説明

エスカレータの監視装置

【課題】監視カメラを建物の構造および仕上げに影響されずに設置でき、設置後の監視カメラが建物の美観を損なわせず、乗客の邪魔にならず、かつ監視カメラで撮影した映像への外光の映り込みを低減できるエスカレータの監視装置を提供する。
【解決手段】交差した状態で隣接する別のエスカレータとの間で狭角部を形成しており、この狭角部に設けられエスカレータの上昇運転時に乗客が狭角部に挟まれるのを防止する保護体としての固定保護体および可動警告体を有するエスカレータに対し、エスカレータの上り方向を前方向とした場合の可動警告体の後方に設けられ、監視カメラ21を収容した透明なカメラ収容筒20と、カメラ収容筒20の内側に設けられ監視カメラ21に向かって進む外光を遮る遮光性部材40とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータを監視カメラを用いて監視するエスカレータの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータが設置される建物において、その建物にエスカレータが単独で設置されると、移動手摺と天井との間に狭角部(三角部)が形成されることになる。また、エスカレータの設置構造には、上下階床間に上りエスカレータと下りエスカレータとがその側面視において交差して併設されたものもある。このエスカレータの設置構造の場合には、エスカレータの移動手摺ともう一方のエスカレータの底部との間に狭角部が形成される。これらの狭角部には、乗客が挟まれることを防ぐための保護体が設けられるのが一般的である。
【0003】
特許文献1に開示されたエスカレータの監視装置は、下階床側において保護体としての狭角部保護板に対向して位置する建物の柱に、乗客の状況を撮影可能に設けられた監視カメラと、狭角部保護板の揺れを検出するセンサとを備えている。そして、センサが狭角部保護板の揺れを検出した時点の前後所定時間内で監視カメラにより撮影された映像を記録するようになっている。これにより、狭角部近傍における乗客の転倒、転落、あるいは挟まれ事故の状況の映像を保存することができる。
【0004】
特許文献2に開示されたマンコンベアの安全装置においては、保護体としてのガード板の手前に、天井から筒状の検出体が吊り下げられている。この検出体の下端部は弾性体を介して欄干に繋がれている。上りエスカレータの乗客は保護体に接触する前に検出体に接触することによって、保護体に接触する前に狭角部への接近に気付くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−114475号公報
【特許文献2】実開昭61−154278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エスカレータの監視においては、エスカレータの乗り場およびその周辺から、踏段、移動手摺、降り場およびその周辺に至るまでの範囲を監視できることが望ましい。従来、その範囲を監視できるようにするために、複数個の監視カメラを建物の壁、天井、柱の少なくともいずれかに分散させて設けている。しかし、天井が吹抜け構造である場合、天井が特殊仕上げである場合、柱の表面および壁面がガラス仕上げである場合など、天井、壁、柱が特殊なものである場合、監視カメラを設置することができない。天井、壁、柱が特殊なものでないとしても、建物の美観をできるだけ損なわせないこと、および、乗客の邪魔にならないことを考慮した場合には、監視カメラの設置個所が制限されるため、監視カメラの視野を確保することが困難なことがある。
【0007】
また、天井、壁、柱に監視カメラを設置した場合、建物内の照明の光などの外光が監視カメラの視野に入射され、監視カメラにより撮影された映像にその外光が映り込み、肝心な個所が見にくくなることがある。
