説明

エキシマランプ及び当該エキシマランプの製造方法

【課題】 本発明の目的は、一対の電極が放電容器の密閉空間を挟んで対向して形成されていると共に、各々の電極と各々の電極に電力を供給するための各々のリード線とがロウ材によって固定されたエキシマランプにおいて、ロウ材の劣化を抑制することのできるエキシマランプ及び当該エキシマランプの製造方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、誘電体材料より構成される放電容器の内部に形成された密閉空間に放電用ガスが封入され、金属薄膜よりなる一対の電極が前記密閉空間を挟んで前記放電容器の外表面に形成され、各々の電極に給電するための各々のリード線が各々の電極にロウ材を介して電気的に接続されたエキシマランプにおいて、前記ロウ材の周囲には保護膜が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプおよびエキシマランプの製造方法に関する。特に、半導体基板や液晶基板などの製造工程において半導体基板や液晶基板の洗浄等に利用されるエキシマランプおよび当該エキシマランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体基板や液晶基板などの製造工程においては、半導体基板であるシリコンウェハや液晶基板であるガラス基板の表面に付着した有機化合物等の汚れを除去する方法として、紫外光を用いたドライ洗浄方法が広く利用されている。特に、エキシマランプから放射される真空紫外光を用いたオゾンや活性酸素による洗浄方法においては、より効率良く短時間で洗浄する洗浄装置が種々提案されており、例えば、特許文献1(特開2000−260396号)が知られている。
【0003】
特許文献1に示す紫外線照射処理装置は、エキシマランプが被処理体の搬送方向に複数連設され、エキシマ照射面が被処理体に対して一定距離となるように構成されており、被処理体を所定の方向に搬送しながら各々のエキシマランプを点灯駆動させ、各々のエキシマランプから放射されるエキシマ光を被処理体の表面に照射することによって、被処理体の表面をドライ洗浄している。同文献に示される紫外線照射処理装置によれば、酸素によってエキシマ光が吸収されてエキシマ光が減衰することを抑制するために、被処理体をエキシマ照射面から8mm以内に配置した状態で被処理体の表面にエキシマ光を照射する、とされている。
【0004】
ところで、従来のエキシマランプは、特許文献2(特開2004−342369号)に示されているような給電構造を備えている。図8は、従来のエキシマランプの給電構造の概略を示す。
同図に示すエキシマランプAは、誘電体材料からなる直方体形状の放電容器Bの内部に形成された密閉空間Sにエキシマ分子を生成するガスが封入されていると共に、放電容器Bの密閉空間Sを挟んで対向する位置に設けられた一対の電極C、Dとを備えている。各々の電極C、Dは、ニッケル又はクロムなどの金属薄膜を真空蒸着することによって形成されている。一方の電極Dは、紫外線を取り出すためにリード線を付設する端部を除きメッシュ状に形成されている。電極Dの端部には、剥きだしになった複数本の芯線をほぐした状態にしたリード線Eの芯線部Eaがロウ材Fを用いることによってロウ付けされている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−260396号
【特許文献2】特開2004−342369号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の紫外線照射処理装置においては、以下の理由により、図8に示すエキシマランプAの電極Dとリード線Eの芯線部Eaとを固定しているロウ材Fが酸化することによって、両者の接続部における機械的強度を低下させるおそれがあることが判明した。すなわち、エキシマランプAから放射される紫外線がエキシマランプの周囲に存在する酸素に吸収されてエキシマランプの周囲にオゾンが生成し、生成したオゾンがロウ材Fの表面を酸化させることによってロウ材Fが劣化するものと考えられる。このように、電極とリードとを固定しているロウ材が劣化してしまうと、次の洗浄を行うための被処理体が搬送されてくるまでの間にエキシマランプを消灯して待機しているとき又はエキシマランプを点灯駆動して被処理体の洗浄を行っているとき等にロウ材が破損してリードが電極から離反することにより、被処理体に対して紫外線を照射したいときにエキシマランプを点灯させることが不可能になったり、被処理体に対して紫外線を照射しているときにエキシマランプが不意に立ち消えてしまうという不具合が生じる。
【0007】
