説明

エアーフィルタ

【課題】部品点数を減らし、枠体構成をより簡素化して安価に制作することができ、かつ、濾材を簡単に交換して作業の手間を省くことができるエアーフィルタを提供すること。
【解決手段】プリーツ状に形成された濾材1と、第1、第2の一対の押さえ金13、23を有し第1、第2の押さえ金13、23によって濾材1を着脱自在に挟持する枠体10とを備え、枠体10の第2の押さえ金23が第1の押さえ金13に対して自在に回動し、これら第1、第2の押さえ金13、23により濾材1の山谷部の山側頂部2及び谷側頂部3をその凹部側から挟持する。そして、枠体10が枠本体11と可動枠21とによって形成され、第1の押さえ金13が枠本体11に取付けられ、第2の押さえ金23が可動枠21に取付けられて、可動枠21が枠本体11に対して自在に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーフィルタに係り、より詳しくは、例えば、鉄道車両における空気調和装置の室内及び室外の空気導入部に、空気流の方向に対向して配置されるエアーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のエアーフィルタには、下フィルタ枠と、下フィルタ枠に回動自在に支持された上フィルタ枠とからなり、上フィルタ枠は上係合部を有し、下フィルタ枠は上係合部と係合する下係合部を有する。そして、濾材は、下フィルタ枠と上フィルタ枠との間に取り外し自在に狭持され、上フィルタ枠を回動して開いて濾材の交換を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、箱枠に支持材が配設された本体と、押さえ材が配設されて本体に着脱可能な枠状のフィルタ張設枠と、本体の流体通過部に取り付けられた濾材(フィルタシート)とを備え、フィルタ張設枠を本体に装着すると、濾材は支持材と押さえ材により交互に支えられて波状に保持されるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−287811号公報(第2頁−第3頁、図2)
【特許文献2】特開平11−128643号公報(第2頁−第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエアーフィルタは、濾材の交換が簡単であるが、上フィルタ枠と下フィルタ枠とをヒンジを介して一体成型しており、また、それぞれのフィルタ枠は、ヒンジ側枠辺から対辺のセルフラッチ側枠辺に至るまで内側に波形状の保持板を複数本同時成型しているため、部品点数が多くなり、構造も複雑となって、製造コストを抑えることが困難であった。
【0006】
また、特許文献2のエアーフィルタは、濾材の交換が簡単で、枠体の構造も簡素化されコストも低く抑えることができるが、濾材の取り付け及び取り外しの際、フィルタ張設枠の縁部を箱枠の溝部に差し込み、その後、箱枠の内溝部に落とし込まなければならず、作業に手間がかかる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、部品点数を減らし、枠体構成をより簡素化して安価に制作することができ、かつ、濾材を簡単に交換して作業の手間を省くことができるエアーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアーフィルタは、プリーツ状に形成された濾材と、第1、第2の一対の押さえ金を有しこの第1、第2の押さえ金によって濾材を着脱自在に挟持する枠体とを備え、枠体の第2の押さえ金が第1の押さえ金に対して自在に回動し、これら第1、第2の押さえ金により濾材の山谷部の山側頂部及び谷側頂部をその凹部側から挟持するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエアーフィルタは、第1、第2の一対の押さえ金によって濾材を着脱自在に挟持する構成となっているので、部品点数を減らし、枠体構成をより簡素化して安価に制作することができ、また、枠体の第2の押さえ金が第1の押さえ金に対して自在に回動するようになっているので、濾材を簡単に交換して作業の手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエアーフィルタの一部を省略した分解状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のエアーフィルタを構成する濾材の説明図である。
【図3】図1のエアーフィルタの回動軸側における縦断面図である。
【図4】図3の右側面斜視図である。
【図5】図1のエアーフィルタの回動軸と反対側における縦断面図及びその作用説明図である。
【図6】濾材と本体側押え金具及び可動側押え金具との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るエアーフィルタは、例えば鉄道車両における空気調和装置の空気導入部に取り付けられるもので、図1に示すように、濾材1と、濾材1を着脱可能とする枠体10とから構成されている。
【0012】
濾材1はサラン繊維や化学繊維などからなり、着脱が容易となるようにあらかじめプリーツ状に形成されている。この濾材1は、図2に示すように、交互に等しい角度で断面がほぼ三角形状に折り曲げられ、山谷部を形成して上下に頂角を有し、上頂部(山側頂部)2及び下頂部(谷側頂部)3はそれぞれが幅方向イにピッチaで配設されている。なお、上頂部2と下頂部3の凹部間の高さはhである。
