説明

エバポレータ

【課題】製造コストを低減することができるエバポレータを提供する。
【解決手段】エバポレータ1の下側ヘッダタンク3の前後両中間ヘッダ部13,14内における仕切壁23,24よりも下側の空間13b,14bどうしを、第1中間ヘッダ部13のヘッダ部本体19の周壁21の後壁21aおよび第2中間ヘッダ部14のヘッダ部本体20の周壁22の前壁22aに形成された連通穴27,28により通じさせる。各ヘッダ部13,14のヘッダ部本体19,20に位置決め用凸部32が形成し、他方のヘッダ部14,13のヘッダ部本体20,19に位置決め用凸部32が嵌る位置決め用凹部33を形成する。位置決め用凸部32が位置決め用凹部33に嵌った状態で両ヘッダ部13,14のヘッダ部本体19,20どうしを互いにろう付する。両ヘッダ部13,14のヘッダ部本体19,20どうしの間の部分における連通穴27,28からずれた位置に、上下方向にのびる排水路31を貫通状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンに好適に使用されるエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、隣接する冷媒流通管部どうしの間の通風間隙を流れる空気の下流側(図1に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとし、図1〜図3の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
小型軽量化および高性能化を満たしたカーエアコン用エバポレータとして、本出願人は、先に、上下方向に間隔をおいて配置された2つのヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部とを備え、上側ヘッダタンクに、冷媒入口を有する冷媒入口ヘッダ部と、冷媒出口を有する冷媒出口ヘッダ部とが前後に並んで設けられ、下側ヘッダタンクに、冷媒入口ヘッダ部と対向する第1中間ヘッダ部と、冷媒出口ヘッダ部に対向する第2中間ヘッダ部とが前後に並んで一体に設けられ、熱交換コア部に、両ヘッダタンクの長さ方向に間隔おいて配置された複数の熱交換管からなる熱交換管群が前後方向に並んで複数列設けられ、冷媒入口ヘッダ部と第1中間ヘッダ部との間、および冷媒出口ヘッダ部と第2中間ヘッダ部との間にそれぞれ少なくとも1つの熱交換管群が配置され、下側ヘッダタンクの両中間ヘッダ部が、それぞれ両端が開口した中間ヘッダ部本体と、中間ヘッダ部本体に接合されて中間ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなり、第1中間ヘッダ部の一端部の閉鎖部材に冷媒流出口が形成されるとともに、第2中間ヘッダ部における冷媒流出口が形成された側と同一端部の閉鎖部材に冷媒流入口が形成され、冷媒流出口が形成された閉鎖部材と冷媒流入口が形成された閉鎖部材とが連結部を介して連結一体化されて端部材が構成され、冷媒流出口および冷媒流入口に通じる連通路を有する連通部材が、両中間ヘッダ部に跨るように端部材に接合され、両中間ヘッダ部内が連通部材により相互に通じさせられており、全部品が組み立てられて仮止めされた状態で一括ろう付されたエバポレータを提案した(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のエバポレータにおいては、下側ヘッダタンクが連通部材を必要とするので、部品点数が多くなるとともに、連通部材を成形するための金型が必要となって製造コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−170598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、上記問題を解決し、製造コストを低減することができるエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0008】
1)上下方向に間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部とを備えており、下側ヘッダタンクが、前後方向に並んで配置された2つのヘッダ部からなり、各ヘッダ部が、両端が開口した筒状の周壁および周壁内を上下2つの空間に区画する仕切壁よりなる中空状のヘッダ部本体と、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とにより形成されているエバポレータであって、