以上から、本発明の目的は、一対の電極が放電容器の密閉空間を挟んで対向して形成されていると共に、各々の電極と各々の電極に電力を供給するための各々のリード線とがロウ材によって固定されたエキシマランプにおいて、ロウ材の劣化を抑制することのできるエキシマランプ及び当該エキシマランプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、誘電体材料より構成される放電容器の内部に形成された密閉空間に放電用ガスが封入され、金属薄膜よりなる一対の電極が前記密閉空間を挟んで前記放電容器の外表面に形成され、各々の電極に給電するための各々のリード線が各々の電極にロウ材を介して電気的に接続されたエキシマランプにおいて、前記ロウ材の周囲には保護膜が形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記リード線には板状の給電端子が接続されており、当該給電端子と前記電極とが前記ロウ材によって接続されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記給電端子の周囲に前記保護膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記保護膜がシリカよりなることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記保護膜がポリシラザン溶液を塗布し、シリカに転化させることによって形成されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記電極は、前記リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とが離反していると共に当該リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とが導電性ペーストによって電気的に接続され、当該導電性ペーストの周囲には前記保護膜が形成されていることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、本発明は、誘電体材料より構成される放電容器の内部に形成された密閉空間に放電用ガスが封入され、金属薄膜よりなる一対の電極が前記密閉空間を挟んで前記放電容器の外表面に形成され、各々の電極に給電するための各々のリード線が各々の電極にロウ材を介して電気的に接続されたエキシマランプの製造方法において、以下の工程を備えることを特徴とする。
1.放電容器の外表面に金属薄膜よりなる電極を形成する工程
2.1の工程の後にロウ材を加熱溶融させることにより外部電極とリード線とをロウ材を介して電気的に接続する工程
3.2の工程の後にロウ材の周囲にポリシラザン溶液を塗布すると共に乾燥させてロウ材の周囲に保護膜を形成する工程
【発明の効果】
【0015】
本発明のエキシマランプによれば、一対の電極が放電容器の密閉空間を挟んで対向して形成されていると共に、各々の電極と各々の電極に電力を供給するための各々のリード線とがロウ材によって固定されたものにおいて、ロウ材の周囲には保護膜が形成されているので、エキシマランプの周囲に発生したオゾンによってロウ材が酸化して劣化することを確実に防止することができる。そのため、次の被処理体が搬送されてくるまでの待ち期間や放電ランプの点灯駆動時においてロウ材が破損することがなく、リード線が電極から離反することがない。従って、エキシマランプを点灯させたいときに確実に点灯させることができ、被処理体に対して紫外線を照射して被処理体を洗浄している最中に不意にエキシマランプが立ち消えることを確実に防止することができる。
【0016】
さらに、前記リード線には給電端子が接続され、給電端子と前記電極とが前記ロウ材によって固定されているので、給電端子と外部電極との接続をより強固にすることができる。
【0017】
さらに、前記給電端子の周囲には前記保護膜が形成されているので、オゾンによって給電端子が劣化することを確実に防止することができる。
【0018】
さらに、前記保護膜がシリカよりなるものであるため、ロウ材の劣化をより確実に防止することができる。
【0019】
さらに、前記保護膜がポリシラザン溶液を塗布乾燥させることによって形成されているので、高温の加熱処理を行うことなく保護膜を形成することができる。そのため、ロウ材が溶けない程度の温度となる熱処理によって保護膜を形成することができるため、ロウ材が固定部以外の箇所に流れてしまったり、金属電極がロウ材中に分散してはがれてしまうことがなくなるという利点がある。
【0020】
さらに、前記電極は、前記リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とが離反していると共に当該リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とが導電性ペーストによって電気的に接続され、当該導電性ペーストの周囲には前記保護膜が形成されている。従って、リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とを電気的に接続する導電性ペーストがオゾンによって劣化する虞がない。
