説明

エチレン系重合体組成物、それからなるフィルムおよびシート

【課題】柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度に優れたエチレン系重合体組成物、それからなるフィルム及びシートの提供。
【解決手段】上記エチレン系重合体組成物を、MFRが0.1〜100g/10分、Mw/Mnが4.0以下、結晶化度[D]が1〜60wt%のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)40〜74重量%と、MFRが0.01〜50g/10分、コモノマー含有量[CM]が2.6〜14mol%のエチレン・エチレン共重合性含極性基モノマー共重合体(B)26〜60重量%とを含有する組成物であって、成分(A)の[D]と、成分(B)の[CM]とが式(1)の関係を満たし、エチレン系重合体組成物の所定誘電率[ε]と成分(A)の[D]とが式(2)の関係を満たすものとする。
−0.137[D]+7.32≦[CM]≦−0.137[D]+12.9 …(1)
[D]≦0.9091[ε]+63 …(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系重合体組成物、それからなるフィルムおよびシートに関し、詳しくは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度に優れたエチレン系重合体組成物、それからなるフィルムおよびシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農業用フィルム、壁紙、建材、遮水シート、レザー、ホース、チューブ等に用いるフィルムおよびシートとしては、可塑剤を含む軟質塩化ビニル樹脂が広く使用されてきた。しかし、軟質塩化ビニル樹脂は、可塑剤やモノマーのブリードアウトによる外観不良の問題があり、また焼却時の塩化水素の発生に起因する酸性雨等が社会的問題となるなど、種々のマイナス要因を抱えた状態にある。
これに対し、上記軟質塩化ビニル樹脂に代わる軟質樹脂として、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマーなどのエチレンを主体とする樹脂が開発されている。しかしながら、これらエチレンを主体とする軟質樹脂をシートまたはフィルムに加工した場合、軟質塩化ビニル樹脂のように、柔軟性、透明性、高周波ウェルダー適性、衝撃強度をバランス良く備えたものではなかった。
【0003】
そのような問題を解決するために、樹脂組成物中の混ざりムラが無く、透明性、ヒートシール強度、衝撃強度に優れた特定のエチレン・α−オレフィン共重合体とエチレン系樹脂からなる押出成形体用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような樹脂組成物は、必ずしもヒートシール強度と高周波ウェルダー適性が十分でなく、さらに透明性、衝撃強度が依然不十分である。
また、優れた押出加工性を有し、低温シール強度、ヒートシール強度、ホットタック性、破袋強度に優れた押出成形用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このような樹脂組成物も高周波ウェルダー適性が十分でないという問題があった。
【0004】
通常、ヒートシールは、ヒートシーラー等によりシール部を加熱して樹脂を溶融して融着する方法であり、高周波ウェルダーは、樹脂を高周波電場におくとき、樹脂中の極性基等による分子運動で発生する熱を利用して接合部を加熱し融着する方法である。一つの製品のなかでもその形状等によりヒートシールが好ましい部位と高周波ウェルダーが好ましい部位が並存することがある。したがって両者の融着特性に優れる材料は、応用範囲が広く好ましいとされており、このような両性能を十分満足するエチレン系樹脂組成物の開発が望まれている。
このような観点から、高周波溶着性に優れ、接着部強度、防湿性、柔軟性に優れた非極性オレフィン系樹脂と極性オレフィン系樹脂とからなるオレフィン系樹脂材料の高周波溶着加工用シートが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、構成成分の組み合わせが適当ではなく透明性、耐衝撃性、低温ヒートシール性が十分でないという問題があった。
また、柔軟性、耐キンク性、高周波誘電加熱(高周波ウェルダー適性)に優れた特定のエチレン・α−オレフィン共重合体とエチレン・ビニルエステル共重合体との組成物も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、これらの組成物も構成成分の組み合わせが適当ではなく透明性、耐衝撃性が十分でないという問題があった。
上述の通り、従来の提案では柔軟性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度を備えたうえで透明性、耐衝撃性をもバランス良く備えるエチレン系重合体組成物を得ることは困難であった。
そのため、従来の提案で得たフィルムまたはシートを、温室シート、クリアーケース、歯ブラシケース用途として用いた場合に、中身が見えにくくなるという問題があった。また、手帳ケース、クリアーケースをヒートシールや高周波ウェルダーでシールした場合、使用しているうちに、シール部がはがれてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−330974号公報
【特許文献2】特開平7−196862号公報
【特許文献3】特開2002−88169号公報
