説明

エネルギ供給管理システム。

【課題】可能な限り正確な需要予測をして、電力やガス等のエネルギを適切により安価に需要家に供給する。
【解決手段】過去のエネルギ使用実績データ12もしくは翌日以降のエネルギ使用予定データ14を取得するデータ取得手段16と、データ取得手段16の取得したデータを使用して、翌日以降の使用エネルギの予測計算をする使用予測手段18と 、エネルギ供給元20に対して、使用エネルギの予測計算の結果を含む予定通知データ30を送信する通信手段24を設けた。過去の電力使用実績データや、利用者が入力した電力使用予定データを利用して、翌日以降の使用電力を予測計算する。電力会社はこの情報を得て、正確な発電及び送配電計画を立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な需要予測により電力やガスや水道等のエネルギを需要家に安定供給するための、エネルギ供給管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置や風力発電装置は、再生可能エネルギーによる電源装置として広く実用化されている。また、クリーンなエネルギーを利用した燃料電池も、次世代の自家発電電源装置として実用化が図られている。これらの自家発電電源装置により供給される電力は、宅内機器により消費されるとともに、余剰分が蓄電池に蓄積される。さらに、売電のために一部が送配電線側に送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
自家発電電源装置が広く普及すると、電力会社側での電力需要予測がますます難しくなる。さらに、売電による逆潮流の増加を考慮して、より信頼性の高い系統連携制御が要求されている。これに加えて一般家庭に電気自動車等の蓄電池の充電設備が普及すると、電力需要の不規則なピークが発生するおそれがある。例えば、いわゆるスマートメーターを利用して各需要家の受電電力を遠隔監視しても、生活様式が多様化しているため正確な需要予測をすることは困難である。ガスや水道についても同様である。より正確な需要予測をして、エネルギ供給設備の有効活用をすることが、エネルギ供給コストの低減に結びつく。
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、可能な限り正確な需要予測をして、電力、ガス、水道等のエネルギを適切に、より安定に安価に需要家に供給することができるエネルギ供給管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
過去のエネルギ使用実績データもしくは翌日以降のエネルギ使用予定データを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段の取得したデータを使用して、翌日以降の使用エネルギの予測計算をする使用予測手段と、エネルギ供給元に対して、前記翌日以降の使用エネルギの予測計算の結果を含む予定通知データを送信する通信手段を設けたことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、前記過去のエネルギ使用実績データは、1日24時間を通じての単位時間毎のエネルギ使用量の変化を示すデータであって、使用予測手段は、エネルギ供給元に対して、一日のエネルギの合計使用量または一日を指定された範囲で区分した区分毎のエネルギの合計使用量と、需要家を特定する情報と、使用予定日を示す情報とを結合した予定通知データを生成し、前記通信手段は、前記予定通知データをネットワークを通じてエネルギ供給元に対して送信することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0007】
〈構成3〉
群管理装置と複数の需要家の建物とがネットワークを介して接続されており、前記群管理装置には、複数の需要家の建物から、翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を収集するデータ取得手段と、前記データ取得手段が収集した使用エネルギの予測計算結果を集計する使用予測手段と、前記翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を集計した結果と、需要家群を特定する情報と、使用予定日を示す情報とを結合した予定通知データを生成し、その結果をエネルギ供給元に通知する通信手段を設けたことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載のエネルギ供給管理システムにおいて、使用予定エネルギを通知するための予定通知データを、スマートメータの検針用データに付加して、ネットワークを通じて、エネルギ供給元から読み取り可能な状態に保持することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0009】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載のエネルギ供給管理システムにおいて、データ取得手段は、需要家の構成員の使用するスケジュール管理データをネットワークを通じて読み取り、前記構成員の翌日以降のエネルギ使用予定データを算出して、需要家の翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を補正することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0010】
