エピテーゼ製作方法及び該製作方法によって製作されたエピテーゼ
【課題】短時間で完成させることができ、熟練によらずに安価に製作することができるエピテーゼの製作方法を提案する。
【解決手段】患者の顔面欠損部を含む欠損模型を作製し、欠損模型から、合成樹脂シートを用いて顔面形態支持フレームを作製し、患者の顔面画像をコンピュータに取り込み、顔面画像の欠損部に対応する健常側の左右対称の部位を反転させて欠損部画像とし、この欠損部画像を熱転写シートに印刷し、反転させた部位の画像を印刷した熱転写シートを伸展性シートに転写し、伸展性シートを前記顔面形態支持フレームに接着してエピテーゼとする。
【解決手段】患者の顔面欠損部を含む欠損模型を作製し、欠損模型から、合成樹脂シートを用いて顔面形態支持フレームを作製し、患者の顔面画像をコンピュータに取り込み、顔面画像の欠損部に対応する健常側の左右対称の部位を反転させて欠損部画像とし、この欠損部画像を熱転写シートに印刷し、反転させた部位の画像を印刷した熱転写シートを伸展性シートに転写し、伸展性シートを前記顔面形態支持フレームに接着してエピテーゼとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍や外傷によって生じた患者の顔面欠損部の補綴を行うエピテーゼの製作方法及び該製作方法によって製作されたエピテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエピテーゼの製作方法として一般的なものとしては、顔面全体の印象をとり、顔面模型を製作し、顔面模型上で、欠損部をワックスで形成し、それをシリコーン転換して、眉毛などの植毛、着色、義眼の取付等を行って、エピテーゼを完成させている。
しかしながら、このような従来の製作方法は、熟練と時間がかかる、という問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、患者の目の欠損部を含む目を閉じた状態での顔面模型を製作し、顔面模型上に顔面の欠損部に対応する欠損部をワックスで形成し、エピテーゼを製作し、その顔面模型上に、患者の目が開いた状態での健常側の画像を左右対称にコピーした形状回復画像を、等倍で投影し、この投影された画像を参考にして、顔面模型上でエピテーゼの修正を行い、シリコーンへの転換を行って、着色、植毛を経て、エピテーゼを製作する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4096063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1で提案される製作方法においては、投影された画像を参考にしてトレースして修正を行うことで、製作者の熟練によらずにエピテーゼの製作の精度を高めようとしているものの、依然として、エピテーゼの修正、着色、植毛の手間がかかり、熟練が必要であり、また作業に時間がかかる、という問題がある。
【0006】
また、シリコーンが重いため、装着感が悪く、また、その装着維持にも工夫が必要となる、という問題がある。また、シリコーンの材料費も高いため、製作費用が高くなるという問題もある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、短時間で完成させることができ、熟練によらずに安価に製作することができるエピテーゼの製作方法を提案することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、患者の顔面欠損部の補綴を行うエピテーゼの製作方法であって、
患者の顔面欠損部を含む欠損模型を作製する工程と、
欠損模型から欠損部とその周囲部に合成樹脂シートを加熱圧接して顔面形態支持フレームを作製する工程と、
顔面画像データをコンピュータに取り込み、顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程と、
選択された欠損部画像をシートに印刷して顔面形態シートを作製する工程と、
顔面形態シートを前記顔面形態支持フレームに接着してエピテーゼとする工程と、
を備える。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の方法において、前記顔面形態支持フレームを作製する工程が、
合成樹脂シートを用いて欠損部に沿って補強用フレームを作製する工程と、
補強用フレームを患者の欠損部に戻して、充填材料を陥凹部に填入する工程と、
これを欠損模型に戻して、顔面形態の模型を作り、この模型上で、合成樹脂シートによって顔面形態板を作る工程と、
充填材料を除去して、補強用フレームと顔面形態板とを接着して、顔面形態支持フレームとする工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の方法において、前記顔面形態シートを作製する工程が、
選択された欠損部画像を熱転写シートに印刷する工程と、
印刷した熱転写シートを伸展性シートに転写する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の方法において、前記顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程が、
