説明

エスカレータ

【課題】踏段へのガード板の取付構造、及び隣接するガード板の連結構造を工夫し、ガード板の取り付け及び連結に用いられる部材の摩耗を抑えて長寿命化を図ることができるエスカレータを得る。
【解決手段】乗降口間を循環走行する複数の踏段20と、扇形平板状に形成され、頂部側を、踏板21の幅方向の側面の奥行き方向の一端側の部位に、軸心方向が踏板21の幅方向に一致する第1回動軸心まわりに回動自在に連結されて、踏段20の連設方向に連なって配設される複数のガード板25と、それぞれ、一端を隣接するガード板25の一方のガード板25の頂部側に軸心方向が第1回動軸心と平行な第2回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端を一方のガード板の頂部側に隣接する他方のガード板25の弧側に軸心方向が第1回動軸心と平行な第3回動軸心まわりに回動自在に連結されて、隣接するガード板25を連結する連結アーム32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏段に取り付けられ、乗客の荷物等が、スカートガードと踏段との間に挟まれるのを未然に防止するガード板を有するエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータは、回動軸が後端部分の両側面に突設される踏段と、それぞれ、乗降口間を循環走行する踏段のピッチの長さを有する一辺を備え、弧の長さが踏段のライザーの弧の長さに相当する扇形形状をなし、回転軸に挿通されて踏段の両側に踏段の連設方向に連なるように取り付けられる複数のガード板と、を有している(例えば、特許文献1参照)。
各ガード板には、丸穴が一辺の一端近傍に形成され、一辺の長手方向に穴の長手方向が一致する長穴が、一辺の他端近傍に形成されている。そして、複数のガード板は、隣接するガード板の一方のガード板の丸穴と、他方のガード板の長穴に踏段の回動軸を遊嵌状態に挿通させて踏段に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−31074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、踏段は、乗客を搬送するための往路部、往路部の下方に位置する帰路部、及び往路部と帰路部との間を連結し、踏段の走行経路を反転させるための反転部からなる経路を循環走行する。このとき、反転部を走行する踏段のピッチは、往路部または帰路部を走行する踏段のピッチに比べて広がる。言い換えれば、反転部を走行する隣接する踏段の回動軸間の距離は、往路部及び帰路部を走行する隣接する踏段の回動軸間の距離に比べて長くなる。
【0005】
従って、踏段が反転部を通過する際、反転部を走行するときと、往路部または帰路部を走行するときの隣接する踏段の回転軸の距離の差を吸収するように、回動軸が長穴の長手方向に移動する。回動軸は、反転部を走行するたびに長穴の壁面を摺動しつつ長穴の長手方向に往復移動して摩耗されるので、寿命が短く、頻繁に取り換えなければならないという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、踏段へのガード板の取付構造、及び隣接するガード板の連結構造を工夫し、ガード板の取り付け及び連結に用いられる部材の摩耗を抑えて長寿命化を図ることができるエスカレータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のエスカレータは、それぞれ、矩形平板状の踏板、及び踏板の奥行き方向の一端側から裏面側に延出されたライザを有し、無端状に連結されて乗降口間を循環走行する複数の踏段と、それぞれ、踏板の奥行き方向に略一致する長さの一辺を有する扇形平板状に形成され、頂部側を、踏板の幅方向の側面の奥行き方向の一端側の部位に、軸心方向が踏板の幅方向に一致する第1回動軸心まわりに回動自在に連結されて、踏板の側面と所定の隙間をあけて平行に、かつ弧側を踏板の奥行き方向の他端側に配置し、他辺をライザ側に向けて、踏段の連設方向に連なって配設される複数のガード板と、それぞれ、一端を隣接するガード板の一方のガード板の頂部側に軸心方向が第1回動軸心と平行な第2回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端側を他方のガード板の弧側に軸心方向が第1回動軸心と平行な第3回動軸心まわりに回動自在に連結されて、隣接するガード板を連結する連結アームと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエスカレータによれば、踏段のピッチが変動したときに、連結アームが第2及び第3回動軸心の軸心まわりに小さな角度だけ回動して長手方向を変えるだけで、隣接するピッチの変動を吸収できる。