下側ヘッダタンクの前後両ヘッダ部内における仕切壁よりも下側の空間どうしが、前ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁の後壁および後ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁の前壁に形成された連通穴により通じさせられ、前後両ヘッダ部のうち少なくともいずれか一方のヘッダ部のヘッダ部本体に位置決め用凸部が形成されるとともに、同他方のヘッダ部のヘッダ部本体に当該位置決め用凸部が嵌る位置決め用凹部が形成され、位置決め用凸部が位置決め用凹部に嵌った状態で前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしが互いに接合され、前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしの間の部分における連通穴からずれた位置に、上下方向にのびる排水路が貫通状に形成されているエバポレータ。
【0009】
2)下側ヘッダタンクの各ヘッダ部のヘッダ部本体の仕切壁における前後方向外側縁部が周壁に一体に連結されるとともに前後方向内側縁部が周壁に接合され、前後両ヘッダ部のうち少なくともいずれか一方のヘッダ部のヘッダ部本体に形成された位置決め用凸部が、仕切壁の前後方向内側縁部に一体に形成されかつ周壁に形成された貫通穴を通して外方に突出した突起からなり、同じく他方のヘッダ部のヘッダ部本体に形成された位置決め用凹部が、周壁に形成された貫通穴からなり、各ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁および仕切壁が、1枚の金属板を曲げることにより形成されている上記1)記載のエバポレータ。
【0010】
3)下側ヘッダタンクの前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしの間に形成された排水路が、両ヘッダ部本体の周壁における前後方向内側部分の外面に形成され、かつ上下方向にのびる凹溝からなる上記1)または2)記載のエバポレータ。
【発明の効果】
【0011】
上記1)のエバポレータによれば、下側ヘッダタンクの前後両ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁内における仕切壁よりも下方の空間どうしが、前ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁の後壁部分および後ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁の前壁部分に形成された連通穴により通じさせられているので、特許文献1記載の熱交換器のように、別個に連通部材を必要としない。したがって、部品点数が少なくなるとともに、連通部材を成形するための金型が不要となって製造コストが安くなる。また、前後両ヘッダ部のうち少なくともいずれか一方のヘッダ部のヘッダ部本体に位置決め用凸部が形成されるとともに、同他方のヘッダ部のヘッダ部本体に当該位置決め用凸部が嵌る位置決め用凹部が形成され、位置決め用凸部が位置決め用凹部に嵌った状態で前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしが互いに接合されているので、2つのヘッダ部本体どうしを接合する際に、連通穴どうしが合致するように簡単に位置決めすることができる。さらに、前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしの間の部分における連通穴からずれた位置に、上下方向にのびる排水路が貫通状に形成されているので、冷媒流通管部を伝って流下した凝縮水が排水路を通って下側タンクの下方に排水され、その結果凝縮水が下側タンク上に溜まって氷結することに起因するエバポレータの性能低下を防止することができる。
【0012】
上記2)のエバポレータによれば、下側ヘッダタンクの両ヘッダ部のヘッダ部本体を比較的簡単につくることができる。
【0013】
上記3)のエバポレータによれば、前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしの間の排水路を比較的簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態のエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1に示すエバポレータを後方から見た際の中間を省略した垂直断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図2のB−B線拡大断面図である。
【図6】図2の一部を切り欠いたC−C線断面図である。
【図7】図1に示すエバポレータの下側ヘッダタンクの部分の分解斜視図である。
【図8】図1に示すエバポレータの下側ヘッダタンクにおける第1中間ヘッダ部のヘッダ部本体を形成する素板を示す平面図である。
【図9】図1に示すエバポレータの下側ヘッダタンクにおける第2中間ヘッダ部のヘッダ部本体を形成する素板を示す平面図である。
【図10】図2のD−D線断面図である。
