説明

エポキシ接着剤組成物

本発明は、a)第一のエポキシ樹脂、b)1,3−ジエン及び極性エチレン性不飽和コモノマーをベースにするコポリマーで変性された第二のエポキシ樹脂、c)強化剤並びにd)ポリエステルセグメントを含むポリマー(このポリマーは、室温で少なくとも部分的に結晶性であり、そして40℃〜125℃の範囲内の軟化温度を有する)を含むエポキシ接着剤組成物に関する。本発明は、更に、エポキシ接着剤組成物の予備硬化無しに、車両の部品を接合するためのエポキシ接着剤組成物の使用及びその部品がこのエポキシ接着剤組成物によって接合されている車両に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のエポキシ接着剤組成物、請求項15に記載の車両の部品を接合するためのエポキシ接着剤組成物の使用及び請求項16に記載の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ接着剤組成物はエポキシ樹脂、硬化剤及び通常促進剤を含む反応接着剤組成物である。熱活性化させると、エポキシ樹脂のエポキシ基が硬化剤と反応して、重付加反応によってエポキシ樹脂化合物を結合して、硬化生成物を得る。
【0003】
このような硬化生成物は、他の反応接着剤の硬化生成物よりも優れた、良好な機械的特性及び耐食性を有することが知られている。これらの特徴は、エポキシ接着剤組成物を、例えば自動車工業に於いて、厳格な機械的必要条件が満足されなくてはならない厳しい用途のために、特に有用にする。車両、例えば乗用車、トラック、バス又は列車の車体構造の部品を接合するための接着剤は構造接着剤と呼ばれている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載されている技術に基づく構造エポキシ接着剤は、それらの硬化生成物の優れた静的及び動的強度のために、車両の部品を接合するために非常に適している。
【0005】
車両の製造工程に於いて、構造接着剤が適用されるボディ−イン−ホワイト(body-in-white)構造は、スプレー洗浄又は他のクリーニングに付され、続いてリン酸塩処理及びイー−コーディング(e-coating)に、その後e−コートオーブン内の構造接着剤の最終硬化に付される。構造接着剤が洗浄除去されることを防止するために、これは一般的に、誘導予備硬化のような熱方法により又はボディ−イン−ホワイトオーブンを使用することにより、予備硬化される。
【0006】
しかしながら、このような追加の予備硬化工程は、製造工程を労力を要するようにする。更に、ボディ−イン−ホワイトオーブンは、非常に高価である。
【0007】
ボディ−イン−ホワイトオーブン内の又は誘導による予備硬化を回避するために、一つの選択は、構造接着剤組成物に固体エポキシ樹脂を添加し、それによって、高い基本粘度を有する構造接着剤を提供することである。このような構造接着剤は、一定の耐洗出性を有するが、適用することが困難である。その適用のために、十分に加熱された適用装置が必要である。特に、高い適用速度を必要とする高体積適用に於いてそれを使用することは、制限される。
【0008】
幾つかの構造エポキシ接着剤及び他の硬化性エポキシ樹脂系組成物が当該技術分野で公知である。
【0009】
特許文献3は、エポキシ基含有材料、熱可塑性ポリエステル及び硬化剤を含む構造接着剤に関する。この特許出願に記載されている課題は、構造接着剤の硬化の間の収縮を減少させることである。
【0010】
特許文献4は、液体エポキシ樹脂、熱可塑性ポリマー粉末、発泡剤、硬化剤及び充填材を含む熱硬化性組成物に関する。この熱硬化性組成物は、比較的低い温度で発泡しそして硬化する。
【0011】
特許文献5には、その末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂からなる構造エポキシ接着剤が記載されている。特許文献5の構造接着剤は、比較的良好な耐洗出性(wash-off resistance)を有するが、硬化後の動的強度が比較的劣っている。従って、これは、車両の耐衝突性の項目に於ける安全必要条件を完全には満たさない。
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 308 664号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 353 190号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 270 914号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第WO03/054069号明細書