患者の顔面画像のうちの健常側にあって欠損部の左右対称の部位を反転させて、欠損部画像とする工程を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法によって製作されたエピテーゼである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、顔面画像の欠損部に対応する部位である欠損部画像を印刷することによって得られる顔面形態シートを顔面形態支持フレームに接着するために、植毛や着色の作業が不要であり、熟練を必要とせずに、簡単に且つ短時間で製作することができる。
【0014】
また、本発明によれば、製作されるエピテーゼが主として合成樹脂シートで構成されるため、軽量に且つ安価に製作することができる。そのため、顔面への保持を簡単に行うことができ、装着感が良好である。
【0015】
特に、顔面形態支持フレームを、それぞれ合成樹脂シートからなる補強用フレームと顔面形態板で構成し、両者の間に充填させた充填材料を除去して、両者の間を空洞にすることができるため、軽量に構成することができる。
【0016】
また、顔面形態シートを反転させた部位の画像を印刷した熱転写シートを転写した伸展性シートで構成することで、該伸展性シートを顔面形態板の凹凸に合わせて伸ばして、追従させることができ、違和感のない顔面形態を製作することができる。
【0017】
また、患者の顔面画像のうちの健常側にあって欠損部の左右対称の部位を反転させて、欠損部画像とすることにより、患者に適して形状回復したエピテーゼを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順を表すフローチャートである。
【図2】本発明によるエピテーゼを製作する患者の一例を表す正面図である。
【図3】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ2)を表す図である。
【図4】(a)は、本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ3)を表す図、(b)は(a)のb−b線に沿って見た拡大断面図である。
【図5】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ4)を表す図である。
【図6】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ4)を表す図である。
【図7】(a)は、本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ5)を表す図、(b)は(a)のb−b線に沿って見た拡大断面図である。
【図8】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ6)を表す図である。
【図9】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ6)を表す図である。
【図10】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図11】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図12】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図13】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図14】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ8)を表す図である。
【図15】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ9)を表す図である。
【図16】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ10)を表す図である。
【図17】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ11)を表す図であり、(a)はエピテーゼの平面図、(b)は(a)のb−b断面図である。
【図18】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ12)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明によるエピテーゼの製作方法の手順を表しており、この手順に従い、本発明の製作方法を説明する。
【0020】
まず、ステップ1において、図2に示すような目の部分の顔面欠損部12を有する患者10に対して、アルジネート印象材などの印象材を用いて顔面欠損部を含む顔面の印象を取る。
【0021】
次いで、ステップ2において、得られた印象から歯科用石膏を用いて欠損模型20を作る(図3)。この手順は、従来から公知の手法によって、行うことができる。
【0022】
次いで、ステップ3において、欠損模型20からその欠損部22とその周囲10mm位を合成樹脂シートで加熱圧接し、補強用フレーム24を作る(図4)。合成樹脂シートとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の任意の合成樹脂からなるシートとすることができる。
