説明

エステル交換触媒としての金属アセチルアセトネート

【課題】 脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造のための、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとのエステル交換反応に適当な触媒を提供すること。
【解決手段】 PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネートを含んでなる触媒の存在下、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとを反応させることを含む、数平均分子量500〜5000g/molを有するオリゴカーボネートポリオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとをエステル交換することによる脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造のための触媒としてのメンデレーエフの周期表元素(PTE)の原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴカーボネートポリオールは、例えば、プラスチック、被覆物および接着剤の製造において、重要な前駆体である。それらは、イソシアネート、エポキシド、(環式)エステル、酸または酸無水物と反応し得る(特許文献1:独国特許公開DE-A 1 955 902)。それらは、ホスゲン(例えば、特許文献2:独国特許公開DE-A 1 595 446)、ビスクロロ炭酸エステル(例えば、特許文献3:独国特許公開DE-A 857 948)、ジアリールカーボネート(例えば、特許文献4:独国特許公開DE-A 101 255 57)、環式カーボネート(例えば、特許文献5:独国特許公開DE-A 2 523 352)またはジアルキルカーボネート(例えば、特許文献6:国際公開WO 2003/002630)との反応によって、脂肪族ポリオールから製造され得る。
【0003】
アリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)を、脂肪族ポリオール(例えば、1,6-ヘキサンジオール)と反応させる場合、遊離するアルコール性化合物(例えば、フェノール)を単に除去することにより反応平衡を変化させることによって、十分な反応変換が達成され得ることは既知である(例えば、特許文献7:欧州特許公開EP-A 0 533 275)。
【0004】
また、アルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート)が使用される場合、エステル交換触媒、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、およびそれらの酸化物、アルコキシド、炭酸塩、ホウ酸塩または有機酸の塩も、しばしば使用される(例えば、特許文献6:国際公開WO 2003/002630)。
【0005】
さらに、好適には、エステル交換触媒として、スズまたは有機スズ化合物、例えば、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ジブチルスズジラウレートまたはジブチルスズオキシド(特許文献5:独国特許公開DE-A 2 523 352)、ならびに、チタンの化合物、例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドまたはチタンジオキシドを使用することが挙げられる(例えば、特許文献8:欧州特許EP-B 0 343 572、特許文献6:国際公開WO 2003/002630)。
【0006】
しかしながら、アルキルカーボネートと脂肪族ポリオールとの反応による脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造のための先行技術のエステル交換触媒は、幾つかの欠点を有する。最近、有機スズ化合物は、ヒトに対する潜在的な発癌物質と認識された。したがって、それらは、以前の好適な化合物、例えば、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ジブチルスズオキシドまたはジブチルスズラウレートが触媒として使用される場合、オリゴカーボネートポリオールのその後の生成物中にも残留する望ましくない構成成分である。
【0007】
強塩基、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属あるいはそれらのアルコキシドが使用される場合、オリゴマー化が完了次第、さらなる工程において生成物を中和することが必要である。対照的に、Ti化合物が触媒として使用される場合、得られた生成物の保存中に、望ましくない変色(黄変)が起こり得る。これは、Ti(IV)化合物に加えてTi(III)化合物が存在することを含む因子によって、および/またはチタンの錯体形成傾向によって、もたらされる。