【特許文献4】特開2003−3026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度に優れたエチレン系重合体組成物、それからなるフィルム及びシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、特定の性状を有するエチレン・α−オレフィン共重合体と特定の性状を有するエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体の組み合わせに関する数多くの実験を行った結果、エチレン・α−オレフィン共重合体が有する結晶化度とエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体中の共重合性含極性基モノマー含有量が特定の関係を満たすように両者を配合すると、柔軟性、透明性、耐衝撃性を保ちながら、高周波ウェルダー適性及び低温ヒートシール強度に優れたエチレン系重合体組成物が得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記成分(A)40〜74重量%と、下記成分(B)26〜60重量%とを含有する組成物であって、かつ、条件(a)及び条件(b)を満たすことを特徴とするエチレン系重合体組成物が提供される。
成分(A):下記(A1)〜(A3)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(A1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分
(A2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0以下
(A3)結晶化度[D]が1〜60wt%
成分(B):下記(B1)〜(B2)の特性を有するエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体
(B1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.01〜50g/10分
(B2)エチレン共重合性含極性基モノマー含有量が2.6〜14mol%
条件(a)
成分(A)の結晶化度[D](wt%)と、成分(B)のエチレン共重合性含極性基モノマー含有量[CM](mol%)とが式(1)の関係を満たす。
−0.137[D]+7.32≦[CM]≦−0.137[D]+12.9 …(1)
条件(b)
エチレン系重合体組成物における周波数1MHzで測定したときの誘電率[ε]と成分(A)の結晶化度[D](wt%)とが式(2)の関係を満たす。
[D]≦0.9091[ε]+63 …(2)
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(A)が下記(A4)の特性を満たすことを特徴とするエチレン系重合体組成物が提供される。
(A4)α−オレフィンの含有量が5〜40重量%
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(B)のエチレン共重合性含極性基モノマーが酢酸ビニル、メタクリル酸、アクリル酸エチルまたはメタクリル酸メチルのいずれかであることを特徴とするエチレン系重合体組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明のエチレン系重合体組成物からなるフィルムまたはシートが提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明のフィルムまたはシートからなるチャック付き袋が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエチレン系重合体組成物は、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度をバランス良く備える組成物である。また、該エチレン系重合体組成物からなるフィルムまたはシートは柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度をバランス良く備え、その利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
1.エチレン系重合体組成物の構成成分
本発明のエチレン系重合体組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(成分(A))とエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体(成分(B))とを含有する組成物であり、各構成成分、製法を詳細に説明する。
【0016】
(1)成分(A)
本発明のエチレン系重合体組成物において、成分(A)として用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体であり、次の(i)〜(iii)の性質を有している。
(i)モノマー構成
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜18のα−オレフィンであり、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体が挙げられる。また、α−オレフィンは1種または2種以上の組み合わせでもよい。2種のα−オレフィンを組み合わせた三元共重合体(ターポリマー)としては、エチレン・プロピレン・ヘキセンターポリマー、エチレン・ブテン・ヘキセンターポリマー、エチレン・プロピレン・オクテンターポリマー、エチレン・ブテン・オクテンターポリマーが挙げられる。
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン単位の量は、特性(A4)として後述する。
【0017】
(ii)重合触媒及び重合法
エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法は、上記性状を満たす限りにおいて特に限定されるものではない。一般に触媒の存在下エチレンとα−オレフィンとを共重合して得られる。触媒はチーグラー触媒、メタロセン系触媒等が使用でき、好ましくはメタロセン系触媒が使用できる。
上記メタロセン系触媒としては、特開昭58−19309号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開平3−163088号の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報W091/04257号明細書等に記載されている触媒、すなわち、メタロセン化合物、メタロセン化合物/アルモキサン触媒等、または、例えば国際公開公報W092/07123号明細書等に開示されている様なメタロセン化合物とメタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒等を挙げることができる。
