エネルギ吸収部材およびエネルギ吸収部材の断面変形制御方法
【課題】潰し加工において確実および簡便に平板状フランジ両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供することを目的とする。
【解決手段】平板状フランジ2、3同士をつなぐ平板状ウエブ4、5、6から構成され、張出フランジ7、8、9、10を各々有する矩形断面形状のアルミニウム合金押出中空形材1からなり、前記平板状ウエブは板厚が順次増加していくコーナー部11〜16を有して、これらのコーナー部における内側コーナー部11i〜16iと外側コーナー部11o〜16oとを互いの板厚の増加量が異なる非対称の形状として、前記ウエブ4、5、6が屈曲する方向を内側方向か外側方向かに各々別個に制御する。
【解決手段】平板状フランジ2、3同士をつなぐ平板状ウエブ4、5、6から構成され、張出フランジ7、8、9、10を各々有する矩形断面形状のアルミニウム合金押出中空形材1からなり、前記平板状ウエブは板厚が順次増加していくコーナー部11〜16を有して、これらのコーナー部における内側コーナー部11i〜16iと外側コーナー部11o〜16oとを互いの板厚の増加量が異なる非対称の形状として、前記ウエブ4、5、6が屈曲する方向を内側方向か外側方向かに各々別個に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷重後の断面の変形を制御できるエネルギ吸収部材およびエネルギ吸収部材の断面変形制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体の前端部及び後端部には、車幅方向に略平行な状態でバンパが固設されている。このバンパの裏側、即ち車体側には、外部からバンパに障害物が衝突した際に、バンパと車体との間で衝撃を吸収するための補強部材(バンパビーム)として、鋼製の他、アルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材が設けられている。
【0003】
図12、図14に示すように、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の裏側に、前記バンパビーム110が、これらフロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の形状に合わせて、車体の車幅方向(図の左右方向)に、その軸方向あるいは長手方向に亘って湾曲されるか、あるいは両端部が曲げられて設けられている。
【0004】
ただ、図12のように、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120のデザインや設計上、車体の車幅方向(図の左右方向)の幅が狭くなっている場合は、バンパビーム110の軸方向(長さ方向)の両端部110a、110bが、これらフロントバンパあるいはバンパフェイシャ120と、丸印で示す部分で干渉することなる。
【0005】
この場合には、図13に示す通り、バンパビーム110のうちの両端部110a、110bを、部分的に車体前後方向(図の上下方向)に潰し加工して、車体フロント側の元の形状を点線で示す通り、その断面を潰して縮小した上で、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の裏側にバンパビーム110を収めていた。
【0006】
また、図14に示すように、車体側に設けられた、バンパビーム110は、取り付け用部材であるサイドメンバ(あるいはステイ)130に固設されるようになっている。この際、デザインや設計上、フロントバンパ120と、サイドメンバ130との車体前後方向(図の上下方向)の間隔が狭くなっている場合でも、バンパビーム110は、バンパビーム110の軸方向(長さ方向)に折り曲げられた両端部110a、110bが、これらサイドメンバ130と、丸印で示す部分で干渉することなる。
【0007】
したがって、この場合でも、図15に示す通り、バンパビーム110の両端部110a、110bを、部分的に、車体前後方向の潰し加工して、車体リア側の元の形状を点線で示す通り、その断面を潰して縮小し、そのフロントバンパ120とサイドメンバ130間の空間にバンパビーム110を収めていた(特許文献1参照)。
【0008】
ここで、バンパビームがアルミニウム合金押出中空形材からなる場合、その中空断面形状は、図9に例示する通り、相対する二つの平板状フランジ2、3(前面側フランジ2、後面側フランジ3)同士をつなぐ、間隔をあけた複数(図では3本)の平板状ウエブ4、5、6とから構成された、日型、目型などの矩形断面形状(図では日型)となる。ちなみに、中間のウエブ6は補強用のリブであり、中リブとも称される。アルミニウム合金押出中空形材は、その軸方向(長手方向、押出方向)に亘ってこのような同じ断面形状を有していることが特徴である。
【0009】
そして、バンパビーム(エネルギ吸収部材)がアルミニウム合金押出中空形材からなる場合、通常は、前記図12、14に示したように、前記平板状フランジ2、3を衝突荷重に対峙させて配置する。すなわち、形材の向きとして、前面側フランジ2を車体フロント側、後面側フランジ3を車体リア側として垂直方向に延在するように立て、平板状ウエブ4、5は水平方向に延在するように設けられる。
【0010】
ただ、このような矩形断面形状のアルミニウム合金押出中空形材のうちの両端部などを、部分的に潰し加工する場合には、前記複数のウエブのうち、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブ4、5が途中より屈曲する(座屈、折れ曲がり)方向を、図10に示すような、各々前記矩形断面形状の内側方向に制御する必要がある。
【0011】
このように二本のウエブ4、5を各々前記矩形断面形状の内側方向(内方)へ屈曲させる=「内倒れさせる」理由は、二本のウエブ4、5が、図11で示すように、押出形材の前記矩形断面形状の外側方向(外方)へ屈曲させる=「外倒れさせる」と、屈曲して前記矩形断面形状の外側にはみ出したウエブ4、5が却って、前記そのフロントバンパ120とサイドメンバ130間の空間にバンパビーム110を収める際の邪魔になるからである。ちなみに、補強用の中リブである中間のウエブ6も、前記矩形断面形状の内(押出形材内)で屈曲しているが、この屈曲方向自体は影響しない。
【0012】
ただ、このように潰し加工において、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本のウエブ4、5を各々押出中空形材の前記矩形断面形状の内側方向(内方)へ屈曲させる=「内倒れさせる」のは難しい。このため、従来から、二本のウエブ4、5を「内倒れさせる」ための潰し加工が特許文献2のように提案されている。
【0013】
この潰し加工の方法は、図9に示すように、基台150上に押出中空形材1を平板状フランジ2、3を上下として載置した上で、剛体からなる垂直負荷用治具140を、押出中空形材1の潰し加工を行う端部側の上方に配置して、下降させて平板状フランジ2から荷重する。ここで、垂直負荷用治具140の幅は、平板状フランジ2の幅Wに対応する拡がりを持っている。また、図示はしないが、側面側から見ると、端部などの部分的な潰し加工に必要な、押出中空形材1の軸方向の長さを持ち、潰し加工後の所望形状や曲面、傾斜面に合わせた形状の、水平面や傾斜面あるいは曲面を有している。
【0014】
160は、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせるための、水平の過重負荷用の治具である。この冶具160は、押出中空形材1の両側面側で、垂直負荷用治具140の下に配置されており、押出中空形材1の側面から平板状ウエブ4、5に対して内方への水平負荷を加えて、平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003-146156号公報
【特許文献2】特開平7ー25296号公報
【特許文献3】特開2001-132788号公報
【特許文献4】特許第3520959号公報
【特許文献5】特開2003-320847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ただ、このような特許文献2の潰し加工装置によっても、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本のウエブ4、5を各々内倒れさせつつ、潰し加工することが非常に難しい。この特許文献2でも、最初の暫くの時間は前記水平負荷用治具160によって、二本の平板状ウエブ4、5へ水平負荷のみを加え、その後の時間で、この水平負荷を加える続けると共に、前記垂直負荷用治具140によって、平板状フランジ2に垂直負荷を加え、二本の平板状ウエブ4、5が各々内倒れし始める時点以降は、平板状フランジ2への垂直負荷だけにするとしている。
【0017】
特許文献2が、これだけ平板状ウエブ4、5への水平負荷と、平板状フランジ2への垂直負荷とのタイミングを重視しているのは、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブ4、5は、前記した図9などの通常の押出中空形材1の断面形状では、前記矩形断面形状の外側方向へ外倒れしやすいからである。事実、特許文献2では、前記タイミングとすれば、一旦、内倒れし始めた平板状ウエブ4、5が、前記時点C以降の垂直負荷によって押出中空形材の外方に屈曲(座屈)することがないからであるとしている。言い換えると、特許文献2は、通常の押出中空形材1の断面形状では、前記潰し加工においては、前記矩形断面形状の外側方向へ外倒れしやすく、フランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせることの難しさを裏付けている。
【0018】
周知の通り、押出中空形材の断面形状は、バンパビームなどの使用されるエネルギ吸収部材用途や自動車車体条件などに応じて、その日型、目型などの断面形状や、フランジ、ウエブの長さや高さ、板厚などが大きく異なる。したがって、通常は、潰し加工する押出中空形材の断面形状が種々異なるので、前記特許文献2の装置を用いても、前記タイミングを適切に選択することが非常に困難である。このため、押出中空形材の断面形状によって、あるいは断面形状条件の違いによって、潰し加工で平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせることができず、押出中空形材の断面形状の変形をうまく制御できない場合も多々生じる。
【0019】
また、このような潰し加工時の課題だけではなく、エネルギ吸収部材としても、種々の衝突荷重に対する荷重変位の制御や、エネルギ吸収性能の向上の観点から、前記フランジ面に負荷される荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、少なくともフランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせることを可能とする必要性は高い。更に、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を、前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能である必要性も高い。
【0020】
したがって、本発明の目的は、潰し加工において確実および簡便に平板状フランジの幅方向両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供しようとするものである。また、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材の断面変形制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために、本発明の荷重変形後の断面形状を制御できるエネルギ吸収部材の要旨は、相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材であって、前記平板状ウエブはその平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有しており、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境として平板状ウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状として、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能であることとする。
【0022】
また、前記目的を達成するために、本発明の荷重変形後の断面形状を制御できるエネルギ吸収部材の断面変形制御方法の要旨は、エネルギ吸収部材をアルミニウム合金押出中空形材から構成し、このアルミニウム合金押出中空形材を、相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するものとし、更に、前記平板状ウエブが、その平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有し、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを、互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状となして、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することである。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、潰し加工される素材側で、潰し加工において確実および簡便に平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供することができる。また、その断面変形制御方法も提供できる。
【0024】
本発明では、また、前記潰し加工がされない部位などに、衝突荷重が負荷されるエネルギ吸収部材側で、確実に平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御でき、対物や対人などの種々の衝突荷重に対する荷重変位の制御や、エネルギ吸収性能向上ができるエネルギ吸収部材を提供できる。また、その断面変形制御方法も提供できる。
【0025】
本発明では、上記断面変形制御効果発揮の前提となるアルミニウム合金押出中空形材の前記規定の形状条件の範囲内で、熱間押出による中空形材であれば簡便に作れる前記平板状ウエブのコーナー部の形状条件とすることで、上記断面変形制御効果を得ることができる。言い換えると、エネルギ吸収部材本来の性能を低下させずに、上記断面変形制御効果を得ることができる。また、本発明では、素材側の簡便な改良で済み、潰し加工などにおいても、また、エネルギ吸収部材の取り付けや使用側においても、余分なコストや工程は一切不要であり、著しく実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明エネルギ吸収部材の一態様を示す斜視図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明エネルギ吸収部材の他の態様を示す断面図である。
【図5】比較例のエネルギ吸収部材を示す断面図である。
【図6】本発明エネルギ吸収部材の他の態様を示す断面図である。
【図7】本発明エネルギ吸収部材の他の態様を示す断面図である。
【図8】実施例における各エネルギ吸収部材の断面変形の解析結果を示す説明図である。
【図9】エネルギ吸収部材の潰し加工の一例を示す断面図である。
【図10】潰し加工による「内倒れ」の断面変形例を示す断面図である。
【図11】潰し加工による「外倒れ」の断面変形例を示す断面図である。
【図12】バンパービームの取り付け構造例を示す自動車の平面図である。
【図13】図12の取り付け用に両端部が潰し加工されたバンパービームを示す平面図である。
【図14】バンパビームの取り付け構造の他の例を示す自動車の平面図である。
【図15】図14の取り付け用に両端部が潰し加工されたバンパービームを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。
【0028】
アルミニウム合金押出中空形材:
図1において、1は本発明の前記断面変形制御効果を発揮するためのアルミニウム合金押出中空形材である。このアルミニウム合金押出中空形材1は、相対する二つの平板状フランジ2、3同士をつなぐ間隔をあけた3本(複数)の平板状ウエブ4、5、6から構成され、前記平板状フランジ2、3は各々その幅方向の両端部側に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジ7、8、9、10を各々有した、日型の矩形断面形状を有している。以下、平板状フランジを単にフランジ、平板状ウエブを単にウエブ、平板状フランジの幅方向の両端部側を平板状フランジの単に両端部側とも言う。
【0029】
