説明

エスカレータ装置

【課題】本発明は、困難であったトラスの深さ方向の寸法の低減化を実現して、薄形化を図ることができるエスカレータ装置を提供する。
【解決手段】本発明のエスカレータ装置は、シャフト13の周りを経ながら上階と下階の踏段スプロケット11,12間に設けられる追従ローラ案内レール40のうち、シャフト13の周りの転回部分45,50には、シャフト13の外周面をレール部分に兼用する構成を用いた。これにより、従来、シャフト13の周囲に配設されていた追従ローラ32の内側を案内するレール部材を不要にして、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2を削減して、エスカレータ装置の薄形化を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の踏段を踏段チェーンで無端状に連結して構成されるエスカレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駅舎等の公共交通機関の施設では、高齢化社会の到来を背景に、エスカレータ装置の設置が急ピッチで進められている。エスカレータ装置の設置に伴う工事は、設置コストや納期の点から、できるだけ小さい方がよい。このためには、エスカレータ装置のトラスの深さ方向の寸法を小さくして、薄形にする方がよい。
一般にエスカレータ装置は、特許文献1にも示されるように建屋の上階フロアと下階フロアとの間にトラスを掛け渡し、このトラスの上・下階の端部に、シャフトで連結された左右一対の踏段スプロケットを配設し、これら踏段スプロケット間に無端状の踏段チェーンを介して多数の踏段を組み付ける構造が用いられている。
【特許文献1】特開2002−145568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に示されるように踏段スプロケットのシャフトの周りには、追従ローラの内側を案内する内側レール部材が必要であり、そのガイド部材の外側に、追従ローラの外側を案内する外側レール部材が必要であるので、トラスの深さ方向の寸法を小さくするのには限りがある。このため、トラスの深さ方向の寸法を小さくするのには困難で、エスカレータ装置の薄形化が図り難かった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、困難であったトラスの深さ方向の寸法の低減化を実現して、薄形化を図ることができるエスカレータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、シャフトの周りを経ながら踏段スプロケット間に設けられる追従ローラ案内レールのうち、シャフトの周りの転回部分は、シャフトの外周面をレール部分に兼用する構成とした。
同構成により、従来、シャフトの周囲に配設されていた追従ローラの内側を案内するレール部材は不要となる。これにより、同部分内側レール部材の設置スペースは不要となり、トラスの深さ方向の寸法が削減され、エスカレータ装置の薄形化が図れる。しかも、シャフトの外周面と追従ローラとの間は最小寸法となるから、トラスの深さ方向の寸法は、できるだけ小さく抑えられる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、簡単な構造ですむよう、シャフトの周りの転回部分は、シャフトの外周面で形成され、追従ローラの内側を案内する内側レール部と、その内側ガイドの外側に設けられ追従ローラの外側を案内する外側レール部とを有した構成とした。
請求項3に記載の発明は、さらにトラスの深さ方向の寸法の低減化が図れるよう、踏段スプロケットと隣接した往路の駆動ローラ案内レール部分および追従ローラ案内レール部分は、踏段の往路の端で一直線に水平に連なる踏板から、シャフトを周る踏段の各部が外側へ張り出ないように、他の往路のレール部より、シャフトに接近する方向に段差させた構造を採用した。
【0007】
請求項4に記載の発明は、さらにトラスの深さ方向の寸法の低減化が図れるよう、駆動ローラや追従ローラが取り付く踏段のブラケットは、踏段がシャフトの周りを移動するとき、隣接する踏段の踏み板と干渉を避ける逃げ部を形成した構成とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、シャフトの周りを移動する追従ローラの内側を案内するガイド部材は不要となるうえ、シャフトの外周面と追従ローラとの間は、最小寸法ですむので、トラスの深さ方向の寸法を小さく抑えることができる。
