説明

エネルギー管理システム、方法及びプログラム

【課題】需要家主体間の公平性を考慮することが可能な、エネルギー利用の制限方法を提供する。
【解決手段】需要家の負荷に接続された電力計測装置2a〜2nと、複数の需要家の電力計測装置とネットワークを介して接続された管理装置1を有する。電力計測装置2a〜2nは、需要家負荷の電力需要量を計測する計測部201と電力需要を抑制する制御部203を有する。管理装置1は、電力計測装置と計測データを授受する通信部104と、各需要家の電力使用量上限を算出する演算部103を有する。管理装置1は、電力計測装置で計測された各需要家の電力需要を取得し、演算部において、各需要家のピーク対平均電力比が、同じとなるように電力使用量の上限を決定する。管理装置1は、電力使用量の上限値を各需要家に接続された電力計測装置に送信する。電力計測装置は、送信された上限値に従ってその需要家の電力使用量を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、様々な機器や装置、システムを対象とするエネルギー管理システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力供給システムは、集中型電源と送電系統との一体運用であった。近年、情報通信技術(ICT)を利用することにより、太陽光発電や風力発電等の分散型電源や需要家の情報を統合・活用して、高効率、高品質、高信頼性を有する電力供給システム(スマートグリッドと呼ばれる)の実現が要望されている。
【0003】
情報通信技術が様々な電力使用機器に適用されるようになると、より細かい粒度で電力情報の取得や電力の需給制御が可能となる。すなわち電力不足が発生した場合には、需要家に対して個別に電力抑制を実施するといったことが可能となる。
【0004】
複数の主体に対してエネルギー利用を抑制する方法には、次のようなものがある。
(1) 電力会社が需要家への電力供給を開始及び終了する機能を備えた電力メーターを使用する方法(例えば、特許文献1参照)。
(2) 予め設定された条件に従って機器ごとに電力供給を選択的に制限する方法(例えば、特許文献2参照)。
(3) 電力ピーク時の到来を個々の顧客にネットワークを介して伝達し、顧客側での自主的な電力需要の抑制を図る方法(例えば、特許文献3参照)。
(4)電力抑制による性能損失を推定することにより、データセンターにおいて電力を動的に割り当てる方法(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−120461号公報
【特許文献2】特開2011−101536号公報
【特許文献3】特開2010−128810号公報
【特許文献4】特開2011−123873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力不足に伴う電力抑制を実施する場合には、削減目標値の達成に加えて、各需要家主体間の公平性を担保した負担配分が必要となる。しかし、これまでの、複数の主体に対してエネルギー利用を制限・抑制する方法においては、需要家主体間の公平性を考慮することはできなかった。
【0007】
本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、需要家主体間公平性を考慮することが可能なエネルギー管理システム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のエネルギー管理システムは、次の構成を有することを特徴とする。
【0009】
(1) 需要家の負荷に接続された電力計測装置と、複数の需要家の電力計測装置とネットワークを介して接続された管理装置を有する。
【0010】
(2) 前記電力計測装置は、需要家負荷の電力需要量を計測する需要量計測部と、需要家負荷の電力需要を抑制する制御部を有する。
【0011】
(3) 前記管理装置は、電力計測装置と計測データを授受する通信部と、各需要家の電力使用量上限を算出する演算部と有する。
【0012】
(4) 前記管理装置は、電力計測装置で計測された各需要家の電力需要を取得し、各需要家のピーク対平均電力比(PAPR, Peak to Average Power Ratio)が、同じとなるように電力使用量の上限を決定する。
【0013】