従って、踏段が循環走行するときの第1回動軸心〜第3回動軸心に軸心を一致させて配置される軸と当該軸に支持される部材のとの間の摺動量が小さくなるので、ガード板の取り付け及び連結に用いられる部材の摩耗を抑制して長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの要部斜視図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】図3のA部拡大図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの要部斜視図である。
【図6】図5のVI−VI矢視要部断面図である。
【図7】図1のB部拡大図である。
【図8】図1のC部拡大図である。
【図9】図1のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図、図2はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの要部斜視図、図3は図1のIII−III矢視断面図、図4は図3のA部拡大図、図5はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの要部斜視図であり、一部を破断及び分解して図示している。図6は図5のVI−VI矢視要部断面図、図7は図1のB部拡大図、図8は図1のC部拡大図、図9は図1のD部拡大図であり、上部スプロケットを省略して図示している。
【0012】
図1において、エスカレータ1は、上下階床のそれぞれに設けられた乗降口2間に架設されたトラス3と、トラス3の上階側に設置された上部機械室4Aと、トラス3の下階側に設けられた下部機械室4Bと、上部機械室4Aに配設された電動機5と、上部機械室4Aに配設された駆動スプロケット6と、電動機5と駆動スプロケット6との間を連結し、電動機5の駆動に連動させて駆動スプロケット6を回転せしめる駆動鎖7と、を備えている。
【0013】
また、エスカレータ1は、駆動スプロケット6と同軸に連結され、駆動スプロケット6の回転に連動して回転する上部スプロケット8と、下部機械室4Bに配設された下部スプロケット9と、上部スプロケット8及び下部スプロケット9に無端状に巻き掛けられ、上部スプロケット8の回転により循環走行する踏段鎖10と、踏段鎖10に連結されて無端状に連なり、踏段鎖10の走行に連動して乗降口2間を循環走行する複数の踏段20と、踏段20の幅方向の両側に踏段20の走行方向に沿って立設されたスカートガード11と、を備えている。また、エスカレータ1は、円筒状に作製されて各踏段20の踏板21の幅方向の両側面に取り付けられ、軸心方向が踏板21の幅方向に一致する第1軸としての筒状軸31と、筒状軸31の軸心まわりに回動自在に筒状軸31を介して踏板21に連結され、20の幅方向の両側面のそれぞれとスカートガード11の間に、踏段20の連設方向に連設される複数のガード板25と、隣接するガード板25を連結するリンク機構30と、を備えている。
【0014】
踏段20は、図2及び図5に示されるように、踏面21aを有し、所定の幅及び奥行きを有する矩形平板状に形成された踏板21と、踏板21の裏面に連結されて踏板21を支持するブラケット22と、踏板21の奥行き方向の一端側から裏面側に延出されるライザ23と、を有する。また、踏段20は、軸方向を踏板21の幅方向に一致させてブラケット22に支持される踏段軸29と、踏段軸29の両端に回転自在に設けられた駆動ローラ24Aと、踏段軸29と平行な軸まわりに回転自在にブラケット22に設けられた追従ローラ24Bと、を備えている。
【0015】
踏板21の側面の幅方向両側、かつ奥行き方向の一端側の部位には、図5及び図6に示されるように、穴の深さ方向が踏板21の幅方向に一致する断面円形の軸配設穴21bが、所定の深さに形成されている。また、一対の環状の第1ベアリング溝21cが、軸配設穴21bの深さ方向に互いに離間して軸配設穴21bに形成されている。