【0008】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、監視カメラを建物の構造および仕上げに影響されずに設置でき、かつ、設置後の監視カメラが建物の美観を損なわせず、かつ、乗客の邪魔にならず、かつ、監視カメラで撮影した映像への外光の映り込みを低減できるエスカレータの監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕 前述の目的を達成するために、本発明に係るエスカレータの監視装置は、下階の天井との間で、または、交差した状態で隣接する別のエスカレータとの間で狭角部を形成しており、この狭角部に設けられ前記エスカレータの上昇運転時に乗客が前記狭角部に挟まれるのを防止する保護体を有するエスカレータに対して設けられ、このエスカレータを監視カメラにより監視するエスカレータの監視装置において、前記エスカレータの上り方向を前方向とした場合の前記保護体の後端側で前記保護体と一体に、または前記保護体と並んで、上下方向に延びた姿勢で設けられ、前記監視カメラを収容したカメラ収容筒と、このカメラ収容筒の内側で前記監視カメラよりも下方に設けられ前記監視カメラに向かって進む外光を遮る遮光性部材とを備え、前記カメラ収容筒は前記監視カメラの視野を開放する透明部を有することを特徴とする。
【0010】
この「〔1〕」に記載のエスカレータの監視装置において、カメラ収容筒は狭角部において保護体と一体、または保護体と並んで設けられるものであり、このカメラ収容筒に監視カメラが収容されている。これにより、建物の構造および仕上げに影響されずに監視カメラを設置することができる。さらに、設置後の監視カメラは建物の美観を損なわせず、かつ乗客の邪魔にならない。
【0011】
また、カメラ収容筒に監視カメラが収容されているので、監視カメラの視野に入射される外光には、カメラ収容筒の下端からカメラ収容筒内に入射された光そのもの、または、その光がカメラ収容筒の内壁面で反射して視野に達するものがある。遮光性部材は、カメラ収容筒の内側において、それらの外光が監視カメラの視野に入射することを阻止する。これにより監視カメラで撮影した映像に外光が映り込むことを低減することができる。
【0012】
〔2〕 本発明に係るエスカレータの監視装置は「〔1〕」記載のエスカレータの監視装置において、前記遮光性部材は、前記監視カメラの垂直方向の視野の下縁と前記カメラ収容筒の内壁面とが交差する位置に近接し、前記カメラ収容筒の内側の空間を前記カメラ収容筒の軸方向に分断するよう設けられたことを特徴とする。
【0013】
この「〔2〕」に記載のエスカレータの監視装置において、監視カメラの垂直方向の視野の下縁とカメラ収容筒の内壁面とが交差する位置の近傍よりも下側から監視カメラに向かってカメラ収容筒内を進む外光は、遮光性部材により遮られるため監視カメラの視野に入射しない。これにより、監視カメラの視野への外光の入射をより効果的に低減することができる。
【0014】
〔3〕 本発明に係るエスカレータの監視装置は「〔2〕」に記載のエスカレータの監視装置において、前記保護体および前記カメラ収容筒はいずれも透明な部材から成り、前記遮光性部材は前記カメラ収容筒の軸方向に交差する方向に広がったフィルム状であることを特徴とする。
【0015】
カメラ収容筒内において監視カメラの視野への外光の入射を低減する構成としては、カメラ収容筒の内壁面に遮光剤を塗布すること、または、その内壁面を遮光性フィルムで覆うことも考えられる。この場合、カメラ収容筒の色は外観上、不透明(遮光性のため)な有色になる。しかし、保護体が透明な部材である場合、透明な保護体に不透明な有色のカメラ収容筒が並んで配置された状態では、意匠面において違和感を生じさせることが懸念される。「〔3〕」に記載のエスカレータの監視装置によれば、カメラ収容筒の外観上有色になる部分は、監視カメラが収容される部分と、フィルム状の遮光性部材の肉厚の部分であり、カメラ収容筒の大部分は外観上透明に見えるので、保護体とカメラ収容筒との色の違いに起因する意匠面の違和感を生じさせないようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前述したように、監視カメラを建物の構造および仕上げに影響されずに設置でき、かつ、設置後の監視カメラが建物の美観を損なわせず、かつ、乗客の邪魔にならず、かつ、監視カメラで撮影した映像への外光の映り込みを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るエスカレータの設置構造の一例であり、交差して設置された複数のエスカレータの側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエスカレータの監視装置における監視カメラの設置構造を示す部分断面図である。