(5) 前記管理装置は、電力使用量の上限値を各需要家に接続された電力計測装置に送信し、各需要家の電力計測装置は、送信された上限値に従ってその需要家の電力使用量を抑制することによって、全体のエネルギー削減目標を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るエネルギー管理システムの構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態における管理装置のブロック図
【図3】第1実施形態における電力計測装置のブロック図
【図4】第1実施形態の処理を説明するフローチャート
【図5】第1実施形態の入力部による初期設定値の一例を示す図
【図6】第1実施形態の入力部による各需要家の消費電力計測値の一例を示す図
【図7】第2実施形態の電力需要を示すグラフ
【図8】第2実施形態の処理を説明するフローチャート
【図9】第3実施形態の処理を説明するフローチャート
【図10】第4実施形態の電力需要を示すグラフ
【図11】第4実施形態の処理を説明するフローチャート
【図12】第5実施形態の電力需要を示すグラフ
【図13】第6実施形態の構成を示すブロック図
【図14】第6実施形態における電力計測装置の処理を説明するフローチャート
【図15】第6実施形態における管理装置の処理を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
1.第1実施形態
(1)構成
図1は、本実施形態に係るエネルギー管理システムの構成例を示したものである。本実施形態のシステムは、管理装置1と各需要家に設けられた電力計測装置2a〜2nを有する。
【0017】
図1に示すように、この管理装置1は、送配電系統50に接続された複数の管理単位51ごとに設けられている。この管理単位51は、一定範囲の地域、ビル、マンション、工場、複数の需要家のグループなどから構成される。
【0018】
送配電系統50には、前記複数の管理単位51とは別に、電源が接続されている。この電源としては、水力、火力、原子力などの発電所52、太陽光発電装置53、風力発電装置54、電気自動車や建物内に設けられたバッテリー群などの蓄電装置55が接続されている。これらの電源には、前記管理単位51に属する地域、ビル、マンションなどに設けられた発電装置や蓄電装置も包含される。
【0019】
前記各管理単位51には、送配電系統50から電力供給線56が延長され、この電力供給線56に、それぞれ電力計測装置2a〜2nを介して、複数の負荷3a〜3nが接続されている。前記管理装置1と、各負荷の電力計測装置2a〜2nとは通信線57によって接続され、各電力計測装置2a〜2nによって計測された各負荷の電力使用量が管理装置1に送信される。
【0020】
前記管理装置1には、制御盤や操作端末などの入力装置4が接続されている。この入力装置4は、供給可能な電力や予備電力の容量など、需要家の電力使用量上限値を計算するために必要な情報を入力する装置であり、人が情報を設定するためのコンピュータでもよいし、上位のエネルギー管理装置であってもよい。
【0021】
前記管理装置1は、図2に示すように、入力装置4からのデータを取得する入力部101と、取得したデータを保持するデータ保持部102と、取得したデータを基に需要家の電力使用量の上限値を計算する演算部103を有する。本実施の形態において、この演算部103は、各電力計測装置2a〜2nにおいて計測した各需要家の電力使用量のピーク電力対平均電力の比を基に、各需要家の電力使用量の上限を決定する。
【0022】
前記管理装置1は、計算した電力使用量の上限値を各電力計測装置2a〜2nに送信する通信部104を有する。この通信部104は、前記電力計測装置2a〜2nで計測した各負荷の電力使用量を受信し、前記データ保持部102に記憶させる機能も有する。
【0023】
電力計測装置2a〜2nは、図3に示すように、各需要家負荷の消費電力量を計測し管理装置1に送信する計測部201を有する装置であり、スマートメータ(通信・制御機能付きの電力量計)を想定している。そのため、電力計測装置2a〜2nには、計測した電力量(負荷の需要電力量)を前記管理装置1に送信したり、管理装置1が演算した電力使用量の上限値を受信する通信部202を有する。
【0024】
電力計測装置2a〜2nは、管理装置1から取得した上限値に基づいて、需要家負荷の電力使用量を制限する制御部203を有する。この制御部203には、負荷3a〜3nに供給する電力を制限するスイッチ部204が接続されている。このスイッチ部204としては、サイリスタやパワートランジスタを使用したチョッパ回路などが使用できる。
【0025】