したがって、エスカレータ装置の薄形化を図ることができ、設置に要する工事を小さくできる。特に既存の階段と併設してエスカレータ装置を設置する場合、薄形化により、工事期間や設置コストを抑えることができ、かなり有効である。しかも、追従ローラ案内レールは、小さくてすむので、エスカレータ装置の軽量化やコストの軽減化が図れる利点もある。
【0009】
請求項2の発明によれば、さらに、シャフトの周りに外側レール部を設けるだけで、シャフトの周りの転回部分はすむので、簡単な構造である。
請求項3の発明によれば、さらに、シャフトを周る踏段の各部が外側へ張り出ないようになることで、踏板から上側の寸法を稼いだりトラスの深さ方向の寸法を削減させたりでき、一層、エスカレータ装置の設置に伴う工事を小規模にすることができる。
【0010】
請求項4の発明によれば、さらに、隣接する踏段の踏み板とブラケットとの相互の干渉が避けられることにより、小さな曲率で、踏段を踏段スプロケット周りに移動させることが可能となり、踏段スプロケットが小さくてすむ分、一層、トラスの深さ方向の寸法の低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図1〜図8に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用したエスカレータ装置1の正断面図を示していて、図中2は同エスカレータ装置1を構成するトラスである。
トラス2は、各種構造部材を組み合わせた細長の構造体から構成され、上階のフロア5と下階のフロア6間に掛け渡されている。このトラス2の上部の端部は、上階のフロア5下に形成した機械室7に続き、トラス2の下部の端部は、下階のフロア下に形成した機械室8に続いている。なお、トラス2の上・下部端は、機械室7,8の上部開口を閉塞するようにそれぞれ設けたランディングプレート9と連なっている。
【0012】
トラス2の上端部には、図2に示されるように左右一対の踏段スプロケット11が配置されている。またトラス2の下端部にも同様に左右一対の踏段スプロケット12が配置されている。これら踏段スプロケット11,12は、いずれも図2に示されるように相互間(中心部)がシャフト13で連結されている(上階しか図示せず)。つまり、一対の踏段スプロケット11,12は、いずれも左右でずれが生じないよう、シャフト13で一体化させたスプロケット体が用いてある。これら上階と下階の踏段スプロケット11,12が、トラス2に回転自在に支持されている。このうちの上階のシャフト13は、図2に示されるように伝達機構、例えば駆動スプロケット15a,15bや駆動チェーン16で構成されるチェーン機構17を介して、機械室7に設置された駆動装置、例えば電動モータ18や減速機19を組み合わせて構成されたモータ駆動装置20に接続されていて、電動モータ18から出力された駆動力(回転力)が上階の踏段スプロケット11へ伝わるようにしている。
【0013】
図1および図2に示されるように上階の各踏段スプロケット11と下階の各踏段スプロケット12間には、それぞれ無端状の一対の踏段チェーン22が掛け渡されている。これら踏段チェーン22には、多数の踏段25が所定間隔をおいて連結され、多数の踏段25をスプロケット11,12間に無端状に配置させている。
すなわち、踏段25は、いずれも図6にも示されるように上面に踏み面26を有する踏み板27と、同踏み板27の後部側の端部からL形状に連なるライザ28と、これら踏み板27とライザ28間の幅方向両側に設けた一対のブラケット29をもつ。このうちブラケット29は、例えば板部材で形成される。同ブラケット29の前部の左右両側には、踏み板27やライザ28の側方へ突き出る一対の軸部材30を介して、駆動ローラであるところの一対の前輪31が回転自在に突き出ている(片側しか図示せず)。この軸部材30の途中にはチェーン接続部30aが形成してある。またブラケット29の後部の左右両側からは、軸部材33を介して、追従ローラであるところの一対の後輪32が回転自在に突き出ている(片側しか図示せず)。同後輪32は、図2に示されるようにチェーン接続部30aと踏み板27(ライザ28)間に配置してある。
【0014】
両側のチェーン接続部30aは、それぞれ一対の踏段チェーン22に連結され、多数の踏段25を、所定の間隔で、スプロケット11,12間に無端状に配置させている。これにより、踏段スプロケット12が回転されると、多数の踏段25が、トラス2内の上部を往路とし、トラス2内の下部を復路として、踏段スプロケット11,12間を循環移動するようにしてある。
【0015】
一方、図1〜図3に示されるように踏段25の列を挟んだトラス2の両側には、各踏段25の前輪31を案内する左右一対の前輪案内レール35(本願の駆動ローラ案内レールに相当)と、各踏段25の後輪32を案内する左右一対の後輪案内レール40(本願の追従ローラ案内レールに相当)が設けられている。
