説明

エステル化されたリグノセルロース材料及びこれらの材料を製造する方法

エステル化リグノセルロース材料の製造方法並びに得られた組成物及び物品を開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
無処理のリグノセルロース材料よりも寸法安定性が高いことから、また他の品質の理由から、エステル化リグノセルロース材料、例えばアセチル化木材がいくつかの用途において望ましい場合がある。これらの利点は、アセチル化ボード及び製材のようなエステル化無垢材と、次いで複合材料中に使用されるアセチル化された小片サイズのリグノセルロース材料との両方にとって存在する。しかしながら、これらの好ましい特性を改善することが引き続き必要である。また、効率的であり費用効果の高いエステル化プロセスも引き続き必要である。さらに、高いエステル化度、及び所与の材料バッチ内のエステル化度の一貫性をもたらすエステル化プロセスも、引き続き必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、
無水酢酸を含む液体でリグノセルロース材料を含浸させることによって、含浸されたリグノセルロース材料を形成する工程、及び
該含浸されたリグノセルロース材料と、該含浸されたリグノセルロース材料を加熱するための加熱蒸気とを接触させることによって、アセチル化リグノセルロース材料を形成する工程
を含んで成る方法であって、
該加熱蒸気が、酢酸、無水酢酸、及びこれらの組み合わせから選択されたアセチル化合物を含む
方法を提供する。
【0003】
いくつかの態様の場合、本発明は、
無水酢酸を含む液体でリグノセルロース材料を含浸させることによって、含浸されたリグノセルロース材料を形成する工程、及び
含浸されたリグノセルロース材料と、含浸されたリグノセルロース材料を加熱するための加熱蒸気とを接触させることによって、アセチル化無垢材を形成する工程
を含んで成る方法であって、
蒸気が、無水酢酸又は酢酸から選択されたアセチル化合物を含み、アセチル化合物が、少なくとも50重量%の量で蒸気中に存在し、そしてリグノセルロース材料が無垢材である方法を提供する。いくつかの態様の場合、無垢材は、1つの寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法は少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は、1つの寸法が少なくとも30インチであり、そして該無垢材は、高さが少なくとも1/4インチであるスタックを成して配列されている。
【0004】
本発明はさらに、アセチル化リグノセルロース材料、及びアセチル化リグノセルロース材料を含有する、又はアセチル化リグノセルロース材料から形成された物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、リグノセルロース材料をアセチル化する方法を提供する。無水酢酸を含有する組成物でリグノセルロース材料を含浸し、次いで含浸されたリグノセルロース材料を加熱蒸気と接触させることにより、この材料を加熱する。加熱蒸気は、無水酢酸、酢酸、又はその両方を含む。本発明はさらに、アセチル化リグノセルロース材料及び組成物、並びにアセチル化リグノセルロース材料を使用して製造された物品を提供する。
【0006】
リグノセルロース材料
リグノセルロース材料は、セルロース及びリグニンを含有する任意の材料(及び必要に応じてヘミセルロースのような他の材料)を含む。いくつかの例は、木材、樹皮、ケナフ、ヘンプ、サイザル、ジュート、作物わら、堅果の殻、ヤシ殻、草及び穀類の殻及び茎、トウモロコシ茎葉、バガス、針葉樹及び広葉樹の樹皮、トウモロコシの穂軸、他の作物残余、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0007】
いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料は木材である。木材は、硬材又は軟材の任意の種から選択されてよい。いくつかの態様の場合、木材は軟材である。いくつかの態様では、木材は松、樅、トウヒ、ポプラ、オーク、楓、ブナから選択される。いくつかの態様の場合、木材は硬材である。いくつかの態様では、木材はレッドオーク、レッドメープル、ジャーマンビーチ、及びパシフィック・アルバスから選択される。いくつかの態様の場合、木材は松種である。いくつかの態様では、木材はロブロリーパイン、ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、スラッシュ・パイン、ラジアータ・パイン、及びスコッツ・パインから選択される。いくつかの態様の場合、木材はラジアータ・パインである。いくつかの態様では、木材は、「サザン・イエローパイン(Southern Yellow Pine)」(ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、スラッシュ・パイン、ロブロリーパイン)と商業的に呼ばれる4つの種のうちの1つ又は2つ以上から選択される。いくつかの態様の場合、木材は、ロングリーフ・パイン、ショートリーフ・パイン、及びロブロリーパインから選択される。いくつかの態様では、木材はロブロリーパインである。
【0008】
リグノセルロース材料は任意の形態となることができる。例には、破砕材料(例えば破砕木材)、繊維化材料(例えば繊維化木材)、木粉、チップ、粒子、木毛、フレーク、ストランド、木材小片、及び樹木、木の幹又は大枝、樹皮を剥がれた木の幹又は大枝、ボード、ベニヤ、厚板、角材、ビーム又は異形材、及び任意の寸法の他の切断製材が含まれる。
【0009】
いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料は無垢材である。本出願全体を通して使用される「無垢材」という用語は、少なくとも1つの寸法では少なくとも10センチメートルであるが、しかしそうでなければ任意の寸法を有する木材、例えば、2フィート×2フィート×4フィート、2フィート×2フィート×6フィート、1フィート×1フィート×6フィート、2インチ×2インチ×4インチ、2インチ×2インチ×6インチ、1インチ×1インチ×6インチ、などのような公称寸法を有する木材、並びに切断木材から機械加工された物体(例えばモールディング、スピンドル、手すり子など)を意味するものとする。いくつかの例は、製材、ボード、ベニヤ、厚板、角材、ビーム、又は異形材を含む。いくつかの態様の場合、無垢材は製材である。任意の寸法の無垢材が使用されてよい。いくつかの態様の場合、無垢材は、少なくとも1つの寸法が少なくとも10センチメートルであり、別の寸法が少なくとも5ミリメートルである。最長寸法は例えば3フィート、4フィート、6フィート、8フィート、10フィート、12フィート、14フィート、16フィートなどであることが可能である。最長寸法は、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる(例えば少なくとも3フィート、少なくとも4フィート、12フィート以上、など)。