願P4000740.5号明細書に記載されている湿式処理法によって行われる。
【0046】本発明によって製造された織布は、エアーバッグのフィルタ部分として使用される場合には、エアーバッグのコンタクト部分を形成する<10l/dm2・minの通気性を備えた織布と縫い合わされた後で、エアーバッグを生ぜしめ、これによって生ぜしめられたエアーバッグは、衝突時に、付加的な怪我を負わせることなくドライバもしくは同乗者を確実に受け止めることができる。
【0047】フィルタ部分に本発明による織布を有しているエアーバッグによって、自動車製造者の要求に適合する安全確実なエアーバッグシステムを、自動車において構成することができる。ここでエアーバッグシステムというのは、自動車に取り付けられたエアーバッグ自体とエアーバッグ機能をトリガする制御システムとを意味する。
【0048】通気性の検査:通気性の検査は、DIN53887に基づいて行われる。この規格と異なっているのは、検査差圧が500Paに高められている点だけであり、これによって、通気性が低い場合においても明確な検査信号を得ることができる。記載においては一々言及しないが、ここに挙げられた通気性はすべて、この検査差圧で検出されたものである。
【0049】縫目強度の検査:この検査のためには、検査織布からT字形の2つの検査体が切り取られた。図8には、これらの検査体の配置が概略的に示されている。15cmの全幅は、それぞれ5cmの側部分(13)と5cmの中央部分(14)とに分割されている。区域15及び区域15aは、検査時における緊締箇所を形成し、ライン16と16aとの間における緊締長さは、20cmである。広幅の中央部分において両検査体はオーバラップしている。1cmの間隔をおいて、2つの縫目(17,17a)が設けられている。このために、1.1mmの直径を備えた針が使用された。穿刺数はcm当り3〜4である。このために使用された縫い糸は、ポリエステル・フィラメント糸3×250dtexである。このようにして準備された検査体の検査は、ラボ裂断装置において、200mm/minの変形速度で行われた。
【0050】縫目のずれ強度の検査:この検査のためには、検査織布から、図9に示されているようなダブルT字形の検査体が切り取られた。この検査体は、ライン18に沿って折られている。ライン19もしくは19aに沿って、縫目は、2重に位置する検査材料になっている。ライン18とライン19もしくは19aとの間隔は、それぞれ1cmであり、ライン19もしくは19aと検査体の縁部との間隔も、同様に1cmである。縫目の条件は、縫目強度の検査において記載されたものと同じである。次いで、検査材料はライン18に沿って切断される。箇所20,20aにおいて、検査体はラボ裂断装置に緊締される。縫い合わされた両部分検査体は、100mm/minの変形速度にさらされ、この場合、5daN及び10daNの負荷後に、縫目箇所における離反滑動の読取りが行われる。
【0051】
【実施例】以下の実施例においては、本発明による方法を実施するための複数の可能性が記載されている。ここに記載の窓配置形式及び断裁の形状は、限定されたものとして理解すべきではなく、種々様々な形式において異なっていて、その都度の要求に最適に適合され得る例が存在する。
【0052】例1:ポリアミド6.6−ティータ470f72のフィラメント糸は、グリッパ式織機において平織りの織布に加工される。織布の全幅は180cmであり、経糸及び緯糸の糸数はそれぞれ19本/cmである。
【0053】15cmの織り長さの後で、部分的に製織組織はパナマ織り2/2に変えられる。この変化は織布幅全体にわたって行われるのではなく、左側の織り縁部から15cmのところから始まるセグメントに対して行われる。図10に示されているように、全部で3つの窓(21)が、織布の幅にわたってパナマ織り2/2で織布に織り込まれる。窓の寸法は、幅40cm・長さ30cmである。平織りにおける製織組織の変化は、ドビー織機を用いて行われる。45cmの織り長さの後で次いで再び、織り幅全体にわたって、平織りでさらに加工される。90cmの織り長さの後で、再び同様な形式で窓の織込みへと切り換えられ、この動作はこれらの構成によれば、織布の全長にわたって続けられ、この場合、緊張を相殺させるためには窓をずらして配置すると有利である。
【0054】エアーバッグのフィルタ織布のための裁断は、ライン22に沿って行われる。このように裁断すると、後で縫い合わせる場合に必然的に縫目が位置する箇所に、密な織布の位置することが保証され、そしてこの密な織布においては、エアーバッグ機能のトリガ時に縫目が切れるおそれはない。
【0055】平織りで織られた部分の通気性は、17 l/dm2・minであり、パナマ織り2/2で窓状に織り込まれた箇所(21)における通気性は、50 l/dm2・minである。
【0056】例2:実験1が繰り返された。この場合、実験1において用いられたドビー織機を備えたグリッパ式織機の代わりに、ジャカード織機が使用された。
【0057】図11には、ジャカード織機を用いた製織組織の変化による、比較的高い通気性を備えた窓(23)の織込み形式が示されている。ドビー織機を用いた製織に比べて、この場合には高い通気性を備えた区域を、エアーバッグのフィルタ部分のための(24で示されたラインに沿った)断裁の形状により良好に適合させることができる。
