説明

エネルギー貯蔵システムおよび関連する方法

電力需要の変化に応答する方法は、(1)配電網からエネルギー貯蔵サブシステムを充電することと、(2)エネルギー貯蔵サブシステムの最大放電率より低い放電率で配電網にエネルギー貯蔵サブシステムを放電することと、(3)増加調節サービスを提供する信号と、減少調節サービスを提供する信号とからなる群から選択される信号に応答して、放電率を調整することとを含む。エネルギー貯蔵システムは、電力を貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステムと、エネルギー貯蔵サブシステムを配電網に接続するインタフェースと、増加調節サービスを提供する信号と減少調節サービスを提供する信号とに応答してインタフェースの動作を制御するように構成される制御器とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2009年8月17日に出願された米国仮特許出願第61/234,616号に対する優先権の利益を主張し、この仮特許出願は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
電気事業は、典型的には、そのサービス地域に位置を定められる大きなグループの顧客に電力を供給する。顧客によって引き起こされる電力需要は、典型的には大きく変化する。電力需要におけるこれらの変化のいくつかは、予測可能である。例えば、夏の間の電力需要は、住宅地の顧客が帰宅し、家のエアコンシステムのスイッチを入れるので、ウィークデーの遅い午後または早い夜間中にピークとなることが予期され得る。しかしながら、他の電力消費需要は、予測可能ではない場合がある。例えば、事業は、主給電回路を制御する回路遮断器の引きはずし(tripping)により、電力需要の突然の落ち込みを受け得る。
【0003】
電力需要の変化は、電気事業にとって問題である。例えば、電気事業の発電装置(例えば、石炭火力発電所)が電気の需要の変化に速やかに応答することは不可能であり得、結果として、望ましくない電圧および/または周波数の変動をもたらし得る。別の実施例として、電気事業は、ピークの電力需要を満たす適切な発電能力を有しない場合があり、従って事業は、不足分をカバーするために別の関係者から高い価格で電力を購入することを強いられ得る。
【0004】
従って、電力需要の変化を補償するために、エネルギー貯蔵システムが提案される。ピーク電力需要の時間中など追加の電力が必要な場合、そのようなシステムは、事業の配電網(electric power grid)に電力を供給し得る(「増加調節(regulation up)」)。別の例として、電力需要が突然落ちた場合など必要な場合または所望される場合、そのようなシステムは、事業の配電網から電力を吸い込むかまたは貯蔵し得る(「減少調節(regulation down)」)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
一実施形態において、電力需要の変化に応答する方法は、(1)配電網からエネルギー貯蔵サブシステムを充電することと、(2)エネルギー貯蔵サブシステムの最大放電率より低い放電率で配電網にエネルギー貯蔵サブシステムを放電することと、(3)増加調節サービスを提供する信号と、減少調節サービスを提供する信号とからなる群から選択される信号に応答して、放電率を調整することとを含む。
【0006】
一実施形態において、エネルギー貯蔵システムは、電力を貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステムと、エネルギー貯蔵サブシステムを配電網に接続するインタフェースと、制御器とを含む。制御器は、エネルギー貯蔵サブシステムの放電率が、増加調節サービスを提供する信号と、減少調節サービスを提供する信号とからなる群から選択される信号に応答して調整されるように、インタフェースの動作を制御するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、一実施形態に従う1つの例示的エネルギー貯蔵システムを示す。
【図2】図2は、図1のシステムの代替の実施形態を示す。
【図3】図3は、一実施形態に従う、電力需要の変化に応答する1つの例示的方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態の詳細な説明)
例示を明確にする目的のために、図面における特定の要素が同一縮尺で描かれていない場合があることが注意される。品目の特定の実例は、括弧内の数字を用いることによって参照され得(例えば、エネルギー貯蔵サブシステム202(1))、一方、括弧のない数字は、任意のそのような品目を参照する(例えば、エネルギー貯蔵サブシステム202)。
【0009】
上記に考察されたように、エネルギー貯蔵システムは、増加調節または減少調節サービスを提供することによって、電気事業に提示される電力需要など、電力需要の変化を補償するために提案される。そのようなシステムは非常に有用であり得るが、それらのシステムの実際の実行は困難な場合がある。例えば、多くのエネルギー貯蔵技術は、実行するのに費用がかかり、従って、電力の大規模貯蔵に対して実際的ではない。別の実施例として、いくつかのエネルギー貯蔵技術は、電力需要の変化に十分に速やかに応答する能力がない場合がある。
