説明

エタノール発酵装置の滅菌洗浄方法

【課題】濯ぎ水を用いずにエタノール発酵装置の滅菌洗浄を行え、バイオエタノールの製造コストを低減できる滅菌洗浄方法を提供する。
【解決手段】エタノール発酵装置1は、糖化溶液貯留槽2と、嫌気発酵槽3と、発酵液貯留槽4と、糖化溶液貯留槽2から嫌気発酵槽3に糖化溶液を供給する糖化溶液供給手段19と、嫌気発酵槽3から発酵液貯留槽4に発酵液を供給する発酵液供給手段28とを備える。糖化溶液貯留槽2、糖化溶液供給手段19、嫌気発酵槽3、発酵液貯留槽4を、洗浄液により滅菌洗浄する。前記洗浄液が残留する糖化溶液貯留槽2、糖化溶液供給手段19、嫌気発酵槽3に前記糖化溶液を供給する。嫌気発酵槽3で生成した発酵液を残留する洗浄液により滅菌状態が維持されている発酵液供給手段28、発酵液貯留槽4に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノール発酵装置の滅菌洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、稲藁等のリグノセルロース系バイオマスを基質として溶媒と混合してなる基質混合物を、微生物が産生する糖化酵素により糖化することにより糖化溶液を得て、該糖化溶液を発酵させることによりバイオエタノールを製造することが知られている。ここで、前記リグノセルロース系バイオマスは、セルロース又はヘミセルロースにリグニンが強固に結合した構成を備えている。
【0003】
そこで、前記基質混合物を所定温度で所定時間保持することにより、該基質からリグニンを解離し、又は該基質を膨潤させ、セルロース又はヘミセルロースを糖化可能にした糖化前処理物を得て、該糖化前処理物を酵素糖化することが行われている。
【0004】
尚、本願において、解離とは、リグノセルロース系バイオマスのセルロース又はヘミセルロースに結合しているリグニンの結合部位のうち、少なくとも一部の結合を切断することをいう。また、膨潤とは、液体の浸入により結晶性セルロースを構成するセルロース又はヘミセルロースに空隙が生じ、又は、セルロース繊維の内部に空隙が生じて膨張することをいう。
【0005】
前記バイオエタノールの製造では、前記糖化酵素が高価であるので、該糖化酵素の使用量を低減するために前記基質混合物を低濃度とすることが行われている。ところが、前記基質混合物を低濃度とすると、このような基質混合物から得られる糖化溶液も低濃度になり、ひいては該糖化溶液を発酵させて得られるバイオエタノールも低濃度となる。この結果、得られたバイオエタノールを濃縮するために蒸留する際に、蒸留に要する時間及び熱エネルギーが増加するという問題がある。
【0006】
前記問題を解決するために、前記基質混合物を高濃度とすると共に、前記糖化酵素の使用量を増加させ、高濃度のバイオエタノールを得ることが考えられる。この場合には、高価な前記糖化酵素の使用量が増加しコスト増となるため、前記バイオエタノールの製造工程の全体としてのコストを低減する必要がある。
【0007】
前記バイオエタノール製造工程におけるコスト低減の一方策として、前記糖化溶液の発酵を行うエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法を改良することが考えられる。前記エタノール発酵装置は、定期的に内容物を全て排出して洗浄するが、雑菌の増殖を防ぐために次の発酵を行う前に滅菌洗浄を行う必要がある。
【0008】
前記滅菌洗浄として、従来、ビール等の酒類や清涼飲料等の飲料を製造するタンクの洗浄の際に、アルカリを含む洗浄液で該タンク内を洗浄する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−356790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の方法では、前記洗浄液で洗浄した後、前記タンク内を水で濯ぐ必要があり、このため大量の濯ぎ水を用いるという不都合がある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、濯ぎ水を用いることなく前記エタノール発酵装置の滅菌洗浄を行うことができ、バイオエタノールの製造コストを低減することができる滅菌洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明の前記エタノール発酵装置の滅菌洗浄方法は、 