制御部203には、電力計測装置2a〜2nに対して管理用あるいは制御用の各種データやコマンドを入力するための入力部205と、入力部205からのデータや計測部201で取得した計測データ、管理装置1からの上限値などのデータを保存する記憶部206、及び各種データや負荷の運転状態などを表示する表示部207が設けられている。
【0026】
(2)作用
図4は、本実施形態の処理動作を説明するためのフローチャートであり、各需要家負荷の消費電力量を取得し、電力使用量の上限値を送信するまでの一連の手順を示している。
【0027】
以下、本実施形態の作用を、図4に従って具体例を挙げて説明する。
ステップS1では、入力装置4で設定した供給可能な最大電力Psと予備電力の容量Pbを、管理装置1の入力部101が取得する。ここで、予備電力の容量Pbは、供給可能な最大電力Psに対する割合(例えば10%)により決定してもよい。入力部101が取得した設定値に基づいて、全体の電力制限目標値Pcを数1の式により算出する。
【0028】
【数1】

【0029】
ステップS1で取得あるいは算出した値をデータ保持部102に、例えば図5の形式で保持する。ステップS2では、管理装置1の通信部104を経由して、電力計測装置2a〜2nの計測部201で計測された需要家負荷3a〜3nの消費電力値を取得する。これらの消費電力値は、データ保持部102に、例えば図6の形式で保持する。
【0030】
ステップS3では、管理装置1の演算部103において、各需要家に対して、電力の使用制限を実施するかどうかを判定する。判定の一例として、各需要家の消費電力合計が電力制限目標値Pc以上となった時に電力使用制限を実施する。
【0031】
ステップS4では、管理装置1の演算部103において、各需要家の電力制限目標値を算出する。ここで、需要家iの電力制限値をpciとすると、数2に示すように、各需要家に課せられる電力制限目標値の合計を、全体の電力制限目標値と等しくなるように設定すればよい。
【0032】
【数2】

【0033】
各需要家のピーク対平均電力比が一致するように電力制限目標値を設定する場合、ピーク対平均電力比をR、需要家iの平均消費電力をpmiとすると、数3の関係を満たせばよい。
【0034】
【数3】

【0035】
数2と数3より、全体の電力制限目標値Pcを達成するために各需要家に課すピーク対平均電力比は、数4に示すように、各需要家の平均消費電力と目標とする全体の電力制限から算出される。
【0036】
【数4】

【0037】
以上より、各需要家の電力制限目標値を算出するためには、初めに、数4により各需要家に課すピーク対平均電力比を算出し、数3により各需要家の電力制限目標値を算出すればよい。
【0038】
ステップS5では、管理装置1の出力部104において、ステップS4で算出した各需要家の電力制限目標値を電力計測装置2a〜2nへ送信する。
【0039】
以降、ステップS2からS5のフローを一定の時間間隔(例えば1分)で繰り返し実行する。
【0040】
各需要家の電力制限目標値を通信部202において受信した各電力計測装置2a〜2nは、その目標値を制御部203に送る。制御部203では、その目標値203に合わせてスイッチ部204を制御することで、電力線56から各負荷3a〜3nに対する電力供給量を制限する。
【0041】
(3)効果
以上のような構成を有する本実施形態においては、管理装置1がピーク対平均電力比を基に各需要家の電力使用量の上限を決定することで、需要家主体間の公平性を考慮して電力使用量を制限することが可能となる。
【0042】
2.第2実施形態
前記の実施形態では、管理装置1に設けられた演算部103が、ピーク対平均電力比を基に各需要家の電力使用量の上限を決定していた。その場合、短時間のピーク値を基準として「ピーク対平均電力比」の演算を行うと、電力需要の実体と一致しないことが考えられる。
【0043】
本実施形態では、一定時間Tc以上の電力需要のピークを演算の基礎となるピーク値とすることで、短時間のピークを無視する。すなわち、本実施形態では、各需要家のピーク対平均電力比を求めるにあたり、演算の基礎となるピーク値を、一定時間以上継続するピーク電力値に基づいて決定する。
【0044】
図7は、本実施形態を説明する電力需要量とその継続時間を示すグラフである。この図7において、W1〜W4はそれぞれ電力需要のピーク値で、W3>W2>W1>W4の関係にある。t1〜t4は、各ピーク値W1〜W4の継続時間である。第1実施形態では、t1〜t4の値に関係なく、最も大きなピーク値W3を基に「ピーク対平均電力比」の演算を行うものとした。
