説明

エポキシ樹脂組成物

本発明は、数平均分子量が1000〜4000であって、分子量20000以上の成分が実質20%以下であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、数平均分子量が1000〜4000であるポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基とエポキシ化合物またはエポキシ樹脂のエポキシ基とを反応させることにより得られるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板等の絶縁材料として有用なポリフェニレンエーテルを含むエポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂組成物溶液、このエポキシ樹脂組成物に対し有機溶剤を用いたワニス、このワニスを基材に含浸してなるプリプレグ、このプリプレグを用いた積層板、ポリフェニレンエーテルを含むエポキシ樹脂組成物と金属箔を含む硬化性樹脂金属箔複合体、エポキシ樹脂硬化性組成物を含むフィルム、及びこれらを使用したプリント配線板や電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板用の絶縁材料にはコストパフォーマンスに優れるエポキシ樹脂が広く用いられているが、近年配線の高密度化への対応などからさらなる高機能化が求められている。その一つとして衛星通信などの高周波領域で使用されるプリント配線基板においては、信号の遅滞を防ぐため低誘電率や低誘電正接といった誘電特性にすぐれる絶縁材料が要求されている。この要求を満たす一案として、ポリフェニレンエーテルを含有するエポキシ樹脂組成物を用いると、優れた誘電特性を示す積層板が得られることが知られている。さらには特開昭58−219217号公報や特開平09−291148号公報で述べられているように、ポリフェニレンエーテルにエポキシ基を含有させ、樹脂の溶融粘度を下げることによって、加工性や接着性などの物性を向上させたものが知られている。
【0003】
一般に積層板は、ガラス繊維等の基材に樹脂溶液(ワニス)を含浸させて乾燥したプリプレグをつくり、このプリプレグを銅箔等の金属箔と積層したものを加圧加熱して作製される。上記の特開昭58−219217号公報や特開平09−291148号公報などで述べられているように、一般にポリフェニレンエーテルを含むエポキシ樹脂組成物をワニスとする際に用いられる溶媒としては、ポリフェニレンエーテルを溶解する溶媒であるジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン系溶媒やベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒がある。それらは単独で、もしくは2種類以上の混合溶媒として用いられている。
【0004】
しかし、ハロゲン系溶剤は環境への影響が懸念され使用が制限される方向にある。一方芳香族系溶剤としてトルエンを用いた場合、ポリフェニレンエーテルのゲル化がおこるか、あるいはそれを防ぐにはワニスを高温に維持して基材へ含浸させる必要があるなどプリプレグの製造に支障をきたすことが指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点の克服が可能で、プリプレグ作成に汎用されているケトン類への長期安定性が良く、加工性に優れ、さらに硬化過程での相分離を起こさないために、接着性や耐熱性が高く、優れた誘電特性を有するエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の分子量をもつポリフェニレンエーテルを用いることでケトン類を溶剤として用いたワニスが可能であることを見出した。さらに、驚くべきことに、特定の分子量をもつポリフェニレンエーテルをエポキシ化することにより、ケトン類への溶解性が顕著に安定化することを見出した。さらには、変性するエポキシ樹脂に多官能エポキシ樹脂を含ませることで、硬化過程での相分離を解消し、積層板やフィルムとしての物性が格段に向上することを見出した。
また、籠状シルセスキオキサンと籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の少なくとも1つを含むことにより加工性が飛躍的に改善されることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
(1)数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量20000以上の成分が実質20%以下であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
(2)数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量20000以上の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
(3)数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量300以下の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
(4)数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量20000以上の成分及び分子量300以下の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
(5)ポリフェニレンエーテルがフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.2個以上有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(6)エポキシ樹脂が多官能エポキシ樹脂を5質量%以上含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(7)請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を10質量%以上含有し、室温で実質的に固形物が存在しない、エポキシ樹脂組成物のケトン溶液。
(8)数平均分子量が1000〜4000であるポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基とエポキシ化合物またはエポキシ樹脂のエポキシ基とを反応させることにより得られるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(9)エポキシ基を1分子当たり平均3個以上有するエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(10)数平均分子量が3200〜10000であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(11)ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が30質量%〜90質量%であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(12)エポキシ基を1分子当たり平均3個以上有する、請求項10または11記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(13)数平均分子量が3200〜10000である、請求項11記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(14)エポキシ基を1分子当たり平均3個以上有し、数平均分子量が3200〜10000であり、ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が30質量%〜90質量%であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(15)エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂のフェノール性水酸基が10meq/kg以下である、請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
(16)請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
(17)請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、エポキシ樹脂を含みケトンに溶解する特性を持つエポキシ樹脂組成物。
(18)請求項16記載のエポキシ樹脂組成物を10質量%以上含有し、室温で実質的に固形物が存在しない、エポキシ樹脂組成物のケトン溶液。
(19)エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を25質量%以上含む、請求項16記載のエポキシ樹脂組成物。
(20)請求項16記載のエポキシ樹脂組成物と、難燃剤として、臭素化エポキシ樹脂、エポキシ基含有ホスファゼン化合物、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィン化合物のキノン誘導体の少なくとも一つ以上を含むエポキシ樹脂組成物。
(21)エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を40〜90質量%、難燃剤を10〜50質量%、エポキシ樹脂を0.1〜30質量%含有する、請求項20記載のエポキシ樹脂組成物。
(22)エポキシ樹脂はオキサゾリドン環を持つエポキシ樹脂を含む、請求項20または21記載のエポキシ樹脂組成物。
(23)さらに籠状シルセスキオキサンと籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の少なくとも1つを含む、請求項1〜7、16及び19〜22のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(24)さらにエポキシ樹脂の硬化剤を含む、請求項1〜7、16及び19〜22のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(25)請求項24記載のエポキシ樹脂組成物からなる、実質相分離がなく均一な硬化体。
(26)請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂にさらにエポキシ樹脂の硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物。
(27)樹脂ワニス、プリプレグ、硬化性樹脂金属箔複合体、フィルム、積層板、多層プリント配線板、封止用樹脂組成物、接着剤用硬化性樹脂組成物から選ばれた請求項1〜7、16、17及び19〜25記載のエポキシ樹脂組成物を含有する電子部材。
(28)樹脂ワニス、プリプレグ、硬化性樹脂金属箔複合体、フィルム、積層板、多層プリント配線板、封止用樹脂組成物、接着剤用硬化性樹脂組成物から選ばれた請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する電子部材。
(29)請求項27または28記載の電子部材からなる電子装置。
(30)エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法であって、数平均分子量が1000〜4000であるポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基とエポキシ化合物またはエポキシ樹脂のエポキシ基とを反応させることを含む上記方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると特定の分子量をもつポリフェニレンエーテルを含むエポキシ樹脂組成物は、耐熱性、誘電特性、加工性、接着性の優れ、室温でケトン類の安定な溶液とすることができる。また、このエポキシ樹脂組成物を用いて誘電特性に優れた積層板を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳しく述べる。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、数平均分子量が1000〜4000の範囲に制限され、かつ分子量20000以上の成分が実質20%以下である。分子量20000以上の成分が実質20%以下とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量測定において、分子量20000以上のピーク検出面積が20%以下であることを意味する。分子量20000以上の成分を実質的に含まないとは、ゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定において、ピーク検出開始の分子量が20000以下であることを意味する。
