説明

エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法、及びエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物

【課題】分散メディアを用いた分散装置で高顔料濃度の顔料分散液を調製しても粘度の増加が少なく、分散性、及び保存安定性に優れる顔料分散液を調製する。また、この顔料分散液を用いることにより、生産性良くエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を製造する。
【解決手段】顔料、顔料分散剤、重合性化合物の一部、及びヒンダートアミン系重合禁止剤を混合撹拌して混合物を調製し、混合物を分散メディアで分散することにより顔料分散液を調製し、顔料分散液、重合性化合物の残部、及び光重合開始剤を混合撹拌して、インク組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法に関する。特に、本発明は、着色材として顔料を含有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、圧力、熱、電界などを駆動源として用いることにより、液状のインクをノズルから記録媒体に向けて吐出させて印刷する記録方式である。このような記録方式は、ランニングコストが低く、高画質化が可能であり、また用途に合わせて各種のインクを印字できることから、近年、市場を拡大している。
【0003】
インクジェット記録方式に適用されるインク組成物としては、水を主成分とする水性インクや有機溶剤を主成分とする油性インクが用いられてきたが、印刷物のにじみを抑えるために、媒質としてエチレン性二重結合を有するモノマーなどの重合性化合物を用い、エネルギー線(例えば、紫外線)の照射によりインクを硬化させる無溶剤タイプのエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物が注目されている。
【0004】
この種のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に用いられる着色材としては、染料も使用されているが、発色性に優れた高精細な画像を形成するため、顔料の使用が検討されている。顔料系のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、インクジェット記録方式で印刷する場合の吐出安定性を確保するためには、媒質中で顔料が微細に分散されている必要があるが、一般に、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中の顔料濃度は1〜5質量%程度と低い。そのため、インク組成物の最終組成で顔料の分散が行われた場合、顔料の微細化が困難であり、また長時間の分散を必要とし、生産効率が低下する。
【0005】
上記観点から、分散性を向上するために、顔料と、樹脂、分散剤及び重合性化合物から選ばれる少なくとも1つとを含有する混合物を二本ロールミルで分散させて高顔料濃度の顔料分散液を調製し、次いで顔料分散液を重合性化合物及び光重合開始剤で希釈することによりエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を製造する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記のような二本ロールミルからなる分散装置では混合物にシェアが十分に掛かりにくいため、顔料の微細化が不十分となりやすい。
【0007】
顔料の分散性を向上するために、ガラスビーズやセラミックビーズなどの分散メディアを利用した高分散エネルギーが得られる分散装置を用いることも考えられる。しかしながら、上記のような分散メディアを利用した高分散装置は大きな分散エネルギーが得られる反面、顔料分散液中に光重合開始剤が添加されていなくても、分散工程において発生する熱やメカノケミカル的に発生するラジカルにより重合性化合物が容易に重合反応を開始してしまい、粘度の増加やゲル化などの問題が発生する。
【0008】
特許文献1では、分散時の粘度の増加やゲル化を防止するために重合禁止剤を使用することも提案されており、重合禁止剤の中でもフェノール系酸化防止剤を使用することにより重合性化合物の重合反応を抑制できることが開示されている。しかしながら、このような酸化防止タイプの重合禁止剤を添加した高顔料濃度の混合物を分散メディアを用いた高分散装置で分散させた場合、重合反応抑制の効果が小さく、顔料分散液の粘度が高くなりやすいという問題がある。特に、酸化防止タイプの重合禁止剤を添加しても、調製される顔料分散液は経時変化により粘度が顕著に増加し、長期保存した場合には顔料分散液がゲル化するという問題がある。上記のような高顔料濃度の顔料分散液を調製し、これを希釈する方法により工業的にインク組成物を製造する場合、顔料分散液を多量に製造した後、これを一定期間保存し、必要に応じて顔料分散液を希釈することが生産上好ましい。従って、保存安定性に優れた顔料分散液が要求されている。さらに、上記のような保存により一旦粘度の増加あるいはゲル化した顔料分散液は重合性化合物で希釈されても流動性が回復せず、インクジェット記録方式に適した低粘度で、顔料が微細に分散されたインク組成物を製造できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−306622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、顔料系のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を製造する場合に、分散メディアを用いた分散装置で高顔料濃度の顔料分散液を調製する際の粘度の増加及びゲル化を防止すること、及び前記顔料分散液を保存した際の粘度の増加及びゲル化を抑え、生産性良くエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を製造すること、並びに製造直後だけでなく保存後でも低粘度で顔料が微細に分散されたエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、顔料、顔料分散剤、重合性化合物の一部、及びヒンダートアミン系重合禁止剤を混合撹拌して混合物を調製し、