木材の第2の寸法は、二番目に長い寸法を有しているか、又は最長寸法に等しくてよい。二番目に長い寸法のいくつかの例は、1/10インチ、1/8インチ、1/6インチ、1/4インチ、1/3インチ、3/8インチ、0.5インチ、5/8インチ、0.75インチ、1インチ、1.5インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、9インチ、10インチ、12インチ、14インチ、16インチ、18インチ、20インチ、24インチ、3フィート、4フィートなどを含む。二番目に長い寸法は、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる(例えば少なくとも1/10インチ、0.5インチ以上、少なくとも0.75インチなど)。第3の寸法は、第2の寸法と同じであるか又は異なっていてよく、例えば、第2寸法に関して上述した値のいずれかであることが可能である。いくつかの態様の場合、木材は3つのすべての寸法において同じ長さである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.25インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.75インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも36インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも48インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.75インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は少なくとも1つの寸法が少なくとも30インチであり、別の寸法が少なくとも1.5インチであり、そして第3寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は少なくとも1つの寸法が少なくとも4フィートであり、別の寸法が少なくとも1.5インチであり、そして第3の寸法が少なくとも0.5インチである。いくつかの態様の場合、無垢材は最長寸法が少なくとも8フィートであり、別の寸法が少なくとも5インチであり、そして第3の寸法が少なくとも1インチである。特定の寸法を「測定する」木材に言及するときには、これは、言及された寸法が、実際の測定寸法であって、公称寸法ではないことを意味する。ただし、これらの数値は限定しているのではなく、前述の数字のそれぞれが測定寸法ではなく公称寸法である態様も存在する。2つ又は3つ以上の寸法が特定される場合、これはそれぞれの寸法が、挙げられた他の寸法に対して90度の角度を成すことを意味する(例えば0.5厚×1.5インチ幅×30インチ長)。
【0010】
いくつかの態様の場合、前記段落に記載した寸法のうちの1つが、無垢材の木目の方向に対して平行である。従って、上記測定値のいずれかは、無垢材の木目の軸におけるボードの寸法を表すことがある。いくつかの態様において、最長寸法は、無垢材の木目の方向に対して平行である。
【0011】
本発明は、前記寸法のいずれかを有する無垢材を含む複数の無垢材片のアセチル化が、一度にエステル化されるのを可能にする。いくつかの態様の場合、無垢材が2つ又は3つ以上の片から成る鉛直方向スタックを成して配列され、積み重ねられた片の間にはスペーサ{「桟木(sticker)」}が配置される。桟木は典型的には、選択された厚さを有する材料から成る小さなロッドであり、任意の有効厚を有していてよい。桟木のためのいかなる周知の又は有効な厚さ又は組成材料を使用してもよい。桟木の厚さのいくつかの例としては、1/4インチ、1/3インチ、3/8インチ、0.5インチ、5/8インチ、0.75インチ、1インチ、1.5インチ、2インチが挙げられる。いくつかの態様の場合、アセチル化プロセスの効率が、所与のスタックにおいて使用する桟木の数を少なくするのを可能にする。例えば、いくつかの態様の場合、各桟木間に材木スタックがあり、各スタックの厚さが0.5インチであり、そして各スタックが0.5インチ未満の寸法を有する複数の無垢材片(例えば1/8インチ厚のベニヤ4枚)を、これらが桟木間に積み重ねられた状態で含有するように、桟木は配列されている。桟木間の木材スタックの厚さが0.75インチ、1インチ、1.5インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、9インチ、10インチ、12インチ、14インチ、16インチ、8インチ、20インチ、24インチ、3フィート、4フィートなどである態様が存在する。前文における木材の厚さは、このような厚さの個別の木材片、又はこのような厚さの木材スタック、例えば4インチ厚の単一木材片、又はそれぞれが1インチ厚である4つの木材片から成るスタックを反映することができる。木材スタックの厚さは、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる(例えば少なくとも0.75インチ、1.5インチ以上、など)。
【0012】
リグノセルロース材料は、アセチル化前に任意の適合性のある密度を有していてよい。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.30〜0.65グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.30〜0.55グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.65グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.60グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.625グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.40〜0.50グラムである。いくつかの態様の場合、木材の密度は、材料の乾燥重量を基準として1立方センチメートル当たり0.45〜0.55グラムである。
【0013】
リグノセルロース材料は、アセチル化前に水を含有することができる。例えば、リグノセルロース材料は、初めは、エステル化前に少なくとも15重量パーセントの水、少なくとも17重量パーセントの水、少なくとも19重量パーセントの水を含有することができる。いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料を乾燥させるか又はその他の処理によって水を除去し、その結果として、脱水されたリグノセルロース材料をもたらすことができる。例えば、乾燥リグノセルロース材料は、15重量パーセント未満の水、10重量パーセント未満の水、7.5重量パーセント未満の水、又は5重量パーセント未満の水という含水率を有することができる。エステル化前のリグノセルロース材料の所望の含水率を達成するために、任意の効果的な方法を採用することができる。いくつかの例は、キルン乾燥、及び/又は水以外の液体で含浸することによる溶剤乾燥を含む。溶剤乾燥には、例えば酢酸、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、及びエステル溶剤(例えばアセテートエステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)を含む任意の効果的な溶剤を使用してよい。これらのプロセスは、真空、加圧、又はその両方の多段サイクルを含む真空環境、加圧環境、又はその両方を適用することによって支援することができる。例えば酢酸、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、及びエステル溶剤(例えばアセテートエステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)を含む任意の効果的な溶剤を溶剤乾燥に使用することができる。