【特許文献5】米国特許第5,194,502号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、適用温度でかなり低い基本粘度を有し、そして予備硬化させることなく、高い耐洗出性を有する、エポキシ接着剤組成物を提供することである。前記エポキシ接着剤組成物は、高い静的及び動的強度並びに良好な耐食性を有する硬化生成物になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のエポキシ接着剤組成物は、
a)第一のエポキシ樹脂、
b)1,3−ジエン及び極性エチレン性不飽和コモノマーをベースにするコポリマーで変性された第二のエポキシ樹脂、
c)式I:
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、mは1又は2であり、nは2〜6であり、R1は末端のイソシアネート、アミノ又はヒドロキシル基の除去後の、エラストマー性プレポリマーのn価の基であり(このエラストマー性プレポリマーは、エポキシ樹脂中に可溶性又は分散性である)、W及びXは、独立に、−O−又は−NR3−であり、W及びXの少なくとも1個は−NR3−であり、R2はフェノール性ヒドロキシル基及び、任意的にアミノ基、の除去後の、ポリフェノール又はアミノフェノールのm+1価の基であり、そしてR3は水素、C1〜C6アルキル又はフェノールである)
の化合物及び式II:
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、pは1又は2であり、qは2〜6であり、Yは−O−、−S−又は−NR6−であり、Zは−OH、−NHR6、−OCN、
【0019】
【化3】

【0020】
からなる群から選択された基であり、R4はヒドロキシル−、メルカプト−若しくはアミノ−末端停止ポリエーテルプレポリマー又はヒドロキシル−、メルカプト−若しくはアミノ−末端停止プレポリマー性セグメント化ポリエステル、ポリチオエステル若しくはポリアミドの残基であり、R5は芳香族環に直接結合された基Zを有する、炭素環式芳香族又は芳香脂肪族p+1価基であり、R6は水素、C1〜C6アルキル又はフェニルであり、そしてR7はメチル又は水素である)
の化合物並びにこれらの混合物からなる群から選択された強化剤並びに
d)ポリエステルセグメントを含むポリマー(このポリマーは、室温で少なくとも部分的に結晶性であり、そして40℃〜125℃の範囲内の軟化温度を有する)、
を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のエポキシ接着剤組成物は、その適用前に、40℃〜65℃の温度に加熱する。適用条件下でのその低い粘度のために、このエポキシ接着剤組成物は、高い適用速度を必要とする、高体積適用に於いても使用することができる。
【0022】
適用温度で、化合物d)は軟化し、そして適用後に冷却したときに、部分的結晶化によって再増粘して、当該技術分野で公知の構造接着剤に比較して、低い剪断歪みでの高い粘度及びより高いチキソトロピーを有する構造接着剤に至る。約0.001の低い剪断歪みで、固化したエポキシ接着剤組成物は、19000Pasよりも大きい高い粘度を有する。低い剪断歪みでのこの高い粘度のために、このエポキシ接着剤組成物は、予備硬化させることなく高い耐洗出性を有する。
【0023】
本発明のエポキシ接着剤組成物は、優れた構造接着剤の必要な特性、例えば良好な耐食性、高い機械的強度及び高い耐衝突性の全てを示す。従って、エポキシ接着剤組成物は、20〜30MPaの重ね剪断強度、室温で35N/mmよりも大きい衝撃剥離値、約30MPaの引張強度、約1500のヤング率及び10%よりも大きい破断時引張伸びを示す。
【0024】
一般的に、硬化したエポキシ接着剤組成物は、特許文献1及び特許文献2に記載されている技術に基づく構造接着剤よりも、一層明白な、機械的試験に於ける凝集結合破壊様式になる傾向がある。更に、油吸収が、参照した技術状態を超えて改良される。
【0025】
成分d)はポリエステル又はポリエステルセグメントを含むコポリマー、例えばポリウレタンポリエステルコポリマー若しくはポリエステルセグメントを含むエポキシ樹脂であってよい。好ましくは、エポキシ接着剤組成物は、成分d)としてポリエステルを含有する。用語「ポリエステル」には、任意の末端官能化ポリエステル、例えばヒドロキシル基末端又はカルボキシル基末端ポリエステル並びに例えばエピクロルヒドリンと更に反応されたヒドロキシル基末端停止又はカルボキシル基末端停止ポリエステルが含まれる。用語「ポリエステル」は環式エステルをベースにするポリエステル、例えばポリカプロラクトンも含む。
【0026】
好ましい態様に於いて、このエポキシ接着剤組成物は、5〜25重量%、更に好ましくは5〜15重量%の成分d)を含む。成分d)は、好ましくはヒドロキシル基末端停止ポリエステル、カルボキシル基末端停止ポリエステル及びエポキシポリエステル樹脂からなる群から選択された少なくとも1種のポリマーを含む。ヒドロキシル基末端停止ポリエステルは、適用温度では、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応しない。このような態様に於いて、成分d)は、組成物の他の成分又はそれらの混合物のレオロジー的及び機械的特性を妨げない。粘度上昇、即ち本発明の接着剤組成物の部分結晶化による再増粘化は、加熱によって殆ど完全に可逆性である。