〈構成6〉
構成1または2に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、前記エネルギ供給元に送信する予定通知データには、指定された量のエネルギの購入予約データを含むことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0011】
〈構成7〉
構成6に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、前記購入予約データは、特定の時間に使用する指定された量のエネルギを示すことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0012】
〈構成8〉
構成6に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、前記購入予約データは、特定の用途のための指定された量のエネルギを示すことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0013】
〈構成9〉
構成6に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、前記購入予約データは、特定の用途のための特定の時間に使用する指定された量のエネルギを示すことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0014】
〈構成10〉
構成6乃至9のいずれかに記載のエネルギ供給管理システムにおいて、エネルギ供給元から、エネルギ供給制御データを受信して、エネルギ供給制御データにより指定された供給時刻と供給量に従ってエネルギの供給を受けることを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【0015】
〈構成11〉
構成10に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、通信手段は、エネルギ供給制御データにより指定された供給時刻と供給量に従ってエネルギの供給を受けた後、その結果を示す報告データをエネルギ供給元に送信することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【発明の効果】
【0016】
〈構成1の効果〉
電力の場合であれば、過去の電力使用実績データや、利用者が入力した電力使用予定データを利用して、翌日以降の使用電力を予測計算する。この予測結果を含む予定通知データを電力会社等に送信する。これらの情報により、電力会社では精度の高い需要予測ができる。
〈構成2の効果〉
需要家側では、1日24時間を通じての単位時間毎のエネルギ使用量の変化を示すデータを取得できる。1日分のエネルギの合計使用量をエネルギ供給元に通知すれば、一日単位で需要予測ができる。また、一日を例えば、昼間と夜間に区分して、その区分毎のエネルギの合計使用量をエネルギ供給元に通知すれば、さらに緻密な需要予測ができる。
〈構成3の効果〉
集合住宅や、ニュータウン等の場合には、各建物から送信される使用エネルギの予測計算結果を受信して集計する群管理装置を設けるとよい。群管理装置が管理下にある各建物から漏れなくデータを収集すれば、該当する地域について信頼性の高い需要予測ができる。エネルギ供給元は、個別にデータを収集した場合の煩雑な集計計算が不要になる。また、エネルギ供給元が必要な情報以外の個人情報を群管理装置が遮断することができる。
〈構成4の効果〉
既存のスマートメータの検針システムでは、検針用データがスマートメータの記憶装置に記憶されており、ネットワークを通じてエネルギ供給元から読み取られる。この検針用データに予定通知データを付加すれば、既存のシステムを利用して使用エネルギの予測計算結果の通知ができる。
〈構成5の効果〉
需要家の構成員が、例えば、パソコンや携帯電話でスケジュール管理データを使用している場合に、そのデータを自動的に読み取って、翌日以降のエネルギ使用予定データを算出することが可能である。このデータで、需要家の翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を補正すれば、さらに精度の高い予想データができる。