【0058】例3:ポリアミド6.6−ティータ470f72のフィラメント糸は、グリッパ式織機において平織りの織布に加工される。織布の全幅は170cmである。
【0059】このために経糸は、cm毎に交番する糸数で給糸される。図12には所定の織りパターンが示されている。
【0060】左側縁部において開始されて、まず初め、19本/cmの糸数で10cmの幅に糸セグメントが配置される(25)。その隣りに、16本/cmの糸数を備えた30cmの幅のセグメントが続く(26)。その後で再び、19本/cmの糸数を備えたセグメントが30cmの幅に配置される(27)。それぞれ30cmの間隔をおいて、次いで16本/cm(28)、19本/cm(29)及び16本/cm(30)の糸数を備えたセグメントがそれぞれ幅30cmにわたって続き、縁部においては10cmの幅にわたって19本/cmの糸数を備えたセグメントが配置されている(31)。
【0061】緯入れは電子的に制御される。この場合制御は次のように行われる。すなわちまず初め、19本/cmの糸数を備えた長さ20cmのセグメントが挿入される(32)。次いで、緯入れは20cmの長さにわたって16本/cmに変えられる(33)。その後で60cmの長さにわたって、再び19本/cmの緯入れに切り換えられる(34)。次いで、それぞれ30cmの間隔をおいて16本/cmの糸数(35)と19本/cmの糸数(36)とが打ち込まれる。このようにして、いまや高い糸本数と低い糸本数との交換が繰り返される。
【0062】これによって、既に述べたように(図7に対する記載参照)、通気性の低い区域と通気性の中位の区域と通気性の高い区域とが形成される。37で示されたラインに沿って切断される、エアーバッグのフィルタ部分のための断裁は、後で縫目箇所をも形成する切断縁部が有利には通気性の低い区域に位置するように、配置されている。
【0063】19本/cmの糸数を備えた経糸と19本/cmの糸数を備えた緯糸とが互いに交差している範囲における通気性は、17 l/dm2・minである。そして、16本/cmの糸数を備えた経糸と16本/cmの糸数を備えた緯糸とが互いに交差している箇所における通気性は、90 l/dm2・minである。中位の糸密度の範囲(16本/cmの経糸と19本/cmの緯糸とが互いに交差している範囲もしくは19本/cmの経糸と16本/cmの緯糸とが互いに交差している範囲)における通気性は、60 l/dm2・minである。
【0064】この作業形式では次のこと、すなわち、通気性の低い区域を方形でない断裁に適合させて、断裁範囲がそれぞれ完全に通気性の低い範囲に位置するようにすることは、不可能である。つまり後における縫目縁部は、部分的に通気性の高い範囲と通気性の中位の範囲とにおいて運動する。従ってこの方法は、ドビー織機を使用した作業形式(例1)又はジャカード織機を使用した作業形式(例2)のように、縫目箇所の強度に関する高い確実性を提供することはできない。しかしながらこの方法には次のような利点がある。すなわちこの例3の方法は、任意のいかなる織機においても実施することが可能であり、ひいては織機に関する制限をなんら有していない。
【図面の簡単な説明】
【図1】平織りによる織布の製織組織パターンを示す図である。
【図2】図1に対応する織布の断面図である。
【図3】平織りによる織布の別の製織組織パターンを示す図である。
【図4】図3に対応する織布の断面図である。
【図5】タペット式織機又はドビー織機を用いて織り込まれた通気性の高い区域を備えた織物区分を示す図である。
【図6】ジャカード織機を用いて織り込まれた通気性の高い区域を備えた織物区分を示す図である。
【図7】経糸数と緯糸数との変化によって製造された織布を示す図である。
【図8】縫目強度を検査するための検査体を示す図である。
【図9】縫目ずれ強度を検査するための検査体を示す図である。
【図10】エアーバッグのフィルタ部分のための断裁を備えた織布が、ドビー織機を用いた織機によってどのような製造され得るかを示す図である。
【図11】エアーバッグのフィルタ部分のための断裁を備えた織布が、ジャカード織機によってどのような製造され得るかを示す図である。
【図12】エアーバッグのフィルタ部分のための断裁を備えた織布が、経糸数と緯糸数との変化によってどのような製造され得るかを示す図である。
【符号の説明】
1 平織り、 2 パナマ織り、 3 綾織り3/1、 4 通気性の高い区域、 5 通気性の高い区域、 6 低い経糸数を備えたセクション、 7 高い経糸数を備えたセクション、 8 低い緯糸数を備えたセクション、 9 高い緯糸数を備えたセクション、 10 低い通気性を備えたセクション、 12交差箇所、 13 側部分、 14 中央部分、 15,15a 区域、 16,16a ライン、 17,17a 縫目、 18 ライン、 19,19aライン、 20,20a 箇所、 21 窓、 22 ライン、 23 窓、24 ライン、 25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36 セグメント、 37 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 次いで又は後で裁断される、複数部分から成るエアーバッグのフィルタ部分用の織布を製造する方法であって、経糸数と緯糸数及び/又は製織組織を変化させることによって、種々様々な通気性及び種々様々な切断強度もしくは縫目強度を備えた区域を設定し、経糸数と緯糸数及び/又は製織組織の変化を次のように、すなわち、後における切断箇所もしくは縫目箇所(22,24,37)において特に低い通気性及び高い切断強度もしくは縫目強度が得られるのに対して、裁断された部分の内側範囲における区域(21,23)は高い通気性を有するように行うことを特徴とする、エアーバッグのフィルタ部分用の織布を製造する方法。