一対の前輪案内レール35は、一対のレール部材、例えば図3に示されるような断面がL形の長尺なアングル部材36を上・下階の踏段スプロケット11,12間に設けて構成される。具体的には、図1および図4に示されるように前輪案内レール35は、トラス2の上・下部に、それぞれ往路、復路に沿わせて、アングル部材36を、上・下階の踏段スプロケット12の歯部と踏段チェーン22とが係脱する地点まで敷設した構造が用いられる。そして、これらアングル部材36に各一対の前輪31を載せて、踏段25を案内する構造としている。これにより、多数の踏段25は、アングル部材36上を前輪31が転がりながら、往路や復路を移動する。
【0016】
一対の後輪案内レール40は、図1〜図3に示されるように往路や復路の形状にならって配設された往側レール部41および復側レール部42と、上階の踏段スプロケット11のシャフト13周りに配設された転回レール部45(本願の転回部分に相当)と、下階の踏段スプロケット12のシャフト13周りに配設された転回レール部50(本願の転回部分に相当)とを組み合わせて構成される。
【0017】
このうちの往路に配置された往側レール部41は、図3に示されるように踏段25列の両側に、各踏段25の後輪32が載るレール部材、例えば断面がL形の長尺なアングル部材43を設けて構成される。具体的には、図1に示されるようにアングル部材43は、往路の傾斜部においては前輪案内レール35と平行に並ぶように配置され、往路の端部においては前輪案内レール35から下方にずれて前輪案内レール35と平行に並ぶように配置されて、上・下階の踏段スプロケット11,12のシャフト13まで延びている。この往側レール部41が前輪案内レール35と協同して踏段25の姿勢を制御して、多数の踏段25を、往路の傾斜した部分では階段状をなし、往路の各端部では踏み面26が水平に一直線状に連なるように昇降させる。
【0018】
復路に配置された復側レール部42も、図3に示されるように踏段25列の両側に、各踏段25の後輪32が載るレール部材、例えば断面がL形の長尺なアングル部材44を設けて構成されている。具体的には、図1に示されるようにアングル部材44は、復路の傾斜部ならび端部共、前輪案内レール35から上方にずれて前輪案内レール35と平行に並ぶように配置されている。このアングル部材44が上・下階の階段スプロケット11,12のシャフト13まで延びている。この復側レール部42が前輪案内レール35と協同して踏段25の姿勢を制御して、多数の踏段25を、復路上で平面状に保ちながら移動させる。
【0019】
なお、図3に示されるように往路上の前輪案内レール35のほぼ全域には、前輪31を挟んで上側に、浮き抑制部材、ここでは断面がL形のアングル部材38が配設されていて、同アングル部材38による前輪31の上方方向の規制により、往路を移動中、踏み面26が偏荷重を受けても踏段25の前側(前輪31)が浮き上がらないようにしてある。
上階のシャフト周りに配置された転回レール部45(本願の転回部分に相当)は、図1に示されるようにシャフト13の周りを転回する後輪32の内側を案内する内側レール部46と、同じく後輪32の外側を案内する外側レール部47を組み合わせて構成される。この転回レール部45には、図4に詳細に示されるように上階のシャフト13の外周面をレール部分の一部に兼用した構造が用いられている。
【0020】
同構造を説明すると、内側レール部46には、往側レール部41の端部と、復側レール部42の端部に設けたガイド51とに工夫を施した構造が用いてある。具体的には、往側レール部41の端部は、シャフト13側へ接近する方向に傾斜して、シャフト13の円形断面の上端部近傍まで延びている。詳述すれば、往側レール41の端部は、円形のシャフト13の側方から見たとき最も高い地点に対し、傾斜を用いて横方向から接線方向の向きに近接させて配置してある。つまり、後輪32が走行するアングル部材43の走行面43aは(図4だけ図示)、微小間隙を介して、シャフト13の外周面に連ねてある。
【0021】
ガイド51は、後輪32を挟んでアングル部材44の上側に配置され、転回する後輪32の内側を案内する部品で、例えばL形の断面をもつアングル部材が用いられる。このガイド51には、往側レール41のときは反対に、シャフト13の円形断面の下端部に対し、横方向から接線方向の向きで近接させて配置した構造が用いてある。