【0014】
リグノセルロース材料の含浸
いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料を、無水酢酸を含有する液体で含浸させる。いくつかのリグノセルロース材料含浸法が知られており、そして任意の効果的なリグノセルロース材料含浸法を用いてよい。いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料と無水酢酸を含有する液体とを接触させることよって、例えばリグノセルロース材料を液体中に浸すことによって、含浸が行われる。いくつかの態様の場合、含浸が行われる際の圧力を制御する。例えばいくつかの態様の場合、加圧容器内、又は圧力が大気圧未満に低減されている容器内で、リグノセルロース材料と液体と接触させる。圧力は、液体との接触前、接触中、又は接触後に変化させることができる。いくつかの態様の場合、含浸中又は含浸と関連させて圧力を変化させる。例えば、いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料を容器内に入れることができ、次いでこの容器内で真空を形成し、所定の時間にわたって維持することにより、リグノセルロース材料中の所望の程度の空気又は他の気体を除去し、次いで真空を維持しながら材料と液体とを接触させ、次いで加圧することにより、含浸を容易にする。加圧、真空、及び/又は大気圧の復元から成る複数の工程又はサイクル、並びに任意の反復順序又は反復回数で実現される、これらの状態のうちのいずれか又はすべての組み合わせを用いてよい。例えば大気空気を加える、追加の蒸気又は気体、例えば不活性ガス(例えば窒素)を加える、液体状又は気体状の無水酢酸を加える、又はその他の材料を加えることを含む任意の手段によって、加圧又は再加圧を達成することができる。
【0015】
含浸液は、任意の有効量の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも50重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも60重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも75重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも80重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも85重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも90重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも95重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、液体は少なくとも99重量%の無水酢酸を含有してよい。いくつかの態様の場合、無水酢酸を含有する含浸液はまた酢酸も含有している。いくつかの態様の場合、含浸液は、以前にアセチル化プロセス中に使用されたか又はアセチル化プロセス中の副生成物として発生した無水酢酸及び/又は酢酸を含有してよい。このような材料は木材副生成物質及びその誘導体を含有してもしなくてもよい。いくつかの例は、タンニン及びその他のポリフェノール、着色物質、精油、脂肪、樹脂、ワックス、ガムスターチ、又は代謝中間体を含む。
【0016】
含浸流体中にリグノセルロース材料を浸すことを伴う方法を用いて含浸が行われる場合、加熱が進むのを可能にするように、過剰の含浸流体のいくらか又はすべてを排出するか、又はその他の形式でリグノセルロース材料から分離してよい。
【0017】
含浸された材料の加熱及び生じる反応
含浸後、含浸されたリグノセルロース材料を加熱する。加熱はアセチル化反応を加速する。いくつかの態様において、熱は先ず、無水酢酸と、リグノセルロース材料中に存在する水との反応を開始又は加速させる。この反応は発熱性であり、そしてリグノセルロース材料のさらなる加熱をもたらすことになる。
【0018】
材料と1つ又は2つ以上の加熱蒸気流とを接触させることにより、加熱を達成する。いくつかの態様の場合、アセチル化は、存在するアセチル化触媒を用いて行われる。いくつかの態様の場合、アセチル化は、有効量のアセチル化触媒を添加することなしに行われる。「アセチル化触媒」とは、アセチル化前又はアセチル化中のリグノセルロース材料と化合して、測定可能にアセチル化反応速度を高めるか、アセチル化反応を開始させるのに必要となるエネルギー量を低減するか、又はその両方を可能にする任意の化合物を意味する。いくつかの態様の場合、触媒は酸又は塩基触媒反応を介して作業する。アセチル化触媒のいくつかの例は、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリフルオロ酢酸、金属酢酸塩(例えば酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、など)、過塩素酸、及び過塩素酸金属塩を含む。触媒との関連における「有効量」は単に、存在するとこのような顕著な効果をもたらす量を意味する。
【0019】
任意の効果的な蒸気又は蒸気の組み合わせを用いることができる。いくつかの態様の場合、蒸気流は、無水酢酸及び酢酸から選択されたアセチル化合物を含む。いくつかの態様の場合、蒸気流は、リグノセルロース材料を含浸するために使用されたのと同じ化合物のうちの1種又は2種以上を含む。例えば、いくつかの態様の場合、含浸化合物及び蒸気流の両方が、無水酢酸を含む。いくつかの態様の場合、蒸気流は、リグノセルロース材料を含浸するために使用される化合物のうちの1種又は2種以上よりも沸点が低い化合物を含む。いくつかの態様の場合、含浸化合物は無水酢酸を含み、そして蒸気流は酢酸を含む。いくつかの態様の場合、加熱蒸気流の使用は、有効量のアセチル化触媒を添加しないにもかかわらずアセチル化を引き起こすのに効果的である。
【0020】