前記平板状フランジの平板部2a、3aの板厚t1は1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部4a、5a、6aの板厚t2は1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部4a、5a、6aの板厚t2は、前記平板状フランジの平板部2a、3aの板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジ2、3の幅wが前記平板状ウエブ4、5、6の長さhの1.5倍以上とする。本発明エネルギ吸収部材は、図1に示す通り、このような矩形断面形状とその形状の各条件を、その軸方向(長手方向、押出方向)に亘って、均一に有しているアルミニウム合金押出中空形材からなる。
【0030】
ここで、前記板厚t1、板厚t2とは、図1の矩形断面における、均一な厚みを、そのフランジの幅方向(図の横方向)やウエブの長さ(図の縦方向)に亘って有する、前記フランジや前記ウエブの各平板部の厚み(板厚)である。仮に、フランジやウエブの平板部の厚みを、均一ではなく、そのフランジの幅方向(図の横方向)やウエブの長さ(図の縦方向)に亘って変化させる(厚い部分と薄い部分とを有する)場合には、これらのそのフランジの幅方向(図の横方向)やウエブの長さ(図の縦方向)に亘って平均化した厚み(板厚)とする。また、前記平板状フランジ2、3の幅wとは、その延在方向が、図1の矩形断面における、前記矩形中空形材1の押出方向(図1の手前側から奥の側に至る軸方向)に対して直角方向(図1の横方向)に亘る、平板状フランジ2、3の幅(長さ)であり、矩形中空形材1の幅でもある。更に、前記平板状ウエブ4、5、6の長さhとは、その延在方向が、図1の矩形断面における、前記中空形材1の押出方向(軸方向)や前記平板状フランジ2、3の前記幅方向に対する直角方向(図1の縦方向)に亘る、平板状フランジ2、3の長さである。
【0031】
更に、図1に示すように、アルミニウム合金押出中空形材1の平板状ウエブ4、5、6はその平板部4a、5a、6aから前記平板状フランジとの接合部4b、4c、5b、5c 、6b、6cへと向かって板厚が順次増加していくコーナー部11、12、13、14、15、16を有している。これらのコーナー部において、前記平板状ウエブ平板部5aの軸線Sを境として、これらの平板状ウエブの板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iと外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oとを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状としている。
【0032】
そして、図1に示すように、前記内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iと外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oのいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくしている。これによって、潰し加工など、前記平板状フランジ2、3面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブ4、5、6が屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することを可能としている。また、これによって、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できるエネルギ吸収部材としている。
【0033】
使用アルミニウム合金:
本発明で用いる押出中空形材用のアルミニウム合金は、通常、製造がしやすく、加工や成形が容易で、強度も高い、AA乃至JIS の6000系、7000系等のアルミニウム合金が適宜選択して用いられる。これらのアルミニウム合金押出材は、周知の通り、規格組成に鋳造されたビレットを均質化熱処理、熱間押出からなる工程によって、均一な矩形断面形状をその軸方向(長手方向)に亘って有するように製造される。そして、押出工程後の時効処理(質別記号T5)や、焼鈍処理(質別記号O)、溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後に時効処理(質別記号T6) などの調質処理(熱処理)されて用いられる。
【0034】
但し、本発明で、潰し加工時や衝突荷重の負荷時に、確実にフランジ両端部側の二本のウエブを各々内倒れさせるには、機構を後述する通り、アルミニウム合金の強度(=耐力)は、前記例示合金の高強度レベルであれば、その範囲での強度差(耐力差)には殆ど影響されない。したがって、エネルギ吸収部材の本来のエネルギ吸収性能や、要求される補強効果などの、用途からくる要求特性に応じて、前記例示合金の中から選択される。
【0035】
前提となる断面形状条件:
次に、本発明の前記断面変形制御効果発揮の前提となるアルミニウム合金押出中空形材の断面形状の各条件につき説明する。
【0036】
断面の形状:
本発明での前記断面変形制御効果発揮の前提となるアルミニウム合金押出中空形材の断面の形状は、口型、日型、あるいは目型などの矩形断面形状からなる。このうち、一例として、バンパービーム(バンパー補強材)に適した日型の矩形断面形状につき、図1を用いて説明する。なお、本発明のエネルギ吸収部材はアルミニウム合金押出中空形材からなるので、以下の記載では、エネルギ吸収部材とアルミニウム合金押出中空形材とを共通して番号1と称する。
【0037】
図1において、アルミニウム合金押出中空形材1の日型の矩形断面形状では、平板状ウエブの断面方向の長さ分だけ互いに図の縦方向に間隔をあけて、互いに平行に相対する二つの平板状フランジ2、3を有する。この平板状フランジ2、3は、前記した通り、衝突荷重に対峙させて配置される。そして、これら平板状フランジ2、3同士には、図の横方向に間隔をあけた3本(3枚)の平板状ウエブ4、5、6が、その裏面に接合し、互いにつながれた一体構造となっている。
【0038】
ちなみに、口型の矩形断面形状では、平板状フランジ2、3の幅方向の両端部側の2本の平板状ウエブ4、5のみであって、補強用の中リブである平板状ウエブ6が存在しない。また、目型の矩形断面形状では、図1の平板状ウエブ6に、もう1本の補強用の中リブである平板状ウエブが更に間隔を置いて加わり、平板状フランジ2、3の幅方向の両端部側の2本の平板状ウエブ4、5と合わせて、平板状ウエブが合計で4本となる。
【0039】
張出フランジ:
前記平板状フランジ2、3は各々その両端部に前記ウエブのうち、平板状フランジの幅方向の両端部側の平板状ウエブ4、5の接合位置よりも、更に外側方(図の左右方向)に張出した、張出フランジ7、8(平板状フランジ2の左右に各々張り出す)、9、10(平板状フランジ3の左右に各々張り出す)を各々有している。ここで、これらの張出フランジ(=突出フランジ)7、8、9、10は、平板状ウエブ4、5、6にフランジ2、3との接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を形成するために必須であり、これによって、潰し加工時や衝突荷重の負荷時に、確実フランジ両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせるために必須である。
【0040】
これらの張出フランジが無く、平板状ウエブが平板状フランジ2、3の両端部とでコーナー部を形成しているような完全な矩形断面では、中リブである平板状ウエブ6を除き、平板状フランジの幅方向の両端部側の平板状ウエブ4、5には、本発明で規定するコーナー部を形成できない。すなわち、平板状ウエブ4、5の平板部の軸線を境として互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状とし、平板状フランジ2、3との接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を、平板状ウエブ4、5に形成できない。このための、これら張出フランジ7、8、9、10の平板状フランジ2、3の幅方向(図の横方向)の長さは、全て同じとしても、左右、上下の張出フランジ同士で変えても良いが、後述する板状フランジ2、3の幅Wの1/30〜1/5とすることが好ましい。
【0041】
前記平板状フランジ2、3の平板部2a、3aの板厚t1は1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2は1〜4mmの範囲と各々する。板厚t1、板厚t2がこれらの下限値よりも小さければ(薄ければ)、エネルギ吸収部材の本来のエネルギ吸収性能や、要求される補強効果などの、用途からくる要求特性に応じることができない。一方、板厚t1、t2がこれらの上限値よりも大きければ(厚ければ)、重量が重くなり、アルミニウム合金を用いて軽量化する意味が失われる。また、強度が高すぎて、負荷荷重による変形がしにくくなり、衝突エネルギの吸収や潰し加工が困難となる。
【0042】
そして、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2は、前記平板状フランジの平板部2a、3aの板厚t1よりも小さくする。前記した板厚t1、t2の範囲で、平板状ウエブの板厚が平板状フランジの板厚よりも大きいと、エネルギ吸収部材として要求される曲げ強度や剛性に対して効率の悪い断面形状となり、重量増となってしまう。
【0043】
更に、前記平板状フランジ2、3の幅wは、前記平板状ウエブ4、5、6の長さhの1.5倍以上とする。前記平板状フランジ2、3の幅wが、前記平板状ウエブ4、5、6の長さhの1.5倍未満では、エネルギ吸収に必要な平板状ウエブ4、5、6の長さhに対して、前記平板状フランジ2、3の幅wが小さくなって、矩形断面形状や平板状フランジ2、3の面積が小さくなり、衝突荷重を受けにくくなり、エネルギ吸収部材として不適である。あるいは、矩形断面形状が縦長となって、嵩張る割には負荷荷重による断面の変形がしにくくなり、やはり、エネルギ吸収部材として不適である。この前記平板状フランジ2、3の前記幅wの、前記平板状ウエブ4、5、6の前記長さhに対する上限は特に定めないが、エネルギ吸収部材としての実用的な範囲からすると10倍以下程度である。
【0044】
このように、本発明では矩形断面形状の基本的な形状や構造は、従来のアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材と同じである。すなわち、これらアルミニウム合金押出中空形材の矩形断面形状自体を大きく変えることなく、以下の平板状ウエブのコーナー部の工夫で効果を発揮できる点が本発明の利点でもある。
【0045】
平板状ウエブのコーナー部:
以下に、本発明で特徴的な平板状ウエブのコーナー部につき、図1〜図5を用いて説明する。先ず、図1〜図5において、平板状ウエブのコーナー部はフィレットあるいは隅角部ともいい、平板状ウエブ4、5、6と平板状フランジ2、3との各々の接合部4b、4c、5b、5c 、6b、6cを含む「ウエブとフランジとの交差部」である。
【0046】
図1において、これら平板状ウエブの前記各コーナー部を各々丸印で囲んで示している。各平板状ウエブは上下の両端部に各々コーナー部を有している。平板状ウエブ4のコーナー部は11(図の上側の平板状フランジ2側)、12(図の下側の平板状フランジ3側)、平板状ウエブ5のコーナー部は13(図の上側の平板状フランジ2側)、14(図の下側の平板状フランジ3側)、中リブである平板状ウエブ6のコーナー部は15(図の上側の平板状フランジ2側)、16(図の下側の平板状フランジ3側)である。
【0047】
図2:
そして、図2に、図1の要部である矩形断面右側端部の平板状ウエブ5のみを拡大して示し、この図2の矩形断面の右上のコーナー部13のみを図3に拡大して示す。これら図2、3の通り、コーナー部13、14は、ウエブ5の各ウエブ平板部5aの軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれ、内側コーナー部13i(図の上側のフランジ2側で、図の左側の左下がりの斜線部領域)と14i(図の下側のフランジ3側で、図の左側の左下がりの斜線部領域)、外側コーナー部13o(図の上側のフランジ2側で、図の右側の右下がりの斜線部領域)と14o(図の下側のフランジ3側で、図の右側の右下がりの斜線部領域)とを有する。
【0048】
なお、以下の説明はこのウエブ5のみについて行うが、コーナー部の構成やウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御するために必要な条件は、他のウエブの各コーナー部でも同様である。
【0049】
すなわち、図1のように、平板状ウエブ4のコーナー部11、12は、ウエブの各ウエブ平板部4aの軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれ、内側コーナー部11i(図の上側のフランジ2側)と12i(図の下側のフランジ3側)、外側コーナー部11o(図の上側のフランジ2側)と12o(図の下側のフランジ3側)とを有する。また、中リブであるウエブ6のコーナー部15、16は、ウエブの各ウエブ平板部6aの軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれ、内側コーナー部15i(図の上側のフランジ2側)と16i(図の下側のフランジ3側)、外側コーナー部15o(図の上側のフランジ2側)と16o(図の下側のフランジ3側)とを有する。
【0050】
図2において、平板状ウエブ5の各コーナー部13、14では、前記ウエブ5の平板部5aから前記フランジ2、3との接合部5b、5cへと向かって板厚が順次増加していく。これは、他のウエブ4、6の各コーナー部11、12、15、16でも同様で、前記ウエブ4、6の各平板部4a、6aから、前記フランジ2、3との各接合部4b、4c、6b、6cへと向かって板厚が順次増加していく。
【0051】
本発明では、これら各平板状ウエブの各コーナー部において、前記ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iと外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oとを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状としている。そして、平板状ウエブ5の屈曲変形を矩形断面内方向への前記内倒れか、矩形断面外方向への前記外倒れとするためには、外側コーナー部(13o、14o)の板厚増加量か、内側コーナー部(13i、14i)の板厚増加量かのいずれかを、他方のコーナー部よりも大きくする。
【0052】
平板状ウエブ5の屈曲変形を内倒れとする条件:
図2に示す平板状ウエブ5では、例えば平板状フランジ2に対する(図の上方側からの)矢印で示す負荷荷重Fに応じたウエブ5の屈曲変形を、点線の仮想線で示すように、図の左側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲するように、矩形断面内方向への内倒れとすることを意図している。
【0053】
このため、図2に示す平板状ウエブ5では、外側コーナー部13oと14oの板厚増加量を、内側コーナー部13iと14iの板厚増加量よりも一定以上に大きくしている。この大きくするための基準として、図2に示したコーナー部13、14における、外側コーナー部13oと14oの各長さho(単位mm)を、前記ウエブ5の平板部5aの板厚t2(単位mm)と、内側コーナー部13iと14iの各長さhi (単位mm)よりも大きな値とする。
【0054】
ここで、前記内側コーナー部13iと14iの長さhiと、外側コーナー部13o、14oの長さhoとの定義につき説明する。前記内側コーナー部13iと14iの長さhiと、外側コーナー部13o、14oの長さhoは、前記ウエブ5が接合する側のフランジ2、3の外表面2b、3bから、これら各コーナー部での板厚が増加し始める、前記ウエブ5の平板部側の各始端20までの長さとする。これら各始端20は、各外側コーナー部13oや14oあるいは各内側コーナー部13iや14iにおいて、それぞれの板厚が変化し始める、あるいは増加し始める点(部位)として、これら各外側コーナー部領域や内側コーナー部領域でのコーナー表面の板厚変化から測定でき、明確に特定される。ちなみに、これらの長さhoやhiは、勿論、前記した平板状ウエブ5の長さhと同じ方向の長さである。
【0055】
但し、図2に示す通り、長さhoが長い外側コーナー部13o、14oでの前記始端20は、板厚がt2と等しくなるウエブ5の平板部5a側の部位となる。また、長さhiが短い内側コーナー部13i、14iでの前記始端20は、必然的に、板厚が増加している内側コーナー部13i、14i側の部位となる。これらの定義や規定は、他のウエブ4、6のコーナー部でも同様である。
【0056】
