説明

エポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物

【課題】
低い加熱温度で良好な硬化塗膜を形成でき、貯蔵安定性にも優れるエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物を提供する。
【解決手段】
エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、並びに、多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化剤及び/又は硬化促進剤をゲスト化合物とする包接化合物を含有することを特徴とするエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、並びに硬化剤及び/又は硬化促進剤をゲスト化合物とする包接化合物を含有してなるエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電製品や建材、自動車部品等の塗装に粉体塗料を用いる塗装方法が知られている。粉体塗料は、従来の溶剤型塗料と比較して、溶剤を使用しないため環境に優しいこと、塗膜を乾燥する工程が不要なこと、回収粉体の再使用により塗料コストを低減することが可能なこと、並びに機械強度、耐薬品性、耐蝕性及び耐候性等に優れる硬化塗膜が得られること等から、近年需要が増大している。
【0003】
粉体塗料としては、例えば、エポキシ系粉体塗料、ポリエステル系粉体塗料、アクリル系粉体塗料、エポキシ・ポリエステル系粉体塗料等が挙げられる。なかでも、エポキシ・ポリエステル系粉体塗料は、耐蝕性と意匠性に優れる艶消し状の硬化塗膜を得ることができることから、スチール製家具や家電製品等の装飾用の塗装に多用されている。
【0004】
このエポキシ・ポリエステル系粉体塗料を使用して塗装を行う場合においては、良好な硬化塗膜を得るためには硬化温度を高く設定しなければならない。そのため、被塗物が金属等の耐熱性の高いものに限られていた。そこで、近年、アルキルイミダゾール化合物等の高活性な硬化剤を使用して、低い硬化温度で硬化塗膜を得る方法が提案されている(特許文献1、2)。しかし、高活性な硬化剤を含有する粉体塗料は、貯蔵時においても粉体塗料の硬化反応が徐々に進行し、粉体塗料の貯蔵安定性が悪くなる場合があり問題となっていた。したがって、低い硬化温度で良好な硬化塗膜を得ることができ、かつ貯蔵安定性に優れるエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物の開発が要望されている。
【0005】
本発明に関連して、特許文献3、4には、エポキシ樹脂に、テトラキスフェノール化合物をホスト化合物とし、硬化剤及び/又は触媒をゲスト化合物とする包接化合物を添加してなるエポキシ塗料が提案されている。
しかしながら、特許文献3及び4のいずれの文献においても、エポキシ・ポリエステル系粉体塗料については具体的に記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−60681号公報
【特許文献2】特開2002−235032号公報
【特許文献3】特開平10−324826号公報
【特許文献4】特開平11−071449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、低い加熱温度で良好な硬化塗膜を形成でき、貯蔵安定性に優れるエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究をした結果、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及び下記の式(1)で示されるテトラキスフェノール化合物をホスト化合物とし、硬化剤又は硬化促進剤をゲスト化合物とする包接化合物を含有する粉体塗料組成物が、低い加熱温度で良好な硬化塗膜を形成でき、しかも貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、(1)エポキシ樹脂、(2)ポリエステル樹脂、及び(3)多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化剤をゲスト化合物とする包接化合物(a)を含有することを特徴とするエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物が提供される。
【0010】
本発明の第1の粉体塗料組成物においては、前記多分子系ホスト化合物が、分子内に、2個以上の水酸基及び2個以上の芳香族基を有する化合物であることが好ましく、式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、Xは、(CH(nは、0〜3の整数を表す。)、又は置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。〕で示されるテトラキスフェノール化合物であることがより好ましい。
本発明の第1の粉体塗料組成物においては、硬化促進剤をさらに含有することが好ましい。
【0013】
本発明の第2によれば、(1)エポキシ樹脂、(2)ポリエステル樹脂、及び(4)多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化促進剤をゲスト化合物とする包接化合物(b)を含有することを特徴とする粉体塗料組成物が提供される。
【0014】
本発明の第2の粉体塗料組成物においては、前記多分子系ホスト化合物が、分子内に、2個以上の水酸基及び2個以上の芳香族基を有する化合物であることが好ましく、前記式(I)で示されるテトラキスフェノール化合物であることがより好ましい。
本発明の第2の粉体塗料組成物においては、硬化剤をさらに含有することが好ましい。