〈構成6の効果〉
翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を通知するだけでなく、確実に予定しているまとまった電力の購入予約といった、エネルギの購入予約を含めるとよい。エネルギ供給元、例えば、電力会社は、需要予測を考慮して送電電力を時間軸上で平準化して配分することができる。その結果送電コストが低減され、購入予約に対して、特別割引料金の適用等が可能になる。
〈構成7の効果〉
例えば、給湯器による風呂の湯沸かし等のために、「所定量の電力を指定した時間に」、といった利用時間を指定したエネルギの購入予約をすることができる。
〈構成8の効果〉
例えば、「電気自動車の充電」とか「住宅用蓄電池の充電」といった、特定の用途を指定したエネルギの購入予約をすることができる。
〈構成9の効果〉
例えば、「電気自動車の充電を朝6時までに」といった、用途と利用時間を指定したエネルギの購入予約をすることができる。
〈構成10の効果〉
例えば、電力会社から、電気自動車の充電のためのエネルギ供給制御データを受信する。エネルギ供給制御データには、零時30分から充電電流10アンペアで5時間という内容の、充電器を自動制御するデータが含まれている。蓄電池の充電がエネルギ供給制御データに従って自動的に実行されれば、電力会社の計画どおりの送配電ができる。
〈構成11の効果〉
エネルギ供給元は、需要家から報告データを受信すれば、エネルギ供給制御データを送信した後、そのデータによる自動制御が実行されたかどうかを確認できる。報告データに基づいて、需要家のエネルギの購入申し込みに対応した課金処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のエネルギ供給管理システムの実施例を示すブロック図である。
【図2】エネルギ使用実績データの説明図である。
【図3】図1に示した通信手段が電力会社のサーバに送信する通知データの説明図である。
【図4】実施例2のエネルギ供給管理システムの説明図である。
【図5】予定通知データ30の送信方法を示す説明図である。
【図6】エネルギ予約購入方法の説明図である。
【図7】エネルギの分散供給方法の説明図である。
【図8】エネルギ予約をした場合の電気自動車の充電方法説明図である。
【図9】実施例1に示したシステムの動作フローチャートである。
【図10】エネルギ使用実績データの取得と使用エネルギ計算動作フローチャートである。
【図11】集合住宅のデータ収集動作フローチャートである。
【図12】エネルギ予約購入動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のシステムでは、需要家側から翌日以降の使用エネルギの予測計算結果をエネルギ供給元に自動的に通知する。エネルギ供給元は、精度の高い需要予測をして、エネルギ供給計画を立てる。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明のエネルギ供給管理システムの実施例を示すブロック図である。
エネルギ供給元としては、電力会社やガス会社等があり、需要家には企業や一般家庭がある。以下の実施例では、電力会社が一般家庭の需要家に電力を供給する例を用いて説明する。図1の実施例では、自家発電電源装置を有し、自宅で電気自動車の充電もできる構造の建物を例示した。しかしながら、本発明は、ニュータウンや集合住宅等にも利用できる。また、需要家として、小規模な事業所等も対象に含まれてよい。
【0020】
実施例の建物では、電源として、送配電線路56と自家発電電源装置62が利用されている。送配電線路56は、電力会社から商用電源を供給するための線路である。宅内配線64は、送配電線路56と分電盤58等の受電設備により隔てられた配電設備で、住宅やマンション等の住人が商用電源を利用するための設備である。分電盤58は、宅内配電用の分岐回路やブレーカー等を内蔵した機器である。
【0021】
自家発電電源装置62としては、太陽光発電装置が良く知られている。太陽光発電装置は、太陽エネルギを電気エネルギに変換して出力する。このほか、風力発電装置は、風力エネルギを電気エネルギに変換して出力する。燃料電池は、水素等を燃料として発電する。さらに、熱エネルギや水力波力を電気エネルギに変換して出力する電源装置も、自家発電電源装置として利用することができる。
【0022】
図のシステムは、自家発電電源装置62の発電した電力を宅内配線64側に供給する。さらに、自家発電電源装置62の発電した電力で蓄電池72を充電する。蓄電池72の適正な充電制御のために、充電制御回路70が設けられている。また、自家発電電源装置62の発電した電力を送配電線路56側に送り出して売電をする機能を持つ。このために、良く知られたパワーコンディショナ66が用いられている。
【0023】