【0010】
図1は、1つの例示的エネルギー貯蔵システム100を示し、エネルギー貯蔵システム100は、電気事業に対する電力需要変化などの電力需要の変化を補償することを助けるために用いられ得る。従って、システム100の1つの可能な使用法は、電気事業などに増加調節または減少調節サービスを提供することである。システム100は、エネルギー貯蔵サブシステム102と、エネルギー貯蔵サブシステム102を配電網106に接続するインタフェース104と、インタフェース104を制御するために動作可能であり、任意選択でエネルギー貯蔵サブシステム102を制御するために動作可能である制御器108とを含む。
【0011】
制御器108は、増加調節または減少調節サービスを提供するシステム100に備えて、エネルギー貯蔵サブシステム102がインタフェース104を介してグリッド(grid)106から少なくとも部分的に充電されるようにする。一旦エネルギー貯蔵サブシステム102が少なくとも部分的に充電されると、制御器108は、エネルギー貯蔵サブシステム102の最大放電率より小さい率でインタフェース104を介してグリッド106にエネルギー貯蔵サブシステム102が放電させられることによって、システム100に増加調節および/または減少調節サービスを提供する準備を完了させる。例えば、制御器108は、エネルギー貯蔵サブシステム102の最大放電率の約2分の1の率でグリッド106に放電させられるようにシステム100を動作させ得る。増加調節または減少調節サービスを提供する信号に応答して、制御器108は、エネルギー貯蔵サブシステム102の放電率を調整して、グリッド106における電力需要を満たすことを助ける。特に、グリッド106における電気需要が減少すると、制御器108は、エネルギー貯蔵サブシステムがグリッド106に放電させられる率を減少させ、それによって、グリッド106に供給される電力を効果的に減少させる。逆に、グリッド106における電気需要が増加すると、制御器108は、より高い率でエネルギー貯蔵サブシステム102がグリッド106に放電させられ、それによって、グリッド106に追加の電力を供給して、追加の需要を満たす。特に、システム100は、グリッド106上の電気需要に迅速に調整するように動作し、一方、他の電気貯蔵システムは、需要変化に速やかに応答することが可能ではない。
【0012】
システム100は、速やかに電力を吸い込むのにあまり適していないエネルギー貯蔵サブシステム102を用いることを有利に可能にし得る。特に、システム100は、システム100が増加調節または減少調節サービスを提供しながら、エネルギー貯蔵サブシステム102が放電されるように動作させられるので、エネルギー貯蔵サブシステム102は、電力を必ずしも速やかに吸い込むことが可能である必要はない。従って、システム100は、以前は大規模な電力需要平準化用途における使用に実用的でなかったエネルギー貯蔵技術の使用を可能にし得る。いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵サブシステム102は、フロー式電解液電池である。
【0013】
制御器108は、グリッド106の監視装置および/または制御装置などの外部システムから増加調節信号および/または減少調節信号を受信するように構成されかつ配列され得る。例えば、制御器108は、システム100における電力計測定電力潮流から増加調節信号および/または減少調節信号を受信するように構成されかつ配列され得る。あるいはまたはさらに、制御器108は、システム100および/またはグリッド106のオペレータからのコマンドに応答してなど、増加調節信号および/または減少調節信号を内部的に生成し得る。例えば、システム100のいくつかの実施形態において、制御器108は、制御器108が口頭の増加調節信号および/または減少調節信号のコマンドを受信し、解読することを可能にする音声認識能力を含む。そのような実施形態において、制御器108は、許可されたオペレータの口頭のコマンドと他の人の口頭のコマンドとを区別し、許可されたオペレータからのコマンドのみに応答するように動作可能であり得る。
【0014】
上記に考察されたように、制御器108は、エネルギー貯蔵サブシステム102の最大放電率より少ない率でインタフェース104を介してグリッド106にエネルギー貯蔵サブシステム102が放電させられることによって、システム100に増加調節または減少調節サービスを提供させる。そのような放電率は、システム100にとって増加調節または減少調節の能力を最大にするように選ばれ得る。例えば、減少調節サービスが増加調節サービスより利益があることなどにより、減少調節サービスを提供する、システム100の能力を最大にすることが望まれる場合、エネルギー貯蔵サブシステム102の放電率は、比較的高く設定されて、グリッド106へのエネルギー貯蔵サブシステム102の放電を実質的に減少させることを可能にし得る。逆に、増加調節サービスが減少調節サービスより利益があることなどにより、増加調節サービスを提供する、システム100の能力を最大にすることが望まれる場合、エネルギー貯蔵サブシステム102の放電率は、比較的低く設定されて、グリッド106へのエネルギー貯蔵サブシステム102の放電を実質的に増加させることを可能にし得る。