【0021】
さらにまた、上記した本発明の製造方法によれば、ポリシラザン溶液を用いることにより、ロウ材が溶けない程度の温度で熱処理を行うことによってロウ材の周囲に容易にシリカからなる保護膜を形成することができるので、ロウ付け部の信頼性を損なうことなくシリカ膜を形成し、ロウ付け部の耐久性をあげることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明のエキシマランプの全体の構成を示す斜視図である。図2は、本発明のエキシマランプにおける電極とリード線との接続部を拡大して示す断面図である。図2では、便宜のため一方の電極と一方のリード線との接続部分の構成のみを示している。
エキシマランプ100は、誘電体材料である合成石英ガラスより構成された、四隅に丸みを有する扁平な角筒形状の放電容器1を有している。放電容器1の内部に形成された密閉空間Sには、例えばキセノンガスなどの希ガスや、希ガスに塩素ガスなどのハロゲンガスを混合したものが放電ガスとして充填されており、ガスの種類によって異なる波長のエキシマ光を発光させることができる。放電ガスは、通常は、10〜100KPa程度の圧力で充填されている。
【0023】
放電容器1は、紙面において上方側に位置する平坦壁11と、紙面において下方側に位置する平坦壁12とが上下方向に互いに離間して平行に伸びていると共に、平坦壁11、平坦壁12の各々の幅方向(管軸に対し直交する方向)の端部にはそれぞれ湾曲部13が連続して形成されている。このような放電容器1は、図1の紙面において上下に位置している平坦壁11、12の何れかが被処理体に向けて紫外線を出射するための光出射面を形成する。例えば、放電容器1の下方に被処理体を配置する場合には、下方側に位置する平坦壁12が光出射面となる。このような放電容器1の数値例を示すと、管軸方向の全長が904mm、発光長(電極が配設されている領域の管軸方向の全長)が790mm、左右の幅方向の長さが43mm、上下の高さ方向の長さが15mmである。
【0024】
平坦壁11、12には、それぞれ電極3、4が配置されている。電極3、4は、例えば金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの耐食性金属を平坦壁11、12上に印刷又は蒸着することによって、例えば厚みが0.1μm〜数十μmとなるように形成されている。例えば、上記したように下方側に位置する平坦壁12が光出射面となる場合には、電極4は上記の金属を格子状に印刷又は蒸着することにより光透過性を有するように形成される。電極3は給電装置14の高圧側のリード線15に接続され、下方に位置する電極4は接地側のリード線16に接続される。
【0025】
リード線15は、図2に示すように、絶縁材料が除去されることにより剥きだしになった芯線部15aと芯線の周囲を絶縁材料に覆われた被覆部15bとによって構成され、芯線部15aが電極3にロウ材17を用いてロウ付けされることにより、電極3に電気的および機械的に固定されている。ロウ材17は、リード線15の芯線部15aの周囲を取囲むように設けられている。ロウ材17の周囲には、ロウ材17が外部に露出することのないように耐オゾン性材料よりなる保護膜18が形成されている。ロウ材17は、例えば、Sn−Pb、Sn−Inなどであるが、オゾン耐性が低いことが一般的である。保護膜18を形成する耐オゾン性材料としては、例えばシリカ、オキツモ(商品名)、スミセラム(商品名)などであるが、後述する理由により特にシリカであることが好ましい。
【0026】
図3は、本発明のエキシマランプの製造方法を説明するための概念図である。
<第1の工程>
図3(イ)に示すように、合成石英ガラスよりなる扁平な筒状の放電容器1の上方側に位置する平坦壁11上に上記した金属を印刷又は蒸着することによって金属薄膜よりなる電極3を形成する。
<第2の工程>
第1の工程の後に、図3(ロ)に示すように、リード線15の芯線部15aを電極3上に配置した状態で両者の近傍にロウ材17の塊を配置して300℃程度の温度でロウ材を加熱して溶融させる。溶融したロウ材を常温まで自然冷却することによって芯線部15aと電極3とを固定する。
<第3の工程>
第2の工程の後に、図3(ハ)に示すように、ロウ材17の周囲にハケを用いて塗布したポリシラザン溶液18´に対し大気中で90℃程度の温度で1時間の熱処理を行う。ポリシラザン溶液18´を常温まで自然冷却して乾燥させることによって、図3(ニ)に示すようにロウ材17の周囲にシリカよりなる保護膜18を形成する。