【0023】
次いで、ステップ4において、補強用フレーム24を患者に装着し(図5)、紙粘土、ワックス等の充填材料26を補強用フレーム24の陥凹部24aに填入し、顔貌形態に合わせて指先で大体の形態を整える(図6)。
【0024】
ステップ5において、これを欠損模型20に戻して、顔面形態の模型を作り、この模型上で、合成樹脂シートによって顔面形態板28を作る(図7)。合成樹脂シートとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の任意の合成樹脂からなるシートとすることができる。
【0025】
ステップ6において、充填材料26を取り除き、補強用フレーム24と顔面形態板28とを即時重合レジン等を用いて接着して、顔面形態支持フレーム30を作る(図8、図9)。尚、補強用フレーム24の陥凹部の中央部に開口24bを開けてもよい。
【0026】
次に、ステップ7において、患者の顔面をデジタルカメラで撮像するなどして得られた画像データをコンピュータに取り込み(図10)、コンピュータ40のモニター42で、健常側の目を含む範囲を指定して(図11)、欠損部に反転して重ね合わせる(図12)。そして、反転像の色調を整えて、頬骨と耳介付近の辺境部の皮膚色を延長して欠損部画像を作る。また、必要に応じて、欠損部でない部分、例えば鼻の部分の画像を除去する(図13)。
【0027】
次に、ステップ8において、市販のアイロン転写紙といった熱転写シート32を用意し、これに前ステップで用意した欠損部画像をプリンター46で印刷する(図14)。
【0028】
そして、ステップ9において、印刷後の熱転写シート32をアイロン50等を用いてポリエステル等のプラスチックシート、布、紙等に熱圧着して顔面形態シート34を作製する(図15)。顔面形態シート34は、好ましくは、伸展性を備えるものとするとよい。また、任意には、熱転写シート32を用いずに、直接、伸展性シートにステップ7で用意した画像を印刷して顔面形態シートとしてもよい。好ましくは、印刷は防水性インクを用いて行うとよい。
【0029】
次に、ステップ10において、前記顔面形態支持フレーム30を患者の顔面欠損部12に装着し、その顔面形態板28に前記画像が転写された顔面形態シート34を試適する(図16)。顔面の色調や眼球の大きさなどの調和が良好であれば、顔面形態シート34を顔面形態板に仮止めし、次いで、ステップ11において、顔面形態シート34を、顔面形態支持フレーム30に接着して、顔面形態シート34の余分の部分を切り取り、エピテーゼ36を作る(図17)。
【0030】
最後にステップ12において、微調整を行い、エピテーゼ36の辺境部に顔面部の凹凸に合うように切り込み38を入れて、顔面部の表面の湾曲に形態を合わせて、エピテーゼが完成する(図18)。
【0031】
以上の工程で製作されたエピテーゼは、合成樹脂からなる顔面形態支持フレーム30と顔面形態シート34によって主として構成されるため、従来に比べて軽量である。例えば、従来のシリコーンで製作されたエピテーゼでは、50g以上の質量となるのに対して、10g程度の質量とすることができる。そのため、エピテーゼの顔面への保持は、医療用接着剤を用いた接着などの簡単な手段によって確実に行うことができ、その装着感も良好であり、エピテーゼを装着したままでの、入浴、洗顔、洗髪を行うことができ、生活の質も向上させることができる。
【0032】
患者の健常側の画像を左右反転して印刷することによって得られる顔面形態シート34を用いるために、植毛や着色の作業が不要であり、熟練を必要とせずに、簡単に且つ迅速に製作することができる。調整を行う場合には、コンピュータ40上で行うことができる。画像データは、記録媒体に保存しておくことができるから、いつでも読み出して、交換用エピテーゼのために使うことができる。
【0033】
術後すぐにエピテーゼを製作することができるために、術後の外界からの患部の保護にもガーゼ代わりに使用することができて、感染防止、異物混入防止を行うことができ、術後の生活の質も向上させることができる。
【0034】
また、製作されるエピテーゼに必要な材料は、基本的に合成樹脂シート、熱転写シート、顔面形態シートであるため、材料費が安価であり、製作技術も簡単であるため、製作費も安価とすることができる。
【0035】
以上の例では、顔面形態支持フレームの作製後に、患者の画像データの取り込み、熱転写シートへの印刷を行ったが、これに限るものではなく、患者の画像データの取り込み、熱転写シートへの印刷は、顔面形態支持フレームを作る前に予め行ってもよい。
【0036】
また、以上の例では、目を含む顔面欠損部であったので画像の左右反転を行ったが、頬など左右反転を行う必要はない部位の場合には、反転を行わずに健常部位の画像を用いることとしてもよい。
【0037】
また、患者の顔面の撮像は、エピテーゼを作る際ではなく、以前に行ってもよく、または、過去の手術前に撮像して得られた画像データを用いてもよい。この場合には、顔面欠損部に該当する健常時の画像データをそのまま利用してもよい。特に、顔面欠損部が左右両側にわたる場合などは、手術前に撮像して得られた画像データを利用することが有効である。また、画像データは、患者自身の顔面の撮像によって得られるものとするのが好ましいが、顔面欠損部が大きく、且つ、手術前の画像データが入手できない場合には、患者以外の人間の顔面の画像データを用いてもよい。