これらコーナー部13、14における、前記外側コーナー部13oと14oの各長さhoを、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも各々一定以上に大きな値とする基準が、これら外側コーナー部13oと14oなどの長さhoを、前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2以上の大きさとなるようにすることである。
【0057】
これら外側コーナー部13oと14oの各長さhoの値自体は、勿論、潰し加工時や車体衝突時などに負荷される荷重に応じて設計される。また、この長さhoの条件自体は、前記平板状フランジ2、3の平板部2a、3aの板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2が1〜4mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記ウエブの長さhの1.5倍以上である矩形断面形状条件などを各々前提とした場合に有効である。しかし、この条件を満たすことによって、これらの前提条件下で平板状ウエブ5の屈曲変形を確実に矩形断面内方向への前記内倒れとすることができる。
【0058】
例え、これら外側コーナー部13oと14oなどの長さhoを、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも大きくしても、これら外側コーナー部13oと14oなどの長さhoが、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2未満では、確実に平板状ウエブ5の屈曲変形を矩形断面内方向への前記内倒れとすることができない。
【0059】
また、大きくする側のこれら外側コーナー部13oと14oの長さhoに特に上限は定めないが、この値が大きすぎると、板厚増加量が大きくなりすぎ、エネルギ吸収部材の重量自体が大きくなりすぎる。また、ウェブの変形範囲が狭くなり、潰し加工中やエネルギー吸収の際の変形時に破断しやすくなり、潰し加工ができなくなったり、エネルギ吸収部材としての機能が低下する可能性が高くなる。したがって、これらの点からすると、外側コーナー部13oと14oなどの長さhoの大きさの上限は、前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2の5倍以下程度とすることが好ましい。
【0060】
一方、小さくする側の前記内側コーナー部13iと14iの各長さhiの下限は特に定めないが、外側コーナー部13oと14oの長さhoとの関係や、前記内側コーナー部13iと14iが有するコーナーR(Ri)の中空押出形材製造(押出)が可能な大きさ限界などから選択される。したがって、これらの点からすると、内側コーナー部13iと14iの各長さhiの大きさの下限は、フランジの板厚t1に、前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2の1/10(0.1倍)を加えた程度である。
【0061】
コーナーR:
図1〜3における本態様では、これらコーナー部13、14における、前記外側コーナー部13oと14oの各長さhoを、各々前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2以上の大きさとして、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも大きくな値とするために、外側コーナー部13oと14oとのコーナーR(Ro)を、内側コーナー部13iと14iとのコーナーR(Ri)よりも各々大きくしている。
【0062】
すなわち、図2に示す、矩形断面形状の右側端部の平板状ウエブ5のコーナー部13、14において、前記ウエブ平板部の軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部13iのコーナーR(Ri)と外側コーナー部13oのコーナーR(Ro) とを、また、内側コーナー部14iのコーナーR(Ri)と外側コーナー部14oのコーナーR(Ro) とを、各々互いに異ならせるように制御して、互いの板厚の増加量が異なる非対称の形状としている。ここで、コーナーRとは、各コーナー部でのウエブ平板部5a側の前記各始端20から、平板状ウエブ5と平板状フランジ2との接合部5bへと向かって板厚が順次増加していく、各内側コーナー部13iと外側コーナー部13oにおける曲率半径(単位mm)である。
【0063】
前記した、外側コーナー部13oと14oの各長さhoを、前記ウエブ5の平板部5aの板厚t2と、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも大きな値とするための目安は、大きくする側の前記外側コーナー部13oと14oとのコーナーR(Ro、単位mm)を、内側コーナー部13iと14iとのコーナーR(Ri、単位mm)の2倍以上、5倍以下の範囲となるように選択することである。図1〜3における本態様では、前記コーナーR(Ro)は前記コーナーR(Ri)の3倍であり、この条件を満足している。
【0064】
このコーナーR(Ro)の値が小さすぎると、ウエブ5の屈曲変形を確実に矩形断面内方向への前記内倒れとすることができない。また、コーナーR(Ro)の値が大きすぎると、エネルギ吸収部材の重量自体が大きくなりすぎる。また、ウェブの変形範囲が狭くなり、潰し加工中やエネルギー吸収の際の変形時に破断しやすくなり、潰し加工ができなくなったり、エネルギ吸収部材としての機能が低下する可能性が高くなる。したがって、コーナーR(Ro)の大きさは前記した範囲とすることが好ましい。
【0065】
一方、内側コーナー部13iと14iの方は、小さな曲面であるコーナーR(Ri)とし、前記外側コーナー部13oと14oの長さhoよりも、そして、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、各々小さな長さhiとしている。但し、外側コーナー部13oと14oの板厚増加量を、内側コーナー部13iと14iの板厚増加量よりも大きくできるのであれば、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、大きな値としても良い。
【0066】
これら同じ外側コーナー部である13oと14oとの互いのコーナーR(Ro)や長さho同士は同じ値として良い。ただ、設計条件や荷重条件によっては、必ずしも同じ値とせずとも良く、前記関係や範囲を満足した上で、互いに異ならせた値と各々しても良い。これは、同じ内側コーナー部である13iと14iとのコーナーR(Ri)同士の関係や、互いの長さhi同士の関係でも同様である。また、他のウエブ4、6の外側コーナー部同士や内側コーナー部同士のコーナーRや長さとの関係でも同じである。すなわち、これらをウエブ5の外側コーナー部や内側コーナー部のコーナーRや長さと同じ値として良く、設計条件や荷重条件によっては、同じ値とせずに互いに異ならせても良い。
【0067】
平板状ウエブ4:
ウエブ5で例示した、フランジ面に負荷される荷重量に応じて、複数のウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御するための必要事項や条件は、前記図1における他の平板状ウエブ4、6でも同様に言える。図1における図の左側端部に位置する平板状ウエブ4を、矩形断面内方向への内倒れとするためには、平板状フランジ2に対する(図の上方側からの)負荷荷重Fに応じたウエブ4の屈曲変形を、前記ウエブ5とは反対方向である図1の右側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲するようにする。
【0068】
このため、平板状ウエブ4の外側コーナー部11oと12oとのコーナーR(Ro)を、内側コーナー部11iと12iとのコーナーR(Ri)よりも各々大きくして、互いのウエブ4の平板部4aの板厚t2からの板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とする。そして、平板状ウエブ4の屈曲変形を確実に矩形断面内方向への前記内倒れとするために、ウエブ4のコーナー部11、12における、外側コーナー部11oと12oの各長さho(単位mm)を、ウエブ4の平板部4aの板厚t2(単位mm)と、内側コーナー部11iと12iの各長さhi (単位mm)よりも大きな値とし、前記ウエブ5で説明した条件や関係を満足させる。
【0069】
平板状ウエブ6:
また、中間に位置する中リブでもある平板状ウエブ6は、前記平板状ウエブ4、5でのコーナー部の必要事項や関係自体同様であるが、その内倒れさせる方向は、平板状ウエブ6自体が外側にはみ出すことはないので、図1における左右方向のどちらでも良い。図1におけるウエブ6は、前記図の左側端部に位置するウエブ4と同じく図の右方向に内倒れさせようとしているので、その前記ウエブ6のコーナー部15、16では、必要事項や関係自体は、ウエブ4と同じとしている。すなわち、図1の通り、便宜的に図の左側とした外側コーナー部15oと16oとのコーナーR(Ro)を、便宜的に図の右側とした内側コーナー部15iと16iとのコーナーR(Ri)よりも各々大きくして、これら内外のコーナー部同士で互いに異なるコーナーRとして、互いのウエブ6の平板部6aの板厚t2からの板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状としている。
【0070】
そして、平板状ウエブ6の屈曲変形を確実に制御するために、平板状ウエブ6のコーナー部15、16における、コーナー部15oと16oの各長さho(単位mm)を、平板状ウエブ6の平板部6aの板厚t2(単位mm)と、コーナー部15iと16iの各長さhi (単位mm)よりも大きな値とし、前記平板状ウエブ5で説明した条件や関係を満足させる。
【0071】
以上説明した態様は、図1の複数(3本)の平板状ウエブ4、5、6のうち、平板状フランジ2、3の幅方向の両端部側に位置する2本のウエブ4、5の各々の前記コーナー部における外側コーナー部の長さhoを、前記ウエブ平板部の板厚t2と内側コーナー部の長さhiよりも大きくし、板厚増加量が異なる非対称形状とした態様である。これによって、潰し加工や自動車の衝突荷重など、前記フランジ2あるいは3の面に負荷される荷重量に応じて、少なくとも前記フランジ2、3の両端部側に位置する2本のウエブ4、5が屈曲する方向を、各々前記矩形断面形状の内側方向に制御できる。
【0072】
他の発明例態様図4:
図4のエネルギ吸収部材1は、前記図1の態様と同様に、例えばフランジ2に対する負荷荷重Fに応じた各ウエブの屈曲変形を、その中央部(平板部)から、くの字状に屈曲するように、矩形断面内方向への内倒れとすることを意図している。このため、前記図1の態様と同様に、ウエブ4、5、6の各コーナー部11、12、13、14、15、16の各外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oの各コーナーR(Ro)を、内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iの各コーナーR(Ri)よりも各々大きくして、これら各ウエブの前記コーナー部における前記各外側コーナー部の各長さho(単位mm)を、ウエブ4、5、6の各平板部4a、5a、6aの板厚t2(単位mm)と、前記各内側コーナー部の各長さhi (単位mm)よりも大きな値としている。
【0073】
ただ、この図4における本態様では、前記コーナーR(Ro)は前記コーナーR(Ri)の2倍であり、この外側コーナー部のコーナーR(Ro)が図1の態様よりも小さくなっている。また、各中リブであるウエブ6の非対称とする外側コーナー部と内側コーナー部とが、前記図1の態様(外側コーナー部が図の左側)とは、左右反対(外側コーナー部が図の右側)となっており、ウエブ6は図4の右側端部に位置するウエブ5と同じく、図の左方向に内倒れする。
【0074】
比較例(従来例)図5:
比較のために掲載した図5の比較例は、前提となるアルミニウム合金押出中空形材1の矩形断面形状は、図1や図4の場合と全く同じである。ただ、これら各コーナー部11、12、13,14、15、16において、前記ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とが全く対称の形状としている。すなわち、内側コーナー部と外側コーナー部とは互いに同じあるいは互いにほぼ同じコーナーR(単位mm)として、互いに同じ板厚増加量にて設計している。通常では、このような例の方がむしろ普通であり、例えば、矩形断面のアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収材として例示する、前記特許文献3や特許文献4、そして特許文献5などがそうなっている。但し、このような内側コーナー部と外側コーナー部とが対称形状では、前記した自動車補強材などの用途において、フランジ2に負荷される荷重Fに対して、両端部のウエブ4、5は外倒れとなりやすい。したがって、前記特許文献5(自動車サイドドア用ビーム材)は、本発明のような張出フランジをフランジの両端部側に有する口型矩形断面からなるものの、前記特許文献3、4を含めて、ウエブ4、5が内倒れする保障は全く無い。
【0075】
ただ、アルミニウム合金押出中空形材の歴史は古く、特許文献も数多いため、コーナー部のコーナーRが図面上で互いに異なるコーナーRとなっている例があることまでは否定できない。ただ、この場合でも、本発明のように負荷荷重に応じたウエブの屈曲変形を矩形断面内方向への内倒れとする目的があるのかどうか、単に図面の記載の都合上でそうなっているだけのものか、負荷荷重に応じてウエブの屈曲変形を矩形断面内方向へ内倒れとすることができるのかどうかの検証が必要である。
【0076】
ウエブの非対称コーナー部の作用:
図3における平板状ウエブ5のコーナー部13を用いて、これら平板状ウエブ4、5、6の各非対称コーナー部の作用を説明する。これら内外のコーナー部同士で互いに異なるコーナーRとして、互いのウエブ5の平板部5aの板厚t2からの板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とすることによって、ウエブ5のコーナー部13の図の上下方向での各部位における板厚の中心を通る中心線Pは、ウエブ5の本来の軸線Sから外れて、点線で示すように傾く(ずれる)ようになる。
【0077】
平板状ウエブ5の屈曲変形は、特にウエブ中央部(平板部5a)の曲げ変形であって、この中心線Pの傾きの向きによって、平板状フランジ2に対する(図の上方側からの)矢印で示す負荷荷重Fに応じて、ウエブ中央部(平板部5a)の曲げ変形=屈曲変形の方向(内倒れか外倒れか)を制御することができる。例えば、図3のように、この中心線Pが図の右側に傾くようにする(図の左側に張り出すような円弧状に傾かせる)と、前記負荷荷重Fに応じたウエブ5の屈曲変形は、この傾きに応じて、前記図2の点線の仮想線で示し、図の左側へ向かう矢印で示したように矩形断面内方向への内倒れとできる。すなわち、ウエブ5が、図の左側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲する、矩形断面内方向への内倒れとできる。
【0078】
この機構の発現のために、前記した中空形材の形状の規定条件を前提とした上で、前記規定条件を満足した、内外のコーナー部同士の板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とする。
【0079】
ここで、前記中心線Pの傾きの向きを、反対(逆)の方向である図3の左側方向に傾けて、図3の右側に張り出す円弧状に傾かせると、フランジ2に対する(図の上方側からの)矢印で示す負荷荷重Fに応じたウエブ5の屈曲変形は、図3の左側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲するように、矩形断面外方向への外倒れとなる。このためには、反対に、内側コーナー部13iのコーナーR(Ri)や、内側コーナー部14iを、前記ウエブ平板部5aの板厚t2よりも各々大きな値とし、その上で、外側コーナー部13oや14oのコーナーR(Ro)の長さhi (単位mm)よりも各々大きな値として、内外のコーナー部同士の板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とする必要がある。これは他のウエブ4、6でも同様である。
【0080】
以上、図1、2、3で説明した態様は、ウエブの前記各コーナー部における前記外側コーナー部のコーナーR(Ro)と、前記内側コーナー部のコーナーR(Ri)とを互いに異ならせて、これらの内側コーナー部と外側コーナー部のいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくした態様である。ただ、これらの内側コーナー部と外側コーナー部のいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくして、前記内外コーナー部を互いに非対称の形状とする手段は、このようなコーナーRによる制御以外にもある。
【0081】