本発明の第1及び/又は第2の粉体塗料組成物においては、前記包接化合物を、エポキシ樹脂のエポキシ環1モルに対して0.001〜0.1モル含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物は、低い加熱温度で良好な硬化塗膜を形成でき、しかも貯蔵安定性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物について、詳細に説明する。
1)エポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物
本発明のエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物は、次の2種類である。
第1の発明の粉体塗料組成物は、(1)エポキシ樹脂、(2)ポリエステル樹脂、及び(3)多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化剤をゲスト化合物とする包接化合物(a)を含有してなることを特徴とするものであり、第2の発明の粉体塗料組成物は、(1)エポキシ樹脂、(2)ポリエステル樹脂、及び(4)多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化促進剤をゲスト化合物とする包接化合物(b)を含有してなることを特徴とするものである。
【0017】
(1)エポキシ樹脂
本発明の粉体塗料組成物に用いるエポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するものであれば、特に制限されない。例えば、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン樹脂、多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
(2)ポリエステル樹脂
本発明の粉体塗料組成物に用いるポリエステル樹脂としては、主鎖にエステル結合を有する高分子であれば、特に制限されない。
【0019】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリアルキレンナフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール等のグリコール類と、テレフタル酸又はテレフタル酸エステルとを、塩基触媒又は酸触媒の存在下に重縮合させて得ることができる。その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0021】
ポリアルキレンナフタレート樹脂は、前記グリコール類と、1,8−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸又はナフタレンジカルボン酸エステルとを、塩基触媒又は酸触媒の存在下に重縮合させて得ることができる。その具体例としては、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0022】
不飽和ポリエステル樹脂は、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、又は無水フタル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物と、グリコール類とを反応させることにより得られる樹脂である。
【0023】
アルキド樹脂は、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、トリメチロールエタン等のポリオール類、パルミチン酸等の高級脂肪酸、及びフタル酸、マレイン酸等の二塩基酸、もしくは無水フタル酸、無水マレイン酸等の二塩基酸無水物の三者を縮合させて得られる樹脂である。その具体例としてはグリプタル樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の粉体塗料組成物において、ポリエステル樹脂の配合量は、エポキシ樹脂100重両部に対して、通常1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜100重量部である。
【0025】
(3)包接化合物(a)
本発明の粉体塗料組成物に用いる包接化合物(a)は、多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化剤をゲスト化合物とする包接化合物である。
(i)多分子系ホスト化合物
本発明に用いる多分子系ホスト化合物は、複数の分子が水素結合等を介して集合して内部空間を有する結晶を形成し、この形成された空間内に、ゲスト化合物を包接することができる化合物である。
【0026】
本発明に用いる多分子系ホスト化合物としては、このような性質を有する化合物であれば特に制限されない。
例えば、フェノール、o−クロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール等の、分子内に1つの芳香族基と1つのヒドロキシル基を有する化合物;
t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等の、分子内に1つの芳香族基と2つのヒドロキシル基を有する化合物;
【0027】
α,α,α’,α’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジメタノール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、5,5’−メチレンジサリチル酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、2,5−ビス(2,4−ジメチルフェニル)ヒドロキノン、1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール、1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール、1,1,6,6−テトラキス(2,4−ジメチルフェニル)−2,4−へキサジイン−1,6−ジオール、9,9’−ビアントラセン、9,10−ビス(4−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール、9,10−ジフェニル−9,10−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール、1,1−ビス−2−ナフトール;