【0038】
また、以上の例では、顔面形態支持フレーム36を補強用フレーム24と顔面形態板28とから構成していたが、これに限るものではなく、欠損部の深さが浅い場合には、補強用フレーム24を省略して、顔面形態板28のみから顔面形態支持フレーム36を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 患者
12 欠損部
20 欠損模型
22 欠損部
24 補強用フレーム
26 充填材料
28 顔面形態板
30 顔面形態支持フレーム
32 熱転写シート
34 顔面形態シート
36 エピテーゼ
40 コンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍や外傷によって生じた患者の顔面欠損部の補綴を行うエピテーゼの製作方法及び該製作方法によって製作されたエピテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエピテーゼの製作方法として一般的なものとしては、顔面全体の印象をとり、顔面模型を製作し、顔面模型上で、欠損部をワックスで形成し、それをシリコーン転換して、眉毛などの植毛、着色、義眼の取付等を行って、エピテーゼを完成させている。
しかしながら、このような従来の製作方法は、熟練と時間がかかる、という問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、患者の目の欠損部を含む目を閉じた状態での顔面模型を製作し、顔面模型上に顔面の欠損部に対応する欠損部をワックスで形成し、エピテーゼを製作し、その顔面模型上に、患者の目が開いた状態での健常側の画像を左右対称にコピーした形状回復画像を、等倍で投影し、この投影された画像を参考にして、顔面模型上でエピテーゼの修正を行い、シリコーンへの転換を行って、着色、植毛を経て、エピテーゼを製作する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4096063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1で提案される製作方法においては、投影された画像を参考にしてトレースして修正を行うことで、製作者の熟練によらずにエピテーゼの製作の精度を高めようとしているものの、依然として、エピテーゼの修正、着色、植毛の手間がかかり、熟練が必要であり、また作業に時間がかかる、という問題がある。
【0006】
また、シリコーンが重いため、装着感が悪く、また、その装着維持にも工夫が必要となる、という問題がある。また、シリコーンの材料費も高いため、製作費用が高くなるという問題もある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、短時間で完成させることができ、熟練によらずに安価に製作することができるエピテーゼの製作方法を提案することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、患者の顔面欠損部の補綴を行うエピテーゼの製作方法であって、
患者の顔面欠損部を含む欠損模型を作製する工程と、
欠損模型から欠損部とその周囲部に合成樹脂シートを加熱圧接して顔面形態支持フレームを作製する工程と、
顔面画像データをコンピュータに取り込み、顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程と、
選択された欠損部画像をシートに印刷して顔面形態シートを作製する工程と、
顔面形態シートを前記顔面形態支持フレームに接着してエピテーゼとする工程と、
を備える。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の方法において、前記顔面形態支持フレームを作製する工程が、
合成樹脂シートを用いて欠損部に沿って補強用フレームを作製する工程と、
補強用フレームを患者の欠損部に戻して、充填材料を陥凹部に填入する工程と、
これを欠損模型に戻して、顔面形態の模型を作り、この模型上で、合成樹脂シートによって顔面形態板を作る工程と、
充填材料を除去して、補強用フレームと顔面形態板とを接着して、顔面形態支持フレームとする工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の方法において、前記顔面形態シートを作製する工程が、
選択された欠損部画像を熱転写シートに印刷する工程と、
印刷した熱転写シートを伸展性シートに転写する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の方法において、前記顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程が、
患者の顔面画像のうちの健常側にあって欠損部の左右対称の部位を反転させて、欠損部画像とする工程を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法によって製作されたエピテーゼである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、顔面画像の欠損部に対応する部位である欠損部画像を印刷することによって得られる顔面形態シートを顔面形態支持フレームに接着するために、植毛や着色の作業が不要であり、熟練を必要とせずに、簡単に且つ短時間で製作することができる。