【図3】カメラ収容筒の肉厚を形成している壁における外光の反射の様子を示す図である。
【図4】カメラ収容筒の内側において反射する外光の様子を示す図。
【図5】本発明に係るエスカレータの設置構造の図1とは別の例であり、建物に単独に設けられたエスカレータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るエスカレータの監視装置について説明する。
【0019】
図1に示す3階建ての建物内において、1階床と2階床との間に設置されて上昇運転されるエスカレータである第1上りエスカレータ1Aと、2階床と3階床との間に設置されて上昇運転されるエスカレータである第2上りエスカレータ1Bとは、第1上りエスカレータ1Aの降り場と第2上りエスカレータ1Bの乗り場とが踊り場を形成し、側面視において屈曲形状を成すよう併設されている。これと同様に、1階床と2階床との間に設置されて下降運転されるエスカレータである第1下りエスカレータ2Aと、2階床と3階床との間に設置されて下降運転されるエスカレータである第2下りエスカレータ2Bとは、第1下りエスカレータ2Aの乗り場と第2下りエスカレータ2Bの降り場とが踊り場を形成し、側面視において第1上りエスカレータ1Aと第2上りエスカレータ1Bの場合とは逆向きに屈曲形状を成すよう併設されている。建物内のスペースを有効に利用するため、第1上りエスカレータ1Aと第2下りエスカレータ2Bは、上下方向において重なって配置されている。これと同様に第2上りエスカレータ1Bと第1下りエスカレータ2Aも上下方向において重なって配置されている。
【0020】
このように第1上りエスカレータ1A、第2上りエスカレータ1B、第1下りエスカレータ2Aおよび第2下りエスカレータ2Bが設置されているため、第1上りエスカレータ1Aの移動手摺5と第1下りエスカレータ2Aの底部2aとの間、第1下りエスカレータ2Aの移動手摺5と第1上りエスカレータ1Aの底部2aとの間、第1上りエスカレータ1Aの移動手摺5と第2上りエスカレータ1Bの底部2aとの間、第1下りエスカレータ2Aの移動手摺5と第2下りエスカレータ2Bの底部2aとの間、第2上りエスカレータ1Bの移動手摺5と第2下りエスカレータ2Bの底部2aとの間、第2下りエスカレータ2Bの移動手摺5と第2上りエスカレータ1Bの底部2aとの間のそれぞれには、狭角部7が形成されている。
【0021】
第1上りエスカレータ1Aは、1階床から2階床に架け渡されて第1上りエスカレータ1Aの骨組みを成したフレーム3と、このフレーム3に無端状に移動可能に設けられた複数の踏段(図示してない)と、これらの踏段のうち乗客を運搬する踏段の軌道を挟んで対向して位置する1対の欄干4と、1対の欄干4のそれぞれを、その外側すなわち踏段の軌道側とは反対側から支持する外デッキボード6とを備えている。移動手摺5は、欄干4周りを無端状に移動するようになっている。フレーム3の内側には、図示してないが、モータと、このモータの出力を踏段および移動手摺5に伝達する伝達装置、モータを制御する制御盤などが設けられている。フレーム3は外デッキボード6などの板部材に覆われており、これによって、前出のモータ、伝達装置および制御盤などを格納する格納部2が形成されている。格納部2の下面が第1上りエスカレータ1Aの底部2aである。
【0022】
第2上りエスカレータ1B、第1下りエスカレータ2Aおよび第2下りエスカレータ2Bも、第1上りエスカレータ1Aと同様に構成されている。なお、第2上りエスカレータ1Bの底部2aには、第1下りエスカレータ2Aを照らす照明装置(図示していない)が設けられている。第2下りエスカレータ2Bの底部2aには、第1上りエスカレータ1Aを照らす照明装置(図示していない)が設けられている。
【0023】