【0028】
4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−3−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−3−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメチルベンゾフェノン、
【0029】
2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,2,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,3,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−3,3’−ジクロロベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−3,3’−ジメトキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン化合物;前記式(I)で示されるテトラキスフェノール化合物;等の、分子内に2以上の芳香族基と2以上のヒドロキシル基を有する化合物;並びに、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]−オクタン、顆粒状コーンスターチ(ポーラスY−20)、5,5−ジメチルヒダントイン、N−フェニルマレイミド、9,9’−ビアントラセン等の他の多分子系ホスト化合物;等が挙げられる。
これらの多分子系ホスト化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
これらの中でも、低温で良好な硬化塗膜を形成でき、貯蔵安定性に優れるエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物が得られることから、分子内に2以上の芳香族基と2位以上のヒドロキシル基を有する化合物が好ましく、ヒドロキシベンゾフェノン化合物及び前記式(I)で示されるテトラキスフェノール化合物がより好ましく、前記式(I)で表されるテトラキスフェノール化合物が特に好ましい。
【0031】
前記式(I)中、Xは、(CH、又は置換基を有していてもよいフェニレン基を表す。
nは、0〜3の整数を表し、0であるのが好ましい。
フェニレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、及びo−フェニレン基のいずれでもよいが、p−フェニレン基が好ましい。
置換基を有していてもよいフェニレン基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられ、置換基を有さないのが好ましい。
【0032】
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;フェニル基、2−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;又は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシル基を表す。
【0033】
前記式(I)で示される化合物の具体例としては、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス[(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル]エタン、
【0034】
1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
【0035】
1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン;
【0036】
α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−o−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−m−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−m−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−m−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−m−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−o−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−o−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−o−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)−o−キシレン、
【0037】
