説明

エスカレータ

【課題】トラス下空間内への入り込みやトラス下空間内の往来を容易に行うことができるエスカレータを得ることを目的とする。
【解決手段】トラス4と、踏段鎖18の走行に連動して循環移動する踏段20と、トラス4の底部を覆って上部機械室15から下部機械室12に至るように延設されたオイルパン24と、トラス4の下方に延出するようにトラス4の両側部に取り付けられた一対の外側板と、外側板9に支持され、オイルパン24、上部機械室床16、及び下部機械室床13との間にトラス下空間26を形成する化粧板25と、を備えるエスカレータ1において、トラス下空間26に開口するように上部機械室床16及び下部機械室床13のそれぞれにそれぞれ形成された上部点検口及び下部点検口31bと、上部機械室15の下部から下部機械室12の下部に至るようにトラス下空間26に延設された階段33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトラス下部と外装下部を構成する化粧板との間に空間を有するエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータは、エスカレータ本体内に多数の踏段を上下階側の各踏段スプロケット間に巻き掛けた左右一対の踏段チェーンに掛止めして無端コンベア状に配列しているとともに、このエスカレータ本体内の上階側部には上階側の踏段スプロケットを介して踏段チェーンと共に踏段を循環走行せしめる駆動機器が設けられている。また、エスカレータ本体は、トラスと称されるフレームと、この周側面に取り付けられた外側板と、当該トラスの底面に取り付けられたオイルパンなどにより中空体状に構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−20497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には具体的には記載されていないが、従来のエスカレータは、化粧板がオイルパンの下方にオイルパンの下面と所定の間隔をあけて相対するように、トラスの下方に延出させた外側板間に固定されて外装下部を構成するのが一般的である。つまり、トラスの延在方向に沿った空間が、化粧板、外側板、及びオイルパンによりトラス下部に形成されている。
【0005】
オイルパンは、踏段チェーンなどに供給されたオイルが滴り落ちた場合の受け皿となっている。しかし、オイルがオイルパンの継ぎ目などから漏れ出して化粧板に滴り落ち、さらに化粧板の表面に滲みでると、オイルの放つ異臭がフロアに漂って乗客に不快感を与える。
【0006】
そして、保守者がオイル漏れの対処を行うためには、トラス内に設けられた機械室の床を外してトラス下部の空間内に入り込まなければならない。このとき、機械室の床は重く、多大な労力が床の取り外し作業に必要となる。さらに、トラス下部の空間内での保守者の作業は、傾斜している平らな化粧板の裏面が足場となるため、当該空間内を往来することは容易ではない。
また、化粧板を取り外してオイル漏れの対処を行う方法も考えられるが、この場合も、多大な労力が化粧板の取り外し作業に必要となる。
つまり、保守者はトラス下部の空間内で発生したオイル漏れ等のトラブルに対して迅速な対処ができない。
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、トラス下空間内への入り込みやトラス下空間内の往来を容易に行うことができるエスカレータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上下階床間に架設されたトラスと、トラスの上下階側のそれぞれに設置された上部機械室及び下部機械室と、上部機械室及び下部機械室のそれぞれに配設された一対のスプロケットに掛け渡された無端状の踏段鎖と、踏段鎖に連結され、踏段鎖の走行に連動して循環移動する踏段と、トラスの底部を覆って上部機械室から下部機械室に至るように延設されたオイルパンと、トラスの両側開口を閉口して、トラスの下方に延出するようにトラスの両側部に取り付けられた一対の外側板と、オイルパン、上部機械室床、及び下部機械室床のそれぞれの下面と相対するように外側板に支持され、オイルパン、上部機械室床、及び下部機械室床との間に上部機械室の下部から下部機械室の下部に至るトラス下空間を形成する化粧板と、を備えるエスカレータにおいて、トラス下空間に開口するように上部機械室床及び下部機械室床のそれぞれにそれぞれ形成された上部点検口及び下部点検口と、上部機械室の下部から下部機械室の下部に至るようにトラス下空間に延設された足場手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、保守者がトラス下空間内の往来を容易に行えるので、トラス下空間内で発生したトラブルに対して迅速に対処できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータの模式図、図2はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータの一部破断斜視図である。
