説明

エタノール製造由来の可食残留物の製造法

エタノール製造の可食残留物、例えば、可溶性物質添加蒸留穀物残渣など、を、抗生物質の残量が少ないかまたは実質的に不含において製造する。エタノール製造の結果として生じる可食残留物中に存在する抗生物質または細菌を、当該可食残留物に放射線を照射することによって不活性化する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年10月14日に出願された米国仮特許出願第61/251,610号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、エタノール製造に由来する可食残留物、例えばセルロース系エタノール製造に由来する蒸留穀物残渣および残留物、の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
穀物、例えばトウモロコシ、および砂糖からエタノールを製造するための製造プラントが存在する。エタノール製造は、多くの情報源、例えば、The Alcohol Textbook, 4th Ed., ed.K.A. Jacquesら, Nottingham University Press, 2003(非特許文献1)、において説明されている。蒸留穀物残渣(可溶性物質添加蒸留穀物残渣(DGS)または乾燥蒸留穀物残渣(DDGS)とも呼ばれる)は、エタノール製造の副産物である。蒸留穀物残渣は、安価な家畜飼料の主な供給源であるので、有用な副産物である。しかしながら、最近、蒸留穀物残渣中の抗生物質の存在に対する懸念が高まっている。蒸留穀物残渣中の抗生物質は、概して、エタノール製造プロセスにおける抗生物質の使用の結果として存在する。発酵の際に酵母と競合して砂糖をエタノールではなく乳酸へと転化する細菌を抑制するために、ペニシリンやバージニアマイシンなどの抗生物質が使用される。抗生物質の含有量に対する懸念から、蒸留穀物残渣の販売および使用に対して制限が課せられた場合、エタノール生産業者の利幅を大きく損なうだけでなく、家畜飼料の良い供給源を牧畜農家から奪うことになるであろう。
【0004】
米国特許出願公開第20060127999号(特許文献1)「Process for producing ethanol from corn dry milling」、および米国特許出願公開第20030077771号(特許文献2)「Process for producing ethanol」は、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。さらに、米国特許第7,351,559号(特許文献3)「Process for producing ethanol」、米国特許第7,074,603号(特許文献4)「Process for producing ethanol from corn dry milling」、および米国特許第6,509,180号(特許文献5)「Process for producing ethanol」は、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20060127999号
【特許文献2】米国特許出願公開第20030077771号
【特許文献3】米国特許第7,351,559号
【特許文献4】米国特許第7,074,603号
【特許文献5】米国特許第6,509,180号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Alcohol Textbook, 4th Ed., ed.K.A. Jacquesら, Nottingham University Press, 2003
【発明の概要】
【0007】
概要
概して、本発明は、エタノール製造に由来する可食残留物、ならびに抗生物質含有量の低い可食残留物または好ましい態様において実質的に抗生物質を含まない可食残留物を製造する方法に関する。「抗生物質含有量の低い」または「実質的に抗生物質を含まない」により、本発明者らは、当該可食残留物が活性な抗生物質をほとんどまたは全く含有しないこと、例えば、100ppm未満しか含有しないことを意味しており、したがって、本明細書において説明されるように、当該可食残留物は、不活性な抗生物質を含有し得る。
【0008】
当該可食残留物は、例えば、トウモロコシエタノール製造の場合、乾燥蒸留穀物残渣(DDG)であり得、あるいは、リグニン、未発酵糖類(例えば、キシロース、アラビノース)、鉱物(例えば、粘土、シリカ、ケイ酸塩)、および場合によって未消化セルロース、の混合物であり得る。
【0009】
いくつかの実践において、当該可食残留物は、重量比で50ppm未満、例えば、25ppm未満、10ppm未満、さらには1ppm未満、の活性な抗生物質を含有する。
【0010】
一局面において、本発明は、エタノール製造プロセスの副産物として製造された可食残留物への放射線照射工程を含む方法を特徴とする。
【0011】
いくつかの実践は、以下の特徴の1つ以上を有する。当該可食残留物は、トウモロコシエタノールプロセスなどに由来する可溶性物質添加蒸留穀物残渣を含む。あるいは、当該可食残留物は、例えば、当該エタノール製造プロセスがセルロース系供給原料および/またはリグノセルロース系供給原料を用いている場合には、リグニン、キシロース、および鉱物、ならびに場合によっては未消化セルロースを含み得る。
【0012】