【0010】
また本発明で用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、数平均分子量が1000〜4000の範囲に制限され、かつ分子量300以下の成分を実質的に含まない。分子量300以下の成分を実質的に含まないとは、ゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定において、ピーク検出終了の分子量が300以上であることを意味する。
【0011】
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量は1000〜4000の範囲に制限されるが、好ましくは1500〜4000、より好ましくは2000〜4000、さらに好ましくは2400〜4000である。上記数平均分子量が4000以下であると樹脂組成物の溶融粘度が低く、加工性が良い。また上記数平均分子量が1000以上であると樹脂組成物の誘電率の上昇が防止できる。上記数平均分子量が1000〜4000の範囲内において高ければ高いほど、樹脂組成物の誘電率の上昇が防止できる効果が大きくなる。
【0012】
また、分子量20000以上の成分が実質20%以下であることにより、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類溶剤に対しポリフェニレンエーテル樹脂の溶解性が良く、ケトン類溶剤を用いたワニスの作製が可能となる。より好ましくは分子量20000以上の成分が実質含まれないことであり、さらに好ましくは分子量10000以上の成分が実質的に含まれないことであり、ケトン類へのポリフェニレンエーテル樹脂の長期安定した溶解性が保たれる。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂が分子量300以下の成分を実質的に含まないことにより、樹脂組成物の耐熱性の向上と誘電率の上昇防止できる。
【0013】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、下記式(1)で表される構造単位で構成されるものである。具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等が挙げられる。

(式中、nは正の整数を示し、R,R,R,Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R,R,R,Rは同じでも、異なっていてもよい。)
【0014】
通常、ポリフェニレンエーテル樹脂は重合反応により作成される。重合反応により作成されるとは、例えば、米国特許第4059568号明細書等に開示されているように、銅触媒、アミン触媒下で酸素含有ガスを用いてフェノール性化合物を酸化重合させる方法である。しかし、これらの方法で得られるポリフェニレンエーテル樹脂は数平均分子量が10000〜30000である。
【0015】
本発明での数平均分子量が1000〜4000の範囲のポリフェニレンエーテル樹脂は、上述の数平均分子量が大きい市販のものを用い、数平均分子量を上記範囲に調製する。上記ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量の調製は、例えば、学術文献「Joural of organic chemistry,34,297〜303(1968)」に示されている。数平均分子量が大きいポリフェニレンエーテル樹脂をラジカル開始剤の存在下で、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のポリフェノール性化合物と反応させて、上記ポリフェニレンエーテル樹脂の再分配反応を行い分子量を低下させ、数平均分子量が1000〜4000の範囲のポリフェニレンエーテル樹脂を得ることができる。
【0016】
上記ラジカル開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルクミルパーオキシヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン〔1,4(または1,3)−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンともいう〕、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられる。
【0017】
数平均分子量は1000〜4000のポリフェニレンエーテルは、通常のポリフェニレンエーテルの製法を実施し、その実施途中の重合度が低い時点で反応を停止させる方法によっても作製される。また、2種以上のアルコール混合溶媒及び特定のアミン化合物を触媒とすることによっても効率よく作製される。
【0018】
分子量20000以上の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルを得るには、上記再分配反応を効率よく行うことが肝心である。例えば、一度目の再分配反応後、さらにラジカル開始剤及び/またはポリフェノール性化合物を添加して、再分配反応を完結させることができる。または、得られた数平均分子量1000〜4000のポリフェニレンエーテルを単にメチルエチルケトンやアセトン等のケトン類に溶解後、不溶解物をろ過等の手段で除去すればよい。
【0019】
分子量300以下の成分を実質的に含まないようにするには、例えば、得られた数平均分子量1000〜4000のポリフェニレンエーテルを、メタノール等の溶剤を用いて洗浄すればよい。
【0020】
また、得られたポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基は、1分子当たり1.2個以上であることが好ましい。より好ましくは、1.4個以上、さらに好ましくは1.6個以上である。フェノール水酸基の量が少ないと、硬化した場合の架橋欠陥となり、不均一な硬化体となる。
【0021】
フェノール性水酸基を1分子当たり1.2個以上有するポリフェニレンエーテルは、前述したようにポリフェニレンエーテルをポリフェノール性化合物と反応させて、再分配反応させることによって作製できる。あるいは、通常のポリフェニレンエーテルの製法において、あらかじめ、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のポリフェノール性化合物を仕込むことによっても作製できる。
【0022】
本発明で用いられるエポキシ化合物とは、エピクロロヒドリンなどのハロゲン化グリシジルのことを言う。本発明で用いられるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2個以上有するものであって、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらをハロゲン化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる多官能エポキシ樹脂とは、1分子中に3個以上エポキシ基を持ったエポキシ樹脂のことである。使用される多官能エポキシ樹脂は、1分子中に3個以上のエポキシ基があればどれでも良い。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂といったもの中から単独もしくは2種類以上を併用してもよい。上記で示した多官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂全体に対し少なくとも5質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは20質量%以上含むものが好ましい。多官能エポキシ樹脂が5質量%未満であると、硬化体として相分離を起こしてしまい、積層板やフィルムの接着性、耐熱性が多官能エポキシ5質量%以上含まれるものと比較して劣る。
【0024】
本発明のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、1分子中に平均3個以上エポキシ基を有するものが好ましい。より好ましくは1分子中に平均5個以上エポキシ基を有するものである。1分子中に平均3個以上エポキシ基を有すると、他のエポキシ樹脂との相溶性に優れる。また、硬化速度が速く、硬化時に他のエポキシ樹脂の架橋構造に取り込まれるため、相分離を起さない。さらには、1分子中に極性基を多く含むことになるので、ケトン溶液といった極性溶剤に溶解しやすくなる。エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂はエポキシ化ポリフェニレンエーテルを含む。
【0025】
本発明において、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテルの骨格部の割合は、30質量%〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が高ければ高いほど、樹脂組成物の誘電率の上昇防止の効果が大きくなる。そのため、30質量%以上あることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が90質量%以下であれば、本発明の樹脂組成物の特徴である、室温におけるケトンへの溶解性が発現する。より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0026】
本発明のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、数平均分子量が3200〜10000であることが好ましい。より好ましくは数平均分子量が3500〜8500、さらに好ましくは数平均分子量が5000〜7000である。数平均分子量が10000以下であると溶融粘度が低く、加工性が良い。より好ましい数平均分子量は8500、さらに好ましい数平均分子量は7000である。数平均分子量が3200以上で、電気特性の良いものが得られる。より好ましくは数平均分子量3500以上であり、さらに好ましくは数平均分子量5000以上である。エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテルの骨格部が同じ割合であると、数平均分子量が大きいほど電気特性の良いものが得られる。例えば、ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が、ケトン溶液に溶解する下限の割合である30質量%の場合、数平均分子量が3200でも電気特性の良いものが得られるが、数平均分子量が3500のものがさらに電気特性が良く、数平均分子量が5000であるとよりさらに電気特性の良いものが得られる。
【0027】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を得るには、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物を反応させることにより得られる。例えば、ポリフェニレンエーテルとエピクロルヒドリンを既知の方法で反応させることにより得られる。ポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基に対して1倍以上好ましくは5倍以上のエピクロルヒドリンに上記ポリフェニレンエーテルを溶解後、NaOH、KOH等のアルカリ金属の水酸化物を添加すればよい。アルカリ水酸化物の量は、フェノール性水酸化物に対して、1当量以上を用い、反応条件は、50〜100℃で1〜10時間反応させる。得られた組成物から、水洗またはろ過により生成塩を除去し、未反応のエピクロルヒドリンを揮発回収するか、メタノール等の貧溶剤を投入し、析出させることにより得られる。
【0028】