【0013】
枠体10はステンレスやアルミニウムのような金属材料によって形成された、枠本体11と可動枠21とからなっている。
【0014】
枠本体11は、上部が開口した角型の箱体12と、箱体12の開口部上にこの開口部を跨いで取り付けられた本体側押さえ金(第1の押さえ金)13とによって形成されている。本体側押さえ金13は前後方向ロに配向する複数の線材13aからなり、これら線材13aは例えば金属製の丸棒によって構成され、幅方向イに濾材1のピッチaに対応した間隔(ピッチa)でほぼ平行に配設されて、その両端部が箱体12の前後壁に取り付けられている。
【0015】
詳しくは、図3〜図5に示すように、箱体12の前後壁12a、12bの上下方向の中間部近傍を部分的に内側にく字状に折り曲げて(切り起こして)係合凹部14を形成し、この係合凹部14の谷部に沿って幅方向イに引掛け棒16を取付け、本体押え金13の線材13aの両端部を引掛け棒16に溶接等により固定したものである。
なお、線材13aの箱体12への取付けは上記構造に限定するものではなく、他の手段を用いてもよい。
【0016】
また、可動枠21は、ほぼ矩形状に形成した枠部22と、枠部22に取り付けられた可動側押さえ金(第2の押さえ金)23とからなり、枠部22が枠本体11の後壁の上部に回動可能に軸支されている。可動側押さえ金23は前後方向ロに配向する複数の線材23aからなり、これら線材23aは例えば金属製の丸棒によって構成され、幅方向イに本体側押え金13の間にそれぞれ位置するように、濾材1のピッチaに対応する間隔でほぼ平行して配設されて、その両端部を枠部22の前後に固定してある。
【0017】
詳しくは、図3に示すように、可動枠21は、その枠部22の後端部が、箱体12の後壁12bの上側に内側に突出して設けられた可動枠取付け部17に、クリップ18を介して回動可能に取り付けられている。
また、可動枠21の回動側と反対側、すなわち前側端部には、図5に示すように、前面に係止穴24aを有する逆L字状の可動係合部24が取り付けられている。一方、箱体12の前壁12aの上方には、押しだし成型加工により内側に突設された係合部19が設けられており、この係合部19に可動係合部24の係止穴24aを係合させて、可動枠21を固定するようにしてある。
【0018】
なお、可動枠21は、図3に示すように、回動側近傍において可動枠21を開く側(ハ方向)にほぼ直角に折り曲げられるとともに、図5に示すように、回動側と反対側の端部近傍において可動枠21を開く側(ハ方向)にほぼく字状に折り曲げられて、その間に押さえ部230が形成されており、可動枠21が図5(b)のように閉じられた状態で、可動側押さえ金23の押さえ部230が本体側押さえ金13よりも下方に位置して、枠本体11の底面とほぼ平行になるようにしてある。なお、可動部21を閉じたときの本体押え金13の線材13aと、可動押え金23の線材23a間の高さh1は、図6に示すように、濾材1の上頂部2と下頂部3の凹部間の高さh(図2)とほぼ等しくなるように形成されている。
【0019】
上記のように構成した、本体側押さえ金13と可動側押さえ金23との関係について説明する。枠本体11の本体側押さえ金13と可動枠21の可動側押さえ金23とは、それぞれの線材13a、23aが幅方向イに一定の間隔で配設されている。すなわち、本体側押さえ金13の線材13aは濾材1の上頂部2のピッチaと同じ間隔aでほぼ平行に配設され、同様に、可動側押さえ金23の線材23aは濾材1の下頂部3のピッチaと同じ間隔aでほぼ平行に配設されている。
そして、濾材1の隣接する上頂部2のピッチはaで、隣接する下頂部3のピッチはaであり、隣接する上頂部2と下頂部3の間隔はa/2となるので、濾材1を挟持する本体側押さえ金13と可動側押さえ金23との幅方向イの位置をa/2だけずらすようにしてある。
【0020】
次に、本発明に係るエアーフィルタの組立手順の一例について説明する。
エアーフィルタの枠体10に濾材1を取り付ける場合は、図1に示すように、可動枠21の可動側押さえ金23を回動軸側に引いて持ち上げて可動枠21をハ方向に回動させて開き、枠本体11に濾材1を挿入し、濾材1の上頂部2を枠本体11の本体側押さえ金13の線材13aによって下側(凹部側)から支持させる(図6参照)。
【0021】
ついで、可動枠21を閉じると、可動枠21はクリップ18の回動部を軸として枠本体11側(ニ方向)に回動し、可動側押さえ金23の線材23aは本体側押さえ金13の線材13aの間を通り抜けて、その押え部230が箱体12の底面とほぼ平行になるまで移動し、可動枠21の可動係合部24の係止穴24aが枠本体11の係合部19に係止する(図5参照)。そして、可動側押さえ金23の線材23aが濾材1の下頂部3を上側(凹部側)から押さえて支持する(図6参照)。こうして、濾材1は、その上頂部2を枠本体11の本体側押さえ金13の線材13aによって下側から保持され、下頂部3を可動枠21の可動側押さえ金23の線材によって上側から保持されて両者により挟持され、枠体10に固定される。
【0022】