【0008】
この望ましくない変色に加えて、チタン含有触媒は、ポリウレタン原料としてのヒドロキシル末端オリゴカーボネートのさらなる反応において、イソシアネート含有化合物に対して高い活性を有する。この特性は、例えば、キャストエラストマーまたは熱可塑性ポリウレタン(TPU)の製造の場合のように、高められた温度でのチタン触媒オリゴカーボネートポリオールと芳香族(ポリ)イソシアネートとの反応の場合、特に顕著である。この欠点からの結果は、余りに厳しいので、チタン含有オリゴカーボネートポリオールの使用に起因して、反応混合物のポットライフまたは反応時間は、これらの適用分野についてのこのようなオリゴカーボネートポリオールの使用が、もはや不可能になる程度に短縮される。この欠点を除くため、生成物中に残留するエステル交換触媒は、合成完了後の少なくとも一つのさらなる工程において、極めて実質的に不活性化される。
【0009】
特許文献9:欧州特許EP-B 1 091 993は、リン酸の添加による不活性化を教示する。また、一方、特許文献10:米国特許US-A 4 891 421は、適当量の水を生成物に添加し、そして不活性化が完了次第、それを蒸留により再度除去することによる、チタン化合物の加水分解による不活性化を提案する。
【0010】
また、以前使用された触媒では、高められた温度にて形成される副産物(例えば、エーテル基またはビニル基)の形成を、実質的に妨げるため、反応温度(典型的に150℃と230℃の間)を低下させることも不可能であった。その後の重合反応、例えば、多官能性(ポリ)イソシアネートを用いるポリウレタン反応の場合の連鎖停止剤として、これらの望ましくない末端基は、ネットワーク密度の低下を導くので、乏しい生成物特性(例えば、耐溶媒性または耐酸性)が導かれる。
【0011】
さらに、先行技術から既知の触媒を用いて製造されるオリゴカーボネートポリオールは、エーテル基(例えば、メチルエーテル、ヘキシルエーテルなど)を高含量で有する。オリゴカーボネートポリオール中、これらのエーテル基が存在することは、例えば、このようなオリゴカーボネートポリオールに基づくキャストエラストマーの不十分なホットエア安定性を導く。なぜなら、該物質中のエーテル結合は、これらの条件下で開裂し、したがって物質の欠損を導くからである。
【0012】
特許文献11:独国特許出願第10321149.7号(これは、本出願の優先日時点で公開されていない)において、イッテルビウムのアセチルアセトネートは、脂肪族オリゴカーボネートポリオールのエステル交換のための効果的な触媒として記載されている。
【特許文献1】独国特許公開DE-A 1 955 902
【特許文献2】独国特許公開DE-A 1 595 446
【特許文献3】独国特許公開DE-A 857 948
【特許文献4】独国特許公開DE-A 101 255 57
【特許文献5】独国特許公開DE-A 2 523 352
【特許文献6】国際公開WO 2003/002630
【特許文献7】欧州特許公開EP-A 0 533 275
【特許文献8】欧州特許EP-B 0 343 572
【特許文献9】欧州特許EP-B 1 091 993
【特許文献10】米国特許US-A 4 891 421
【特許文献11】独国特許出願第10321149.7号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造のための、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとのエステル交換反応に適当な触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、本発明にしたがってPTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属のアセチルアセトネート化合物を、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとのエステル交換反応のための触媒として使用することによって、達成される。
【0015】
本発明は、PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネート触媒の存在下、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとを反応させることによる、数平均分子量500〜5000g/molを有するオリゴカーボネートポリオールの製造方法に関する。また、本発明は、本方法より得られたオリゴカーボネートポリオールに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のオリゴカーボネートポリオールの製造方法によれば、例えば、マスキング剤(例えば、リン酸、ジブチルホスフェートまたはシュウ酸)または沈澱試薬(例えば、水)を添加することによる、エステル交換触媒の最終的な不活性化を省略することができる。したがって、本発明によって得られる金属アセチルアセトネート含有オリゴカーボネートポリオールは、さらなる処理をせずに、原料として、例えば、ポリウレタンの製造に適当である。