また、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を、フェノール性水酸基とエポキシ基の反応のための触媒存在下、100℃〜200℃で、1〜20時間反応させ、未反応のエポキシ樹脂を取り除くことによっても得られる。触媒は、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムといった水酸化物、ナトリウムメチラートやナトリウムブチラートといったアルキレート塩やテトラブチルアンモニウムクロライドやテトラメチルアンモニウムブロミドといった4級アンモニウム塩、及びテトラフェニルホスホニウムブロミドやアミルトリフェニルホスホニウムブロミドといったホスホニウム塩、2−メチルイミダゾールや2−メチル−4−イミダゾールといったイミダゾール系、N、N−ジエチルエタノールアミンといったアミン類や塩化カリウムといったものから1種類以上が使用される。このとき使用されるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であればよく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらをハロゲン化したエポキシ樹脂等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ブタンジオール,ヘキサンジオール,シクロヘキサンジメタノール等のジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を併用してもよい。未反応のエポキシ樹脂を取り除くには、例えば、トルエン等の溶剤に溶解させた後で、大過剰のメタノールを添加し、析出したエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂をろ別するといった手法が挙げられる。
【0029】
本発明のエポキシ基を1分子当たり平均3個以上有するエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を得るには、エポキシ樹脂中に多官能エポキシ樹脂をそのものとして少なくとも5質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは20質量%以上含ませればよい。多官能エポキシ樹脂を多く含むことにより、得られるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂のエポキシ基の平均個数が多くなる。ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を反応させるときには、エポキシ樹脂を2種類以上使用することが好ましい。特に、多官能エポキシ樹脂と2官能のエポキシ樹脂をそれぞれ1種類以上用いることが好ましい。多官能エポキシ樹脂は得られるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂のエポキシ基の個数を増やす点で有用であるが、ポリフェニレンエーテルを反応系に溶解しづらくし、また、ポリフェニレンエーテルとの反応によりゲル化を起しやすい。そのため、溶剤を加える必要が生じる。しかしながら、反応時に2官能のエポキシ樹脂を加えると、ポリフェニレンエーテルを溶解させ反応が起こりやすくなる一方で、ゲル化を防ぐ効果が生じる。そのため、溶剤を加えない系でも反応が進行し、目的のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂が得られる。
【0030】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の末端フェノール性水酸基は、10meq/kg以下であることが好ましい。10meq/kg以下であるとケトン類への長期的な安定溶解性が得られる。ケトン類への長期的な安定溶解性のためには、好ましくは末端フェノール性水酸基は5meq/kg以下であり、さらに好ましくは3meq/kg以下である。
【0031】
本明細書において、ケトン類に室温で溶解するとは、10質量%のケトン溶液にしたときに、室温において透明性のある溶液状態が得られることを意味する。さらに詳しくは、この溶液をろ過した場合、ろ過残渣がないことが好ましい。実質的に固形物が存在しない状態は、溶液化した直後だけでなく、1日以上保たれることが必要である。好ましくは30日以上、さらに好ましくは90日以上安定して固形物が存在しない状態を保つ溶液が好ましい。通常、エポキシ樹脂組成物溶液を作製して実際に使用されるまでには時間がかかるためである。
【0032】
本発明に用いられるケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、アセトフェノン等の芳香族ケトンが挙げられる。好ましくはアセトン、メチルエチルケトンであり、より好ましくはメチルエチルケトンである。なぜならば、溶解されるポリフェニレンエーテルの構造にもよるが、メチルエチルケトンは、固形物が存在しない状態を維持できるし、通常積層板用のワニスに使用されている溶剤であり、既存の工程を大きく変更する必要がなくてすむ。
【0033】
本発明のケトン溶液はケトン類を含んでいれば質量に特に限定はないが、5質量%以上含んでいればよく、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は、ケトン類溶剤、ハロゲン系溶剤以外に安定に溶解しにくいため、ケトン類が少ないと、結晶化や析出といった問題が起こる。
【0034】
本発明のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂に、電気特性以外の特性を持たせるために、エポキシ樹脂と混合してエポキシ樹脂組成物として使用することができる。そのとき、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂はエポキシ樹脂組成物の25質量%以上が好ましい。25質量%未満だと、ポリフェニレンエーテルの比率が小さくなり、電気特性が悪くなる。
【0035】
混合するエポキシ樹脂に、オキサゾリドン環を持つエポキシ樹脂を選ぶと、硬化体の耐熱性を下げることなく、銅箔やプラスチックとの接着性を向上させることができる。また、硬化体に難燃性を持たせるために、難燃剤として、臭素化エポキシ樹脂、エポキシ基含有ホスファゼン化合物、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィン化合物のキノン誘導体のうち少なくとも一つ以上を含ませても良い。この難燃剤をエポキシ樹脂組成物全体の10質量%以上含むと、難燃性を達成できる。さらにこのとき、臭素化エポキシ樹脂を含まない組合せを選ぶと、ハロゲンフリーの難燃性樹脂になる。
【0036】
エポキシ樹脂組成物の各成分の混合割合は、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を40〜90質量%、難燃剤を10〜50質量%、エポキシ樹脂(好ましくはオキサゾリドン環を有するもの)を0.1〜30質量%がよい。より好ましくは、骨格部のポリフェニレンエーテルの割合が50〜60質量%であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を50〜60質量%、難燃剤を20〜25質量%、オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂を1〜10質量%である。この割合で混合すると、樹脂組成物の電気特性が良く、難燃性を持ちながら、耐熱性、接着性、加工性のバランスが非常に良い。
【0037】
次に、本発明に使用する籠状シルセスキオキサン及びその部分開裂構造体について説明する。
シリカがSiOで表されるのに対し、シルセスキオキサンは[R’SiO3/2で表される化合物である。シルセスキオキサンは、通常はR’SiX型化合物(R’=水素原子、炭化水素基、ケイ素原子含有基等、X=ハロゲン原子、アルコキシ基等)の加水分解−重縮合で合成されるポリシロキサンであり、分子配列の形状として、代表的には無定形構造、ラダー状構造、籠状(完全縮合ケージ状)構造あるいはその部分開裂構造体(籠状構造からケイ素原子が一原子欠けた構造や籠状構造の一部ケイ素−酸素結合が切断された構造)等が知られている。
本発明に使用される籠状シルセスキオキサンの具体的構造の例としては、例えば、下記の一般式(A)で表される籠状シルセスキオキサンが挙げられる。又、本発明に使用される籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の具体的構造の例としては、例えば、下記の一般式(B)で表される籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体が挙げられる。しかしながら、本発明に使用される籠状シルセスキオキサンあるいはその部分開裂構造体の構造は、これらの構造に限定されるものではない。
[RSiO3/2 (A)
(RSiO3/2(RXSiO) (B)
一般式(A)、(B)において、Rは水素原子、炭素原子数1から6のアルコキシル基、アリールオキシ基、炭素原子数1から20の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から10のケイ素原子含有基から選ばれ、Rは全て同一でも複数の基で構成されていても良い。
【0038】
本発明で用いられる一般式(A)で表される籠状シルセスキオキサンの例としては、[RSiO3/2の化学式で表されるタイプ(下記一般式(2))、[RSiO3/2の化学式で表されるタイプ(下記一般式(3))、[RSiO3/210の化学式で表されるタイプ(例えば下記一般式(4))、[RSiO3/212の化学式で表されるタイプ(例えば下記一般式(5))、[RSiO3/214の化学式で表されるタイプ(例えば下記一般式(6))が挙げられる。







【0039】
本発明の一般式(A)[RSiO3/2で表される籠状シルセスキオキサンにおけるnの値としては、6から14の整数であり、好ましくは8,10あるいは12であり、より好ましくは、8、10または8,10の混合物あるいは8,10,12の混合物であり、特に好ましくは8又は10である。
【0040】
また、本発明では、籠状シルセスキオキサンの一部のケイ素−酸素結合が部分開裂した構造か、又は、籠状シルセスキオキサンの一部が脱離した構造、あるいはそれらから誘導される、一般式(B)[RSiO3/2(RXSiO)(lは2から12の整数であり、kは2又は3である。)で表される籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体を用いることもできる。
【0041】
一般式(B)においてXはOR(Rは水素原子、アルキル基、第4級アンモニウムラジカル)、ハロゲン原子及び上記Rで定義された基の中から選ばれる基であり、複数のXは同じでも異なっていても良い。ここで、lは2から12の整数、好ましくは4から10の整数、特に好ましくは4、6又は8である。kは2又は3である。(RXSiO)中の2個又は3個のXは、同一分子中の他のXと互いに連結して各種の連結構造を形成しても良い。その、連結構造の具体例を以下に説明する。
【0042】
一般式(B)の同一分子中の2個のXは一般式(7)で示される分子内連結構造を形成しても良い。さらに、それぞれ異なった分子中に存在する2個のXが互いに連結して、上記一般式(7)で表される連結構造により複核構造を形成しても良い。

(式中、Y及びZはXと同じ基の群の中から選ばれ、YとZは同じでも異なっていても良い。)
【0043】
一般式(7)で示される連結構造の例としては、例えば、以下の式(8)〜(14)で表される2価基構造が挙げられる。なお、式中Phはフェニル基を表す。







【0044】
本発明で使用される一般式(B)で表される化合物の例としては、例えば一般式(3)の一部が脱離した構造であるトリシラノール体あるいは、それから合成される(RSiO/2(RXSiO)の化学式で表されるタイプ(例えば、下記一般式(15))、一般式(15)あるいは(RSiO3/2(RXSiO)の化学式の化合物の中の3個のXのうち2個のXが一般式(7)で示される連結構造を形成するタイプ(例えば、下記一般式(16))、一般式(3)の一部が開裂したジシラノール体から誘導される(RSiO3/2(RXSiO)の化学式で表されるタイプ(例えば、下記一般式(17)及び(18))、一般式(17)あるいは(RSiO3/2(RXSiO)の化学式の化合物の中の2個のXが一般式(7)で示される連結構造を形成するタイプ(例えば、下記一般式(19))等が挙げられる。一般式(15)から(19)中の同一ケイ素原子に結合しているRとXあるいはYとZはお互いの位置を交換したものでもよい。さらに、それぞれ異なった分子中に存在する2個のXが互いに連結して、上記一般式(7)で代表される各種の連結構造により複核構造を形成しても良い。







【0045】