【0016】
ブラケット22は、踏板21の幅方向に互いに離間して踏板21の裏面から突出されるように一対設けられている。また、踏段軸29は、踏板21の奥行き方向の他端側に位置する一対のブラケット22の部位に支持されている。また、追従ローラ24Bは、踏板21の奥行き方向の一端側に位置する一対のブラケット22の部位に取り付けられている。
【0017】
以上のように構成された踏段20は、踏段軸29を踏段鎖10に連結されて踏段鎖10の走行に連動して走行される。踏段20の循環走行の経路は、乗客を搬送するための往路部と、往路部の下方に位置する帰路部と、往路部と帰路部との間を連結する反転部と、を有する。
【0018】
また、往路部は、一方の乗降口2近傍から他方の乗降口に近傍に至るトラス3の中間部に水平面に対して所定の角度に傾斜する方向に延在する往路傾斜部と、一対の乗降口2の下部を含むトラス3の上端及び下端に設けられて水平方向に延在する往路側水平部と、隣接する踏段20の上下方向の間隔が狭くなるように往路傾斜部と往路水平部とを接続して設けられる往路移行部と、を備えている。
【0019】
また、帰路部は、往路傾斜部、往路水平部、及び往路移行部の下方で往路傾斜部、往路水平部、及び往路移行部と平行に延在する帰路傾斜部、帰路水平部、及び帰路移行部を有する。
なお、詳細には図示しないが、駆動ローラ24Aを案内する駆動ローラ案内レール及び追従ローラ24Bを案内する追従ローラ案内レールがトラス3内に踏段鎖10の延在方向に沿って延設されている。そして、駆動ローラ24A及び追従ローラ24Bは、駆動ローラ案内レール及び追従ローラ案内レール上を転動しながら踏段20が循環走行されるようになっている。
【0020】
ガード板25は、図5に示されるように、その外形が、扇形平板状に形成されている。一辺の長さは、踏板21の奥行方向の長さを有している。また、ガード板25の弧の曲率半径及び長さが、踏板21の幅方向に垂直なライザ23の断面において、弧状に構成されるライザ23の表面の曲率半径及び長さにおおよそ対応している。なお、ガード板25の弧と一辺とで構成される角部側が切り欠かれている。また、摩擦低減材としてのフッ素樹脂等が、ガード板25の表(おもて)面にコーティングされている。
【0021】
また、貫通穴26が、図6に示されるように、ガード板25の頂部近傍に形成されている。また、ガード板25には、貫通穴27が、弧の長手方向の中間部近傍の部位に形成されている。さらに、ガード板25には、軸配設穴21bと踏段軸29との間の距離をrとしたとき、貫通穴26を中心とする半径rの弧状の軸挿入切り欠き28が、ガード板25の他辺に開口するように形成されている。
【0022】
筒状軸31の外周面には、図6に示されるように、軸配設穴21bに形成された第1ベアリング溝21cに対応する一対の環状の第2ベアリング溝31aが、筒状軸31の軸方向に互いに離間して形成されている。また、筒状軸31の内周面には、一対の環状の第3ベアリング溝31bが、軸方向の位置を第2ベアリング溝31aの軸方向の位置に対応させて形成されている。
軸配設穴21b内に筒状軸31を挿入して第1及び第2ベアリング溝21c,31aを対応させたとき、踏板21の幅方向の側面とガード板25とは、僅かな隙間をあけて相対するようになっている。
【0023】
また、リンク機構30は、図5及び図6に示されるように、所定幅で所定の長さの矩形平板を長手方向の両端面をR形状にして構成され、一端及び他端近傍に貫通穴33a,33bが形成された連結アーム32、一端側を連結アーム32の裏面から突出させることなく貫通穴33aに挿入固定され、連結アーム32の表面側に突設される第2軸としての第1軸ピン35を備えている。
【0024】
また、リンク機構30は、軸方向が連結アーム32に直交するように連結アーム32の長手方向の他端側の貫通穴33bを介して連結アーム32に固定される軸受けとしてのDUブッシュ36、ガード板25に形成された貫通穴27を介してガード板25に固定されてガード板25の裏面側に延出される第3軸としての第2軸ピン38、及び筒状軸31に第1軸ピン35を軸周りに回転自在に支持する第2ベアリング球42を備えている。
【0025】
第1軸ピン35の外周面には、一対の第3ベアリング溝31bに対応する一対の環状の第4ベアリング溝35aが形成されている。
【0026】