リグノセルロース系バイオマスを糖化酵素により糖化することにより得られた糖化溶液を貯留する糖化溶液貯留槽と、該糖化溶液を該エタノール発酵菌により発酵させてエタノールを含む発酵液を生成させる嫌気発酵槽と、該発酵液を貯留する発酵液貯留槽と、該糖化溶液貯留槽から該嫌気発酵槽に該糖化溶液を供給する糖化溶液供給手段と、該嫌気発酵槽から該発酵液貯留槽に該発酵液を供給する発酵液供給手段とを備えるエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法であって、次亜塩素酸塩水溶液とアルカリ水溶液とを含む洗浄液により該糖化溶液貯留槽の滅菌洗浄を行う工程と、該糖化溶液貯留槽の洗浄に用いた洗浄液を、該糖化溶液供給手段を介して該嫌気発酵槽に供給し、該糖化溶液供給手段の滅菌洗浄を行う工程と、該洗浄液により該嫌気発酵槽の滅菌洗浄を行う工程と、該洗浄液により該発酵液貯留槽及び該発酵液供給手段の滅菌洗浄を行う工程と、該洗浄液が残留する該糖化溶液貯留槽に該糖化溶液を供給して、該糖化溶液を該洗浄液により部分的に中和する工程と、該嫌気発酵槽にエタノール発酵菌を供給すると共に、該糖化溶液貯留槽に貯留される該糖化溶液を該糖化溶液供給手段を介して該洗浄液が残留する嫌気発酵槽に供給して中和し、中和された該糖化溶液を該エタノール発酵菌により発酵させてエタノールを含む発酵液を生成する工程と、生成した発酵液を該洗浄液が残留する該発酵液供給手段を介して、該洗浄液が残留する該発酵液貯留槽に供給する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法では、まず、前記糖化溶液貯留槽に次亜塩素酸塩水溶液とアルカリ水溶液とを含む洗浄液を供給し、該洗浄液により該糖化溶液貯留槽の滅菌洗浄を行う。前記糖化溶液貯留槽の滅菌洗浄に用いた前記洗浄液は、糖化溶液供給手段を介して前記嫌気発酵槽に供給する。このようにすることにより、前記糖化溶液供給手段の滅菌洗浄を行うことができる。前記滅菌洗浄後、前記洗浄液の大部分は前記嫌気発酵槽を介して排出されるが、前記糖化溶液貯留槽及び前記糖化溶液供給手段には、残余の該洗浄液が付着している。
【0014】
次に、前記嫌気発酵槽に次亜塩素酸塩水溶液とアルカリ水溶液とを含む洗浄液を供給し、該洗浄液により該嫌気発酵槽の滅菌洗浄を行う。前記滅菌洗浄後、前記洗浄液の大部分は前記嫌気発酵槽から排出されるが、該嫌気発酵槽には、残余の該洗浄液が付着している。
【0015】
次に、前記発酵液貯留槽に次亜塩素酸塩水溶液とアルカリ水溶液とを含む洗浄液を供給し、該洗浄液により該発酵液貯留槽及び前記発酵液供給手段の滅菌洗浄を行う。前記滅菌洗浄後、前記洗浄液の大部分は前記発酵液貯留槽から排出されるが、該発酵液貯留槽及び前記発酵液供給手段には、残余の該洗浄液が付着している。
【0016】
次に、前記洗浄液が残留する前記糖化溶液貯留槽に前記糖化溶液を供給する。ここで、前記糖化溶液は、前記リグノセルロース系バイオマスを前記糖化酵素により糖化することにより得られたものであるので酸性であり、前記洗浄液はアルカリ水溶液を含んでいる。そこで、前記糖化溶液は前記洗浄液により部分的に中和されることとなり、前記洗浄液により滅菌状態が維持されていた前記糖化溶液貯留槽にそのまま収容される。
【0017】
次に、前記嫌気発酵槽にエタノール発酵菌を供給すると共に、前記糖化溶液貯留槽に貯留される前記糖化溶液を前記洗浄液が残留する前記糖化溶液供給手段を介して、該洗浄液が残留する嫌気発酵槽に供給する。前記糖化溶液は、前記糖化溶液貯留槽では部分的に中和されているが、前記糖化溶液供給手段及び前記嫌気発酵槽に残留しているアルカリ水溶液を含む前記洗浄液によりさらに中和されることとなり、該洗浄液により滅菌状態が維持されていた前記糖化溶液貯留槽にそのまま収容される。
【0018】
このとき、必要ならば、前記嫌気発酵槽にアルカリ水溶液を供給して、前記糖化溶液のpH調整を行うことが好ましい。このようにすることにより、前記嫌気発酵槽に収容された前記糖化溶液のpHを前記エタノール発酵菌の活動に適したpHに調整することができる。