なお、説明の便宜上、図1では外側板、及び側梁の図示を省略している。
【0011】
図1及び図2において、エスカレータ1は、下階側に設けられた乗り口2から上階側に設けられた降り口3に至るように上下階床間に架設されたトラス4と、トラス4の上下階側のそれぞれに設置された上部機械室15及び下部機械室12と、上部機械室15に配設された上階側スプロケット14と、下部機械室12に配設された下階側スプロケット19と、駆動機22と、駆動機22の出力を上階側スプロケット14に伝達する駆動鎖23と、を備えている。なお、上階側スプロケット14及び下階側スプロケット19をまとめて一対のスプロケット14,19とする。
【0012】
さらに、エスカレータ1は、無端状をなし、一対のスプロケット14,19に巻き掛けられた踏段鎖18と、踏段鎖18に連結され、踏段鎖18の走行に連動して循環移動する多数の踏段20と、エスカレータ1の運転全般を制御するエスカレータ制御盤21と、トラス4の底部に取り付けられたオイルパン24と、トラス4の両側開口を閉口して、トラス4の下方に延出するようにトラス4の両側部に取り付けられた一対の外側板9と、オイルパン24の下面と相対するように配設された化粧板25と、オイルパン24と化粧板25との間の空間の往来を補助する階床間移動補助手段30Aと、を備えている。
【0013】
そして、上階側スプロケット14は、駆動鎖23を介して伝達される駆動機22の駆動力により回転するように配設され、踏段20は、上階側スプロケット14の回転に連動して循環移動する踏段鎖18とともに乗り口2と降り口3との間を循環移動する。このとき、詳細には説明しないが、手摺10も踏段鎖18の循環移動に連動して循環移動するようになっている。
【0014】
トラス4はそれぞれ型鋼を主とする一対の下弦材5、一対の上弦材6、側梁7、及び横梁8などから中空体に構成されている。一対の下弦材5は、踏段20の幅方向両側に踏段20の走行方向に沿って乗り口2の下部から降り口3の下部に至るように延設されている。また、一対の上弦材6は、一対の下弦材5のそれぞれから鉛直方向の上方に所定の間隔を空けて延設されている。
【0015】
そして、詳細には図示しないが、横梁8が一対の下弦材5、及び一対の上弦材6の間を掛け渡すように固定されている。このとき、横梁8は、その長手方向を一対の下弦材5、及び一対の上弦材6のそれぞれの離間方向に一致させ、かつ、下弦材5及び上弦材の延在方向に所定の間隔で配設されている。また、複数の側梁7が、図2に示されるように、踏段20の幅方向の一側の下弦材5及び上弦材6の間を掛け渡すように配設されている。さらに、図示しないが、側梁は、踏段20の幅方向の他側の下弦材5及び上弦材6を掛け渡すように配設されている。このとき、トラス4の踏段20の幅方向の両側(両側部)は開口している。
【0016】
そして、オイルパン24が、一対の下弦材5の間を覆って、上部機械室15から下部機械室12に至るように延設されている。即ち、オイルパン24は、トラス4の底部を覆うように一対の下弦材5に固定されている。このとき、オイルパン24は、トラス4の延在方向に隙間なく複数配列されている。オイルパン24は、踏段鎖18などに供給されたオイルが滴り落ちたときの受け皿となっている。
【0017】
また、外側板9が、踏段20の幅方向の一側の下弦材5及び上弦材6の間、並びに他側の下弦材5及び上弦材6の間を覆うように下弦材5及び上弦材6に支持されている。
このとき、外側板9の下端側は、トラス4の下部からさらに下方に延在している。
即ち、外側板は、トラス4の両側開口を閉口して、トラス4の下方に延出するようにトラス4の両側部に取り付けられている。
【0018】
また、乗り口2の床27a及び降り口3の床27bが、上弦材6の両端側のそれぞれに支持されている。さらに、上部機械室床16、及び下部機械室床13のそれぞれが、床27b,27aの下方に所定の間隔をあけて下弦材5の両端側のそれぞれに支持されている。
【0019】