メタロセン系触媒に使用されるメタロセン化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム等のIV〜VI族遷移金属化合物、好ましくはIV族遷移金属化合物と、シクロペンタジエンあるいはシクロペンタジエン誘導体との有機遷移金属化合物を使用することができる。
シクロペンタジエン誘導体としては、ペンタメチルシクロペンタジエン等のアルキル置換体、あるいは2以上の置換基が結合して飽和もしくは不飽和の環状置換基を構成したものを使用することができ、代表的には、インデン、フルオレン、アズレン、あるいはこれらの部分水素添加物等を挙げることができる。
また、複数のシクロペンタジエンあるいはシクロペンタジエン誘導体がアルキレン基、シリレン基等で結合されたものを用いることもできる。
重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気層流動床法(例えば、特開昭59−23011号公報に記載の方法)、溶液法、または圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法若しくは高圧イオン重合法等が挙げられる。
また、本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、市販品から適宜選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製カーネル(登録商標)などを例示することができる。
【0018】
(iii)特性
(A1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは1.0〜20g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが0.1g/10分未満では樹脂圧力が高く成形性が不良となり、100g/10分を超えるとフィルムを得るために、成形性が不良になる。
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0019】
(A2)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、4.0以下であり、好ましくは1.5〜3.5であり、より好ましくは2.0〜2.5である。Mw/Mnが4.0を超えると、べた付き性が出てくるため、取り扱い性に欠け、好ましくない。
なお、Mw/Mnの測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.723、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
【0020】
(A3)結晶化度
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化度は、1〜60wt%であり、好ましくは2〜50wt%であり、より好ましくは7〜45wt%、更に好ましくは15〜40wt%である。結晶化度が60wt%を超えると、柔軟性に欠け好ましくない。一方、結晶化度が1wt%未満となると、べた付き、成形品同士のブロッキングが生じるため好ましくない。
なお、結晶化度は、広角X線測定により、次に示す方法にて作製したプレスシートを用いて求める値である。
【0021】
プレスシート作製条件:
サンプルを160℃で3分間予熱し、160℃、150kgf/cmにて1分間加圧した。その後14℃/minにて室温まで冷却し、厚さ2mmのプレスシートを得、試験片とした。
【0022】
結晶化度の測定方法及び条件:
装置:X線回折装置 理学電機社製 ultrax18
出力:40kV−250mA
ターゲット:Cu(CuKα)
光学系:第1ピンホールコリメータ 1.0mmφ
レシービングスリット(縦幅スリット1゜ 横幅スリット1゜)
測角範囲:2θ=10〜30゜ (対称透過法)
【0023】
結晶化度測定法:
2θ=10〜30゜の範囲の回折強度曲線を多重ピーク分離法により、(110)と(200)面の結晶質ピークと非晶質ハローに分離し、結晶質ピークの全積分強度(A)と非晶質ハローの積分強度(B)を用いて次式から算出した。
結晶化度(wt%)=(A/(A+B))×100
【0024】
(A4)α−オレフィンの含有量
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンの含有量は、5〜40重量%が好ましく、より好ましくは7〜35重量%、さらに好ましくは9〜30重量%である。α−オレフィンの含有量が少ない場合、フィルムやシートの衝撃強度、及び柔軟性が得られず、多すぎる場合は耐熱性が損なわれる。
なお、α−オレフィンの含有量は、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0025】
(2)成分(B)
本発明のエチレン系重合体組成物において、成分(B)として、エチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体を用いる。
コモノマーとして用いられるエチレン共重合性含極性基モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−メチルプロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル等を挙げることができる。これらの中では、酢酸ビニル、メタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルが好ましい。
かかるエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体の具体例としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられ、これらの共重合体の2種以上の混合物であっても良い。