交換等のために枠体10から濾材1を取り除く場合は、可動枠21の可動側押さえ金23を回動軸側に引いて持ち上げると、可動枠21はクリップ18の回動部を軸としてハ方向に回動し、可動枠21の可動係合部24の係止穴24aと枠本体11の係合部19との係止係合が解除され、可動側押さえ金23の線材23aは枠本体11の本体側押さえ金13の線材13aの間を通り抜け、可動枠21が開く(図4参照)。そして、濾材1を枠本体11から取り出す。
【0023】
実施の形態1によれば、枠体10は、枠本体11と可動枠21にそれぞれ本体側押さえ金13と可動側押さえ金23を取り付けた簡素化された構成となっており、このため、部品点数を減らし、枠体10の構成をより簡素化して製造コストを削減することができる。そして、上記の構成によって、エアーフィルタは、濾材1の交換時には、可動枠21の可動側押さえ金23を回動軸側に引いて持ち上げるだけで濾材1を容易に取り外すことができる。また、濾材1は装着時にあらかじめプリーツ状に成型されているので、濾材1の交換が簡単で作業の手間を省き、交換時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 濾材、2 山谷部の山側頂部、3 山谷部の谷側頂部、10 枠体、11 枠本体、12 箱体、13 本体側押さえ金(第1の押さえ金)、13a 本体側線材、14 係合凹部、16 引掛け棒、21 可動枠、22 枠部、23 可動側押さえ金(第2の押さえ金)、23a 可動側線材、230 可動側押さえ金の押さえ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ状に形成された濾材と、第1、第2の一対の押さえ金を有し該第1、第2の押さえ金によって前記濾材を着脱自在に挟持する枠体とを備え、
前記枠体の第2の押さえ金が第1の押さえ金に対して自在に回動し、これら第1、第2の押さえ金により前記濾材の山谷部の山側頂部及び谷側頂部をその凹部側から挟持することを特徴とするエアーフィルタ。
【請求項2】
前記枠体が枠本体と可動枠とによって形成され、前記第1の押さえ金が前記枠本体に取付けられ、前記第2の押さえ金が前記可動枠に取付けられて、前記可動枠が前記枠本体に対して自在に回動することを特徴とする請求項1記載のエアーフィルタ。
【請求項3】
前記枠本体は、上部が開口した箱体と、該箱体の開口部上に該開口部を跨いで取付けた前記第1の押さえ金とによって形成されたことを特徴とする請求項2記載のエアーフィルタ。
【請求項4】
前記第1の押さえ金はその両端部が前記箱体の前後壁に設けた引っ掛け棒に固定されていることを特徴とする請求項3記載のエアーフィルタ。
【請求項5】
前記可動枠は、枠部と、前記枠部に取り付けられた前記第2の押さえ金とからなり、前記枠部が前記枠本体に回動可能に軸支されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のエアーフィルタ。
【請求項6】
前記可動枠は回動側と反対側の端部近傍で前記枠本体に着脱自在に係合することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のエアーフィルタ。
【請求項7】
前記枠本体に取り付けられた第1の押さえ金、及び前記可動枠に取り付けられた第2の押さえ金は、前記濾材の山谷部のピッチと等しい間隔でそれぞれ平行に配設された複数の線材からなることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のエアーフィルタ。
【請求項8】
前記可動枠は、回動側近傍において前記可動枠を開く側にほぼ直角に折り曲げられるとともに、回動側と反対側の端部近傍において前記可動枠を開く側にほぼく字状に折り曲げられて両者の間に押さえ部が形成され、前記可動枠が閉じられたときに、前記押さえ部が前記第1の押さえ金より下側に位置して、該押さえ部が前記枠本体の底面とほぼ平行になるようにしたことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載のエアーフィルタ。
【請求項9】
前記第2の押さえ金の線材と前記第1の押さえ金の線材の幅方向の間隔を等しくするとともに、前記第2の押さえ金の線材と前記第1の押さえ金の線材とを幅方向に前記間隔の2分の1だけずらし、前記第2の押さえ金を閉じたときに、該第2の押さえ金の線材が前記第1の押さえ金の線材の間に入り込んで前記第2の押さえ金の押さえ部が前記第1の押さえ金の下方に位置し、前記第1の押さえ金の線材が前記濾材の山側頂部をその凹部側より押さえ、前記第2の押さえ金の線材が前記濾材の谷側頂部をその凹部側から押さえて前記濾材を挟持することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエアーフィルタ。
【請求項10】
前記濾材がサラン繊維または化学繊維からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエアーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−501(P2011−501A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143399(P2009−143399)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】