前記混合物を分散メディアで分散することにより顔料分散液を調製し、
前記顔料分散液、重合性化合物の残部、及び光重合開始剤を混合撹拌して、インク組成物を製造するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法である。
【0012】
上記ヒンダートアミン系重合禁止剤としては、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。
【0013】
そして、本発明は、上記の製造方法によって製造されるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物である。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の製造方法によれば、分散メディアを用いた分散装置で高顔料濃度の顔料分散液を調製する場合でも、分散工程における顔料分散液の粘度の増加及びゲル化を抑えることができるとともに、保存安定性に優れた顔料分散液を調製することができる。このため、工業的生産においても、生産性良くエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を製造することができる。そして、上記顔料分散液を用いることにより、製造直後だけでなく保存後でも、低粘度で顔料が微細に分散されたエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造においては、まず、顔料、顔料分散剤、重合性化合物の一部、及びヒンダートアミン系重合禁止剤を混合撹拌して、混合物を調製する混合撹拌工程が行われる。このような混合撹拌工程により、顔料の表面を予め顔料分散剤や重合性化合物で濡らすことができ、高顔料濃度の混合物であっても、分散工程において顔料を高分散することができる。
【0016】
顔料としては、耐候性の観点より、無機顔料、有機顔料のいずれかまたは両方を使用することが好ましい。
【0017】
無機顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
【0018】
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系の有機顔料などが挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子なども有機顔料として用いてもよい。
【0019】
シアン色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4のいずれかまたは両方が好ましい。
【0020】
マゼンタ色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0021】
イエロー色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14C、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214などが挙げられる。これらの中でも、耐候性などの点から、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー213、及びC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0022】
ブラック色を有する顔料としては、具体的には、例えば、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF;キャボット社製のモナーク、リーガル;デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス;東海カーボン社製のトーカブラック;コロンビア社製のラヴェンなどが挙げられる。これらの中でも、三菱化学社製のHCF#2650、HCF#2600、HCF#2350、HCF#2300、MCF#1000、MCF#980、MCF#970、MCF#960、MCF88、LFFMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、及びデグサ・ヒュルス社製のプリンテックス95、プリンテックス85、プリンテックス75、プリンテックス55、プリンテックス45からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
混合物中の顔料の配合量は、分散工程時に高い分散エネルギーを顔料に付与させるため、混合物全量に対して、8〜30質量%が好ましく、20〜30重量%がより好ましい。本実施の形態の製造方法によれば、このような高顔料濃度の混合物を分散メディアによる高い分散エネルギーで分散させても、顔料分散液の粘度の増加やゲル化を十分に抑制することができる。顔料の配合量が少なすぎると、混合物が低粘度となり、分散工程において分散が不十分となりやすく、また顔料の微細化に長時間を要する傾向がある。一方、顔料の配合量が多すぎると、分散工程において顔料分散液の粘度が上昇しやすく、流動性が損なわれ、分散性が低下しやすい。