【0027】
上記の第3の工程においてポリシラザン溶液を乾燥させると、ポリシラザンは大気中の水分や酸素と結合することによりシリカに転化する。ポリシラザン溶液を使用することにより、過度に高温の熱処理を行わなくても保護膜18を形成することができる。しかも、ポリシラザンを液体状態で使用することにより、表面形状が不安定になり易いロウ材17の周囲の隅々にまで塗布することができるため、ロウ材17の外表面が外気と完全に遮断されるように保護膜18を形成することが容易になる。
【0028】
上記の第3の工程において使用するポリシラザン溶液は、例えば次のようにして調合されている。原料であるパーヒドロポリシラザンと溶媒であるキシレンとを混合して、10〜20%程度のパーヒドロポリシラザン溶液を作製する。溶媒としてジブチルエーテル、ソルベッソ、ターベンなどを用いても良い。作製したパーヒドロポリシラザン溶液に対しパラジウム系又はアミン系の触媒を添加する。触媒を添加することによって、より低温の熱処理でシリカよりなる保護膜を形成することができる。
【0029】
なお、上記の第3の工程においてロウ材の周囲に塗布したポリシラザン溶液に対して熱処理を行うのは、ポリシラザンを短時間でシリカ転化させるためである。熱処理に変えて加湿処理を行うことによっても短時間でシリカ転化させることができる。シリカ転化に要する時間を短縮する必要がなければ、熱処理等を行う必要はない。
【0030】
図4は、本発明に係るエキシマランプを備える紫外線照射処理装置の構成の概略を示す概念図である。
紫外線照射処理装置は、窒素などの不活性ガスが充填された筐体40内に配置されたエキシマランプ100から放射される紫外線を、複数のローラー42よって筐体40の下方を水平方向に搬送される被処理体Wに対して照射して、該被処理体Wの表面の洗浄などの処理を行うものである。被処理体Wは、シリコンウェハ基板、液晶ディスプレイ製造用、プラズマディスプレイパネル製造用などのフラットパネルディスプレイ製造用のガラス基板等である。これらの基板の表面は、各製造工程経過により状態が異なっており、レジスト、透明導電膜、電気回路などを施した状態とされている。
【0031】
エキシマランプ100を収容する筐体40は、被処理体Wに対向する下方側が開放されており、筐体40の内部には被処理体Wから数mm程度離れた位置にエキシマランプ100が配置されると共に、該エキシマランプ100の上方側にはガス噴出口41aを有する不活性ガス放出機構41が配置されている。筐体40の内部は、エキシマランプ100から放射される紫外線が酸素に吸収されることによって減衰することのないよう、窒素ガス等の不活性ガスで置換され、特に、エキシマランプ100と被処理体W間では反応に必要な最低限の酸素濃度となるように置換されている。不活性ガスとしては、窒素のほか、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどを使用することもできる。
【0032】
このような紫外線照射処理装置は、搬送されてきた被処理体Wによって筐体40の下方側の開口がほぼ閉じられた状態となると、不活性ガス放出機構41からの不活性ガスが筐体40内に充満して内部の酸素濃度が低下する。一例を挙げると、被処理体Wの幅が1100mm、エキシマランプ100の全長が1300mm、筐体40の全長が1500mm、高さが50mm、幅が150mm、不活性ガス放出機構41から放出される不活性ガスの流量が300L/分である場合において、被処理体Wが筐体40の下方側の開口をほぼ塞いだときに、筐体40内の酸素濃度は約0.5%となる。
【0033】
以上の図4に示す紫外線照射処理装置においては、筐体40の内部は完全に密閉されていないので筐体40の内部に酸素が残存し易い環境にある。然るに、本発明のエキシマランプは、このように酸素が残存していることによりオゾンが発生し易い環境化において点灯駆動させたとしても、電極3とリード線15の芯線部15aとを固定しているロウ材17の周囲に耐オゾン性材料よりなる保護膜18が形成されているので、エキシマランプ100の周囲に発生したオゾンによってロウ材17が酸化して劣化することがない。そのため、次に洗浄するための被処理体が搬送されてくるまでの待ち期間又は被処理体に対して紫外線を照射して被処理体を洗浄している最中にリード線15の芯線部15aが電極3から離反することが確実に防止される。従って、エキシマランプを点灯させたいときに点灯させることができなくなったり、被処理体に対して紫外線を照射している最中に不意にエキシマランプが立ち消えてしまうという不具合が生じることがない。
【0034】