【図11】図1に示すエバポレータの上側ヘッダタンクの部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、以下の説明において、図1および図2の左右を左右というものとする。
【0017】
図1および図2はエバポレータの全体構成を示し、図3〜図11はエバポレータの要部の構成を示す。
【0018】
図1〜図3に示すように、エバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置されかつ左右方向にのびるアルミニウム製上側ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製下側ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)の間に、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向(ヘッダタンク(2)(3)の長さ方向)に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム製扁平管(4)と、隣接する扁平管(4)どうしの間の通風間隙、および左右両端の扁平管(4)の外側にそれぞれ配置されて扁平管(4)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)と、左右両端のコルゲートフィン(5)の外側にそれぞれ配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(6)とを備えている。
【0019】
上側ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置しかつ左右方向にのびる冷媒入口ヘッダ部(7)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ左右方向にのびる冷媒出口ヘッダ部(8)とを備えている。上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)にアルミニウム製冷媒入口管(11)が接続され、同じく冷媒出口ヘッダ部(8)にアルミニウム製冷媒出口管(12)が接続されている。下側ヘッダタンク(3)は、前側に位置しかつ左右方向にのびる第1中間ヘッダ部(13)と、後側に位置しかつ左右方向にのびる第2中間ヘッダ部(14)とを備えている。上側ヘッダタンク(2)および下側ヘッダタンク(3)の周壁の横断面形状は同一であり、互いに上下逆向きに配置されている。
【0020】
扁平管(4)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成された2枚の長方形状金属板(15)の前後両側縁部どうしおよび前後方向中央部どうしが全長にわたってろう付されることにより形成されたものであり、上下方向にのびるとともに上下両端が開口した冷媒流通管部(16)が、前後方向に間隔をおいて2つ設けられている。扁平管(4)の冷媒流通管部(16)は、両金属板(15)の前後両側縁部どうしのろう付部と前後方向中央部どうしのろう付部との間の部分において、それぞれ両金属板(15)に全長にわたる外方膨出部(17)が形成されることにより設けられている。また、扁平管(4)の両冷媒流通管部(16)内に跨るように、アルミニウム製コルゲート状インナーフィン(18)(図5参照)が配置されており、両金属板(15)にろう付されている。扁平管(4)の冷媒流通管部(16)の上下両端部は、他の部分よりも前後方向の幅が狭くなっている。そして、扁平管(4)の上下両端部の幅狭部が、ヘッダ部(7)(8)(13)(14)内への差し込み部(16a)となっている。
【0021】
コルゲートフィン(5)は、扁平管(4)の前後両冷媒流通管部(16)に共有されており、その前後方向の幅は扁平管(4)の幅とほぼ等しくなっている。
【0022】
図3〜図7に示すように、下側ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(13)および第2中間ヘッダ部(14)は、それぞれ両端が開口した筒状の周壁(21)(22)および周壁(21)(22)内を上下2つの空間に区画する仕切壁(23)(24)よりなる中空状のヘッダ部本体(19)(20)と、ヘッダ部本体(19)(20)の両端開口を閉鎖する閉鎖部材(25)(26)とにより形成されている。以下、第1中間ヘッダ部(13)のヘッダ部本体(19)を第1ヘッダ部本体と称し、第2中間ヘッダ部(14)のヘッダ部本体(20)を第2ヘッダ部本体と称するものとする。両中間ヘッダ部(13)(14)内は、仕切壁(23)(24)により上下2つの空間(13a)(13b)(14a)(14b)に区画されていることになる。
【0023】
