説明

エネルギ回収システム

【課題】低電力で動力油を冷却することが可能なエネルギ回収システムを提供する。
【解決手段】エネルギ回収システム1は、過給機2に連結されたポンプ11と、クランク軸4に連結されたモータ12と、を直列に接続し、動力油が循環する循環流路10と、循環流路10に接続されたバイパス流路30と、動力油を浄化及び置換するためにバイパス流路30に設けられた油圧ユニット31と、循環流路10に設けられており、当該循環流路10内を流れる動力油を冷却する冷却器14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機を備えたエンジンにおけるエネルギ回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ディーゼルエンジンにより駆動される過給機は、エンジンの排気ガスが有する排気エネルギによりタービンが回転駆動され、タービンによって回転する圧縮機によりエンジンの給気密度を高め、エンジンの出力や燃費効率を向上させる目的で使用される。しかしながら、過給機の効率の大幅な改善に伴い、エンジンの負荷状態によっては排気エネルギに十分な余剰が発生しており、この余剰排気エネルギを無駄なく利用することが、燃費向上のみならず、環境保護の面からも強く要請されている。
【0003】
かかる事情に鑑み、本願出願人は、過給機の排気エネルギを油圧として回収するエネルギ回収システムを提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−242051号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるエネルギ回収システム(閉回路構成)において、動力油の冷却、浄化、置換等の作業を可能にするため、図2に示すようにバイパス流路を設けることが考えられる。
図2に示すように、参考例に係るエネルギ回収システム101は、過給機102に変速機103を介して連結されたポンプ111、クランク軸104に連結されたモータ112及び弁113が直列に設けられた循環流路110と、動力制御ポンプ121が設けられた動力制御流路120と、リリーフ弁、フィルタ、油タンク等の油圧機器類からなる油圧ユニット131、電動機105で駆動されるポンプ132及び冷却器133が設けられたバイパス流路130と、を備える。
かかるエネルギ回収システム101において、循環流路110を流れる動力油の冷却及び置換は、ポンプ132の駆動に伴い動力油をバイパス流路130から循環流路110へ戻す逆止弁構造を有する弁113が開弁することによって行われ、油圧ユニット131へ導かれた動力油は、フィルタによって浄化されて油タンクに貯められる。そして、循環流路110内の動力油は、設定温度範囲内となるように冷却器133によって冷却されて弁113を介して循環流路110へ戻される。バイパス流路130を流れる動力油は、通常、循環流路110の流量の2〜3割にもなり、そのほとんどが冷却のためのものである。そのため、バイパス流路130で消費される電力が大きくなり、システム101によって回収されたエネルギが消費されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、低電力で動力油を冷却することが可能なエネルギ回収システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のエネルギ回収システムは、過給機及びクランク軸を備えたエンジンにおけるエネルギ回収システムであって、前記過給機に連結されたポンプと、前記クランク軸に連結されたモータと、を直列に接続し、動力油が循環する循環流路と、前記循環流路に接続されたバイパス流路と、前記動力油を浄化及び置換するために前記バイパス流路に設けられた油圧ユニットと、前記循環流路に設けられており、当該循環流路内を流れる動力油を冷却する冷却器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によると、冷却器がバイパス流路ではなく循環流路に設けられているので、動力油を冷却する際に動力油をバイパス流路へ流すための動力源が不要であり、低電力で動力油を冷却することができる。
【0009】
エネルギ回収システムは、前記バイパス流路に設けられたポンプと、前記ポンプを駆動する電動機と、を備えることが望ましい。
【0010】
前記冷却器は、前記循環流路における前記モータの下流側かつ前記ポンプの上流側に設けられていることが望ましい。
【0011】
かかる構成によると、冷却器がポンプの下流側かつモータの上流側に設けられている場合と比べて、比較的低圧な動力油が冷却器を流通することとなり、冷却器の設計が容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低電力で動力油を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るエネルギ回収システムを模式的に示す油圧回路図である。
【図2】参考例に係るエネルギ回収システムを模式的に示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るエネルギ回収システムについて、図1を参照して説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係るエネルギ回収システム1は、例えば過給機2及びクランク軸4を備える船舶用エンジンに適用される閉回路構成のシステムであって、エンジンの過給機2に減速機3を介して連結されたポンプ11、エンジンのクランク軸4に連結されたモータ12、弁13及び冷却器14が直列に設けられた循環流路10と、動力制御ポンプ21が設けられた動力制御流路20と、油圧ユニット31及びポンプ32が設けられたバイパス流路30と、を備える。
【0015】
<循環流路10>
循環流路10は、動力油が循環する環状の流路である。循環流路10には、ポンプ11、モータ12、弁13及び冷却器14が直列に設けられている。
