説明

エポキシ樹脂組成物及びそれを含む塗料組成物

【課題】仕上がり性を損なうことなく、初期乾燥性が良好な塗膜を形成することでき、ミネラルスピリット等の弱溶剤で容易に希釈することができる溶剤の選択自由度の広いエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(I)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)、脂肪酸(c)及びポリイソシアネート化合物(d)を反応させることにより得られるエポキシ基を有する変性エポキシ樹脂、ならびに(II)アミン硬化剤を含んでなるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及びそれを含む塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は下地に対する密着性などに優れているため、従来から、塗料、接着剤、シール剤など各種分野に広く使用されており、例えば、防食塗料の分野では、エポキシ樹脂を主剤とし、ポリアミンを硬化剤として含む塗料の開発が行われている。
【0003】
かかる防食塗料の分野では、使用されるエポキシ樹脂として脂肪酸などを付加した脂肪酸変性エポキシ樹脂を用いることにより、塗膜の応力緩和と防食性の両立が図られている。
【0004】
一方、近年、ミネラルスピリットなどの高引火点、高沸点で且つ環境に対する負荷が比較的少ない有機溶剤、いわゆる弱溶剤に対して溶解可能な塗料の開発が求められており、脂肪酸変性エポキシ樹脂/アミン硬化剤を含有する防食塗料分野においても弱溶剤化の要望が高まっている。
【0005】
この要望に応えるべく、特許文献1及び2には、エポキシ樹脂に脂肪族モノカルボン酸やジイソシアネート化合物、アルキルフェノール類を反応させることにより変性エポキシ樹脂を製造する方法が提案されている。
【0006】
該方法により得られる変性エポキシ樹脂は、弱溶剤に溶解もしくは安定に分散することができるものであるが、変性量が多いため、塗膜の乾燥性や塗膜物性が充分でなかったり、あるいは塗料粘度が高いために塗装作業性や仕上がり性に問題があり、塗料中に含まれる有機溶剤量を多く設計する必要が生じるという欠点がある。
【0007】
このような欠点を改善するため、特許文献3には、特定の脂肪族モノカルボン酸を用い、そして脂肪族モノカルボン酸及びイソシアネートの変性量をそれぞれ特定範囲とした変性エポキシ樹脂が提案されている。
【0008】
かかる変性エポキシ樹脂はミネラルスピリットへの溶解性が良好であり、該変性エポキシ樹脂を含む塗料はハイソリッド化を達成することができ、塗膜物性などの性能も良好であるが、常温における初期乾燥性の点において未だ改良の余地がある。
【0009】
ところで、常温での初期乾燥性を改良するために変性エポキシ樹脂の分子量を高く設計すると、弱溶剤に対する溶解性が低下し、また、樹脂粘度の上昇に伴い塗料粘度が増大するため、塗装作業性や仕上がり性が低下するという問題が生じる。したがって、弱溶剤に対する溶解性や仕上がり性を損なうことなく、初期乾燥性が改良された変性エポキシ樹脂を設計することは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−115318号公報
【特許文献2】特開平4−39320号公報
【特許文献3】特開平9−143246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、仕上がり性を損なうことなく、初期乾燥性が良好な塗膜を形成することでき、ミネラルスピリット等の弱溶剤で容易に希釈することができる溶剤の選択自由度の広いエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、今回、変性エポキシ樹脂の変性剤としてロジン類、脂肪酸及びポリイソシアネート化合物を使用し、得られる変性エポキシ樹脂をアミン硬化剤と組み合わせて使用することにより、溶剤の選択自由度が広く且つ塗膜の初期乾燥性が向上したエポキシ樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして、本発明は、
(I) 1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)、脂肪酸(c)及びポリイソシアネート化合物(d)を反応させることにより得られるエポキシ基を有する変性エポキシ樹脂、ならびに
(II) アミン硬化剤
を含んでなるエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0014】
本発明は、また、上記のエポキシ樹脂組成物を含む塗料組成物を提供するものである。
【0015】
本発明は、さらに、上記の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うエポキシ樹脂組成物は、ミネラルスピリットなどの弱溶剤でも容易に希釈することができるため溶剤の選択自由度が広く、該エポキシ樹脂組成物を含む塗料組成物は塗装作業性に優れ、形成される塗膜は初期乾燥性に優れ良好な仕上がり性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物及びそれを含む塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、変性エポキシ樹脂(I)及びアミン硬化剤(II)を含んでなるものである。
【0019】
変性エポキシ樹脂(I)
本発明において使用される変性エポキシ樹脂(I)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)、脂肪酸(c)及びポリイソシアネート化合物(d)を反応させることにより得られる樹脂である。
【0020】
エポキシ樹脂(a)