蓄電池72は充放電により電力を蓄積したり放出したりする機能を持つ2次電池である。蓄電池72は、自家発電電源装置62から供給される電力の蓄積と、送配電線路56から供給される割安な夜間電力の蓄積に使用される。スマートメータ32は、電力会社がネットワークを通じて自動的に各建物の積算電力計を読み取るための装置である。
【0024】
この実施例の建物は、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等により、建物中の電力機器の使用状態を監視して、エネルギー使用量を最適化する処理を実行している。HEMS管理用サーバ44は、建物のエネルギ消費量の実績データを蓄積することができる。このHEMS管理サーバ44に、本発明のエネルギ供給管理に必要な機能を付与している。
【0025】
図の演算処理装置74と記憶装置76とは、HEMS管理用サーバ44の機能ブロックの一部を示したものである。ここでは、本発明のエネルギ供給管理に必要な機能のみを抽出して図示し、他の機能の図示は省略した。HEMS管理用サーバ44でなくても、一般のパーソナルコンピュータを使用して、同様の機能を付与することができる。
【0026】
図の演算処理装置74には、データ取得手段16と使用予測手段18と通信手段24とが設けられている。また、その演算処理の過程で、記憶装置76に、エネルギ使用実績データ12とエネルギ使用予定データ14と予定通知データ30が記憶される。
【0027】
図の演算処理装置74で実行されるコンピュータプログラムは、コンピュータを、図示した各手段として機能させる。そのプログラムはこの機能ブロック単位でモジュール化されてもよいし一体化されてもよい。また、このコンピュータプログラムは、既存のアプリケーションプログラムに組み込まれていてもよい。CD−ROMのようなコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してインストールされるか、あるいはネットワークを通じてダウンロードすることができる。
【0028】
データ取得手段16は、過去のエネルギ使用実績データ12もしくは翌日以降のエネルギ使用予定データ14を取得する機能を持つ。過去のエネルギ使用実績データ12は、例えば、電力の場合には、送配電線路56を通じて電力会社から購入をした電力のことである。例えば、スマートメータ32から、1時間毎に、積算電力を読み取れば、1日24時間を通じての単位時間毎のエネルギ使用量の変化を示すデータを取得できる。その結果を、記憶装置76にエネルギ使用実績データ12として記憶する。
【0029】
翌日以降のエネルギ使用予定データ14は、需要家の構成員が随時HEMS管理サーバ44に入力したスケジュール管理データから取得する。このデータは翌日以降のエネルギ使用量計算の重要な根拠になるデータである。スケジュール管理データから、例えば、翌日は外出しないとか、翌日は不在とか、翌日に電気自動車の充電をするといったデータが、構成員毎に収集される。なお、需要家が一般家庭の場合には、構成員は家族である。需要家が事業所等の場合には、構成員は社員等である。
【0030】
使用予測手段18は、上記のようにしてデータ取得手段16の取得したデータを使用して、翌日以降の使用エネルギの予測計算をする機能を持つ。始めに、翌日分の予測のために、蓄積された過去のエネルギ使用実績データ12のうちのひとつを選択する。そして、需要家の構成員の翌日以降のエネルギ使用予定データ14を使用して過去のエネルギ使用実績データ12を補正する。これが、翌日以降の使用エネルギの予測計算である。その詳細は図2を用いて後で説明する。
【0031】
記憶装置76には、多量の過去のエネルギ使用実績データ12が記憶されているものとする。使用予測手段18は、例えば、過去のエネルギ使用実績データ12を曜日毎に分類する。そして、予測をする日の曜日と一致した曜日の実績データ12を選択する。これでエネルギ使用実績データ12の曜日変動を吸収する。
【0032】
また、送配電線路56を通じて電力会社から購入をした電力は、需要家の全消費電力から自家発電電源装置62で発電をした電力を差し引いた値になる。天候により自家発電電源装置62の発電電力が減少すると使用エネルギの予測計算結果にも大きな誤差が生じる。従って、使用予測手段18は、翌日の天気予報に従って、予測計算結果の天候変動を吸収する。こうして、使用予測手段18は、翌日以降の使用エネルギの予測計算を実行する。この計算結果は、予定通知データ30に含められる。予定通知データ30の内容は図3を用いて後で説明する。
【0033】
通信手段24は、エネルギ供給元である電力会社のサーバ78に対して、記憶装置76に記憶させた予定通知データ30を、ネットワーク38を通じて送信する機能を持つ。予定通知データ30は、翌日分以降何日分でも良いが、翌日分だけでもよい。エネルギ供給元は、できるだけ多くの需要家からこの予定通知データ30を受信することにより,精度の高い需要予測ができる。
【0034】