【0024】
混合物は、顔料の分散性を向上させるため、顔料分散剤を含有する。分散工程前に顔料と顔料分散剤とを予め混合することにより、顔料の表面を適度に顔料分散剤で濡らすことができる。このような顔料分散剤としては、具体的には、例えば、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、分散安定性の点から、カチオン性基またはアニオン性基を含む高分子化合物が好ましい。市場で入手可能な顔料分散剤としては、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、エフカアディティブズ社製のEFKAなどが挙げられる。混合物中の顔料分散剤の配合量は、顔料の配合量にもよるが、混合物全量に対して、通常0.05〜15質量%が好ましい。
【0025】
混合物は、インク組成物の最終組成における重合性化合物の一部を含有する。このように混合撹拌工程ではインク組成物の最終組成における重合性化合物の一部のみを使用することにより、高顔料濃度の顔料分散液を調製することができる。重合性化合物としては、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個または複数有する単官能モノマーまたは多官能モノマーを用いることができる。特に、最終的なインク組成物において重合性化合物として単官能モノマー及び多官能モノマーを併用する場合、混合撹拌工程では単官能モノマーを主成分として含む重合性化合物を使用することが好ましい。単官能モノマーは多官能モノマーに比べて反応性が低いことから、分散工程や顔料分散液保存時における粘度の増加やゲル化をさらに抑制することができる。
【0026】
分子内にエチレン性二重結合を1個有する単官能モノマーとしては、具体的には、例えば、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸などが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。また、上記モノマーは、リンやフッ素などの官能基で置換されていてもよい。これらの中でも、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートは低粘度であるため、特に好ましい。
【0027】
分子内にエチレン性二重結合を2個有する多官能モノマーとしては、具体的には、例えば、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、シキロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。
【0028】
分子内にエチレン性二重結合を3個有する多官能モノマーとしては、具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。
【0029】
分子内にエチレン性二重結合を4個有する多官能モノマーとしては、具体的には、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。
【0030】
分子内にエチレン性二重結合を5個有する多官能モノマーとしては、具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。
【0031】
分子内にエチレン性二重結合を6個有する多官能モノマーとしては、具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。
【0032】
混合物は、重合性化合物として、オリゴマーまたはプレポリマーをさらに含有してもよい。このようなオリゴマーまたはプレポリマーとしては、具体的には、例えば、ダイセルUCB社製のEbecryl230、Ebecryl244、Ebecryl245、Ebecryl270、Ebecryl280/15IB、Ebecryl284、Ebecryl285、Ebecryl4830、Ebecryl4835、Ebecryl4858、Ebecryl4883、Ebecryl8402、Ebecryl8803、Ebecryl8800、Ebecryl254、Ebecryl264、Ebecryl265、Ebecryl294/35HD、Ebecryl1259、Ebecryl1264、Ebecryl4866、Ebecryl9260、Ebecryl8210、Ebecryl1290、Ebecryl1290K、Ebecryl5129、Ebecryl2000、Ebecryl2001、Ebecryl2002、Ebecryl2100、KRM7222、KRM7735、KRM4842、KRM210、KRM215、KRM4827、KRM4849、KRM6700、KRM6700−20T、KRM204、KRM205、KRM6602、KRM220、KRM4450、KRM770、IRR567、IPR81、IPR84、IPR83、IPR80、IPR657、IPR800、IPR805、IPR808、IPR810、IPR812、IPR1657、IPR1810、IRR302、IPR450、IPR670、IPR830、IPR835、IPR870、IPR1830、IPR1870、IPR2870、IRR267、IPR813、IRR483、IPR811、IPR436、IPR438、IPR446、IPR505、IPR524、IPR525、IPR554W、IPR584、IPR586、IPR745、IPR767、IPR1701、IPR1755、IPR740/40TP、IPR600、IPR601、IPR604、IPR605、IPR607、IPR608、IPR609