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などが挙げられ、具体的には、例えば、DER−331J(商品名、ダウケミカル社製)、JER828、834、806(以上商品名、ジャパンエポキシレジン社製)、GY#260(商品名、旭チバ社製)、エポミックR#140P(商品名、三井石油化学工業社製)、エポトートYD128(商品名、東都化成社製)などの市販品を使用することができる。
【0021】
エポキシ樹脂(a)としては、ミネラルスピリットなどの弱溶剤に対する溶解性が向上し、使用することができる有機溶剤の選択性が広くなるという観点から、一般に300以下、特に160〜260の範囲内のエポキシ当量及び一般に1000以下、特に380〜600の範囲内の数平均分子量を有するものが好ましい。
【0022】
ここで、「弱溶剤」は、一般的には溶解力の弱い溶剤を意味し、厳密に区別されるものではなく、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤が包含される。弱溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、VM&Pナフサ、ソルベントナフサなどが挙げられ、これらの市販品としては、例えば、「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」、「エッソナフサNo.6」(以上商品名、エッソ石油株式会社製);「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上商品名、コスモ石油株式会社製);「イプゾール100」(商品名、出光興産株式会社製);「HAWS」、「LAWS」(以上商品名、シェルケミカルズジャパン株式会社製);「Aソルベント」(商品名、日本石油株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
本明細書において、「エポキシ当量」は、エポキシ基1グラム当量あたりの樹脂(固形分)の質量(g)であり、JISK7236(1995)に準拠して次のようにして測定することができる:
試料をクロロホルム及び酢酸で溶解し、その溶解液に、臭化テトラエチルアンモニウム100gを酢酸400mlに溶解した溶液を10ml加え、クリスタルバイオレットを指示薬として過塩素酸酢酸溶液で滴定し、下記式により算出する。

エポキシ当量(g/eq)=1000×m/(C×V)

m:試料固形分質量(g)、
C:滴定液の過塩素酸酢酸の濃度、
V:滴定量。
【0024】
また、エポキシ樹脂の「数平均分子量」は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した試料の数平均分子量を、ポリスチレンの数平均分子量を基準として換算することによって求めることができる。
【0025】
ロジン類(b)
ロジン類(b)は、マツ科植物から得られる樹脂油のうち、精油などの揮発性物質を留去した後の、樹脂酸を主成分とする残留樹脂であり、例えば、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン等の天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン;マレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジン等の不飽和酸変性ロジン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも天然ロジン、特にガムロジン又はトールロジンが好適である。
【0026】
脂肪酸(c)
脂肪酸(c)には、炭素数6〜24、特に12〜20の脂肪族モノカルボン酸が包含され、それ自体既知の不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸を特に制限なく使用することができ、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、
トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸等の乾性油脂肪酸;ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の不乾性油脂肪酸;カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸を挙げることができる。本発明においては、形成塗膜の初期乾燥性、常温硬化性などの観点から、脂肪酸(c)として乾性油脂肪酸を使用することが適している。
【0027】
ポリイソシアネート化合物(d)
ポリイソシアネート化合物(d)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートを有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート(通常「TDI」と呼ばれる)、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(通常「IPDI」と呼ばれる)等の芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイシアネート化合物の環化重合体、イソシアネートビゥレット体;これらのポリイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、TDI、MDI、IPDIなどが好適である。
【0028】
本発明において変性エポキシ樹脂(I)は、以上に述べたエポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)、脂肪酸(c)及びポリイソシアネート化合物(d)を反応させることにより製造することができる。
【0029】
具体的には、例えば、まず、エポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)及び脂肪酸(c)を、約80〜約200℃、好ましくは約100〜約160℃の温度に加熱して反応混合物の酸価がほぼ0となるまで反応させ、水酸基を有する反応生成物を得る。この際、必要に応じて、テトラエチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩触媒やアミン触媒などを使用することができる。