【0017】
また、本発明のオリゴカーボネートポリオールは、先行技術の触媒を用いて製造されたオリゴカーボネートジオールよりも低いエーテル基含量を有する。また、本発明のオリゴカーボネートポリオールは、先行技術のオリゴカーボネートジオールを用いて製造されたプレポリマーよりも良好な保存安定性を示す。さらに、本発明のオリゴカーボネートジオールから製造されたキャストエラストマーは、より高いホットエア安定性を有する。
【0018】
さらに、PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネートは、他のエステル化またはエステル交換反応の触媒反応、例えば、ポリエステルまたはポリアクリレートの製造に、有利に使用され得る。また、該触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に悪影響を及ぼさないので、さらなる反応の間、生成物中に残留することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属のアセチルアセトネート化合物は、好適には、イットリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよび/またはルテチウムのアセチルアセトネート、より好適には、イットリウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムおよび/またはエルビウムのアセチルアセトネートである。
【0020】
上記アセチルアセトネート化合物中の金属は、好適には、+IIIの酸化状態で存在する。イットリウム(III)アセチルアセトネートは、触媒として特に好適である。
【0021】
本発明にしたがって使用されるアセチルアセトネートは、固体として、または溶液状態(例えば、反応物質の一つ中に溶解した状態)のいずれかで、上記方法に使用され得る。触媒の濃度は、使用される反応物質の総重量に基づいて、0.01ppm〜10000ppm、好適には0.1ppm〜5000ppm、より好適には0.1ppm〜1000ppmである。本発明の方法において、単独の金属アセチルアセトネートまたは金属アセチルアセトネートの混合物のいずれも、触媒として使用され得る。
【0022】
エステル交換反応のための反応温度は、好適には40℃〜250℃、より好適には60℃〜230℃および最も好適には80℃〜210℃である。エステル交換反応は、大気圧下、または10-3〜10barの低減されたまたは高められた圧力下のいずれかで行われ得る。脂肪族ポリオールに対する有機カーボネートの比は、達成されるべきカーボネートポリオールの所望の分子量(500〜5000g/mol)によって決定される。
【0023】
適当な有機カーボネートとしては、簡単な製造および良好な入手可能性について既知である、アリール、アルキルまたはアルキレンカーボネートが挙げられる。その例としては、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチレンカーボネートが挙げられる。好適には、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート、特にはジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートが挙げられる。
【0024】
有機カーボネートのための反応パートナーとしては、直鎖状、環式、分枝状、非分枝状、飽和または不飽和であり得る、OH官能価≧2を有する、2〜100個の炭素原子を有する(第一級、第二級または第三級)脂肪族アルコールが挙げられる。これらのポリオールのヒドロキシル官能価は、好適には最大で10、より好適には最大で6、および最も好適には最大で3である。
【0025】
その例としては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチルヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ダイマージオールおよびジエチレングリコールが挙げられる。
【0026】
本発明によれば、OH官能価≧2を有する、(直鎖状、環式、分枝状、非分枝状の、飽和または不飽和の)、(第一級、第二級または第三級)脂肪族アルコールを用いるラクトンまたはエポキシドの開環反応によって得られたポリオール、例えば、ε-カプロラクトンと1,6-ヘキサンジオールとの付加物、またはε-カプロラクトンとトリメチロールプロパンとの付加物、およびそれらの混合物を使用することが好適である。
【0027】