また、一般式(B)の中の2個又は3個のXが連結して、ケイ素原子以外の他の金属原子を含む連結構造を形成した化合物の具体例としては、例えば、一般式(8)で示される化合物の3個のXがTi原子を含む連結構造を形成する(RSiO3/2(RXSiO)の化学式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
これらの各種の籠状シルセスキオキサンあるいはその部分開裂構造体は、それぞれ単独で用いてもいいし、複数の混合物として用いても良い。
【0047】
本発明に使用される一般式(A)及び/又は一般式(B)で表される化合物におけるRの種類としては水素原子、炭素原子数1から6のアルコキシル基、アリールオキシ基、炭素原子数1から20の置換又は非置換の炭化水素基、またはケイ素原子数1から10のケイ素原子含有基が挙げられる。
【0048】
炭素原子数1から6のアルコキシル基の例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。一般式(A)又は一般式(B)の化合物の1分子中のアルコキシル基及びアリールオキシ基の数は合計で好ましくは3以下、より好ましくは1以下である。
【0049】
炭素数1から20までの炭化水素基の例としてはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)、ペンチル(n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル等)、ヘキシル(n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル等)、ヘプチル(n−ヘプチル、i−ヘプチル等)、オクチル(n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル等)、ノニル(n−ノニル、i−ノニル等)、デシル(n−デシル、i−デシル等)、ウンデシル(n−ウンデシル、i−ウンデシル等)、ドデシル(n−ドデシル、i−ドデシル等)等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、スチレニル等の非環式及び環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基、4−アミノフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ビニルフェニル基のような置換アリール基等が挙げられる。
【0050】
これらの炭化水素基の中でも、特に炭素数2から20の脂肪族炭化水素基、炭素数2から20のアルケニル基の数が、全R、X、Y、Zの数に対して割合が大きい場合には特に良好な硬化体成形時の溶融流動性が得られる。またRが脂肪族炭化水素基及び/又はアルケニル基の場合に、硬化体成形時の溶融流動性、難燃性及び操作性のバランスの観点から、R中の炭素数は通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。
【0051】
又、本発明に使用されるRとしては、これらの各種の炭化水素基の水素原子又は主査骨格の一部がエーテル結合、エステル基(結合)、水酸基、カルボニル基、カルボン酸無水物結合、チオール基、チオエーテル結合、スルホン基、アルデヒド基、エポキシ基、アミノ基、アミド基(結合)、ウレア基(結合)、イソシアネート基、シアノ基等の極性基(極性結合)あるいはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等から選ばれる置換基で部分置換されたものでも良い。
【0052】
エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低いことは、下記の硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化性組成物の成形性を良くすることに密接に関係する。エポキシ樹脂硬化性組成物を基材に含浸させて、乾燥させると、エポキシ基と硬化剤、またはエポキシ基とフェノール性水酸基の一部が反応し、Bステージ状態となる。このBステージとなったエポキシ樹脂硬化性組成物は、次に加圧加熱される時、溶融樹脂の粘度は一度その系での最低粘度を発現し、硬化が進むにつれて、また粘度は上昇する。エポキシ樹脂組成物の溶融粘度は、この最低粘度に影響を与える。エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低いほど、この最低粘度は低くなるからである。
【0053】
本発明者は、全く以外なことに籠状シルセスキオキサンおよび/または籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の添加により、本発明のエポキシ樹脂組成物の溶融粘度が著しく低下することを見出した。さらに、籠状シルセスキオキサンおよび/または籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の添加は、難燃性をも改良できることが判った。
【0054】
籠状シルセスキオキサンおよび/または籠状シルセスキオキサンのエポキシ樹脂組成物中の量は、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、さらに好ましくは1質量%〜10質量%である。0.1質量%以上であると、樹脂組成物の溶融粘度低下や難燃性向上に対する効果が大きい。
【0055】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して3次元網状構造を形成できればどれでも良く、例えばジシアンジアミド、脂肪族ポリアミド等のアミド系硬化剤、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン系硬化剤、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、p−キシレンノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤および酸無水物系硬化剤といった顕在型硬化剤や潜在型硬化剤を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0056】
なお、エポキシ樹脂組成物には硬化反応を促進するために、硬化剤の他に硬化促進剤の添加が現実的である。例えば、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、トリブチルポスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられ、単独もしくは2種類以上を併用してもよい。
【0057】
本発明において、実質相分離を起こすとは、得られた硬化体の光散乱装置による測定において、0.1μm〜100μmの間に散乱極大が存在することを意味する。このことは光学顕微鏡による相分離の観察を行っても確認できる。本発明のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の硬化体は実質相分離を起こさないため、これら相分離の観察を行っても、はっきりとした散乱極大が確認できない。また、硬化体を光学顕微鏡で観察した場合においても、はっきりとした相分離を確認できない。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物を含有するワニスの調製には、公知のポリフェニレンエーテル含有エポキシ樹脂組成物のワニス調製に用いられるジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン系溶媒やベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒に加えて、ケトン類溶剤の使用が可能である。ケトン類溶剤として、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、アセトフェノン等の芳香族ケトンが挙げられる。
【0059】
通常ポリフェニレンエーテル含有エポキシ樹脂組成物のワニスは、トルエン等を溶剤とし、かつ例えば50℃以上のようにワニスが安定する温度を維持しなければならない。しかし、溶剤としてケトン類を使用し、室温で保持できることにより、通常のエポキシ樹脂系ワニスと同等の取り扱いができる。また、通常のポリフェニレンエーテル含有エポキシ樹脂組成物のワニスのような、特別な取り扱いや装置が必要でなくなるので好ましい。
【0060】
また、例えば、ジシアンジアミド等、ケトン類に溶解しにくい硬化剤や硬化促進剤を使用する場合は、主な溶剤としてケトン類を使用し、その上で補助溶剤として、例えば、ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メシチレン等の溶剤を使用することもできる。なお、ワニス中の固形分濃度は特に限定しないが、30%〜80%が好適である。
【0061】
本発明のプリプレグは、上記ワニスを基材に含浸させた後、溶媒の乾燥、加熱による半硬化させて作製するものである。基材としては、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、リンター紙等が挙げられる。基材に含浸する樹脂量は特に限定しないが、乾燥後の樹脂含有量がプリプレグの質量に対し30〜70%となるように含浸させることが好適である。
【0062】
本発明の硬化性樹脂金属箔複合体は、エポキシ樹脂硬化性組成物からなるフィルムと金属箔より構成される。フィルムの厚みは特に限定されるものではないが、通常は0.5μm〜5mmである。ここで用いる金属箔は、導電性であることが好ましく、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0063】
硬化性樹脂付き金属箔を製造する方法としては、例えば、エポキシ樹脂硬化性組成物を溶媒に溶解した溶液とし、この溶液を金属箔の上にキャストして作成する方法、あらかじめ作成したエポキシ樹脂硬化性組成物からなるフィルム上に金属箔を加熱圧着する方法、エポキシ樹脂硬化性組成物よりなるフィルム上に、銅やアルミニウム等の金属をスパッタや蒸着、メッキ等の手段により積層する方法等が挙げられる。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂硬化性組成物からなるフィルムは、溶液化した後、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の上にバーコーダー等で塗布し、溶剤を乾燥除去することにより作製される。このように作製されたBステージ化されたフィルムは、ホットロール等を用いて両面銅箔積層板にラミネートし、オーブン内等で加熱処理することにより、多層成形体を作製できる。
【0065】
本発明の積層板は、プリプレグ、硬化性樹脂金属箔複合体、フィルムおよび銅箔を目的に応じた層構成で積層し加圧加熱して製造することができる。例えば、基板上にプリプレグと硬化性樹脂金属箔複合体を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着すると同時に熱架橋を行い、所望の厚みの積層板を得ることができる。あるいは、基板上に硬化性樹脂金属箔複合体を複数枚重ね合わせて、加熱加圧下に各層間を接着すると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの積層板を得ることもできる。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。また積層と硬化を複数回繰り返して逐次多層化することも可能である。
【0066】
本発明のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を使用した多層プリント配線板は、回路板の導体層と有機絶縁層が少なくとも1層以上積層したものをいう。特に限定されないが、めっき法によるビルドアップ方式により製造することもできるし、導電性ペースト接続によるビルドアップ方式、銅張積層板、接着剤用樹脂組成物を用いた一括積層法などが挙げられる。このとき、上記フィルム及び上記積層板を用いて製造すると、電気特性のみならず、接着性、耐熱性、対溶剤性に非常に優れた多層プリント配線板を作成できる。
【0067】
本発明の電子装置とは、上記多層プリント配線板を使用しているものをいい、特に限定されないが、例えば、通信用ルーターやコンピューター、テレビ、携帯電話、PDA、DVDレコーダー、ハードディスクレコーダー、デジタルカメラなどが挙げられる。
【0068】