図2はエネルギ使用実績データの説明図である。
図のグラフの縦軸は単位時間毎のエネルギ使用量で、横軸は時間である。破線は、1日24時間を通じての単位時間毎のエネルギ使用量の変化を示すグラフである。エネルギ供給元に通知する使用エネルギの予測計算結果は、例えば、このグラフのデータを24時間分積算した一日のエネルギの合計使用量82である。また、一日を指定された範囲で区分した、区分毎のエネルギの合計使用量(図3の82と83)であってもよい。一日を例えば、昼間と夜間に区分して、その区分毎のエネルギの合計使用量(電力使用量)を通知すれば、電力会社は料金体系に即した需要予測ができる。
【0035】
なお、需要家の構成員のスケジュールは、消費エネルギに大きな影響を及ぼす。そこで、データ取得手段16(図1)は、図2に示すように、需要家の構成員の使用するスケジュール管理データ36をネットワーク38を通じて読み取る。需要家の構成員が、例えば、携帯電話42でスケジュール管理データ36を使用している場合に、そのデータを取得する。
【0036】
例えば、全日在宅とか、旅行で不在とかいう消費エネルギの予想に役立つデータのみを、ワンクリックで携帯電話42からHEMS管理サーバ44に転送するアプリケーションを、携帯電話42にインストールしておくとよい。使用予測手段18(図1)は、例えば、このスケジュール管理データ36でエネルギ使用予定データ14を補正する。スケジュール管理データ36が「不在」という場合には、補正係数が0.8、スケジュール管理データ36が「在宅」という場合には、補正係数が1.1というような設定をしておけばよい。
【0037】
この例の場合には、エネルギ使用予定データ14は、単位時間毎にエネルギ使用量を補正する補正係数の集合ということになる。エネルギ使用予定データ14は、予測計算に使用するエネルギ使用実績データに加算をしたり、減算をしたりして補正処理をする任意の数値データであればよい。
【0038】
図3は、図1に示した通信手段24が電力会社のサーバ78に送信する通知データ30の説明図である。
通信手段24は、例えば、図のような構成の予定通知データ30を電力会社のサーバ78に向けて送信する。需要家識別データ86は、エネルギ供給元側からみた顧客特定用の識別コードである。使用予定日88は、予測計算をした電力を使用する日を指定するデータである。使用エネルギの予測計算結果22は、この例では、昼間合計使用量83と夜間合計使用量84とを含む。この実施例では、予定通知データ30に、さらに、エネルギ購入予約データ46を含めている。この予定通知データ30をネットワーク38を通じてエネルギ供給元20に対して送信する。エネルギ購入予約データ46については、実施例4以下で詳述する。
【実施例2】
【0039】
図4は、実施例2のエネルギ供給管理システムの説明図である。
実施例1では、各建物に設けられたHEMS管理サーバ44から電力会社のサーバ78に対して使用エネルギの予測計算結果を送信する例を説明した。実施例2では、複数の建物の情報を纏めて一括して電力会社のサーバ78に送信する例を説明する。図に示す群管理装置26は、集合住宅28の管理センター等に設けられる。
【0040】
群管理装置26には、任意のコンピュータを使用することができる。群管理装置26と集合住宅28の各部屋とは、ネットワーク38により接続されている。図4の例では、複数の集合住宅ビルや戸建て住宅群を含むニュータウンの全ての建物と群管理装置26とが、ネットワーク38により接続されているものとする。
【0041】
群管理装置26は管理下にある複数の建物から翌日以降の使用予定エネルギの予測計算結果22を収集する。各建物には、それぞれ任意の方法で計算をした使用予定エネルギの予測計算結果22が、記憶装置に記憶されており、そのデータを群管理装置26が読み取ればよい。群管理装置26には、図4に示すように、データ取得手段16と使用予測手段18と通信手段24とが設けられている。
【0042】
記憶装置76には、データ取得手段16により各建物から収集された個別の使用予定エネルギの予測計算結果22が記憶される。使用予測手段18は、個別の使用予定エネルギの予測計算結果22を集計して、予定通知データ30を生成する。通信手段24は生成された予定通知データ30をネットワーク38を介して電力会社のサーバ78に送信する。群管理装置26は、建物の一般的な管理業務の一環として、管理下にある各建物から情報を収集するとよい。これにより、ほぼ漏れなく個別の使用予定エネルギの予測計算結果22を収集でき、エネルギ供給元20は、該当する地域について信頼性の高い需要予測ができる。
【実施例3】
【0043】
図5は、予定通知データ30の送信方法を示す説明図である。