そして、複数の化粧板25のそれぞれが、外側板9の下端間に支持されて外装下部を構成している。このとき、化粧板25は、オイルパン24、上部機械室床16、及び下部機械室床13のそれぞれの下面と所定の間隔をあけて相対するように、トラス4の延在方向に隙間なく配列されている。
つまり、化粧板25は、オイルパン24、上部機械室床16、及び下部機械室床13との間に上部機械室15の下部から下部機械室12の下部に至るトラス下空間26を形成するように外側板9に取り付けられている。なお、トラス下空間26には、化粧板25に取り付けられる照明器具(図示せず)などの電気配線(図示せず)などが引き回されている。
【0020】
また、上部機械室15、及び下部機械室12は、床27bと上部機械室床16との間、及び床27aと下部機械室床13との間に形成されている。そして、上階側スプロケット14及び下階側スプロケット19のそれぞれは、トラス4の上階側の端部(トラスエンド4a)及び下階側の端部(トラスエンド4b)のそれぞれからトラス4の延在方向のやや中間よりのトラス4の内部に配設されている。このとき、オイルパン24の両端部は、上部機械室床16、及び下部機械室床13上に配置されているが、上部機械室床16及び下部機械室床13のトラスエンド4a,4b側は、オイルパン24から露出している。
【0021】
次いで、階床間移動補助手段30Aについて説明する。
階床間移動補助手段30Aは、上部機械室床16に形成された上部点検口31a並びに下部機械室床13に形成された下部点検口31b、上部点検口31a及び下部点検口31bを開閉自在に上部機械室床16及び下部機械室床13のそれぞれに設けられた点検口蓋32、及び化粧板25のトラス下空間26側の面(裏面)に配設された足場手段としての階段33を有している。
【0022】
上部点検口31a、及び下部点検口31b及びのそれぞれは、オイルパン24から露出している上部機械室床16及び下部機械室床13のそれぞれの部位に形成されている。このとき、上部点検口31a及び下部点検口31bの大きさは、エスカレータ1の保守者が出入りできる程度の適度な大きさに形成されている。
【0023】
そして、点検口蓋32は、図2に示されるように、蝶番35を用いて上部点検口31a及び下部点検口31bを開閉自在に上部機械室床16及び下部機械室床13のそれぞれに配設されている。
また、階段33が、トラス下空間26内に配置される化粧板25の裏面のうち、下階側と上階側との間の傾斜部を構成する部位に配設され、上部機械室15の下部から下部機械室12の下部に至るように延設されている。
【0024】
この実施の形態1によれば、上部点検口31a及び下部点検口31bが、上部機械室床16及び下部機械室床13にトラス下空間26に開口するように形成され、さらに、階段33が上部機械室15の下部から下部機械室12の下部に至るように延設されている。また、点検口蓋32は、蝶番35を用いて上部点検口31a及び下部点検口31bを開閉自在に上部機械室床16及び下部機械室床13に設置されている。
従って、保守者は上部点検口31a及び下部点検口31bの塞口を簡単に解除することができ、上部点検口31a及び下部点検口31bのいずれかから容易にトラス下空間26内に入り込むことができる。また、保守者は階段33を上り下りするだけでトラス下空間26内の往来を容易に行うことができる。つまり、保守者は、容易にトラス下空間26内で発生したオイル漏れや電気配線の不具合等のトラブルの状況を間近で確認可能となり、当該トラブルに対して迅速に対処することができる。
【0025】
なお、足場手段は階段33であるものとして限定したが、足場手段は階段33に限定する必要はなく、足場手段としての架設はしごを上部機械室15の下部から下部機械室12の下部に至るように、化粧板25の裏面に架設してもよい。
【0026】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係るエスカレータの一部破断斜視図である。
なお、図3において、上記実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0027】
図3において、エスカレータ1の階床間移動補助手段30Bは、下部機械室床13及び上部機械室床16のそれぞれに形成された上部点検口(図示せず)及び下部点検口31b、上部点検口及び下部点検口31bのそれぞれを開閉自在に上部機械室床16及び下部機械室床13のそれぞれに配設された点検口蓋32、下弦材5から下方に延出するように、かつ下弦材5の延在方向に所定の間隔で配設された足場支持部材34、及び足場支持部材34に支持された足場手段としてのはしご35を有している。