【0015】
インタフェース104は、典型的には、エネルギー貯蔵サブシステム102を充電するために、グリッド106からのAC電力をDC電力に変換するように動作可能である。インタフェース104はまた、典型的には、グリッド106のために、エネルギー貯蔵サブシステム102からのDC電力をAC電力に変換するように動作可能である。インタフェース104はまた、エネルギー貯蔵サブシステム102の充電および放電を制御する。いくつかの実施形態において、インタフェース104は、離散サブシステムとしてかまたは単一のパッケージシステムとしてのいずれかとして、整流システムおよび反転システムの両方を含む。
【0016】
しかしながら、インタフェース104は、他の構成を有し得る。例えば、グリッド106がDC電力グリッドである場合、インタフェース104は、1つ以上の双方向DC−DCコンバーターなどの1つ以上のDC−DCコンバーターを含み得る。別の実施例として、エネルギー貯蔵サブシステム102がAC電力を貯蔵するように構成される場合、インタフェース104は、エネルギー貯蔵サブシステム102と電気的に連結されるACインタフェースを有し得る。
【0017】
グリッド106は、例えば1つ以上の電力系統(utility electric power grid)である。例えば、グリッド106は、いくつかの電力系統を表し得、この場合、システム100は、貯蔵のために1つのグリッドから電力を受信し、別のグリッドに電力を供給するように構成され得る。しかしながら、グリッド106は、電力系統である必要はない。例えば、グリッド106は、商用電力系統に接続されていない、車両または建物の電力システムを表し得る。
【0018】
制御器108は、現在の経済状況、予測される電力需要変化、および/またはグリッド106の状態(例えば、グリッド106の生成能力の利用可能性)などの入力に応答して所望の方法で、システム100の動作を少なくとも部分的に制御するように任意選択でプログラム可能である。そのような複数の実施形態において、制御器108は、電力価格決定情報、予想される電力需要情報、および/またはグリッド106状態情報などの情報を得るために、外部システム(単数または複数)(図示されていない)とのリンクを任意選択で含む。例えば、いくつかの実施形態において、制御器108は、低い電力価格の時期(例えば、グリッド106から電力を購入する価格が第1の閾値よりも低い場合など)または低い電力需要の時期の間、エネルギー貯蔵サブシステム102を充電することを予定するように動作可能である。比較的低い価格で購入され、エネルギーサブシステム102に貯蔵された電力は、利益を達成するために、後に、より高い価格でグリッド106に関連する顧客に販売され得る。別の実施例として、制御器108は、予測される電力需要変化の時期の間またはグリッド106への電力の販売価格が十分に高い(例えば、第2の閾値を超えるなどの)場合、電力需要平準化を提供するためにシステム100が利用可能であるように、エネルギー貯蔵サブシステム102を充電することを予定するように動作可能であり得る。さらに別の実施例として、制御器は、増加調節サービスもしくは減少調節サービスに対するニーズに応答するかまたはそのようなサービスを提供することから得られる経済的利益に応答するなど、そのようなサービスを提供するシステム100の能力を最大にするために、エネルギー貯蔵サブシステム102の放電率を設定するように構成され、配列され得る。
【0019】
特定の複数の実施形態において、システム100は、複数のエネルギー貯蔵サブシステム102を含み得る。例えば、図2に示されるエネルギー貯蔵システム200は、インタフェース206を介して配電網204に電気的に連結される2つのエネルギー貯蔵サブシステム202を含む。各エネルギー貯蔵サブシステム202はそれぞれのインタフェース206に電気的に連結されるように示されるが、代わりに単一のインタフェース206が両方のエネルギー貯蔵サブシステム202をグリッド204に連結するために用いられ得る。制御器208は、インタフェース206の動作を制御し、任意選択でエネルギー貯蔵サブシステム202も制御する。制御器208は、例えば、1つのエネルギー貯蔵サブシステム202が充電されていて、一方、もう一方のエネルギー貯蔵サブシステム202が増加調節サービスまたは減少調節サービスをグリッド204に提供するために用いられているように動作する。別の実施例として、制御器208は、エネルギー貯蔵サブシステム202(1)がその最大率でグリッド204に放電されており、一方、エネルギー貯蔵サブシステム202(2)がエネルギー貯蔵サブシステム202(2)の最大放電率より低い率でグリッド204に充電されているように、システム200を動作させ得る。
【0020】