予定通知データ30は、インターネットや電話回線等を使用して電力会社に送信されるとよい。しかしながら、既存のスマートメータ32の検針システムでは、検針用データ34がスマートメータ32の記憶装置76に記憶されており、ネットワーク38を通じてエネルギ供給元20から読み取られる。この検針用データ34に使用エネルギの予測計算結果22を通知するための予定通知データ30を付加する。これにより、既存のシステムを利用して使用エネルギの予測計算結果22を自動的に電力会社に通知することができる。電力だけでなく、ガスや水道も同様の構成を採用することが可能である。
【実施例4】
【0044】
図6は、エネルギ予約購入方法の説明図である。図7はエネルギの分散供給方法の説明図である。図8はエネルギ予約をした場合の電気自動車の充電方法説明図である。
図3で説明したように、エネルギ供給元20に送信する予定通知データ30には、特定の用途のための指定された量のエネルギ購入予約データ46を含めることができる。例えば、夜間電力を使用した電気自動車の充電なら、充電が終了していなければならない時刻は決まっていても、充電をする時刻は比較的自由である。従って、電力会社側で、電力を供給する時間を選択することが可能になる。
【0045】
エネルギの予約購入は、単なる需要予測の通知ではなく、エネルギを使用することが確定しているものを通知して、該当するエネルギを他のエネルギとは区別して購入することである。需要家は、指定された量のエネルギの購入を約束し、エネルギ供給元は、その準備をする。例えば、給湯器による風呂の湯沸かしを夕方8時からというように、特定の時間に使用すると予約してもよい。例えば、家庭用の蓄電池の充電とか、貯水タンクへの給水というように、特定の用途のために使用すると予約してもよい。例えば、電気自動車の充電を午前3時〜午前6時までの間にというように、特定の用途のための特定の時間に使用すると予約してもよい。
【0046】
その結果、図7に示すように、電力会社は各需要家A〜Fに対する充電時間を分散させて、送電電力を時間軸上で平準化して配分することができる。図の例では、需要家A〜Fがそれぞれ時間をシフトさせて蓄電池を充電する。例えば、需要家Aが深夜1時から2時までの蓄電池充電を希望した場合に、電力会社がこれを了承したとする。予定どおり深夜1時から2時までの蓄電池充電を実行した履歴がスマートメータ32(図5)の記憶装置76に記憶される。電力会社でこの履歴を読み取って、予約了承内容と一致すれば、割引料金で充電を認めるものとする。これにより、集中的に大電力の供給を必要とするような電気自動車に充電をするために、電力需要が一時的に急増するのを抑制できる。従って、送電コストが低減され、割引料金の適用等が可能になる。
【0047】
さらに、電力会社が、需要家の充電時間を自動的に強制的に制御することもできる。例えば、図6に示すように、需要家から電力会社のサーバ78に対してエネルギ購入予約データ46が送信される。蓄電池の「充電容量」とともに、最低限いつまでに充電を完了させたいかを示す「充電完了希望時」を送信する。
【0048】
折り返して、需要家は、予約を受け付けた電力会社からネットワークを通じて、エネルギ供給制御データ48を受信する。図8に示すように、需要家の充電制御回路70(図1)には、総充電電力量や、充電開始時刻、充電電流、充電終了時刻等を指定するエネルギ供給制御データ48が書き込まれる。エネルギ供給制御データ48には、例えば、零時30分から充電電流10アンペアで5時間という内容の、充電器を自動制御するデータが含まれている。
【0049】
従って、電気自動車80の充電ケーブルを充電用接続端子に接続しても、ただちに充電を開始しない。エネルギ供給制御データ48により指定された供給時刻と供給量に従ってエネルギの供給を受ける。この制御はHEMS管理サーバ44が実行すればよい。また、充電終了後、その結果は図6に示すように、報告データ49に含められる。これが自動的に電力会社のサーバ78に送信される。その結果、その充電電力量に対して電力会社から該当する割引料金の請求書55が届く。もちろん、この請求書55の費用は毎月の通常の電気料金の中に含めて請求されて構わない。
【0050】
電気自動車80の蓄電池の充電がエネルギ供給制御データ48に従って自動的に実行されれば、電力会社の計画どおりの送配電ができる。蓄電池72の充電や給湯器等のための送電であれば、必ずしも連続的でなく、任意の間隔を空けて断続的に電力を供給しても構わない。従って、電力会社の自由度が大きい。ガスを用いた給湯器の運転や燃料電池の駆動についても、供給元から見たエネルギ供給量の平準化が可能である。水道水の供給の場合には、需要家の貯水槽に水道水を溜める予定の通知を受けたときに、需要が集中しないように、貯水動作を自動制御して、同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0051】
図9は実施例1に示したシステムの動作フローチャートである。