【0019】
そして、中和された前記糖化溶液を前記エタノール発酵菌により発酵させてエタノールを含む発酵液を生成させる。生成した発酵液は、前記洗浄液が残留する前記発酵液供給手段を介して、前記洗浄液が残留する前記発酵液貯留槽に供給する。このとき、前記発酵液供給手段及び前記発酵液貯留槽には前記洗浄液が残留しているので、滅菌状態が維持されており雑菌が増殖することがないので、前記発酵液が雑菌により汚染されることを防止することができる。
【0020】
本発明によれば、残留する洗浄液により前記糖化溶液を中和し、或いは前記発酵液供給手段及び前記発酵液貯留槽の滅菌状態が維持されるので、濯ぎ水を用いることなく前記エタノール発酵装置の滅菌洗浄を行うことができる。また、本発明によれば、濯ぎ水を用いることがないので、バイオエタノールの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に用いるエタノール発酵装置の一構成例を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のエタノール発酵装置1は、糖化溶液貯留槽2と、嫌気発酵槽3と、発酵液貯留槽4とを備えている。
【0024】
糖化溶液貯留槽2は、稲藁等のリグノセルロース系バイオマスを糖化酵素により処理する糖化工程5で得られた処理液から、固液分離6により分離された糖化溶液が供給される第1糖化溶液供給管7を備えている。糖化工程5では、稲藁等のリグノセルロース系バイオマスを基質として、該基質に糖化酵素を混合した基質・糖化酵素混合物が、該糖化酵素により糖化処理される。この結果、糖化後の前記基質・糖化酵素混合物として、前記処理液が得られる。また、糖化溶液貯留槽2は、洗浄液を供給する第1洗浄液供給管8と、第1洗浄液循環導管9とを備えている。
【0025】
第1洗浄液供給管8は、図示しない洗浄液供給源に接続されており、水道水、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ独立に供給することができる。また、第1洗浄液循環導管9は、途中に第1循環ポンプ10を備えると共に、第1循環ポンプ10の下流側に配設された第1切替弁11、第2切替弁12を介して第1糖化溶液供給管7に接続されている。第1循環ポンプ10の上流側の糖化溶液循環導管9には、第3切替弁13が配設されており、第3切替弁13から糖化溶液貯留槽2内の液を排出するための排出管14が分岐している。
【0026】
嫌気発酵槽3は、図示しない培養槽で培養されたエタノール発酵菌を含む菌液が供給される菌液供給管15と、洗浄液を供給する第2洗浄液供給管16と、第2洗浄液循環導管17と、菌液濃縮装置18とを備えている。また、菌液供給管15には、第1切替弁11から分岐する第2糖化溶液供給管19が、第4切替弁20を介して接続され、第2糖化溶液供給管19から嫌気発酵槽3に糖化溶液を供給することができるようになっている。この結果、嫌気発酵槽3では、第2糖化溶液供給管19から供給された糖化溶液を、菌液供給管15から供給されたエタノール発酵菌により発酵させて、エタノールを含む発酵液を生成させる。
【0027】
第2洗浄液供給管16は、図示しない洗浄液供給源に接続されており、水道水、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ独立に供給することができる。また、第2洗浄液循環導管17は、途中に第2循環ポンプ21を備えると共に、第2循環ポンプ21の下流側に配設された第5切替弁22を介して菌液供給管15に接続されている。第2循環ポンプ21の上流側の第2洗浄液循環導管17には、第6切替弁23が配設されており、嫌気発酵槽3内の液を排出するための排出管24が分岐している。
【0028】
菌液濃縮装置18は、第6切替弁23から分岐する菌液循環導管25を備え、菌液循環導管25の途中には第3循環ポンプ26が備えられている。第3循環ポンプ26の下流側の菌液循環導管25には、前記菌液を濃縮するための膜モジュール27が配設されており、膜モジュール27により濃縮された菌液が菌液循環導管25を介して嫌気発酵槽3に循環される。