【0030】
上記反応において、エポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)及び脂肪酸(c)の使用割合は、反応生成物中にエポキシ基が残存するようなものである限り、自由に選択することができるが、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対して、ロジン類(b)のカルボキシル基が一般には0.03〜0.40当量、好ましくは0.04〜0.35当量、さらに好ましくは0.05〜0.30当量の範囲内、そして脂肪酸(c)のカルボキシル基が一般には0.15〜0.55当量、好ましくは0.20〜0.50当量、さらに好ましくは0.20〜0.45当量の範囲内となるような割合であることが好ましい。
【0031】
エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対するロジン類(b)のカルボキシル基の当量及び脂肪酸(c)のカルボキシル基の当量が上記の範囲内となるような割合でエポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)及び脂肪酸(c)を反応させることによって、初期乾燥性と弱溶剤に対する溶解性を併有し、溶剤の選択自由度の広い変性エポキシ樹脂を得ることが可能となる。
【0032】
次いで、このように得られる反応生成物の水酸基に上記ポリイソシアネート化合物(d)を、約50〜約150℃、特に約70〜約120℃の温度において、反応混合物のイソシアネート基が消失するまで反応させる。かくして、エポキシ基を有する変性エポキシ樹脂(I)を得ることができる。この際、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレートなどの有
機錫触媒を使用することができる。
【0033】
上記ポリイソシアネート化合物(d)の使用量は、塗膜性能と弱溶剤に対する溶解性の観点から、エポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)及び脂肪酸(c)の反応生成物中の水酸基1当量に対して、ポリイソシアネート化合物(d)中のイソシアネート基当量が通常0.10〜1.10当量、特に0.30〜1.10当量、さらに特に0.50〜1.10当量の範囲内となるような量が適している。
【0034】
かくして得られる変性エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するものであり、一般に450〜1500、特に500〜1300、さらに特に600〜1200の範囲内のエポキシ当量及び一般に600〜3000、特に800〜2000、さらに特に1000〜1500の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0035】
本発明において変性エポキシ樹脂(I)は弱溶剤により希釈可能であるので、弱溶剤を樹脂製造時における反応溶媒又は塗料組成物における希釈溶剤として使用することが可能であるが、塗料組成物の用途に応じて弱溶剤以外の他の有機溶剤を反応溶媒又は希釈溶剤として使用しても差し支えない。
【0036】
アミン硬化剤(II)
アミン硬化剤(II)としては、エポキシ基と反応する活性水素基を有するそれ自体既知の任意のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、例えば、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタンなどのポリアミン類;該ポリアミンのエポキシ樹脂アダクト物、ケチミン化物;ポリアミドアミン類、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
変性エポキシ樹脂(I)とアミン硬化剤(II)との使用割合は、変性エポキシ樹脂(I)に含まれるエポキシ基1当量に対してアミン硬化剤(II)の活性水素基が通常0.5〜1.5当量、とくに0.6〜1.2当量、さらに特に0.8〜1.1当量の範囲内となるような割合であることが望ましい。
【0038】
塗料組成物およびその塗装方法
以上に述べた変性エポキシ樹脂(I)及びアミン硬化剤(II)を含んでなる本発明のエポキシ樹脂組成物は、ミネラルスピリットなどの弱溶剤でも容易に希釈することができるため溶剤の選択自由度が広く、塗料用の塗膜形成成分として有用である。
【0039】
したがって、本発明によれば、該エポキシ樹脂組成物を含む塗料組成物が提供される。
【0040】
本発明の塗料組成物は、使用されるアミン硬化剤(II)の種類に応じて、変性エポキシ樹脂(I)を含む主剤とアミン硬化剤(II)を硬化剤とする2液型塗料、或いは両者を含む1液型塗料などの塗料形態で調製することができる。
【0041】
本発明の塗料組成物には、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などの顔料類;改質樹脂等の樹脂成分;増粘剤、分散剤、金属ドライヤー、表面調整剤などの塗料用添加剤等を適宜配合することができる。
【0042】
本発明の塗料組成物は、塗装作業性に優れ、形成される塗膜は初期乾燥性に優れ良好な仕上がり性を有しており、各種基材面に下地として塗装することができる。該塗料組成物が塗装される基材面としては、特に制限はなく、例えば、鉄、アルミ、亜鉛等の金属素材面及びその表面処理面;コンクリート、モルタル、スレート、木材、プラスチック、石材
等の素材面及びその表面処理面;さらにこれら素材面及び表面処理面上に設けられた旧塗膜面等が挙げられる。
【0043】