さらに、本発明のエキシマランプの製造方法によれば、上記した第3の工程に示すように保護膜18を形成するためにポリシラザン溶液を用いているので、過度に高温の熱処理を行うことなく保護膜18を形成することができる。そのため、第3の工程における熱処理によってロウ材17が過度に高温状態になることを回避でき、ロウ材17が再度溶融することを確実に回避することができる。第3の工程において、ロウ材が再度溶融するとロウ材が固定部以外の箇所に流れてしまったり、金属電極がロウ材中に分散してはがれてしまうような不具合が生じる虞がある。また、液体のポリシラザンがロウ材17の外表面の隅々にまで塗布されるため、ロウ材17の外表面が完全に外気から遮断されるように保護膜18を形成することが容易になる。
【0035】
図5ないし図7は、本発明のエキシマランプ係る他の実施形態を説明するための要部拡大図である。図5ないし図7においては、図1、2と共通する箇所については図1、2で付した符号と同一の符号を付しており説明は省略する。
図5に示す形態によれば、リード線15は、芯線部15a、被覆部15bの他に、芯線部15aを束ねるニッケル製のスリーブ19と当該スリーブ19に溶接された板状の給電端子20とを備えている。リード線15は、板状の接続端子20がロウ材17によって電極3に固定されることにより、給電端子20を介して電極3に電気的に接続されている。スリーブ19および給電端子20は、エキシマランプの周囲に発生したオゾンによって酸化することに伴って劣化することを防止するため、それぞれ耐オゾン性材料によって構成されている。例えば、スリーブ19はニッケル、給電端子20はニッケルによって構成されている。
【0036】
このような図5に示す実施形態によると、以下に説明するような実用上の効果を期待することができる。リード線15の芯線部15aは、しなやかさを持たせるために複数の細い線に分かれているので、給電端子20の表面に溶接することが難しく、また、複数の細い線がひげ状に飛び出し易いので他の周辺機器等に接触して誤動作する原因になるおそれがある。従って、複数の細い線からなる芯線部15aにスリーブ19を取付けることによってスリーブ19を給電端子20に容易に溶接することができると共に、細い線がひげ状に飛び出すことを回避することができるのでエキシマランプの周辺機器への悪影響を低減することができる。
また、薄板状の給電端子20を設けることにより、芯線部15a或いは芯線部15aを束ねるスリーブ19を電極3に対して直接的にロウ付けする場合に比べると、電極3との接触面積を確保することができると共に熱容量を電極3に近似させることができるのでロウ材17による固定を容易に行うことができる。そのため、給電端子20と電極3との機械的な接続強度が高くなり、リード線15と電極3との電気的接続の信頼性を高いものとすることができる。板状の給電端子20は、その熱容量が電極3の熱容量に近いことが好ましい。
【0037】
なお、スリーブ19、給電端子20は、必ずしも耐オゾン性材料によって構成されなくても良い。図6に示すように、ロウ材17、導電性のスリーブ19および板状の給電端子20の周囲に、これらの外表面が外気に触れることのないようシリカよりなる保護膜18が形成することもできる。図6に示す実施形態によると、スリーブ19、給電端子20が耐オゾン性の低い材料であったとしても、これらがオゾンによって酸化する虞がない。
【0038】
図7に示す実施形態によれば、電極3は、ロウ材17によってリード線15の芯線部15aが固定されているリード線固定部3aと、リード線固定部3a以外の放電形成部3bとに分離されており、リード線固定部3aと放電形成部3bとが別体の導電性ペースト21によって導通が確保されている。導電性ペースト21は、例えばエポキシ樹脂に銀やニッケルフィラーを混合したものが用いられており、通常はオゾン耐性の低い材料によって構成されている。そして、ロウ材17および導電性ペースト21の周囲にはシリカよりなる保護膜18が形成されており、保護膜18によってロウ材17および導電性ペースト21の外表面が外気から遮断されている。
【0039】
このような図7に示す実施形態によれば、次のような実用的な効果を期待することができる。前述した本発明のエキシマランプの製造方法における第2の製造工程では、ロウ材17を短時間で溶融させるために過度に高温でロウ材17を加熱すると、電極3が高温状態になることにより電極3を構成する金属が溶融したロウ材に溶け込む場合があり得る。この場合には、電極3は、図7に示すように、リード線固定部3aとそれ以外の放電形成部3bとに分離してしまって、放電形成部3bへの給電が不可能になるという不具合が生じる虞がある。従って、第2の工程においてリード線固定部3aと放電形成部3bとが分離した場合であっても、導電性ペースト21によってリード線固定部3aと放電形成部3bとが導通しているのでエキシマランプを確実に点灯させることが可能になる。