【0045】
一方、本実施形態では、図8のフローチャートに示すように、次のような処理を行う。ステップS1において、一番大きなピーク値W3の継続時間t3を累積時間Tとする(T=t3)。次に、ステップS2において、予め設定した基準時間Tcと累積時間Tとを比較する。この場合、累積時間Tが基準時間Tcよりも小さい場合(Tc>T)は、ステップS3に進む。
【0046】
ステップS3では、一番大きなピーク値W3の継続時間t3に対して次に大きいピーク値W2の時間t2を加えて、新たな累積時間Tとし、ステップS2に戻り、新たな累積時間Tと基準時間Tcとを比較する。以下、累積時間Tが基準時間Tcよりも大きくなるまで、この処理を繰り返す。
【0047】
ステップS2において、累積時間Tが基準時間Tcよりも大きくなった場合(T≧Tc)は、ステップS4に進む。ステップS4では、最後に加算したtnに対応するピーク値Wnを、演算部108において「ピーク対平均電力比」の演算を行う際のピーク値とする。
【0048】
例えば、
t3<Tc
t3+t2<Tc
t3+t2+t1<Tc
t3+t2+t1+t4≧Tc
であった場合、t4に対応したW4を演算用のピーク値とする。
【0049】
本実施形態によれば、短時間の電力使用量を排除することができ、需要家の使用実態に沿った電力使用量の制限を行うことが可能になる。特に、単純に一定時間以下のピーク値を排除すると、短時間のピークを他数回繰り返すような電力需要のピークを全て排除することになるが、本実施形態では、累積時間Tと基準時間Tcとを比較することで、短時間のピークの繰り返しの場合も実態に即したピーク値を基に「ピーク対平均電力比」の演算を行うことができる。
【0050】
3.第3実施形態
本実施形態は、前記第2実施形態の変形例であって、各需要家のピーク対平均電力比を求めるにあたり、演算の基礎となるピーク値を、基準時間内におけるピーク電力値の累計に基づいて決定するものである。
【0051】
すなわち、本実施形態では、前記図7に示すような電力需要において、図9に示すようなフローチャートに従って、ピーク値を決定する。
【0052】
図9のステップS1において、一番大きなピーク値W3の継続時間t3を累積時間Tとする(T=t3)。次に、ステップS2において、予め設定した基準時間Tcと累積時間Tとを比較する。この場合、累積時間Tが基準時間Tcよりも小さい場合(Tc>T)は、ステップS3に進む。
【0053】
ステップS3では、一番大きなピーク値W3の継続時間t3に対して次に大きいピーク値W2の時間t2を加えて、新たな累積時間Tとし、ステップS2に戻り、新たな累積時間Tと基準時間Tcとを比較する。以下、累積時間Tが基準時間Tcよりも大きくなるまで、この処理を繰り返す。
【0054】
ステップS2において、累積時間Tが基準時間Tcよりも大きくなった場合(T≧Tc)は、ステップS4に進む。なお、ここまでの処理は、第2実施形態と同)である。本実施形態では、ステップS4において、加算したt1〜tnのピーク値W1〜Wnの平均値Waveを、演算部108において「ピーク対平均電力比」の演算を行う際のピーク値とする。
【0055】
例えば、
t3<Tc
t3+t2<Tc
t3+t2+t1<Tc
t3+t2+t1+t4≧Tc
であった場合、
Wave=(W3・t3+W2・t2+W1・t1+W4・t4)/(t3+t2+t1+t4)
を演算用のピーク値Waveとする。
【0056】
本実施形態によれば、短いピークだけで電力使用量の制限を行うことがない上に、基準時間Tcを越えるピークの電力使用量の平均値を基準とするために、基準時間Tcを越えるピークに大きなバラツキがあっても、実態に即した電力使用量の制限を行うことが可能になる。
【0057】
4.第4実施形態
図10及び図11は、第4実施形態を説明するためのものである。本実施形態は、予め決められた基準電力値Wc以上のピークが示す電力値の平均値を、「ピーク対平均電力比」の演算を行う際のピーク値とする。すなわち、図10において、基準電力値Wcを越えるピーク値W1〜W4の平均電力量Waveをピーク値とする。
Wave=(W3・t3+W2・t2+W1・t1+W4・t4)/(t3+t2+t1+t4)
【0058】
例えば、120A契約の需要家の場合、70%との電流の相当する120A×70%=84A、電力にすると、100V×84A=8.4kWを基準電力値Wcとする。
【0059】