蒸気は、任意の効果的な手段によって発生させることができる。いくつかの態様の場合、蒸気は接触加熱又は非接触加熱によって発生させられる。非接触加熱の例は、スチームの使用又は任意のその他の効果的な伝熱法を伴う。いくつかの態様の場合、加熱は、選択された圧力のスチームを含有する熱交換器に関与する。圧力の例としては、15ポンド/平方インチ、ゲージ厚(psig)、20psig、25psig、30psig、40psig、50psig、60psig、70psig、80psig、90psig、100psig、125psig、150psig、200psig、250psig、及び300psigが挙げられる。蒸気圧は、前記値のうちの少なくともいずれかの値、又はこれを上回る値、又はこれに等しい値として記述することもできる。
【0021】
いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも50重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも60重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも75重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、濃度が少なくとも80重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも85重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも90重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも95重量%の無水酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの無水物含量を有している。いくつかの態様の場合、蒸気は50重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は75重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は85重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は90重量%〜100重量%の無水酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は少なくとも98重量%の無水酢酸を含有する。組成物の残りは、エステル化を過度に妨害することのない任意の化合物、又は化合物の組み合わせであってよい。いくつかの態様の場合、沸騰した組成物はまた、無水酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤を含有している。希釈剤の例としては、酢酸、キシレン、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、エステル溶剤(例えば酢酸エステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)、及び前記のもののうちの2種又は3種以上の組み合わせを含む。このように、いくつかの態様の場合、加熱蒸気流は、上記パーセンテージのうち1つの無水酢酸と、酢酸とを含有する組成物(例えば無水物/酸比80:20、無水物/酸比85:15、無水物/酸比90:10、無水物/酸比95:5)を沸騰させた結果である。このように、いくつかの態様の場合、蒸気の無水物/酸比は50:50〜99:1である。いくつかの態様の場合、蒸気の無水物/酸比は75:25〜99:1である。いくつかの態様の場合、蒸気の無水物/酸比は75:25〜95:1である。いくつかの態様において、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの組成を有している。いくつかの態様の場合、無水酢酸及び/又は酢酸は、以前にアセチル化プロセス中に使用されたものであるか又はアセチル化プロセスの副生成物である。このような材料は木材副生成物質及びその誘導体を含有してもしなくてもよい。いくつかの例は、タンニン及びその他のポリフェノール、着色物質、精油、脂肪、樹脂、ワックス、ガムスターチ、又は代謝中間体を含む。
【0022】
いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも50重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも60重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも75重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、濃度が少なくとも80重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも85重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも90重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、少なくとも95重量%の酢酸を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの酸含量を有している。いくつかの態様の場合、蒸気は50重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は75重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は85重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は90重量%〜100重量%の酢酸を含有する。いくつかの態様の場合、蒸気は少なくとも98重量%の酢酸を含有する。組成物の残りは、エステル化を過度に妨害することのない任意の化合物、又は化合物の組み合わせであってよい。いくつかの態様の場合、沸騰した組成物はまた、酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤を含有している。いくつかの態様の場合、組成物は無水酢酸を含有しており、例えばこの場合、蒸気は、95重量%の酢酸と5重量%の無水酢酸とを含有する組成物を沸騰させた結果である。このように、いくつかの態様の場合、蒸気流は、無水酢酸と酢酸との両方を含有する組成物を沸騰させた結果である。いくつかの態様の場合、蒸気流は、上記パーセンテージのうち1つの酢酸と、無水酢酸とを含有する組成物(例えば酸/無水物比80:20、酸/無水物比85:15、酸/無水物比90:10、酸/無水物比95:5)を沸騰させた結果である。このように、いくつかの態様の場合、蒸気の酸/無水物比は50:50〜99:1である。いくつかの態様の場合、蒸気の酸/無水物比は75:25〜99:1である。いくつかの態様の場合、蒸気の酸/無水物比は75:25〜95:1である。蒸気が沸騰して加圧容器に入るのを可能にするのに効果的な温度で沸騰を行うことができる。いくつかの態様の場合、沸騰した組成物はまた、酢酸に加えて1種又は2種以上の希釈剤を含有している。希釈剤の例としては、酢酸、キシレン、メタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、エステル溶剤(例えば酢酸エステル、例えばイソプロピルアセテート、n−プロピルアセテートなど)、及び前記のもののうちの2種又は3種以上の組み合わせを含む。いくつかの態様において、蒸気は、蒸気を生成するために沸騰させた液体と同じ重量パーセントの組成を有している。いくつかの態様の場合、酢酸は、アセチル化プロセスの副生成物である。このような材料は木材副生成物質及びその誘導体を含有してもしなくてもよい。いくつかの例は、タンニン及びその他のポリフェノール、着色物質、精油、脂肪、樹脂、ワックス、ガムスターチ、又は代謝中間体を含む。