α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−ヨ−ドフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エトキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−イソプロポキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−t−ブトキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α',α’−テトラキス(3−ヒドロキシ−4−クロロフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−ヒドロキシ−4−ブロモフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−ヒドロキシ−4−ヨ−ドフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α'、α’−テトラキス(3−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(2−ヒドロキシ−4−クロロフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−クロロ−5−メチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−3−クロロ−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−p−キシレン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α’,α−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α’,α’−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α’,α’−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−α’−3−クロロフェニル−p−キシレン、α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−α’−3−メチルフェニル−p−キシレン、α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−α’−3−メトキシフェニル−p−キシレン;等が挙げられる。
【0038】
(ii)硬化剤及び硬化促進剤
本発明において用いられるエポキシ基と反応してエポキシ樹脂を硬化させる化合物(硬化剤)、およびエポキシ基と反応してエポキシ樹脂を硬化させる化合物の硬化速度を進める化合物(硬化促進剤)としては、特に制限はなく、従来のエポキシ樹脂の硬化剤、硬化促進剤として慣用されているものの中から任意のものを選択して使用できる。例えば、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、アミド系化合物、エステル系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、チオエーテル系化合物、尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物、リン系化合物、酸無水物系化合物、オニウム塩系化合物、活性珪素化合物−アルミニウム錯体、等が挙げられる。
【0039】
アミン系化合物としては、例えば脂肪族アミン類、脂環式及び複素環式アミン類、芳香族アミン類、変性アミン類などが用いられる。
脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、アルキル−t−モノアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、ジメチルアミノヘキサノールなどが挙げられる。
【0040】
脂環式及び複素環式アミン類としては、ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ(4,5,0)ウンデセン−7などが挙げられる。
【0041】
芳香族アミン類としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m−キシレンジアミン、ピリジン、ピコリンなどが挙げられる。
変性アミン類としては、エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体などが挙げられる。
【0042】
イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル−)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−イミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどを挙げることができる。
【0043】
イミダゾリン系化合物としては2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンなどを挙げることができる。
アミド系化合物としては、例えばダイマー酸とポリアミンとの縮合により得られるポリアミドなどが挙げられる。
エステル系化合物としては、例えばカルボン酸のアリール及びチオアリールエステルのような活性カルボニル化合物が挙げられる。
【0044】
フェノール系化合物、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、及びチオエーテル系化合物としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ポリオール、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2−(ジメチルアミノメチルフェノール)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキシル塩酸塩などが挙げられる。
尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物としては、ブチル化尿素、ブチル化メラミン、ブチル化チオ尿素、三フッ化ホウ素などが挙げられる。
【0045】