本実施形態では、図11のフローチャートに示すように、ステップS1では、管理装置1において、基準電力値Wcより大きいピークを抽出する。この場合、抽出する時間は任意であるが、需要家の使用態様に合わせて、24時間、工場などの稼働時間、電力制限を行う時間帯など適宜設定できる。
【0060】
ステップS2においては、前記のように抽出した複数のピークの平均電力Waveを、前記の式に基づいて算出する。その後、ステップ3において、平均電力Waveを基準として「ピーク対平均電力比」の演算を行い、需要家ごとの電力使用量を決定する。
【0061】
本実施形態では、予め基準電力量Wcを決定しておくため、平均電力に対するピーク値が存在する場合であっても、そのピーク値が基準電力量Wcよりも低い値である場合には、電力使用量の制限値を演算する基礎となることはない。すなわち、予め定められた基準電力量Wcよりも低い電力使用量の需要家については、電力使用の制限を少なくすることにより、節電に対する協力を促すことができる。
【0062】
5.第5実施形態
本実施形態は、前記各実施形態のピーク値の算出方法が、いずれも電力量Wを基準としていたのに対して、電力料金を加味したものである。すなわち、電力料金は、使用時間帯に応じて異なる場合が多い。そこで、本実施形態では、図12の(a)に示すような電力使用量Wを示すグラフを、図12(b)に示すような時間帯ごとのコストによって補正したグラフに変換する。
【0063】
その後、変換後のグラフに基づいて、前記第1から第4実施形態に記載の方法、すなわち、
(1) 最大ピーク値
(2) 一定時間Tc以上のピーク値Wn
(3) 一定時間Tcを越えるピーク値の平均値Wave
(4) 基準電力量Wcを越えるピーク値の平均値Wave
のいずれかを基準として、「ピーク対平均電力比」の演算を行い、需要家ごとの電力使用量、すなわち制限量を決定する。
【0064】
本実施形態によれば、前記各実施形態の作用効果に加えて、需要家が電力制限を行う場合のコスト削減効果が分かり易く、節電意識をより向上させることができる。
【0065】
6.第6実施形態
本実施形態は、需要家から要求があった場合に、その時間帯については電力使用量の制限を行わないことを特徴とするものである。そのため、図13に示すように、管理装置1の演算部103が、前記各実施形態と同様な演算を行う電力使用量演算部103aと、免除時間帯決定部103bとから構成されている。
【0066】
すなわち、電力制限の免除を希望する時間帯に関するデータが入力部205に入力されると、前記免除時間帯決定部103bは、入力部205から入力された免除を希望する時間帯に関するデータを受信し、電力制限を行うか否かを判断し、電力制限の免除を行うことができる時間帯を決定する。その後、前記免除時間帯決定部103bの決定結果に基づいて、前記免除時間帯制御部103aが、決定された免除を行うことができる時間帯について、その電力制限を免除するように電力使用量制御部203aを制御する。
【0067】
同様に、各電力計測装置2a〜2nの制御部203が、電力使用量制御部203aと、免除時間帯制御部203bとから構成されている。すなわち、電力制限の免除を希望する時間帯に関するデータが入力部205に入力されると、前記入力部205から入力された免除を希望する時間帯に関するデータによって定められた時間帯の電力制限を免除するように、前記免除時間帯制御部203bが電力使用量制御部203aを制御する。
【0068】
なお、免除を希望する時間帯の入力部は、電力計測装置部分に設けられる必要はなく、他の箇所でもよい。また、電力制限の免除を行うかの判断が行われる箇所も、管理装置に限るものではない。本実施形態のように、各部が通信線で接続されている場合、入力部、制御部あるいは決定部等は、離れた箇所に設置されていても、機能を果たすことが可能である。
【0069】
このような構成を有する本実施形態では、図14に示す電力計測装置2a〜2n側では、次のような処理が行われる。まず、ステップS1において、入力装置4からピークカットを免除して欲しい時間帯を電力計測装置2a〜2nに入力する。ステップS2において、電力計測装置2a〜2nは、この時間帯を通信部104を経由して、管理装置1に送信する。同時のこの時間帯は、データ保持部1にも記憶される。
【0070】
管理装置1においては、図15のフローチャートに示すように、ステップS1において、各電力計測装置2a〜2nからのピークカットを免除して欲しい時間帯に関するデータを受信する。ステップS2においては、各電力計測装置2a〜2nから送信された免除して欲しい時間帯が重複するか否かを検査する。