場合によって、当該可食残留物は抗生物質を含有しており、当該抗生物質の分子構造を変化させるなどにより、当該抗生物質を不活性化するかまたは破壊するように選択された条件下において放射線照射が実施される。そのような場合、照射後において、当該可食残留物は、重量比において100ppm未満、例えば、50、25、10、または1ppm未満の活性な抗生物質を含有し得るか、あるいは活性な抗生物質を実質的に含有し得ない。いくつかの実践において、照射前の可食残留物は、重量比において約500ppm〜約10,000ppmの活性な抗生物質を含有する。
【0013】
他の場合において、当該エタノール製造プロセスは、抗生物質を添加せずに実施され得る。そのような場合、照射前の当該可食残留物が細菌を含有している場合があり、放射線照射が、細菌を死滅させる条件下において実施される。
【0014】
いくつかの実践において、放射線照射は、約0.5MRadを超える照射量において、および/または約5Mrad未満の照射量において、例えば、約1〜約3MRadの照射量において投与される。
【0015】
当該可食残留物が、可溶性物質添加蒸留穀物残渣の場合、当該可溶性物質添加蒸留穀物残渣を乾燥させて、可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(DDGS)を製造することができる。乾燥は、照射前、照射中、または照射後に実施され得る。
【0016】
本明細書において言及されるかまたは本明細書に添付されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの含むすべてに対して、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】エタノールおよび蒸留穀物残渣を作成するプロセスを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
図1を参照すると、エタノールを製造するプラントは、例えば、供給原料を受け取って物理的に処理するための1つ以上の操作ユニット(10)を備えることができ、これらは、典型的な穀物ベース(例えば、トウモロコシまたは穀物)のエタノールプラントの場合、穀物受け取り設備およびハンマーミルを含む。使用される供給原料が、非穀物のセルロース系またはリグノセルロース系材料の場合、操作ユニット10は、例えば、米国特許第7,470,463,号において開示されるような、供給原料の内部繊維を露出させる方式において供給原料のサイズを減じるように構成され得、なお、当該特許のすべての開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
場合によっては、例えば、当該供給原料が、発酵によって処理するのが困難な材料、例えば、作物残余または他のリグノセルロース系供給原料、を含む場合、当該プラントは、その難分解性を減じるために当該供給原料を処理するように構成された任意の操作ユニットを備え得る。いくつかの実践において、難分解性は、少なくとも5%、あるいは少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%減じられる。場合によって、難分解性は、実質的に完全に排除される。難分解性低減操作ユニットによって利用される処理プロセスは、放射線照射工程、超音波処理工程、酸化工程、熱分解工程、および蒸気爆砕工程の1つ以上を含み得る。処理方法は、(任意の順序において)これらの技術の2つ、3つ、4つ、さらにはすべてを組み合わせて使用することができる。難分解性を低減するために供給原料を前処理する操作ユニットは、国際公開公報第2008/03186号に記載されており、なお、当該特許のすべての開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0020】
次いで、供給原料は、周知であるような、一連の蒸解装置(12)において処理され、液状化(14)に供され、ならびに酵母などの微生物との接触にとって好適な温度にまで冷却(16)され得る。この冷却流は、次いで、バイオ処理システム(18)へと送られ、ここで、発酵などによってバイオ処理されて粗エタノール混合物が産生され、当該粗エタノール混合物は、貯蔵タンク(20)へと送られる。
【0021】
当該バイオ処理システムでは、場合によって、当該混合物中での細菌による乳酸の過剰な発生を防ぐために、抗生物質が用いられ得る。例えば、供給原料に対して重量比で約500ppm〜約10,000ppmの濃度において、抗生物質が添加され得る。
【0022】
あるいは、例えば、供給原料および処理設備を清浄化して、当該プロセスを低pHレベルにおいて実施し、ならびに浸漬、磨り潰し、および発酵の際に、高い処理量を維持することによって、抗生物質の使用を避けることができる。非抗生物質添加剤、例えば商標IsoStab(商標)においてBetaTec Hop Productsによって販売されているホップ抽出物、も使用することができる。これらの代替案が用いられる場合、それらの安全性を確保するために、当該プロセスの可食残留物を殺菌することが望ましい。
【0023】
回収塔(22)を用いて、水または他の溶媒ならびに他の非エタノール成分を当該粗エタノール混合物から除去し、次いで、当該エタノールを、蒸留ユニット(24)、例えば精留塔、を用いて蒸留する。最後に、当該エタノールを、モレキュラーシーブ(26)を用いて乾燥させてもよく、必要であれば変性させてもよく、ならびに所望の出荷方法に産出してもよい。