DUブッシュ36は、例えば、青銅、リン青銅鋳物、ベリリウム青銅、鉛合金、及び軸受用アルミニウム合金などの合金や、アセタール、含油ポリオレフィン、含油ポリアミド、含油ポリエステル、及び四ふっ化エチレンなどの樹脂を材料として円筒状に作製したものや、円筒状部材の内周面を上記の樹脂材料でコーティングして作製したものが用いられる。
【0027】
なお、筒状軸31内に第1軸ピン35を筒状軸31の一端側から挿入して第3及び第4ベアリング溝31b,35aを対応させたとき、ガード板25と連結アーム32とは、僅かな隙間をあけて相対するようになっている。
【0028】
次いで、複数のガード板25のリンク機構30を用いた踏段20の幅方向の一側への取り付け構造について説明する。
筒状軸31は、軸心をガード板25に直交させ、貫通穴26を介して摩擦低減材がコーティングされているガード板25の表面側に突設されている。なお、筒状軸31はガード板25の裏面からは突出されていない。
【0029】
さらに、筒状軸31が、各踏段20の踏板21に形成された軸配設穴21bに同軸に挿入されている。複数の第1ベアリング球40が、軸配設穴21bの内面に形成された第1ベアリング溝21cと筒状軸31の外周面に形成された第2ベアリング溝31aの間に周方向に所定のピッチで介装されて、筒状軸31はベアリング球40を介して軸配設穴21bの内周面に支持される。
【0030】
これにより、ガード板25が、頂部側を各踏板21の幅方向の側面の奥行き方向の一端側に形成された軸配設穴21bに筒状軸31を介して連結される。このとき、表面が踏段20側に向けられた複数のガード板25が、スカートガード11と踏板21の側面との間に、踏段20の連設方向に連なって配置される。また、各ガード板25は、踏板21の側面と所定の隙間をあけて平行に、かつ弧側が踏板21の奥行き方向の他端側に配置されるとともに、他辺をライザ23側に向けて配置されている。このように踏板21に連結されたガード板25は、踏板21の幅方向に軸心方向が一致する第1回動軸心としての筒状軸31の軸心まわりに回動自在となる。なお、筒状軸31が軸配設穴21bに同軸に挿入されているので、軸配設穴21bの穴中心が、第1回同軸心に一致する。
【0031】
また、連結アーム32の一端側に突設された第1軸ピン35が、各筒状軸31の一端側から筒状軸31に同軸に挿入されている。また、複数の第2ベアリング球42が、筒状軸31の内周面に形成された第3ベアリング溝31bと第1軸ピン35の外周面に形成された第4ベアリング溝35aの間に周方向に所定ピッチで介装されて、第1軸ピン35が軸まわりに回動自在にベアリング球42を介して筒状軸31に支持されている。つまり、連結アーム32の一端が、軸心が第1回動軸心に一致する第2回動軸心としての第1軸ピン35の軸心まわりに回動自在に一端側をガード板25に連結されている。
【0032】
さらに、隣接するガード板の一方のガード板25に連結された連結アーム32に取り付けられたDUブッシュ36に、他方のガード板25の裏面に延出された第2軸ピン38が挿通され、DUブッシュ36と第2軸ピン38とが互いに回動可能に連結されている。
つまり、連結アーム32の他端が、隣接するガード板25の一方の頂部側に隣接する他方のガード板25の弧側の部位に、第3回動軸心としての第2軸ピン38の軸心まわりに回動自在に連結されている。
また、C型止め輪39が、図6に示されるように、第2軸ピン38のDUブッシュ36からの延出部に嵌められ、第2軸ピン38がDUブッシュ36から抜けることが防止されている。以上のように、踏段20の幅方向の一側に、複数のガード板25がリンク機構30により連結されて取り付けられている。
【0033】
同様に、複数のガード板25が、踏段20の幅方向の他側に取り付けられている。
【0034】
このようにガード板25が踏段20に取り付けられているので、踏段20のピッチが変動しても、言い換えれば、隣接する踏段20の一方の踏段20の筒状軸31と他方の踏段20の筒状軸31との間の距離が変動しても、連結アーム32が、第1軸ピン35及び第2軸ピン38まわりに回動し、筒状軸31間の距離の変動を吸収するように長手方向を変えてガード板25間に延在される。なお、ここでいう踏段20のピッチは、踏段20の走行方向に沿った踏板21のピッチをいうものとする。
【0035】
また、隣接する踏段20が、反転部を走行する場合には、踏段20が筒状軸31まわりに回動する。従って、踏段20の走行はガード板25の取り付けによって規制されることなくスムーズに行われる。
