説明

エスカレータの監視装置

【課題】エスカレータ周りの建屋の天井や壁の構造に影響されることなく、監視用のカメラを取り付けることができるエスカレータの監視装置の提供。
【解決手段】傾斜して配置されるエスカレータ1の移動手摺り2と建屋天井間の狭角部に、あるいは交差して隣接するエスカレータ1aの底部6aと移動手摺り2間の狭角部に配置され、前側位置に筒体7aを有し、乗客が挟まれることを防ぐ保護装置9を備えたエスカレータ配設構造に設けられ、保護装置7の筒体7aの上部に、筒体7aの外周に接する断面コ字状の第一の取付治具12と、この第一の取付治具12に背中合わせに螺着され、断面コ字状の第二の取付治具14とから成る取付治具を設け、第二の取付治具14に上下方向の回動可能にエスカレータ1の乗客を監視するカメラ9を螺着した構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの乗客の乗り方を撮影記録するのに好適なエスカレータの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータ配設構造において、建屋の上下階床間を傾斜して配置されるエスカレータの移動手摺りと、建屋天井間に形成される狭角部に、あるいは複数台のエスカレータを側面から見て交差するように併設したときに一方のエスカレータの移動手摺りと、他方のエスカレータの底部間に形成される狭角部に、乗客が挟まれることを防ぐ保護装置が備えられているものがある。各々の保護装置の前側位置の端部には、筒体が設けられており、この筒体によって乗客が保護装置に衝突したときに、その乗客に怪我をさせない構造となっている。
【0003】
このようなエスカレータ配設構造に含まれるエスカレータにおいて、従来、乗客が何らかの原因で転倒し、あるいは挟まれ、転落するような事故が起こり得ることを考慮して、乗客のエスカレータの利用状況を撮影する監視用のカメラを備えるとともに、保護装置の揺れを検出するセンサを設け、このセンサが保護装置の揺れを検出した時点の前後所定時間の映像を記録するようにしたエスカレータの監視装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−114475公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のエスカレータの監視装置は、保護装置の揺れを検出するセンサに接続される信号線をカメラの制御装置まで配線する必要があり、建屋側の配線工事による設置費用がかかる問題があった。また、カメラは建屋側の天井または壁に設置することになり、このために天井や壁が、吹き抜け構造、壁面ガラス仕上げ、あるいは天井特殊仕上げ等の特殊構造の場合には、カメラを設置することができない問題があった。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、エスカレータ周りの建屋の天井や壁の構造に影響されることなく、監視用のカメラを取り付けることができるエスカレータの監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るエスカレータの監視装置は、傾斜して配置されるエスカレータの移動手摺りと建屋天井間の狭角部に、あるいは交差して隣接するエスカレータの底部と移動手摺り間の狭角部に配置され、前側位置に筒体を有し、乗客が挟まれることを防ぐ保護装置を備えたエスカレータ配設構造に設けられ、前記保護装置の前記筒体の上部に、エスカレータの乗客を監視するカメラを支持する取付治具を設けたことを特徴としている。
【0007】
このように構成した請求項1に係る発明は、狭角部に配置される保護装置の筒体の上部に監視用のカメラを支持する取付治具を設けたので、エスカレータ周りの建屋の天井や壁の構造に影響されることなく、監視用のカメラを取り付けることができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係るエスカレータの監視装置は、請求項1に係る発明において、前記取付治具は、前記筒体の外周に接する断面コ字状の第一の取付治具と、この第一の取付治具に螺着され、断面コ字状の第二の取付治具とから成り、前記カメラを前記第二の取付治具に上下方向の回動可能に螺着させたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の請求項3に係るエスカレータの監視装置は、請求項2に係る発明において、前記第一の取付治具に着脱可能であって、前記カメラの視野角方向に開口部を有し、前記カメラを覆う保護カバーを設けたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した請求項3に係る発明は、建物の上方に設けられる照明装置の光を保護カバーが遮光するので、建物の明るさによる影響の少ない優れた映像を取得することができる。
【0011】
また、本発明の請求項4に係るエスカレータの監視装置は、請求項3に係る発明において、前記保護カバーに、前記カメラのレンズ取付面を合わせた際に、前記視野角方向の中心線が前記エスカレータの傾斜角と略平行となる切欠きを設けたことを特徴としている。
【0012】
このように構成した請求項4に係る発明は、保護カバーに設けた切欠きにカメラのレンズ取付面を合わせれば、カメラの視野角の中心がエスカレータの傾斜角に略平行になるので、カメラの視野角の調整をモニタ等を見なくても容易に行なうことができる。
【0013】