、IPR600/25TO、IPR616、IPR645、IPR648、IPR860、IPR1606、IPR1608、IPR1629、IPR1940、IPR2958、IPR2959、IPR3200、IPR3201、IPR3404、IPR3411、IPR3412、IPR3415、IPR3500、IPR3502、IPR3600、IPR3603、IPR3604、IPR3605、IPR3608、IPR3700、IPR3700−20H、IPR3700−20T、IPR3700−25R、IPR3701、IPR3701−20T、IPR3703、IPR3702、RDX63182、RDX6040、IRR419;サートマー社製のCN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991;BASF社製のLaromer EA81、Laromer LR8713、Laromer LR8765、Laromer LR8986、Laromer PE56F、Laromer PE44F、Laromer LR8800、Laromer PE46T、Laromer LR8907、Laromer PO43F、Laromer PO77F、Laromer PE55F、Laromer LR8967、Laromer LR8981、Laromer LR8982、Laromer LR8992、Laromer LR9004、Laromer LR8956、Laromer LR8985、Laromer LR8987、Laromer UP35D、Laromer UA19T、Laromer LR9005、Laromer PO83F、Laromer PO33F、Laromer PO84F、Laromer PO94F、Laromer LR8863、Laromer LR8869、Laromer LR8889、Laromer LR8997、Laromer LR8996、Laromer LR9013、Laromer LR9019、Laromer PO9026V、Laromer PE9027V;コグニス社製のフォトマー3005、フォトマー3015、フォトマー3016、フォトマー3072、フォトマー3982、3215、フォトマー5010、フォトマー5429、フォトマー5430、フォトマー5432、フォトマー5662、フォトマー5806、フォトマー5930、フォトマー6008、フォトマー6010、フォトマー6019、フォトマー6184、フォトマー6210、フォトマー6217、フォトマー6230、フォトマー6891、フォトマー6892、フォトマー6893−20R、フォトマー6363、フォトマー6572、フォトマー3660;根上工業社製のアートレジンUN−9000HP、アートレジンUN−9000PEP、アートレジンUN−9200A、アートレジンUN−7600、アートレジンUN−5200、アートレジンUN−1003、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、アートレジンUN−901T、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−6060PTM、アートレジンUN−6060P;日本合成化学社製の紫光UV−6630B、紫光UV−7000B、紫光UV−7510B、紫光UV−7461TE、紫光UV−3000B、紫光UV−3200B、紫光UV−3210EA、紫光UV−3310B、紫光UV−3500BA、紫光UV−3520TL、紫光UV−3700B、紫光UV−6100B、紫光UV−6640B、紫光UV−1400B、紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、紫光UV−7550B、紫光UV−7605B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−7640B、紫光UV−2000B、紫光UV−2010B、紫光UV−2250EA、紫光UV−2750B;日本化薬社製のカヤラッドR−280、カヤラッドR−146、カヤラッドR131、カヤラッドR−205、カヤラッドEX2320,カヤラッドR190、カヤラッドR130、カヤラッドR−300,カヤラッドC−0011、カヤラッドTCR−1234、カヤラッドZFR−1122、カヤラッドUX−2201,カヤラッドUX−2301,カヤラッドUX3204、カヤラッドUX−3301、カヤラッドUX−4101,カヤラッドUX−6101、カヤラッドUX−7101、カヤラッドMAX−5101、カヤラッドMAX−5100,カヤラッドMAX−3510、カヤラッドUX−4101などが挙げられる。
【0033】
混合物中の重合性化合物の配合量は、上記顔料の配合量を確保できれば特に限定されないが、混合物全量に対して、40〜90質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。
【0034】
混合物は、ヒンダードアミン系重合禁止剤を含有する。混合物にヒンダードアミン系重合禁止剤を含有させることにより、高顔料濃度の混合物を分散メディアを用いて高分散エネルギーで分散させても、分散工程における粘度の増加やゲル化を抑制することができる。また、ヒンダードアミン系重合禁止剤を使用することにより、調製された顔料分散液を一定期間保存しても、顔料分散液の粘度の増加やゲル化が少ない。さらに、保存後の顔料分散液を希釈してインク組成物を製造した場合に、高粘度となりにくく、微粒子の顔料が分散されたインク組成物を得ることができる。上記ヒンダードアミン系重合禁止剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。このようなヒンダードアミン系重合禁止剤としては、具体的には、例えば、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどが挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用されてもよい。これらの中でも、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケートが好ましい。市場で入手可能な2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミン系重合禁止剤としては、チバ社製のIRGASTAB UV−10、TINUVIN 123などが挙げられる。