本発明に用いるエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体は、市販品から適宜選択して使用することができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体において、市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製ノバテックEVA(登録商標)などを例示することができる。
【0026】
また、本発明で用いるエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体(B)は、下記(B1)〜(B2)の特性を有する。
(B1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)
本発明で用いる成分(B)のMFRは、0.01〜50g/10分、好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは2〜10g/10分である。成分(B)のMFRが0.1g/10分未満であると、成分(A)と成分(B)の相溶性に欠け、高周波ウェルダー適性等の物性を改良しないので、好ましくない。また、MFRが50g/10分を超えると、成形安定性に欠けるため好ましくない。
なお、MFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する。
【0027】
(B2)エチレン共重合性含極性基モノマー含有量
本発明で用いる成分(B)のエチレン共重合性含極性基モノマー含有量は、2.6〜14mol%、好ましくは3.3〜10mol%、さらに好ましくは、3.3〜9mol%である。成分(B)のコモノマー含有量が2.6mol%未満では高周波ウェルダー適性が十分ではなく、14mol%を超えると、エチレン系重合体組成物の透明性改良が困難であり、また、べた付くため取り扱い性に欠けて好ましくない。
なお、成分(B)のコモノマー含有量は、赤外分析法により特性ピークに基づいて測定する。特性ピークは、通常採用される波数を用いればよく、例えば、コモノマーが酢酸ビニルである場合には、1740cm−1と1460cm−1のピーク、アクリル酸エチルである場合には、1030cm−1のピークを用いる。
【0028】
(3)成分(A)と成分(B)の配合割合
本発明のエチレン系重合体組成物において、成分(A)と(B)の配合割合は、成分(A)40〜74重量%、及び成分(B)26〜60重量%であり、好ましくは成分(A)52〜72重量%、及び成分(B)28〜48重量%であり、さらに好ましくは成分(A)53〜70重量%、及び(B)30〜47重量%である。成分(B)が26重量%未満では、エチレン系重合体組成物に高周波ウェルダー適性を付与できず好ましくない。また成分(B)が60重量%を超えると、耐衝撃性、低温ヒートシール強度に欠け好ましくない。
【0029】
(4)エチレン系重合体組成物の特性
本発明のエチレン系重合体組成物は、条件(a)を満たし、好ましくはさらに条件(b)を満たす特性を有する。
(i)条件(a)
成分(A)の結晶化度[D](wt%)と、成分(B)のエチレン共重合性含極性基モノマー含有量[CM](mol%)とは式(1)の関係を満たし、
−0.137[D]+7.32≦[CM]≦−0.137[D]+12.9 …(1)
好ましくは、式(1)’を満たし、
−0.137[D]+7.57≦[CM]≦−0.137[D]+12.6 …(1)’
より好ましくは、式(1)”を満たす。
−0.137[D]+7.83≦[CM]≦−0.137[D]+12.2 …(1)”
【0030】
[CM]が−0.137[D]+7.32未満であると透明性が悪化し、−0.137[D]+12.9を超えても透明性が悪化する。
なお、式(1)は経験的に導かれたもので、理論的な意味合いは明らかとされてはいないが、式(1)の範囲内となる成分(A)と成分(B)との組み合わせにおいては、両成分の親和性が増し、組成物としたときの分散性が高まることが原因と考えられる。
【0031】
(ii)条件(b)
本発明のエチレン系重合体組成物において、組成物における周波数1MHzで測定したときの誘電率[ε]と、成分(A)の結晶化度[D](wt%)とは、好ましくは式(2)の関係を満し、
[D]≦0.9091[ε]+63 …(2)
より好ましくは、式(2)’を満たし、
0.9091[ε]+4≦[D]≦0.9091[ε]+60 …(2)’
さらに好ましくは、式(2)”を満たす。
0.9091[ε]+15≦[D]≦0.9091[ε]+58 …(2)”
【0032】
[D]が0.9091[ε]+63を超えるとシール不足が生じる。
なお、式(2)は経験的に導かれたもので、理論的な意味合いは明らかとされてはいないが、式(2)の範囲内となる組成物と成分(A)との組み合わせにおいて、高周波を与えたときの発熱と樹脂全体の融解のバランスがよくなっていることが関係していると考えられる。
また、[ε]は、組成物中の成分(B)の割合や、成分(B)のコモノマー含有量等を調整し、組成物中のエチレン共重合性含極性基モノマー単位量を調整することにより、変化させることが可能である。目安として、組成物中のエチレン共重合性含極性基モノマー単位量が2.5mol%以上とするのが好ましい。
ここで、誘電率[ε]は、JIS−K6922−2:1997附属書(電圧上昇比法)に準拠して測定する値である。
【0033】
(5)他の成分
本発明のエチレン系重合体組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、一般に樹脂組成物用として用いられる補助添加成分や改質剤を必要に応じて配合することもできる。そのような補助添加剤成分や改質剤としては、例えば、酸化防止剤(中でも、フェノール系、及びリン系酸化防止剤が好ましい)、アンチブロッキング剤、中和剤、熱安定剤、無機フィラー、界面活性剤、抗菌剤、顔料、粘着防止剤を挙げることができる。上記補助添加剤成分を配合する場合、上記成分(A)及び成分(B)の混合前、混合途中、あるいは混合後に、配合することができる。
