説明

エイマップス(AMAPS)

【課題】簡単で迅速かつ再現性のある標本作製法を提供する。
【解決手段】稀釈液をエイマップス用稀釈液に変更する。エイマップス用稀釈液はイソプロアルコールにより抗菌効果が得られ、さらに細胞凝集が少なくなる。ポリエチレングリコールで細胞質の保存性が良くなり、細胞の膨張も少なくなる。クエン酸により、核の保存と細胞質の染色性が良くなる。短所3)については、エイマップス用セルにより不具合がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞診における穿刺および液状検体処理から染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状検体や穿刺細胞診検体をオートスメア処理すると、比重の重い赤血球が最下層に集まり、比重の軽い有核細胞は赤血球の上になる。遠心後、稀釈液と接することで再浮遊し、さらに湿潤固定により赤血球が破壊されると同時に有核細胞も剥離する。本発明の稀釈液により、赤血球のヘモグロビンを溶出させ、赤血球の比重を軽くし、有核細胞を最下層に集め、湿潤固定による細胞剥離を少なくした。
【特許文献1】オートスメア
【非特許文献1】液状検体におけるオートスメア処理の新しい手法 エフマップス(FMAPS)Fluid Material Preparation System について
【非特許文献2】液状検体処理とパパニコロウ染色における品質管理
【非特許文献3】穿刺細胞診における迅速標本作製法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
液状検体処理や穿刺細胞診の標本作製法は技術者の経験が必要であり、迅速かつ再現性のある標本作製が困難であった。本発明は誰が行っても同じ標本ができる方法で、迅速かつ再現性のある標本作製法である。
【課題を解決するための手段】
準備するもの
1)エイマップス用チューブ(針穿刺注射器洗浄容器)
マイクロチューブにエイマップス用稀釈液を600μl入れる。
2)オートスメア、エクセル分注器
3)エイマップス用セル
4)コーテイングスライドまたは一般スライド
5)噴霧式約83%イソプロピールアルコール
検体採取
1)乳腺・リンパ節・甲状腺などの穿刺物は注射器内にエイマップス用チューブの稀釈液を5から6回出し入れしてチューブに取り出す。
2)穿刺物が液状で多量の場合はエイマップス用稀釈液を注射器に吸引・攪拌し、スピッツに取り出す。
3)乳汁はエイマップス用チューブに採取し、蓋をして5〜6回振る。
4)歯肉・舌・咽頭などの一部を綿棒でサツカした検体は綿棒をエイマップス用チューブに入れ、エイマップス用稀釈液でよく洗い、綿棒を取り出してから蓋をする。
検体処理
スピッツの検体は2000回転3分遠心、エイマップス用稀釈液を200μl入れた2個のエイマップス用セルに沈渣を各々10μl入れ、オートスメア500回転1分遠心。
マイクロチューブの検体はエイマップス用セル2個に、エクセル分注器で各々100または200μl入れてオートスメア500回転1分遠心。
セルを5回以上強く振って液を切り、一方はセルをはずし、ドライヤーで乾燥、迅速ギムザ染色をする。もう一方はセルを着けたまま、上向きにしてセルの内側面に向けて固定液を噴霧、約1ccで液がセル内に溜まる。10秒以上固定、迅速パパニコロウ染色をする。
エイマップスの所要時間

エイマップスの所要時間は、穿刺検体処理1分、迅速パパニコロウ染色5分10秒、迅速ギムザ染色1分30秒などで検体提出から標本作製まで7分前後である。
【発明の効果】
穿刺および液状検体における迅速細胞診と細胞診断精度の向上。乳腺や甲状腺穿刺標本作製のため外来や病棟に出向しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
迅速かつ再現性のある標本作成法であるから、標準細胞標本の作製が可能になり、細胞診標本の品質管理ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エイマップス用セルの断面図 セルの中に段差がある。
【図2】エイマップスの理論 従来法との比較 遠心前に赤血球のヘモグロビン溶出。遠心中、比重差により有核細胞がスライド側に並ぶ。遠心後、稀釈液と細胞成分は分離する。 従来法は遠心中に比重差で赤血球がスライド側に並び、遠心後、稀釈液中に有核細胞が再浮遊しやすい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エイマップス用稀釈液の組成
塩化ナトリウム(食塩) 2.0〜3.0g
クエン酸 0.05〜1g
クエン酸ナトリウム 0.05〜1g
ポリエチレングルコール 600 7〜20 ml
イソプロピールアルコール 10〜200 ml
ライトグリーン(色素) 少々
水で1 L
【請求項2】
エイマップス用セルの構造
内部に段差があるセル(図1)。
【請求項3】
エイマップス用稀釈液とエイマップス用セルの理論
遠心前にエイマップス用稀釈液で赤血球内のヘモグロビンが溶出する(図2左上)。遠心により最下層に有核細胞が集まり、ヘモグロビンの溶出した赤血球は比重が軽くなり、有核細胞より上層に移動する(図2中左)。遠心後、稀釈液と有核細胞は分離される(図2下左)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−284544(P2006−284544A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130354(P2005−130354)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(592147387)
【Fターム(参考)】