【0024】
別の流れが回収塔(22)の底部から来ており、当該流れは、遠心分離機(28)を通過する。次いで、液体分画または「低濃度蒸留廃液(バックセット)」が、概して蒸解装置(12)の前に、当該プロセスへと戻される。固体(「湿潤ケーキ」)を、エバポレーター/乾燥機操作ユニット(30)における乾燥などのさらなる処理に供し、結果として、可食残留物、例えば、供給原料がトウモロコシの場合には可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(DDGS)が製造される。
【0025】
次いで、放射線照射ユニット(32)を使用して、当該可食残留物に放射線を照射する。放射線照射は、例えば、当該抗生物質の分子構造を変化させることによって、発酵プロセスから当該可食残留物中に存在する任意の抗生物質を不活性化すること、ならびに、当該可食残留物を殺菌して当該可食残留物中に存在する任意の望ましくない細菌または他の微生物を殺すこと、の両方の働きをする。
【0026】
放射線照射は、任意の好適な装置を使用して実施することができる。可食残留物が、小さなペレットなどの薄片状の場合、高処理量を得るために電子線照射が好ましい可能性がある。例えば、可食残留物が、例えば厚いケーキ状の場合、より深い浸透が必要とされる場合には、ガンマ線が使用され得る。
【0027】
放射線は、可食残留物の栄養素利用性に悪影響を及ぼすことなく、抗生物質を不活性化し、ならびに/あるいは細菌および望ましくない微生物を死滅させるのに十分な任意の照射量において投与され得る。例えば、当該照射量は、約0.5MRad〜約5MRad、例えば、約1MRad〜約3MRad、であり得る。
【0028】
可食残留物の乾燥は、(図示されているように)照射前、照射中、または照射後に実施してもよく、あるいは、所望の場合は省いてもよい。
【0029】
概して、上記において説明したプロセスにおいて使用される処理設備のすべては、任意の難分解性低減操作ユニットおよび可食残留物に放射線照射するために使用される装置を除いて、通常、既存のエタノール製造プラントにおいて利用されている。
【0030】
場合によって、供給原料は、離れた場所において物理的に処理され、ならびに任意により前処理された後に、鉄道、トラック、船(例えば、荷船または超大型タンカー)、または空輸などによって当該プラントへと出荷されたセルロース系またはリグノセルロース系材料であり得る。そのような場合、当該材料は、量的効果のために高密度化された状態において出荷され得る。例えば、当該供給原料は、例えば後述において説明するサイズ減少技術を使用して、約0.35g/cc未満の嵩密度へと物理的に処理され、その後に、少なくとも約0.5g/ccの嵩密度を有するように高密度化され得る。いくつかの実践において、当該高密度化された材料は、少なくとも0.6、0.7、0.8、または0.85g/ccの嵩密度を有し得る。繊維状材料は、例えば、国際公開公報第2008/073186号において開示されているような任意の好適なプロセスを使用して、高密度化することができる。
【0031】
供給原料は、場合によって、本質的に繊維質であり得る。繊維供給源としては、紙および紙製品などのセルロース系繊維供給源(例えば、ポリコート紙およびクラフト紙)、ならびに木材および木材関連材料などのリグノセルロース系繊維供給源、例えばパーティクルボード、が挙げられる。他の好適な繊維供給源としては、天然の繊維供給源、例えば、草、もみ殻、バガス、木綿、黄麻、大麻、麻、竹、サイザル麻、マニラ麻、わら、トウモロコシ穂軸、もみ殻、ココナッツ繊維などが挙げられ、α−セルロース含有量の高い繊維供給源、木綿などである。繊維供給源は、未使用廃品繊維材料、例えば残りカス、消費財廃棄物、例えば古着、から得ることができる。繊維供給源として紙製品が使用される場合、それらは、未加工材料、例えば、廃品未加工材料であり得、または消費財廃棄物であり得る。未使用原料以外にも、消費財廃棄物、産業廃棄物(例えば、廃物)、および加工廃棄物(例えば、紙加工からの廃液)も、繊維供給源として使用することができる。さらに、繊維供給源は、人間の廃棄物(例えば、汚物)、動物の排泄物、植物廃棄物からも得られるか、または由来し得る。さらなる繊維供給源については、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号に記載されている。
【0032】
バイオ処理の際に放出される糖類は、様々な製造物、例えば、アルコールまたは有機酸、に転化することができる。得られる製造物は、利用される微生物、およびバイオ処理の行われた条件に応じて変わる。これらの工程は、穀物ベースのエタノール製造施設の既存の設備を、ほとんどまたは全く変更を加えずに活用して実施することができる。供給原料中にヘミセルロースが存在する場合、バイオ処理の際にキシロース(C5)流が生じ得、したがって、場合によって、回収塔の後でこれらの流れを除去するための対策が為される。
【0033】