【0034】
さらに、本発明のエチレン系重合体組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、その他の熱可塑性樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、その他の熱可塑性エラストマーなどの樹脂材料を配合することもできる。上記樹脂材料を配合する場合、上記成分(A)及び成分(B)の混合前、混合途中、あるいは混合後に配合することができる。
【0035】
2.エチレン系重合体組成物の製造
本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法は、上記成分(A)及び成分(B)を、必要に応じて、他の添加成分及び他の樹脂材料とともに、混合又は溶融混練する方法によって製造することができる。成分(B)の分散性の観点で、溶融混練する方法によって製造することが好ましい。ここで用いることができる溶融混練機としては、例えば、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ロールミル、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等を挙げることができる。
【0036】
3.エチレン系重合体組成物からのフィルムまたはシート
本発明のフィルムまたはシートは、上記エチレン系重合体組成物から、Tダイ成形、押出成形、異型押出成形、圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、カレンダー成形などの成形方法により得られる。
【0037】
本発明のフィルムまたはシートは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度をバランス良く備えるエチレン系重合体組成物からなるフィルムまたはシートであるので、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度のバランス良く、その用途としては、食品包装材、機械、電気部品の容器、文具、OA機器、家電製品、自動車部品、包装容器、チューブ、ホース、床材などに加工され用いられる。
特に、従来の提案では高周波ウェルダー適性と低温ヒートシール強度のバランスが悪くて問題となっていた、温室シート、遮水シート、ブックカバー、クリアーケース、機器ケース、又は歯ブラシケース、手帳ケース、クリアーケース、ポーチなどのチャック付き袋の用途に有効に利用できる。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例で説明する。これらの実施例及び比較例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明は実施例の範囲のみに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性の評価方法及び用いた樹脂、フィルム、シートの成形方法は以下に示す通りである。
【0039】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):前述の通り、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)Mw/Mn:前述の通り、GPCにより測定した。
(3)結晶化度:前述の通り、広角X線測定により求めた。
(4)ヘーズ(HAZE):JIS−K7136−2000に準拠して測定した。
(5)引張弾性率(MD):ISO1184−1983に準拠し、積層体のMD方向(フィルムまたはシートの引き取り方向)の引張弾性率を測定した。この値が小さい程、柔軟性に優れていることを示す。
(6)打ち抜き衝撃強度:JIS P8134に準じた試験機を用い、貫通部に鏡面光沢の表面を有した25.4mmΦの半球型の金属製のものを用いて測定した。
(7)高周波ウェルダー適性:山本ビニター(株)製の高周波ウェルダー成形機、YC−7000Fを用いてシールを行った。高周波ウェルダー成形の条件は次の通りである。
出力:7kw
電流:0.6アンペア
ゲージ圧力:6.3kg/cm
溶着適性:上記条件でシールした後、手で180度剥離試験を行い、はがれなかったものを「○」、はがれたものを「×」として評価を行った。
(8)ヒートシール強度:50μm厚のインフレーション成形フィルムを2枚重ね、温度:105℃、圧力:2kg/cm、時間:0.5秒の条件で、ヒートシールを行い、15mm幅の180度剥離強度を測定した。
(9)誘電率:JIS−K6922−2:1997附属書(電圧上昇比法)に準拠して測定した。
【0040】
2.実施例、比較例で用いた成分(A)及び成分(B)
(1)成分(A)
成分(A)として、製造例1〜5で得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1〜PE−5)を用いた。その物性を表1に示す。
【0041】
(製造例1)
(1−1)触媒の調製は、特表平7−508545号公報に記載された方法で実施した。すなわち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
(1−2)重合
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が66重量%となるように40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が140℃を維持するようにその供給量を調整した。1時間あたりのポリマー生産量は約2.3kgであった。
反応終了後、MFRが3.5g/10分、結晶化度が31.9wt%、Mw/Mnが2.3であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)を得た。
【0042】
(製造例2)
重合時の1−ヘキセンの組成を70重量%にし、重合温度を132℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.3kgであった。反応終了後、MFRが3.5g/10分、結晶化度が23wt%、Mw/Mnが2.3であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−2)を得た。