本発明の封止用樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を含んでいれば特に限定されないが、無機充填剤や離型剤、着色剤、難燃剤及び低応力剤を適宜含有しても良い。無機充填剤は、エポキシ樹脂組成物となじみをよくするために、カップリング剤で表面処理を行ってもよい。離型剤としては、例えば、カルナバワックス、カルボキシル基含有ポリオレフィン等が上げられる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック等が挙げられ、難燃剤としては、例えば、3酸化アンチモン等が挙げられ、低応力剤としては、例えば、シリコンゴム、シリコンオイル等が挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物を封止用樹脂組成物に用いると、加工性、耐熱性、吸湿性等非常に優れる。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物は接着剤用途としても使用できる。使用法は特に限定されないが、電気用途に用いると、電気特性、接着性、耐熱性、加工性等その効果を十分に発揮できる。
【0070】
(実施例及び比較例)
以下、実施例および比較例を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。
各特性等の評価は以下の方法で行った。
(1)溶融粘度
エポキシ樹脂組成物の180℃での溶融粘度(単位:mPa・s)を、Contraves社製rheomat−30にて測定した。
(2)分子量
昭和電工社製shodex A−804、A−803、A−802、A802をカラムとして使用してゲル浸透クロマトグラフィー分析を行い、分子量既知のポリスチレンの溶出時間との比較で分子量を求めた。
(3)フェノール性水酸基量
ポリフェニレンエーテルを塩化メチレンに溶解後、0.1Nテトラエチルアンモニウムハイドロキシドのメタノール溶液を添加し、激しく撹拌後、318nmでの吸光度を測定し、0.1Nテトラエチルアンモニウムハイドロキシドのメタノール溶液を添加しない場合の吸光度との差から求めた(単位:meq/kg)。
(4)エポキシ当量
JIS K 7236により測定した。
(5)曲げ強さ
JIS C 6481に基づき、材料試験機5582型 インストロン製を用いて測定した。
(6)積層板誘電率、誘電正接
JIS C 6481に基づき、アジレントテクノロジー社製LCRメーター4284Aを用いて測定した。
(7)溶剤不溶解分の測定
樹脂を溶剤に加熱溶解し、室温にもどした後、メンブランフィルターにてろ過した。フィルターを加熱し、溶剤を揮発させた後の質量ともとのフィルターの質量の差から、溶剤不溶解分(単位:質量%)を測定した。
(8)相分離の測定
ワニスを硬化させて得られた硬化体を、光散乱測定装置DYNA−3000(大塚電子製)を用いて、0.1μm〜100μmの間の散乱極大の有無(すなわち相分離の有無)を調べた。また、レーザー顕微鏡VHX−100(KEYENCE製)を用いて、表面観察を行った。相分離がある場合を×、相分離がない場合を○として評価した。
(9)対溶剤性
銅箔積層板を35℃の塩化メチレンに5分間浸漬し、外観の変化を見た。積層板に膨れが生じる場合を×、膨れが生じない場合を○として評価した。
(10)燃焼性試験
JIS C 6481に基づき測定した。
(11)エポキシ基の個数
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂のエポキシ基の個数は、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量をエポキシ当量で割ることにより計算した。
(12)Tgの測定
JIS C 6481のDSC法に基づき測定した。
(13)銅箔剥離強度
JIS C 6481に基づき測定した。
【0071】
[ポリフェニレンエーテル製造例1]
数平均分子量20000の高分子量ポリフェニレンエーテル(旭化成株式会社製)100質量部およびビスフェノールA30質量部をトルエン100質量部に加熱溶解させた。この中に過酸化ベンゾイル30質量部をいれ90℃にて60分間攪拌し再分配反応させた。さらに過酸化ベンゾイル10質量部を加え、90℃にて30分間攪拌し、再分配反応を完結させた。反応混合物を1000質量部のメタノールに投入し沈殿物を得て、濾別した。さらにメタノール1000質量部で濾別物を洗浄し、ポリフェニレンエーテルIを得た。
ポリフェニレンエーテルIのゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定の結果、数平均分子量は1900で、分子量20000以上の成分及び分子量300以下の成分を含んでいなかった。また1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.7個であった。
【0072】
[ポリフェニレンエーテル製造例2]
メタノールによる後洗浄工程を除き、ポリフェニレンエーテル製造例1と同じ方法でポリフェニレンエーテルIIを得た。
ポリフェニレンエーテルIIのゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定の結果、数平均分子量は2000で、分子量20000以上の成分は含んでいなかったが、分子量300以下の成分は存在した。また1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.7個であった。
【0073】
[ポリフェニレンエーテル製造例3]
既知のポリフェニレンエーテルの製造法、例えば米国特許6211327号明細書実施例記載の方法で、反応初期段階で反応を停止し、メタノール洗浄を行った。すなわち、臭化銅とジ−n−ブチルアミンを触媒にし、トルエン溶媒中、40℃から45℃の温度範囲で酸素供給下撹拌しながら2,6−ジメチルフェノールを通常100分のところを30分間のみ反応させた。次いで酸素の供給を止め、窒素シール下ニトリロトリ酢酸の水溶液を撹拌しながら加えて、水相に銅触媒を抽出しつつ温度を55℃にし、この状態で70分保った。その後、遠心分離で銅触媒を除き、メタノール溶液で洗浄した。その結果、数平均分子量2000、分子量20000以上及び分子量300以下の成分を含まないポリフェニレンエーテルIIIを得た。このポリフェニレンエーテルの1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.0個であった。
【0074】
[ポリフェニレンエーテル製造例4]
追加の過酸化ベンゾイルを加える工程を除き、ポリフェニレンエーテル製造例1と同じ方法でポリフェニレンエーテルIVを得た。
ポリフェニレンエーテルIVのゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定の結果、数平均分子量は2300で、分子量300以下の成分は含まれていなかったが、分子量20000以上の成分は存在した。また1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.6個であった。
【0075】
[ポリフェニレンエーテル製造例5]
数平均分子量20000の高分子量ポリフェニレンエーテル(旭化成株式会社製)100質量部およびビスフェノールA6質量部をトルエン100質量部に加熱溶解させた。この中に過酸化ベンゾイル30質量部をいれ90℃にて60分間攪拌し再分配反応させた。反応混合物を1000質量部のメタノールに投入し沈殿物を得て、濾別した。さらにメタノール1000質量部で濾別物を洗浄し、ポリフェニレンエーテルVを得た。
ポリフェニレンエーテルVのゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定の結果、数平均分子量は4500で、分子量300以下の成分は含まれていなかったが、分子量20000以上の成分を含んでいた。また1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.6個であった。
【0076】
[ポリフェニレンエーテル製造例6]
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む2,6−ジメチルフェノールを使用したこと以外は実施例3と同様に行い、数平均分子量2700、分子量20000以上を0.5質量%含むが分子量300以下の成分を含まないポリフェニレンエーテルVIを得た。このポリフェニレンエーテルの1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.8個であった。
【0077】
[ポリフェニレンエーテル製造例7]
数平均分子量20000の高分子量ポリフェニレンエーテル(旭化成株式会社製)100質量部およびビスフェノールA30質量部をトルエン100質量部に加熱溶解させた。この中に過酸化ベンゾイル60質量部をいれ90℃にて60分間攪拌し再分配反応させた。さらに過酸化ベンゾイル60質量部を加え、90℃にて30分間攪拌し、再分配反応を完結させた。反応混合物を1000質量部のメタノールに投入し沈殿物を得て、濾別した。さらにメタノール1000質量部で濾別物を洗浄し、ポリフェニレンエーテルVIIを得た。
ポリフェニレンエーテルVIIのゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定の結果、数平均分子量は1100で、分子量20000以上の成分及び分子量300以下の成分を含んでいなかった。また1分子当たりのフェノール性水酸基の数は1.8個であった。
【0078】
[銅張積層板の製造例]
硬化剤として組成物のエポキシ基に対し、アミノ基として0.6倍当量のジシアンジアミド、溶媒としてメチルエチルケトンを加え、ワニスの固形分が60質量%となるように調製した。後に述べる実施例1〜3については、ポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基がエポキシ基と完全に反応するものとし、エポキシ基数からフェノール性水酸基数を差し引いた量に対してジシアンジアミドを加えた。
また、硬化触媒として2−メチルイミダゾールを、ワニスの170℃ゲルタイム(ゲル化に要する時間)が4分〜5分の間にくるようにワニス固形分に対し0.1〜0.3質量%の範囲で調整して添加した。
【0079】
次にエポキシ樹脂ワニスをガラスクロス(旭シュエーベル株式会社製、商品名2116)に含浸させ、乾燥することにより樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。上記プリプレグを4枚重ね、その上下に厚み35μmの銅箔を重ね合わせたものを温度190℃、圧力20kg/cmの条件下で60分加熱加圧することにより両面銅張積層板を得た。
得られた両面銅張積層板のTgをDSCにより測定した。積層板の曲げ強さを曲げ試験により評価した。
【実施例1】
【0080】
ポリフェニレンエーテルIを100質量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)を100質量部とからなるエポキシ樹脂組成物(1)を、メチルエチルケトン130質量部に溶解したところ、不溶解分がなく、室温にて均一な溶液が得られた。この溶液を25℃にて貯蔵したところ、4日間は褐色透明溶液であったが、5日目に濁りが生じ、不溶解分を測定したところ0.5質量%であった。
また、ポリフェニレンエーテルIを100質量部と、AER260を100質量部加えたものを溶融混合し、180℃での溶融粘度を測定したところ、2500mPa・sであった。
【実施例2】
【0081】
ポリフェニレンエーテルIIを100質量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)を100質量部とからなるエポキシ樹脂組成物(2)を、メチルエチルケトン130質量部に溶解したところ、不溶解分がなく、室温にて均一な溶液が得られた。この溶液を25℃にて貯蔵したところ、4日間は褐色透明溶液であったが、5日目に濁りが生じ、不溶解分を測定したところ0.5質量%であった。
【実施例3】
【0082】
ポリフェニレンエーテルIIIを100質量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)を100質量部とからなるエポキシ樹脂組成物(3)を、メチルエチルケトン130質量部に溶解したところ、不溶解分がなく、室温にて均一な溶液が得られた。この溶液を25℃にて貯蔵したところ、3日間は褐色透明溶液であったが、4日目に濁りが生じ、不溶解分を測定したところ0.8質量%であった。
【0083】
[比較例1]