その塗装は、一般的な方法により行うことができ、例えば、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、コテ塗り、各種コーター塗装等で行うことができ、形成される塗膜の上には、必要に応じて、中塗り塗料及び/又は上塗り塗料を塗装することができる。中塗り塗料及び上塗り塗料としては、特に制限なく、それ自体既知の有機溶剤型又は水性の塗料を使用することができ、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系アクリルゴム系、シリコン樹脂系、フッ素樹脂系の塗料が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0045】
ロジン変性エポキシ樹脂溶液の製造
製造例1
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量185のビスフェノールA型エポキシ樹脂)185部、ガムロジン51部および大豆油脂肪酸98部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油株式会社製、沸点162〜176℃)160部を仕込み冷却後、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート38部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量745、加熱残分70%のロジン変性エポキシ樹脂溶液(I)を得た。
【0046】
製造例2
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER834」(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量250のビスフェノールA型エポキシ樹脂)250部、トールロジン17部および脱水ヒマシ油脂肪酸56部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」145部仕込み冷却後、トリレンジイソシアネート18部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量455、加熱残分70%のロジン変性エポキシ樹脂溶液(II)を得た。
【0047】
製造例3
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」を185部、トールロジン68部および大豆油脂肪酸126部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」170部仕込み冷却後、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート21部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量1200、加熱残分70%のロジン変性エポキシ樹脂溶液(III)を得た。
【0048】
製造例4
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER806」(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量165のビスフェノールF型エポキシ樹脂)165部、ウッドロジン102部および亜麻仁油脂肪酸56部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」を160部仕込み冷却後、イソホロンジイソシアネート55部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量760、加熱残分70%の
ロジン変性エポキシ樹脂溶液(IV)を得た。
【0049】
製造例5
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」 185部、ガムロジン68部及び亜麻仁油脂肪酸84部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」 150部仕込み冷却後、トリレンジイソシアネート9部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量690、加熱残分70%のロジン変性エポキシ樹脂溶液を(V)を得た。
【0050】
製造例6
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」 185部、トールロジン68部および大豆油脂肪酸140部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」 180部仕込み冷却後、トリレンジイソシアネート30部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量1410、加熱残分70%のロジン変性エポキシ樹脂溶液を(VI)を得た。
【0051】
ロジン変性なしの変性エポキシ樹脂溶液の製造
製造例7
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」 185部および脱水ひまし油脂肪酸140部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」 160部仕込み冷却後、トリレンジイソシアネート44部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ当量735、加熱残分70%の変性エポキシ樹脂溶液(VII)を得た。
【0052】
イソシアネート変性なしの変性エポキシ樹脂溶液の製造
製造例8
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」 185部、ガムロジン68部および亜麻仁油脂肪酸84部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」 145部仕込み、エポキシ当量675、加熱残分70%のイソシアネート変性を行っていない変性エポキシ樹脂溶液(VIII)を得た。