リン系化合物としては、有機ホスフィン化合物、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン、ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン等の第3ホスフィン;等が挙げられる。
【0046】
酸無水物系化合物としては、例えば無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラメチレン無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水クロレンド酸、無水ピロメリット酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
【0047】
また、オニウム塩系化合物、及び活性珪素化合物−アルミニウム錯体としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリフェニルシラノール−アルミニウム錯体、トリフェニルメトキシシラン−アルミニウム錯体、シリルペルオキシド−アルミニウム錯体、トリフェニルシラノール−トリス(サリシルアルデヒダート)アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0048】
硬化剤、硬化促進剤とテトラキスフェノール系化合物との包接化合物は、例えば、硬化剤、硬化促進剤であるアミン系、イミダゾール系などの化合物が液体の場合には、テトラキスフェノール系化合物を、該液体に直接加えて反応させることにより、硬化剤、硬化促進剤の化合物が固体の場合には、テトラキスフェノール系化合物を、それら化合物の含有液中に入れて反応させることにより、又は固体である化合物と粉末のテトラキスフェノール系化合物とを直接に固相反応させることにより、高選択率及び高収率で合成することができる。
【0049】
本発明の包接化合物は、ホスト分子の作る結晶格子空孔内にゲスト分子が入り込むことにより生成する。従って、どの化合物がゲストとして取り込まれやすいか否かは、ゲスト分子の大きさ、立体、極性、溶解度などに支配される。生成した包接化合物は、結晶性の固体である。
【0050】
反応終了後は、通常の分離手段により目的とする包接化合物を単離することができる。
得られる包接化合物の構造は、NMR、IRスペクトル、マススペクトル等公知の分析手段により確認することができる。
【0051】
本発明に用いる包接化合物の50%体積平均粒子径は、特に限定されないが、通常約0.01〜80μm、好ましくは約0.01〜10μm、より好ましくは約0.1〜4μmの範囲である。体積平均粒子径が約0.01μm未満の包接化合物を製造することはそれ自体の生産性が悪くなるため好ましくない。一方、体積平均粒子径が約80μmを越えるものは低温硬化性、塗膜外観等が悪くなるので好ましくない。
なお、50%体積平均粒子径は、粉体の集団の体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる粒子径μmを表したものである。
【0052】
2)粉体塗料組成物の製造
本発明の第1の粉体塗料組成物は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、並びに包接化合物(a)、所望により、硬化剤又は硬化促進剤、及びその他の添加剤の所定量からなる混合物を、例えば、ニーダーや押出し機等を使用して、増粘、ゲル化の起らない温度、時間条件で溶融、混練し、冷却後、粉砕し、分級機にかけることにより製造することができる。また本発明の第2の粉体塗料組成物は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、並びに包接化合物(b)、所望により、硬化剤又は硬化促進剤、及びその他の添加剤の所定量からなる混合物を、例えば、ニーダーや押出し機等を使用して、増粘、ゲル化の起らない温度、時間条件で溶融、混練し、冷却後、粉砕し、分級機にかけることにより製造することができる。
【0053】
使用する包接化合物の量は、包接するアミン系,イミダゾール系などの通常の硬化剤、硬化促進剤と同様な使用量でよく、硬化方法による。エポキシ基と反応する事によって、硬化した樹脂中に必ず硬化剤分子が組み込まれる付加型硬化剤の場合には、求められる樹脂の性質にもよるが、通常エポキシ基1モルに対して包接している硬化剤が0.3〜1.0モル程度になるよう包接化合物を使用する。また、硬化剤分子が樹脂中に組み込まれることなく触媒的にエポキシ基の開環を誘発し、オリゴマー間の重合付加反応を起こす重合型硬化剤や光開始型硬化剤の場合、また硬化促進剤として使用する場合などでは、エポキシ基1モルに対して包接化合物は0.2モル以下で十分である。特に本発明ではテトラキスフェノール系化合物を用いた包接化合物を用いることにより、微量でも十分であり、0.001〜0.1モル、さらには0.001〜0.05モルの使用量でよい。これらの包接化合物は1種または2種以上を混合して使用できる。
【0054】
本発明の第1の粉体塗料組成物においては、硬化促進剤をさらに添加するのが好ましく、第2の粉体塗料組成物においては、硬化剤をさらに添加するのが好ましい。
ここで用いる硬化剤及び硬化促進剤は、前記硬化剤および硬化促進剤として列記したものと同様のものを使用することができる。
【0055】
本発明の粉体塗料組成物には、所望によりその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、可塑剤、反応性希釈剤、増量剤、充填剤、補強剤、着色剤、難燃化剤、増粘剤及び離型剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は、特に限定されず、本発明の効果が得られる限度において、配合量を適宜決定することができる。
【0056】
さらに、本発明の第1及び/又は第2の粉体塗料組成物においては、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のほかに他の樹脂を含有していてもよい。他の樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0057】