【請求項2】 地織り組織が密な織布(1)において、製織組織を変化させることによって、高い通気性と低い切断強度及び縫目強度を備えた区域(2,3,4,5)を生ぜしめ、後における切断箇所及び縫目箇所に密な地織り組織(1)を残す、請求項1記載の方法。
【請求項3】 高い通気性を備えた区域を設定するために、地織り組織とは異なった、製織技術において公知の任意の製織組織を使用する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 地織り組織とは異なった製織組織によって高い通気性を備えた区域を設定するために、ドビー織機を使用する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】 地織り組織とは異なった製織組織によって高い通気性を備えた区域を設定するために、タペット織機を使用する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】 地織り組織とは異なった製織組織によって高い通気性を備えた区域を設定するために、ジャカード織機を使用する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】 織布を平織りで製造し、低い通気性と高い切断強度もしくは縫目強度とを備えた区域を設定するために、経糸及び緯糸の順序を次のように選択し、すなわちこの場合、低い通気性と高い切断強度もしくは縫目強度とを備えた箇所(10)においては多数の経糸と緯糸とを互いに交差させ、高い通気性を備えた箇所(11)においては少数の経糸と緯糸とを互いに交差させ、かつ中位の通気性と中位の切断強度及び縫目強度を備えた区域(12)を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項8】 低い通気性を備えた各1つの区域を、裁断のために規定された織布範囲の内側に配置させ、該区域の輪郭を、均等な又は交番する間隔をおいて各断裁の輪郭に追従させ、断裁の縁部を、低い通気性を備えた区域(22,24,37)によって形成する、請求項1記載の方法。
【請求項9】 複数部分から成るエアーバッグのフィルタ部分用の織布であって、経糸数と緯糸数及び/又は製織組織を変化させることによって設定された、種々様々な通気性を備えた区域が設けられており、織布において該区域が次のように、すなわち低い通気性を備えた区域が後でエアーバッグを製造するために織布を裁断する際に縫目箇所を形成するように、配置されていることを特徴とする複数部分から成るエアーバッグのフィルタ部分用の織布
【請求項10】 エアーバッグのフィルタ部分を製造するために使用される、請求項9記載の織布であって、フィルタ部分の裁断時に裁断箇所(22,24,37)が低い通気性を有する織布範囲(1,10)に位置しており、高い通気性を有する織布範囲(4,5,11,21,23)がフィルタ部分の内側範囲を形成しており、断裁の縁部が有利には、低い通気性を有する区域によって形成されることを特徴とする、エアーバッグのフィルタ部分を製造するために使用される織布。
【請求項11】 請求項9記載の織布から製造される、エアーバッグのフィルタ部分であって、エアーバッグが、通気性の異なる区域を備えた織布から成っており、フィルタ部分の縫目箇所が低い通気性を有する織布範囲に位置しており、フィルタ部分の内側範囲が有利には、高い通気性を有する単数又は複数の区域によって形成されていることを特徴とする、織布から製造される、エアーバッグのフィルタ部分。
【請求項12】 請求項11に記載のフィルタ部分を備えたエアーバッグ。
【請求項13】 請求項12に記載のエアーバッグを備えたエアーバッグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【特許番号】特許第3222158号(P3222158)
【登録日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【発行日】平成13年10月22日(2001.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−224107
【出願日】平成3年9月4日(1991.9.4)
【公開番号】特開平4−281038
【公開日】平成4年10月6日(1992.10.6)
【審査請求日】平成10年7月15日(1998.7.15)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【参考文献】
【文献】特開 昭63−170147(JP,A)
【文献】特開 平4−214437(JP,A)
【文献】国際公開90/9295(WO,A1)