【0014】
また、本発明によれば、製作されるエピテーゼが主として合成樹脂シートで構成されるため、軽量に且つ安価に製作することができる。そのため、顔面への保持を簡単に行うことができ、装着感が良好である。
【0015】
特に、顔面形態支持フレームを、それぞれ合成樹脂シートからなる補強用フレームと顔面形態板で構成し、両者の間に充填させた充填材料を除去して、両者の間を空洞にすることができるため、軽量に構成することができる。
【0016】
また、顔面形態シートを反転させた部位の画像を印刷した熱転写シートを転写した伸展性シートで構成することで、該伸展性シートを顔面形態板の凹凸に合わせて伸ばして、追従させることができ、違和感のない顔面形態を製作することができる。
【0017】
また、患者の顔面画像のうちの健常側にあって欠損部の左右対称の部位を反転させて、欠損部画像とすることにより、患者に適して形状回復したエピテーゼを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順を表すフローチャートである。
【図2】本発明によるエピテーゼを製作する患者の一例を表す正面図である。
【図3】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ2)を表す図である。
【図4】(a)は、本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ3)を表す図、(b)は(a)のb−b線に沿って見た拡大断面図である。
【図5】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ4)を表す図である。
【図6】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ4)を表す図である。
【図7】(a)は、本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ5)を表す図、(b)は(a)のb−b線に沿って見た拡大断面図である。
【図8】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ6)を表す図である。
【図9】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ6)を表す図である。
【図10】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図11】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図12】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図13】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ7)を表す図である。
【図14】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ8)を表す図である。
【図15】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ9)を表す図である。
【図16】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ10)を表す図である。
【図17】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ11)を表す図であり、(a)はエピテーゼの平面図、(b)は(a)のb−b断面図である。
【図18】本発明によるエピテーゼの製作方法の手順(ステップ12)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明によるエピテーゼの製作方法の手順を表しており、この手順に従い、本発明の製作方法を説明する。
【0020】
まず、ステップ1において、図2に示すような目の部分の顔面欠損部12を有する患者10に対して、アルジネート印象材などの印象材を用いて顔面欠損部を含む顔面の印象を取る。
【0021】
次いで、ステップ2において、得られた印象から歯科用石膏を用いて欠損模型20を作る(図3)。この手順は、従来から公知の手法によって、行うことができる。
【0022】
次いで、ステップ3において、欠損模型20からその欠損部22とその周囲10mm位を合成樹脂シートで加熱圧接し、補強用フレーム24を作る(図4)。合成樹脂シートとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の任意の合成樹脂からなるシートとすることができる。
【0023】
次いで、ステップ4において、補強用フレーム24を患者に装着し(図5)、紙粘土、ワックス等の充填材料26を補強用フレーム24の陥凹部24aに填入し、顔貌形態に合わせて指先で大体の形態を整える(図6)。
【0024】