両中間ヘッダ部(13)(14)の仕切壁(23)(24)よりも下方の下側空間(13b)(14b)どうしは、第1中間ヘッダ部(13)の第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)の後壁(21a)および第2中間ヘッダ部(14)の第2ヘッダ部本体(20)の周壁(22)の前壁(22a)に形成された連通穴(27)(28)により通じさせられている。両中間ヘッダ部(13)(14)の閉鎖部材(25)(26)は連結一体化されて端部材(29)が構成されている。
【0024】
両中間ヘッダ部(13)(14)のヘッダ部本体(19)(20)どうしの間の部分における連通穴(27)(238)から左右方向にずれた位置に、上下方向にのびる複数の排水路(31)が、左右方向に間隔をおいて貫通状に形成されている。また、第1ヘッダ部本体(19)の後側部分に、複数の位置決め用凸部(32)と複数の位置決め用凹部(33)とが左右方向に間隔をおいて交互に形成されるとともに、第2ヘッダ部本体(20)の前側部分に、第1ヘッダ部本体(19)の位置決め用凹部(33)に嵌る複数の位置決め用凸部(32)と第1ヘッダ部本体(19)の位置決め用凸部(32)が嵌る複数の位置決め用凹部(33)とが左右方向に間隔をおいて交互に形成されており、各ヘッダ部本体(19)(20)の位置決め用凸部(32)が他のヘッダ部本体(20)(19)の位置決め用凹部(33)に嵌った状態で両ヘッダ部本体(19)(20)どうしが互いにろう付されている。
【0025】
第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)における上壁(21b)の前後両側縁寄りの部分は斜め下方に傾斜しており、上壁(21b)に、前後方向に長くかつ一方の傾斜部から他方の傾斜部に至る複数の差し込み部挿入穴(34)が、左右方向に間隔をおいて形成されている。また、周壁(21)の上壁(21b)の上面における差し込み部挿入穴(34)の周りの部分には、差し込み部挿入穴(34)よりも一回り大きくかつ内方に凹んだ凹所(35)が、上壁(21b)を内方に凹ませることにより形成されている。周壁(21)の下壁(21c)における上壁の全凹所(35)と対応する位置には、内方に突出した補強リブ(36)が、下壁(21c)を内方に凹ませることにより形成されている。周壁(21)の前壁(21d)は、上壁(21b)に一体に連なった上構成部(21e)と、下壁(21c)に一体に連なった下構成部(21f)とからなり、上構成部(21e)の下側部分が下構成部(21f)の外側に重なった状態で下構成部(21f)にろう付されている。また、周壁(21)の前壁(21d)の上構成部(21e)外面には、凹所(35)の前端部に連なりかつ上構成部(21e)の下端に至る排水溝(37)が形成されている。周壁(21)の後壁(21a)は、上壁(21b)および下壁(21c)に一体に連なっている。周壁(21)の後壁(21a)には、全凹所(35)の後端部および全補強リブ(36)の後端部に連なる凹溝(38)が、後壁(21a)を全高にわたって内方に凹ませることにより形成されている。また、周壁(21)の後壁(21a)における仕切壁(23)と同一高さ位置には、左右方向に長い複数の貫通穴(39)が左右方向に間隔をおいて形成されている。第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)の後壁(21a)の連通穴(27)は、貫通穴(39)よりも下方において隣り合う凹溝(38)間の適当な位置に形成されている。
【0026】
第2ヘッダ部本体(20)の周壁(22)は第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)と同様な構成であるとともに、第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)とは前後逆向きとなっており、同一物には同一符号を付す。なお、当然のことながら、第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)の後壁(21a)が第2ヘッダ部本体(20)の周壁(22)の前壁(22a)になり、同じく前壁(21d)が後壁(22d)になっている。後壁(22d)は、上構成部(22e)と下構成部(22f)とからなる。また、上壁を(22b)および下壁を(22c)で示す。そして、両ヘッダ部本体(19)(20)の凹溝(38)によって、両中間ヘッダ部(13)(24)のヘッダ部本体(19)(20)間に排水路(31)が形成されている。
【0027】