最後に、また、使用される反応物質は、上記ポリオールの混合物であり得る。
好適には、OH官能価≧2を有する、脂肪族または脂環族の、分枝状または非分枝状の、第一級または第二級のポリオールが挙げられる。特に好適には、官能価≧2を有する、脂肪族の、分枝状または非分枝状の第一級ポリオールが挙げられる。
【0028】
上記アセチルアセトネートが使用される場合、例えば、マスキング剤(例えば、リン酸、ジブチルホスフェートまたはシュウ酸)または沈澱試薬(例えば、水)を添加することによる、エステル交換触媒の最終的な不活性化を省略することができる。したがって、得られる金属アセチルアセトネート含有オリゴカーボネートポリオールは、さらなる処理をせずに、原料として、例えば、ポリウレタンの製造に適当である。
【0029】
本発明のオリゴカーボネートポリオールは、先行技術の触媒を用いて製造されたオリゴカーボネートジオールよりも低いエーテル基含量を有する。このことは、それらから製造されるその後の生成物(例えば、NCO末端プレポリマー)の特性に直接影響を与える。本発明のオリゴカーボネートポリオールは、先行技術のオリゴカーボネートジオールを用いて製造されたプレポリマーよりも良好な保存安定性を示す。さらに、これらのオリゴカーボネートジオールから製造されたキャストエラストマーは、より高いホットエア安定性を有する。
【0030】
さらに、また、PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネートは、他のエステル化またはエステル交換反応の触媒反応、例えば、ポリエステルまたはポリアクリレートの製造に、有利に使用され得ることが見出された。次いで、該触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に悪影響を及ぼさないので、さらなる反応の間、生成物中に残留することができる。
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。実施例中、全ての部およびパーセンテージは、他に示さない限り、重量基準である。
【実施例】
【0032】
以下の実施例に記載されたNCO含量は、DIN EN ISO 11909にしたがって3回測定により決定した。粘度は、DIN EN ISO 3219にしたがって、Haake(カールスルーエ、独国)からのRotoVisco(登録商標)機器を用いることにより決定した。
【0033】
理論上のヒドロキシル官能性の目的化合物とは異なり、末端メチルエーテル基を有する実施例2および3に列挙された化合物の含量は、H NMR分析および対応するシグナルの積分評価により決定した。報告された含量は、2個の末端ヒドロキシル基を有する理論上の目的化合物1モルに基づく、列挙された化合物の画分とみなされ得る。
【0034】
実施例1
ロールフランジガラス容器(20ml)中、ジメチルカーボネート(3.06g)と1-ヘキサノール(6.94g)を、モル比1:2で、いずれの場合も一定量(5.7・10-6mol)の触媒(表1参照)と一緒に混合し、そして、ガス出口を含む天然ゴム製のセプタムでシールした。使用した触媒が室温で固体状態であった場合、最初に、反応物質の一つに溶解した。反応混合物を攪拌しながら6時間80℃に加熱した。室温に冷却後、生成物のスペクトルを、適切であれば質量分析と組み合わせた、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。反応生成物(特に、使用したエステル交換触媒の活性の尺度として検出され得る、メチルヘキシルカーボネートおよびジヘキシルカーボネート)の含量は、特定のガスクロマトグラムの積分評価により定量した。これらの活性調査の結果を、表1に列挙する。
【0035】
【表1】

【0036】
上記実験から明らかなように、本発明にしたがって使用されるべき金属アセチルアセトネートは、エステル交換触媒として、オリゴカーボネートポリオールの製造に非常に適当である。また、実験番号7および10は、全ての遷移金属アセチルアセトネートが、エステル交換反応の触媒反応に適当でないことを示す。
【0037】
実施例2
イットリウム(III)アセチルアセトネートを使用する脂肪族オリゴカーボネートジオールの製造
蒸留付属装置、攪拌機および受け器を備えた加圧反応器(5l)に、まず、0.02gのイットリウム(III)アセチルアセトネートと一緒に1759gの1,6-ヘキサンジオールを充填した。窒素圧2barを付与し、混合物を160℃に加熱した。その後、1245.5gのジメチルカーボネートを、同時に圧力を3.9barに上昇させながら、3時間以内に計量供給した。その後、反応温度を185℃に上昇させ、そして反応混合物を1時間攪拌した。最後に、さらなる1245.5gのジメチルカーボネートを、圧力を7.5barに上昇させながら、3時間以内に計量供給した。添加完了後、圧力を8.2barに上昇させながら、混合物をさらに2時間攪拌した。エステル交換法の全体に渡って、蒸留器および受け器への通路を常に開けておき、形成されたメタノールを、ジメチルカーボネートとの混合物の状態で、留去できるようにした。最後に、反応混合物を15分以内に標準圧力まで減圧し、温度を150℃に低下させ、そして混合物をこの温度でさらに1時間蒸留した。その後、過剰のジメチルカーボネートおよびメタノールを除去し、そして、圧力を10mbarに低下させることによって、末端OH基からキャップを外した(活性化した)。2時間後、温度を最終的に180℃まで1時間以内に上昇させ、そしてさらに4時間維持した。得られたオリゴカーボネートジオールは、OH価5mgKOH/gを有した。