【0023】
いくつかの態様の場合、加熱蒸気流中に酢酸を使用することによって、無水酢酸の使用と比較してアセチル化反応のための始動時間を速くすることが見いだされた。このことは、酢酸蒸気の沸点が無水酢酸よりも低いという事実、及び酢酸がアセチル化反応の副生成物であるという事実にもかかわらず真である。始動時間とは、アセチル化反応の開始のために必要となる時間を意味する。これは、リグノセルロース材料中の所定の個所の温度をモニタリングすることによって容易に測定することができる。
【0024】
いくつかの態様の場合、含浸されたリグノセルロースの蒸気加熱は、他の加熱手段によって支援される。任意の効果的な補足加熱手段を使用してよい。いくつかの例は、電磁線(例えばマイクロ波、赤外線、又は高周波加熱)を施すこと、又は反応器の外壁に熱を加える(例えば伝熱媒体のジャケットを使用する)ことを含む。無水酢酸と、リグノセルロース材料中の水との発熱反応も熱源である。発熱アセチル化反応も、他のリグノセルロース材料中の反応を加速し得る熱源を提供する。
【0025】
他のパラメータを加熱・反応中に制御することもできる。圧力は、いかなる有効圧力であってもよい。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、20〜7700 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、5000 Torrまでの圧力に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1000 Torr〜3500 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1200〜2600 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、750〜5000 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、750〜2250 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1000〜2000 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1300〜1700 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、500〜1500 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1500〜2500 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、750〜1250 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、900〜1110 Torrの範囲に維持される。いくつかの態様の場合、圧力は加熱蒸気流の適用中、1750〜2250 Torrの範囲に維持される。
【0026】
加熱蒸気の適用継続時間は、操作可能な別のプロセス変数である。いくつかの態様の場合、特定の時点に達したら、例えば加熱開始後、所望の時間長さが経過したら、加熱蒸気の適用が中止される。いくつかの例は20分間、25分間、30分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、75分間、90分間、2時間、3時間、4時間、5時間、及び6時間を含む。いくつかの態様の場合、リグノセルロース材料のバッチにおける1つ又は2つ以上の個所で所望の温度が測定されたら、加熱蒸気の適用が中止される。いくつかの温度の例は、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、及び190℃を含む。中止は、選択された初期圧力の達成を基準にして、或いは反応終了に向かって選択値を下回って温度又は圧力が低下したときに決定することもできる。中止は、選択温度に達した後の特定の時間量の経過に基づいて決定することもできる。いくつかの態様の場合、他の熱源の適用は、プロセス中の同じ規定の時点又は異なる時点で中止してもよい。前記の例は限定しているのではなく、許容し得る任意のエンドポイントを使用することができる。
【0027】
生成するアセチル化リグノセルロース材料
本発明はまた、本発明の方法によって製造されたアセチル化リグノセルロース材料を提供する。いくつかの態様の場合、前記方法のうちの1つ又は2つ以上を適用する結果、(結合アセチル基パーセントによって測定した)アセチル化度が少なくとも10重量パーセントであるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも15重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも16重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも17重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも18重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも19重量パーセントである。いくつかの態様の場合、アセチル化リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントは少なくとも20重量パーセントである。いくつかの態様の場合、結果としての結合アセチル基パーセントは2重量パーセント〜30重量パーセント、10重量パーセント〜25重量パーセント、又は15重量パーセント〜25重量パーセントであってよい。上記パーセンテージのそれぞれに対して、アセチル化プロセスによって製造されたリグノセルロース材料のバッチ全体に上記パーセンテージが見いだされる態様が存在する。アセチル化プロセスによって製造されたリグノセルロース材料のバッチ全体においてすべての非心材に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。一片のアセチル化無垢材全体に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。一片のアセチル化無垢材全体のすべての非心材部分に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。所与のアセチル化バッチに由来するアセチル化無垢材のスタック群全体(桟木によって分離されている)に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。所与のアセチル化バッチに由来するアセチル化無垢材のスタック群全体(桟木によって分離されている)のすべての非心材部分に上記結合アセチルパーセント値が見いだされる態様も、上記パーセンテージのそれぞれに対して存在する。本出願全体を通して使用される「非心材」アセチル化リグノセルロース材料は、源リグノセルロース材料が樹木の心材からは取られていない材料を意味する。