【0029】
発酵液貯留槽4は、嫌気発酵槽3で生成されたエタノールを含む発酵液が、膜モジュール27を介して供給される第1発酵液供給管28と、洗浄液を供給する第3洗浄液供給管29と、第3洗浄液循環導管30とを備えている。第1発酵液供給管28は、途中に第7切替弁31が配設されており、第7切替弁31から排出管32が分岐している。
【0030】
第3洗浄液供給管29は、図示しない洗浄液供給源に接続されており、水道水、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ独立に供給することができる。また、第3洗浄液循環導管30は、途中に第4循環ポンプ33を備えると共に、第4循環ポンプ33の下流側に配設された第8切替弁34、第9切替弁35を介して第1発酵液供給管28に接続されている。第8切替弁34からは、第2発酵液供給管36が分岐しており、後工程の濃縮工程37に接続されている。
【0031】
第4循環ポンプ33の上流側の第3洗浄液循環導管30には、第10切替弁38が配設されており、第10切替弁38から発酵液貯留槽4内の液を排出するための排出管39が分岐している。
【0032】
本実施形態の方法によりエタノール発酵装置1の滅菌洗浄を行うときには、まず、第3切替弁13、第6切替弁23、第10切替弁38を排出側に切替え、糖化溶液貯留槽2、嫌気発酵槽3、発酵液貯留槽4内の液体を排出する。排出が終了したら、第3切替弁13、第6切替弁23、第10切替弁38を切替え、排出管14,24,33を閉じる。
【0033】
次に、第1洗浄液供給管8から、糖化溶液貯留槽2内に所定量の水道水を供給する。そして、第1切替弁11、第2切替弁12、第3切替弁13を、第1洗浄液循環導管9同士を接続する方向に切替え、第1循環ポンプ10を作動することにより、糖化溶液貯留槽2内の水道水を第1洗浄液循環導管9を介して循環させ、糖化溶液貯留槽2内の洗浄を行う。前記洗浄を所定時間行ったならば、第1循環ポンプ10を停止すると共に、第3切替弁13を排出側に切替え、糖化溶液貯留槽2内の前記水道水を排出管14から排出する。前記水道水による洗浄は、例えば、3回繰り返して行う。
【0034】
次に、前記水道水による洗浄が終了したならば、第3切替弁13を切替えて排出管14を閉じ、再び第1洗浄液供給管8から、糖化溶液貯留槽2内に所定量の水道水を供給する。次いで、第1洗浄液供給管8から、糖化溶液貯留槽2内に所定量の水酸化ナトリウム水溶液を供給する。前記水酸化ナトリウム水溶液は、例えば50質量%の濃度であり、前記水道水と混合することにより、最終的に例えば4質量%の濃度となるようにする。
【0035】
次に、第1洗浄液供給管8から、糖化溶液貯留槽2内に所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する。前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、例えば5質量%の濃度であり、前記水酸化ナトリウム水溶液と混合することにより、最終的に例えば0.1質量%の濃度となるようにする。この結果、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを含む洗浄液が調製される。
【0036】
前記洗浄液において、次亜塩素酸ナトリウムは殺菌を行う。また、水酸化ナトリウムは、前記洗浄液をアルカリ性にして、次亜塩素酸ナトリウムから塩素が発生することを防止する一方、雑菌等のタンパク質を溶解する。
【0037】
糖化溶液貯留槽2内にて前記洗浄液を調製したならば、第1切替弁11、第2切替弁12、第3切替弁13を、第1洗浄液循環導管9同士を接続する方向に切替え、第1循環ポンプ10を作動する。そして、糖化溶液貯留槽2内の前記洗浄液を第1洗浄液循環導管9を介して循環させ、糖化溶液貯留槽2内の滅菌洗浄を行う。
【0038】