内外コーナー部を非対称とする他の手段:
図6、7は、平板状ウエブの前記各コーナー部における前記外側コーナー部に段差や傾斜を設けて、前記外側コーナー部の板厚の増加量を内側コーナー部よりも大きくして、前記内外コーナー部を互いに非対称の形状とする態様を各々示している。
【0082】
図6に示す平板状ウエブ5では、外側コーナー部13o側に、平板部5aの板厚tよりも大きな板厚となる段差を、1段あるいは図6では段差17、18の2段と複数段設けて、フランジ2に向かうにしたがって、板厚を増加させている。これによって、この外側コーナー部13oの長さho(単位mm)を、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも各々大きな値とするとともに、内側コーナー部13iの長さhi (単位mm)よりも各々大きな値としている。その一方で、前記図1〜3の態様と同じく、内側コーナー部13iの方は、小さな曲面であるコーナーR(Ri)とし、外側コーナー部13oの長さhoよりも、そして、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、各々小さな長さhiとしている。
【0083】
図7に示す平板状ウエブ5では、外側コーナー部13o側に、フランジ2に向かうにしたがって、平板部5aの板厚tよりも大きな板厚となる傾斜(傾斜面)19を設けて、。これによって、この外側コーナー部13oの長さho(単位mm)を前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも各々大きな値とするとともに、内側コーナー部13iの長さhi (単位mm)よりも各々大きな値としている。その一方で、前記図1〜3の態様と同じく、内側コーナー部13iの方は、小さな曲面であるコーナーR(Ri)とし、外側コーナー部13oの長さhoよりも、そして、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、各々小さな長さhiとしている。
【0084】
このように、これら内側コーナー部の長さhiと外側コーナー部の長さhoとのいずれかを前記ウエブ平板部の板厚t2よりも大きくして、前記内側コーナー部と外側コーナー部のいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくし、前記内外コーナー部を互いに非対称の形状とする手段は、押出が可能であれば、種々のコーナー部の形状手段が採用できる。ただ、前記図6、7のような場合でも、各コーナー部でのウエブ平板部5a側の前記各始端20から、ウエブ5とフランジ2との接合部5bへと向かって、コーナーRの仮想線を仮に引けば、内外コーナー部での互いのコーナーR同士の、前記規定した好ましい関係は、ここでも当てはまる。
【0085】
但し、アルミニウム合金押出中空形材1の各ウエブの全外側コーナー部の形状を共通して同じとする必要はなく、前記規定する関係を満足する範囲で、互いの形状を異ならせても良い。これは前内側コーナー部も同様である。そして、前記したコーナーRを含めて、このような異形断面形状が製造可能である点がアルミニウム合金押出中空形材の大きな利点でもある。
【0086】
以上の通り、本発明は、前記複数のウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能である、荷重後の断面形状の変形を制御できるエネルギ吸収部材であるのみならず、前記フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数のウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御し、荷重変形後の断面形状を制御することを特徴とするエネルギ吸収部材の変形制御方法としてもとらえることができる。
【0087】
潰し加工:
本発明でいう潰し加工(変断面加工)とは、前記図9に示したプレスなどの成形装置や冶具などを用いた、荷重負荷による断面の潰し成形加工であって、例えばバンパービームとして、車体衝突時の荷重負荷に伴う断面形状の潰れ変形ではない。
【0088】
本発明のエネルギ吸収部材は、前記図図12〜14に示したように、バンパビーム110として、その両端部110a、110bのみを、部分的に車体前後方向(フランジ2、3の延在方向とは直角方向に、あるいはウエブ4、5、6の延在方向に)に潰し加工して、車体フロント側の元の形状を点線で示す通り、その断面を潰して縮小した上で、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の裏側に収められる。
【0089】
このような本発明の用途では、エネルギ吸収部材がその軸方向で部分的に潰し加工された上で、前記平板状フランジ2、3の面が荷重方向に対峙する補強材として用いられるものである。そして、この潰し加工において前記フランジ2、3面に負荷される荷重量に応じて、少なくとも前記フランジ2、3の両端部側に位置する2本のウエブ4、5が中央部から屈曲する(折れ曲がる)方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御するものである。
【0090】
この潰し加工(変断面加工)は、基本的には前記図9と同じ方法で行う。すなわち、基台150上に、本発明に係る押出中空形材1を平板状フランジ2、3を上下として載置した上で、剛体からなる垂直負荷用治具140を、押出中空形材1の潰し加工を行う端部側の上方に配置して、下降させて平板状フランジ2から荷重する。前記した通り、垂直負荷用治具140の幅は、平板状フランジ2の幅Wに対応する拡がりを持っている。また、図示はしないが、側面側から見ると、端部などの部分的な潰し加工に必要な、押出中空形材1の軸方向の長さを持ち、潰し加工後の所望形状や曲面、傾斜面に合わせた形状の、水平面や傾斜面あるいは曲面を有している。
【0091】
但し、従来は必要であった、フランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせるための、前記水平の荷重負荷用の治具160は、本発明では全く不要である。すなわち、フランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5に対する横方向(水平方向)からの荷重を負荷することなく、平板状フランジ2、3に対する縦方向(垂直方向)からの荷重負荷のみで、潰し加工(変断面加工)をすることができる。
【0092】
本発明エネルギ吸収部材は、このように、両端部など、部分的に断面形状を潰し加工して、断面積や体積を減少させることができるので、例えば自動車車体などへの収容空間に設計上の制約がなく、収容空間に合わせて潰し加工して収容することが可能である。
また、これら潰し加工する以外の部位は、前記した通り、前記矩形断面形状とその形状の各条件を、その軸方向(長手方向、押出方向)に亘って、均一に有しているアルミニウム合金押出中空形材からなるため、図1などの元の矩形断面形状とその形状の各条件をそのまま保持している。したがって、自動車のバンパービームやドアビームとして、自動車の車体衝突時の荷重負荷時にも、潰し加工時と同様に、各ウエブ4、5を内倒れさせた変形と設計することができる。したがって、この内倒れ変形によって、ウエブ4、5の外倒れ変形の場合に比して、衝突エネルギ吸収効果を高めるあるいは維持でき、エネルギ吸収材としての性能も維持あるいは向上させることができる優れた効果もある。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の実施例を説明する。アルミニウム合金押出中空形材1からなるエネルギ吸収部材として、図1、図4の本発明例と図5の比較例(従来例)との、前記図8の潰し加工時の変形形態を解析して、この潰し加工の可否を予測した。
【0094】
CAE解析条件:
アルミニウム合金押出中空形材1の矩形断面形状は、図1、4、5の通り、共通して、張出(突出)フランジ7、8、9、10付の日型断面とした。その外寸は、共通して、前記バンパビーム110を模擬して、平板状フランジ2、3の前記図の横方向の幅wは130mm、平板状ウエブ4、5、6の前記図の上下方向の長さhは45mmとして、Wをhの1.5倍以上とした。また、張出フランジ7、8、9、10の、平板状フランジ2、3の前記幅方向(図の横方向で前記wと同じ方向)に亘る長さ(幅)は、共通して各々5mmとした。平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2は共通して2.0mmとして、フランジ2、3の平板部2a、3aの板厚t1の4.0mmよりも小さくした。
【0095】
アルミニウム合金は、潰し加工時の全塑性モーメントMp=10.0kN・m(目標値)が得られるように、共通して、7000系のT5調質材で、0.2%耐力が425MPaの高強度の押出形材とした。
【0096】
そして、図1の発明例では、各平板状ウエブの全外側コーナー部のコーナーR(Ro)を共通して3.0mm、図4の発明例では、各平板状ウエブ外側コーナー部のコーナーR(Ro)を2.0mmとし、各平板状ウエブの全内側コーナー部のコーナーR(Ri)を共通して1.0mmとした。この結果、前記各外側コーナー部の長さhoは共通して図1の発明例では7.0mm、図4の発明例では6.0mmとなり、また前記各内側コーナー部の長さhiは、図1の発明例では5.0mm、図4の発明例では5.0mmとなる。
【0097】
したがって、各平板状ウエブの全外側コーナー部の長さhoを、図1、4の発明例ともに、前記ウエブ平板部の板厚t2(2.0mm)よりも大きくし、全外側コーナー部の板厚の増加量を、前記内側コーナー部の板厚の増加量よりも大きくしている。その一方で、前記各内側コーナー部の長さhiの方は、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(2.0mm)よりも小さくしている。
【0098】
一方で、図5の比較例では、各平板状ウエブの全外側コーナー部のコーナーR(Ro)と全内側コーナー部のコーナーR(Ri)を共通して同じ1.0mmとした。この結果、前記各外側コーナー部の長さhoと前記各内側コーナー部の長さhiとは同じ5.0mmとなる。
【0099】
前記解析では、前記各平板状ウエブの前記内外コーナー部における、外側コーナー部のコーナーR(フィレットR)であるRoをパラメータとする成形解析を行い、潰し加工時の変形形態を調査した。 CAE解析には汎用の静的陰解法ソフトABAQUSを用い,2次元平面ひずみ状態を模擬した。
【0100】
CAE解析結果:
図9の工具140のアルミニウム合金押出中空形材1の矩形断面形状への押込み量Sが10mm、20mm、30mmの各タイミングにおける断面変形と最大主ひずみεmajの分布を図8に示す。
【0101】
図8では、図の左から、図5の比較例をCase1(ケース1)として、図4の発明例をCase2(ケース2)として、図1の発明例をCase3(ケース3)として各々示す。同図から分かる通り、図5の比較例では、各平板状ウエブの全外側コーナー部のコーナーR(Ro)と全内側コーナー部のコーナーR(Ri)とが同じ対称形であり、両端側の平板状ウェブ(4、5)がともに、望んでいない矩形断面の外側に曲げ変形(外倒れ)している。これに対し、図4の発明例のCase2、図1の発明例のCase3では、両端側のウェブ(4、5)をともに、所望の矩形断面の内側に曲げ変形(内倒れ)させることができている。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、潰し加工において確実および簡便にフランジ両端部側の二本のウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面形状の変形(荷重後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供できる。また、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材の断面変形制御方法を提供できる。このため、本発明は、軽量化を目指した自動車車体用のアルミニウム合金エネルギ吸収部材に好適であり、アルミニウム合金材の用途も一層拡大することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:アルミニウム合金押出中空形材(エネルギ吸収部材)、2、3:平板状フランジ、4、5、6:平板状ウエブ、7、8、9、10:張出フランジ(=突出フランジ)、11、12、13、14、15、16: 平板状ウエブのコーナー部、17、18:段差、19:傾斜面、20:各コーナー部の板厚が増加し始めるウエブ平板部側の始端部
【技術分野】
【0001】
本発明は荷重後の断面の変形を制御できるエネルギ吸収部材およびエネルギ吸収部材の断面変形制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体の前端部及び後端部には、車幅方向に略平行な状態でバンパが固設されている。このバンパの裏側、即ち車体側には、外部からバンパに障害物が衝突した際に、バンパと車体との間で衝撃を吸収するための補強部材(バンパビーム)として、鋼製の他、アルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材が設けられている。
【0003】
図12、図14に示すように、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の裏側に、前記バンパビーム110が、これらフロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の形状に合わせて、車体の車幅方向(図の左右方向)に、その軸方向あるいは長手方向に亘って湾曲されるか、あるいは両端部が曲げられて設けられている。
【0004】
ただ、図12のように、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120のデザインや設計上、車体の車幅方向(図の左右方向)の幅が狭くなっている場合は、バンパビーム110の軸方向(長さ方向)の両端部110a、110bが、これらフロントバンパあるいはバンパフェイシャ120と、丸印で示す部分で干渉することなる。
【0005】
この場合には、図13に示す通り、バンパビーム110のうちの両端部110a、110bを、部分的に車体前後方向(図の上下方向)に潰し加工して、車体フロント側の元の形状を点線で示す通り、その断面を潰して縮小した上で、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の裏側にバンパビーム110を収めていた。
【0006】
また、図14に示すように、車体側に設けられた、バンパビーム110は、取り付け用部材であるサイドメンバ(あるいはステイ)130に固設されるようになっている。この際、デザインや設計上、フロントバンパ120と、サイドメンバ130との車体前後方向(図の上下方向)の間隔が狭くなっている場合でも、バンパビーム110は、バンパビーム110の軸方向(長さ方向)に折り曲げられた両端部110a、110bが、これらサイドメンバ130と、丸印で示す部分で干渉することなる。
【0007】
したがって、この場合でも、図15に示す通り、バンパビーム110の両端部110a、110bを、部分的に、車体前後方向の潰し加工して、車体リア側の元の形状を点線で示す通り、その断面を潰して縮小し、そのフロントバンパ120とサイドメンバ130間の空間にバンパビーム110を収めていた(特許文献1参照)。
【0008】
ここで、バンパビームがアルミニウム合金押出中空形材からなる場合、その中空断面形状は、図9に例示する通り、相対する二つの平板状フランジ2、3(前面側フランジ2、後面側フランジ3)同士をつなぐ、間隔をあけた複数(図では3本)の平板状ウエブ4、5、6とから構成された、日型、目型などの矩形断面形状(図では日型)となる。ちなみに、中間のウエブ6は補強用のリブであり、中リブとも称される。アルミニウム合金押出中空形材は、その軸方向(長手方向、押出方向)に亘ってこのような同じ断面形状を有していることが特徴である。
【0009】
そして、バンパビーム(エネルギ吸収部材)がアルミニウム合金押出中空形材からなる場合、通常は、前記図12、14に示したように、前記平板状フランジ2、3を衝突荷重に対峙させて配置する。すなわち、形材の向きとして、前面側フランジ2を車体フロント側、後面側フランジ3を車体リア側として垂直方向に延在するように立て、平板状ウエブ4、5は水平方向に延在するように設けられる。
【0010】
ただ、このような矩形断面形状のアルミニウム合金押出中空形材のうちの両端部などを、部分的に潰し加工する場合には、前記複数のウエブのうち、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブ4、5が途中より屈曲する(座屈、折れ曲がり)方向を、図10に示すような、各々前記矩形断面形状の内側方向に制御する必要がある。
【0011】