【0028】
いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動(すなわち所与のバッチに見いだされる結合アセチル基の最高重量パーセンテージと最低重量パーセンテージとの差)が5パーセンテージ・ポイント以下であるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、3パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、2パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、アセチル化非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、1パーセンテージ・ポイント以下である。
【0029】
いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動が、5パーセンテージ・ポイント以下であるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、3パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、2パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料の結合アセチル基パーセントの変動は、1パーセンテージ・ポイント以下である。密度0.45〜0.60グラムの非心材リグノセルロース材料は、源リグノセルロース材料が樹木の心材からは取られていない、密度0.45〜0.60グラムのアセチル化リグノセルロース材料を意味する。本出願において使用される密度値は乾燥重量を基準としている。
【0030】
いくつかの態様の場合、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動が、5パーセンテージ・ポイント以下であるアセチル化リグノセルロース材料が生じる。いくつかの態様の場合、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動は、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して3パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動は、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して2パーセンテージ・ポイント以下である。いくつかの態様の場合、所与のバッチの結合アセチル基パーセントの変動は、密度が0.45〜0.60グラムであるようなアセチル化リグノセルロース材料の部分全体に対して1パーセンテージ・ポイント以下である。
【0031】
本明細書中に使用される「結合アセチルパーセント」、又は「結合アセチル基パーセント」は、下記手順に従って割り出される。ドリルビット削り屑以下の厚さと、0.5gの重さを有するリグノセルロース材料試料を、105℃に設定された対流式炉内に24時間にわたって置く。次いで試料を、キャップ付きの事実上気密のバイアル内に密封し、そして室温まで冷ましておく。試料を秤量する(四捨五入して0.1mgの位にする)ことにより、乾燥試料重量を割り出す。4%(w/v)水酸化ナトリウム(Mallinckrodt #7708-10又は同等のもの)20mLをバイアル内にピペットで入れ、そしてバイアルを再び密封し、リグノセルロース材料を懸濁された状態に保つのに必要な最小速度に調節された振盪器で少なくとも2時間にわたって機械的に振盪させる。1mLの上澄み液を100mLフラスコ内にピペットで入れ、1mLの85%リン酸(Mallinckrodt #2796又は同等のもの)を添加し、そして液体をHPLC等級の水(ASTMタイプ1HPLC等級)で100mLに希釈する。結果としての溶液を十分に混合し、0.45ミクロンのナイロンフィルタを使用して濾過する。次いで、35℃で温度を保つためにサーモスタットを備えたHYDROBOND PS-C18カラム(MAC MOD Analytical INC., Chadd's Ford, PA)又は同等のものを用いた逆相液体クロマトグラフィによって、濾過された溶液の酢酸含有率%を割り出す。検出には、210nmのAgilent 1100 Series Variable Wavelength Detector (Agilent Technologies, Inc., Santa Clara CA)又は同等のものを用いる。メタノールのカラムフラッシュ及び再平衡化によって、7分間にわたって50ミリモルのリン酸を使用して、酢酸を均一濃度に分離し、そして酢酸(保持時間はほぼ4分間)を210nmで光度測定的に検出する。10〜1000ppmの範囲(100mL較正溶液中0.001〜0.1gの酢酸の質量に相当する)にわたって較正曲線を調製する。試料に対して、結果として生じた酢酸ピーク下面積を較正曲線と比較することにより、試料溶液100mL当たりの酢酸量(グラム)を求める。割り出された酢酸のグラム数(gsample)を20で掛け算し(なぜならば、試料抽出物の1/20を分析したからである)、次いで、アセチル基のモル重量を表す比で掛け算し、これを酢酸のモル重量で割り算する(すなわち43/60)。次いで、積を試料の乾燥重量(グラム)(Sample Wt (g))で割り算し、次いで100で掛け算することにより、値を結合アセチルパーセントとして表す。これは、次の式によって示すことができる:
結合アセチル%=(gsample×43/60×20×100)/Sample Wt (g)。
【0032】
アセチル化リグノセルロース材料のさらなる処理
いくつかの態様では、アセチル化リグノセルロース材料にさらなる処理を施すことができる。例えば、いくつかの態様では、リグノセルロース材料中に存在する過剰のエステル化用化合物及び/又は反応副生成物を除去するために、リグノセルロース材料を処理する。このことは、アセチル化プロセスと同じ反応容器内で又は異なる場所で行うことができる。この除去プロセスは、酢酸及び/又は無水酢酸の含有率を任意の所期レベルに低下させることができる任意のプロセスであることが可能である。本発明で使用することができるプロセスの一例としては、不活性ガスを伴う又は伴わない電磁放射線(例えば電磁波放射線、高周波放射線、放射赤外線など)の適用、大気圧未満の圧力での貯蔵、反応容器への加熱蒸気(例えばスチーム)の添加、反応容器への水の添加、キルン内での乾燥、又は前記のもののうちの2つ又は3つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