【0036】
次いで、エスカレータ1の動作を説明する。
往路傾斜部を走行する隣接する踏段20は、水平に配置される踏板21の上下方向の間隔を一定にして走行される。つまり、隣接する踏段20の筒状軸31の上下方向の間隔も一定に保たれる。これにより、ガード板25のそれぞれの一辺が、隣接する踏段20に同軸に支持される筒状軸31の軸中心を結ぶ直線に沿って延在される。このとき、ガード板25は、踏板21の幅方向から見て、隣接する踏段20の踏板21の奥行き方向の一端間を結ぶ直線と踏板21及びライザ23で囲まれるガード領域を遮るように踏面21aの上方に突出される。
【0037】
また、隣接するガード板25は、一方のガード板25の頂部側のおおよそ下方に、他方のガード板25の弧側が配置され、連結アーム32は、隣接するガード板25の一方のガード板25の頂部側と、他方のガード板25の弧側の部位とに連結されるので、おおよそ上下方向に延在される。
【0038】
また、往路移行部では、隣接する踏段20の踏板21の上下方向の間隔が、反転部に向かって徐々に狭くなる。従って、隣接する踏段20の筒状軸31間の上下方向の間隔も反転部に向かって狭まる。これに伴い、連結アーム32は、上下方向から水平方向に向かう方向に若干傾斜され、ガード板25が、第2軸ピン38の軸周りに回動して踏面21aの下方に没する方向に走行される。つまり、踏段20を踏板21の幅方向から見たときのガード板25の踏面21aより上方への突出量は、踏段20が反転部に近づくにつれ、ガード領域の踏板21の幅方向の両側の部位の面積の減少に連動して減少される。このとき、踏段軸29が、ガード板25に形成された軸挿入切り欠き28に挿入され、踏段軸29とガード板25とが干渉することはない。
【0039】
また、踏段20が往路水平部に近づくにつれ、隣接する一方のガード板25に一端が連結される連結アーム32は、踏段20が踏段傾斜部を走行していた図7の状態に比べ、図8に示されるように、その長手方向を水平に近づく方向に若干変えるように第1軸ピン35や第2軸ピン38まわりに若干回動する。つまり、連結アーム32が、隣接する踏段20の筒状軸31の距離の変動を吸収して延在するように、言い換えれば、隣接するガード板25の隙間の変動を吸収して延在するように連結アーム32の長手方向が変化する。
【0040】
また、往路水平部では、隣接する踏段20の筒状軸31の高さが一致するので、ガード領域はなくなり、ガード板25の一辺(上端)が、踏面21aと略面一の位置に配置される。
【0041】
なお、踏段20が帰路部を走行する場合、踏板21の幅方向から見て、ガード板25は、往路部を走行する踏段20での説明と同様に踏板21に対して出没する。
【0042】
また、反転部のそれぞれを通過する踏段20は、図9に示されるように、踏面21aの水平面に対する角度を徐々に変え、反転部の入口と出口とで180度回転する。
このように反転部を走行する踏段20のピッチは、往路部及び帰路部を走行する踏段20のピッチに比べて広くなり、反転部の中間部で最大となる。これにより反転部を走行する隣接する踏段20の筒状軸31間の距離も、往路部及び帰路部を走行する踏段20の筒状軸31間の距離に比べて長くなり、反転部の中間部で最大となる。また、反転部の中間部程隣接する踏段20の踏面21aの互いの間の角度が大きくなる。
【0043】
反転部では、隣接する踏段20の筒状軸31間の距離、及び隣接する踏面21aの互いの間の角度の変動に応じて、連結アーム32が、第2軸ピン38及び筒状軸31まわりに回動するとともに、踏段20が筒状軸31まわりに回動する。隣接する踏段20の筒状軸31間の距離が最も離れる場合でも、連結アーム32が、第1軸ピン35や第2軸ピン38の軸心まわりに小さな角度回動するだけで、連結アーム32の延在方向が、隣接するガード板25の間の隙間の変動を吸収するように変化する。また、反転部を踏段20が通過するときの踏段20の筒状軸31まわりの最大の回動角度は、第2軸ピン38まわりの連結アーム32の回動角度と同等もしくはそれ以下となる。
以上のようにエスカレータ1の踏段20は、踏段20に取り付けられたガード板25とともに循環走行される。
【0044】