このように二本のウエブ4、5を各々前記矩形断面形状の内側方向(内方)へ屈曲させる=「内倒れさせる」理由は、二本のウエブ4、5が、図11で示すように、押出形材の前記矩形断面形状の外側方向(外方)へ屈曲させる=「外倒れさせる」と、屈曲して前記矩形断面形状の外側にはみ出したウエブ4、5が却って、前記そのフロントバンパ120とサイドメンバ130間の空間にバンパビーム110を収める際の邪魔になるからである。ちなみに、補強用の中リブである中間のウエブ6も、前記矩形断面形状の内(押出形材内)で屈曲しているが、この屈曲方向自体は影響しない。
【0012】
ただ、このように潰し加工において、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本のウエブ4、5を各々押出中空形材の前記矩形断面形状の内側方向(内方)へ屈曲させる=「内倒れさせる」のは難しい。このため、従来から、二本のウエブ4、5を「内倒れさせる」ための潰し加工が特許文献2のように提案されている。
【0013】
この潰し加工の方法は、図9に示すように、基台150上に押出中空形材1を平板状フランジ2、3を上下として載置した上で、剛体からなる垂直負荷用治具140を、押出中空形材1の潰し加工を行う端部側の上方に配置して、下降させて平板状フランジ2から荷重する。ここで、垂直負荷用治具140の幅は、平板状フランジ2の幅Wに対応する拡がりを持っている。また、図示はしないが、側面側から見ると、端部などの部分的な潰し加工に必要な、押出中空形材1の軸方向の長さを持ち、潰し加工後の所望形状や曲面、傾斜面に合わせた形状の、水平面や傾斜面あるいは曲面を有している。
【0014】
160は、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせるための、水平の過重負荷用の治具である。この冶具160は、押出中空形材1の両側面側で、垂直負荷用治具140の下に配置されており、押出中空形材1の側面から平板状ウエブ4、5に対して内方への水平負荷を加えて、平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003-146156号公報
【特許文献2】特開平7ー25296号公報
【特許文献3】特開2001-132788号公報
【特許文献4】特許第3520959号公報
【特許文献5】特開2003-320847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ただ、このような特許文献2の潰し加工装置によっても、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本のウエブ4、5を各々内倒れさせつつ、潰し加工することが非常に難しい。この特許文献2でも、最初の暫くの時間は前記水平負荷用治具160によって、二本の平板状ウエブ4、5へ水平負荷のみを加え、その後の時間で、この水平負荷を加える続けると共に、前記垂直負荷用治具140によって、平板状フランジ2に垂直負荷を加え、二本の平板状ウエブ4、5が各々内倒れし始める時点以降は、平板状フランジ2への垂直負荷だけにするとしている。
【0017】
特許文献2が、これだけ平板状ウエブ4、5への水平負荷と、平板状フランジ2への垂直負荷とのタイミングを重視しているのは、平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブ4、5は、前記した図9などの通常の押出中空形材1の断面形状では、前記矩形断面形状の外側方向へ外倒れしやすいからである。事実、特許文献2では、前記タイミングとすれば、一旦、内倒れし始めた平板状ウエブ4、5が、前記時点C以降の垂直負荷によって押出中空形材の外方に屈曲(座屈)することがないからであるとしている。言い換えると、特許文献2は、通常の押出中空形材1の断面形状では、前記潰し加工においては、前記矩形断面形状の外側方向へ外倒れしやすく、フランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせることの難しさを裏付けている。
【0018】
周知の通り、押出中空形材の断面形状は、バンパビームなどの使用されるエネルギ吸収部材用途や自動車車体条件などに応じて、その日型、目型などの断面形状や、フランジ、ウエブの長さや高さ、板厚などが大きく異なる。したがって、通常は、潰し加工する押出中空形材の断面形状が種々異なるので、前記特許文献2の装置を用いても、前記タイミングを適切に選択することが非常に困難である。このため、押出中空形材の断面形状によって、あるいは断面形状条件の違いによって、潰し加工で平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせることができず、押出中空形材の断面形状の変形をうまく制御できない場合も多々生じる。
【0019】
また、このような潰し加工時の課題だけではなく、エネルギ吸収部材としても、種々の衝突荷重に対する荷重変位の制御や、エネルギ吸収性能の向上の観点から、前記フランジ面に負荷される荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、少なくともフランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせることを可能とする必要性は高い。更に、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を、前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能である必要性も高い。
【0020】
したがって、本発明の目的は、潰し加工において確実および簡便に平板状フランジの幅方向両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供しようとするものである。また、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材の断面変形制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために、本発明の荷重変形後の断面形状を制御できるエネルギ吸収部材の要旨は、相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材であって、前記平板状ウエブはその平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有しており、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境として平板状ウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状として、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能であることとする。
【0022】
また、前記目的を達成するために、本発明の荷重変形後の断面形状を制御できるエネルギ吸収部材の断面変形制御方法の要旨は、エネルギ吸収部材をアルミニウム合金押出中空形材から構成し、このアルミニウム合金押出中空形材を、相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するものとし、更に、前記平板状ウエブが、その平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有し、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを、互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状となして、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することである。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、潰し加工される素材側で、潰し加工において確実および簡便に平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供することができる。また、その断面変形制御方法も提供できる。
【0024】
本発明では、また、前記潰し加工がされない部位などに、衝突荷重が負荷されるエネルギ吸収部材側で、確実に平板状フランジの幅方向の両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御でき、対物や対人などの種々の衝突荷重に対する荷重変位の制御や、エネルギ吸収性能向上ができるエネルギ吸収部材を提供できる。また、その断面変形制御方法も提供できる。
【0025】
本発明では、上記断面変形制御効果発揮の前提となるアルミニウム合金押出中空形材の前記規定の形状条件の範囲内で、熱間押出による中空形材であれば簡便に作れる前記平板状ウエブのコーナー部の形状条件とすることで、上記断面変形制御効果を得ることができる。言い換えると、エネルギ吸収部材本来の性能を低下させずに、上記断面変形制御効果を得ることができる。また、本発明では、素材側の簡便な改良で済み、潰し加工などにおいても、また、エネルギ吸収部材の取り付けや使用側においても、余分なコストや工程は一切不要であり、著しく実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明エネルギ吸収部材の一態様を示す斜視図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明エネルギ吸収部材の他の態様を示す断面図である。
【図5】比較例のエネルギ吸収部材を示す断面図である。
【図6】本発明エネルギ吸収部材の他の態様を示す断面図である。
【図7】本発明エネルギ吸収部材の他の態様を示す断面図である。
【図8】実施例における各エネルギ吸収部材の断面変形の解析結果を示す説明図である。
【図9】エネルギ吸収部材の潰し加工の一例を示す断面図である。
【図10】潰し加工による「内倒れ」の断面変形例を示す断面図である。
【図11】潰し加工による「外倒れ」の断面変形例を示す断面図である。
【図12】バンパービームの取り付け構造例を示す自動車の平面図である。
【図13】図12の取り付け用に両端部が潰し加工されたバンパービームを示す平面図である。
【図14】バンパビームの取り付け構造の他の例を示す自動車の平面図である。
【図15】図14の取り付け用に両端部が潰し加工されたバンパービームを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。
【0028】
アルミニウム合金押出中空形材:
図1において、1は本発明の前記断面変形制御効果を発揮するためのアルミニウム合金押出中空形材である。このアルミニウム合金押出中空形材1は、相対する二つの平板状フランジ2、3同士をつなぐ間隔をあけた3本(複数)の平板状ウエブ4、5、6から構成され、前記平板状フランジ2、3は各々その幅方向の両端部側に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジ7、8、9、10を各々有した、日型の矩形断面形状を有している。以下、平板状フランジを単にフランジ、平板状ウエブを単にウエブ、平板状フランジの幅方向の両端部側を平板状フランジの単に両端部側とも言う。
【0029】
前記平板状フランジの平板部2a、3aの板厚t1は1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部4a、5a、6aの板厚t2は1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部4a、5a、6aの板厚t2は、前記平板状フランジの平板部2a、3aの板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジ2、3の幅wが前記平板状ウエブ4、5、6の長さhの1.5倍以上とする。本発明エネルギ吸収部材は、図1に示す通り、このような矩形断面形状とその形状の各条件を、その軸方向(長手方向、押出方向)に亘って、均一に有しているアルミニウム合金押出中空形材からなる。
【0030】
ここで、前記板厚t1、板厚t2とは、図1の矩形断面における、均一な厚みを、そのフランジの幅方向(図の横方向)やウエブの長さ(図の縦方向)に亘って有する、前記フランジや前記ウエブの各平板部の厚み(板厚)である。仮に、フランジやウエブの平板部の厚みを、均一ではなく、そのフランジの幅方向(図の横方向)やウエブの長さ(図の縦方向)に亘って変化させる(厚い部分と薄い部分とを有する)場合には、これらのそのフランジの幅方向(図の横方向)やウエブの長さ(図の縦方向)に亘って平均化した厚み(板厚)とする。また、前記平板状フランジ2、3の幅wとは、その延在方向が、図1の矩形断面における、前記矩形中空形材1の押出方向(図1の手前側から奥の側に至る軸方向)に対して直角方向(図1の横方向)に亘る、平板状フランジ2、3の幅(長さ)であり、矩形中空形材1の幅でもある。更に、前記平板状ウエブ4、5、6の長さhとは、その延在方向が、図1の矩形断面における、前記中空形材1の押出方向(軸方向)や前記平板状フランジ2、3の前記幅方向に対する直角方向(図1の縦方向)に亘る、平板状フランジ2、3の長さである。
【0031】
更に、図1に示すように、アルミニウム合金押出中空形材1の平板状ウエブ4、5、6はその平板部4a、5a、6aから前記平板状フランジとの接合部4b、4c、5b、5c 、6b、6cへと向かって板厚が順次増加していくコーナー部11、12、13、14、15、16を有している。これらのコーナー部において、前記平板状ウエブ平板部5aの軸線Sを境として、これらの平板状ウエブの板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iと外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oとを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状としている。
【0032】
そして、図1に示すように、前記内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iと外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oのいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくしている。これによって、潰し加工など、前記平板状フランジ2、3面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブ4、5、6が屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することを可能としている。また、これによって、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できるエネルギ吸収部材としている。
【0033】
使用アルミニウム合金:
本発明で用いる押出中空形材用のアルミニウム合金は、通常、製造がしやすく、加工や成形が容易で、強度も高い、AA乃至JIS の6000系、7000系等のアルミニウム合金が適宜選択して用いられる。これらのアルミニウム合金押出材は、周知の通り、規格組成に鋳造されたビレットを均質化熱処理、熱間押出からなる工程によって、均一な矩形断面形状をその軸方向(長手方向)に亘って有するように製造される。そして、押出工程後の時効処理(質別記号T5)や、焼鈍処理(質別記号O)、溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後に時効処理(質別記号T6) などの調質処理(熱処理)されて用いられる。
【0034】
但し、本発明で、潰し加工時や衝突荷重の負荷時に、確実にフランジ両端部側の二本のウエブを各々内倒れさせるには、機構を後述する通り、アルミニウム合金の強度(=耐力)は、前記例示合金の高強度レベルであれば、その範囲での強度差(耐力差)には殆ど影響されない。したがって、エネルギ吸収部材の本来のエネルギ吸収性能や、要求される補強効果などの、用途からくる要求特性に応じて、前記例示合金の中から選択される。
【0035】
前提となる断面形状条件:
次に、本発明の前記断面変形制御効果発揮の前提となるアルミニウム合金押出中空形材の断面形状の各条件につき説明する。
【0036】
断面の形状:
本発明での前記断面変形制御効果発揮の前提となるアルミニウム合金押出中空形材の断面の形状は、口型、日型、あるいは目型などの矩形断面形状からなる。このうち、一例として、バンパービーム(バンパー補強材)に適した日型の矩形断面形状につき、図1を用いて説明する。なお、本発明のエネルギ吸収部材はアルミニウム合金押出中空形材からなるので、以下の記載では、エネルギ吸収部材とアルミニウム合金押出中空形材とを共通して番号1と称する。
【0037】