アセチル化リグノセルロース材料には、任意の望ましい追加のさらなる処理を施すこともできる。いくつかの例としては、殺生物剤による処理、ステイン又は被膜の適用、所望の寸法及び形状への切断、より小さな材料へのチッピング又はリファイニング、などが挙げられる。
【0034】
物品
本発明はさらに、本発明のリグノセルロース材料を含有する、又はこれらの材料から形成された物品を提供する。いくつかの例としては、製材、エンジニアド木材、建築材料(例えばデッキ、梁、筋交い、手すり、屋内床張り材、手すり子、スピンドル、ドア、トリム、羽目板、モールディング、窓及び窓部品、間柱など)、運動場設備、フェンス、家具、電柱、杭、桟橋、ボート、パレット、及び容器、枕木が挙げられる。
【0035】
好ましい態様の下記例によって本発明をさらに説明することができるが、これらの例が、説明の目的のためにのみ含まれるのであって、他に具体的に指示のない限り、本発明の範囲を限定するものではないことは明らかである。
【実施例】
【0036】
反応器として役立つように事実上気密且つ水密である、寸法が長さ9フィート及び半径10インチの、密閉された円筒形横型スチール反応器を組み立てた。反応器の作業体積は36ガロンであり、8フィート長×5.5インチ幅×1インチ厚の寸法を有する4〜6枚のボードを保持するように、この反応器を装備した。熱交換器を通してポンピングすることにより加熱することができる油を含有するオイル・ジャケットとして役立つ12インチの管内部に反応器を密閉した。反応器はまた圧力を増減する能力を有した。
【0037】
それぞれの下記例において、下記手順を用いた:サザン・イエローパインから成る4枚の8フィート×5.5インチ×1インチのボードを反応器内に入れ(8フィート×5.5インチの表面が上方に向いた状態)、そしてラックによって鉛直方向に互いに分離させた。ラックは、これらのボードを0.5インチだけ互いに分離させ、反応器内のガスがボード間で自由に流れるのを可能にした。全部で下記の10の実験において使用される40枚のボードをキルンで乾燥させ、そして一定湿度のチャンバ内で、同じバッチの部分として一緒に貯蔵した。ボード「A」はグループ内の最も上側のボードを意味し、ボード「B」は上から2番目のボードを意味し、ボード「C」は下から2番目のボードを意味し、そしてボード「D」はグループの最も下側に位置することを意味する。それぞれの実験からのボード「C」をほぼ4フィート長の2つの部分に切断することにより、1インチ試料がアセチル化前に中央から取り出されるのを可能にしておいた。この1インチ試料は、湿度試験のために使用した。そしてそれぞれの「C」ボードに対応する試料は湿度レベルが6〜7%であることが判った。ボードを密度によって2つのグループに予め分類しておいた。低密度ボードの乾燥ボード密度は、1立方センチメートル当たり0.48〜0.52グラムの範囲であった。高密度ボードの乾燥ボード密度は、1立方センチメートル当たり0.54〜0.58グラムの範囲であった。いくつかの実験では、上側2枚のボードは高密度範囲のものであり、そして下側2枚のボードは低密度範囲のものであった。他の実験では、上側2枚のボードは低密度範囲のものであり、そして下側2枚のボードは高密度範囲のものであった。ボード「B」の底部側のボードのほぼ中央の個所に予め開けられた穴内に、サーモカップルを挿入した。反応容器圧を、スチーム噴流を使用して40〜60mm Hgまで低減し、そして30分間にわたって保持した。真空を持続させながら、無水酢酸(99%;1%酢酸)を、反応器を満たすように添加することにより、ボードが無水物液中に完全に浸されるようにした。次いで反応容器圧を5000mmHgまで増大させ、その圧力で40分間にわたって保持した。過剰の液体(すなわちボード内に吸収されない液体)を容器から排出し、そして容器圧を低下させ、900〜1100で維持した。
【0038】
次いで、オイル・ジャケットの加熱を開始した。高温油の温度が50℃に達したら、スチーム・ジャケット付き管を通して蒸気を発生させ(90psig)、そしてこの蒸気を反応器内に導入することによりボードに熱を供給する上で使用されるべき液体を供給することにより、高温蒸気を発生させる。蒸気供給は、容器の上側の一端に配置された蒸気ポートを通して行われた。蒸気流は、いくつかの実験(「長」蒸気継続時間実験)では高温油の温度が50℃に達してから120分後まで、又は、他の実験(「短」蒸気継続時間実験)ではボード温度が100℃に達するまで持続した。アセチル化中の容器圧はほぼ1000mmHgで維持した。
【0039】
例1〜4において、蒸気は99%の無水酢酸、及び1%の酢酸であった(この混合物を「AAn」と略す)。例5〜8において、蒸気は95%の酢酸/5%の無水酢酸であった(この混合物を「AA」と略す)。比較例9及び10(C−9及びC−10)では、いかなる蒸気発射をも用いることなしに(壁熱のみ)、試験を繰り返した。
【0040】
温度を測定し、そして反応を始動させるのに必要となる時間を割り出した。「始動のための時間」とは、「B」位置におけるボード内部のサーモカップル内で測定された温度が100℃に達するまでの、油温度が50℃に達した(該当する場合には、この時点で蒸気導入が始まる)後の分数を意味する。100℃という温度が選択される理由は、これが、アセチル化反応が急速に加速し始めることが判っている温度を僅かに上回るからである。この温度は、ボード内の発熱反応が始まる時点を示す。結果を表1に表す。「高密度個所」は、高密度を有するグループに由来する2枚のボードがバッチ内の下側の2枚であるか又は上側の2枚であるかを意味している。従って「下」と示されている場合には、上側2枚のボードは低密度範囲のボードであり、下側2枚のボードは高密度範囲のボードである。
【0041】
【表1】

【0042】
表から判るように、AAを用いた例において反応を始動させるための時間は43〜47分であるのに対して、AAn蒸気を使用した場合には53〜57分を必要とした。従って平均して、始動時間はAA蒸気を使用する場合に10分速かった。
【0043】
各実験における4つのボードのそれぞれに対して、パーセント・アセチルを割り出した。各ボードの長さ及び幅の中心点又は中心点近くに穴を開けた。穴はボード全体を貫通するように穿孔し、そして穿孔全体から生じた削り屑の試料を使用して、結合アセチルパーセントを割り出した。各ボード「C」は2片に切断されたので、「C−1」及び「C−2」と呼ぶボードCの各半部の長さ及び幅の中心点又は中心点近くに穴を開けた。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