【0027】
好ましい態様に於いて、成分d)は、40℃〜90℃の範囲内の軟化温度を有する。このような成分d)の例は、ジナコル(Dynacoll)7000シリーズ(デグッサ社(Degussa))のポリエステルである。特に良好な結果は、成分d)が、2000〜5000g/モルの範囲内、好ましくは3000〜4000g/モルの範囲内、最も好ましくは約3500g/モルの分子量を有する場合に達成される。このような成分d)の例は、ポリエステルジナコル7330及びジナコル7381である。
【0028】
別の態様に於いて、成分a)は、少なくとも2種の異なったエポキシ樹脂、例えばD.E.R.330及びD.E.R.331(ザ・ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company))の混合物を含む。一般的に、少なくとも1種のエポキシ樹脂は、液体エポキシ樹脂である。特定の応用分野に於いて望まれる場合、エポキシ接着剤組成物の基本粘度(basic viscosity)は、室温で固体である少なくとも1種のエポキシ樹脂、例えばD.E.R.671(ザ・ダウ・ケミカル社)を添加することによって、上昇させることができる。
【0029】
本発明に於いて使用するエポキシ樹脂は、所望の接着及び強度特性を与えるために十分な量で使用する。好ましくは、エポキシ樹脂は、接着剤組成物の100部当たり、30〜80部、更に好ましくは40〜70部、最も好ましくは50〜60部の量で使用する。
【0030】
好ましいエポキシ接着剤組成物は5〜30重量%、更に好ましくは10〜20重量%の成分b)を含む。成分b)は、1,3−ジエン及び極性エチレン性不飽和モノマーのコポリマーによって変性されたエポキシ樹脂である。用語「変性された」は、本明細書に於いて、コポリマーが、エポキシ樹脂をブレンドされる、エポキシ樹脂にグラフトされる又はエポキシ樹脂と反応される、即ち付加物であることを意味する。好ましくは、このコポリマーは、エポキシ樹脂への付加物である。このようなコポリマーは、米国特許第5,278,257号明細書、第2欄第11行〜第4欄第5行(この開示は、引用して本明細書中に含める)に詳細に記載されている。成分b)の製造のための1,3−ジエンの例は、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンである。ブタジエンをベースにするコポリマーが好ましい。このコポリマー中に使用する極性エチレン性不飽和コモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸若しくはメタクリル酸のエステル、例えばメチル若しくはエチルエステル、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアミド、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸若しくはこれらのエステル若しくは半エステル、例えばモノメチル若しくはジメチルエステル又は無水マレイン酸若しくはイタコン酸無水物、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、極性スチレン、例えば核内で塩素化された若しくは臭素化されたスチレン又は特にアクリロニトリル若しくはメタクリロニトリルである。極性エチレン性不飽和コモノマーの他に、このコポリマーには、また、他の非極性エチレン性不飽和コモノマーが含有されていてよい。これらの例は、エチレン、プロピレン又は特に、スチレン若しくは置換スチレン、例えばビニルトルエンである。成分b)は、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであってよい。この成分は、固体、特に粉末状であってよく又は好ましくは、液体であってよい。これは、また、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー又はエラストマーであってよい。コポリマー中のコモノマーの比率は、広い範囲内で変化してよい。このモノマーは、エポキシ樹脂a)と組合せて、エラストマー相が形成されるように選択する。これらは、均一又は不均一系であってよい。
【0031】
成分b)がアクリロニトリル−ブタジエンゴムで変性されたエポキシ樹脂を含むのが特に好ましい。好ましくは、成分b)は、X13、X8、X31又はX8、X31及びX13の任意の混合物の群(但し、Xは、CTBN(カルボキシ末端停止ブタジエンゴム)型のアクリロニトリル−ブタジエンゴムを表し、そして用語「混合物」は、「成分の2種又は3種の混合物」を意味する)から選択されたアクリロニトリル−ブタジエンゴムの少なくとも1種を含む。
【0032】
X8は17%のアクリロニトリルを含むアクリロニトリル−ブタジエンゴムである。