【0028】
足場支持部材34のそれぞれは、コ字状に形成されている。そして、足場支持部材34は、コ字状の底を構成する底辺34aの長さ方向を下弦材5の離間方向に一致させ、かつ、コ字状の開口をオイルパン24の下面に向けて一対の下弦材5のそれぞれに固定されている。このとき、底辺34aは化粧板25から所定距離上方に離間して配置されている。そして、はしご35は、その一端が上部点検口の真下に配置され、他端が下部点検口31bの真下に配置されるように底辺34aに固定されている。つまり、はしご35は、上部点検口の真下から下部点検口31bの真下に至るように足場手段支持部材に支持されて延在している。
【0029】
この実施の形態2によれば、保守者は、はしご35を利用してトラス下空間26内を容易に往来できる。このとき、はしご35はトラス4の下弦材5に支持された足場支持部材34に固定されている。従って、保守者は、化粧板25に自身の荷重をかけることなく、トラス下空間26内を往来できる。このため、化粧板25は、厚さの薄い軽量のものを用いることができる。従って、トラス下空間26内で発生したオイル漏れや電気配線の不具合等のトラブルに対して迅速に対処することができるとともに、エスカレータ1の設置時に化粧板25の運びこみや取付けに要する労力の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータの模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエスカレータの一部破断斜視図である。図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエスカレータの一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 エスカレータ、4 トラス、9 外側板、12 下部機械室、13 下部機械室床、15 上部機械室、16 上部機械室床、14 上階側スプロケット(スプロケット)、18 踏段鎖、19 下階側スプロケット(スプロケット)、20 踏段、24 オイルパン、25 化粧板、26 トラス下空間、31a 上部点検口、31b 下部点検口、33 階段(足場手段)、34 足場支持部材、35 はしご(足場手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下階床間に架設されたトラスと、該トラスの上下階側のそれぞれに設置された上部機械室及び下部機械室と、該上部機械室及び該下部機械室のそれぞれに配設された一対のスプロケットに掛け渡された無端状の踏段鎖と、該踏段鎖に連結され、該踏段鎖の走行に連動して循環移動する踏段と、上記トラスの底部を覆って上記上部機械室から上記下部機械室に至るように延設されたオイルパンと、上記トラスの両側開口を閉口して、該トラスの下方に延出するように該トラスの両側部に取り付けられた一対の外側板と、上記オイルパン、上部機械室床、及び下部機械室床のそれぞれの下面と相対するように上記外側板に支持され、該オイルパン、該上部機械室床、及び該下部機械室床との間に上記上部機械室の下部から上記下部機械室の下部に至るトラス下空間を形成する化粧板と、を備えるエスカレータにおいて、
上記トラス下空間に開口するように上部機械室床及び下部機械室床のそれぞれにそれぞれ形成された上部点検口及び下部点検口と、
上記上部機械室の下部から上記下部機械室の下部に至るように上記トラス下空間に延設された足場手段と、
を備えることを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
上記足場手段は、上記化粧板の裏面に配設された階段であることを特徴とする請求項1記載のエスカレータ。
【請求項3】
上記足場手段は、上記トラス下空間内に延出するように上記トラスの延在方向に間隔をあけて該トラスに複数支持された足場支持部材に支持されて、上記上部点検口の真下から上記下部点検口の真下に至るように架設されたはしごであることを特徴とする請求項1記載のエスカレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−227386(P2009−227386A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73783(P2008−73783)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】