全ての狭角部7には、乗客が挟まれるのを防ぐための保護体が設けられている。例えば、第1上りエスカレータ1Aの移動手摺5と第1下りエスカレータ2Aの底部2aとによって形成された狭角部7には、その保護体として、第1下りエスカレータ2Aの底部2aに対し固定された台形状の板部材から成る固定保護体8が設けられている。さらに、第1上りエスカレータ1Aの上り方向(矢印U方向)を前方向とした場合の固定保護体8の後側には、第1下りエスカレータ2Aの底部2aに吊り下げられた台形状の板部材から成る可動警告体9とが設けられている。この可動警告体9も保護体の一種である。固定保護体8および可動警告体9は互いに同一材質の部材、例えば透明アクリル製の部材である。すなわち、本実施形態においては保護体全体が透明な部材から成る。固定保護体8および可動警告体9は外デッキボード6の上方に配置されている。
【0024】
可動警告体9の後端には、上下方向に延びた透明アクリル製の筒部9aが一体に設けられている。この筒部9aは、可動警告体9の板厚寸法よりも大きな外径寸法Dの円筒状である。すなわち、乗客が可動警告体9に接触したときの衝撃を拡散しやすくすることで、乗客の可動警告体9への接触時の安全性を高めている。乗客は固定保護体8に接触する前に可動警告体9に接触することによって、固定保護体8に接触する前に狭角部7の接近に気付くことができる。
【0025】
固定保護体8、可動警告体9および筒部9aのそれぞれの下端は全て、移動手摺5の上面よりも低い位置に配置されている。
【0026】
本実施形態に係る監視装置は、可動警告体9の後方で上下方向に延びた姿勢で設けられた円筒状のカメラ収容筒20と、図2に示すようにカメラ収容筒20に収容された状態で設置された監視カメラ21と、これらカメラ収容筒20および監視カメラ21を第1下りエスカレータ2Aの底部2aに設置するためのベース部材23、リング部材24,25、取付部材26等とを有する。
【0027】
カメラ収容筒20は、可動警告体9と別体であり、可動警告体9と前後方向に並んで位置する。このカメラ収容筒20も固定保護体8および可動警告体9と同じく全体が透明アクリル製の部材、すなわち、監視カメラ21の視野FVを開放する透明部を有する部材である。カメラ収容筒20の軸方向(図1,図2の上下方向)の長さ寸法は、カメラ収容筒20が第1下りエスカレータ2Aの底部2aに設置された状態において、カメラ収容筒20の下端が移動手摺5の上面よりも200mm以上下方に位置するよう設定されている。
【0028】
ベース部材23は、第1下りエスカレータ2Aの底部2aにネジ止めにより固定された板部23aと、前後方向に貫通した孔を形成した環状を成し板部23aから下方向に突出して設けられた2つの環状支持部23b,23cとを有する。これら環状支持部23b,23cは前後方向に並んで位置する。また、これら環状支持部23b,23cにはリング部材24,25のそれぞれが挿通されている。
【0029】
取付部材26は、カメラ収容筒20の径方向(前後方向)に対向して位置した吊り部27,28と、これらの吊り部27,28を連結した連結部29とを有する。吊り部27には吊り孔27aが形成されている。この吊り孔27aはカメラ収容筒20の径方向(前後方向)に貫通した孔である。吊り孔27aと同様の吊り孔(図示してない)が、吊り部28にも形成されている。吊り部27の吊り孔27aおよび吊り部28の吊り孔にリング部材24,25がそれぞれ挿通されていることによって、取付部材26が第1下りエスカレータ2Aの底部2aに吊り下げられている。
【0030】
カメラ収容筒20は吊り部27,28にネジ27c,28cによりネジ止めされている。つまり、カメラ収容筒20は、ベース部材23、リング部材24,25および取付部材26を介して第1下りエスカレータ2Aの底部2aに吊り下げられている。また、カメラ収容筒20の下端はワイヤ80を介して第1上りエスカレータ1Aの外デッキボード6に弾性的に結合しており、これによって、通常時にはカメラ収容筒20の揺れが抑えられ、乗客がカメラ収容筒20に接触したときには乗客に与えられる衝撃が低減される。
【0031】
監視カメラ21は、円筒状のケース21aと、このケース21aの一端面にドーム状に突出して設けられたレンズカバー21bとを有する。ケース21aのレンズカバー21b側とは反対側の端面は、前出の取付部材26の連結部29に対しネジ止めされている。つまり、監視カメラ21はカメラ収容筒20とともに第1下りエスカレータ2Aの底部2aに吊り下げられている。