【0033】
X13は、26%のアクリロニトリルを含むアクリロニトリル−ブタジエンゴムである。
【0034】
X31は10%のアクリロニトリルを含むアクリロニトリル−ブタジエンゴムである。
【0035】
別の好ましい態様に於いて、この組成物は10〜20重量%の成分c)を含む。
【0036】
成分c)は、式Iの強化剤(toughener)及び式IIの強化剤の両方の混合物からなっていてよい。
【0037】
式Iの強化剤の詳細な説明は、特許文献1(第5頁第14行〜第13頁第24行)(その開示を引用して本明細書中に含める)に記載されている。
【0038】
式IIの強化剤の詳細な説明は、特許文献2(第3頁第51行〜第6頁第62行)(その開示を引用して本明細書中に含める)に記載されている。
【0039】
成分c)の例は、フレキシビライザー(Flexibilizer)DY965(米国特許第5,278,257号明細書の実施例16に従って製造され、ハンツマン社(Huntsman)から入手可能)である。成分d)の他の例は、RAM A、フレキシビライザーDY3333又はRAM Cである。RAM A、フレキシビライザーDY3333及びRAM Cは、式Iの化合物であり、RAM Aは、アリルフェノール末端停止されており、フレキシビライザーDY3333はビスフェノールA末端停止されており、そしてRAM Cはアルキルフェノール末端停止されている。RAM A及びRAM Cは、国際特許出願公開第WO2005/007766号明細書に記載されている。
【0040】
本発明に従ったエポキシ接着剤組成物には、更に、当業者に公知の添加剤、例えば充填材及び促進剤が含まれてよい。
【0041】
好ましい態様に於いて、この組成物には、促進剤として、不飽和置換基を有するフェノールの付加ポリマーであるフェノール系ポリマー中の、130℃以上の沸点を有する窒素塩基の固溶体(solid solution)が含まれる。(用語「固溶体」は、固体一相系中の成分の組合せ体を意味する)。このような促進剤の詳細な説明は、欧州特許出願公開第0 197 892号明細書(第7頁第7行〜第10頁第28行)(その開示を引用して本明細書中に含める)に記載されている。これらの促進剤の中で、当業者に公知であり、また欧州特許出願公開第0 197 892号明細書中に記載されているEP796、即ち、ポリ(p−ビニルフェノール)マトリックス中に統合された2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが、特に好ましい。この組成物には、イソシアネート単位と水又は活性水素含有化合物との反応に触媒作用する触媒が含まれてよい。このような化合物は当該技術分野で公知である。触媒は、イソシアネート単位と水又は活性水素含有化合物との反応のために、当業者に公知である任意の触媒であってもよい。好ましい触媒の中には、有機スズ化合物、金属アルカノエート(alkanoate)及び第三級アミン、例えばジモルホリノジアルキルエーテルがある。有用な触媒には、有機スズ化合物、例えばアルキルスズオキシド、第一スズアルカノエート、ジアルキルスズカルボキシレート及びスズメルカプチドが含まれる。第一スズアルカノエートには、第一スズオクトエートが含まれる。アルキルスズオキシドには、ジアルキルスズオキシド、例えばジブチルスズオキシド及びその誘導体が含まれる。有機スズ触媒は、好ましくはジアルキルスズジカルボキシレート又はジアルキルスズジメルカプチドである。ジアルキルスズジカルボキシレートは、好ましくは式(R5OC(O))2−Sn−(R52(式中、R5は、独立に、それぞれの存在で、C1−C10アルキル、好ましくはC1−C3アルキル、最も好ましくはメチルである)に相当する。より少ない全炭素原子を有するジアルキルスズジカルボキシレートが、それらが本発明の組成物に於いて一層活性な触媒であるので、好ましい。好ましいジアルキルジカルボキシレートには、1,1−ジメチルスズジラウレート、1,1−ジブチルスズジアセテート及び1,1−ジメチルジマレエートが含まれる。有機スズ触媒は、組成物の重量基準で約60ppm(100万分の部)又はそれ以上、更に好ましくは120ppm又はそれ以上の量で存在する。有機スズ触媒は、組成物の重量基準で、約1.0%又はそれ以下、更に好ましくは0.5重量%又はそれ以下、最も好ましくは0.1重量%又はそれ以下の量で存在する。他の有用な触媒には、第三級アミン、例えばジモルホリノジアルキルエーテル、ジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテル、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルピペラジン、4−メトキシエチルモルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン及びこれらの混合物並びに金属アルカノエート、例えばビスマスオクトエート又はビスマスネオデカノエートが含まれる。