本発明の粉体塗料組成物の塗装は、公知の塗装方法により行うことができる。
例えば、静電粉体塗装法、無荷電粉体塗装法、摩擦帯電粉体塗装法、流動浸漬法等が挙げられる。いずれの塗装法においても、本発明の粉体塗料組成物を使用する場合には、低い加熱温度で良好な硬化塗膜を形成することができる。
【0058】
本発明の粉体塗料組成物は、長期にわたって保存する場合であっても殆ど硬化反応が進行しないものであり、貯蔵安定性に優れている。
【0059】
本発明の粉体塗料組成物は、基材に塗装後、硬化剤及び/又は硬化促進剤のゲスト成分が加熱されることによりホスト成分からすばやく放出され、放出された硬化剤と、エポキシ樹脂及び/又はポリエステル樹脂とが架橋反応するか、もしくは放出された硬化促進剤が、硬化剤と、エポキシ樹脂及び/又はポリエステル樹脂との硬化反応を促進する触媒として作用することにより硬化塗膜を形成することができる。
【0060】
得られる塗膜の厚みは特に限定されないが、通常、約40〜200μm、好ましくは約50〜100μmの範囲である。
塗膜を加熱することで、包接化合物に包接されている硬化剤及び/又は硬化促進剤が放出され、硬化反応が進行することで硬化膜を形成することができる。
【0061】
また、本発明の粉体塗料組成物によれば、イミダゾール基含有硬化剤を包接しない場合に比して、硬化膜を形成する温度は高く設定する必要があるものの、従来の高温硬化型の硬化剤に比較して低温で硬化膜を形成することができる。従って、耐熱性に乏しい基材であっても、本発明の粉体塗料組成物を塗装し、良好な硬化塗膜を形成することができる。
硬化膜を得るための加熱温度は、特に限定されず、硬化剤や硬化促進剤のゲストの種類やホストとの配合割合によって、その最適条件を適宜決定して選択すればよい。加熱温度(硬化温度)は、通常20〜300℃、好ましくは50〜200℃である。
【0062】
本発明の粉体塗料組成物は、紙、プラスチック、金属、及びこれらの組み合わせ等の基材の表面塗装や、家電製品、建材、自動車部品等の分野における塗料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0063】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
製造例1 包接化合物Aの製造
還流管付きの容器に2−メチルイミダゾール(18g、0.22mol)と酢酸エチル200mlを入れ、これにTEP(39.8g、0.1mol)を加え、還流温度で1分から24時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温に戻し、析出結晶を濾取し、室温から120℃で減圧乾燥し、包接化合物Aを得た。収率90%
包接化合物Aは、TEPをホスト化合物とし、2−メチルイミダゾール(2MeIm)をゲスト化合物とするものであり、モル比は、TEP:2−MeIm=1:2であった。
【0065】
製造例2 包接化合物Bの製造
還流管付きの容器にTEP(39.8g、0.1mol)とメタノール200mlとを加え、還流温度に加熱した。そこへ、2−エチル−4−メチルイミダゾール(24.2g、0.22mol)のメタノール50ml溶液を滴下した。反応容器内のスラリーは一旦溶解後、結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、析出結晶を濾取し、室温から120℃で減圧乾燥し、包接化合物Bを得た。収率80%
包接化合物Bは、TEPをホスト化合物とし、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2Et−4−MeIm)をゲスト化合物とするものであり、モル比は、TEP:2Et−4−MeIm=1:2であった。
【0066】
実施例1 粉体塗料組成物1の製造
エポキシ樹脂(商品名:エピクロン2050、大日本インキ化学工業(株)製)55重量部、ポリエステル樹脂(商品名:ファインディックM8830、大日本インキ化学工業(株)製)45重量部に、2−メチルイミダゾール換算で4.0重量部の包接化合物Aを添加した。25℃で10分間混練することにより、粉体塗料組成物1を得た。
【0067】
比較例1 粉体塗料組成物2の製造
実施例1において、包接化合物Aの代わりに、2−メチルイミダゾール4重量部を使用した他は、実施例1と同様にして粉体塗料組成物2を得た。
【0068】
実施例2 粉体塗料組成物3の製造
実施例1において、包接化合物Aの代わりに、2−エチル−4−メチルイミダゾール換算で4重量部の包接化合物Bを使用した他は実施例1と同様にして粉体塗料組成物3を得た。
【0069】
比較例2 粉体塗料組成物4の製造
実施例2において、包接化合物Bの代わりに、2−エチル−4−メチルイミダゾール4重量部を使用して実施例2と同様にして粉体塗料組成物4を得た。
【0070】
(粉体塗料組成物1〜4のDSC測定)
得られた粉体塗料組成物1〜4の一部をそれぞれ採取し、示差走査熱量計(DSC、メーカー名、型式)を使用して、30ミリリットル/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で樹脂組成物1の硬化反応に基づく発熱を測定した。
【0071】
粉体塗料組成物1のDSCチャートを図1に示す。図1中、横軸は測定温度(℃)、縦軸は発熱量(Heat Flow/mW)をそれぞれ示す(以下、図2〜4にて同じである。)。
図1から、粉体塗料組成物1の硬化開始温度は99.3℃であり、反応熱のピークは148.3℃であった。
粉体塗料組成物2のDSC測定を実施例1と同様に行った。粉体塗料組成物2のDSCチャートを図2に示す。
図2から、粉体塗料組成物2の硬化開始温度は73.3℃であり、反応熱のピークは114.9℃であった。
粉体塗料組成物3のDSC測定を実施例1と同様に行った。粉体塗料組成物3のDSCチャートを図3に示す。
【0072】
図3から、粉体塗料組成物3の硬化開始温度は113.2℃であり、反応熱のピークは156.8℃であった。