この発明のエスカレータ1は、それぞれ、踏板21の奥行き方向に略一致する長さの一辺を有する扇形平板状に形成され、頂部側を、踏板21の幅方向の側面の奥行き方向の一端側の部位に、軸心方向が踏板21の幅方向に一致する第1回動軸心まわりに回動自在に連結されて、踏板21の側面と所定の隙間をあけて平行に、かつ弧側を踏板21の奥行き方向の他端側に配置され、他辺をライザ23側に向けて、踏段20の連設方向に連なって配設される複数のガード板と、それぞれ、一端を隣接するガード板25の一方のガード板25の頂部側に軸心方向が第1回動軸心に一致する第2回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端を一方のガード板25の頂部側に隣接する他方のガード板25の弧側に軸心方向が第1回動軸心と平行な第3回動軸心まわりに回動自在に連結されて、隣接するガード板25を連結する複数の連結アーム32と、を備えている。
【0045】
以上の構成のエスカレータ1では、踏段20が往路傾斜部を走行するとき、ガード板25は、踏板21の幅方向の両端のそれぞれとスカートガード11との間で、ガード領域を遮るように踏面21aの上方に突出される。ガード板25は踏段20と一体に移動するので踏段20のガード板25に対する相対速度が0となる。これにより、スカートガード11と踏段20の踏板21との間に乗客の荷物等が挟まることが未然に防止され、また、踏板21とガード板25との間に荷物等が挟まることも確実に防止できる。また、摩擦低減材が、踏段20側に配置されるガード板25の表面にコーティングされている。即ち、踏段20が往路傾斜部から往路水平部または往路水平部から往路傾斜部に移動するとき、ガード板25が踏面21aから出没されるが、荷物等がガード板25に接触してもガード板25に対して滑るので、荷物等がガード板25と踏板21との間に挟まることを極力防止できる。
【0046】
ここで、前述したように、従来のエスカレータでは、踏段に突設された第1回動軸がガード板に形成した長穴に挿通され、踏段が反転部を走行するときと、往路部または帰路部を走行するときの隣接する踏段の回転軸間の距離の差を吸収するように、当該長穴の長手方向にガード板を移動可能に構成していた。このため、踏段が反転部を通過するときの、第1回動軸と長穴の壁面との摺動量が大きくなっていた。
【0047】
これに対し、エスカレータ1では、例えば、踏段20が反転部を通過するとき、踏段20のピッチが離れて隣接する踏段20の第1回動軸心間の距離の差が変動しても、連結アーム32が、軸心を第2及び第3回動軸心として配置される第1軸ピン35及び第2軸ピン38の軸まわりに小さな角度回動するだけで、連結アーム32は、踏段20のピッチの差を吸収するように長手方向を変えて延在される。このとき、軸心を第1回動軸心として配設される筒状軸31まわりに回動される踏段20の回動角度も小さい。
【0048】
従って、踏段20が反転部を通過するときに、筒状軸31、第1軸ピン35、及び第2軸ピン38と、これらに接触する部材との摺動量が小さくなるので、従来のエスカレータの第1回動軸がガード板と摺動して摩耗されるのに比べ、筒状軸31、第1軸ピン35、及び第2軸ピン38とこれらの軸31,35,38に当接する部材との間の摺動量が小さくなる。つまり、ガード板25の取り付け及び連結に用いられる部材の摩耗を抑制して長寿命化を図ることができる。
【0049】
また、ベアリング球40を介して筒状軸31が軸配設穴21bの内周面に支持され、ベアリング球42を介して第1軸ピン35が筒状軸31に支持されているので、筒状軸31とベアリング球40、または筒状軸31及び第1軸ピン35とベアリング球42との摺動は、スムーズに行われる。これにより、筒状軸31及び第1軸ピン35のさらなる長寿命化が図れる。
【0050】
なお、この実施の形態では、第1回動軸心と第2回動軸心とは一致するものとして説明したが、第1回動軸心と第2回動軸心は、ガード板25の頂部側の部位を通過し、かつ軸心方向が踏板21の横幅方向に平行であれば、一致するものに限定されない。この場合でも、第1回動軸心を軸心として配設される筒状軸31及び第2回動軸心を軸心として配設される第1軸ピン35の長寿命化を図ることができる。
【0051】
また、軸配設穴21bを踏板21の形成し、ガード板25に固定された筒状軸31を軸配設穴21bに挿入し、ガード板25を筒状軸31の軸心まわりに回動自在に踏板21に連結するものとして説明したが、例えば、ガード板25は、軸ピンを踏板21の側面に固定し、ガード板25を軸ピンまわりに回動自在に取り付けて踏板21に連結するなどしてもよい。