【0035】
混合物中のヒンダードアミン系重合禁止剤の配合量は、重合性化合物の種類や配合量にもよるが、混合物全量に対して、0.01〜3質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましい。ヒンダードアミン系重合禁止剤の配合量が0.01質量%以上であれば、分散工程や顔料分散液の保存時に発生するラジカルを十分に捕捉することができ、顔料分散液の粘度の増加やゲル化をさらに抑制することができる。一方、ヒンダードアミン系重合禁止剤の配合量が3質量%以下であれば、エネルギー線照射時の重合反応の低下が抑えられ、硬化性に優れたインク組成物を得ることができる。
【0036】
混合物は、上記のヒンダードアミン系重合禁止剤を含有していれば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ハイドロキノンモノアルキルエーテルなどの他の重合禁止剤をさらに含有してもよい。このような重合禁止剤としては、具体的には、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、チバ社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60などが挙げられる。混合物中のこれら他の重合禁止剤の配合量は、特に限定されるものではないが、混合物全量に対して、0.1〜4質量%が好ましい。
【0037】
混合物の調製にあたっては、従来公知の混合撹拌機を用いることができる。このような混合撹拌機としては、具体的には、例えば、ディスパ、ニーダ、プラネタリミキサなどが挙げられる。
【0038】
次に、上記のようにして調製された混合物中の顔料を微細化するため、分散メディアを充填した分散装置により混合物を分散する分散工程が行われる。分散メディアを充填した分散装置で高顔料濃度の混合物を分散することにより、顔料を微細化することができ、顔料が小粒径で分散された顔料分散液を調製することができる。分散装置としては、従来公知のメディア型分散装置を使用することができる。具体的には、例えば、ペイントコンディショナー、アトライタ、ボールミル、ピンミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。分散メディアとしては、ガラスビーズ、セラミックビーズ、金属ビーズ(表面が樹脂で被覆されたものも含む)などの従来公知の分散メディアを使用できる。これらの中でも、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどのセラミックからなるビーズが好ましい。分散メディアの粒子径は、0.05〜2.0mmが好ましく、0.3〜1.6mmがより好ましい。
【0039】
分散時間は、顔料や重合性化合物の種類及び組成などにより異なるが、30〜120分が好ましい。また、分散時には、顔料分散液が高温となるのを防止するため、分散装置を冷却しながら顔料分散液を調製することが好ましい。
【0040】
分散工程直後の顔料分散液の粘度は、25℃で15〜100mP・sが好ましい。また、分散工程直後の顔料の分散平均粒子径は、20〜200nmが好ましい。
【0041】
次に、上記のようにして調製された高顔料濃度の顔料分散液と、重合性化合物の残部及び光重合開始剤とを混合撹拌してインク組成物を調製する希釈工程が行われる。このような希釈工程により、インク組成物中の顔料濃度を低下させることができ、インクジェット記録方式に適した低粘度のインク組成物を得ることができる。インク組成物の最終組成における顔料の配合量は、顔料の種類や用途にもよるが、インク組成物全量に対して、1〜5質量%が好ましく、1〜2質量%がより好ましい。
【0042】
希釈工程で使用される重合性化合物としては、上記した重合性化合物を使用することができる。これらの中でも、多官能のモノマーを主成分として含む重合性化合物を使用することが好ましい。インク組成物の最終組成における重合性化合物全体の配合量は、上記顔料の配合量を確保できれば特に限定されないが、インク組成物全量に対して、60〜95質量%が好ましい。
【0043】
光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド類、α−アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、アリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスホナート類、チオ安息香酸S−フェニル類、チタノセン類、芳香族ケトン類、ベンジル類、キノン誘導体類、ケトクマリン類などが挙げられる。これらの中でも、上記重合性化合物とともに用いた場合に、低エネルギーで重合を開始させることができるアシルホスフィンオキサイド類、α−アミノアルキルフェノン類、及びチオキサントン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤が好ましく、アシルホスフィンオキサイド類、またはα−アミノアルキルフェノン類とチオキサントン類との混合物がより好ましい。