ステップ5において、これを欠損模型20に戻して、顔面形態の模型を作り、この模型上で、合成樹脂シートによって顔面形態板28を作る(図7)。合成樹脂シートとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の任意の合成樹脂からなるシートとすることができる。
【0025】
ステップ6において、充填材料26を取り除き、補強用フレーム24と顔面形態板28とを即時重合レジン等を用いて接着して、顔面形態支持フレーム30を作る(図8、図9)。尚、補強用フレーム24の陥凹部の中央部に開口24bを開けてもよい。
【0026】
次に、ステップ7において、患者の顔面をデジタルカメラで撮像するなどして得られた画像データをコンピュータに取り込み(図10)、コンピュータ40のモニター42で、健常側の目を含む範囲を指定して(図11)、欠損部に反転して重ね合わせる(図12)。そして、反転像の色調を整えて、頬骨と耳介付近の辺境部の皮膚色を延長して欠損部画像を作る。また、必要に応じて、欠損部でない部分、例えば鼻の部分の画像を除去する(図13)。
【0027】
次に、ステップ8において、市販のアイロン転写紙といった熱転写シート32を用意し、これに前ステップで用意した欠損部画像をプリンター46で印刷する(図14)。
【0028】
そして、ステップ9において、印刷後の熱転写シート32をアイロン50等を用いてポリエステル等のプラスチックシート、布、紙等に熱圧着して顔面形態シート34を作製する(図15)。顔面形態シート34は、好ましくは、伸展性を備えるものとするとよい。また、任意には、熱転写シート32を用いずに、直接、伸展性シートにステップ7で用意した画像を印刷して顔面形態シートとしてもよい。好ましくは、印刷は防水性インクを用いて行うとよい。
【0029】
次に、ステップ10において、前記顔面形態支持フレーム30を患者の顔面欠損部12に装着し、その顔面形態板28に前記画像が転写された顔面形態シート34を試適する(図16)。顔面の色調や眼球の大きさなどの調和が良好であれば、顔面形態シート34を顔面形態板に仮止めし、次いで、ステップ11において、顔面形態シート34を、顔面形態支持フレーム30に接着して、顔面形態シート34の余分の部分を切り取り、エピテーゼ36を作る(図17)。
【0030】
最後にステップ12において、微調整を行い、エピテーゼ36の辺境部に顔面部の凹凸に合うように切り込み38を入れて、顔面部の表面の湾曲に形態を合わせて、エピテーゼが完成する(図18)。
【0031】
以上の工程で製作されたエピテーゼは、合成樹脂からなる顔面形態支持フレーム30と顔面形態シート34によって主として構成されるため、従来に比べて軽量である。例えば、従来のシリコーンで製作されたエピテーゼでは、50g以上の質量となるのに対して、10g程度の質量とすることができる。そのため、エピテーゼの顔面への保持は、医療用接着剤を用いた接着などの簡単な手段によって確実に行うことができ、その装着感も良好であり、エピテーゼを装着したままでの、入浴、洗顔、洗髪を行うことができ、生活の質も向上させることができる。
【0032】
患者の健常側の画像を左右反転して印刷することによって得られる顔面形態シート34を用いるために、植毛や着色の作業が不要であり、熟練を必要とせずに、簡単に且つ迅速に製作することができる。調整を行う場合には、コンピュータ40上で行うことができる。画像データは、記録媒体に保存しておくことができるから、いつでも読み出して、交換用エピテーゼのために使うことができる。
【0033】
術後すぐにエピテーゼを製作することができるために、術後の外界からの患部の保護にもガーゼ代わりに使用することができて、感染防止、異物混入防止を行うことができ、術後の生活の質も向上させることができる。
【0034】
また、製作されるエピテーゼに必要な材料は、基本的に合成樹脂シート、熱転写シート、顔面形態シートであるため、材料費が安価であり、製作技術も簡単であるため、製作費も安価とすることができる。
【0035】
以上の例では、顔面形態支持フレームの作製後に、患者の画像データの取り込み、熱転写シートへの印刷を行ったが、これに限るものではなく、患者の画像データの取り込み、熱転写シートへの印刷は、顔面形態支持フレームを作る前に予め行ってもよい。
【0036】
また、以上の例では、目を含む顔面欠損部であったので画像の左右反転を行ったが、頬など左右反転を行う必要はない部位の場合には、反転を行わずに健常部位の画像を用いることとしてもよい。
【0037】
また、患者の顔面の撮像は、エピテーゼを作る際ではなく、以前に行ってもよく、または、過去の手術前に撮像して得られた画像データを用いてもよい。この場合には、顔面欠損部に該当する健常時の画像データをそのまま利用してもよい。特に、顔面欠損部が左右両側にわたる場合などは、手術前に撮像して得られた画像データを利用することが有効である。また、画像データは、患者自身の顔面の撮像によって得られるものとするのが好ましいが、顔面欠損部が大きく、且つ、手術前の画像データが入手できない場合には、患者以外の人間の顔面の画像データを用いてもよい。
【0038】
また、以上の例では、顔面形態支持フレーム36を補強用フレーム24と顔面形態板28とから構成していたが、これに限るものではなく、欠損部の深さが浅い場合には、補強用フレーム24を省略して、顔面形態板28のみから顔面形態支持フレーム36を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 患者