【0016】
ポンプ11は、過給機2の回転軸に減速機3を介して連結されている。過給機2の回転軸が回転駆動することによって、ポンプ11が駆動して動力油が循環流路10内を流れる。
【0017】
モータ12は、ポンプ11の下流側に設けられており、エンジンの高負荷時に循環流路10内を流れる動力油のエネルギを回収して回転し、かかる回転によってエンジンのクランク軸4を補助的に回転させる。
【0018】
弁13は、モータ12の下流側に設けられており、後記するバイパス流路30から循環流路13へと戻る流れのみを許容する逆止弁13aを備える弁である。
【0019】
冷却器14は、弁13の下流側に設けられており、例えば図示しない流体(水等)と動力油とを熱交換することによって、モータ12を通った動力油を冷却する。冷却器14によって冷却された動力油は、ポンプ11へと戻る。
【0020】
<動力制御流路20>
動力制御流路20は、一端が循環流路10のポンプ11及びモータ12の間、他端が循環流路10の弁13及び冷却器14の間に接続された流路である。
動力制御流路20に設けられた動力制御ポンプ21は、循環流路10内の動力油に所望の油圧を付与して油圧動力を制御する。
動力制御ポンプ21の流量の制御は、図示しない制御装置によって行われる。
【0021】
<バイパス流路30>
バイパス流路30は、一端が循環流路10のモータ12の下流側かつ弁13の上流側、他端が循環流路10の弁14及び冷却部15の間に接続された流路である。
バイパス流路30に設けられた油圧ユニット31には、ポンプ32によってバイパス流路に引き込まれた動力油が流入して一時貯留される。油圧ユニット31は、リリーフ弁、フィルタ、油タンク等の油圧機器類からなり、油圧ユニット31の油タンクに一時貯留された動力油は、外部の動力油と置換可能である。また、油圧ユニット31は、フィルタによって動力油を浄化することができる。また、油圧ユニット31に一時貯留された動力油は、動力制御ポンプ21のパイロット油としても利用可能である。
【0022】
バイパス流路30の油圧ユニット31よりも下流側に設けられたポンプ32は、電動機5によって駆動され、循環流路10を流れる動力油をバイパス流路30に引き込む。
電動機5は、ポンプ32に駆動力を付与するものであり、電動機105の駆動制御は、図示しない制御装置又は手動によって行われる。なお、かかる電動機5は、システム1によって回収されたエネルギによって作動可能である。
【0023】
かかるエネルギ回収システム1は、動力油の浄化及び置換が不要な場合には、電動機5によるポンプ32の駆動を行わず、動力油の浄化及び置換のいずれかが必要な場合に、電動機5によってポンプ32を駆動し、循環流路10内の動力油の一部をバイパス流路30に引き込む。バイパス流路30に引き込まれた動力油は、油圧ユニット31で浄化されたり置換されたりした後、弁13を介して循環流路10に戻される。
【0024】
すなわち、エネルギ回収システム1において、動力油を冷却器14に流通させるための動力源は、動力油をバイパス流路30に引き込むためのポンプ32ではなく、動力油を循環流路10内で循環させてエネルギを回収するためのポンプ11及び動力制御ポンプ21である。
【0025】
本発明の実施形態に係るエネルギ回収システム1は、冷却器14がバイパス流路30ではなく循環流路10に設けられているので、動力油を冷却する際に動力油をバイパス流路30へ流すための動力源が不要であり、低電力で動力油を冷却することができる。
また、エネルギ回収システム1は、冷却器14が循環流路10に設けられているので、エンジン駆動時において電動機5及びポンプ32を停止した状態でも動力油の常時冷却が可能である。
また、エネルギ回収システム1は、冷却器14がバイパス流路30ではなく循環流路10に設けられているので、電動機5及びポンプ32を冷却のために駆動させる必要がなく、電動機5及びポンプ32の大幅な小型化が可能である。
また、エネルギ回収システム1は、冷却器14がモータ12の下流側かつポンプ11の上流側に設けられているので、冷却器14がポンプ11の下流側かつモータ12の上流側に設けられている場合と比べて、比較的低圧な動力油が冷却器14を流通することとなり、冷却器14の設計が容易である。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、冷却器14の設置箇所は、モータ12の下流側かつポンプ11の上流側に限定されない。
【符号の説明】
【0027】
1 エネルギ回収システム
2 過給機
4 クランク軸
10 循環流路
11 ポンプ
12 モータ
14 冷却器
30 バイパス流路
31 油圧ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機及びクランク軸を備えたエンジンにおけるエネルギ回収システムであって、
前記過給機に連結されたポンプと、前記クランク軸に連結されたモータと、を直列に接続し、動力油が循環する循環流路と、
前記循環流路に接続されたバイパス流路と、
前記動力油の浄化及び置換のために前記バイパス流路に設けられた油圧ユニットと、
前記循環流路に設けられており、当該循環流路内を流れる動力油を冷却する冷却器と、
を備えることを特徴とするエネルギ回収システム。
【請求項2】
前記バイパス流路に設けられたポンプと、
前記ポンプを駆動する電動機と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のエネルギ回収システム。
【請求項3】
前記冷却部は、前記循環流路における前記モータの下流側かつ前記ポンプの上流側に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエネルギ回収システム。

【図1】
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【図2】
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