ポリフェニレンエーテルIVを100質量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)を100質量部とからなるエポキシ樹脂組成物(4)を、メチルエチルケトン130質量部に溶解したところ、室温にて均一な溶液が得られず、濁りのある溶液であった。この溶液の不溶解分を測定したところ、1.2質量%であった。
【0084】
[比較例2]
ポリフェニレンエーテルVを100質量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)を100質量部とからなるエポキシ樹脂組成物(5)を、メチルエチルケトン130質量部に溶解したところ、室温にて均一な溶液が得られず、濁りのある溶液であった。この溶液の不溶解分を測定したところ、2.5質量%であった。
【実施例4】
【0085】
ポリフェニレンエーテルIの50質量部とエポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)の50質量部を130℃で加熱溶融混合し、これに1質量%のナトリウムメチラート/メタノール溶液1質量部を添加して均一になるように攪拌した。5分後溶融物を190℃に昇温し、2時間攪拌し、エポキシ樹脂組成物(6)を得た。
【0086】
エポキシ樹脂組成物(6)のエポキシ当量は502、180℃溶融粘度は3100mPa・s、末端フェノール性水酸基は4.5meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、33質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は67質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、6.7meq/kgであった。
【0087】
エポキシ樹脂組成物(6)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において30日間以上析出物を発生させることがなく、不溶解成分がなかった。同様にエポキシ樹脂組成物Iの60質量%アセトン溶液も25℃貯蔵において30日間以上析出物を発生させることがなかった。
【0088】
エポキシ樹脂組成物(6)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Iは分子量2900、エポキシ当量2260であった。従って、ポリフェニレンエーテル骨格の割合は65質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は1.6個であった。
【0089】
エポキシ樹脂組成物(6)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.2、誘電正接は0.011、DSCによるTgは165℃、銅箔剥離強度は0.88kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しており、対溶剤性の試験後、銅張積層板に膨れが生じていた。
【実施例5】
【0090】
ポリフェニレンエーテルIの50質量部とエポキシ樹脂としてテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER8018)の50質量部を130℃で加熱溶融混合し、これに1質量%のナトリウムメチラート/メタノール溶液1質量部を添加して均一になるように攪拌した。5分後溶融物を190℃に昇温し、2時間攪拌し、エポキシ樹脂組成物(7)を得た。
【0091】
エポキシ樹脂組成物(7)のエポキシ当量は1369、180℃溶融粘度は70000mPa・s、末端フェノール性水酸基は6.3meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、14質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は86質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、7.3meq/kgであった。
【0092】
エポキシ樹脂組成物(7)の60質量部をメチルエチルケトンの40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において30日間以上析出物を発生させることがなかった。同様にエポキシ樹脂組成物(7)の60質量%アセトン溶液も25℃貯蔵において30日間以上析出物を発生させることがなかった。
【0093】
エポキシ樹脂組成物(7)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIは分子量3550、エポキシ当量2260であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格の割合は53.5質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は1.7個であった。
【0094】
エポキシ樹脂組成物(7)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は3.9、誘電正接は0.008、DSCによるTgは163℃、銅箔剥離強度は0.78kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しており、対溶剤性の試験後、銅張積層板に膨れが生じていた。
【実施例6】
【0095】
ポリフェニレンエーテルIの100質量部をエピクロルヒドリン120質量部に溶解後、50質量%の水酸化ナトリウム水溶液10質量部を60℃にて60分間かけて添加し、その後60℃で60分間撹拌した。この反応溶液に水50部を加え、撹拌後静置して水層を分離させることで生成塩を除去した後、エピクロルヒドリンを減圧蒸留で除去し、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIIを得た。
【0096】
得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIIの分子量は2010、エポキシ当量は1570であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格部の割合は95質量%、1分子中のエポキシ基の個数は1.7個であった。
【0097】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IIIを100部に対し、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)、AER8018)90質量部を180℃で加熱溶融混合し、エポキシ樹脂組成物(8)を得た。エポキシ樹脂組成物(8)のエポキシ当量は632、180℃溶融粘度は17000mPa・s、末端フェノール性水酸基は0.1meq/kg以下であった。
【0098】
エポキシ樹脂組成物(8)の60質量部をメチルエチルケトンの40質量部に溶解したところ不溶解物が存在した。そこで、溶液を50℃に加熱したところ、不溶解成分が溶解し、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において10日間析出物を発生させることがなかったが、11日目に濁りを生じ、不溶解分は0.5質量%であった。同様にエポキシ樹脂組成物(8)の60質量%アセトン溶液も、均一な溶液が得られ、不溶解物はなかったが、7日目に濁りを生じ、不溶解物は0.7質量%であった。
【0099】
エポキシ樹脂組成物(8)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.0、誘電正接は0.009、DSCによるTgは166℃、銅箔剥離強度は0.86kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しており、対溶剤性の試験後、銅張積層板に膨れが生じていた。
【実施例7】
【0100】
ポリフェニレンエーテルIIIを50質量部とエポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)の50質量部を130℃で加熱溶融混合し、これに1質量%のナトリウムメチラート/メタノール溶液1質量部を添加して均一になるように攪拌した。5分後溶融物を190℃に昇温し、2時間攪拌し、エポキシ樹脂組成物(9)を得た。
【0101】
エポキシ樹脂組成物(9)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IVを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IVは分子量2450、エポキシ当量2500であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格の割合は82質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は0.98個であった。
【0102】
エポキシ樹脂組成物(9)のエポキシ当量は461、180℃溶融粘度は1600mPa・s、末端フェノール性水酸基は2.0meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、41質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IVは59質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、3.4meq/kgであった。
【0103】
エポキシ樹脂組成物(9)の60質量部をメチルエチルケトンの40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において19日間析出物を発生させることがなかったが、20日目に濁りを生じ、不溶解分は0.7質量%であった。同様にエポキシ樹脂組成物(9)の60質量%アセトン溶液も、均一な溶液が得られたが、13日目に濁りが生じ、不溶解分1.3質量%が観察された。
【0104】
エポキシ樹脂組成物(9)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.3、誘電正接は0.010、DSCによるTgは155℃、銅箔剥離強度は0.40kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しており、対溶剤性の試験後、銅張積層板に膨れが生じていた。
【実施例8】
【0105】
190℃での反応時間を1時間にした以外は実施例4と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物(10)を得た。エポキシ樹脂組成物(10)のエポキシ当量は455、180℃溶融粘度は2500mPa・s、末端フェノール性水酸基は20.9meq/kgであった。
またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、40質量部であった。従って、末端エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は60質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、34.6meq/kgであった。
【0106】
エポキシ樹脂組成物(10)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液を25℃にて貯蔵したところ、5日間は褐色透明溶液であったが、6日目に濁りが生じ、不溶解分を測定したところ、0.3質量%であった。
エポキシ樹脂組成物(10)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.4、誘電正接は0.012、DSCによるTgは163℃、銅箔剥離強度は0.85kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しており、対溶剤性の試験後、銅張積層板に膨れが生じていた。
【実施例9】
【0107】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)ECN1299)30g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)、A250)30gを100℃に加熱し攪拌混合した。十分に混合した後、触媒としてNaOCHを0.005g添加し、約15分攪拌した。その後、180℃まで加熱して、ポリフェニレンエーテルI40gを添加した。そのまま180℃〜190℃で3時間加熱し、エポキシ樹脂組成物(11)を得た。
【0108】