【0044】
アシルホスフィンオキサイド類としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。市場で入手可能なアシルホスフィンオキサイド類としては、BASF社製のLucivin TPOなどが挙げられる。
【0045】
α−アミノアルキルフェノン類としては、具体的には、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。市場で入手可能なα−アミノアルキルフェノン類としては、チバ社製のIRGACURE 369、IRGACURE 907などが挙げられる。
【0046】
チオキサントン類としては、具体的には、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン,2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用されてもよい。市場で入手可能なチオキサントン類としては、日本化薬社製のKAYACURE DETX−S、ダブルボンドケミカル社製のChivacure ITXなどが挙げられる。
【0047】
インク組成物の最終組成における光重合開始剤の配合量は、重合性化合物の種類や配合量にもよるが、インク組成物全量に対して、総量で2〜15質量%が好ましい。光重合開始剤の配合量が2質量%以上であれば、低エネルギーの照射でも硬化性及び密着性に優れたインク組成物を得ることができる。一方、光重合開始剤の配合量が15質量%以下であれば、未反応成分の残存を抑えることができる。
【0048】
希釈工程においては、さらに上記ヒンダードアミン系重合禁止剤を添加することが好ましい。希釈工程でヒンダードアミン系重合禁止剤を添加することにより、インク組成物の保存安定性をさらに向上することができる。
【0049】
また、希釈工程では、他の特性の向上を目的として、必要により、表面調整剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料などの公知の一般的な添加剤がさらに添加されてもよい。
【0050】
希釈工程で用いられる混合撹拌機としては、混合撹拌工程で用いられる混合撹拌機と同様のものを用いることができる。
【0051】
上記のようにして製造されるインク組成物中の顔料の分散平均粒子径は20〜200nmが好ましく、50〜160nmがより好ましい。本実施の形態の顔料分散液は、顔料が高度に分散されているとともに、高顔料濃度でも顔料の分散安定性に優れているため、長期保存した顔料分散液を希釈してインク組成物を調製した場合でも上記のような微粒子の顔料が分散されたインク組成物を得ることができる。分散平均粒子径が20nm未満では粒子が細かすぎ、印刷物の耐候性が低下する傾向がある。一方、分散平均粒子径が200nmを超えると印刷物の精細さが低下する傾向がある。
【0052】
また、本実施の形態の顔料分散液は高分散エネルギーで分散を行っても粘度の増加が少なく、また保存安定性に優れているため、顔料分散液を一定期間保存した後でインク組成物を製造しても、25℃において4〜23mPa・s程度の低粘度のインク組成物を得ることができる。また、本実施の形態のインク組成物は、加温しなくても、低粘度であり、さらに顔料の分散安定性も良好で、保存中や使用中に粘度の増加やゲル化が少なく、また顔料が沈降するなどの支障をきたさない良好な保存安定性を有している。このため、実質的に有機溶剤などの希釈溶剤を含有しなくても、インクジェット記録方式において、インクを加温することなく、室温で安定な吐出が得られる。
【0053】
なお、上記のように本実施の形態のインク組成物には希釈溶剤を含有させる必要がないが、例えば、工業製品を使用した場合に、インク組成物に希釈溶剤が不可避的に混入してくる場合がある。このような不可避的に混入する希釈溶剤の量としては、インク組成物全量に対し通常3質量%以下である。
【0054】
以下、実施例に基づきさらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下で、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【実施例】
【0055】
各実施例及び比較例で用いたインクの成分を以下の表1に示す。表2〜4の組成の表示は表1中の種類欄の括弧内の表示と同一のものであることを示す。
【0056】
【表1】

【0057】
<顔料分散液の調製>
プラスチック製ビンに、顔料、顔料分散剤、重合性化合物、及び重合禁止剤を表2〜3に示す配合量で計り取り、混合撹拌して混合物を調製した。この混合物にジルコニアビーズ(直径:0.3mm)100部を加えて、ペイントコンディショナー(東洋精機社製)により2時間分散した。分散後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、内容物を吸引ろ過し、顔料分散液を調製した。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
上記のようにして得られた調製直後の各顔料分散液を用いて、以下の顔料分散液の粘度、顔料分散液中の顔料の分散平均粒子径、及び保存安定性の評価を行った。
【0061】
〔顔料分散液の粘度〕
調製直後の顔料分散液の粘度を、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーンの回転数20rpmの条件下で、測定した。
【0062】
〔顔料分散液中の顔料の分散平均粒子径〕