好ましいジモルホリノジアルキルエーテルは、ジモルホリノジエチルエーテルである。好ましいジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテルは、(ジ−(2−(3,5−ジメチルモルホリノ)エチル)エーテル)である。第三級アミン、例えばジモルホリノジアルキルエーテル又はジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテルは、好ましくは、組成物の重量基準で、約0.01重量%又はそれ以上、更に好ましくは約0.05重量%又はそれ以上、なお更に好ましくは約0.1重量%又はそれ以上、最も好ましくは約0.2重量%又はそれ以上で且つ約2.0重量%又はそれ以下、更に好ましくは約1.75重量%又はそれ以下、なお更に好ましくは約1.0重量%又はそれ以下、最も好ましくは約0.4重量%又はそれ以下の量で使用される。
【0042】
特定の応用分野で望まれる場合、エポキシ接着剤組成物の基本粘度は、別の好ましい態様に従って、ゲル化剤を添加することによって上昇させることができる。ゲル化剤は、100〜130℃の温度に加熱したときゲル化し、そうして組成物の粘度を低下させるポリマーである。ゲル化剤は当業者に公知であり、そしてこれにはポリアクリレート、ポリビニルブチレート、ポリ塩化ビニルが含まれる。好ましいゲル化剤はポリビニルブチレートである。
【0043】
本発明のエポキシ接着剤組成物は、好ましくは、車両、例えば乗用車、バン、トラック、バス及び列車の部品の組立のために、即ち、構造接着剤として使用される。これはまた、船及び航空機の部品を組立てるために使用することができる。
【0044】
本発明のエポキシ接着剤組成物は、普通のビーズとしてロボットにより、渦巻きにより又はジェット流により、手動で又は自動的に適用することができる。カーリングは、140℃より高い温度で始まる。
【実施例】
【0045】
ポリエステルエポキシ樹脂の製造
40重量%のカルボキシ末端停止ポリエステル(デグッサ社のダイナコル7330AC28)及び60重量%のD.E.R.330(ザ・ダウ・ケミカル社)を、実験室衛星混合機内で攪拌下に130℃に加熱して、均質にする。次いで、トリフェニルホスフィン(TPP)を添加し、そしてこの混合物を130℃で更に4時間攪拌する。酸価は、0.1mg KOH/g未満であると決定された。
【0046】
プレミックスの製造
プレミックス1:
20重量%のダイナコル7381(デグッサ社)及び80重量%のD.E.R.330(ザ・ダウ・ケミカル社)を、オーブン内で100℃に加熱し、そして実験室衛星混合機内で10分間混合する。次いで、この混合物を室温にまで冷却する。
【0047】
プレミックス2:
30重量%のダイナコル7381及び70重量%のD.E.R.330を使用した以外は、プレミックス1と同様にして、プレミックス2を製造した。
【0048】
プレミックス3:
ダイナコル7330を使用した以外は、プレミックス1と同様にして、プレミックス3を製造した。
【0049】
プレミックス4:
カルボキシ末端停止ポリエステルダイナコル7330AC28を使用した以外は、プレミックス1と同様にして、プレミックス4を製造した。
【0050】
プレミックス5:
カルボキシ末端停止ポリエステルダイナコル7381AC28を使用した以外は、プレミックス1と同様にして、プレミックス5を製造した。
【0051】
プレミックス6:
50重量%の前記製造したようなポリエステルエポキシ樹脂及び50重量%のD.E.R.330を使用した以外は、プレミックス1と同様にして、プレミックス6を製造した。
【0052】
エポキシ接着剤組成物の製造
24重量%のD.E.R.330又は331、30重量%の上記のプレミックスの1種(BM1460.005のためにプレミックス1、BM1460.010のためにプレミックス2、BM1460.014のためにプレミックス3、BM1460.025のためにプレミックス4、BM1460.026のためにプレミックス5、BM1460.029のためにプレミックス6)、18重量%の強化剤(フレキシビライザーDY3333、ハンツマン社)、12重量%のゴム変性エポキシ樹脂(シュトルクトール(Struktol)3611、シル・アンド・ザイラッヒャー社(Schill&Seilacher))、0.7重量%のグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(ハンツマン社)及び0.8重量%の着色剤を、実験室衛星混合機内で、70℃で30分間混合する。
【0053】
a)BM1460.005
BM1460.005の製造のために、8重量%のヒュームドシリカ(エーロジル(Aerosil)、デグッサ社)を、室温で15分間、上記の混合物に添加する。次いで、5重量%のDICY(シアノグアニジン、エアプロダクツ社(Airproducts))、0.5重量%の促進剤EP796(ハンツマン社)及び3重量%のゲル化剤を、室温で15分間混合する。