まず、ステップS11で、データ取得手段16が記憶装置76に記憶されたエネルギ使用実績データ12を読み取る。次に、ステップS12で、データ取得手段16が、記憶装置76に記憶された翌日のエネルギ使用予定データ14を読み取る。ステップS13では、使用予測手段18が、エネルギ使用実績データ12を補正して使用エネルギの予測計算結果22を得る。ステップS14で、予定通知データ30を生成して記憶装置76に記憶する。ステップS15では、通信手段24が予定通知データ30を記憶装置76から読み出して電力会社のサーバ78に送信する。
【0052】
図10はエネルギ使用実績データの取得と使用エネルギ計算動作フローチャートである。
データ取得手段16は、エネルギ使用実績データの取得処理を開始する。まず、ステップS21で1時間タイマをセットする。即ち、例えば、時報毎に一回データ取得処理を実行する。時報を検出するとステップS22で、スマートメータ32から積算電力計の表示を読み取る。ステップS23では、読み取った一時間分の消費電力を記憶装置76に記録する。
【0053】
ステップS24では、データ収集開始から24時間が経過したかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS25の処理に移行し、ノーのときは最初の処理に戻る。こうして、例えば、午前6時から次の日の午前6時までの消費電力の時間毎の変化を順次記録する。ステップS25では、これまでの処理で収集したデータをまとめた実績データファイルを作成して、エネルギ使用実績データとする。
【0054】
その後、ステップS26で、実績データファイルに取得年月日を記録する。同時に、曜日をキーにして分類する。分類毎に記憶領域が違う場合には記憶させる領域を検索する。そして、ステップS27で、曜日で検索できるエネルギ使用実績データを記憶装置76に記憶する。なお、曜日が同一のエネルギ使用実績データが記憶装置に既に記憶されている場合には、平均値を計算するとよい。従って、例えば、曜日毎に1種類のエネルギ使用実績データが記憶装置から読み出せるようにするとよい。
【0055】
図11は、集合住宅のデータ収集動作フローチャートである。
ステップS31では、データ取得手段16が、データ収集先の選択をする。管理下にある建物の識別コードのリストを参照しながら、全ての建物からデータを収集するように制御するとよい。ステップS32では、選択した建物から、翌日の使用エネルギの予測計算結果を取得する。ステップS33では、全ての建物からデータを収集したかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS34の処理に移行し、ノーのときは最初に戻る。ステップS34では、使用予測手段18が、収集した全ての使用エネルギの予測計算結果の合計計算をする。そして、予定通知データ30を生成する。ステップS35では、通信手段24が予定通知データ30を電力会社へ送信する。
【0056】
図12は、エネルギ予約購入動作フローチャートである。
ステップS41では、通信手段24が電力会社のサーバ78対してエネルギ購入予約データ46の送信をする。電力会社側では、供給電力の平準化計算をして、エネルギ供給制御のための計画をする。ステップS42では、そのエネルギ供給制御データ48を電力会社のサーバ78からHEMS管理サーバ44が受信する。そして、充電制御回路70にエネルギ供給制御データ48がセットされる。ステップS43では、充電制御回路70が、指定時刻かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS44の処理に移行し、ノーのときは待機する。
【0057】
ステップS44では、充電制御回路70が電気自動車80に対する充電の開始をする。ステップS45では、エネルギ供給制御データ48の内容に従って充電を終了する。ステップS46では、充電が終了した旨の情報を含む報告データ49を生成する。ステップS47では、通信手段24が、報告データ49を電力会社のサーバ78に送信する。これで、電力会社は計画通り予約販売が完了したことを確認して、電力料金の請求書を発行する。
【符号の説明】
【0058】
10 エネルギ供給管理システム。
12 エネルギ使用実績データ
14 エネルギ使用予定データ
16 データ取得手段
18 使用予測手段
20 エネルギ供給元
22 使用エネルギの予測計算結果
24 通信手段
26 群管理装置
28 集合住宅
30 予定通知データ
32 スマートメータ
34 検針用データ
36 スケジュール管理データ
38 ネットワーク
42 携帯電話
44 HEMS管理サーバ
46 エネルギ購入予約データ
48 エネルギ供給制御データ
49 報告データ
55 請求書
56 送配電線路
58 分電盤
62 自家発電電源装置
64 宅内配線
66 パワーコンディショナ
70 充電制御回路
72 蓄電池
74 演算処理装置
76 記憶装置
78 電力会社のサーバ
80 電気自動車
82 全日合計使用量
83 昼間合計使用量
84 夜間合計使用量
86 需要家識別データ
88 使用予定日