エポキシ樹脂組成物(11)のエポキシ当量は384、180℃溶融粘度は57000mPa・s、末端フェノール性水酸基は0.6meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、32質量部であった。従って、末端エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は68質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、0.9meq/kgであった。
【0109】
エポキシ樹脂組成物(11)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において90日以上析出物を発生させることがなく、不溶解成分がなかった。同様にエポキシ樹脂組成物(11)の60質量%アセトン溶液も25℃貯蔵において30日以上析出物を発生させることがなかった。
【0110】
エポキシ樹脂組成物(11)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Vを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂Vは分子量5200、エポキシ当量830であった。従って、ポリフェニレンエーテル骨格の割合は52質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は6.3個であった。
【0111】
エポキシ樹脂組成物(11)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は3.9、誘電正接は0.006、DSCによるTgは190℃、銅箔剥離強度は1.47kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しておらず、対溶剤性の試験後も、銅張積層板に膨れは見られなかった。
【0112】
[比較例3]
ポリフェニレンエーテルIVの50質量部とエポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)の50質量部を130℃で加熱溶融混合し、これに1質量%のナトリウムメチラート/メタノール溶液1質量部を添加して均一になるように攪拌した。5分後溶融物を190℃に昇温し、2時間攪拌し、エポキシ樹脂組成物(12)を得た。
【0113】
エポキシ樹脂組成物(12)のエポキシ当量は430、180℃溶融粘度は9000mPa・s、末端フェノール性水酸基は5.2meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、36質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は64質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、8.1meq/kgであった。
【0114】
エポキシ樹脂組成物(12)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ、室温にて不溶解物が存在した。そこで、溶液を50℃に加熱したところ不溶解成分が溶解し、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において17日間析出物を発生させることがなかったが、18日目に濁りを生じ、不溶解分は0.5質量%であった。同様にエポキシ樹脂組成物(12)の60質量%アセトン溶液も均一な溶液であり不溶解物はなかったが、9日目に濁りを生じ、不溶解分は0.7質量%であった。
【0115】
[比較例4]
ポリフェニレンエーテルVの50質量部とエポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製AER260)の50質量部を130℃で加熱溶融混合し、これに1質量%のナトリウムメチラート/メタノール溶液1質量部を添加して均一になるように攪拌した。5分後溶融物を190℃に昇温し、2時間攪拌し、エポキシ樹脂組成物(13)を得た。
【0116】
エポキシ樹脂組成物(13)のエポキシ当量は453、180℃溶融粘度は12000mPa・s、末端フェノール性水酸基は4.2meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、42質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は58質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、7.2meq/kgであった。
【0117】
エポキシ樹脂組成物(13)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ、室温にて不溶解物が存在した。そこで、溶液を50℃に加熱したところ不溶解成分が溶解し、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において4日間析出物を発生させることがなかったが、5日目に濁りを生じ、不溶解分は0.5質量%であった。同様にエポキシ樹脂組成物(13)の60質量%アセトン溶液も均一な溶液であり不溶解物はなかったが、2日目に濁りを生じ、不溶解分は0.7質量%であった。
【0118】
[比較例5]
ポリフェニレンエーテルVを用いたこと以外は実施例9と同様に行い、エポキシ樹脂組成物(14)を得た。エポキシ樹脂組成物(14)のエポキシ当量は362、180℃溶融粘度は114000mPa・s、末端フェノール性水酸基は0.5meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、40質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は60質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、0.83meq/kgであった。
【0119】
エポキシ樹脂組成物(14)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ室温にて不溶解物が存在した。そこで、溶液を50℃に加熱したところ不溶解成分が溶解し、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において17日間析出物を発生させることがなかったが、18日目に濁りを生じ、不溶解分は0.7質量%であった。同様にエポキシ樹脂組成物(14)の60質量%アセトン溶液も均一な溶液であり不溶解物はなかったが、19日目に濁りを生じ、不溶解分は0.9質量%であった。
【0120】
エポキシ樹脂組成物(14)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂VIを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂VIは分子量11400、エポキシ当量1960であった。
従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格の割合は60質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は5.8個であった。
【0121】
[比較例6]
ポリフェニレンエーテルVIIを用いたこと以外は実施例9と同様に行い、エポキシ樹脂組成物(15)を得た。エポキシ樹脂組成物(15)のエポキシ当量は401、180℃溶融粘度は49000mPa・s、末端フェノール性水酸基は0.9meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、29質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は71質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、1.3meq/kgであった。
【0122】
エポキシ樹脂組成物(15)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において90日以上析出物を発生させることがなく、不溶解成分がなかった。同様にエポキシ樹脂組成物(15)の40質量%アセトン溶液も25℃貯蔵において30日以上析出物を発生させることがなかった。
【0123】
エポキシ樹脂組成物(15)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂VIIを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂VIIは分子量3030、エポキシ当量510であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格の割合は36質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は5.9個であった。
【0124】
エポキシ樹脂組成物(15)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.5、誘電正接は0.015と電気特性が非常に悪かった。DSCによるTgは175℃、銅箔剥離強度は1.50kgf/cmであった。この硬化体は相分離しておらず、対溶剤性の試験後、銅張積層板に変化はなかった。
【0125】
[比較例7]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)ECN1299)2g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)A250)58gに変更したこと以外は実施例9と同様に行い、エポキシ樹脂組成物(16)を得た。
【0126】
エポキシ樹脂組成物(16)のエポキシ当量は、490、180℃溶融粘度は4500mPa・s、末端フェノール性水酸基は2.7meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、31質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は69質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、3.9meq/kgであった。
【0127】
エポキシ樹脂組成物(16)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において30日以上析出物を発生させることがなく、不溶解成分がなかった。同様にエポキシ樹脂組成物Aの40質量%アセトン溶液も25℃貯蔵において30日以上析出物を発生させることがなかった。
【0128】
エポキシ樹脂組成物(16)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂VIIIを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂VIIIは分子量3820、エポキシ当量2060であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格の割合は71質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は1.85個であった。
【0129】
エポキシ樹脂組成物(16)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.2、誘電正接は0.010、DSCによるTgは165℃、銅箔剥離強度は1.39kgf/cmであった。この硬化体は相分離を起しており、対溶剤性の試験後、銅張積層板に膨れが生じていた。
【0130】
[比較例8]
触媒NaOCH添加し、加熱温度を210℃〜220℃にすること以外は実施例9と同様に行い、エポキシ樹脂組成物(17)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物(17)のエポキシ当量は、881、180℃溶融粘度は74000mPa・s、末端フェノール性水酸基は0.3meq/kgであった。またゲル浸透クロマトグラフ分析により定量した未反応エポキシ量は仕込み100質量部に対して、23質量部であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂は77質量部であり、このものの1kgに対する末端フェノール性水酸基量を計算すると、0.4meq/kgであった。
【0131】