【0053】
エポキシ基を有さない変性樹脂溶液の製造
製造例9
加熱装置、撹拌機および窒素導入管を有する反応装置に、「JER828」 185部、ガムロジン102部および大豆油脂肪酸196部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で撹拌しながら160℃まで加熱し、酸価が0になるまで反応させた。「スワゾール1000」 230部仕込み冷却後、トリレンジイソシアネート60部を仕込み、イソシアネート基が消失するまで100℃で反応させ、エポキシ基を有さない、加熱残分70%の変性樹脂溶液(IX)を得た。
【0054】
上記製造例1〜9において、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1当量に対するロジン類及び脂肪酸に含まれるカルボキシル基の各当量比、変性樹脂のエポキシ当量、反応生成物中の水酸基1当量に対するイソシアネート基の当量比を下記表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
塗料組成物の製造
実施例1〜6及び比較例1〜4
上記製造例で得られた各変性樹脂溶液に表2に示す配合組成で顔料及び添加剤等を混合し、分散処理を行なって塗料用主剤を調製した。これに表2に示す硬化剤及び溶剤を配合し混合攪拌して各塗料組成物を調製し、下記の性能試験に供した。結果を表2に併せて示す。
【0057】
【表2】

(注1)「酸化鉄KP−105」: 新日本金属化学工業(株)製、酸化鉄主体(有効成
分97%)赤錆色着色顔料、
(注2)「重質タンカルA」: 竹原化学工業(株)製、炭酸カルシウム、
(注3)「S タルク」: 日本滑石精練(株)、酸化マグネシウム、アルミナ主成分の
体質顔料、
(注4)「ディスパロン6900−10X」: 楠本化成(株)製、アマイドワックス系
タレ止め剤、
(注5)「BYK−066」: ビックケミージャパン(株)製、消泡剤、
(注6)「バーサミンK−13」: コグニスジャパン(株)製、ケチミン化合物、活性
水素当量91。
【0058】
評価試験方法
(*1)弱溶剤可溶性:
各塗料組成物に使用している各変性樹脂溶液(I)〜(IX)に、5℃環境下にて、「HAWS」(商品名、シェルケミカルズジャパン社製、石油系炭化水素溶剤)を加え、可溶性を目視で確認した。
【0059】
濁りが生じた時点での「HAWS」添加量が各変性樹脂固形分質量に対して>300%であれば「○」、100〜300%であれば「△」、<100%であれば「×」とする。
【0060】
(*2)仕上がり性:
ガラス板に隙間6milのドクターブレードで各塗料組成物を引き塗りし、23℃環境下で16時間後に得られた塗膜を下記の基準にて目視評価した。
◎:非常に良好、
○:良好、
△:やや不良、
×:不良。
【0061】
(*3)初期乾燥性:
ブリキ板に各塗料組成物を乾燥膜厚が60μmとなるように塗装し、室温(20〜24℃環境下)で4時間乾燥後、塗膜表面の指触乾燥性を下記の基準にて評価した。
◎:タックなし、
○:指紋が非常にわずかに残る、
△:タックが残る、
×:指に塗料がつく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I) 1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)、脂肪酸(c)及びポリイソシアネート化合物(d)を反応させることにより得られるエポキシ基を有する変性エポキシ樹脂、ならびに
(II) アミン硬化剤
を含んでなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(a)が300以下のエポキシ当量を有するものである請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
ロジン類(b)がガムロジン又はトールロジンである請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪酸(c)が乾性油脂肪酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)及び脂肪酸(c)を、エポキシ樹脂(a)に含まれるエポキシ基1当量に対して、ロジン類(b)のカルボキシル基が0.03〜0.40当量の範囲内、そして脂肪酸(c)のカルボキシル基が0.15〜0.55当量の範囲内となるような割合で使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
ポリイソシアネート化合物(d)を、エポキシ樹脂(a)、ロジン類(b)及び脂肪酸(c)より得られる反応生成物中の水酸基1当量に対して、ポリイソシアネート化合物(d)中のイソシアネート基当量が0.10〜1.10当量の範囲内となるような割合で使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
変性エポキシ樹脂(I)が450〜1500の範囲内のエポキシ当量を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
変性エポキシ樹脂(I)及びアミン硬化剤(II)を、変性エポキシ樹脂(I)に含まれるエポキシ基1当量に対してアミン硬化剤(II)の活性水素基が0.5〜1.5当量の範囲内となるような割合で含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含む塗料組成物。
【請求項10】
基材面に請求項9に記載の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2011−94104(P2011−94104A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195799(P2010−195799)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】