図1において、アルミニウム合金押出中空形材1の日型の矩形断面形状では、平板状ウエブの断面方向の長さ分だけ互いに図の縦方向に間隔をあけて、互いに平行に相対する二つの平板状フランジ2、3を有する。この平板状フランジ2、3は、前記した通り、衝突荷重に対峙させて配置される。そして、これら平板状フランジ2、3同士には、図の横方向に間隔をあけた3本(3枚)の平板状ウエブ4、5、6が、その裏面に接合し、互いにつながれた一体構造となっている。
【0038】
ちなみに、口型の矩形断面形状では、平板状フランジ2、3の幅方向の両端部側の2本の平板状ウエブ4、5のみであって、補強用の中リブである平板状ウエブ6が存在しない。また、目型の矩形断面形状では、図1の平板状ウエブ6に、もう1本の補強用の中リブである平板状ウエブが更に間隔を置いて加わり、平板状フランジ2、3の幅方向の両端部側の2本の平板状ウエブ4、5と合わせて、平板状ウエブが合計で4本となる。
【0039】
張出フランジ:
前記平板状フランジ2、3は各々その両端部に前記ウエブのうち、平板状フランジの幅方向の両端部側の平板状ウエブ4、5の接合位置よりも、更に外側方(図の左右方向)に張出した、張出フランジ7、8(平板状フランジ2の左右に各々張り出す)、9、10(平板状フランジ3の左右に各々張り出す)を各々有している。ここで、これらの張出フランジ(=突出フランジ)7、8、9、10は、平板状ウエブ4、5、6にフランジ2、3との接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を形成するために必須であり、これによって、潰し加工時や衝突荷重の負荷時に、確実フランジ両端部側の二本の平板状ウエブを各々内倒れさせるために必須である。
【0040】
これらの張出フランジが無く、平板状ウエブが平板状フランジ2、3の両端部とでコーナー部を形成しているような完全な矩形断面では、中リブである平板状ウエブ6を除き、平板状フランジの幅方向の両端部側の平板状ウエブ4、5には、本発明で規定するコーナー部を形成できない。すなわち、平板状ウエブ4、5の平板部の軸線を境として互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状とし、平板状フランジ2、3との接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を、平板状ウエブ4、5に形成できない。このための、これら張出フランジ7、8、9、10の平板状フランジ2、3の幅方向(図の横方向)の長さは、全て同じとしても、左右、上下の張出フランジ同士で変えても良いが、後述する板状フランジ2、3の幅Wの1/30〜1/5とすることが好ましい。
【0041】
前記平板状フランジ2、3の平板部2a、3aの板厚t1は1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2は1〜4mmの範囲と各々する。板厚t1、板厚t2がこれらの下限値よりも小さければ(薄ければ)、エネルギ吸収部材の本来のエネルギ吸収性能や、要求される補強効果などの、用途からくる要求特性に応じることができない。一方、板厚t1、t2がこれらの上限値よりも大きければ(厚ければ)、重量が重くなり、アルミニウム合金を用いて軽量化する意味が失われる。また、強度が高すぎて、負荷荷重による変形がしにくくなり、衝突エネルギの吸収や潰し加工が困難となる。
【0042】
そして、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2は、前記平板状フランジの平板部2a、3aの板厚t1よりも小さくする。前記した板厚t1、t2の範囲で、平板状ウエブの板厚が平板状フランジの板厚よりも大きいと、エネルギ吸収部材として要求される曲げ強度や剛性に対して効率の悪い断面形状となり、重量増となってしまう。
【0043】
更に、前記平板状フランジ2、3の幅wは、前記平板状ウエブ4、5、6の長さhの1.5倍以上とする。前記平板状フランジ2、3の幅wが、前記平板状ウエブ4、5、6の長さhの1.5倍未満では、エネルギ吸収に必要な平板状ウエブ4、5、6の長さhに対して、前記平板状フランジ2、3の幅wが小さくなって、矩形断面形状や平板状フランジ2、3の面積が小さくなり、衝突荷重を受けにくくなり、エネルギ吸収部材として不適である。あるいは、矩形断面形状が縦長となって、嵩張る割には負荷荷重による断面の変形がしにくくなり、やはり、エネルギ吸収部材として不適である。この前記平板状フランジ2、3の前記幅wの、前記平板状ウエブ4、5、6の前記長さhに対する上限は特に定めないが、エネルギ吸収部材としての実用的な範囲からすると10倍以下程度である。
【0044】
このように、本発明では矩形断面形状の基本的な形状や構造は、従来のアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材と同じである。すなわち、これらアルミニウム合金押出中空形材の矩形断面形状自体を大きく変えることなく、以下の平板状ウエブのコーナー部の工夫で効果を発揮できる点が本発明の利点でもある。
【0045】
平板状ウエブのコーナー部:
以下に、本発明で特徴的な平板状ウエブのコーナー部につき、図1〜図5を用いて説明する。先ず、図1〜図5において、平板状ウエブのコーナー部はフィレットあるいは隅角部ともいい、平板状ウエブ4、5、6と平板状フランジ2、3との各々の接合部4b、4c、5b、5c 、6b、6cを含む「ウエブとフランジとの交差部」である。
【0046】
図1において、これら平板状ウエブの前記各コーナー部を各々丸印で囲んで示している。各平板状ウエブは上下の両端部に各々コーナー部を有している。平板状ウエブ4のコーナー部は11(図の上側の平板状フランジ2側)、12(図の下側の平板状フランジ3側)、平板状ウエブ5のコーナー部は13(図の上側の平板状フランジ2側)、14(図の下側の平板状フランジ3側)、中リブである平板状ウエブ6のコーナー部は15(図の上側の平板状フランジ2側)、16(図の下側の平板状フランジ3側)である。
【0047】
図2:
そして、図2に、図1の要部である矩形断面右側端部の平板状ウエブ5のみを拡大して示し、この図2の矩形断面の右上のコーナー部13のみを図3に拡大して示す。これら図2、3の通り、コーナー部13、14は、ウエブ5の各ウエブ平板部5aの軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれ、内側コーナー部13i(図の上側のフランジ2側で、図の左側の左下がりの斜線部領域)と14i(図の下側のフランジ3側で、図の左側の左下がりの斜線部領域)、外側コーナー部13o(図の上側のフランジ2側で、図の右側の右下がりの斜線部領域)と14o(図の下側のフランジ3側で、図の右側の右下がりの斜線部領域)とを有する。
【0048】
なお、以下の説明はこのウエブ5のみについて行うが、コーナー部の構成やウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御するために必要な条件は、他のウエブの各コーナー部でも同様である。
【0049】
すなわち、図1のように、平板状ウエブ4のコーナー部11、12は、ウエブの各ウエブ平板部4aの軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれ、内側コーナー部11i(図の上側のフランジ2側)と12i(図の下側のフランジ3側)、外側コーナー部11o(図の上側のフランジ2側)と12o(図の下側のフランジ3側)とを有する。また、中リブであるウエブ6のコーナー部15、16は、ウエブの各ウエブ平板部6aの軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれ、内側コーナー部15i(図の上側のフランジ2側)と16i(図の下側のフランジ3側)、外側コーナー部15o(図の上側のフランジ2側)と16o(図の下側のフランジ3側)とを有する。
【0050】
図2において、平板状ウエブ5の各コーナー部13、14では、前記ウエブ5の平板部5aから前記フランジ2、3との接合部5b、5cへと向かって板厚が順次増加していく。これは、他のウエブ4、6の各コーナー部11、12、15、16でも同様で、前記ウエブ4、6の各平板部4a、6aから、前記フランジ2、3との各接合部4b、4c、6b、6cへと向かって板厚が順次増加していく。
【0051】
本発明では、これら各平板状ウエブの各コーナー部において、前記ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iと外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oとを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状としている。そして、平板状ウエブ5の屈曲変形を矩形断面内方向への前記内倒れか、矩形断面外方向への前記外倒れとするためには、外側コーナー部(13o、14o)の板厚増加量か、内側コーナー部(13i、14i)の板厚増加量かのいずれかを、他方のコーナー部よりも大きくする。
【0052】
平板状ウエブ5の屈曲変形を内倒れとする条件:
図2に示す平板状ウエブ5では、例えば平板状フランジ2に対する(図の上方側からの)矢印で示す負荷荷重Fに応じたウエブ5の屈曲変形を、点線の仮想線で示すように、図の左側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲するように、矩形断面内方向への内倒れとすることを意図している。
【0053】
このため、図2に示す平板状ウエブ5では、外側コーナー部13oと14oの板厚増加量を、内側コーナー部13iと14iの板厚増加量よりも一定以上に大きくしている。この大きくするための基準として、図2に示したコーナー部13、14における、外側コーナー部13oと14oの各長さho(単位mm)を、前記ウエブ5の平板部5aの板厚t2(単位mm)と、内側コーナー部13iと14iの各長さhi (単位mm)よりも大きな値とする。
【0054】
ここで、前記内側コーナー部13iと14iの長さhiと、外側コーナー部13o、14oの長さhoとの定義につき説明する。前記内側コーナー部13iと14iの長さhiと、外側コーナー部13o、14oの長さhoは、前記ウエブ5が接合する側のフランジ2、3の外表面2b、3bから、これら各コーナー部での板厚が増加し始める、前記ウエブ5の平板部側の各始端20までの長さとする。これら各始端20は、各外側コーナー部13oや14oあるいは各内側コーナー部13iや14iにおいて、それぞれの板厚が変化し始める、あるいは増加し始める点(部位)として、これら各外側コーナー部領域や内側コーナー部領域でのコーナー表面の板厚変化から測定でき、明確に特定される。ちなみに、これらの長さhoやhiは、勿論、前記した平板状ウエブ5の長さhと同じ方向の長さである。
【0055】
但し、図2に示す通り、長さhoが長い外側コーナー部13o、14oでの前記始端20は、板厚がt2と等しくなるウエブ5の平板部5a側の部位となる。また、長さhiが短い内側コーナー部13i、14iでの前記始端20は、必然的に、板厚が増加している内側コーナー部13i、14i側の部位となる。これらの定義や規定は、他のウエブ4、6のコーナー部でも同様である。
【0056】
これらコーナー部13、14における、前記外側コーナー部13oと14oの各長さhoを、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも各々一定以上に大きな値とする基準が、これら外側コーナー部13oと14oなどの長さhoを、前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2以上の大きさとなるようにすることである。
【0057】
これら外側コーナー部13oと14oの各長さhoの値自体は、勿論、潰し加工時や車体衝突時などに負荷される荷重に応じて設計される。また、この長さhoの条件自体は、前記平板状フランジ2、3の平板部2a、3aの板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2が1〜4mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記ウエブの長さhの1.5倍以上である矩形断面形状条件などを各々前提とした場合に有効である。しかし、この条件を満たすことによって、これらの前提条件下で平板状ウエブ5の屈曲変形を確実に矩形断面内方向への前記内倒れとすることができる。
【0058】
例え、これら外側コーナー部13oと14oなどの長さhoを、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも大きくしても、これら外側コーナー部13oと14oなどの長さhoが、前記平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2未満では、確実に平板状ウエブ5の屈曲変形を矩形断面内方向への前記内倒れとすることができない。
【0059】
また、大きくする側のこれら外側コーナー部13oと14oの長さhoに特に上限は定めないが、この値が大きすぎると、板厚増加量が大きくなりすぎ、エネルギ吸収部材の重量自体が大きくなりすぎる。また、ウェブの変形範囲が狭くなり、潰し加工中やエネルギー吸収の際の変形時に破断しやすくなり、潰し加工ができなくなったり、エネルギ吸収部材としての機能が低下する可能性が高くなる。したがって、これらの点からすると、外側コーナー部13oと14oなどの長さhoの大きさの上限は、前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2の5倍以下程度とすることが好ましい。
【0060】
一方、小さくする側の前記内側コーナー部13iと14iの各長さhiの下限は特に定めないが、外側コーナー部13oと14oの長さhoとの関係や、前記内側コーナー部13iと14iが有するコーナーR(Ri)の中空押出形材製造(押出)が可能な大きさ限界などから選択される。したがって、これらの点からすると、内側コーナー部13iと14iの各長さhiの大きさの下限は、フランジの板厚t1に、前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2の1/10(0.1倍)を加えた程度である。
【0061】
コーナーR:
図1〜3における本態様では、これらコーナー部13、14における、前記外側コーナー部13oと14oの各長さhoを、各々前記平板状ウエブ5の平板部5aの板厚t2以上の大きさとして、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも大きくな値とするために、外側コーナー部13oと14oとのコーナーR(Ro)を、内側コーナー部13iと14iとのコーナーR(Ri)よりも各々大きくしている。
【0062】
すなわち、図2に示す、矩形断面形状の右側端部の平板状ウエブ5のコーナー部13、14において、前記ウエブ平板部の軸線Sを境として、ウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部13iのコーナーR(Ri)と外側コーナー部13oのコーナーR(Ro) とを、また、内側コーナー部14iのコーナーR(Ri)と外側コーナー部14oのコーナーR(Ro) とを、各々互いに異ならせるように制御して、互いの板厚の増加量が異なる非対称の形状としている。ここで、コーナーRとは、各コーナー部でのウエブ平板部5a側の前記各始端20から、平板状ウエブ5と平板状フランジ2との接合部5bへと向かって板厚が順次増加していく、各内側コーナー部13iと外側コーナー部13oにおける曲率半径(単位mm)である。
【0063】
前記した、外側コーナー部13oと14oの各長さhoを、前記ウエブ5の平板部5aの板厚t2と、内側コーナー部13iと14iの各長さhiよりも大きな値とするための目安は、大きくする側の前記外側コーナー部13oと14oとのコーナーR(Ro、単位mm)を、内側コーナー部13iと14iとのコーナーR(Ri、単位mm)の2倍以上、5倍以下の範囲となるように選択することである。図1〜3における本態様では、前記コーナーR(Ro)は前記コーナーR(Ri)の3倍であり、この条件を満足している。
【0064】
このコーナーR(Ro)の値が小さすぎると、ウエブ5の屈曲変形を確実に矩形断面内方向への前記内倒れとすることができない。また、コーナーR(Ro)の値が大きすぎると、エネルギ吸収部材の重量自体が大きくなりすぎる。また、ウェブの変形範囲が狭くなり、潰し加工中やエネルギー吸収の際の変形時に破断しやすくなり、潰し加工ができなくなったり、エネルギ吸収部材としての機能が低下する可能性が高くなる。したがって、コーナーR(Ro)の大きさは前記した範囲とすることが好ましい。
【0065】
一方、内側コーナー部13iと14iの方は、小さな曲面であるコーナーR(Ri)とし、前記外側コーナー部13oと14oの長さhoよりも、そして、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、各々小さな長さhiとしている。但し、外側コーナー部13oと14oの板厚増加量を、内側コーナー部13iと14iの板厚増加量よりも大きくできるのであれば、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、大きな値としても良い。