この場合、免除して欲しい時間帯が重複していると、重複した時間帯における電力使用量が増大するので、ステップS3において、免除する時間帯をいずれの需要家の負荷に割り当てるかを決定する。
【0071】
重複している免除する時間帯をどの需要家に割り当てるかは、種々の方法があるが、例えば、
(1) 日ごとに順番で優先する需要家の電力計測装置2a〜2nを選択する。
(2) 選択する需要家の電力計測装置2a〜2nをランダムに決定する。
(3) 電力使用量の大小、公共性や緊急性に応じて、優先順位を決定する。
などの方法を採用できる。
【0072】
一方、ステップS2において免除して欲しい時間帯が重複しない場合には、ステップS4において、要求された時間帯をその需要家の免除する時間帯とする。
【0073】
このようにして、ステップS3またはステップS4において、各需要家について免除する時間帯が決定した後は、ステップ5において、各需要家の電力計測装置2a〜2nに免除する時間帯を送信する。この場合、免除する時間帯は、日ごと、あるいは一定時間や一定期間ごとに設定することができ、それに応じて、管理装置1から各電力計測装置2a〜2nに時間帯を送信するタイミングも適宜設定される。
【0074】
管理装置1から免除する時間帯が送信されると、各電力計測装置2a〜2nでは、図14のフローチャートのステップS3に示すように、自己の免除する時間帯を通信部202で受信する。この免除する時間帯に関するデータは、制御部203に設けられた免除時間帯制御部203bに伝達され、この免除時間帯制御部203bは、同じく制御部203に設けられた電力使用量制御部203aと連携して、免除する時間帯は電力制御を実施しない。
【0075】
一方、他の時間帯については、電力使用量制御部203aが、前記各実施形態に記載した方法のいずれかにより、スイッチ部204を制御して、各電力計測装置2a〜2nに接続された負荷3a〜3nに対する電力供給量を制限する。
【0076】
本実施形態においては、前記各実施形態に示した効果に加えて、各需要家の要求を反映した電力制限が可能になるので、需要家の要望に弾力的に対応できる柔軟な電力制限システムを構築できる。
【0077】
7.他の実施形態
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含する。
【0078】
(1)前記各実施形態は、本発明を管理装置1と電力計測装置2a〜2nとから成るエネルギー管理システムとして説明したが、管理装置1において実行されるエネルギー管理方法や、コンピュータを管理装置1として機能させるためのプログラムも本発明の一態様である。
【0079】
(2)本発明の各実施形態は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することもできる。
【0080】
(3)本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…管理装置
2a〜2n…電力計測装置
3a〜3n…需要家負荷
4…入力装置
101…入力部
102…データ保持部
103…演算部
104…通信部
201…計測部
202…通信部
203…制御部
204…スイッチ部
205…入力部
206…記憶部
207…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家の負荷に接続された電力計測装置と、複数の需要家の電力計測装置とネットワークを介して接続された管理装置を有し、
前記電力計測装置は、需要家負荷の電力需要量を計測する計測部と、電力需要を抑制する制御部を有し、
前記管理装置は、前記電力計測装置と計測データを授受する通信部と、各需要家の電力使用量上限を算出する演算部を有し、
前記演算部は、前記電力計測装置で計測された各需要家の電力需要を取得し、各需要家のピーク対平均電力比が、同じとなるように電力使用量の上限を算出するものであり、
前記管理装置は、前記演算部が算出した電力使用量の上限値を、各需要家に接続された電力計測装置に送信し、前記電力計測装置の制御部は、管理装置から送信された上限値に従ってその需要家の電力使用量を抑制するものであること、
を特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項2】
前記演算部が、各需要家に課せられる電力制限目標値の合計を、需要家全体の電力制限目標値と等しくなるように設定するものであることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項3】