また、本発明の請求項5に係るエスカレータの監視装置は、請求項1〜4のいずれか1項に係る発明において、前記カメラで予め撮影した基本画像と、現在撮影中の現画像とを比較する画像比較手段と、この画像比較手段で比較された画像の差異が所定値を超えると信号を出力する手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
このように構成した請求項5に係る発明は、エスカレータの乗客の乗り方を撮影記録するだけでなく、乗客や、乗客の手荷物が保護装置に触れたことを検知して、警報等を発することが可能になり、事故の未然防止に役立つ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護装置の筒体の上部に、エスカレータの乗客を監視するカメラを支持する取付治具を設けたことから、エスカレータ周りの建屋の天井や壁の構造に影響されることなく、監視用のカメラを取り付けることができ、従来受けていたカメラの設置に対する規制を解消させることができるとともに、このエスカレータの監視装置の設置費用を従来に比べて低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のエスカレータの監視装置に関する実施形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係るエスカレータの監視装置の一実施形態の全体構成を示す側面図、図2は第1実施形態の要部構成を示す側面図、図3は図2のII−II断面図である。
【0018】
図1に示すように、エスカレータ配設構造を構成するエスカレータ1は、上階床と下階床に跨って設置されており、乗客がつかまる移動手摺り2、この移動手摺り2を支持する欄干3、この欄干3を外側から保持する外デッキ4、エスカレータ1の制御装置5を備えている。6はエスカレータ1の底部である。
【0019】
本実施形態が対象とするエスカレータ配設構造は、例えば、上述したエスカレータ1と同様のエスカレータ1a,1b,1cを備えており、合計で4台のエスカレータを有する。ここで、エスカレータ1は1階から2階への上昇運転を行い、エスカレータ1aは2階から1階への下降運転を行い、エスカレータ1bは2階から3階への上昇運転を行い、エスカレータ1cは3階から2階への下降運転を行なうものである。
【0020】
また、このエスカレータ配設構造は、互いに併設され、交差するエスカレータ1,1a,1b,1cにあって、エスカレータ1の移動手摺り2とエスカレータ1aの底部6a間に形成される狭角部と、エスカレータ1の移動手摺り2とエスカレータ1bの底部6b間に形成される狭角部とに、乗客が挟まれるのを防ぐために、乗客が触れたときに危険に気付かせるように揺動可能な保護装置7を配置してあり、また、エスカレータ1の底部に堅固に固定される保護装置8を配置してある。揺動可能な保護装置7は、例えば図2に示すように、アクリル材から成り、前側位置に配置される筒体7aと、後側位置に配置される台形状の平板7bとを有し、前側位置を筒体7aとすることで、乗客が衝突した際にその乗客に怪我をさせない構造となっている。
【0021】
保護装置7の筒体7aの上部に、エスカレータ1の乗客を監視するカメラ、すなわちエスカレータ1に対する乗客の乗り方を撮影するカメラ9を支持する取付治具を設けてある。カメラ9の映像データは、図1に示すようにエスカレータ1aの底部6aから外デッキ4を通って配線される配線ケーブル10を介して、外デッキ4に設置された監視部11に記録されるようになっている。
【0022】
上述したカメラ9を支持する取付治具は、例えば図2,3に示すように、第一の取付治具12と、この第一取付治具12に固定される第二の取付治具14とから構成されている。保持装置7の筒体7aの外周に接するように断面がコ字状に形成されている第一の取付治具12が、筒体7aの上部に設けた取付穴に螺合される取付ボルト13によって、筐体7aを挟み込むように固定されている。また、断面がコ字状に形成されている第二の取付治具14は、第一の取付治具12に背中合わせに螺着され、第二の取付治具14に取り付けられるカメラ9は、上下の視野角θ1、左右の視野角θ2を有しており、上下方向に回動可能に螺着されている。
【0023】
また、カメラ9の視野角方向に開口部を有する保護カバー15は、第一の取付治具12に着脱可能に取り付けられるとともに、図2に示すように、カメラ9のレンズ取付面を合わせると、カメラ9の視野角方向の中心線がエスカレータ1の傾斜角と略平行となるような切欠き15aを設けてある。
【0024】
なお、図1に示される各狭角部の保護装置701〜705の各々にも、同様にカメラ901〜905が設置され、監視部111にはカメラ905が接続され、監視部112には2台のカメラ901,902が接続され、また、監視部113にも2台のカメラ903,904が、それぞれ接続されている。
【0025】
図4は本実施形態のシステム構成を示す図である。
【0026】
この図4に示すように、例えばエスカレータ1の保護装置7の筒体7aの上部に設置されたカメラ9で撮影された撮影データは、監視部11へと送られる。この監視部11の入力部101では、カメラ9からの信号を受け取り、デジタルデータに変換して画像メモリ102に送る。画像メモリ102は、デジタルの画像データを例えば一秒毎の一定周期で取り込む。画像処理部103は、画像データを画像処理して次の画像認識の判断処理用の現画像データを作成する。画像認識部104は、画像処理部103より送られてきた現画像データと、予めカメラ9で撮影されている基本画像を比較して、画像の差異の値が所定値を超えると報知手段、すなわち案内部105へ信号を出力する。案内部105は、画像認識部104の判定結果に応じて、予め録音されている注意放送などをアナウンスしたり、警報を発したりする。出力部106は案内部105からの信号をエスカレータ1の制御部5へ送信する。