【0066】
これら同じ外側コーナー部である13oと14oとの互いのコーナーR(Ro)や長さho同士は同じ値として良い。ただ、設計条件や荷重条件によっては、必ずしも同じ値とせずとも良く、前記関係や範囲を満足した上で、互いに異ならせた値と各々しても良い。これは、同じ内側コーナー部である13iと14iとのコーナーR(Ri)同士の関係や、互いの長さhi同士の関係でも同様である。また、他のウエブ4、6の外側コーナー部同士や内側コーナー部同士のコーナーRや長さとの関係でも同じである。すなわち、これらをウエブ5の外側コーナー部や内側コーナー部のコーナーRや長さと同じ値として良く、設計条件や荷重条件によっては、同じ値とせずに互いに異ならせても良い。
【0067】
平板状ウエブ4:
ウエブ5で例示した、フランジ面に負荷される荷重量に応じて、複数のウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御するための必要事項や条件は、前記図1における他の平板状ウエブ4、6でも同様に言える。図1における図の左側端部に位置する平板状ウエブ4を、矩形断面内方向への内倒れとするためには、平板状フランジ2に対する(図の上方側からの)負荷荷重Fに応じたウエブ4の屈曲変形を、前記ウエブ5とは反対方向である図1の右側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲するようにする。
【0068】
このため、平板状ウエブ4の外側コーナー部11oと12oとのコーナーR(Ro)を、内側コーナー部11iと12iとのコーナーR(Ri)よりも各々大きくして、互いのウエブ4の平板部4aの板厚t2からの板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とする。そして、平板状ウエブ4の屈曲変形を確実に矩形断面内方向への前記内倒れとするために、ウエブ4のコーナー部11、12における、外側コーナー部11oと12oの各長さho(単位mm)を、ウエブ4の平板部4aの板厚t2(単位mm)と、内側コーナー部11iと12iの各長さhi (単位mm)よりも大きな値とし、前記ウエブ5で説明した条件や関係を満足させる。
【0069】
平板状ウエブ6:
また、中間に位置する中リブでもある平板状ウエブ6は、前記平板状ウエブ4、5でのコーナー部の必要事項や関係自体同様であるが、その内倒れさせる方向は、平板状ウエブ6自体が外側にはみ出すことはないので、図1における左右方向のどちらでも良い。図1におけるウエブ6は、前記図の左側端部に位置するウエブ4と同じく図の右方向に内倒れさせようとしているので、その前記ウエブ6のコーナー部15、16では、必要事項や関係自体は、ウエブ4と同じとしている。すなわち、図1の通り、便宜的に図の左側とした外側コーナー部15oと16oとのコーナーR(Ro)を、便宜的に図の右側とした内側コーナー部15iと16iとのコーナーR(Ri)よりも各々大きくして、これら内外のコーナー部同士で互いに異なるコーナーRとして、互いのウエブ6の平板部6aの板厚t2からの板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状としている。
【0070】
そして、平板状ウエブ6の屈曲変形を確実に制御するために、平板状ウエブ6のコーナー部15、16における、コーナー部15oと16oの各長さho(単位mm)を、平板状ウエブ6の平板部6aの板厚t2(単位mm)と、コーナー部15iと16iの各長さhi (単位mm)よりも大きな値とし、前記平板状ウエブ5で説明した条件や関係を満足させる。
【0071】
以上説明した態様は、図1の複数(3本)の平板状ウエブ4、5、6のうち、平板状フランジ2、3の幅方向の両端部側に位置する2本のウエブ4、5の各々の前記コーナー部における外側コーナー部の長さhoを、前記ウエブ平板部の板厚t2と内側コーナー部の長さhiよりも大きくし、板厚増加量が異なる非対称形状とした態様である。これによって、潰し加工や自動車の衝突荷重など、前記フランジ2あるいは3の面に負荷される荷重量に応じて、少なくとも前記フランジ2、3の両端部側に位置する2本のウエブ4、5が屈曲する方向を、各々前記矩形断面形状の内側方向に制御できる。
【0072】
他の発明例態様図4:
図4のエネルギ吸収部材1は、前記図1の態様と同様に、例えばフランジ2に対する負荷荷重Fに応じた各ウエブの屈曲変形を、その中央部(平板部)から、くの字状に屈曲するように、矩形断面内方向への内倒れとすることを意図している。このため、前記図1の態様と同様に、ウエブ4、5、6の各コーナー部11、12、13、14、15、16の各外側コーナー部11o、12o、13o、14o、15o、16oの各コーナーR(Ro)を、内側コーナー部11i、12i、13i、14i、15i、16iの各コーナーR(Ri)よりも各々大きくして、これら各ウエブの前記コーナー部における前記各外側コーナー部の各長さho(単位mm)を、ウエブ4、5、6の各平板部4a、5a、6aの板厚t2(単位mm)と、前記各内側コーナー部の各長さhi (単位mm)よりも大きな値としている。
【0073】
ただ、この図4における本態様では、前記コーナーR(Ro)は前記コーナーR(Ri)の2倍であり、この外側コーナー部のコーナーR(Ro)が図1の態様よりも小さくなっている。また、各中リブであるウエブ6の非対称とする外側コーナー部と内側コーナー部とが、前記図1の態様(外側コーナー部が図の左側)とは、左右反対(外側コーナー部が図の右側)となっており、ウエブ6は図4の右側端部に位置するウエブ5と同じく、図の左方向に内倒れする。
【0074】
比較例(従来例)図5:
比較のために掲載した図5の比較例は、前提となるアルミニウム合金押出中空形材1の矩形断面形状は、図1や図4の場合と全く同じである。ただ、これら各コーナー部11、12、13,14、15、16において、前記ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とが全く対称の形状としている。すなわち、内側コーナー部と外側コーナー部とは互いに同じあるいは互いにほぼ同じコーナーR(単位mm)として、互いに同じ板厚増加量にて設計している。通常では、このような例の方がむしろ普通であり、例えば、矩形断面のアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収材として例示する、前記特許文献3や特許文献4、そして特許文献5などがそうなっている。但し、このような内側コーナー部と外側コーナー部とが対称形状では、前記した自動車補強材などの用途において、フランジ2に負荷される荷重Fに対して、両端部のウエブ4、5は外倒れとなりやすい。したがって、前記特許文献5(自動車サイドドア用ビーム材)は、本発明のような張出フランジをフランジの両端部側に有する口型矩形断面からなるものの、前記特許文献3、4を含めて、ウエブ4、5が内倒れする保障は全く無い。
【0075】
ただ、アルミニウム合金押出中空形材の歴史は古く、特許文献も数多いため、コーナー部のコーナーRが図面上で互いに異なるコーナーRとなっている例があることまでは否定できない。ただ、この場合でも、本発明のように負荷荷重に応じたウエブの屈曲変形を矩形断面内方向への内倒れとする目的があるのかどうか、単に図面の記載の都合上でそうなっているだけのものか、負荷荷重に応じてウエブの屈曲変形を矩形断面内方向へ内倒れとすることができるのかどうかの検証が必要である。
【0076】
ウエブの非対称コーナー部の作用:
図3における平板状ウエブ5のコーナー部13を用いて、これら平板状ウエブ4、5、6の各非対称コーナー部の作用を説明する。これら内外のコーナー部同士で互いに異なるコーナーRとして、互いのウエブ5の平板部5aの板厚t2からの板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とすることによって、ウエブ5のコーナー部13の図の上下方向での各部位における板厚の中心を通る中心線Pは、ウエブ5の本来の軸線Sから外れて、点線で示すように傾く(ずれる)ようになる。
【0077】
平板状ウエブ5の屈曲変形は、特にウエブ中央部(平板部5a)の曲げ変形であって、この中心線Pの傾きの向きによって、平板状フランジ2に対する(図の上方側からの)矢印で示す負荷荷重Fに応じて、ウエブ中央部(平板部5a)の曲げ変形=屈曲変形の方向(内倒れか外倒れか)を制御することができる。例えば、図3のように、この中心線Pが図の右側に傾くようにする(図の左側に張り出すような円弧状に傾かせる)と、前記負荷荷重Fに応じたウエブ5の屈曲変形は、この傾きに応じて、前記図2の点線の仮想線で示し、図の左側へ向かう矢印で示したように矩形断面内方向への内倒れとできる。すなわち、ウエブ5が、図の左側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲する、矩形断面内方向への内倒れとできる。
【0078】
この機構の発現のために、前記した中空形材の形状の規定条件を前提とした上で、前記規定条件を満足した、内外のコーナー部同士の板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とする。
【0079】
ここで、前記中心線Pの傾きの向きを、反対(逆)の方向である図3の左側方向に傾けて、図3の右側に張り出す円弧状に傾かせると、フランジ2に対する(図の上方側からの)矢印で示す負荷荷重Fに応じたウエブ5の屈曲変形は、図3の左側に向かって、その中央部(平板部)からくの字状に屈曲するように、矩形断面外方向への外倒れとなる。このためには、反対に、内側コーナー部13iのコーナーR(Ri)や、内側コーナー部14iを、前記ウエブ平板部5aの板厚t2よりも各々大きな値とし、その上で、外側コーナー部13oや14oのコーナーR(Ro)の長さhi (単位mm)よりも各々大きな値として、内外のコーナー部同士の板厚の増加量が互いに異なる非対称の形状とする必要がある。これは他のウエブ4、6でも同様である。
【0080】
以上、図1、2、3で説明した態様は、ウエブの前記各コーナー部における前記外側コーナー部のコーナーR(Ro)と、前記内側コーナー部のコーナーR(Ri)とを互いに異ならせて、これらの内側コーナー部と外側コーナー部のいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくした態様である。ただ、これらの内側コーナー部と外側コーナー部のいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくして、前記内外コーナー部を互いに非対称の形状とする手段は、このようなコーナーRによる制御以外にもある。
【0081】
内外コーナー部を非対称とする他の手段:
図6、7は、平板状ウエブの前記各コーナー部における前記外側コーナー部に段差や傾斜を設けて、前記外側コーナー部の板厚の増加量を内側コーナー部よりも大きくして、前記内外コーナー部を互いに非対称の形状とする態様を各々示している。
【0082】
図6に示す平板状ウエブ5では、外側コーナー部13o側に、平板部5aの板厚tよりも大きな板厚となる段差を、1段あるいは図6では段差17、18の2段と複数段設けて、フランジ2に向かうにしたがって、板厚を増加させている。これによって、この外側コーナー部13oの長さho(単位mm)を、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも各々大きな値とするとともに、内側コーナー部13iの長さhi (単位mm)よりも各々大きな値としている。その一方で、前記図1〜3の態様と同じく、内側コーナー部13iの方は、小さな曲面であるコーナーR(Ri)とし、外側コーナー部13oの長さhoよりも、そして、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、各々小さな長さhiとしている。
【0083】
図7に示す平板状ウエブ5では、外側コーナー部13o側に、フランジ2に向かうにしたがって、平板部5aの板厚tよりも大きな板厚となる傾斜(傾斜面)19を設けて、。これによって、この外側コーナー部13oの長さho(単位mm)を前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも各々大きな値とするとともに、内側コーナー部13iの長さhi (単位mm)よりも各々大きな値としている。その一方で、前記図1〜3の態様と同じく、内側コーナー部13iの方は、小さな曲面であるコーナーR(Ri)とし、外側コーナー部13oの長さhoよりも、そして、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(単位mm)よりも、各々小さな長さhiとしている。
【0084】
このように、これら内側コーナー部の長さhiと外側コーナー部の長さhoとのいずれかを前記ウエブ平板部の板厚t2よりも大きくして、前記内側コーナー部と外側コーナー部のいずれかの板厚の増加量を他方よりも大きくし、前記内外コーナー部を互いに非対称の形状とする手段は、押出が可能であれば、種々のコーナー部の形状手段が採用できる。ただ、前記図6、7のような場合でも、各コーナー部でのウエブ平板部5a側の前記各始端20から、ウエブ5とフランジ2との接合部5bへと向かって、コーナーRの仮想線を仮に引けば、内外コーナー部での互いのコーナーR同士の、前記規定した好ましい関係は、ここでも当てはまる。
【0085】
但し、アルミニウム合金押出中空形材1の各ウエブの全外側コーナー部の形状を共通して同じとする必要はなく、前記規定する関係を満足する範囲で、互いの形状を異ならせても良い。これは前内側コーナー部も同様である。そして、前記したコーナーRを含めて、このような異形断面形状が製造可能である点がアルミニウム合金押出中空形材の大きな利点でもある。
【0086】
以上の通り、本発明は、前記複数のウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能である、荷重後の断面形状の変形を制御できるエネルギ吸収部材であるのみならず、前記フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数のウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御し、荷重変形後の断面形状を制御することを特徴とするエネルギ吸収部材の変形制御方法としてもとらえることができる。
【0087】
潰し加工:
本発明でいう潰し加工(変断面加工)とは、前記図9に示したプレスなどの成形装置や冶具などを用いた、荷重負荷による断面の潰し成形加工であって、例えばバンパービームとして、車体衝突時の荷重負荷に伴う断面形状の潰れ変形ではない。
【0088】
本発明のエネルギ吸収部材は、前記図図12〜14に示したように、バンパビーム110として、その両端部110a、110bのみを、部分的に車体前後方向(フランジ2、3の延在方向とは直角方向に、あるいはウエブ4、5、6の延在方向に)に潰し加工して、車体フロント側の元の形状を点線で示す通り、その断面を潰して縮小した上で、フロントバンパあるいはバンパフェイシャ120の裏側に収められる。
【0089】
このような本発明の用途では、エネルギ吸収部材がその軸方向で部分的に潰し加工された上で、前記平板状フランジ2、3の面が荷重方向に対峙する補強材として用いられるものである。そして、この潰し加工において前記フランジ2、3面に負荷される荷重量に応じて、少なくとも前記フランジ2、3の両端部側に位置する2本のウエブ4、5が中央部から屈曲する(折れ曲がる)方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御するものである。
【0090】
この潰し加工(変断面加工)は、基本的には前記図9と同じ方法で行う。すなわち、基台150上に、本発明に係る押出中空形材1を平板状フランジ2、3を上下として載置した上で、剛体からなる垂直負荷用治具140を、押出中空形材1の潰し加工を行う端部側の上方に配置して、下降させて平板状フランジ2から荷重する。前記した通り、垂直負荷用治具140の幅は、平板状フランジ2の幅Wに対応する拡がりを持っている。また、図示はしないが、側面側から見ると、端部などの部分的な潰し加工に必要な、押出中空形材1の軸方向の長さを持ち、潰し加工後の所望形状や曲面、傾斜面に合わせた形状の、水平面や傾斜面あるいは曲面を有している。
【0091】
但し、従来は必要であった、フランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5を各々内倒れさせるための、前記水平の荷重負荷用の治具160は、本発明では全く不要である。すなわち、フランジ両端部側の二本の平板状ウエブ4、5に対する横方向(水平方向)からの荷重を負荷することなく、平板状フランジ2、3に対する縦方向(垂直方向)からの荷重負荷のみで、潰し加工(変断面加工)をすることができる。