調製直後の顔料分散液中の顔料の分散平均粒子径を、粒度分布測定装置FPER−1000(大塚電子社製)を用いて、測定した。
【0063】
〔顔料分散液の保存安定性〕
調製直後の顔料分散液を70℃の条件下で5日間保存し、保存後の顔料分散液の粘度を上記と同様にして測定し、粘度変化、及びゲル化の有無を観察して、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:20%未満の粘度増加
△:20%以上、40%未満の粘度増加
×:顔料分散液がゲル化
また、同様にして保存した後の顔料分散液中の顔料の分散平均粒子径を上記と同様にして測定し、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:10%未満の分散平均粒子径の増加
×:10%以上の分散平均粒子径の増加
【0064】
<インクの製造>
次に、上記のようにして調製した直後の顔料分散液及び保存安定性を評価した保存後の顔料分散液をそれぞれ用いて、最終組成が下記表4に示すインク組成となるよう各顔料分散液を希釈し、各インクを製造した。なお、このとき実施例1〜10、比較例9、及び比較例10では、顔料分散液の調製時に使用した重合禁止剤と同じ重合禁止剤を使用し、比較例1〜8では、重合禁止剤としてIRGACURE UV−10を使用した。
【0065】
【表4】

【0066】
上記のようにして製造した製造直後の各インクを用いて、インクの粘度、及びインク中の顔料の分散平均粒子径を上記と同様にして評価した。また、製造した各インクについて、以下の保存安定性の評価を行った。
【0067】
〔インクの保存安定性〕
製造直後のインクを60℃の条件下で30日間保存し、保存後のインクの粘度を上記と同様にして測定し、粘度変化、及びゲル化の有無を観察して、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:5%未満の粘度増加
△:5以上、10%未満の粘度増加
×:10%以上の粘度増加
また、同様にして保存した後のインク中の顔料の分散平均粒子径を測定し、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:10%未満の分散平均粒子径の増加
×:10%以上の分散平均粒子径の増加
【0068】
表5〜6にこれらの評価結果を併せて示す。
【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
上記表に示すように、実施例の顔料組成物は、顔料分散液調製直後の粘度が17.1〜96.1mP・sで、また顔料の分散平均粒子径が90.0〜160.0nmであり、高顔料濃度の混合物を分散メディアを用いて分散させても、低粘度で、顔料が微細に分散された顔料分散液を調製できることが分かる。また、この顔料分散液は、高温で保存した後でも粘度の増加が少なく、分散平均粒子径の増加が少ないことから、優れた保存安定性を有していることが分かる。さらに、実施例の顔料分散液を用いて製造したインクは、調製直後の顔料分散液、保存後の顔料分散液いずれを用いても、低粘度で、分散平均粒子径が小さく、顔料の分散性に優れていることが分かる。従って、本実施例によれば、高顔料濃度の顔料分散液を多量に調製し、これを必要に応じて希釈することにより、生産性良くインクジェット記録方式に適したインクを製造することができる。そして、調製直後の顔料分散液、保存後の顔料分散液いずれを用いて製造されたインクでも、保存後の粘度の増加が少なく、分散平均粒子径の増加が少ないことから、実施例の製造方法によれば、優れた保存安定性を有するインクを製造できる。
【0072】
これに対して、分散工程において重合禁止剤を含有しない混合物を用いて調製された顔料分散液はいずれも、重合禁止剤を含有する以外は同じ組成の実施例の顔料分散液に比べて顔料分散液調製直後の粘度が高いことが分かる。また、重合禁止剤としてフェノール系酸化防止剤を使用しても、高顔料濃度の混合物を高分散エネルギーで分散させた場合、重合禁止剤が異なる以外は同じ組成の実施例の顔料分散液に比べて顔料分散液調製直後の粘度が高くなり、インクの粘度も高くなることが分かる。そして、これらの顔料分散液は保存後に粘度測定が不能となるほどゲル化することが分かる。従って、このような顔料分散液では、工業生産のために顔料分散液を保存することができず、生産性良くインクを製造できないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、顔料分散剤、重合性化合物の一部、及びヒンダートアミン系重合禁止剤を混合撹拌して混合物を調製し、
前記混合物を分散メディアで分散することにより顔料分散液を調製し、
前記顔料分散液、重合性化合物の残部、及び光重合開始剤を混合撹拌して、インク組成物を製造するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ヒンダートアミン系重合禁止剤は、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミン系重合禁止剤を含有する請求項1に記載のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法によって製造されるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。

【公開番号】特開2010−189586(P2010−189586A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37280(P2009−37280)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】