【0032】
図2において、FVは監視カメラ21の視野であり、θはその視野FVの垂直方向の視野角である。本実施形態に係る監視装置は、カメラ収容筒20の内側に遮光性部材30を備えている。この遮光性部材30はフィルム状に形成されており、カメラ収容筒20の内側の空間をカメラ収容筒20の軸方向に分断して位置する。また、この遮光性部材30は、監視カメラ21の垂直方向の視野FVの下縁とカメラ収容筒20の内壁面20a1とが交差する位置Aに近接して設けられている。また、カメラ収容筒20は前述のようにアクリル製であるが、遮光性部材30はアクリルとは異なる材料製、例えばポリエチレンテレフタレート製である。
【0033】
ここで、カメラ収容筒20内において監視カメラ21に入射する外光について説明する。
【0034】
図3において、31はカメラ収容筒20の内側の空間(以下「筒内空間」という)であり、32はカメラ収容筒20の外側の空間(以下「筒外空間」という)であり、20aはカメラ収容筒20の壁である。また、naは空気の屈折率であり、nb(nb<na)は壁20aの屈折率である。外光R1はカメラ収容筒20の下端の開口から筒内空間31に射し込む。外光R1の壁20aに対する入射角αが、臨界角(=arcsin(na/nb))よりも大きい場合、その外光R1は反射光壁20aの表面で全反射して反射光R2になり、斜め上方に進む。入射角αが臨界角よりも小さい場合、壁20aを透過して筒外空間32に出る透過光R3になる。空気の屈折率naは壁20aの屈折率nbよりも大きいので、壁20aと筒外空間32との境界面での全反射は生じない。反射光R2および透過光R3のうち反射光R2は、監視カメラ21の視野FVに入り込むことがある。つまり、図4に示すように、カメラ収容筒20内に射し込んだ外光Rは、筒内空間31において壁20aでの全反射を繰り返して視野FVに達することがある。前出の遮光性部材30は位置Aの近傍において、そのように視野FVに向かって進んでくる光Rを遮っている。
【0035】
本実施形態に係る監視装置によれば次の効果を得られる。
【0036】
本実施形態に係る監視装置において、カメラ収容筒20は狭角部7において保護体の一種である可動警告体9と並んで設けられるものであり、このカメラ収容筒20に監視カメラ21が収容されている。これによって、建物の構造および仕上げに影響されずに監視カメラ21を設置することができる。さらに、設置後の監視カメラ21は建物の美観を損なわせず、かつ乗客の邪魔にならない。
【0037】
本実施形態に係る監視装置において、監視カメラ21の垂直方向の視野FVの下縁とカメラ収容筒20の内壁面とが交差する位置Aの近傍よりも下側から監視カメラ21に向かってカメラ収容筒20内を進む外光は、遮光性部材30により遮られるため監視カメラ21の視野FVに入射しない。これにより、監視カメラ21の視野FVへの外光の入射を低減することができる。
【0038】
本実施形態に係る監視装置において、カメラ収容筒20は可動警告体9と並んで設けられ、可動警告体9にはカメラ収容筒20と同様の形状の筒部9aが設けられている。これにより、監視カメラ21を設置するために特別にカメラ収容筒20が設けられたという違和感を与えにくくすることができる。
【0039】
本実施形態に係る監視装置において、監視カメラ21は乗客の手の届く高さ位置にあるが、これらはカメラ収容筒20内に収容されているので、乗客との接触を防止することができる。つまり、乗客による悪戯を防止でき、また、乗客にとって安全である。
【0040】
本実施形態に係る監視装置において、固定保護体8、可動警告体9、カメラ収容筒20はいずれも透明な部材である。また、カメラ収容筒20においては監視カメラ21が収容される部分と、フィルム状の遮光性部材30の肉厚の部分とが外観上有色に見えるが、カメラ収容筒20の大部分は外観上透明に見える。これにより、固定保護体8および可動警告体9とカメラ収容筒20との色の違いに起因する意匠面の違和感を生じさせないようにすることができる。
【0041】
本実施形態に係る監視装置において、カメラ収容筒20と遮光性部材30は異なる材料製であるので、カメラ収容筒20と遮光性部材30とが互いの接触部において溶け合って接着することがない。