アセチル化がボード全体にわたって発生したことを検証するために、例3に由来する「A」位置のボードを種々の個所及び深さでサンプリングした。ボードの8フィート×5.5インチの表面のうちの一方を穿孔し、穿孔はボードの幅の軸に対してほぼ平行な方向に穿孔することにより、サンプルを採取した。サンプリングの個所Iは、ボードの一方の端部からほぼ30インチのところに位置した。個所IIは、ボードの他方の端部からほぼ30インチ(すなわち個所Iからほぼ3フィート)のところに位置した。個所IIIは、ボードの長さのほぼ中心である。個所IVは、ボードの一方の端部からほぼ12インチのところに位置した。サンプリング個所Vは、ボードの他方の端部からほぼ12インチ(すなわち個所IVからほぼ6フィート)のところに位置した。個所I−Vのそれぞれにおいて、ボードの幅に沿った3つの位置に穿孔した。すなわち、1つの試料はボードの幅の中心で採取し、そして1つの試料は2つの対向縁部からほぼ1インチのところで採取した。個所I及びIIの場合、試料は、ボードの3つの特定の深さ、具体的には1/8インチ、1/4インチ、及び3/8インチのところで採取した。個所I及びIIのそれぞれにおけるそれぞれの所与の深さ毎に、その個所における幅に沿った3つの穿孔位置の試料を合体させた。従って、例えば個所Iにおける1/8インチ深さの試料は、個所Iの幅の中心における1/8インチ深さから得られた材料と、個所Iの2つの縁部のそれぞれから1インチのところの1/8インチ深さから得られた材料との複合体であった。
【0046】
個所III,IV及びVのそれぞれの試料のために、各位置でボード全体を貫通して穴を開けた。幅の中心に穿孔を施し(位置III−2、IV−2及びV−2)、そして各位置のそれぞれの縁部から1インチのところに穿孔を施した(位置III−1、III−3、IV−1、IV−3、V−1及びV−3)。個所IV及びVのそれぞれの位置における切り屑の複合体から単一の試料を採取し、そして個所IIIのそれぞれの位置における切り屑の複合体から2つの試料を採取した(このように位置III−1には2つの試料III−1A及びIII−1Bがある)。それぞれの試料に対して、結合アセチルパーセントを割り出した。結果を表3に示す。第1の欄は個所、及び該当する場合には位置を特定する。個所IIIの試料の「A」及び「B」は、それぞれの位置の切り屑から採取された2つの試料を単純に示している。表から明らかなように、ボードの厚さ全体にわたって、そして種々の深さで両方の複合試料の十分なアセチル化が達成された。
【0047】
【表3】

【0048】
深さ値「*」は、特定の深さの穿孔ではなくボード厚全体を貫通する穿孔から採取された試料を示す。
【0049】
好ましい態様を具体的に参照しながら、本発明を詳細に説明してきたが、しかし言うまでもなく、本発明の思想及び範囲の中で変更及び改変を加えることができることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水酢酸を含む含浸液で無垢材を含浸させることによって、含浸された無垢材を形成する工程、及び
該含浸された無垢材と、該含浸された無垢材を加熱するための加熱蒸気とを接触させることによって、アセチル化無垢材を形成する工程
を含んで成る方法であって、
該蒸気が、無水酢酸又は酢酸から選択されたアセチル化合物を含み、該アセチル化合物が、少なくとも50重量%の量で該蒸気中に存在し、そして該無垢材は、1つの寸法が少なくとも30インチであり、そして他の2つの寸法が少なくとも0.25インチである
方法。
【請求項2】
該無垢材が、1つの寸法が少なくとも30インチであり、そして第2の寸法が少なくとも5インチであり、そして第3の寸法が少なくとも0.5インチである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無水酢酸を含む含浸液で無垢材を含浸させることによって、含浸された無垢材を形成する工程、及び
該含浸された無垢材と、該含浸された無垢材を加熱するための加熱蒸気とを接触させることによって、アセチル化無垢材を形成する工程
を含んで成る方法であって、
該蒸気が、無水酢酸及び酢酸から選択されたアセチル化合物を含み、該アセチル化合物が、少なくとも50重量%の量で蒸気中に存在し、そして該無垢材は、1つの寸法が少なくとも30インチであり、そして該無垢材が、高さが少なくとも0.25インチであるスタックを成して配列されている方法。
【請求項4】
該無垢材が、高さが少なくとも0.5インチであるスタックを成して配列されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該アセチル化無垢材が、少なくとも10重量%の結合アセチルパーセントを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該無垢材の最長寸法が、該木材の木目の方向に対して平行である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該無垢材が、該木材の木目の方向に対して平行な寸法で、少なくとも30インチである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該含浸液がさらに酢酸を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該アセチル化合物が無水酢酸である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該無水酢酸が、少なくとも75重量%の量で加熱蒸気中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該無水酢酸が、少なくとも90重量%の量で加熱蒸気中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該加熱蒸気が酢酸をさらに含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該アセチル化合物が酢酸である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該酢酸が、少なくとも75重量%の量で加熱蒸気中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
該酢酸が、少なくとも90重量%の量で加熱蒸気中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
該加熱蒸気が無水酢酸をさらに含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
該加熱蒸気が水をさらに含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって製造されたアセチル化リグノセルロース材料。
【請求項19】
請求項18に記載のアセチル化リグノセルロース材料を含む物品。

【公表番号】特表2012−531331(P2012−531331A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517489(P2012−517489)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/001805
【国際公開番号】WO2010/151320
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】