【0038】
反応混合物を曝気し、185gの1,6-ヘキサンジオールを混合し、そして標準圧力下、6時間180℃に加熱した。その後、圧力を180℃で6時間10mbarに低下させた。
曝気および反応混合物の室温への冷却後、以下の特性データを有する無色のワックス様オリゴカーボネートジオールを得た:M=2000g/mol;OH価=56.5mgKOH/g;メチルエーテル含量:<0.1mol%;粘度:2800mPas(75℃)。
【0039】
実施例3(比較例)
既知の先行技術の触媒を使用する脂肪族オリゴカーボネートジオールの製造
蒸留付属装置、攪拌機および受け器を備えた加圧反応器(5l)に、まず、0.02gのチタンテトライソプロポキシドと一緒に1759gの1,6-ヘキサンジオールを充填した。窒素圧2barを付与し、混合物を160℃に加熱した。その後、622.75gのジメチルカーボネートを、同時に圧力を3.9barに上昇させながら、1時間以内に計量供給した。その後、反応温度を180℃に上昇させ、そして、さらなる622.75gのジメチルカーボネートを1時間以内に添加した。最後に、さらなる1245.5gのジメチルカーボネートを、圧力を7.5barに上昇させながら、185℃にて2時間以内に計量供給した。添加完了後、混合物をこの温度でさらに1時間攪拌した。エステル交換法の全体に渡って、蒸留器および受け器への通路を常に開けておき、形成されたメタノールを、ジメチルカーボネートとの混合物の状態で、留去できるようにした。最後に、反応混合物を15分以内に標準圧力まで減圧し、温度を160℃に低下させ、そして混合物をこの温度でさらに1時間蒸留した。その後、過剰のメタノールおよびジメチルカーボネートを除去し、そして、圧力を15mbarに低下させることによって、末端OH基からキャップを外した(活性化した)。これらの条件下でのさらなる4時間の蒸留後、反応混合物を曝気した。得られたオリゴカーボネートジオールは、OH価116mgKOH/gを有した。次いで、反応混合物を60gのジメチルカーボネートと混合し、そして圧力2.6barにて6時間185℃に加熱した。
その後、圧力を185℃にて8時間15mbarに低下させた。曝気、触媒不活性化剤として0.04gのジブチルホスフェートを用いる反応生成物の仕上げ、そして反応混合物の室温への冷却後、以下の特性データを有する無色のワックス様オリゴカーボネートジオールを得た:M=2000g/mol;OH価=56.5mgKOH/g;メチルエーテル含量:3.8mol%;粘度:2600mPas(75℃)。
【0040】
実施例2で得られたオリゴカーボネートジオールのエーテル含量は、実施例3で得られたオリゴカーボネートジオールのエーテル含量よりも明らかに低い。このことは、これらのポリオールから製造されたキャストエラストマーのホットエア安定性に直接影響を及ぼす。
【0041】
実施例4
ポリウレタンプレポリマーを製造するための原料としての実施例2からの脂肪族オリゴカーボネートジオールの使用
攪拌機および還流冷却器を備えた三ツ口フラスコ(250ml)に、80℃にて、まず、50.24gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを充填した。次いで、80℃に加熱した実施例2からの脂肪族オリゴカーボネートジオール(99.76g)を、窒素雰囲気下、ゆっくりと添加した(ヒドロキシル基に対するイソシアネート基の当量比1.00:0.25)。添加完了後、混合物をさらに30分間攪拌した。
以下の特性データを有する液体の高粘度のポリウレタンプレポリマーを得た:NCO含量:8.50重量%;粘度:6600mPas(70℃)。
その後、プレポリマーを、80℃にてさらに72時間保存し、次いで、粘度およびNCO含量をチェックした。保存後、以下の特性データを有する液体生成物を得た:NCO含量:8.40重量%;粘度:7000mPas(70℃)(粘度上昇6.1%に相当)。
【0042】
実施例5(比較例)
ポリウレタンプレポリマーを製造するための原料としての実施例3からの脂肪族オリゴカーボネートジオールの使用