バイオ処理において利用される微生物は、天然の微生物または遺伝子組換え微生物であり得る。例えば、当該微生物は、細菌、例えばセルロース分解細菌、真菌、例えば酵母、植物、原生生物、例えば藻類、原生動物、あるいは真菌に似た原生生物、例えば粘菌、であり得る。当該有機体が適合性を有する場合、有機体の混合物を利用することができる。微生物は、好気性または嫌気性であり得る。当該微生物は、(単一の、または実質的に単一の最終生成物を産生する)ホモ型発酵性微生物であり得る。当該微生物は、ホモ型酢酸生成微生物、ホモ型乳酸生成微生物、プロピオン酸菌、酪酸菌、コハク酸菌、または3−ヒドロキシプロピオン酸菌であり得る。当該微生物は、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ムーレラ(Moorella)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)、プロピオニバクテリウム(Proprionibacterium)、プロピオニスピラ(Propionispera)、アナエロビオスピリルム(Anaerobiospirillum)、およびバクテリオデス(Bacteriodes)の群から選択される属であり得る。特定の例において、当該微生物は、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrukii)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニシ(Propionibacterium acidipropionici)、プロピオニスピラ・アルボリス(Propionispera arboris)、アナエロビオスピルリム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succinicproducens)、バクテリオデス・アミロフィルス(Bacteriodes amylophilus)、またはバクテリオデス・ルミニコラ(Bacteriodes ruminicola)であり得る。例えば、当該微生物は、所望の生成物を産生するように設計された遺伝子組換え微生物であり得、例えば、所望の産生物の産生を引き起こすタンパク質をコードすることができる1つ以上の遺伝子で形質転換された遺伝子組換え大腸菌(Escherichia coli)が使用される(例えば、2005年2月8日に公表された米国特許第6,852,517号を参照のこと)。
【0034】
バイオマスをメタノールおよび他の産生物へと発酵することができる細菌としては、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)が挙げられる(Philippidis,1996,supra)。Leschineら(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 2002, 52, 1155-1160)は、嫌気性の中温性セルロース分解細菌であるクロストリジウム・ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)新種を森林土壌から単離しており、当該細菌は、セルロースをエタノールへ転化する。
【0035】
発酵などのエタノールおよび他の産生物へのバイオマスのバイオ処理は、サーモアナエロバクター・マスラニイ(T. mathranii)などのサーモアナエロバクター種、およびピチア(Pichia)種などの酵母種など、ある特定のタイプの好熱性微生物または遺伝子組換え微生物、を用いて実施され得る。サーモアナエロバクター・マスラニイの菌株の例は、Sonne−Hansenら(AppliedMicrobiology and Biotechnology 1993, 38, 537-541)またはAhringら(Arch. Microbiol. 1997,168,114-119)に記載されているA3M4である。
【0036】
セルロースを含む材料(本明細書において説明した任意の方法により処理されているか、あるいは未処理でさえも)の分解を促進するために、1種以上の酵素、例えばセルロース分解酵素、を利用することができる。いくつかの態様において、セルロースを含む当該材料は、最初に、例えば、材料と酵素とを水溶液中において混合することにより、酵素で処理される。この材料は、次いで、本明細書において説明された任意の微生物と混合され得る。他の態様では、セルロースを含む当該材料と、1種以上の酵素と、微生物とが、例えば水溶液中で混合することにより、同時に混合される。
【0037】
これらの産生物のカルボン酸基は、概して、発酵溶液のpHを下げ、いく種かの微生物、例えばピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、の発酵を阻害する傾向にある。したがって、場合によって、当該溶液のpHを高めるために、発酵の前または間に塩基および/または緩衝剤を添加するのが望ましい。例えば、水酸化ナトリウムまたは石灰を発酵培地に添加することにより、当該培地のpHを、利用する微生物にとって最適な範囲まで高めることができる。
【0038】
発酵は、概して、ビタミンおよび微量の鉱物および金属と一緒に窒素供給源または他の栄養源、例えば尿素、を含有し得る水性増殖培地中において実施される。概して、当該増殖培地は、無菌であるか、または少なくとも低い微生物負荷、例えば細菌数、であることが好ましい。当該増殖培地の殺菌は、任意の所望の方法において実施することができる。しかしながら、好ましい実践において、殺菌は、混合の前に増殖培地または増殖培地の個々の成分に対して放射線照射することにより実施される。放射線量は、概して、エネルギー消費を最小にするため、ならびにその結果としてコストを最小にするために、適切な結果が得られる限りにおいて可能な限り低い。例えば、多くの場合、増殖培地自体または増殖培地の成分は、少なくとも5MRad未満、例えば、4、3、2、または1MRad未満の放射線照射量により処理され得る。特定の例において、当該増殖培地は、約1〜3MRadの照射量により処理される。