前記洗浄を所定時間行ったならば、第1切替弁11を第1循環ポンプ10と第2糖化溶液供給管19とを接続する方向に切替える。また、同時に、第4切替弁20、第5切替弁22を、第2糖化溶液供給管19と嫌気発酵槽3とを接続する方向に切替える。このようにすることにより、糖化溶液貯留槽2内の前記洗浄液が第2糖化溶液供給管19を介して嫌気発酵槽3に供給され、第2糖化溶液供給管19内が滅菌洗浄される。嫌気発酵槽3に供給された前記洗浄液は、第6切替弁23を排出側に切替えることにより、排出管24から排出される。
【0039】
次に、前記洗浄液の嫌気発酵槽3からの排出が終了したら、第6切替弁23を切替え、排出管24を閉じ、第2洗浄液供給管16から、嫌気発酵槽3内に所定量の水道水を供給する。また、同時に第3洗浄液供給管29から、発酵液貯留槽4内に所定量の水道水を供給する。
【0040】
次に、第6切替弁23を、嫌気発酵槽3と菌液循環導管25とを接続する方向に切替え、第3循環ポンプ26を作動することにより、嫌気発酵槽3内の水道水を菌液循環導管25を介して循環させ、膜モジュール27の洗浄を行う。前記洗浄を所定時間行ったならば、第3循環ポンプ26を停止すると共に、第7切替弁31を第1発酵液供給管28同士を接続する方向に切替える。また、同時に、第8切替弁34、第10切替弁38を、第3洗浄液循環導管30同士を接続する方向に切替えると共に、第9切替弁35を第1発酵液供給管28の上流側(膜モジュール27方向)と第3洗浄液循環導管30とを接続する方向に切替える。次に、第4循環ポンプ33を作動することにより、発酵液貯留槽4内の水道水を第3洗浄液循環導管30から第1発酵液供給管28に供給して、膜モジュール27の逆洗浄を行う。
【0041】
前記洗浄を所定時間行ったならば、第9切替弁35を第1発酵液供給管28の下流側(発酵液貯留槽4方向)と第3洗浄液循環導管30とを接続する方向に切替える。そして、発酵液貯留槽4内の水道水を第3洗浄液循環導管30を介して循環させ、発酵液貯留槽4内の洗浄を行う。
【0042】
また、同時に、第5切替弁22、第6切替弁23を、第2洗浄液循環導管17同士を接続する方向に切替えると共に、第2循環ポンプ21を作動させる。そして、嫌気発酵槽3内の水道水を第2洗浄液循環導管17を介して循環させ、嫌気発酵槽3内の洗浄を行う。
【0043】
前記洗浄を所定時間行ったならば、第2循環ポンプ21、第4循環ポンプ33を停止すると共に、第6切替弁23、第10切替弁38を排出側に切替え、嫌気発酵槽3、発酵液貯留槽4内の前記水道水を排出管24,39から排出する。前記水道水による膜モジュール27の洗浄と、嫌気発酵槽3及び発酵液貯留槽4の洗浄とは、例えば、3回繰り返して行う。
【0044】
次に、前記水道水による洗浄が終了したならば、第6切替弁23を切替えて排出管24を閉じ、第2洗浄液供給管16から、嫌気発酵槽3内に所定量の水道水、水酸化ナトリウム水溶液及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する。そして、糖化溶液貯留槽2の場合と全く同一にして、嫌気発酵槽3内にて洗浄液を調製する。
【0045】
嫌気発酵槽3内にて前記洗浄液を調製したならば、第6切替弁23を、嫌気発酵槽3と菌液循環導管25とを接続する方向に切替える。そして、第3循環ポンプ26を作動することにより、嫌気発酵槽3内の前記洗浄液を菌液循環導管25を介して循環させ、膜モジュール27の滅菌洗浄を行う。
【0046】
膜モジュール27の前記滅菌洗浄を所定時間行ったならば、第3循環ポンプ26を停止すると共に、第5切替弁22、第6切替弁23を、第2洗浄液循環導管17同士を接続する方向に切替える。そして、第2循環ポンプ21を作動することにより、嫌気発酵槽3内の前記洗浄液を第2洗浄液循環導管17を介して循環させ、嫌気発酵槽3内の滅菌洗浄を行う。嫌気発酵槽3内の前記滅菌洗浄を所定時間行ったならば、第2循環ポンプ21を停止すると共に、第6切替弁23を排出側に切替えることにより、前記洗浄液を排出管24から排出する。
【0047】
また、前記水道水による洗浄が終了したならば、第10切替弁38を切替えて排出管39を閉じ、第3洗浄液供給管29から、発酵液貯留槽4内に所定量の水道水、水酸化ナトリウム水溶液及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給する。そして、糖化溶液貯留槽2の場合と全く同一にして、発酵液貯留槽4内にて洗浄液を調製する。