【0054】
b)BM1460.010
BM1460.010の製造のために、8重量%のヒュームドシリカ(エーロジル、デグッサ社)を、室温で15分間、上記の混合物に添加する。次いで、5重量%のDICY(シアノグアニジン、エアプロダクツ社)及び0.5重量%の促進剤EP796(ハンツマン社)を、室温で15分間混合する。
【0055】
c)BM1460.014
BM1460.014の製造のために、10重量%のヒュームドシリカ(エーロジル、デグッサ社)を、室温で15分間、上記の混合物に添加する。次いで、5重量%のDICY(シアノグアニジン、エアプロダクツ社)及び0.5重量%の促進剤EP796(ハンツマン社)を、室温で15分間混合する。
【0056】
d)BM1460.025、BM1460.026及びBM1460.029を、対応する混合物を使用することによって、a)に記載したようにして製造する。
【0057】
表中に記載した全ての他の組成物を同様の方式で製造した。
【0058】
全ての混合工程は真空又は窒素下で実施する。
【0059】
接着試験
接着剤BM1460.010(接着剤配合物中に10%のジナコル)は、180℃で30分間硬化させた後、下記のバルク標準値(bulk standard value)を示している。下記に示す値は、DIN EN ISO527−1に従って決定した。
【0060】
e−弾性率:約1200MPa
引張強度:約30MPa
伸び:約15%
ガラス転移温度(DSC):約95℃
前記のような本発明に従った他の接着剤組成物は、同様の機械的及び物理的特性を示す。
【0061】
試験方法
重ね剪断強度は、EN1465に従って23℃で、冷間圧延スチール(CRS)1403(厚さ1.5mm)、熱浸漬亜鉛被覆スチール(厚さ0.8mm)及びアルミニウム6130(厚さ1.3mm)(共に当業者に公知である)を使用して、試験した。アルミニウムは、アロジン(Alodine)2040(ヘンケル社)を使用して、予備処理した。結合領域は、25mm×10mmであった。層厚さは0.2mmであった。試験速度は10mm/分であった。
【0062】
衝撃剥離強度は、ISO11343に従って、23℃で、冷間圧延スチール(CRS)1403(厚さ1.0mm)を使用して試験した。衝撃剥離強度は2m/秒で測定した。接合領域は、30mm×20mmであった。層厚さは0.2mmであった。
【0063】
試験のために使用したスチールは脱脂した。
【0064】
レオロジーは、ボーリン(Bohlin)レオメーター、コーン(4°)−プレート、隙間=150μmで測定した。剪断速度は、0.1秒-1から20秒-1まで(上下)変化させた。
【0065】
【表1】

【0066】
上記のサンプル中の熱可塑性ポリマー(成分d)は、下記のように特定される。
【0067】
ジナコル7381は、約67℃の軟化温度を有するポリエステルポリオールである。
【0068】
ジナコル7330は、約85℃の軟化温度を有するポリエステルポリオールである。
【0069】
トーン(Tone)1278は、50〜60℃の軟化範囲を有するポリカプロラクトンポリオールである。
【0070】
デガラン(Degalan)4889Fは、約110℃の軟化温度を有するメタクリル酸メチル及びメタクリル酸n−ブチルをベースにするアクリルポリマーである。
【0071】
ジナコル7330AC28は、約84℃の軟化温度を有するカルボキシ末端停止ポリエステルポリオールである。
【0072】
ジナコル7381AC28は、約67℃の軟化温度を有するカルボキシ末端停止ポリエステルポリオールである。
【0073】
表1からわかるように、本発明のエポキシ接着剤組成物は比較的低い基本粘度を有する。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
表3に示されるように、本発明のエポキシ接着剤組成物は、予備ゲル化したBM1496Vと同様に、低い剪断歪みで19000Pasよりも高い粘度を有する。比較例について典型的な適用温度から冷却した後、顕著な固化は存在しない。
【0078】
【表5】

【0079】
表4からわかるように、低剪断歪みでの粘度は、実際的に、約18000Pasの値で一定なままである。
【0080】
【表6】

【0081】
表5からわかるように、本発明に従ったサンプルの重ね剪断強度は、比較例について測定した重ね剪断強度に匹敵する。
【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
表7からわかるように、本発明に従ったサンプルの衝撃剥離強度は、比較例(BM1480及びBM1496V)について測定した衝撃剥離強度に匹敵する。本発明に従ったサンプルの−40℃での衝撃剥離強度(示さず)も、比較例のものに匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一のエポキシ樹脂、
b)1,3−ジエン及び極性エチレン性不飽和コモノマーをベースにするコポリマーで変性された第二のエポキシ樹脂、