【0039】
他の態様
多くの態様について説明してきた。それでもなお、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な変更を行うことが可能であることは理解されるであろう。
【0040】
例えば、上記において可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(DDGS)の製造について説明しているが、場合によっては、代わりに、最終製造物は可溶性物質添加湿潤蒸留穀物残渣(WDGS)であってもよい。高含水量であるWDGSは、概して、輸送が高価であり、腐敗しがちであるが、場合によっては、例えば家畜飼料がエタノール製造施設の近くで使用される場合、WDGSを使用することができる。そのような適用については、例えば、米国特許第6,355,456号に記載されており、なお、当該特許のすべての開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
本明細書において開示された方法において、湿潤粉砕プロセスまたは乾燥粉砕プロセスのどちらかを使用することができる。
【0042】
したがって、他の態様は、以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール製造プロセスの副産物として製造された可食残留物に放射線照射する工程
を含む方法。
【請求項2】
可食残留物が、可溶性物質添加蒸留穀物残渣(distillers grains and solubles)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エタノール製造プロセスがトウモロコシエタノールプロセスである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
可食残留物が、リグニン、キシロース、および鉱物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
可食残留物がさらに、未消化セルロースを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
エタノール製造プロセスが、セルロース系供給原料および/またはリグノセルロース系供給原料を利用する、請求項1、4、または5記載の方法。
【請求項7】
可食残留物が抗生物質を含有しており、ならびに、該抗生物質を不活性化または破壊するように選択された条件下において放射線照射が実施される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
放射線照射後、可食残留物が、重量比において100ppm未満、例えば、50、25,10、または1ppm未満、の活性な抗生物質を含有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
可食残留物が活性な抗生物質を実質的に含有しない、請求項8記載の方法。
【請求項10】
放射線照射の前に、可食残留物が、重量比において約500ppm〜約10,000ppmの活性な抗生物質を含有する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
放射線照射前に、可食残留物が細菌を含有しており、放射線照射が、該細菌を死滅させる条件下において実施される、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
エタノール製造プロセスが、抗生物質を添加せずに行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
可溶性物質添加蒸留穀物残渣が乾燥されて、可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(DDGS: dried distillers grains and solubles)が製造される、請求項2記載の方法。
【請求項14】
乾燥工程が、放射線照射の前に実施される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
放射線照射が、約0.5MRadを超える照射量において投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
放射線照射が、約5MRad未満の照射量において投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
放射線照射が、約1〜3MRadの照射量において投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507923(P2013−507923A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534297(P2012−534297)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052382
【国際公開番号】WO2011/046967
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】