外側レール部47は、図4に示されるようにシャフト13の外周面(ガイド面48)の外側、具体的には後輪32を挟んだ外側の地点に、一対のレール部材、例えばL形の断面をもつアングル部材52を円弧形に設置した構造が用いられる。このアングル部材52の一方の端部は、往側レール部41の端部を構成しているアングル部材43の端部上側に平行に延び、往側レール部41端との間を連絡している。またアングル部材52の他方の端部は、ガイド51の下側を通じて、復側レール部42の端部と連続させてある。むろん、アングル部材52とガイド51間は、後輪32が通るスペースが確保してある。
【0022】
こうした内・外側レール部46,47により、シャフト13の周りに、シャフト13の外周面そのものを内側のガイド面として流用した転回路48を形成している。
下階のシャフト周りに配置された転回レール部50(本願の転回部分に相当)にも、図5で詳細に示されるように上階の転回レール部45と同じく、下階のシャフト13の外周面をレール部分の一部に兼用した構造が用いられている。具体的には、上階の転回レール部45と同じ構造が採用されていて、下階のシャフト13の周りにも、シャフト13の外周面そのものを内側のガイド面として流用した転回路53を形成している。なお、図5に示す転回路53において、上階のシャフト周りの転回路48の各部と同じ部分は同一符号を付してその説明を省略した。
【0023】
一方、図1、図4および図5に示されるように往路のうち、上・下階の踏段スプロケット11,12と隣接した前・後輪案内レール35,40の部分、具体的にはアングル部材36およびアングル部材43のうち、水平状態の踏段25が転回を始めたり転回を終えたりする地点からシャフト12,13へ至る領域X,Y(端部分)は、いずれも他のレール部分より、シャフト13側へ接近する方向に大きく段差させてある。符号55は、そのアングル部材36、43の端部部分に形成された段差部をそれぞれ示している。この段差の大きさならびに形状は、図7および図8に示されるように往路の端で一直線状に水平に連なる踏板27の踏み面26を延長した延長線αから、シャフト13を周る踏段25の各部が外側へ張り出ないように設定されている。具体的には、段差部55は、アングル部材36,43を、領域X,Yの境界となる部分から、シャフト13へ接近する方向へ傾斜させて段差させ(退避)、図7および図8中の二点鎖線で示されるように転回する踏板27の端部が、延長線αから突き出ずに転回が行われるようにしている。この段差により、踏み板26から上方の寸法を稼いだり、踏段スプロケット11,12の地点の深さ方向寸法を抑えたりしている。
【0024】
他方、図1および図6に示されるように各踏段25のブラケット29の下部には、シャフト13の周りを踏段25が転回するとき、隣接する踏段25の踏み板27との干渉を避けるための逃げ部57が形成されている。逃げ部57は、例えば板状のブラケット29の下端部に、円弧形の切欠部を形成した構造が用いられている。この切欠部や上記段差により、小径な踏段スプロケット11,12で、踏段25の昇降が行えるようにしている。
【0025】
なお、図1中60は、往路の踏段列の両側に設けられた欄干部を示し、同じく61は、その欄干部60の上部を循環する移動手すりを示している。また図3中62は、トラス2の外側に配設された外側板を示し、同じく63は、トラス2の内側に配設されたスカートガードを示している。
つぎに、作用について説明する。
【0026】
昇り時は、昇り用の駆動力が、減速機19から上階の踏段スプロケット11へ入力される。これにより、図1中の矢印に示されるように駆動チェーン15a,15bが踏段スプロケット11,12間を周回するように駆動される。すると、復路から戻る踏段25が、前輪案内レール35、後輪案内レール40により案内されながら、下階のフロア5から往路上を上階のフロア6へと移動する。
【0027】
このとき、後輪案内レール40は、往路上の傾斜した部分では、前輪案内レール35と同じ高さに配置され、往路上の端部分〜上階のシャフト13〜復路では、前輪案内レール35からトラス2の内側へずれて配置されているから、往路の踏段25は、図1に示されるように前輪案内レール35と後輪案内レール35とがもたらす踏段25の姿勢変化により、往路の傾斜部では踏板26が階段状に変化しながら移動し、往路の端部では平面状に変化しながら移動する。その後、踏段25は、上階の踏段スプロケット11や転回レール部45で案内されながら、上階のシャフト13の周りを転回して、平面状の姿勢を保ちながら復路を移動し、再び下階の踏段スプロケット12へ導かれる。なお、下り時は逆の挙動となる。
【0028】