ただし、軸配設穴21bに筒状軸31を挿入してガード板25を踏板21に連結する構成とすれば、踏板21の側面に固定した軸ピンを取り替えるより、筒状軸31を取り替えるときの作業が容易となる。
また、軸受けは、滑り軸受けの一種のDUブッシュ36であるものとして説明したが、転がり軸受けを用いても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 エスカレータ、2 乗降口、20 踏段、21 踏板、21b 軸配設穴、23 ライザ、25 ガード板、31 筒状軸(第1軸)、32 連結アーム、35 第1軸ピン(第2軸)、36 DUブッシュ(軸受け)、38 第2軸ピン(第3軸)、40 第1ベアリング球、42 第2ベアリング球。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、矩形平板状の踏板、及び上記踏板の奥行き方向の一端側から裏面側に延出されたライザを有し、無端状に連結されて乗降口間を循環走行する複数の踏段と、
それぞれ、上記踏板の奥行き方向に略一致する長さの一辺を有する扇形平板状に形成され、頂部側を、上記踏板の幅方向の側面の奥行き方向の一端側の部位に、軸心方向が上記踏板の幅方向に一致する第1回動軸心まわりに回動自在に連結されて、上記踏板の側面と所定の隙間をあけて平行に、かつ弧側を上記踏板の奥行き方向の他端側に配置され、他辺をライザ側に向けて、上記踏段の連設方向に連なって配設される複数のガード板と、
それぞれ、一端を隣接する上記ガード板の一方のガード板の頂部側に軸心方向が上記第1回動軸心と平行な第2回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端を上記一方のガード板の頂部側に隣接する他方のガード板の弧側に軸心方向が上記第1回動軸心と平行な第3回動軸心まわりに回動自在に連結されて、隣接する上記ガード板を連結する複数の連結アームと、を備えることを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
断面円形の軸配設穴が、上記踏板の幅方向の側面の奥行き方向の一端側の部位に、穴中心を上記第1回動軸心に一致させて凹設され、
第1軸が、軸心を上記ガード板の表面に直交させて上記表面の頂部側に突設され、
上記ガード板が、上記第1軸を上記軸配設穴に挿入して、上記踏板に上記第1回動軸心まわりに回動自在に連結されていることを特徴とする請求項1記載のエスカレータ。
【請求項3】
上記第1軸は円筒状に作製され、
第2軸が、上記連結アームの一端側に突設され、
上記連結アームの一端が、上記第2軸を上記第1軸に挿入して、上記ガード板に上記第1回動軸心まわりに回動自在に連結されていることを特徴とする請求項2記載のエスカレータ。
【請求項4】
上記第1軸は、第1ベアリング球を介して上記軸配設穴の内周面に支持されることを特徴とする請求項3記載のエスカレータ。
【請求項5】
第1軸ピンは、第2ベアリング球を介して上記第1軸の内周面に支持されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエスカレータ。
【請求項6】
軸受けが、軸心を上記第3回動軸心に一致させて上記連結アームの他端側及び上記他方のガード板の一方に取り付けられ、第3軸が、軸心を上記第3回動軸心に一致させて上記連結アームの他端側及び上記他方のガード板の他方に取り付けられ、上記連結アームの他端が、上記第3軸を上記軸受けに挿入して、上記ガード板に上記第3軸の軸心まわりに回動自在に連結されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエスカレータ。
【請求項7】
摩擦低減材が、上記踏段側に配置される上記ガード板の面にコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のエスカレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−126641(P2011−126641A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285302(P2009−285302)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】