また、ロウ材17の周囲の他、導電性ペースト21の周囲にも保護膜18が形成されているので、耐オゾン性の低い材料によって構成される導電性ペースト21がエキシマランプの周囲に発生したオゾンによって酸化して劣化する心配がない。
【0040】
以上、本発明のエキシマランプに係る種々の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。放電容器の形状は、扁平な角筒状のものに限定されることなく、例えば円筒状のものに適用することもでき、また、互いに内径の異なる2つの直管を同軸に配置すると共に各々の直管の端部を気密に封止することによって内部に気密空間が形成される二重円筒管構造のものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のエキシマランプの全体の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明のエキシマランプの要部拡大断面図である。
【図3】本発明のエキシマランプの製造方法を説明する概念図である。
【図4】本発明に係るエキシマランプを備える紫外線照射装置の構成の概略を示す概念図である。
【図5】本発明のエキシマランプ係る他の実施形態を説明する要部拡大断面図である。
【図6】本発明のエキシマランプ係る他の実施形態を説明する要部拡大断面図である。
【図7】本発明のエキシマランプ係る他の実施形態を説明する要部拡大断面図である。
【図8】従来のエキシマランプの構成の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
100 エキシマランプ
1 放電容器
3 電極
3a リード線固定部
3b 放電形成部
4 電極
11 平坦壁
12 平坦壁
13 湾曲部
14 給電装置
15 リード線
15a 芯線
15b 被覆部
16 リード線
17 ロウ材
18 保護膜
19 スリーブ
20 給電端子
21 導電性ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料より構成される放電容器の内部に形成された密閉空間に放電用ガスが封入され、金属薄膜よりなる一対の電極が前記密閉空間を挟んで前記放電容器の外表面に形成され、各々の電極に給電するための各々のリード線が各々の電極にロウ材を介して電気的に接続されたエキシマランプにおいて、
前記ロウ材の周囲には保護膜が形成されていることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記リード線には板状の給電端子が接続されており、当該給電端子と前記電極とが前記ロウ材によって接続されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記給電端子の周囲に前記保護膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記保護膜がシリカよりなることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記保護膜がポリシラザン溶液を塗布乾燥させることによって形成されていることを特徴とする請求項4に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記電極は、前記リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とが離反していると共に当該リード線が接続された箇所とそれ以外の箇所とが導電性ペーストによって電気的に接続され、当該導電性ペーストの周囲には前記保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項7】
誘電体材料より構成される放電容器の内部に形成された密閉空間に放電用ガスが封入され、金属薄膜よりなる一対の電極が前記密閉空間を挟んで前記放電容器の外表面に形成され、各々の電極に給電するための各々のリード線が各々の電極にロウ材を介して電気的に接続されたエキシマランプの製造方法において、以下の工程を備えることを特徴とする。
1.放電容器の外表面に金属薄膜よりなる電極を形成する工程
2.1の工程の後にロウ材を加熱溶融させることにより外部電極とリード線とをロウ材を介して電気的に接続する工程
3.2の工程の後にロウ材の周囲にポリシラザン溶液を塗布し、シリカに転化させてロウ材の周囲に保護膜を形成する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−218055(P2009−218055A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59494(P2008−59494)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】