12 欠損部
20 欠損模型
22 欠損部
24 補強用フレーム
26 充填材料
28 顔面形態板
30 顔面形態支持フレーム
32 熱転写シート
34 顔面形態シート
36 エピテーゼ
40 コンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顔面欠損部の補綴を行うエピテーゼの製作方法であって、
患者の顔面欠損部を含む欠損模型を作製する工程と、
欠損模型から欠損部とその周囲部に合成樹脂シートを加熱圧接して顔面形態支持フレームを作製する工程と、
顔面画像データをコンピュータに取り込み、顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程と、
選択された欠損部画像をシートに印刷して顔面形態シートを作製する工程と、
顔面形態シートを前記顔面形態支持フレームに接着してエピテーゼとする工程と、
を備えるエピテーゼの製作方法。
【請求項2】
前記顔面形態支持フレームを作製する工程は、
合成樹脂シートを用いて欠損部に沿って補強用フレームを作製する工程と、
補強用フレームを患者の欠損部に戻して、充填材料を陥凹部に填入する工程と、
これを欠損模型に戻して、顔面形態の模型を作り、この模型上で、合成樹脂シートによって顔面形態板を作る工程と、
充填材料を除去して、補強用フレームと顔面形態板とを接着して、顔面形態支持フレームとする工程と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のエピテーゼの製作方法。
【請求項3】
前記顔面形態シートを作製する工程は、
選択された欠損部画像を熱転写シートに印刷する工程と、
印刷した熱転写シートを伸展性シートに転写する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載のエピテーゼの製作方法。
【請求項4】
前記顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程は、
患者の顔面画像のうちの健常側にあって欠損部の左右対称の部位を反転させて、欠損部画像とする工程を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエピテーゼの製作方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法によって製作されたエピテーゼ。
【請求項1】
患者の顔面欠損部の補綴を行うエピテーゼの製作方法であって、
患者の顔面欠損部を含む欠損模型を作製する工程と、
欠損模型から欠損部とその周囲部に合成樹脂シートを加熱圧接して顔面形態支持フレームを作製する工程と、
顔面画像データをコンピュータに取り込み、顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程と、
選択された欠損部画像をシートに印刷して顔面形態シートを作製する工程と、
顔面形態シートを前記顔面形態支持フレームに接着してエピテーゼとする工程と、
を備えるエピテーゼの製作方法。
【請求項2】
前記顔面形態支持フレームを作製する工程は、
合成樹脂シートを用いて欠損部に沿って補強用フレームを作製する工程と、
補強用フレームを患者の欠損部に戻して、充填材料を陥凹部に填入する工程と、
これを欠損模型に戻して、顔面形態の模型を作り、この模型上で、合成樹脂シートによって顔面形態板を作る工程と、
充填材料を除去して、補強用フレームと顔面形態板とを接着して、顔面形態支持フレームとする工程と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のエピテーゼの製作方法。
【請求項3】
前記顔面形態シートを作製する工程は、
選択された欠損部画像を熱転写シートに印刷する工程と、
印刷した熱転写シートを伸展性シートに転写する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載のエピテーゼの製作方法。
【請求項4】
前記顔面画像の欠損部に対応する部位を欠損部画像として選択する工程は、
患者の顔面画像のうちの健常側にあって欠損部の左右対称の部位を反転させて、欠損部画像とする工程を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエピテーゼの製作方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法によって製作されたエピテーゼ。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−87642(P2011−87642A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241610(P2009−241610)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(509290854)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(509290854)
【Fターム(参考)】
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