【0048】
発酵液貯留槽4内にて前記洗浄液を調製したならば、第8切替弁34、第10切替弁38を、第3洗浄液循環導管30同士を接続する方向に切替えると共に、第9切替弁35を第1発酵液供給管28と第3洗浄液循環導管30とを接続する方向に切替える。そして、第4循環ポンプ33を作動することにより、発酵液貯留槽3内の前記洗浄液を第3洗浄液循環導管30を介して循環させ、発酵液貯留槽4内の滅菌洗浄を行う。このとき、第1発酵液供給管28は、第9切替弁35を介して第3洗浄液循環導管30に接続されているので、前記洗浄液は第1発酵液供給管28にも流通することとなり、第1発酵液供給管28内が滅菌洗浄される。発酵液貯留槽4内及び第1発酵液供給管28内の前記滅菌洗浄を所定時間行ったならば、第4循環ポンプ33を停止すると共に、第10切替弁38を排出側に切替えることにより、前記洗浄液を排出管39から排出する。
【0049】
本実施形態の滅菌洗浄方法では、次に、エタノール発酵装置1によりエタノール発酵を行う。
【0050】
前記エタノール発酵を行うときには、まず、第3切替弁13により第1洗浄液循環導管9を遮断すると共に、第2切替弁12を第1糖化溶液供給管7同士を接続する方向に接続して、第1糖化溶液供給管7から糖化溶液貯留槽2内に所定量の糖化溶液を供給する。このとき、前記糖化溶液は、稲藁等のリグノセルロース系バイオマスを糖化酵素により処理したものであるので、前記糖化酵素の活動に適した酸性側のpHに調整されている。一方、糖化溶液貯留槽2内には前記アルカリ性の洗浄液が、壁面等に付着して残留している。そこで、前記糖化溶液は、前記洗浄液により部分的に中和される。
【0051】
次に、第4切替弁20、第5切替弁22を、菌液供給導管15同士を接続する方向に切替え、図示しない培養槽から菌液供給導管15を介して、嫌気発酵槽3にエタノール発酵菌を含む所定量の菌液を供給する。前記菌液が嫌気発酵槽3に供給されたならば、第6切替弁23を、嫌気発酵槽3と菌液循環導管25とを接続する方向に切替える。そして、第3循環ポンプ26を作動することにより、嫌気発酵槽3内の前記菌液を菌液循環導管25を介して循環させ、膜モジュール27により濃縮する。このとき、余剰の水分は、第7切替弁31を排出側に切替えておくことにより、排出管32から排出される。前記菌液が所定の濃度に濃縮されたならば、第6切替弁23を切替えて排出管24を閉じ、第3循環ポンプ26を停止する。
【0052】
次に、第3切替弁13を第1洗浄液循環導管9同士を接続する方向に切替えると共に、第1切替弁11を第1循環ポンプ10と第2糖化溶液供給管19とを接続する方向に切替える。また、同時に、第4切替弁20、第5切替弁22を、第2糖化溶液供給管19と嫌気発酵槽3とを接続する方向に切替える。そして、第1循環ポンプ10を作動することにより、糖化溶液貯留槽2内の前記糖化溶液を第1洗浄液循環導管9、第2糖化溶液供給管19、菌液供給管15を介して嫌気発酵槽3内に供給する。
【0053】
このとき、嫌気発酵槽3内には前記アルカリ性の洗浄液が、壁面等に付着して残留している。そこで、前記糖化溶液は、前記洗浄液により中和される。
【0054】
前記糖化溶液は、前記エタノール発酵菌により発酵されるために、前記中和により該エタノール発酵菌の活動に適したpH7程度に調整されることが好ましい。そこで、前記残留している洗浄液による中和が不十分であるときには、さらに前記糖化溶液にアルカリ水溶液を添加することにより、前記エタノール発酵菌の活動に適したpHに調整される。本実施形態のエタノール発酵装置1では、前記アルカリ水溶液として、例えば第2洗浄液供給管16から供給される水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0055】
嫌気発酵槽3内では、前記糖化溶液が所定温度に所定時間保持されることにより、前記エタノール発酵菌により発酵せしめられ、エタノールを含む発酵液が生成する。前記発酵液が生成したならば、第6切替弁23を嫌気発酵槽3と菌液循環導管25とを接続する方向に切替えると共に、第7切替弁31、第9切替弁35を第1発酵液供給管28同士を接続する方向に切替える。そして、第3循環ポンプ26を所定時間作動することにより、所定量の前記発酵液が、第2洗浄液循環導管17、菌液循環導管25、膜モジュール27、第1発酵液供給管28を介して、発酵液貯留槽4に供給される。このとき、菌液循環導管25、膜モジュール27、第1発酵液供給管28、発酵液貯留槽4は、前記洗浄液が付着しているので滅菌状態に保持されており、前記発酵液が雑菌に汚染されることを防止することができる。