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去のエネルギ使用実績データもしくは翌日以降のエネルギ使用予定データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段の取得したデータを使用して、翌日以降の使用エネルギの予測計算をする使用予測手段と、
エネルギ供給元に対して、前記翌日以降の使用エネルギの予測計算の結果を含む予定通知データを送信する通信手段を設けたことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
前記過去のエネルギ使用実績データは、1日24時間を通じての単位時間毎のエネルギ使用量の変化を示すデータであって、
使用予測手段は、エネルギ供給元に対して、一日のエネルギの合計使用量または一日を指定された範囲で区分した区分毎のエネルギの合計使用量と、需要家を特定する情報と、使用予定日を示す情報とを結合した予定通知データを生成し、
前記通信手段は、前記予定通知データをネットワークを通じてエネルギ供給元に対して送信することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項3】
群管理装置と複数の需要家の建物とがネットワークを介して接続されており、
前記群管理装置には、
複数の需要家の建物から、翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を収集するデータ取得手段と、
前記データ取得手段が収集した使用エネルギの予測計算結果を集計する使用予測手段と、
前記翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を集計した結果と、需要家群を特定する情報と、使用予定日を示す情報とを結合した予定通知データを生成し、その結果をエネルギ供給元に通知する通信手段を設けたことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
使用予定エネルギを通知するための予定通知データを、スマートメータの検針用データに付加して、ネットワークを通じて、エネルギ供給元から読み取り可能な状態に保持することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
データ取得手段は、需要家の構成員の使用するスケジュール管理データをネットワークを通じて読み取り、前記構成員の翌日以降のエネルギ使用予定データを算出して、需要家の翌日以降の使用エネルギの予測計算結果を補正することを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
前記エネルギ供給元に送信する予定通知データには、指定された量のエネルギの購入予約データを含むことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
前記購入予約データは、特定の時間に使用する指定された量のエネルギを示すことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項8】
請求項6に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
前記購入予約データは、特定の用途のための指定された量のエネルギを示すことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項9】
請求項6に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
前記購入予約データは、特定の用途のための特定の時間に使用する指定された量のエネルギを示すことを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
エネルギ供給元から、エネルギ供給制御データを受信して、エネルギ供給制御データにより指定された供給時刻と供給量に従ってエネルギの供給を受けることを特徴とするエネルギ供給管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載のエネルギ供給管理システムにおいて、
通信手段は、エネルギ供給制御データにより指定された供給時刻と供給量に従ってエネルギの供給を受けた後、その結果を示す報告データをエネルギ供給元に送信することを特徴とするエネルギ供給管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−191774(P2012−191774A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53851(P2011−53851)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】