第1ヘッダ部本体(19)の仕切壁(23)は、前側縁部が周壁(21)の前壁(21d)における下構成部(21f)の上端部に一体に連結されており、後側縁部が同じく後壁(21a)にろう付されている。仕切壁(23)の後側縁部には、後方に突出した複数の突起(41)が左右方向に間隔をおいて一体に形成されている。突起(41)は、周壁(21)の後壁(21a)の全貫通穴(39)のうち1つおきに存在する貫通穴(39)と対応する位置に形成され、当該貫通穴(39)を通して後壁(21a)よりも外方(後方)に突出しているとともに、第2ヘッダ部本体(20)の前壁(22a)の貫通穴(39)内に嵌め入れられており、第1ヘッダ部本体(19)の後壁(21a)および第2ヘッダ部本体(20)の前壁(22a)にろう付されている。そして、第1ヘッダ部本体(19)の突起(41)における後壁(21a)よりも外方に突出した部分が位置決め用凸部(32)となり、第2ヘッダ部本体(20)の前壁(22a)の突起(41)が嵌め入れられた貫通穴(39)が位置決め用凹部(33)となっている。また、仕切壁(23)の後側縁部における後壁(21a)の凹溝(38)と対応する位置には、凹溝(38)を形成することによりできた内方突出部を避ける切り欠き(42)が形成されている。また、仕切壁(23)には、左右方向に長い比較的大きな複数の長方形状貫通穴(43)が左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0028】
第2ヘッダ部本体(20)の仕切壁(24)は、長方形状貫通穴(43)に代えて、複数の円形冷媒通過穴(44)が左右方向に間隔をおいて形成されていること、ならびに突起(41)が、第1ヘッダ部本体(19)の仕切壁(23)の突起(41)からずれた位置、すなわち第1ヘッダ部本体(19)の後壁(21a)の全貫通穴(39)のうち仕切壁(23)の突起(41)が通されていない貫通穴(39)と対応する位置に形成されていることを除いては、第1ヘッダ部本体(19)の仕切壁(23)と同一の構成であるとともに前後逆向きとなっており、同一物には同一符号を付す。
【0029】
第1ヘッダ部本体(19)の周壁(21)および仕切壁(23)は、図8に示すような素板(45)を曲げることにより形成されている。素板(45)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されたものであり、連通穴(27)、凹溝(38)および貫通穴(39)を有する後壁形成部(46)、後壁形成部(46)の一側縁に連なり、かつ差し込み部挿入穴(34)および凹所(35)を有する上壁形成部(47)、後壁形成部(46)の他側縁に連なり、かつ補強リブ(36)を有する下壁形成部(48)、上壁形成部(47)の後壁形成部(46)とは反対側の側縁に連なり、かつ排水溝(37)を有する前壁(21d)の上構成部形成部(49)、下壁形成部(48)の後壁形成部(46)とは反対側の側縁に連なる前壁(21d)の下構成部形成部(51)、ならびに下構成部形成部(51)の下壁形成部(48)とは反対側の側縁に連なり、かつ突起(41)、切り欠き(42)および長方形状貫通穴(43)を有する仕切壁形成部(52)からなる。
【0030】
第2ヘッダ部本体(20)の周壁(22)および仕切壁(24)は、図9に示すような素板(53)を曲げることにより形成されている。素板(53)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されたものであり、連通穴(28)、凹溝(38)および貫通穴(39)を有する前壁形成部(54)、前壁形成部(54)の一側縁に連なり、かつ差し込み部挿入穴(34)および凹所(35)を有する上壁形成部(55)、前壁形成部(54)の他側縁に連なり、かつ補強リブ(36)を有する下壁形成部(56)、上壁形成部(55)の前壁形成部(54)とは反対側の側縁に連なり、かつ排水溝(37)を有する後壁(22d)の上構成部形成部(57)、下壁形成部(56)の前壁形成部(54)とは反対側の側縁に連なる後壁(22d)の下構成部形成部(58)、ならびに下構成部形成部(58)の下壁形成部(56)とは反対側の側縁に連なり、かつ突起(41)、切り欠き(42)および円形冷媒通過穴(44)を有する仕切壁形成部(59)からなる。
【0031】
そして、第1ヘッダ部本体(19)用の素板(45)を適切な箇所で曲げるとともに、突起(41)を貫通穴(39)に嵌め入れて筒状の周壁(21)および仕切壁(23)を有する半製品をつくるとともに、第2ヘッダ部本体(20)用の素板(53)を適切な箇所で曲げるとともに、突起(41)を貫通穴(39)に嵌め入れて筒状の周壁(22)および仕切壁(24)からなる半製品をつくり、ついで一方の半製品の位置決め用凸部(32)となる突起(41)の突出部を他方の半製品の位置決め用凹部(33)となる貫通穴(39)に嵌め入れるとともに、他方の半製品の位置決め用凸部(32)となる突起(41)の突出部を一方の半製品の位置決め用凹部(33)となる貫通穴(39)に嵌め入れることにより両半製品を位置決めし、さらに両半製品の両端部に端部材(29)を配置し、この状態で各半製品の所要部分をろう付することにより両ヘッダ部本体(19)(20)の周壁(21)(22)および仕切壁(23)(24)がつくられるとともに、両ヘッダ部本体(19)(20)どうしがろう付され、さらに両ヘッダ部本体(19)(20)の両端に跨るように端部材(29)がろう付される。こうして、第1中間ヘッダ部(13)および第2中間ヘッダ部(14)からなる下側ヘッダタンク(3)がつくられる。なお、第1中間ヘッダ部(13)および第2中間ヘッダ部(14)からなる下側ヘッダタンク(3)の作成は、エバポレータ(1)を製造する際の他の部品のろう付と同時に行われる。