こうしたエスカレータ装置1を駅舎など既存の階段に併設するときは、既存の階段やプラットホームやコンコースなどの一部を解体あるいは改造して、トラス2を設置する場所を確保する。このとき、図1に示されるトラス2の深さ方向の寸法H1,H2が工事の大小に大きく関係するとされるが、後輪32を転回させる転回レール部43,44の一部に、シャフト13の外周面を兼用させる構造を用いたことで、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2は小さくてすみ、規模の小さな工事ですむ。
【0029】
すなわち、左右の踏段スプロケット間をシャフト13で連結したエスカレータ装置1は、シャフト13の周りに、後輪32を案内する内側レール部材46を設けるために、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2が大きくなりがちであるが、図7および図8に示されるようにシャフト13の周りの転回レール部43,44(本願のシャフトの周りの転回部分に相当)の一部がシャフト13の外周面で形成されることによって、往路から復路へ、復路から往路へと、後輪32を転回させる経路のうちの一部(内側部分)は、シャフト13で代用される。このため、別途、後輪32の内側を案内するための案内用レール(内側レール)は不要となる。
【0030】
このことは、シャフト13の周りには、別途、後輪32の内側を案内する案内用レールを設置するための設置スペースが不要となるから、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2が削減できる。しかも、シャフト13の外周面と後輪32間は最小寸法となるから、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2は、できるだけ小さく抑えることができる。
したがって、エスカレータ装置1の薄形化を図ることができ、エスカレータ装置1に伴う工事を小さく抑えることができる。特に、既存の階段と併設してエスカレータ装置1を設置する場合は、設置に伴う解体や改造工事が小規模でき、かなり有効である。しかも、シャフト13が転回レール部45,50の一部をなすことにより、後輪案内レール40は小さくてすむので、エスカレータ装置1の軽量化やコストの低減が図れる。そのうえ、図7および図8に示されるようにシャフト13は、シャフト13周りを転回する踏段25と同回転なので、転回中、シャフト13と踏段25の後輪32とは相対速度差がゼロ、つまりシャフト13と後輪32間は静止している関係となり、シャフト13に衝撃力が加わるおそれはなく、シャフト13へ影響を与えないという点から、安全性の面でも優れる。
【0031】
特に、エスカレータ装置1の転回部分である、上階の転回レール部45や下階の転回レール部50は、いずれも、シャフト13の外周面を用いて内側レール部46を形成し、その内側ガイド46の外側に外側レール部47を設けるだけの構造でよく、簡単な構造ですむ。
しかも、踏段スプロケット11,12と隣接した往路の前輪案内レール部分や後輪案内レール部分を段差させて、図7および図8の二点鎖線に示されるように往路端の水平となる踏板26から、踏段25の各部が外側へ張り出ない状態のまま、シャフト13の周りを踏段25が移動(転回)する構造にすると、同図から明らかなように、踏板27から上側の空間の寸法を稼ぐことができるうえ、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2をさらに削減することができる。これにより、一層、エスカレータ装置1の薄形化が図れ、エスカレータ装置1の設置工事を小さくできる。むろん、既存の階段と併設してエスカレータ装置1を設置する場合は、設置に伴う解体や改造工事が小規模でき、かなり有効である。
【0032】
そのうえ、前輪31や後輪32が取り付く踏段25のブラケット29には、隣接する踏み板27と干渉を避ける逃げ部57を形成したので、図7および図8に示されるように踏段25を、小さな曲率で、踏段スプロケット11,12の周りに転回させることができる。つまり、踏段スプロケット11,12は、干渉が避けられる分、外径が小さなスプロケットですみ。これにより、トラス2の深さ方向の寸法H1,H2は、一層、削減することができる。
【0033】
特に、シャフト13をレール部分に流用する構造に、段差部55を設ける構造、ブラケット29に逃げ部57を設ける構造が組み合わさると、大幅にトラス2の深さ方向H1,H2の寸法H1,H2の削減化を図ることができる。シミュレーションした結果、エスカレータ装置2のトラス2の深さ方向の寸法H1,H2は、シャフト13で踏段スプロケット11,12を連結した構造のエスカレータ装置2では難しいとされていた500mm程度まで小さくすることができるものであった。