【0042】
なお、前述の実施形態に係る監視装置において、カメラ収容筒20は可動警告体9の別体であって、可動警告体9よりも後方で可動警告体9と並んで位置するものであったが、可動警告体9に一体に設けられた筒部9aがカメラ収容筒であってもよい。
【0043】
前述の実施形態に係るエスカレータの監視装置において、監視カメラ21は、交差するエスカレータに形成された狭角部7に設置されたものである。狭角部はエスカレータの底部と移動手摺との間に形成されるものだけではない。図5に示すエスカレータの設置構造では、建物の1階床から2階床に乗客を搬送する上りエスカレータ90が建物に単独で設けられている。この上りエスカレータ90の移動手摺5と1階の天井91との間にも、狭角部92が形成されている。この狭角部92に、固定保護体8、可動警告体9とともにカメラ収容筒20を設けて、このカメラ収容筒20に監視カメラ21を収容してもよい。
【0044】
また、図5に示した固定保護体8の後端には可動警告体9の筒部9aと同様の筒部93が設けられている。狭角部7,92には可動警告体9および筒部9aが設けられない場合もある。この場合、乗客の保護の観点から固定保護体8の後端には筒部93が設けられるので、この筒部93をカメラ収容筒として用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1A 第1上りエスカレータ
1B 第2上りエスカレータ
2A 第1下りエスカレータ
2B 第2下りエスカレータ
2 格納部
2a 底部
3 フレーム
4 欄干
5 移動手摺
6 外デッキボード
7 狭角部
8 固定保護体(保護体)
9 可動警告体(保護体)
9a 筒部
20 カメラ収容筒
20a 壁
20a1 内壁面
21 監視カメラ
21a ケース
21b レンズカバー
23 ベース部材
23a 板部
23b,23c 環状支持部
24,25 リング部材
26 取付部材
27,28 吊り部
27a 吊り孔
27b ネジ孔
27c,28c ネジ
29 連結部
31 筒内空間
32 筒外空間
40 遮光性部材
80 ワイヤ

90 上りエスカレータ
91 天井
92 狭角部
93 筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階の天井との間で、または、交差した状態で隣接する別のエスカレータとの間で狭角部を形成しており、この狭角部に設けられ前記エスカレータの上昇運転時に乗客が前記狭角部に挟まれるのを防止する保護体を有するエスカレータに対して設けられ、このエスカレータを監視カメラにより監視するエスカレータの監視装置において、
前記エスカレータの上り方向を前方向とした場合の前記保護体の後端側で前記保護体と一体に、または前記保護体と並んで、上下方向に延びた姿勢で設けられ、前記監視カメラを収容したカメラ収容筒と、
このカメラ収容筒の内側で前記監視カメラよりも下方に設けられ前記監視カメラに向かって進む外光を遮る遮光性部材とを備え、
前記カメラ収容筒は前記監視カメラの視野を開放する透明部を有する
ことを特徴とするエスカレータの監視装置。
【請求項2】
請求項1記載のエスカレータの監視装置において、
前記遮光性部材は、前記監視カメラの垂直方向の視野の下縁と前記カメラ収容筒の内壁面とが交差する位置に近接し、前記カメラ収容筒の内側の空間を前記カメラ収容筒の軸方向に分断するよう設けられた
ことを特徴とするエスカレータの監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータの監視装置において、
前記保護体および前記カメラ収容筒はいずれも透明な部材から成り、
前記遮光性部材は前記カメラ収容筒の軸方向に交差する方向に広がったフィルム状である
ことを特徴とするエスカレータの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46517(P2011−46517A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198602(P2009−198602)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】