【0032】
上側ヘッダタンク(2)は、後述する点を除いては下側ヘッダタンク(3)と同様な構成であるとともに、下側ヘッダタンク(3)とは上下逆向きとなっており、同一物には同一符号を付す。なお、当然のことながら、下側ヘッダタンク(3)の両中間ヘッダ部(13)(14)のヘッダ部本体(19)(20)の周壁(21)(22)の上壁(21b)(22b)が、上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)および冷媒出口ヘッダ部(8)のヘッダ部本体(19)(20)の周壁(21)(22)の下壁となり、同じく下壁(21c)(22c)が上壁となる。また、両ヘッダ部(7)(8)内が、仕切壁(23)(24)により上下2つの空間(7a)(7b)(8a)(8b)に区画されていることになる。
【0033】
ここで、上側ヘッダタンク(2)と下側ヘッダタンク(3)との相違点は以下の通りである。
【0034】
図2、図3、図10および図11に示すように、上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)のヘッダ部本体(19)の周壁(21)および冷媒出口ヘッダ部(8)のヘッダ部本体(20)の周壁(22)には連通穴(27)(28)は形成されておらず、両ヘッダ部(7)(8)の内部は通じさせられていない。
【0035】
上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)の右側の閉鎖部材(25)における仕切壁(23)よりも上側の部分に冷媒入口(61)が形成され、冷媒出口ヘッダ部(8)の右側の閉鎖部材(26)における仕切壁(24)よりも上側の部分に冷媒出口(62)が形成されている。そして、冷媒入口(61)に通じる冷媒流入口(64)および冷媒出口(62)に通じる冷媒流出口(65)を有するアルミニウム製ジョイントプレート(63)が、上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)および冷媒出口ヘッダ部(8)の右側の閉鎖部材(25)(26)からなる端部材(29)にろう付されている。ジョイントプレート(63)の冷媒流入口(64)に冷媒入口管(11)の端部が差し込まれてろう付され、同じく冷媒流出口(65)に冷媒出口管(12)の端部が差し込まれてろう付されている。
【0036】
上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)のヘッダ部本体(19)の仕切壁(23)の左端部に、上側空間(7a)と下側空間(7b)とを通じさせる連通口(66)が形成されている。また、冷媒入口ヘッダ部(7)のヘッダ部本体(19)の仕切壁(23)に、複数の円形冷媒通過穴(67)が左右方向に間隔をおいて形成されている。冷媒出口ヘッダ部(8)のヘッダ部本体(20)の仕切壁(24)に、左右方向に長い複数の冷媒通過穴(68A)(68B)が左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0037】
上述したエバポレータ(1)は、入口管(11)および出口管(12)を除いたすべての部品が組み合わされて一括ろう付されることにより製造される。
【0038】
エバポレータ(1)は、コンプレッサおよび冷媒冷却器としてのコンデンサとともに、フロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。
【0039】
上述したエバポレータ(1)においては、コンプレッサのオン時には、コンプレッサ、コンデンサおよび膨張弁を通過した気液混相の2相冷媒が、冷媒入口管(11)からジョイントプレート(63)の冷媒流入口(64)および閉鎖部材(25)の冷媒入口(61)を通って上側ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(7)の上側空間(7a)内に入る。冷媒入口ヘッダ部(7)の上側空間(7a)内に入った冷媒は左方に流れ、連通口(66)を通って下側空間(7b)内に入るとともに、冷媒通過穴(67)を通って下側空間(7b)内に入り、下側空間(7b)内を右方に流れる。
【0040】