図3は、電力需要の変化に応答する1つの例示的方法300を示す。方法300は、エネルギー貯蔵サブシステムを充電するステップ302で始まる。ステップ302の実施例は、インタフェース104を介してグリッド106からシステム100のエネルギー貯蔵サブシステム102を充電している。ステップ304において、エネルギー貯蔵サブシステムは、その最大放電率より低い率で放電される。ステップ304の実施例は、エネルギー貯蔵サブシステム102の最大放電率より低い率でインタフェース104を介してエネルギー貯蔵サブシステム102をグリッド106に放電している。ステップ306において、エネルギー貯蔵サブシステムの放電率は、増加調節コマンドまたは減少調節コマンドの1つを提供する信号に応答して調整される。ステップ306の1つの実施例は、エネルギー貯蔵サブシステム102の放電率を減少させて、減少調節サービスを提供している。ステップ306の別の実施例は、エネルギー貯蔵サブシステム102の放電率を増加させて、増加調節サービスを提供している。
【0021】
上記の方法およびシステムにおいて、本明細書の範囲から逸脱することなく変更がなされ得る。従って、上記の説明に含まれ添付の図面に示される事項が例示として解釈され、限定する意味で解釈されるべきではないことは注意されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本明細書に説明される一般的および特定の特徴、ならびに本方法およびシステムの範囲のすべての記載をカバーするように意図され、本方法およびシステムは、言語の問題としてそのどちらでもないと言われ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要の変化に応答する方法であって、
配電網からエネルギー貯蔵サブシステムを充電することと、
該エネルギー貯蔵サブシステムの最大放電率より低い放電率で該配電網に該エネルギー貯蔵サブシステムを放電することと、
増加調節サービスを提供する信号と、減少調節サービスを提供する信号とからなる群から選択される信号に応答して、該放電率を調整することと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記調整するステップは、減少調節サービスを提供する信号に応答して前記放電率を減少させることを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調整するステップは、増加調節サービスを提供する信号に応答して前記放電率を増加させることを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー貯蔵サブシステムは、フロー式電解液電池である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記充電するステップは、前記配電網から得られる電力の購入価格が第1の閾値より低い時期に該配電網から電力を購入することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記放電するステップは、前記配電網に売る電力の価格が第2の閾値より高いときに実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電力を貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステムと、
該エネルギー貯蔵サブシステムを配電網に接続するインタフェースと、
制御器であって、該エネルギー貯蔵サブシステムの放電率が、増加調節サービスを提供する信号と、減少調節サービスを提供する信号とからなる群から選択される信号に応答して調整されるように、該インタフェースの動作を制御するように構成されかつ配列される、制御器と
を備えている、エネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記エネルギー貯蔵サブシステムは、フロー式電解液電池である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御器は、少なくとも1つの外部システムとのインタフェースを備えて、電力価格決定情報と、電力需要情報と、前記配電網の状態とからなる群から選択される情報を得る、請求項7に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−502898(P2013−502898A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525640(P2012−525640)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/045748
【国際公開番号】WO2011/022390
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511087556)プレミアム パワー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】