【0092】
本発明エネルギ吸収部材は、このように、両端部など、部分的に断面形状を潰し加工して、断面積や体積を減少させることができるので、例えば自動車車体などへの収容空間に設計上の制約がなく、収容空間に合わせて潰し加工して収容することが可能である。
また、これら潰し加工する以外の部位は、前記した通り、前記矩形断面形状とその形状の各条件を、その軸方向(長手方向、押出方向)に亘って、均一に有しているアルミニウム合金押出中空形材からなるため、図1などの元の矩形断面形状とその形状の各条件をそのまま保持している。したがって、自動車のバンパービームやドアビームとして、自動車の車体衝突時の荷重負荷時にも、潰し加工時と同様に、各ウエブ4、5を内倒れさせた変形と設計することができる。したがって、この内倒れ変形によって、ウエブ4、5の外倒れ変形の場合に比して、衝突エネルギ吸収効果を高めるあるいは維持でき、エネルギ吸収材としての性能も維持あるいは向上させることができる優れた効果もある。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の実施例を説明する。アルミニウム合金押出中空形材1からなるエネルギ吸収部材として、図1、図4の本発明例と図5の比較例(従来例)との、前記図8の潰し加工時の変形形態を解析して、この潰し加工の可否を予測した。
【0094】
CAE解析条件:
アルミニウム合金押出中空形材1の矩形断面形状は、図1、4、5の通り、共通して、張出(突出)フランジ7、8、9、10付の日型断面とした。その外寸は、共通して、前記バンパビーム110を模擬して、平板状フランジ2、3の前記図の横方向の幅wは130mm、平板状ウエブ4、5、6の前記図の上下方向の長さhは45mmとして、Wをhの1.5倍以上とした。また、張出フランジ7、8、9、10の、平板状フランジ2、3の前記幅方向(図の横方向で前記wと同じ方向)に亘る長さ(幅)は、共通して各々5mmとした。平板状ウエブ4、5、6の平板部4a、5a、6aの板厚t2は共通して2.0mmとして、フランジ2、3の平板部2a、3aの板厚t1の4.0mmよりも小さくした。
【0095】
アルミニウム合金は、潰し加工時の全塑性モーメントMp=10.0kN・m(目標値)が得られるように、共通して、7000系のT5調質材で、0.2%耐力が425MPaの高強度の押出形材とした。
【0096】
そして、図1の発明例では、各平板状ウエブの全外側コーナー部のコーナーR(Ro)を共通して3.0mm、図4の発明例では、各平板状ウエブ外側コーナー部のコーナーR(Ro)を2.0mmとし、各平板状ウエブの全内側コーナー部のコーナーR(Ri)を共通して1.0mmとした。この結果、前記各外側コーナー部の長さhoは共通して図1の発明例では7.0mm、図4の発明例では6.0mmとなり、また前記各内側コーナー部の長さhiは、図1の発明例では5.0mm、図4の発明例では5.0mmとなる。
【0097】
したがって、各平板状ウエブの全外側コーナー部の長さhoを、図1、4の発明例ともに、前記ウエブ平板部の板厚t2(2.0mm)よりも大きくし、全外側コーナー部の板厚の増加量を、前記内側コーナー部の板厚の増加量よりも大きくしている。その一方で、前記各内側コーナー部の長さhiの方は、前記ウエブ平板部5aの板厚t2(2.0mm)よりも小さくしている。
【0098】
一方で、図5の比較例では、各平板状ウエブの全外側コーナー部のコーナーR(Ro)と全内側コーナー部のコーナーR(Ri)を共通して同じ1.0mmとした。この結果、前記各外側コーナー部の長さhoと前記各内側コーナー部の長さhiとは同じ5.0mmとなる。
【0099】
前記解析では、前記各平板状ウエブの前記内外コーナー部における、外側コーナー部のコーナーR(フィレットR)であるRoをパラメータとする成形解析を行い、潰し加工時の変形形態を調査した。 CAE解析には汎用の静的陰解法ソフトABAQUSを用い,2次元平面ひずみ状態を模擬した。
【0100】
CAE解析結果:
図9の工具140のアルミニウム合金押出中空形材1の矩形断面形状への押込み量Sが10mm、20mm、30mmの各タイミングにおける断面変形と最大主ひずみεmajの分布を図8に示す。
【0101】
図8では、図の左から、図5の比較例をCase1(ケース1)として、図4の発明例をCase2(ケース2)として、図1の発明例をCase3(ケース3)として各々示す。同図から分かる通り、図5の比較例では、各平板状ウエブの全外側コーナー部のコーナーR(Ro)と全内側コーナー部のコーナーR(Ri)とが同じ対称形であり、両端側の平板状ウェブ(4、5)がともに、望んでいない矩形断面の外側に曲げ変形(外倒れ)している。これに対し、図4の発明例のCase2、図1の発明例のCase3では、両端側のウェブ(4、5)をともに、所望の矩形断面の内側に曲げ変形(内倒れ)させることができている。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、潰し加工において確実および簡便にフランジ両端部側の二本のウエブを各々内倒れさせることができるなど、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面形状の変形(荷重後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材を提供できる。また、負荷荷重量に応じたり、押出中空形材の断面形状条件に応じて、荷重後の断面の変形(荷重変形後の断面形状)を制御できる、エネルギ吸収部材の断面変形制御方法を提供できる。このため、本発明は、軽量化を目指した自動車車体用のアルミニウム合金エネルギ吸収部材に好適であり、アルミニウム合金材の用途も一層拡大することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:アルミニウム合金押出中空形材(エネルギ吸収部材)、2、3:平板状フランジ、4、5、6:平板状ウエブ、7、8、9、10:張出フランジ(=突出フランジ)、11、12、13、14、15、16: 平板状ウエブのコーナー部、17、18:段差、19:傾斜面、20:各コーナー部の板厚が増加し始めるウエブ平板部側の始端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材であって、前記平板状ウエブはその平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有しており、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境として平板状ウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状として、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能である、荷重後の断面形状の変形を制御できるエネルギ吸収部材。
【請求項2】
前記内側コーナー部の長さhiと前記外側コーナー部の長さhoとを、前記平板状ウエブが接合する側の前記平板状フランジ外表面からこれら各コーナー部の板厚が増加し始める前記平板状ウエブ平板部側の始端までの長さとした際に、前記複数の平板状ウエブのうち、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブの各々の前記コーナー部における前記外側コーナー部の長さhoを、前記平板状ウエブ平板部の板厚t2と前記内側コーナー部の長さhiよりも各々大きくして、前記外側コーナー部の前記板厚の増加量を前記内側コーナー部の前記板厚の増加量よりも各々大きくし、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブが屈曲する方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御した請求項1に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項3】
前記内側コーナー部の長さhiと前記外側コーナー部の長さhoとを、前記外側コーナー部のコーナーR(Ro)と前記内側コーナー部のコーナーR(Ri)とによって異ならせた請求項2に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項4】
前記エネルギ吸収部材がその軸方向で部分的に潰し加工された上で、前記平板状フランジ面が荷重方向に対峙する補強材として用いられるものであり、この潰し加工における前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブが屈曲する方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御した請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項5】
前記矩形断面形状が、前記平板状ウエブが2本である口型か、前記平板状ウエブが3本である日型か、前記平板状ウエブが4本である目型のいずれかである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項6】
エネルギ吸収部材をアルミニウム合金押出中空形材から構成し、このアルミニウム合金押出中空形材を、相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するものとし、更に、前記平板状ウエブが、その平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有し、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを、互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状となして、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することを特徴とするエネルギ吸収部材の断面変形制御方法。
【請求項7】
前記内側コーナー部の長さhiと前記外側コーナー部の長さhoとを、前記平板状ウエブが接合する側の平板状フランジ外表面からこれら各コーナー部の板厚が増加し始める前記平板状ウエブ平板部側の始端までの長さとした際に、前記複数の平板状ウエブのうち、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブの各々の前記コーナー部における前記外側コーナー部の長さhoを、前記平板状ウエブ平板部の板厚t2と前記内側コーナー部の長さhiよりも各々大きくして、前記外側コーナー部の前記板厚の増加量を前記内側コーナー部の前記板厚の増加量よりも各々大きくし、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記平板状フランジの両端部側に位置する2本のウエブが屈曲する方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御する請求項6に記載のエネルギ吸収部材の断面変形制御方法。
【請求項1】
相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するアルミニウム合金押出中空形材からなるエネルギ吸収部材であって、前記平板状ウエブはその平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有しており、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境として平板状ウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状として、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することが可能である、荷重後の断面形状の変形を制御できるエネルギ吸収部材。
【請求項2】
前記内側コーナー部の長さhiと前記外側コーナー部の長さhoとを、前記平板状ウエブが接合する側の前記平板状フランジ外表面からこれら各コーナー部の板厚が増加し始める前記平板状ウエブ平板部側の始端までの長さとした際に、前記複数の平板状ウエブのうち、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブの各々の前記コーナー部における前記外側コーナー部の長さhoを、前記平板状ウエブ平板部の板厚t2と前記内側コーナー部の長さhiよりも各々大きくして、前記外側コーナー部の前記板厚の増加量を前記内側コーナー部の前記板厚の増加量よりも各々大きくし、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブが屈曲する方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御した請求項1に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項3】
前記内側コーナー部の長さhiと前記外側コーナー部の長さhoとを、前記外側コーナー部のコーナーR(Ro)と前記内側コーナー部のコーナーR(Ri)とによって異ならせた請求項2に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項4】
前記エネルギ吸収部材がその軸方向で部分的に潰し加工された上で、前記平板状フランジ面が荷重方向に対峙する補強材として用いられるものであり、この潰し加工における前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブが屈曲する方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御した請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項5】
前記矩形断面形状が、前記平板状ウエブが2本である口型か、前記平板状ウエブが3本である日型か、前記平板状ウエブが4本である目型のいずれかである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエネルギ吸収部材。
【請求項6】
エネルギ吸収部材をアルミニウム合金押出中空形材から構成し、このアルミニウム合金押出中空形材を、相対する二つの平板状フランジ同士をつなぐ複数の平板状ウエブから構成された矩形断面形状を有し、前記平板状フランジは各々その幅方向の両端部に前記平板状ウエブの接合位置よりも外側方に張出した張出フランジを各々有しており、前記平板状フランジの平板部の板厚t1が1.5〜6mmの範囲、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が1〜4mmの範囲であり、かつ、前記平板状ウエブの平板部の板厚t2が前記平板状フランジの平板部の板厚t1よりも小さく、前記平板状フランジの幅wが前記平板状ウエブの長さhの1.5倍以上である前記矩形断面形状を、その軸方向に亘って有するものとし、更に、前記平板状ウエブが、その平板部から前記平板状フランジとの接合部へと向かって板厚が順次増加していくコーナー部を各々有し、これらのコーナー部において前記平板状ウエブ平板部の軸線を境としてウエブ板厚方向に左右に分かれる内側コーナー部と外側コーナー部とを、互いの前記板厚の増加量が異なる非対称の形状となして、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記複数の平板状ウエブが屈曲する方向を前記矩形断面形状の内側方向か外側方向かに各々別個に制御することを特徴とするエネルギ吸収部材の断面変形制御方法。
【請求項7】
前記内側コーナー部の長さhiと前記外側コーナー部の長さhoとを、前記平板状ウエブが接合する側の平板状フランジ外表面からこれら各コーナー部の板厚が増加し始める前記平板状ウエブ平板部側の始端までの長さとした際に、前記複数の平板状ウエブのうち、少なくとも前記平板状フランジの幅方向の両端部側に位置する2本の平板状ウエブの各々の前記コーナー部における前記外側コーナー部の長さhoを、前記平板状ウエブ平板部の板厚t2と前記内側コーナー部の長さhiよりも各々大きくして、前記外側コーナー部の前記板厚の増加量を前記内側コーナー部の前記板厚の増加量よりも各々大きくし、前記平板状フランジ面に負荷される荷重量に応じて、前記平板状フランジの両端部側に位置する2本のウエブが屈曲する方向を各々前記矩形断面形状の内側方向に制御する請求項6に記載のエネルギ吸収部材の断面変形制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−103556(P2013−103556A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247482(P2011−247482)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
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