粉体塗料組成物4を実施例1と同様にDSCの測定を行った。粉体塗料組成物4のDSCチャートを図4に示す。
また、図4から、粉体塗料組成物4の硬化開始温度は72.3℃であり、反応熱のピークは138.1℃であった。
【0073】
図1と図2から、2−メチルイミダゾールを包接した化合物を含む実施例1の粉体塗料組成物では、100℃から170℃にかけて連続的な発熱が認められる。一方、包接化合物を含まない比較例1の粉体塗料組成物では、80℃から170℃にかけて連続的な発熱が認められた。すなわち、実施例1の粉体塗料組成物は、比較例1の粉体塗料組成物と比して,硬化反応の開始温度が高くなっているが、硬化温度の上限はほぼ同じであることがわかる。
【0074】
図3と図4から、2−エチル−4−メチルイミダゾールを包接した化合物を含む実施例2の粉体塗料組成物では、110℃から180℃にかけて連続的な発熱が認められる。一方、包接化合物を含まない比較例2の粉体塗料組成物では、80℃から180℃にかけて連続的な発熱が認められた。すなわち、実施例2の粉体塗料組成物は、比較例2の粉体塗料組成物と比して、硬化反応の開始温度及び硬化温度の上限はともに高くなっているが、硬化温度範囲が狭くなっていることがわかる。
【0075】
(粉体塗料組成物の貯蔵安定性試験)
上記で得た粉体塗料組成物1〜4を、40℃で7日間、1ヶ月間貯蔵したものを静電粉体塗装機(膜厚80ミクロン)により塗膜を120℃で20分間加熱した(焼き付けた)。得られた塗膜表面の平滑性、光沢を目視で観察して貯蔵前の塗膜と比較して、平滑性、光沢が初期と同じものを○、平滑性、光沢がやや劣るものを△、平滑性、光沢が著しく劣るものを×とした。また、粉体塗料の製造中に増粘、ゲル化したものは××とした。結果を第1表に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
第1表から、実施例1及び2の粉体塗料組成物は、40℃で7日間及び1ヶ月間貯蔵した場合であっても、平滑性及び光沢に優れる硬化塗膜を形成できるものであった。それに比して、比較例1および2の粉体塗料組成物は、40℃で7日間及び1ヶ月間貯蔵した後においては、平滑性及び光沢に劣る硬化塗膜が得られ、実施例1、2の粉体塗料組成物に比して貯蔵安定性に劣ることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】粉体塗料組成物1のDSCチャートを示す図である。
【図2】粉体塗料組成物2のDSCチャートを示す図である。
【図3】粉体塗料組成物3のDSCチャートを示す図である。
【図4】粉体塗料組成物4のDSCチャートを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及び多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化剤をゲスト化合物とする包接化合物(a)を含有することを特徴とするエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物。
【請求項2】
前記多分子系ホスト化合物が、分子内に、2個以上の水酸基及び2個以上の芳香族基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の粉体塗料組成物。
【請求項3】
前記多分子系ホスト化合物が、式(I)
【化1】

〔式中、Xは、(CH(nは、0〜3の整数を表す。)、又は置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。〕で示されるテトラキスフェノール化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗料組成物。
【請求項4】
硬化促進剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体塗料組成物。
【請求項5】
前記包接化合物(a)を、エポキシ樹脂のエポキシ環1モルに対して0.001〜0.1モル含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉体塗料組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及び多分子系ホスト化合物をホスト化合物とし、硬化促進剤をゲスト化合物とする包接化合物(b)を含有することを特徴とするエポキシ・ポリエステル系粉体塗料組成物。
【請求項7】
前記多分子系ホスト化合物が、分子内に、2個以上の水酸基及び2個以上の芳香族基を有する化合物であることを特徴とする請求項6に記載の粉体塗料組成物。
【請求項8】
前記多分子系ホスト化合物が、式(I)
【化2】

〔式中、Xは、(CH(nは、0〜3の整数を表す。)、又は置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。〕で示されるテトラキスフェノール化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載の粉体塗料組成物。
【請求項9】
硬化剤をさらに含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の粉体塗料組成物。
【請求項10】
前記包接化合物(b)を、エポキシ樹脂のエポキシ環1モルに対して0.001〜0.1モル含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の粉体塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−16542(P2006−16542A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197110(P2004−197110)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】