【0043】
(製造例3)
重合時の1−ヘキセンの組成を2.6重量%にし、重合温度を180℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約3.3kgであった。反応終了後、MFRが3.5g/10分、結晶化度が72wt%、Mw/Mnが2.3であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−3)を得た。
【0044】
(製造例4)
重合時の1−ヘキセンの組成を54重量%にし、重合温度を156℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.7kgであった。反応終了後、MFRが3.5g/10分、結晶化度が46.1wt%、Mw/Mnが2.3であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−4)を得た。
【0045】
(製造例5)
重合時の1−ヘキセンの組成を76重量%にし、重合温度を121℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.9kgであった。反応終了後、MFRが3.5g/10分、結晶化度が4wt%、Mw/Mnが2.3であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−5)を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
(2)成分(B)
成分(B)として、表2に示すエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA1〜EVA5)(日本ポリエチレン社製「ノバテックEVA(登録商標)」及び三井・デュポン ポリケミカル社製「エバフレックス」)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA1)(EASTMAN CHEMICAL社製)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA1)(三井・デュポン ポリケミカル社製「エバフレックス−EEA」)及びエチレン・メタクリル酸メチル共重合体(EMMA1)(住友化学工業製「アクリフトEMMA」)を用いた。各物性を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
3.フィルム、シートの作製方法
(1)フィルムの作製
口径50mmの押出機に装着した直径80mm、リップ巾3mmの環状ダイより160℃にて溶融して、押出し、ブロー比2、引き取り速度15m/分にて空冷インフレーション成形を行い、厚み50μmのフィルムを得た。
(2)プレスシートの作製
サンプルを160℃で3分間予熱し、160℃、150kgf/cmにて1分間加圧した。その後14℃/minにて室温まで冷却し、200μm厚のプレス成形シートを得た。
【0050】
(実施例1)
成分(A)として、PE−1を55重量%、成分(B)として、EVA1を45重量%を40mm単軸押出機を用いて溶融混練することによって、エチレン系重合体組成物を得た。その組成物を用いて、前述の方法でフィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0051】
(実施例2)
成分(A)として、PE−2を55重量%、成分(B)として、EVA2を45重量%とする以外は実施例1と同様にして、フィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0052】
(実施例3)
成分(B)として、EMA1を用いたこと以外は実施例2と同様にして、フィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0053】
(実施例4)
成分(B)として、EEA1を用いたこと以外は実施例2と同様にして、フィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0054】
(実施例5)
成分(B)として、EMMA1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0055】
(実施例6)
成分(A)として、PE−1を65重量%、成分(B)として、EVA1を35重量%を用いて、エチレン系重合体組成物を得た。その組成物を用いて、前述の方法でフィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0056】
(実施例7)
成分(A)として、PE−5を55重量%、成分(B)として、EVA3を45重量%とする以外は実施例1と同様にして、フィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0057】
(実施例8)
成分(A)として、PE−4を55重量%、成分(B)として、EVA5を45重量%とする以外は実施例1と同様にして、フィルム及びシートを作製し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
(比較例1)
成分(B)のEVA1のみを用いて、フィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、ヘーズ、引張弾性率、高周波ウェルダー適性は良好であるが、打ち抜き衝撃強度、105℃ヒートシール強度に劣る。
【0060】
(比較例2)
成分(A)として、PE−1を75重量%、成分(B)として、EVA1を25重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、ヘーズ、引張弾性率、打ち抜き衝撃強度、105℃ヒートシール強度は良好であるが、高周波ウェルダー適性に劣る。
【0061】
(比較例3)