前記演算部が、各需要家のピーク対平均電力比を求めるにあたり、演算の基礎となるピーク値を、一定時間以上継続するピーク電力値に基づいて決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項4】
前記演算部が、各需要家のピーク対平均電力比を求めるにあたり、演算の基礎となるピーク値を、基準時間内におけるピーク電力値の累計に基づいて決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項5】
前記演算部が、各需要家のピーク対平均電力比を求めるにあたり、演算の基礎となるピーク値を、予め決められた基準電力値Wc以上のピークが示す電力値の平均値に基づいて決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項6】
前記演算部が、各需要家のピーク対平均電力比を求めるにあたり、演算の基礎となるピーク値を、電力使用時間帯におけるコストによって補正した値に基づいて決定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のエネルギー管理システム。
【請求項7】
管理装置の演算部が、電力使用量演算部と免除時間帯決定部とから構成され、各電力計測装置の制御部が、電力使用量制御部と免除時間帯制御部とから構成され、需要家から要求が合った場合に、その時間帯については電力使用量の制限を行わないことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエネルギー管理システム。
【請求項8】
電力制限の免除を希望する時間帯に関するデータが入力される入力部と、
前記入力部から入力された免除を希望する時間帯に関するデータにかかる時間帯の電力制限を免除するように、前記電力使用量制御部を制御する免除時間帯制御部と、
を具備することを特徴とする請求項7に記載のエネルギー管理システム。
【請求項9】
電力制限の免除を希望する時間帯に関するデータが入力される入力部と、
前記入力部から入力された免除を希望する時間帯に関するデータを受信し、電力制限を行うか否かを判断し、電力制限の免除を行うことができる時間帯に関するデータを出力する免除時間帯決定部と、
前記免除時間帯決定部により出力された免除を行うことができる時間帯の電力制限を免除するように、電力使用量制御部を制御する免除時間帯制御部と、
を具備することを特徴とする請求項7に記載のエネルギー管理システム。
【請求項10】
複数の需要家に対して、エネルギー需要を制限するための指令を出力するエネルギー管理方法であって、
需要家のエネルギー需要の計測する装置から、需要家のエネルギー需要計測値を取得するステップと、
需要家全体のエネルギー需要制限値を取得するステップと、
エネルギー需要計測値から、各需要家の平均エネルギー需要量を算出するステップと、
前記需要家全体のエネルギー需要制限値と、各需要家の平均エネルギー需要量の積算値から、ピーク対平均電力比を算出するステップと、
前記ピーク対平均電力比と、各需要家の平均エネルギー需要量から、各需要家のエネルギー需要制限値を算出するステップと、
各需要家のエネルギー需要を制限する装置に対して、各需要家のエネルギー需要制限値を送信するステップと、
を有することを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
需要家のエネルギー需要の計測機装置から、需要家のエネルギー需要計測値を取得する手段と、
需要家全体のエネルギー需要制限値を取得する手段と、
前記エネルギー需要計測値から、各需要家の平均エネルギー需要量を算出する手段と、
前記全体のエネルギー需要制限値と、各需要家の平均エネルギー需要量の積算値から、ピーク対平均電力比を算出する手段と、
前記ピーク対平均電力比と各需要家の平均エネルギー需要量から、各需要家のエネルギー需要制限値を算出する手段と、
各需要家のエネルギー需要を制限する装置に対して、各需要家のエネルギー需要制限値を送信する手段と、
として機能させるためのエネルギー管理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−99174(P2013−99174A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241588(P2011−241588)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】