【0027】
このように構成した本実施形態によれば、保護装置7の筒体7aの上部に、エスカレータ1の乗客を監視するカメラ9を支持する取付治具、すなわち、第一の取付治具12と第二の取付治具14とから成る取付治具を設けるようにしたので、建屋の天井や壁の構造に影響されることなく、簡単にエスカレータ1の監視用のカメラ9を設けることができる。これにより、カメラ9の設置に対する規制を解消させることができるとともに、このエスカレータ1の監視装置の設置費用を低減させることができる。他の保護装置701〜705に関しても同様である。
【0028】
また、建物の上方に設けられる照明装置の光を保護カバー15が遮光するので、建物の明るさによる影響の少ない優れた映像を取得することができる。
【0029】
また、保護カバー15に設けた切欠き15aにカメラ9のレンズ取付面を合わせれば、カメラ9の視野角の中心がエスカレータ1の傾斜角に略平行になるので、カメラ9の視野角の調整をモニタ等を見なくても容易に行なうことができる。
【0030】
また、例えば保護装置701に設けたカメラ901では、エスカレータ1で上昇してくる乗客だけでなく、交差し隣接するエスカレータ1aで下降してくる乗客も監視することができ、一台のカメラ901で広範囲の監視が可能となる。
【0031】
また、上述したシステム構成を有する本実施形態に係るエスカレータの監視装置によれば、乗客の乗り方を撮影記録するだけでなく、移動手摺り2からの乗客の乗り出しや、乗客や乗客の手荷物が保護装置7に触れたときに、カメラ9,901〜905の映像が揺れるので、この揺れを画像認識部104で検知して、警報を発することができ、事故の未然防止に役立つ。このため、保護装置7に特別にセンサを設けることなく、上述のようにカメラ9,901〜905の映像を利用して、エスカレータ1,1a〜1cの狭角部における乗客の安全性を向上させることができる。
【0032】
なお、上述した実施形態では、監視部11,111〜113を各エスカレータ1,1a〜1cの外デッキ4に設置したが、各エスカレータ1,1a〜1cの機械室の内部に設置してもよく、また、建屋の壁や建屋側の図示しない監視室にまとめて設置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るエスカレータの監視装置の一実施形態の全体構成を示す側面図である。
【図2】第1実施形態の要部構成を示す側面図である。
【図3】図2のII−II断面図である。
【図4】本実施形態のシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1,1a〜1c エスカレータ
2 移動手摺り
6,6a〜6c 底部
7 保護装置
7a 筒体
9,901〜905 カメラ
11,111〜113 監視部
12 第一の取付治具
13 取付ボルト
14 第二の取付治具
15 保護カバー
15a 切欠き
101 入力部
102 画像メモリ
103 画像処理部
104 画像認識部
105 案内部
106 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜して配置されるエスカレータの移動手摺りと建屋天井間の狭角部に、あるいは交差して隣接するエスカレータの底部と移動手摺り間の狭角部に配置され、前側位置に筒体を有し、乗客が挟まれることを防ぐ保護装置を備えたエスカレータ配設構造に設けられ、前記保護装置の前記筒体の上部に、エスカレータの乗客を監視するカメラを支持する取付治具を設けたことを特徴とするエスカレータの監視装置。
【請求項2】
前記請求項1記載のエスカレータの監視装置において、
前記取付治具は、前記筒体の外周に接する断面コ字状の第一の取付治具と、この第一の取付治具に螺着され、断面コ字状の第二の取付治具とから成り、
前記カメラを前記第二の取付治具に上下方向の回動可能に螺着させたことを特徴とするエスカレータの監視装置。
【請求項3】
前記請求項2記載のエスカレータの監視装置において、
前記第一の取付治具に着脱可能であって、前記カメラの視野角方向に開口部を有し、前記カメラを覆う保護カバーを設けたことを特徴とするエスカレータの監視装置。
【請求項4】
前記請求項3記載のエスカレータの監視装置において、
前記保護カバーに、前記カメラのレンズ取付面を合わせた際に、前記視野角方向の中心線が前記エスカレータの傾斜角と略平行となる切欠きを設けたことを特徴とするエスカレータの監視装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のエスカレータの監視装置において、
前記カメラで予め撮影した基本画像と、現在撮影中の現画像とを比較する画像比較手段と、この画像比較手段で比較された画像の差異が所定値を超えると信号を出力する手段とを備えたことを特徴とするエスカレータの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−220915(P2009−220915A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64631(P2008−64631)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】