攪拌機および還流冷却器を備えた三ツ口フラスコ(250ml)に、80℃にて、まず、50.24gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを充填した。次いで、80℃に加熱した実施例3からの脂肪族オリゴカーボネートジオール(99.76g)を、窒素雰囲気下、ゆっくりと添加した(ヒドロキシル基に対するイソシアネート基の当量比1.00:0.25)。添加完了後、混合物をさらに30分間攪拌した。
以下の特性データを有する液体の高粘度のポリウレタンプレポリマーを得た:NCO含量:8.5重量%;粘度:5700mPas(70℃)。
その後、プレポリマーを、80℃にてさらに72時間保存し、次いで、粘度およびNCO含量をチェックした。保存後、固体(ゲル状)生成物を得た。
【0043】
実施例4および5の粘度の比較から明らかなように、実施例5からのプレポリマーの粘度は、保存中に、それがゲル状となるまで大きく上昇するが、実施例4における粘度の上昇(6.4%)は、臨界値20%よりも十分に低い。
【0044】
一以上の本発明の触媒を使用して製造された脂肪族オリゴカーボネートポリオールは、既知の先行技術の触媒(これらの既知の触媒は、さらに「不活性化」されるけれども)を用いて製造されたものと比較した場合、(ポリ)イソシアネートと反応して(ポリ)ウレタンを形成することに関して、明らかに低い、したがって、より有利な活性を有することは明らかである。
【0045】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネートを含んでなる触媒の存在下、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとを反応させることを含む、数平均分子量500〜5000g/molを有するオリゴカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項2】
触媒は、イットリウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムおよび/またはエルビウムに基づく金属アセチルアセトネートを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒は、イットリウム(III)アセチルアセトネートを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
温度80〜210℃にて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記脂肪族ポリオールは、OH官能価≧2を有する、脂肪族の、分枝状または非分枝状の第一級ポリオールを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記脂肪族ポリオールは、OH官能価≧2を有する、脂肪族の、分枝状または非分枝状の第一級ポリオールを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
上記脂肪族ポリオールは、OH官能価≧2を有する、脂肪族の、分枝状または非分枝状の第一級ポリオールを含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
PTEの原子番号39、57、59〜69または71を有する金属に基づく金属アセチルアセトネートを含んでなる触媒の存在下、有機カーボネートと脂肪族ポリオールとを反応させることを含む方法により製造された、数平均分子量500〜5000g/molを有するオリゴカーボネートポリオール。
【請求項15】
触媒は、イットリウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムおよび/またはエルビウムに基づく金属アセチルアセトネートを含んでなる、請求項14に記載のオリゴカーボネートポリオール。
【請求項16】
触媒は、イットリウム(III)アセチルアセトネートを含んでなる、請求項14に記載のオリゴカーボネートポリオール。
【請求項17】
上記脂肪族ポリオールは、OH官能価≧2を有する、脂肪族の、分枝状または非分枝状の第一級ポリオールを含んでなる、請求項14に記載のオリゴカーボネートポリオール。
【請求項18】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項14に記載のオリゴカーボネートポリオール。
【請求項19】
上記有機カーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートを含んでなる、請求項17に記載のオリゴカーボネートポリオール。
【請求項20】
請求項14に記載のオリゴカーボネートポリオールから製造された、ポリウレタン。

【公開番号】特開2006−70269(P2006−70269A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254927(P2005−254927)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】