冷媒入口ヘッダ部(7)の下側空間(7b)内に入った冷媒は、分流して扁平管(4)の前側冷媒流通管部(16)内に流入する。扁平管(4)の前側冷媒流通管部(16)内に流入した冷媒は、冷媒流通管部(16)内を下方に流れて下側ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(13)の上側空間(13a)内に入る。第1中間ヘッダ部(13)の上側空間(13a)内に入った冷媒は、長方形状貫通穴(43)を通って下側空間(13b)に入る。第1中間ヘッダ部(13)の下側空間(13b)に入った冷媒は、第1ヘッダ部本体(19)および第2ヘッダ部本体(20)の連通穴(27)(28)を通って第2中間ヘッダ部(14)の下側空間(14b)内に入る。下側空間(14b)内に入った冷媒は、円形冷媒通過穴(44)を通って第2中間ヘッダ部(14)の上側空間(14a)内に入り、分流して扁平管(4)の後側冷媒流通管部(16)内に流入する。
【0041】
扁平管(4)の後側冷媒流通管部(16)内に流入した冷媒は、上方に流れて冷媒出口ヘッダ部(8)の下側空間(8b)内に入り、冷媒通過穴(68A)(68B)を通って上側空間(8a)内に入る。
【0042】
冷媒出口ヘッダ部(8)の上側空間(8a)内に入った冷媒は右方に流れ、閉鎖部材(26)の冷媒出口(62)およびジョイントプレート(63)の冷媒流出路(65)を通り、冷媒出口管(12)に流出する。
【0043】
そして、冷媒が扁平管(4)の前後両冷媒流通管部(16)内を流れる間に、隣り合う扁平管(4)どうしの間の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明によるエバポレータは、カーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
(1):エバポレータ
(2):上側ヘッダタンク
(4):扁平管
(13):第1中間ヘッダ部
(13b):下側空間
(14):第2中間ヘッダ部
(14b):下側空間
(16):冷媒流通管部
(19):第1ヘッダ部本体
(20):第2ヘッダ部本体
(21)(22):周壁
(21a):後壁
(22a):前壁
(27)(28):連通穴
(23)(24):仕切壁
(25)(26):閉鎖部材
(31):排水路
(32):位置決め用凸部
(33):位置決め用凹部
(38):凹溝
(39):貫通穴
(41):突起
(45)(53):素板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部とを備えており、下側ヘッダタンクが、前後方向に並んで配置された2つのヘッダ部からなり、各ヘッダ部が、両端が開口した筒状の周壁および周壁内を上下2つの空間に区画する仕切壁よりなる中空状のヘッダ部本体と、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とにより形成されているエバポレータであって、
下側ヘッダタンクの前後両ヘッダ部内における仕切壁よりも下側の空間どうしが、前ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁の後壁および後ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁の前壁に形成された連通穴により通じさせられ、前後両ヘッダ部のうち少なくともいずれか一方のヘッダ部のヘッダ部本体に位置決め用凸部が形成されるとともに、同他方のヘッダ部のヘッダ部本体に当該位置決め用凸部が嵌る位置決め用凹部が形成され、位置決め用凸部が位置決め用凹部に嵌った状態で前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしが互いに接合され、前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしの間の部分における連通穴からずれた位置に、上下方向にのびる排水路が貫通状に形成されているエバポレータ。
【請求項2】
下側ヘッダタンクの各ヘッダ部のヘッダ部本体の仕切壁における前後方向外側縁部が周壁に一体に連結されるとともに前後方向内側縁部が周壁に接合され、前後両ヘッダ部のうち少なくともいずれか一方のヘッダ部のヘッダ部本体に形成された位置決め用凸部が、仕切壁の前後方向内側縁部に一体に形成されかつ周壁に形成された貫通穴を通して外方に突出した突起からなり、同じく他方のヘッダ部のヘッダ部本体に形成された位置決め用凹部が、周壁に形成された貫通穴からなり、各ヘッダ部のヘッダ部本体の周壁および仕切壁が、1枚の金属板を曲げることにより形成されている請求項1記載のエバポレータ。
【請求項3】
下側ヘッダタンクの前後両ヘッダ部のヘッダ部本体どうしの間に形成された排水路が、両ヘッダ部本体の周壁における前後方向内側部分の外面に形成され、かつ上下方向にのびる凹溝からなる請求項1または2記載のエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−197019(P2010−197019A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45736(P2009−45736)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)