c)式I:
【化1】

(式中、mは1又は2であり、nは2〜6であり、R1は末端のイソシアネート、アミノ又はヒドロキシル基の除去後の、エラストマー性プレポリマーのn価の基であり(このエラストマー性プレポリマーは、エポキシ樹脂に可溶性又は分散性である)、W及びXは、独立に、−O−又は−NR3−であり、W及びXの少なくとも1個は−NR3−であり、R2はフェノール性ヒドロキシル基及び、任意的にアミノ基、の除去後の、ポリフェノール又はアミノフェノールのm+1価の基であり、そしてR3は水素、C1〜C6アルキル又はフェノールである)
の化合物及び式II:
【化2】

(式中、pは1又は2であり、qは2〜6であり、Yは−O−、−S−又は−NR6−であり、Zは−OH、−NHR6、−OCN、
【化3】

からなる群から選択された基であり、R4はヒドロキシル−、メルカプト−若しくはアミノ−末端停止ポリエーテルプレポリマー又はヒドロキシル−、メルカプト−若しくはアミノ−末端停止プレポリマー性セグメント化ポリエステル、ポリチオエステル若しくはポリアミドの残基であり、R5は芳香族環に直接結合された基Zを有する、炭素環式芳香族又は芳香脂肪族p+1価基であり、R6は水素、C1〜C6アルキル又はフェニルであり、そしてR7はメチル又は水素である)
の化合物並びにこれらの混合物からなる群から選択された強化剤並びに
d)ポリエステルセグメントを含んでなり、室温で少なくとも部分的に結晶性であり、そして40℃〜125℃の範囲内の軟化温度を有するポリマー
を含んでなるエポキシ接着剤組成物。
【請求項2】
成分d)がポリエステルを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
5〜15重量%の成分d)を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分d)がヒドロキシル基末端停止ポリエステル、カルボキシル基末端停止ポリエステル及びエポキシポリエステル樹脂からなる群から選択された少なくとも1種のポリマーを含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分d)が40℃〜90℃の範囲内の軟化温度を有する前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分d)が2000〜5000g/モルの範囲内、好ましくは3000〜4000g/モルの範囲内、最も好ましくは約3500g/モルの分子量を有する前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項7】
成分a)が少なくとも2種の異なったエポキシ樹脂の混合物を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項8】
成分a)が室温で固体である少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項9】
10〜20重量%の成分b)を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項10】
成分b)がアクリロニトリル−ブタジエンゴムで変性されたエポキシ樹脂を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項11】
成分b)がb1)約10重量%のアクリロニトリル、b2)約17重量%のアクリロニトリル及びb3)約26重量%のアクリロニトリルを含む群から選択されたアクリロニトリル−ブタジエンゴムの少なくとも1種又はこれらの混合物を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項12】
10〜20重量%の成分c)を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項13】
ゲル化剤を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項14】
促進剤としてのEP796を含む前記請求項の1項に記載の組成物。
【請求項15】
エポキシ接着剤組成物を予備硬化することなく、車両、船又は航空機の部品を接合するための前記請求項の1項に記載のエポキシ接着剤組成物の使用。
【請求項16】
請求項1〜14の1項に記載のエポキシ接着剤組成物によってその部品が接合されている車両。

【公表番号】特表2008−501049(P2008−501049A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513815(P2007−513815)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005731
【国際公開番号】WO2005/118734
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】