【0034】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るエスカレータ装置の正断面図。
【図2】図1中のA−A線から見た平面図。
【図3】図1中のB−B線に沿う側断面図。
【図4】同エスカレータ装置の上階におけるシャフト周りのレール構造を示す断面図。
【図5】同じく下階におけるシャフト周りのレール構造を示す断面図。
【図6】同エスカレータ装置の踏段の外観を示す斜視図。
【図7】同エスカレータ装置の上階におけるシャフト周りを踏段が移動するときを示す断面図。
【図8】同じく下階におけるシャフト周りを踏段が移動するときを示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 エスカレータ装置
2 トラス
5 上階のフロア
6 下階のフロア
11,12 左右一対の踏段スプロケット
13 シャフト
15a,15b 駆動チェーン
25 踏段
27 踏み板
28 ライザ
29 ブラケット
31 前輪(駆動ローラ)
32 後輪(追従ローラ)
35 前輪案内レール(駆動ローラ案内レール)
40 後輪案内レール(追従ローラ案内レール)
45,50 転回レール部(転回部分)
46 内側レール
47 外側レール
55 段差部
57 逃げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階のフロアと下階のフロアに端部を支持させて当該フロア間に掛け渡されるトラスと、
前記トラスの両端部に設けられ、シャフトで相互間が連結された一対の踏段スプロケットと、
両側に駆動ローラと追従ローラとを有する多数の踏段と、
前記トラス両端部の踏段スプロケット間にそれぞれ掛け渡され、前記多数の踏段を無端状に連結し、前記トラス内の上側を往路とし、トラス内の下側を復路として、前記踏段を循環移動させる一対の踏段チェーンと、
前記トラスに前記踏段スプロケット間に沿って配設され、前記循環移動する踏段の駆動ローラを案内する駆動ローラ案内レールと、
前記トラスに前記シャフトの周りを経ながら前記踏段スプロケット間に沿って配設され、前記循環移動する前記踏段の追従ローラを案内し、前記駆動案内レールと協同して前記踏段を前記往路上で階段状に昇降させる追従ローラ案内レールとを有し、
前記追従ローラ案内レールのうち、前記シャフトの周りの転回部分は、前記シャフトの外周面をレール部分に兼用して構成してある
ことを特徴とするエスカレータ装置。
【請求項2】
前記シャフトの周りの転回部分は、前記シャフトの外周面で形成され、前記シャフトの周りを転回する前記追従ローラの内側を案内する内側レール部と、その内側レール部の外側に設けられ前記シャフトの周りを転回する前記追従ローラの外側を案内する外側レール部とを有して構成されることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータ装置。
【請求項3】
前記踏段は、踏み板を有し、当該踏み板が前記往路の端で水平に一直線状に連なるように昇降され、
前記往路をなす前記踏段スプロケットと隣接した駆動ローラ案内レール部分および追従ローラ案内レール部分は、前記踏段の往路の端で一直線状に水平に連なる踏板から、前記シャフトを周る踏段の各部が外側へ張り出ないように、他の往路のレール部分より、前記シャフトに接近する方向に段差させてある
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエスカレータ装置。
【請求項4】
前記踏段は、踏み板と、該踏み板からL形状に連なるライザと、これら踏み板とライザ間に設けられ、前記駆動ローラと前記追従ローラとが取り付いたブラケットとを有し、
前記ブラケットには、前記踏段が前記シャフトの周りを移動するとき、隣接する踏段の踏み板と干渉を避ける逃げ部が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載のエスカレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−308318(P2008−308318A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159952(P2007−159952)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【特許番号】特許第4122369号(P4122369)
【特許公報発行日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(503407351)有限会社エイブル (5)
【Fターム(参考)】