【0056】
発酵液貯留槽4に収容された前記発酵液は、必要に応じて後工程の濃縮工程37に供給される。前記発酵液を濃縮工程37に供給するには、第8切替弁34を第4循環ポンプ33と第2発酵液供給管36とを接続する方向に切替えると共に、第10切替弁38を第3洗浄液供給導管30同士を接続する方向に切替える。そして、第4循環ポンプ33を作動する。このようにすることにより、発酵液貯留槽4に収容された前記発酵液が、第3洗浄液供給導管30、第2発酵液供給管36を介して、濃縮工程37に供給される。
【0057】
本実施形態の滅菌洗浄方法では、糖化溶液貯留槽2、第2糖化溶液供給管19、嫌気発酵槽3に
残留する前記洗浄液により前記糖化溶液が中和される。また、第1発酵液供給管28、発酵液貯留槽4に残留する前記洗浄液により、第1発酵液供給管28、発酵液貯留槽4の滅菌状態が維持される。従って、前記洗浄液を、滅菌洗浄後の前記エタノール発酵に有効に用いることができ、濯ぎ水を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…エタノール発酵装置、 2…糖化溶液貯留槽、 3…嫌気発酵槽、 4…発酵液貯留槽、 19…第2糖化溶液供給管、 28…第1発酵液供給管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマスを糖化酵素により糖化することにより得られた糖化溶液を貯留する糖化溶液貯留槽と、
該糖化溶液を該エタノール発酵菌により発酵させてエタノールを含む発酵液を生成させる嫌気発酵槽と、
該発酵液を貯留する発酵液貯留槽と、
該糖化溶液貯留槽から該嫌気発酵槽に該糖化溶液を供給する糖化溶液供給手段と、
該嫌気発酵槽から該発酵液貯留槽に該発酵液を供給する発酵液供給手段とを備えるエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法であって、
次亜塩素酸塩水溶液とアルカリ水溶液とを含む洗浄液により該糖化溶液貯留槽の滅菌洗浄を行う工程と、
該糖化溶液貯留槽の洗浄に用いた洗浄液を、該糖化溶液供給手段を介して該嫌気発酵槽に供給し、該糖化溶液供給手段の滅菌洗浄を行う工程と、
該洗浄液により該嫌気発酵槽の滅菌洗浄を行う工程と、
該洗浄液により該発酵液貯留槽及び該発酵液供給手段の滅菌洗浄を行う工程と、
該洗浄液が残留する該糖化溶液貯留槽に該糖化溶液を供給して、該糖化溶液を該洗浄液により部分的に中和する工程と、
該嫌気発酵槽にエタノール発酵菌を供給すると共に、該糖化溶液貯留槽に貯留される該糖化溶液を該糖化溶液供給手段を介して該洗浄液が残留する嫌気発酵槽に供給して中和し、中和された該糖化溶液を該エタノール発酵菌により発酵させてエタノールを含む発酵液を生成する工程と、
生成した発酵液を該洗浄液が残留する該発酵液供給手段を介して、該洗浄液が残留する該発酵液貯留槽に供給する工程とを備えることを特徴とするエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法。
【請求項2】
請求項1記載のエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法において、前記嫌気発酵槽にアルカリ水溶液を供給して、前記糖化溶液のpH調整を行うことを特徴とするエタノール発酵装置の滅菌洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−244737(P2011−244737A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121005(P2010−121005)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】