成分(A)として、PE−1を25重量%、成分(B)として、EVA1を75重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、ヘーズ、引張弾性率、105℃ヒートシール強度、高周波ウェルダー適性は良好であるが、打ち抜き衝撃強度に劣る。
【0062】
(比較例4)
成分(B)として、EVA3を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、引張弾性率、打ち抜き衝撃強度、105℃ヒートシール強度、高周波ウェルダー適性は良好であるが、ヘーズに劣る。
【0063】
(比較例5)
成分(A)として、PE−3を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、ヘーズ、打ち抜き衝撃強度、105℃ヒートシール強度は良好であるが、引張弾性率、高周波ウェルダー適性に劣る。
【0064】
(比較例6)
成分(A)のPE−1のみを用いて、フィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、ヘーズ、引張弾性率、打ち抜き衝撃強度、105℃ヒートシール強度は良好であるが、高周波ウェルダー適性に劣る。
【0065】
(比較例7)
成分(A)として、PE−4を用いたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、引張弾性率、打ち抜き衝撃強度、105℃ヒートシール強度は良好であるが、ヘーズ、高周波ウェルダー適性に劣る。
【0066】
(比較例8)
成分(A)として、PE−5を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム及びシートを作製した。その結果を表4に示す。
このものは、引張弾性率、打ち抜き衝撃強度は良好であるが、ヘーズ、105℃ヒートシール強度に劣る。
【0067】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のエチレン系重合体組成物は、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度をバランス良く備える、フィルム及びシートであるため、その利用価値は極めて大きい。特に、従来の提案では問題となっていた、温室シート、クリアーケース、歯ブラシケース、手帳ケース、クリアーケースなどの用途に有効に利用できる。また、これだけの分野にとどまらず、軟質ポリ塩化ビニルの代替材料として、食品包装材、機械、電気部品の容器、文具、OA機器、家電製品、自動車部品、包装容器、チューブ、ホース、床材、フィルム、シートなどの用途に有効に利用できる。
本発明のフィルムまたはシートは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度をバランス良く備える組成物からなるフィルムまたはシートであるので、柔軟性、透明性、耐衝撃性、高周波ウェルダー適性、低温ヒートシール強度のバランス良く、その用途としては、食品包装材、機械、電気部品の容器、文具、OA機器、家電製品、自動車部品、包装容器、チューブ、ホース、床材などに加工され用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)40〜74重量%と、下記成分(B)26〜60重量%とを含有する組成物であって、かつ、条件(a)及び条件(b)を満たすことを特徴とするエチレン系重合体組成物。
成分(A):下記(A1)〜(A3)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(A1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分
(A2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0以下
(A3)結晶化度[D]が1〜60wt%
成分(B):下記(B1)〜(B2)の特性を有するエチレンとエチレン共重合性含極性基モノマーとの共重合体
(B1)メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.01〜50g/10分
(B2)エチレン共重合性含極性基モノマー含有量が2.6〜14mol%
条件(a)
成分(A)の結晶化度[D](wt%)と、成分(B)のエチレン共重合性含極性基モノマー含有量[CM](mol%)とが式(1)の関係を満たす。
−0.137[D]+7.32≦[CM]≦−0.137[D]+12.9 …(1)
条件(b)
エチレン系重合体組成物における周波数1MHzで測定したときの誘電率[ε]と成分(A)の結晶化度[D](wt%)とが式(2)の関係を満たす。
[D]≦0.9091[ε]+63 …(2)
【請求項2】
成分(A)が下記(A4)の特性を満たすことを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合体組成物。
(A4)α−オレフィンの含有量が5〜40重量%
【請求項3】
成分(B)のエチレン共重合性含極性基モノマーが酢酸ビニル、メタクリル酸、アクリル酸エチルまたはメタクリル酸メチルのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系重合体組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレン系重合体組成物からなるフィルムまたはシート。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルムまたはシートからなるチャック付き袋。

【公開番号】特開2010−265481(P2010−265481A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187066(P2010−187066)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2004−60452(P2004−60452)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】