エポキシ樹脂組成物(17)の60質量部をメチルエチルケトン40質量部に溶解したところ不溶解物が全くなく、完全に均一な溶液が得られた。この溶液は25℃貯蔵において30日以上析出物を発生させることがなく、不溶解成分がなかった。同様にエポキシ樹脂組成物Aの40質量%アセトン溶液も25℃貯蔵において30日以上析出物を発生させることがなかった。
【0132】
エポキシ樹脂組成物(17)10gをトルエン100gに溶解させ、大過剰のメタノールを添加して、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IXを沈殿させた。得られたエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂IXは分子量9460、エポキシ当量2080であった。従って、エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格の割合は28質量%、1分子あたりのエポキシ基の個数は3.8個であった。
【0133】
エポキシ樹脂組成物(17)を用いて銅張積層板を作成したところ、1MHzにおける誘電率は4.5、誘電正接は0.014と電気特性が非常に悪かった。DSCによるTgは177℃、銅箔剥離強度は1.49kgf/cmであった。この硬化体は相分離しておらず、対溶剤性の試験後、銅張積層板に変化はなかった。
【実施例10】
【0134】
エポキシ樹脂組成物(11)75質量%、臭素化エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)、AER8018)25質量%を加え、溶融混合した。このエポキシ樹脂組成物(18)の180℃溶融粘度は21000mPa・sであった。
【実施例11】
【0135】
エポキシ樹脂組成物(11)75質量%、オキサゾリドン環を含むエポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)、AER4152)5質量%、臭素化エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)AER8018)20質量%を溶融混合した。このエポキシ樹脂組成物(19)の180℃溶融粘度は18000mPa・sであった。
【実施例12】
【0136】
エポキシ樹脂組成物(11)75質量%、オキサゾリドン環を含むエポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)、AER4152)3質量%、エポキシ化ホスファゼン化合物(大塚化学(株)、SPG100)12質量%、リン酸エステル化合物(大八化学工業(株)、PX200)10質量%、を溶融混合した。このエポキシ樹脂組成物(20)の180℃溶融粘度は19000mPa・sであった。
【実施例13】
【0137】
ポリフェニレンエーテルIを100質量部、AER260を100質量部、さらに下式(20)で表される籠状シルセスキオキサンIを5質量部加え、溶融混合した。このエポキシ樹脂組成物(21)の180℃溶融粘度は720mPa・sであった。この組成物にメチルエチルケトン130質量%を加えて溶解したところ、不溶解物のない溶液となった。

【実施例14】
【0138】
エポキシ樹脂組成物(6)を100質量部、下式(21)で表される籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体IIを5質量部加え、溶融混合した。このエポキシ樹脂組成物(22)の180℃溶融粘度は980mPa・sであった。この組成物にメチルエチルケトン40質量部を加えて溶解したところ、不溶解物のない溶液となった。


【0139】
実施例1〜3で得られたエポキシ樹脂組成物溶液を用いて作成した積層板の特性を表1に示す。
【0140】

【0141】
また実施例4〜9、比較例6〜8で得られたエポキシ樹脂組成物溶液を用いて作成した銅張積層板の特性を表2に示す。また、表2においては、実施例4〜9、比較例6〜8で得られたエポキシ樹脂組成物溶液に対し、さらに硬化剤としてジシアンジアミド、硬化触媒として2−メチルイミダゾールを添加したエポキシ樹脂ワニスをガラスクロスに含浸させずに、ガラス板上にキャストし、150℃で3時間硬化させた後、さらに200℃で3時間硬化させ、光散乱測定を行った結果を同時に記す。
【0142】


【0143】
実施例10〜12で得られたエポキシ樹脂組成物溶液を用いて作成した銅張積層板の特性を表3に示す。
【0144】


【0145】
実施例13、14で得られたエポキシ樹脂組成物溶液を用いて作成した銅張積層板の特性を表4に示す。
【0146】

【0147】
【産業上の利用可能性】
本願発明のエポキシ樹脂組成物は、ケトン類への長期安定性が良く、加工性に優れ、また優れた誘電特性を有する等の利点を有するため種々の用途に用いられうる。本組成物は、有機溶剤を用いたワニス、このワニスを基材に含浸してなるプリプレグ、このプリプレグを用いた積層板等の形態で、プリント配線板や電子装置等に使用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量20000以上の成分が実質20%以下であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量20000以上の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量300以下の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
数平均分子量が1000〜4000であって、GPCから求めた分子量20000以上の成分及び分子量300以下の成分を実質的に含まないポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
ポリフェニレンエーテルがフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.2個以上有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂が多官能エポキシ樹脂を5質量%以上含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を10質量%以上含有し、室温で実質的に固形物が存在しない、エポキシ樹脂組成物のケトン溶液。
【請求項8】
数平均分子量が1000〜4000であるポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基とエポキシ化合物またはエポキシ樹脂のエポキシ基とを反応させることにより得られるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項9】
エポキシ基を1分子当たり平均3個以上有するエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項10】
数平均分子量が3200〜10000であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項11】
ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が30質量%〜90質量%であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項12】
エポキシ基を1分子当たり平均3個以上有する、請求項10または11記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項13】
数平均分子量が3200〜10000である、請求項11記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項14】
エポキシ基を1分子当たり平均3個以上有し、数平均分子量が3200〜10000であり、ポリフェニレンエーテルの骨格部の割合が30質量%〜90質量%であるエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項15】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂のフェノール性水酸基が10meq/kg以下である、請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂。
【請求項16】
請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂と、エポキシ樹脂を含みケトンに溶解する特性を持つエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
請求項16記載のエポキシ樹脂組成物を10質量%以上含有し、室温で実質的に固形物が存在しない、エポキシ樹脂組成物のケトン溶液。
【請求項19】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を25質量%以上含む、請求項16記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項20】
請求項16記載のエポキシ樹脂組成物と、難燃剤として、臭素化エポキシ樹脂、エポキシ基含有ホスファゼン化合物、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィン化合物のキノン誘導体の少なくとも一つ以上を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項21】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を40〜90質量%、難燃剤を10〜50質量%、エポキシ樹脂を0.1〜30質量%含有する、請求項20記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項22】
エポキシ樹脂はオキサゾリドン環を持つエポキシ樹脂を含む、請求項20または21記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項23】
さらに籠状シルセスキオキサンと籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の少なくとも1つを含む、請求項1〜7、16及び19〜22のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項24】
さらにエポキシ樹脂の硬化剤を含む、請求項1〜7、16及び19〜22のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項25】
請求項24記載のエポキシ樹脂組成物からなる、実質相分離がなく均一な硬化体。
【請求項26】
請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂にさらにエポキシ樹脂の硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物。
【請求項27】
樹脂ワニス、プリプレグ、硬化性樹脂金属箔複合体、フィルム、積層板、多層プリント配線板、封止用樹脂組成物、接着剤用硬化性樹脂組成物から選ばれた請求項1〜7、16、17及び19〜25記載のエポキシ樹脂組成物を含有する電子部材。
【請求項28】
樹脂ワニス、プリプレグ、硬化性樹脂金属箔複合体、フィルム、積層板、多層プリント配線板、封止用樹脂組成物、接着剤用硬化性樹脂組成物から選ばれた請求項8〜14のいずれか1項に記載のエポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する電子部材。
【請求項29】
請求項27または28記載の電子部材からなる電子装置。
【請求項30】
エポキシ化ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法であって、数平均分子量が1000〜4000であるポリフェニレンエーテルのフェノール性水酸基とエポキシ化合物またはエポキシ樹脂のエポキシ基とを反応させることを含む上記方法。

【国際公開番号】WO2004/104097
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506366(P2005−506366)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006943
【国際出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】